説明

気化装置、水素製造装置および燃料電池システム

【課題】液体を気化する際に液体の流量の脈動を抑制可能な気化装置を提供する。気化させた液体燃料を改質して水素含有ガスを得る際に、水素含有ガスの流量の脈動を抑制可能な水素製造装置および燃料電池システムを提供する。
【解決手段】液体を気化する気化器と該気化器に液体を供給する液体供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該液体供給ラインに接続された気化装置。この気化装置を有する水素製造装置と燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を気化するための気化装置に関する。また、灯油等の液体燃料を用いて水素を製造する水素製造装置、このような水素製造装置から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、通常、灯油や都市ガスなどの改質原料を改質して水素含有ガス(改質ガス)を製造し、得られた水素含有ガスと空気とをセルスタックに供給し、電気化学的に反応させて発電を行う。
【0003】
改質には、水蒸気改質や部分酸化改質など種々の反応が利用されるが、いずれの反応を行う場合も改質原料が液体燃料であるときには液体燃料を気化したうえで改質器に供給する。
【0004】
一般に、液体を気化する際、局所的な突沸により圧力変動が生じ、それに伴い液体および気化したガスの流量変動が生じる。燃料電池システムにおいては、液体燃料が気化する際に生じる圧力変動およびそれに伴う流量変動が、改質ガスの流量変動および燃料電池の電圧変動に繋がる。
【0005】
燃料電池において、電流密度が大きいほどこのような電圧変動が大きくなる。従って、改質ガスの流量変動が大きい場合には、燃料電池から大電流を取り出すことが困難になり、その結果出力密度や発電効率が低下する。また電圧変動が大きいと、セルの劣化が早まる可能性もある。
【0006】
特許文献1には、水素生成器において、原料ガスの流れを利用して水の蒸発速度を一定にし、水が気化する際の体積膨張による圧力変動を抑えることが記載される。
【特許文献1】特開2002−211905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、液体燃料が気化する際に生じる圧力変動およびそれに伴う流量変動が、改質ガスの流量変動および燃料電池の電圧変動に繋がる。また、水(液体)を気化させて水蒸気を得、この水蒸気を用いて燃料を改質する場合に、水が気化する際に生じる圧力変動および流量変動が、改質ガスの流量変動および燃料電池の電圧変動に繋がることもある。
【0008】
本発明の目的は、液体を気化する際に、液体の流量の脈動を抑制可能な気化装置を提供することである。もって、液体が気化したガスの流量の脈動を抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の別の目的は、液体燃料を気化したうえで改質して、また、水を気化して得た水蒸気を用いて燃料を改質して、水素含有ガスを製造する際に、水素含有ガスの流量の脈動を抑制可能な水素製造装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、液体燃料を気化したうえで改質して、また、水を気化して得た水蒸気を用いて燃料を改質して、水素含有ガスを製造し、得られた水素含有ガスを用いて発電を行う際に、水素含有ガスの流量の脈動を抑制可能で、もって電圧変動を抑制可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、液体を気化する気化器と、該気化器に液体を供給する液体供給ラインとを有し、
気体が封入された容器が該液体供給ラインに接続された気化装置が提供される。
【0012】
本発明により、液体燃料を気化する気化器と該気化器に液体燃料を供給する液体燃料供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該液体燃料供給ラインに接続された気化装置;および
該気化装置から得られる気化された液体燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器
を有する水素製造装置が提供される。
【0013】
本発明により、液体燃料を気化する気化器と該気化器に液体燃料を供給する液体燃料供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該液体燃料供給ラインに接続された気化装置;
該気化装置から得られる気化された液体燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器;および
該改質器から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池
を有する燃料電池システムが提供される。
【0014】
本発明により、水を気化する気化器と該気化器に水を供給する水供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該水供給ラインに接続された気化装置;および
該気化装置から得られる気化された水で燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器
を有する水素製造装置が提供される。
【0015】
本発明により、水を気化する気化器と該気化器に水を供給する水供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該水供給ラインに接続された気化装置;
該気化装置から得られる気化された水で燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器;および該改質器から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池
を有する燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、液体を気化する際に、液体の流量の脈動を抑制可能な気化装置が提供される。もって、液体が気化したガスの流量の脈動を抑制することが可能となる。
【0017】
本発明により、液体燃料を気化したうえで改質して、また、水を気化して得た水蒸気を用いて燃料を改質して、水素含有ガスを製造する際に、水素含有ガスの流量の脈動を抑制可能な水素製造装置が提供される。
【0018】
本発明により、液体燃料を気化したうえで改質して、また、水を気化して得た水蒸気を用いて燃料を改質して、水素含有ガスを製造し、得られた水素含有ガスを用いて発電を行う際に、水素含有ガスの流量の脈動を抑制可能で、もって電圧変動を抑制可能な燃料電池システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を用いて本発明について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0020】
〔気化装置〕
図1に本発明の気化装置の一形態を示す。
【0021】
タンクやパイプライン等の供給源から供給される液体は、気化器2に液体を供給するための液体供給ライン1を通って気化器2に供給される。液体供給ライン1には、必要に応じて液体昇圧用のポンプ3が設けられる。気化器において液体が気化され、液体が気化したガスが得られる。
【0022】
液体供給ライン1に、気体が封入された容器(以下、気体封入容器という。)5が接続される。ここでは、気体封入容器は、分岐ライン4を介して液体供給ラインに接続される。
【0023】
気体封入容器には、分岐ラインとは別に、気体封入のために用いるライン6が接続される。このライン6には流路開閉手段7が設けられる。流路開閉手段7を閉じることで、気体封入容器内に気体を封入することができる。流路開閉手段としては、ストップバルブ、ブランクカバー、ブランクフランジなど、流路を開閉可能な公知のものを適宜用いることができる。ライン6および流路開閉手段7は必ずしも設ける必要はないが、操作の容易性の観点からライン6および流路開閉手段7を設けることが好ましく、流路開閉手段としてストップバルブを用いることがより好ましい。
【0024】
このような気化装置は、次のようにして使用することができる。まず、流路開閉手段7を開いておき、ポンプ3を起動して液体供給ライン1に液体を流通させ、分岐ライン4から気体封入容器5内へと液面を上昇させる。液面が所定の位置になったら流路開閉手段7を閉めれば、気体封入容器に外気(大気)が封入される。このとき、必要に応じて気化器を起動しておく。
【0025】
あるいは、図3に示すように、流路開閉手段7以降に、流路切替手段11、予備の気体封入容器8、流路開閉手段9、コンプレッサー等の気体昇圧手段10を設け、さらに、液体供給ライン1の気体封入容器との接続部より下流に流路開閉手段12、流路切替手段13を設けて使用することもできる。この場合、まず、流路開閉手段7を開き、流路切替手段11をライン16とパージライン18が流通するよう切替え、流路開閉手段9を閉じ、流路開閉手段12を閉じ、流路切替手段13をライン19とパージライン21が流通するよう切替えておく。この後、ポンプ3を起動して液体燃料供給ライン1からパージライン18までを液体で満たし、ポンプ3を停止する。この後、流路開閉手段9を開き、気体昇圧手段10で予め補給する気体量に応じて定めた圧力まで気体を昇圧後、流路開閉手段9を閉じ、気体昇圧手段10を停止し、流路切替手段11をライン16とライン17が流通するよう切替え、流路開閉手段12を開く。このようにすることで、流路切替手段11から流路開閉手段9までの間に溜まった気体が気体封入容器5に流入し、流路開閉手段7を閉じることで気体が封入される。その後、流路切替手段13をライン19とライン20が流通するよう切替え、気化器へ液体を供給する際にはポンプ3を起動すればよい。
【0026】
気化させる液体への吸収や溶解により、封入気体の容積が減少する場合には、まず、流路開閉手段7が閉じられ、流路切替手段11がライン16とライン17が流通するようにされた状態で、流路開閉手段9を閉じ、流路開閉手段12を閉じ、流路切替手段13をライン19とパージライン21が流通するよう切替えておく。この後、流路開閉手段9を開き、気体昇圧手段10で予め補給する気体量に応じて定めた圧力まで気体を昇圧後、流路開閉手段9を閉じ、気体昇圧手段10を停止し、流路開閉手段7と流路開閉手段12を開く。このようにすることで、流路開閉手段7から流路開閉手段9までの間に溜まった気体が気体封入容器に流入し、流路開閉手段7を閉じることで気体が封入される。
【0027】
図3の形態の場合、気相部へ供給する気体量は流路開閉手段7から流路開閉手段9までの流路容積(予備の気体封入容器8の容積も含む)と圧力で規定されるが、図4に示すように、流路切替手段7より上流に積算流量計測手段14、あるいは流量計測手段(図示せず)を設け、所定量の気体を流通する間のみ、気体昇圧手段10を作動させ、流路開閉手段7を開くことで、気相部へ供給する気体量を規定してもよい。この場合、まず、流路開閉手段7を開き、流路切替手段11をライン16とパージライン18が流通するよう切替え、流路開閉手段12を閉じ、流路切替手段13をライン19とパージライン21が流通するよう切替えておく。この後、ポンプ3を起動して液体燃料供給ライン1からパージライン18までを液体で満たし、ポンプ3を停止する。この後、流路切替手段11をライン16とライン17が流通するよう切替え、流路開閉手段12を開き、気体昇圧手段10を作動させ、所定量の気体が流通後、気体昇圧手段10を停止し、流路開閉手段7を閉じる。このようにすることで、所定量の気体が気体封入容器5に封入される。その後、流路切替手段13をライン19とライン20が流通するよう切替え、気化器へ液体を供給する際にはポンプ3を起動すればよい。
【0028】
気化させる液体への吸収や溶解により、封入気体の容積が減少する場合には、まず、流路開閉手段7を閉じ、流路切替手段11をライン16とライン17が流通するよう切替え、流路開閉手段12を閉じ、流路切替手段13をライン19とパージライン21が流通するよう切替えておく。この後、流路開閉手段7と流路開閉手段12を開き、気体昇圧手段10を作動させ、所定量の気体が流通後、気体昇圧手段10を停止し、流路開閉手段7を閉じる。このようにすることで、所定量の気体が気体封入容器に封入される。
【0029】
流路切替手段としては、三方弁や、ストップバルブの組み合わせなど、流路を切り替え可能な公知のものを適宜用いることができる。
【0030】
積算流量計測手段としては、積算流量計など、積算流量を計測可能な公知の計測機器を適宜用いることができる。
【0031】
流量計測手段としては、流量計など、流量を計測可能な公知の計測機器を適宜用いることができる。この場合、流量計測手段で計測した流量と気体の流通時間とから、気体の通過量を知ることができる。
【0032】
図1では、気体封入容器5の内部に気相部5aと液相部5bとの境界面がある。しかし必ずしもこの限りではなく、液体供給ライン1から分岐した分岐ライン4内に、境界面があってもよい。このとき気体封入容器の内部は全て気相となる。
【0033】
また、図1に示すように液体供給ラインに分岐を設けて気体封入容器を接続する必要はなく、図2に示すように液体供給ラインの途中に気体封入容器を接続してもよい。要するに、封入された気体が、液体供給ラインを流通する液体と接していればよい。
【0034】
気体封入容器内の気相部5aの容積は、液体流量、もしくは液体が気化されたガス流量の許容される変動範囲に応じて適宜決めることができる。この際、気相部固有の振動周期が圧力変動周期より2倍以上大きくなるよう、容積を決めるのが望ましい。
【0035】
以下具体的に述べる。Pを封入気体の圧力[Pa]、ΔPを圧力(P)の変動幅[Pa]、Tpを圧力(P)の変動周期の1/2[s]、Aを気相部(5a)/液相部(5b)の境界面積[m2]、Vを封入気体の容積(気相部5aおよびライン6の内容積の和)[m3]、mを液体供給ライン(液体燃料供給ライン1もしくは後述の水供給ライン15。なお、ここで、液体燃料供給ライン1もしくは水供給ライン15は、ライン19および20も含む。)、分岐ライン4、液相部5b、気化器2中の液体質量の和[kg]、γを封入気体の比熱比[−]、ηを液体の粘性抵抗が流速に比例するとした場合の比例係数[Ns/m]とし、
【0036】
【数1】

【0037】
とすると、液体流量変動幅の減少量ΔFは以下の式で見積もることができる。
【0038】
【数2】

【0039】
また、気相部固有の振動周期Tは以下の式で、見積もることができる。
【0040】
【数3】

【0041】
以上の式より、気体を封入しない際の液体流量変動幅から液体流量変動幅の減少量(ΔF)を差し引いた値が許容値以下になり、かつ、好ましくは気相部固有の振動周期(T)が圧力変動周期(2Tp)の2倍以上となる気相部/液相部の境界面積、封入気体の容積を求め、気相部の容積を決めればよい。
【0042】
気化させる液体としては、気化器によって気化させることのできる公知の液体を適宜用いることができる。例えば、水や液体燃料を用いることができる。
【0043】
液体燃料としては、常温常圧(25℃、0.101MPa)で液体である可燃性物質を適宜使用できる。例えば、炭化水素類、アルコール類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。工業用あるいは民生用に安価に入手できる好ましい例として、メタノール、エタノール、ガソリン、灯油、軽油などを挙げることができる。なかでも灯油は工業用としても民生用としても入手容易であり、その取り扱いも容易である点で、好ましい。
【0044】
気体封入容器に封入する気体としては、使用する条件において、気化させる液体への吸収や溶解、さらには気化させる液体との反応がおきにくい気体、さらには気化器下流の改質触媒や電極などに悪影響を与えない気体から適宜選ぶことができ、例えば、空気の他にも、窒素やアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【0045】
気体封入容器としては、密閉可能な容器を適宜利用できる。使用環境に対する耐性を考慮して、気体封入容器の材質や壁の厚さを適宜設計すればよい。
【0046】
液体供給ラインについても、配管部材を用いて適宜構成することができる。使用環境に対する耐性を考慮して、配管部材の材質や壁の厚さを適宜設計すればよい。
【0047】
気化器としては、液体を気化させることのできる公知の気化器を適宜利用することができる。その例として、液体が流通する配管を外部から加熱し、配管内で液体を蒸発させることのできる構造を有する気化器を挙げることができる。この場合、気化されたガスの流量もしくは圧力の変動低減の観点から、液体が流通する配管(液体燃料供給ライン1)を複数並列に設ける、あるいは、この配管内に粒子を充填するのが好ましい。また、蒸発皿や蒸発容器などの加熱部材を加熱し、これに液体を接触させて蒸発させることのできる構造を有する気化器を挙げることもできる。これらの加熱のために、電気ヒータや燃焼ガスなどを熱源として利用することができる。
【0048】
本発明によれば、気化器で生じる比較的短周期で連続的な圧力変動を、気体封入容器内に封入された気体によって緩和させ、もって液体流量の脈動を低減することができる。その結果、液体が気化したガスの流量の脈動が抑制される。特に、燃料電池システムにおいて、液体燃料の供給ラインに気体封入容器を接続することにより、燃料電池の電圧変動を低減し、発電効率の向上およびセル劣化抑制に資することができる。
【0049】
気化器の下流に、気体のバッファータンクを設け、液体が気化したガスの流量の脈動をバッファータンクによって抑制することも考えられる。しかしながら、本発明者による検討によれば、液体が気化したガスの流量の脈動を抑えるためには、液体の流量の脈動を抑えることが肝要であることが判明した。気化器の下流に気体のバッファータンクを設けるよりも、気化器の上流に気体封入容器を設けた方が、液体が気化したガスの流量の脈動防止効果が大きい。
【0050】
〔水素製造装置・燃料電池システム〕
本発明の気化装置を用いて、液体燃料を気化し、気化された燃料を改質器によって改質して改質ガスを得、必要に応じてさらに処理して水素含有ガスを製造することができる。さらに、水素含有ガスを燃料電池のアノードに供給し、発電を行うことができる。このとき、液体燃料が気化したガスの流量の脈動を抑制できるため、水素製造装置から得られる水素含有ガスの流量の脈動を抑えることができ、また、燃料電池の電圧変動を抑えることができる。
【0051】
図5を用い、液体燃料として灯油を例にして、本発明の水素製造装置および燃料電池システムの一形態について説明する。図5には、燃料電池システムの主要な構成を示す。
【0052】
タンクやパイプライン等の供給源から供給された灯油は、液体供給ライン1を通り、気化器2によって気化される。液体供給ラインには必要に応じてポンプ3が設けられる。液体供給ラインには気体封入容器5が接続される。ここまでは既に説明した気化装置の構成を採用することができる。
【0053】
気化器で得られた気化灯油は改質器30に供給される。ここでは水蒸気改質を行うために改質器に水蒸気も供給される。部分酸化改質を行うためには酸素(純酸素のみならず、空気などの酸素含有ガスでもよい)が改質器に供給される。改質器において、灯油が改質され、水素を含有する改質ガスが得られる。
【0054】
改質ガスはアノードガスとして燃料電池40のアノードAに供給される。燃料電池のカソードCには、空気などの酸素含有ガスがカソードガスとして供給される。燃料電池において、アノードガスに含まれる水素とカソードガスに含まれる酸素とが電気化学的に反応し、発電が行われる。アノードから排出されるアノードオフガスには可燃分が含まれるため、その熱量を燃焼などにより適宜利用することができる。またアノードオフガスや、カソードから排出されるカソードオフガスの顕熱も適宜利用される。
【0055】
図3において、改質器30から上流が水素製造装置である。
【0056】
図3には気化する液体が液体燃料である場合を示したが、気化する液体が水である場合をについて図6を用いて説明する。液体が液体燃料ではなく水である点を除いて、気化装置の構成は前述のものと同様である。図6には、液体燃料供給ラインに替えて液体供給ラインとして水供給ライン15が示される。
【0057】
水が気化装置(ポンプ3、水供給ライン15、気体封入容器5、流路開閉手段7、気化器2を有する)にて気化され、水蒸気となる。この水蒸気と、別途用意される燃料が改質器30に供給される。このとき、燃料は必要に応じて予め気化され、燃料ガスとして供給される。燃料として液体燃料を用いる場合、液体燃料の気化のためにも本発明の気化装置を用いることが好ましい。
【0058】
改質器で水蒸気を用いて燃料が改質され、水素含有ガスが得られる。すなわちこの改質器では、改質反応として少なくとも水蒸気改質反応が起こるが、部分酸化反応を伴ってもよい。図3に示した形態と同様に、改質器から得られた水素含有ガスは、必要に応じてシフト反応等の処理がさらになされ、燃料電池40で利用される。
【0059】
本発明の気化装置を用いて水を気化する場合に、改質原料として用いる燃料は、改質によって水素を製造可能な公知の燃料(前述の液体燃料も含む)を適宜用いることができる。この燃料としては、分子中に炭素と水素を含む(酸素など他の元素を含んでもよい)化合物もしくはその混合物を用いることができ、炭化水素類、アルコール類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等の炭化水素燃料、また、メタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル等のエーテル等である。
【0060】
水素製造装置や燃料電池システムにおいて、改質器から得られる改質ガスを、必要に応じてさらに処理することができる。例えば、一酸化炭素濃度を低減し水素濃度を高めるためのシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)、一酸化炭素濃度低減のための選択酸化反応(2CO+O2→2CO2)、加湿または除湿などの処理を行うことができる。従って、改質器から得られる水素含有ガスを用いて燃料電池により発電を行う場合、改質器から得られる改質ガスを直接燃料電池で用いてもよいし、改質ガスをシフト反応等の処理をしたうえで燃料電池で用いてもよい。
【0061】
また、必要に応じて液体燃料に含まれる硫黄分の濃度を低減するための脱硫を行うこともできる。脱硫を気相で行う場合には、気化器2と改質器30との間に脱硫器を設ければよい。
【0062】
改質器としては水蒸気改質、部分酸化改質またはオートサーマルリフォーミング(水蒸気改質反応と部分酸化改質反応の両者を行う)を行うことのできる公知の改質器を適宜利用することができる。改質器において熱源を必要とする場合は、例えば、利用可能な高温ガスを適宜利用することができる。具体例としては、液体燃料やアノードオフガスを燃焼させた燃焼ガスを熱源とすることができる。
【0063】
燃料電池としては、水素を電気化学反応させる燃料電池を適宜利用することができる。例えば、固体高分子形、燐酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形の燃料電池を採用することができる。
【0064】
上記機器の他にも、改質反応を利用した水素製造装置や燃料電池システムの公知の構成要素は、必要に応じて適宜設けることができる。具体例を挙げれば、改質器や燃料電池にスチームを供給するための水蒸気発生器、燃料電池等の各種機器を冷却するための冷却系、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワなどの加圧手段、流体の流量を調節するため、あるいは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、気体を凝縮する凝縮器、スチームなどで各種機器を外熱する加熱/保温手段、各種流体の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、出力用や動力用の電気系統などである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の燃料電池システムは、例えば定置用もしくは移動体用の発電システムに、またコージェネレーションシステムに利用できる。
【0066】
本発明の水素製造装置は、燃料電池に供給する水素含有ガスを製造するために好適に利用できる。
【0067】
本発明の気化装置は、水素製造装置において液体改質原料を気化するために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の気化装置の一形態を説明するための模式図である。
【図2】本発明の気化装置の別の一形態を説明するための模式図である。
【図3】本発明の気化装置の別の一形態を説明するための模式図である。
【図4】本発明の気化装置の別の一形態を説明するための模式図である。
【図5】本発明の水素製造装置および燃料電池システムの一形態を説明するための模式図である。
【図6】本発明の水素製造装置および燃料電池システムの別の一形態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 液体燃料供給ライン
2 気化器
3 ポンプ
4 分岐ライン
5 気体封入容器
5a 気相部
5b 液相部
6 ライン
7 流路開閉手段
8 気体(予備)封入容器
9 流路開閉手段
10 気体昇圧手段
11 流路切替手段
12 流路開閉手段
13 流路切替手段
14 積算流量計測手段
15 水供給ライン
16 ライン
17 ライン
18 パージライン
19 ライン
20 ライン
21 パージライン
30 改質器
40 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を気化する気化器と、該気化器に液体を供給する液体供給ラインとを有し、
気体が封入された容器が該液体供給ラインに接続された気化装置。
【請求項2】
液体燃料を気化する気化器と該気化器に液体燃料を供給する液体燃料供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該液体燃料供給ラインに接続された気化装置;および
該気化装置から得られる気化された液体燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器
を有する水素製造装置。
【請求項3】
液体燃料を気化する気化器と該気化器に液体燃料を供給する液体燃料供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該液体燃料供給ラインに接続された気化装置;
該気化装置から得られる気化された液体燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器;および
該改質器から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池
を有する燃料電池システム。
【請求項4】
水を気化する気化器と該気化器に水を供給する水供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該水供給ラインに接続された気化装置;および
該気化装置から得られる気化された水で燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器
を有する水素製造装置。
【請求項5】
水を気化する気化器と該気化器に水を供給する水供給ラインとを有し、気体が封入された容器が該水供給ラインに接続された気化装置;
該気化装置から得られる気化された水で燃料を改質して水素含有ガスを得る改質器;および該改質器から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池
を有する燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−247662(P2008−247662A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90527(P2007−90527)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】