気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータ
【課題】 本発明は繰り返しの回転停止動作においても摺動粉が発生するのを効率よく阻止して、スムーズに回転させることができる気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータを得るにある。
【解決手段】 軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成している。
【解決手段】 軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速回転で耐久性に優れた低騒音の情報機器、画像機器、計測機器に用いられる気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の気体動圧軸受けは経済性に優れ、かつ無潤滑状態においても要求される機能寿命を満足させるために、軸およびスリーブのうちの少なくとも一方が無機充填材および繊維状補強材を含有する樹脂組成物で成型されたものが使用されている。
【0003】
しかしながら、このような樹脂組成物で成型されたものは、表面が樹脂材だけのスキン層が形成されるため、繰り返しの回転停止動作において、初期的に摺動粉が発生し、やがては摺動部に詰まり、軸受けの損傷や回転不能等の不具合が生じるという欠点があった。
【特許文献1】特開平9−32851
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、繰り返しの回転停止動作においても摺動粉が発生するのを効率よく阻止して、スムーズに回転させることができる気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータを提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成している。
【0007】
本発明は気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受けのいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、この軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたものを用いてポリゴンスキャナモータ等のモータを構成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0009】
(1)軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成しているので、繰り返しの回転停止動作においても、摺動粉になりやすいスキン層が除去されているため、摺動粉の発生を効率よく阻止することができる。
したがって、軸受けを損傷させたり、回転不能等の不具合を効率よく防止することができる。
【0010】
(2)前記(1)によって、の軸受面になる部位のスキン層を除去しているため、回転停止時には摺動性改善補助材が表面に露出した部位との接触となり、損傷なくスムーズに回転させることができる。
【0011】
(3)前記(1)によって、スキン層を除去する加工でよいので、容易に実施することができる。
【0012】
(4)請求項2、3、4、5も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図4に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は本発明の気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータ、本実施の形態では、ポリゴンスキャナモータで、このポリゴンスキャナモータ1は基板2に軸固定部材3を介して固定された軸部材4と、この軸部材4の外周部に気体動圧空間5を介して回転可能に嵌合するほぼ中央部より外方へ突出する支持片6を有するSUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸受け部材7と、この軸受け部材7の支持片6より下部位置の外周部に固定されたバックヨーク8と、このバックヨーク8の外周部に位置するように、前記基板2に取付けられたコイル9と、前記軸受け部材7の支持片6の上部に円環状の部材10を介して取付けられた、該円環状の部材10と同系の材質を用いた多面鏡11と、この多面鏡11を押し圧固定する前記軸受け部材7の上部外周部に嵌合された多面鏡押え12と、前記円環状の部材10の先端下部より下方へ突出するように取付けられたロータケース13と、このロータケース13の前記コイル9と対向する内壁面に取付けられた永久磁石14とで構成され、前記軸部材4は図3および図4に示すようにポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、超高分子ポリエチレン、好ましくは更に耐熱が高いポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ等のベース樹脂に使用目的に応じた比率が選択される摺動性改善補助材としてグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素、PTFE、窒化ホウ素、フッ化黒鉛等の潤滑材および錫、銀、銅、ニッケル等の金属あるいはこれらの合金を低融点金属(熱伝導性能向上)、必要に応じてカーボンファイバー、チタン酸カリウム繊維等の補強材を混錬させた樹脂材でSUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸部材本体4aの外周部に軸部本体15を被膜成型し、この摺動軸受面16になる部位のスキン層17を切削や研磨等で除去して、摺動性改善補助材が表面に露出させたものである。
なお、前記軸部材4に気体動圧溝を形成する場合にはスキン層17を除去して残る軸部本体15の膜厚は40ミクロン前後になるようにする。また、軸受け部材7の内壁面に気体動圧溝を形成する場合にはスキン層17を除去して残る軸部本体15の膜厚は10ミクロン程度でよい。
また、軸部材本体4aと軸部本体15とを軸部本体15の材質を用いて一体形成したものを用いても良い。
【0015】
上記構成の気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1は、軸部材4のの軸受面16のスキン層17が除去されているため、繰り返しの回転停止動作においても、軸部材4の摺動性改善補助材が露出したの軸受面16と軸受け部材7とが接触するため、摺動粉が発生するスキン層が除去されているため、軸受けを損傷させたり、回転不能等の不具合を効率よく防止できる。
[発明を実施するための異なる形態]
【0016】
次に、図5ないし図17に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
図5ないし図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、SUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸部材4Bと、前記最良の第1の形態の軸部材と同様に軸受け本体7aの軸受面となる内壁面に被膜成形された軸受け部材本体18の軸受面19のスキン層20を除去した軸受け部材7Aと、この軸受け部材7Aに円環状の部材10Aを一体形成した点で、このように形成した軸受け部材7Aを用いて構成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Aにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
なお、ミラーがアルミ材であるため、軸受け部材7Aの軸受け本体7aもアルミ材を使用するのが好ましい。この場合、アルミ材にはアルマイト処理を行う。
また、軸受け本体7aと軸受け部材本体18とを軸受け部材本体18の材質を用いて一体形成したものを用いても良い。
【0018】
図9ないし図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、軸受け部材7B
を基板2に固定し、スキン層17が除去された軸部材4Aの上部外周部にハブ21を固定し、該ハブ21に多面鏡11、バックヨーク8、永久磁石14を取付けたロータケース13を取付けた点で、このように構成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Bにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0019】
図12ないし図14に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、軸受け部材本体18Aの摺動面19のスキン層20を除去した軸受け部材7Cを用いた点で、このように形成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Cにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られる。
【0020】
図15ないし図17に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第2の形態と主に異なる点は、非磁性のSUS303、304
を用いた軸部材4Cと、青銅系焼結金属で形成された軸受け本体7aを用いた軸受け部材7Dを用いた点で、このように形成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Dにしても、前記本発明を実施するための第2の形態と同様な作用効果が得られるとともに、マグネットを用いたスラスト軸受に悪影響を与えるのを効率良く防止することができる。。
本発明を実施する形態ではアルマイト処理した軸部材4Cと、アルミ材で形成した軸受け本体7aの軸受面にベース樹脂に摺動性改善補助材や補強材を混錬させた樹脂材で被膜成形した軸受け部材本体18を形成した軸受け部材7Dであっても良い。
また、この軸受け部材7Dにハブを一体形成しても良い。
さらに、青銅系焼結金属の代わりに黄銅系金属を用いることもできる。
【0021】
なお、前記本発明を実施するための各形態ではポリゴンスキャナモータに気体動圧軸受けを設けたものについて説明したが、ポリゴンスキャナモータ以外の気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ等のモータにも同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータを製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の平面図。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図。
【図3】本発明を実施するための最良の第1の形態の軸部材の説明図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態の軸部材の製造工程の説明図。
【図5】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【図6】図5の6−6線に沿う断面図。
【図7】本発明を実施するための第2の形態の軸受け部材の説明図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の軸受け部材の製造工程の説明図。
【図9】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の軸部材の製造工程の説明図。
【図12】本発明を実施するための第4の形態の平面図。
【図13】図12の13−13線に沿う断面図。
【図14】本発明を実施するための第4の形態の軸受け部材の製造工程の説明図。
【図15】本発明を実施するための第5の形態の平面図。
【図16】図15の16−16線に沿う断面図。
【図17】本発明を実施するための第5の形態の軸受け部材の説明図。
【符号の説明】
【0024】
1、1A、1B、1C、1D:気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ、
2:基板、 3:軸固定部材、
4、4A、4B、4C:軸部材、5:気体動圧空間、
6:支持片、
7、7A、7B、7C、7D:軸受け部材、
8:バックヨーク、 9:コイル、
10、10A:円環状の部材、 11:多面鏡、
12:多面鏡押え、 13:ロータケース、
14:永久磁石、 15:軸部材本体、
16:摺動面、 17:スキン層、
18:軸受け部材本体、 19:軸受面、
20:スキン層、 21:ハブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は高速回転で耐久性に優れた低騒音の情報機器、画像機器、計測機器に用いられる気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の気体動圧軸受けは経済性に優れ、かつ無潤滑状態においても要求される機能寿命を満足させるために、軸およびスリーブのうちの少なくとも一方が無機充填材および繊維状補強材を含有する樹脂組成物で成型されたものが使用されている。
【0003】
しかしながら、このような樹脂組成物で成型されたものは、表面が樹脂材だけのスキン層が形成されるため、繰り返しの回転停止動作において、初期的に摺動粉が発生し、やがては摺動部に詰まり、軸受けの損傷や回転不能等の不具合が生じるという欠点があった。
【特許文献1】特開平9−32851
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、繰り返しの回転停止動作においても摺動粉が発生するのを効率よく阻止して、スムーズに回転させることができる気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータを提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成している。
【0007】
本発明は気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受けのいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、この軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたものを用いてポリゴンスキャナモータ等のモータを構成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0009】
(1)軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させて気体動圧軸受けを構成しているので、繰り返しの回転停止動作においても、摺動粉になりやすいスキン層が除去されているため、摺動粉の発生を効率よく阻止することができる。
したがって、軸受けを損傷させたり、回転不能等の不具合を効率よく防止することができる。
【0010】
(2)前記(1)によって、の軸受面になる部位のスキン層を除去しているため、回転停止時には摺動性改善補助材が表面に露出した部位との接触となり、損傷なくスムーズに回転させることができる。
【0011】
(3)前記(1)によって、スキン層を除去する加工でよいので、容易に実施することができる。
【0012】
(4)請求項2、3、4、5も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図4に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は本発明の気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータ、本実施の形態では、ポリゴンスキャナモータで、このポリゴンスキャナモータ1は基板2に軸固定部材3を介して固定された軸部材4と、この軸部材4の外周部に気体動圧空間5を介して回転可能に嵌合するほぼ中央部より外方へ突出する支持片6を有するSUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸受け部材7と、この軸受け部材7の支持片6より下部位置の外周部に固定されたバックヨーク8と、このバックヨーク8の外周部に位置するように、前記基板2に取付けられたコイル9と、前記軸受け部材7の支持片6の上部に円環状の部材10を介して取付けられた、該円環状の部材10と同系の材質を用いた多面鏡11と、この多面鏡11を押し圧固定する前記軸受け部材7の上部外周部に嵌合された多面鏡押え12と、前記円環状の部材10の先端下部より下方へ突出するように取付けられたロータケース13と、このロータケース13の前記コイル9と対向する内壁面に取付けられた永久磁石14とで構成され、前記軸部材4は図3および図4に示すようにポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、超高分子ポリエチレン、好ましくは更に耐熱が高いポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ等のベース樹脂に使用目的に応じた比率が選択される摺動性改善補助材としてグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素、PTFE、窒化ホウ素、フッ化黒鉛等の潤滑材および錫、銀、銅、ニッケル等の金属あるいはこれらの合金を低融点金属(熱伝導性能向上)、必要に応じてカーボンファイバー、チタン酸カリウム繊維等の補強材を混錬させた樹脂材でSUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸部材本体4aの外周部に軸部本体15を被膜成型し、この摺動軸受面16になる部位のスキン層17を切削や研磨等で除去して、摺動性改善補助材が表面に露出させたものである。
なお、前記軸部材4に気体動圧溝を形成する場合にはスキン層17を除去して残る軸部本体15の膜厚は40ミクロン前後になるようにする。また、軸受け部材7の内壁面に気体動圧溝を形成する場合にはスキン層17を除去して残る軸部本体15の膜厚は10ミクロン程度でよい。
また、軸部材本体4aと軸部本体15とを軸部本体15の材質を用いて一体形成したものを用いても良い。
【0015】
上記構成の気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1は、軸部材4のの軸受面16のスキン層17が除去されているため、繰り返しの回転停止動作においても、軸部材4の摺動性改善補助材が露出したの軸受面16と軸受け部材7とが接触するため、摺動粉が発生するスキン層が除去されているため、軸受けを損傷させたり、回転不能等の不具合を効率よく防止できる。
[発明を実施するための異なる形態]
【0016】
次に、図5ないし図17に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
図5ないし図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、SUS系金属、焼結金属、青銅系焼結金属、黄銅系金属、アルミ材などで形成された軸部材4Bと、前記最良の第1の形態の軸部材と同様に軸受け本体7aの軸受面となる内壁面に被膜成形された軸受け部材本体18の軸受面19のスキン層20を除去した軸受け部材7Aと、この軸受け部材7Aに円環状の部材10Aを一体形成した点で、このように形成した軸受け部材7Aを用いて構成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Aにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
なお、ミラーがアルミ材であるため、軸受け部材7Aの軸受け本体7aもアルミ材を使用するのが好ましい。この場合、アルミ材にはアルマイト処理を行う。
また、軸受け本体7aと軸受け部材本体18とを軸受け部材本体18の材質を用いて一体形成したものを用いても良い。
【0018】
図9ないし図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、軸受け部材7B
を基板2に固定し、スキン層17が除去された軸部材4Aの上部外周部にハブ21を固定し、該ハブ21に多面鏡11、バックヨーク8、永久磁石14を取付けたロータケース13を取付けた点で、このように構成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Bにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0019】
図12ないし図14に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、軸受け部材本体18Aの摺動面19のスキン層20を除去した軸受け部材7Cを用いた点で、このように形成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Cにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られる。
【0020】
図15ないし図17に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第2の形態と主に異なる点は、非磁性のSUS303、304
を用いた軸部材4Cと、青銅系焼結金属で形成された軸受け本体7aを用いた軸受け部材7Dを用いた点で、このように形成した気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ1Dにしても、前記本発明を実施するための第2の形態と同様な作用効果が得られるとともに、マグネットを用いたスラスト軸受に悪影響を与えるのを効率良く防止することができる。。
本発明を実施する形態ではアルマイト処理した軸部材4Cと、アルミ材で形成した軸受け本体7aの軸受面にベース樹脂に摺動性改善補助材や補強材を混錬させた樹脂材で被膜成形した軸受け部材本体18を形成した軸受け部材7Dであっても良い。
また、この軸受け部材7Dにハブを一体形成しても良い。
さらに、青銅系焼結金属の代わりに黄銅系金属を用いることもできる。
【0021】
なお、前記本発明を実施するための各形態ではポリゴンスキャナモータに気体動圧軸受けを設けたものについて説明したが、ポリゴンスキャナモータ以外の気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ等のモータにも同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は気体動圧軸受けおよび気体動圧軸受けを備えるカラーホイール用モータ、ファンモータ、ポリゴンスキャナモータ等のモータを製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の平面図。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図。
【図3】本発明を実施するための最良の第1の形態の軸部材の説明図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態の軸部材の製造工程の説明図。
【図5】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【図6】図5の6−6線に沿う断面図。
【図7】本発明を実施するための第2の形態の軸受け部材の説明図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の軸受け部材の製造工程の説明図。
【図9】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の軸部材の製造工程の説明図。
【図12】本発明を実施するための第4の形態の平面図。
【図13】図12の13−13線に沿う断面図。
【図14】本発明を実施するための第4の形態の軸受け部材の製造工程の説明図。
【図15】本発明を実施するための第5の形態の平面図。
【図16】図15の16−16線に沿う断面図。
【図17】本発明を実施するための第5の形態の軸受け部材の説明図。
【符号の説明】
【0024】
1、1A、1B、1C、1D:気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ、
2:基板、 3:軸固定部材、
4、4A、4B、4C:軸部材、5:気体動圧空間、
6:支持片、
7、7A、7B、7C、7D:軸受け部材、
8:バックヨーク、 9:コイル、
10、10A:円環状の部材、 11:多面鏡、
12:多面鏡押え、 13:ロータケース、
14:永久磁石、 15:軸部材本体、
16:摺動面、 17:スキン層、
18:軸受け部材本体、 19:軸受面、
20:スキン層、 21:ハブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたことを特徴とする気体動圧軸受け。
【請求項2】
気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受けのいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたものを用いたことを特徴とするポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項3】
気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面となる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させるとともに、該気体動圧軸受けの回転体をなす側の多面鏡を搭載する部分には、該多面鏡と同系の材質を用いた円環状の部材を配置したことを特徴とするポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項4】
軸部材あるいは軸受け部材の全体あるいは少なくとも軸受面はポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、超高分子ポリエチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ等のいずれかのベース樹脂に摺動性改善補助材としてカーボンファイバー、チタン酸カリウム繊維等の補強材と、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素、PTFE、窒化ホウ素、フッ化黒鉛等の潤滑材と、錫、銀、銅、ニッケル等の金属あるいはこれらの合金等の熱伝導性能向上のための低融点金属とを混錬させて被膜成型したものであることを特徴とする請求項1、2、3いずれかに記載の気体動圧軸受けおよびポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項5】
円環状の部材と気体動圧軸受けの回転体をなす側とは接着剤による固定あるいは一体成型したことを特徴とする請求項3記載のポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項1】
軸部材およびこの軸部材に気体動圧空間を介して嵌合する軸受け部材の相対的な回転により動圧を発生し、回転を支承する気体動圧軸受けにおいて、前記軸部材と軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたことを特徴とする気体動圧軸受け。
【請求項2】
気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受けのいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面になる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させたものを用いたことを特徴とするポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項3】
気体動圧軸受けを備えるポリゴンスキャナモータ等のモータにおいて、該ポリゴンスキャナモータ等のモータの気体動圧軸受けの軸部材あるいは軸受け部材のいずれか一方の全体あるいは少なくとも軸受面を、摺動性改善補助材を混錬させた樹脂材で被膜成型し、の軸受面となる部分のスキン層を除去して摺動性改善補助材を表面に露出させるとともに、該気体動圧軸受けの回転体をなす側の多面鏡を搭載する部分には、該多面鏡と同系の材質を用いた円環状の部材を配置したことを特徴とするポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項4】
軸部材あるいは軸受け部材の全体あるいは少なくとも軸受面はポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、超高分子ポリエチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、エポキシ等のいずれかのベース樹脂に摺動性改善補助材としてカーボンファイバー、チタン酸カリウム繊維等の補強材と、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素、PTFE、窒化ホウ素、フッ化黒鉛等の潤滑材と、錫、銀、銅、ニッケル等の金属あるいはこれらの合金等の熱伝導性能向上のための低融点金属とを混錬させて被膜成型したものであることを特徴とする請求項1、2、3いずれかに記載の気体動圧軸受けおよびポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【請求項5】
円環状の部材と気体動圧軸受けの回転体をなす側とは接着剤による固定あるいは一体成型したことを特徴とする請求項3記載のポリゴンスキャナモータ等のモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−162843(P2007−162843A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360540(P2005−360540)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000105659)日本電産コパル電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000105659)日本電産コパル電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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