説明

気体圧縮機

【課題】気体圧縮機において、圧縮機本体に油分離器に機能を備えたものとする。
【解決手段】圧縮機本体60のうち吐出室21に隣接したリヤサイドブロック20に、吐出チャンバ45から吐出した高圧の冷媒ガスGを吐出室21に吐出させる吐出通路28が形成され、吐出通路28は、そこを通る冷媒ガスGに遠心力を作用させるように螺旋状に延び、吐出通路28には、螺旋状の吐出通路28において遠心力により冷媒ガスGから分離された冷凍機油Rを吐出室21に送る油排出孔28eが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体圧縮機に関し、詳細には、高圧の圧縮気体から油分を分離する手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスなどの供給された気体を高圧の圧縮気体に圧縮する圧縮室を有する気体圧縮機(コンプレッサ)が用いられている。
【0003】
ここで、一般的なコンプレッサは、冷媒ガスを圧縮し高圧の圧縮冷媒ガスとして吐出する圧縮機本体と、この圧縮機本体から吐出された圧縮冷媒ガスから冷凍機油等の油分を分離する油分離器と、これら圧縮機本体および油分離器を覆うハウジングとを備えた構成となっている。
【0004】
圧縮機本体を収容したハウジングの内部には、圧縮機本体の圧縮室から吐出された高圧の圧縮冷媒ガスを一時的に通過させる吐出空間が形成されているが、この吐出空間には前述した油分離器も配設されるため、吐出空間は比較的大きな容積を必要とする(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127441号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、コンプレッサにおける吐出空間は、冷媒ガスをコンプレッサから外部に吐出する機能の面からは、上述の先行技術文献に示されたほどの容積を必要とはしない。
【0007】
しかし、その先行技術文献に示されたコンプレッサにおける吐出空間は、油分離器の占有空間を確保するために比較的大きな容積となっている。
【0008】
そして、吐出空間の容積を大きくすることは、すなわちハウジングの外形を大きくすることになり、結果的にコンプレッサ自体の大きさを大きくすることになる。
【0009】
一方、コンプレッサは、例えば車両に搭載されるなどするものをはじめとして、小型化、軽量化が望まれている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、吐出空間を小さくして全体の大きさを小さくするとともに、軽量化することができる気体圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る気体圧縮機は、圧縮機本体に油分を分離させる構造(吐出通路)を形成することで、圧縮機本体とは別体の油分離器を備えないものとして軽量化するとともに、別体の油分離器が占有していた吐出空間の容積を減らすことでハウジングを小さくし、気体圧縮機自体を小型化するものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、供給された気体を高圧の圧縮気体に圧縮する圧縮室を有する圧縮機本体と、前記圧縮機本体を覆うとともに前記圧縮機本体から吐出した前記高圧の圧縮気体を通過させる吐出空間を形成するハウジングとを備え、前記圧縮機本体のうち前記吐出空間に隣接した壁部に、前記圧縮室から吐出した高圧の圧縮気体を前記吐出空間に吐出させる吐出通路が形成され、前記吐出通路は、そこを通る前記圧縮気体に遠心力を作用させるように螺旋状に延び、前記吐出通路には、前記螺旋状の吐出通路において前記遠心力により前記圧縮気体から分離された油分を前記吐出空間に送る油排出孔が接続されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る気体圧縮機においては、前記吐出通路が、前記圧縮機本体の壁部に形成された、外周輪郭が螺旋状に延びる溝を有する吐出孔を、この吐出孔の前記溝間の部分に当接する円柱状の栓によって塞いで形成された螺旋状の溝であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る気体圧縮機においては、前記吐出通路が、前記圧縮機本体の壁部に形成された円柱状の吐出孔を、この吐出孔の円柱状の周面に接する螺旋状に延びた壁面を有する栓によって塞いで形成された螺旋状の通路であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る気体圧縮機によれば、圧縮機本体に油分離の構造(吐出通路)を持たせることで、圧縮機本体とは別体で吐出空間に設けられていた油分離器を不要とし、これにより吐出空間を小さくして気体圧縮機全体の大きさを小さくするとともに、軽量化することができる。
【0016】
また、吐出通路が、圧縮機本体の壁部に形成された、外周輪郭が螺旋状に延びる溝を有する吐出孔を、この吐出孔の前記溝間の部分に当接する円柱状の栓によって塞いで形成された螺旋状の溝である好ましい構成の気体圧縮機によれば、螺旋状の吐出通路を簡単な構成で形成することができる。
【0017】
また、吐出通路が、圧縮機本体の壁部に形成された円柱状の吐出孔を、この吐出孔の円柱状の周面に接する螺旋状に延びた壁面を有する栓によって塞いで形成された螺旋状の通路である好ましい構成の気体圧縮機によれば、螺旋状の吐出通路を簡単な構成で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサを示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面を示す断面図である。
【図3】図2におけるB−B線に沿った断面を示す断面図であり、(a)は吐出通路の一実施形態、(b)は吐出通路の他の実施形態、をそれぞれ示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の気体圧縮機に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサ100を示す縦断面図、図2は図1におけるA−A線に沿った断面を示す断面図、図3は図2におけるB−B線に沿った断面を示す断面図である。
【0021】
図示のコンプレッサ100は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空気調和システム(以下、単に空調システムという。)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する。)とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられている。
【0022】
そして、コンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から取り入れた気体状の冷却媒体としての冷媒ガスG(気体)を圧縮し、この圧縮された冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスGを周囲の空気等との間で熱交換することにより冷媒ガスGから放熱させて液化させ、高圧で液状の冷媒として膨張弁に送出する。
【0023】
高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、この冷媒の気化に伴う熱交換により蒸発器周囲の空気を冷却する。
【0024】
気化した低圧の冷媒ガスGは、コンプレッサ100に戻って圧縮され、上記工程を繰り返す。
【0025】
コンプレッサ100は、圧縮機本体60をハウジング10の内部に収容している。
【0026】
ハウジング10は、一端が閉じられ、他端が開放された略筒状体を呈したケース11と、このケース11の開放された他端を覆うフロントヘッド12とからなり、フロントヘッド12がケース11に組み付けられた状態で、ハウジング10の内部に、圧縮機本体60を収容する空間が形成される。
【0027】
フロントヘッド12には、蒸発器から供給された低圧の冷媒ガスGを内部に取り込む吸入ポート12aが形成されており、ケース11には、圧縮機本体60で圧縮された高圧の冷媒ガスGを凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されている。
【0028】
圧縮機本体60は、軸回りに回転駆動される回転軸51と、この回転軸51と一体的に回転する円柱状のロータ50と、ロータ50の外周面の外方を取り囲む断面輪郭略楕円形状の内周面49を有するとともに両端が開放されたシリンダ40と、ロータ50の外周に、外方に向けて突出可能に埋設され、その突出側の先端がシリンダ40の内周面49の輪郭形状に追従するように突出量が可変とされ、回転軸51回りに等角度間隔でロータ50に埋設された5枚の板状のベーン58と、シリンダ40の両側開放端面の外側からそれぞれ開放端面を覆うように固定されたフロントサイドブロック30およびリヤサイドブロック20とからなる。
【0029】
そして、2つのサイドブロック20,30、ロータ50、シリンダ40、および回転軸51の回転方向に沿って相前後する2つのベーン58,58によって画成された各圧縮室48の容積が、回転軸51の回転にしたがって増減を繰り返すことにより、フロントサイドブロック30を介して各圧縮室48に吸入された冷媒ガスGを圧縮して、リヤサイドブロック20を介して吐出するように構成されている。
【0030】
なお、ロータ50の両端面側からそれぞれ突出した回転軸51の部分のうち一方の部分は、フロントサイドブロック30の軸受部に軸支されるとともに、フロントヘッド12を貫通して外方まで延び、図示しない外部の動力が伝達される駆動力伝達部80に連結されている。
【0031】
回転軸51の突出部分のうち他方の側は、リヤサイドブロック20の軸受部により軸支されている。
【0032】
ケース11と圧縮機本体60とによって形成された吐出室21(吐出空間)は、圧縮機本体60から吐出した高圧の冷媒ガスGが吐出されて通過する空間であり、前述の吐出ポート11aはこの吐出室21に通じている。
【0033】
吐出室21の底部には、冷凍機油R(油分)が溜められていて、この冷凍機油Rは、ベーン58を突出させるための背圧や圧縮室48の潤滑油等として、リヤサイドブロック20等に形成された導油路を通って圧縮機本体60の内部に供給されている。
【0034】
圧縮機本体60のうち、吐出室21に隣接したリヤサイドブロック20(壁部)には、圧縮室48から吐出チャンバ45に吐出した高圧の冷媒ガスGを吐出室21に吐出させる吐出孔28aが形成され、この吐出孔28aには、図3(a)に示すように、外周輪郭がナットの雌ねじと同様の螺旋状に延びる溝28bが形成されている。
【0035】
そして、この吐出孔28aは、その螺旋状の溝28b間の部分(溝28bと溝28bとに挟まれた凸の頂点部分)に接する円柱状の栓28cによって塞がれていて、その螺旋状の溝28bの部分だけが、冷媒ガスGの通る吐出通路28(図3(a)において破線で示す。)となる。
【0036】
栓28cは、吐出室21に露出した側の円柱状の端部が、円柱状の軸部(溝28b間の部分に接する部分)よりも直径が大きく形成されていて、その端部の外周面が吐出孔28aの内周面に密接するとともに、その端部の中心よりも上側の部分には、吐出室21と吐出通路28とを連通させる冷媒ガス孔28dが形成されている。
【0037】
ここで、冷媒ガスGが螺旋状の吐出通路28を通過するとき、冷媒ガスGには遠心力が作用し、この遠心力により、冷媒ガスGに混在していた冷凍機油Rが遠心分離される。
【0038】
そして、この冷凍機油Rが遠心分離された後の冷媒ガスGは、上述した冷媒ガス孔28dを通って吐出室21に吐出される。
【0039】
一方、リヤサイドブロック20の吐出通路28の、吐出室21に近い部分の底面には、吐出室21に連通した油排出孔28eが形成されていて、冷媒ガスGから遠心分離された冷凍機油Rは、吐出通路28に接続された油排出孔28eを通って吐出室21に送られ、吐出室21の底部に溜められる。
【0040】
なお、冷凍機油Rが分離され、冷媒ガス孔28dを通って吐出室21に吐出された冷媒ガスGは、ケース11の吐出ポート11aを通って凝縮器に送出される。
【0041】
以上のように構成された本実施形態のコンプレッサ100によれば、圧縮機本体60に形成された螺旋状に延びた吐出通路28が油分離器として機能するため、圧縮機本体60とは別体で吐出室21に油分離器を備える必要がなく、これにより吐出室21を小さくしてコンプレッサ100全体の大きさを小さくするとともに軽量化することができる。
【0042】
また、上述した螺旋状の吐出通路28は、その螺旋の中心軸がリヤサイドブロック20の厚さ方向に沿って形成されているため、コンパクトに構成することができる。
【0043】
さらに、吐出通路28を、外周輪郭が螺旋状に延びる溝を有する吐出孔28aを円柱状の栓28cによって塞ぐことで螺旋状に形成したことにより、螺旋状の吐出通路を単一の部材で形成するよりも簡単に形成することができる。
【0044】
上述した実施形態のコンプレッサ100は、螺旋状の吐出通路28が、外周輪郭が螺旋状に延びた吐出孔28aとこの吐出孔28aのうち溝28bを除いた部分を塞ぐ円柱状の栓28cとによって形成されたものであるが、本発明の気体圧縮機における螺旋状の吐出通路はこの形態のものに限定されるものではなく、吐出通路が最終的に螺旋状に形成されたものであれば、如何なる構造によって形成してもよい。
【0045】
例えば、図3(b)は、円柱状の吐出孔28fと、この吐出孔28fの円柱状の周面に接する螺旋状に延びた壁面を有する栓28gとによって、その壁面で画された(仕切られた)螺旋状の部分が、冷媒ガスGの通る吐出通路28(図3(b)において、破線で示す。)となる。
【0046】
栓28gは、吐出室21に露出した側の円柱状の端部の端部の外周面が吐出孔28fの内周面に密接するとともに、その端部の中心よりも上側の部分には、吐出室21と吐出通路28とを連通させる冷媒ガス孔28dが形成されている。
【0047】
ここで、冷媒ガスGが螺旋状の吐出通路28を通過するとき、冷媒ガスGには遠心力が作用し、この遠心力により、冷媒ガスGに混在していた冷凍機油Rが遠心分離される。
【0048】
そして、この冷凍機油Rが遠心分離された後の冷媒ガスGは、上述した冷媒ガス孔28dを通って吐出室21に吐出される。
【0049】
一方、リヤサイドブロック20の吐出通路28の、吐出室21に近い部分の底面には、吐出室21に連通した油排出孔28eが形成されていて、冷媒ガスGから遠心分離された冷凍機油Rは、吐出通路28に接続された油排出孔28eを通って吐出室21に送られ、吐出室21の底部に溜められる。
【0050】
なお、冷凍機油Rが分離され、冷媒ガス孔28dを通って吐出室21に吐出された冷媒ガスGは、ケース11の吐出ポート11aを通って凝縮器に送出される。
【0051】
以上のように構成された本実施形態のコンプレッサ100によれば、圧縮機本体60に形成された螺旋状に延びた吐出通路28が油分離器として機能するため、圧縮機本体60とは別体で吐出室21に油分離器を備える必要がなく、これにより吐出室21を小さくしてコンプレッサ100全体の大きさを小さくするとともに、軽量化することができる。
【0052】
また、上述した螺旋状の吐出通路28は、その螺旋の中心軸がリヤサイドブロック20の厚さ方向に沿って形成されているため、コンパクトに構成することができる。
【0053】
さらに、吐出通路28を、円柱状の吐出孔28fを螺旋状に延びた壁面を有する栓28gによって塞ぐことで螺旋状に形成したことにより、螺旋状の吐出通路を単一の部材で形成するよりも簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0054】
20 リヤサイドブロック(圧縮機本体の圧縮空間に隣接した壁部)
21 吐出室(吐出空間)
28 吐出通路
28a 吐出孔
28b 溝
28c 栓
28d 冷媒ガス孔
28e 油排出孔
45 吐出チャンバ
G 冷媒ガス(気体)
R 冷凍機油(油分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された気体を高圧の圧縮気体に圧縮する圧縮室を有する圧縮機本体と、前記圧縮機本体を覆うとともに前記圧縮機本体から吐出した前記高圧の圧縮気体を通過させる吐出空間を形成するハウジングとを備え、
前記圧縮機本体のうち前記吐出空間に隣接した壁部に、前記圧縮室から吐出した高圧の圧縮気体を前記吐出空間に吐出させる吐出通路が形成され、
前記吐出通路は、そこを通る前記圧縮気体に遠心力を作用させるように螺旋状に延び、
前記吐出通路には、前記螺旋状の吐出通路において前記遠心力により前記圧縮気体から分離された油分を前記吐出空間に送る油排出孔が接続されていることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
前記吐出通路は、前記圧縮機本体の壁部に形成された、外周輪郭が螺旋状に延びる溝を有する吐出孔を、この吐出孔の前記溝間の部分に当接する円柱状の栓によって塞いで形成された螺旋状の溝であることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
【請求項3】
前記吐出通路は、前記圧縮機本体の壁部に形成された円柱状の吐出孔を、この吐出孔の円柱状の周面に接する螺旋状に延びた壁面を有する栓によって塞いで形成された螺旋状の通路であることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122347(P2012−122347A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271472(P2010−271472)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】