説明

気相重合によるカーボンナノチューブ/ポリマー混合物の製造方法

本発明は、気相重合によるカーボンナノチューブ/ポリマー混合物の新規製造方法、適当であれば、カーボンナノチューブ/ポリマー複合物中のその後の分散物、および特に触媒および共触媒がカーボンナノチューブに担持されていることを特徴とするオレフィンまたはジオレフィンのインサイチュ気相重合による均質のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物およびカーボンナノチューブ/ポリマー複合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相重合によるカーボンナノチューブ/ポリマー混合物の新規製造方法、該方法の特定の態様において、カーボンナノチューブ/ポリマー複合物中のその後の分散物、および特にカーボンナノチューブ上でのオレフィンまたはジオレフィンのインサイチュ気相重合による均質のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物およびカーボンナノチューブ/ポリマー複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲内において、カーボンナノチューブ(CNT)は、3〜150 nmの間、好ましくは3 nmと80 nmとの間の直径を有する円筒カーボンチューブを意味すると理解される。その長さは、該直径の数倍、少なくとも100倍である。これらのチューブは、規則的な炭素原子の層から構成され、および異なる形態のコアを有する。このようなカーボンナノチューブは、例えば、「カーボンフィブリル」または「中空カーボン繊維」とも呼ばれる。それらの寸法およびそれらの特定の特性から、上記カーボンナノチューブは、複合材料の製造のために工業的に重要である。さらなる重要な可能性は、電子工学、エネルギーおよび他の分野における用途である。
【0003】
用途に関連したポリマーの特性は、ナノ充填剤の組み込みによって顕著に改善することができる。Walterら(Macromol. Sci.、1999、A 36、1613)によれば、特性の改善は、ナノ充填剤の非常に低い含量でさえも達成することができる。このようなナノ充填剤/ポリマー混合物は、例えば、溶融導入、ポリマー溶解法による導入、またはインサイチュ重合によって製造することができる。後者の方法は、重合後、充填剤/ポリマー混合物を製造するためのさらなる手順が必要でないという利点を有する。
【0004】
カーボンナノチューブ/ポリオレフィン混合物の製造またはカーボンナノチューブ/ジオレフィン系ポリマー混合物の製造は、科学文献および技術文献から既知である。
【0005】
Wiemannら(Conference、IUPAC-Symposium Macro、2004、パリ)およびBonduelら(Chem. Comm.、2005、781-783)は、カーボンナノチューブの存在下での、インサイチュ重合によるカーボンナノチューブ/ポリプロピレン混合物の製造を記載する。該重合は、溶液重合、すなわち、該重合は、触媒(Zr-メタロセン)およびプロモーター(MAO)が溶解した溶媒中で行われる。この方法は、該溶媒のエネルギー消費型除去が必要であるという不利な点を有する。
【0006】
国際公開WO 99/23287 A1および国際公開WO 01/10779 A1は、インサイチュ重合によるカーボンナノチューブおよびポリマーの硬質の相互貫入ネットワークの製造を特許請求している。該特許文献に記載されたインサイチュ重合は、チーグラー・ナッタ触媒によって、メタロセンによって、並びにフリーラジカル開始剤によって、触媒または開始され得る。例えば、エチレンの重合は、カーボンナノチューブに担持されたTiCl4/MAO触媒によって行われるが、プロピレン重合は、カーボンナノチューブに担持されたジルコノセン/MAO触媒によって起こる。第一の実施例は従来の気相重合を示すが、第二の実施例において、プロピレンは、凝結または凍結され、そして、その後、解凍により「真の」溶液重合が開始される。これらの方法は、カーボンナノチューブとポリマーとの均質混合物を生じさせず、単にポリマーおよびカーボンナノチューブの硬質の部分的のみの相互貫入ネットワークを生じさせるという不利な点を有する。より詳細には、該重合は、カーボンナノチューブ凝集体の表面にて主に起こり、そして、重合が進行するにつれてのポリマーマトリックス内のカーボンナノチューブの分散は生じない。これは、それ自身、記載されたカーボンナノチューブ/ポリマー混合物の灰色または白色として現れる。カーボンナノチューブに対する触媒の不適当な適用が、その原因と考えられ得る。カーボンナノチューブ粒子の外面は、含浸により触媒が搭載され、同時に、該触媒は、ゆるい物理的な力によってのみ、カーボンナノチューブに結合する。結果として、ポリマー/カーボンナノチューブの均質混合物を製造することはできない。特許請求された硬質「相互貫入」ネットワークのみが得られる。
【0007】
国際公開WO 95/07316 A1は、配合によるカーボンナノチューブ/ゴム混合物の製造を記載する。これらの混合物は、ポリマー中のカーボンナノチューブの不均質分布を示し、その結果、1 μmを超える「未溶解」カーボンナノチューブ束がなお見出される。
【0008】
均質のカーボンナノチューブ/ポリオレフィン混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物を製造するための科学文献および技術文献においてこれまで知られた幾つかの実施例は、低品質の該混合物によって特徴付けられるか、または該方法は、大規模な製造に移行させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、カーボンナノチューブ/ポリオレフィン混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物をインサイチュ気相重合によって製造することを可能にする方法を提供することであった。特に、カーボンナノチューブとポリマーとの均質混合物が形成されるのを確実にし、そして該反応および仕上げを行うための潜在的な解決困難なまたは技術的に複雑な方法を避けるための、広く適用可能な方法が見出されるべきである。同時に、該方法は、工業規模において、空間/時間収率、取扱い、経済およびエコロジーに関して利点をもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、均質なカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物が、カーボンナノチューブに担持された触媒によって、気相重合により製造することができることが見出された。
【0011】
したがって、本発明は、カーボンナノチューブに担持された触媒を用いるオレフィンまたはジオレフィンのインサイチュ気相重合によって、均質なカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物を製造するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、カーボンナノチューブ/ポリエチレン混合物のTEM画像を示す。
【図2】図2は、如何なる限定も意味しないが、後記実施例5で使用した、カーボンナノチューブ/ポリエチレン/HDPE複合物を製造するための押出機の構造を示す。
【図3】図3は、本発明の方法にしたがって製造された、2つの顆粒の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法において、触媒担体として、または充填剤として使用されるカーボンナノチューブは、とりわけ、金属含有触媒によって、気相から炭素含有気体状化合物の分解によって製造することができる。適当な炭素成分の例としては、如何なる限定も意味しないが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンおよびアセチレンが挙げられる。触媒金属成分として、多くの適当な遷移金属、例えば、ニッケル、鉄、モリブデン、コバルト、マンガン、銅、クロム、バナジウム、タングステンなど、および、例えば、国際公開WO 2006050903 A2中に記載されたような、それらの2成分、3成分、4成分等の混合物が存在する。
【0014】
カーボンナノチューブに担持された触媒(CNT触媒)は、従来、乾燥溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、またはシクロヘキサン)の溶液中の触媒を、カーボンナノチューブ懸濁物に添加し、そして該触媒をカーボンナノチューブ表面に固定化することによって製造される。次いで、該担持されたCNT触媒の製造は、溶媒を分離除去(例えば、蒸発)することにより完了する。
【0015】
本発明の方法の特定の形態において、該カーボンナノチューブは、物理的にまたは化学的に処理される。特に、該カーボンナノチューブは、通常、物理的または化学的処理によって、「洗浄される」か、または「官能化される」。カーボンナノチューブの洗浄は、好ましくは、非毒性無機酸(例えば、HClなど)の作用によって行われる。この処理によって、カーボンナノチューブ中の所望されない不純物は、製造プロセスから除去される。カーボンナノチューブの官能化は、好ましくは、如何なる限定も意味しないが、特に酸性基の組み込みによる、酸素官能化である。これは、例えば、液状酸化剤またはそれらの混合物並びに気体状酸化剤の作用により行うことができる。好ましくは、例えば、HNO3、H2SO4、H2O2、HClO4、O2、O3、CO2など、特に好ましくはHNO3またはHNO3とH2SO4との混合物である。酸性基の数は、例えば、M. Toebes、Carbon、(42)、2004、307-315中に記載されているように、滴定および/またはX線光電子分光法(XPS)によって決定することができ、そして、これは、通常、50〜10,000マイクロ当量/g(μeq/g) カーボンナノチューブの範囲、好ましくは100〜8000 μeq/g カーボンナノチューブの範囲、および最も好ましくは250〜5000 μeq/g カーボンナノチューブの範囲である。
【0016】
オレフィンの配位重合のために、当業者に既知の従来の遷移金属触媒およびチーグラー・ナッタ触媒が適当である。先行技術によるメタロセン触媒の群の概説は、Kaminskyらによって、Appl. Cat. A.: Gen.、2002、2001、47-61中に示されている。典型的な触媒の適当な例としては、如何なる限定も意味しないが、以下の遷移金属触媒が挙げられる:
【0017】
【化1】

【0018】
〔式中、R = H、メチル、エチル、ブチル、ネオメンチルなど、M = Zr、HfおよびX = C2H4、Me2Siなど〕、
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、M = Zr、Hf、X = Me2C、Ph2C、R = H、エチル、ブチルなど〕。
【0021】
本発明によるオレフィンの気相重合に適当なものは、例えば、Journal of the American Chemical Society (1995)、117 (23)、6414-15中に記載されているような、以下の構造を有する後記遷移金属触媒である:
【0022】
【化3】

【0023】
〔式中、M = Ni、Pd、Co、Fe、L = メチル、エチル、ブチル、R = メチル、アリール、架橋など〕。
【0024】
本発明の方法の特定の形態において、該触媒に加えて、少なくとも一つの共触媒も使用することができる。
【0025】
メチルアルモキサン(MAO)は、通常、上記触媒に対する共触媒として使用される。しかしながら、原理上、他のアルミニウム化合物(Al化合物)も共触媒として適当であり、特にアルミニウムアルキル、例えば、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど(これらは、必要に応じて、インサイチュ部分加水分解によって活性化することができる)が挙げられる。本発明による気相重合において、該触媒に比べて、共触媒の過剰が、通常、確立される。特に、10〜500、好ましくは10〜400および最も好ましくは10〜300の共触媒/触媒のモル比、特にAl化合物/金属のモル比が、通常、確立される。
【0026】
ジオレフィン(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなど)の気相重合および共重合のために、Ni、Co、TiおよびNdに基づくチーグラー・ナッタ触媒が、通常、使用される。Ndに基づく触媒が好ましい。なぜなら、それらは、二重結合の高いシス含量を有するポリマーを得ることを可能にするからである。如何なる限定も意味しないが、以下のネオジム化合物が、通常、使用され得る:
【0027】
Nd-バーサテート(α,α-二置換C10-カルボン酸のバーサテートの市販混合物)、Nd-ネオデカノエート、[Nd(C3H5)3]2、Nd(C3H5)3、Ndcp(C3H5)2、Nd(C3H5)3
【0028】
例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAH)、トリイソブチルアルミニウムおよびエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)は、このような系において共触媒として使用される。
【0029】
本発明の方法の特定の形態において、少なくとも一つの共触媒は、同様に、カーボンナノチューブに担持される。
【0030】
カーボンナノチューブに担持された触媒系の製造は、通常、カーボンナノチューブ担体と共触媒(特にAl化合物)との反応によって開始される。これにより、共触媒(特にAl化合物)のカーボンナノチューブへの固定化が達成される。例えば、この反応は、溶液中で行うことができる。好ましくは、乾燥した非極性溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン若しくはシクロヘキサンまたはそれらの混合物などを使用することが挙げられる。該反応は、通常、該溶液および該カーボンナノチューブ(これは、通常、分散した形態であり得、あるいは凝集体の形態でさえあり得る)の激しい混合を確実にする反応装置中で行う。混合は、攪拌機によって、またはノズルまたはジェットを用いる分散によって、行うことができる。あるいは、混合エネルギーは、任意の所望の形態で、例えば、超音波などで導入することができる。この反応は、室温または高温で行うことができる。該反応は、好ましくは10〜100℃の温度にて、および最も好ましくは20〜60℃の温度にて行う。この反応が完了する場合、乾燥溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサンまたはシクロヘキサン)の溶液中の触媒を、カーボンナノチューブ/共触媒懸濁物に添加することによって、カーボンナノチューブ表面に固定化された共触媒(特にAl化合物)への該触媒の固定化が行われる。次いで、担持された触媒の製造は、溶媒を分離(例えば、蒸発)することによって完了する。生成物として、カーボンナノチューブに担持された活性気相重合触媒が得られる。共触媒含量は、総重量に基づいて、通常0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜12重量%および最も好ましくは0.1〜10重量%である。該触媒の含量は、0.001〜5重量%の範囲および好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。
【0031】
該重合は、気体状モノマーの添加によって開始される。適当なモノマーは、反応温度および反応圧力において気体形態である任意のオレフィンおよびジオレフィンである。エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネンなど、およびそれらの混合物を、通常、使用することができる。
【0032】
気相重合は、気相重合に適当な任意の反応器中で行うことができる。例えば、流動床反応器、撹拌容器反応器、固定床反応器などが適当である。
【0033】
重合温度は、基本的に、重合の反応速度論によって決定され、および装置に関連した条件(熱伝導係数)およびポリマーの融点によってのみ制限される。重合温度は、通常、0〜300℃の範囲、好ましくは20〜200℃の範囲である。気相重合は、可能な限り高い圧力にて行う。なぜなら、高いオレフィン分圧は、高い生産性を導くからである。反応圧力は、対応する反応温度にて確立されるモノマーの蒸気圧によって与えられる。例えば、如何なる限定も意味しないが、エチレンのインサイチュ重合は、1 bar〜200 bar、好ましくは1〜100 barの反応圧力にて行う。気相からのモノマーの変換は、不連続的に起こり得る。すなわち、反応器中の反応圧力は、反応の経過中に減少する。別の反応手順は、さらなるモノマーにおける一定の計量によって達成される。これにより、インサイチュ重合は、一定の反応圧力にて行われる。本発明の方法は、通常、反応材料を徹底的に混合しながら反応器中で、例えば、回転式攪拌機を備えた撹拌容器中で行う。
【0034】
カーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物中のポリマー(特にポリエチレン)の百分率は、反応時間および反応圧力にしたがって変化し得る。
【0035】
驚くべきことに、本発明による特定のカーボンナノチューブに担持された触媒を用いるモノマーの反応は、均質に分散したカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物のみを得ることに非常に有利に成功する。これらのポリマーまたはゴム混合物は、0.1〜50重量%、特に好ましくは0.1〜30重量%のカーボンナノチューブ含量を有する。このようなカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物は、さらに直接的に加工することができるが、それらは、好ましくはマスターバッチ、すなわち、第二のポリマーとその後にブレンドされる高濃度のポリマーまたはゴム充填剤混合物としても使用される。このようなカーボンナノチューブ/ポリマーまたはカーボンナノチューブ/ゴムマスターバッチは、未処理の様式で、従来の方法、例えば、溶液混合、押出機を用いる溶融混合などによって、他のポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-コ-スチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン-コ-アクリロニトリル、EPDMポリクロロプレン、ポリエチレン-酢酸ビニルなど)と混合して、カーボンナノチューブ/ポリマー複合物またはカーボンナノチューブ/ゴム複合物を与えることができる。
【0036】
上記方法工程によって、カーボンナノチューブを、それらが初めは束または凝集体の形態であっても、互いに分離し、そしてそれらをポリマー中に均質に分散させることができる。
【0037】
分散の成功は、通常、透過電子顕微鏡法(TEM)(例えば、LaB6カソードを備えたPhilips/Fei Tecnai 20、TVIPSからの1x1k CCDカメラ "F 114T、製造業者の使用説明書による)、あるいは、蛍光コントラストを用いる共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)(例えば、Leica TCS SP2共焦点レーザー顕微鏡、製造業者の使用説明書による)を用いて決定される。黒色粒子の存在または非存在は、両方の方法によって可視化される。黒色粒子の非存在は、カーボンナノチューブが完全に分散し、および非分散の粒子が存在しないことを意味する。カーボンナノチューブまたはポリマー(特にポリエチレン)の含量に依存して、100〜180℃、好ましくは120〜150℃の融解温度および/または1〜50%、好ましくは5〜40%の結晶化度を有するカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ポリマー複合物を製造することができる。
【実施例】
【0038】
実施例1:カーボンナノチューブの洗浄
50 gのカーボンナノチューブ (Baytubes、国際公開WO 2006050903中に記載されたように製造)および1300 mlの37%HClを、攪拌機および冷却器を備えたフラスコ中に置いた。次いで、還流下、1時間沸騰させた。冷却後、該混合物を、中性になるまでH2Oで洗浄し、そして、真空中、80℃にて終夜乾燥した。洗浄されたカーボンナノチューブの収率は、98.7%であった。
【0039】
実施例2:カーボンナノチューブの官能化
30 gのCNTおよび900 mlの70%HNO3を、攪拌機および冷却器を備えたフラスコ中に置いた。次いで、還流下、5時間沸騰させた。冷却後、該混合物を、中性になるまでH2Oで洗浄し、そして、真空中、終夜乾燥した。官能化カーボンナノチューブの収率は、23.37 g(77.9%)であった。酸性基の数は、滴定によって決定したが、これは、931 μeq/g COOH/g カーボンナノチューブであった。
【0040】
実施例3:触媒の調製
45 gの実施例1からのカーボンナノチューブを、攪拌機、不活性ガス供給器、気泡計測器、蒸留ブリッジおよびガス保護下に液体を計量供給するためのユニットを備えた、不活性化した反応器中に置いた。次いで、存在する任意の痕跡量のO2またはH2Oを、アルゴンを用いて、120℃(油浴)にて1時間強くフラッシングすることによって除去した。室温に冷却後、トルエン中の30.7 gのMAOおよび116 mgの(n-Bu-cp)2ZrCl2(Bu = ブチル、cp = シクロペンタジエニル)を、予め不活性ガスで強くフラッシングした「乾燥」溶媒/化学品を密閉して添加するためのポリエチレンホース接続部を介して反応器中に供給した。カーボンナノチューブ/触媒懸濁物を、約5時間強く撹拌し、次いで、該溶媒を蒸留によって除去した。
【0041】
実施例4:エチレンのインサイチュ気相重合
45 gの実施例3で製造した触媒を、低速(300 rpm)アンカー攪拌機を備えた耐圧スチールオートクレーブ中に導入し、そして90℃の反応温度に加熱した。次いで、気相重合を、10 barのエチレンに調節することにより開始した。該重合は一定の圧力で行った。なぜなら、消費されたエチレンの自動添加を、備え付けの独自の制御系を介して行ったからである。325リットルのエチレン(372 gのエチレン)を計量添加した後、該重合を冷却により停止した。324 gのカーボンナノチューブ/ポリエチレン混合物を得た。これは、ポリエチレンに基づいて13.9重量%のカーボンナノチューブ含量に対応した。分散の成功は、透過電子顕微鏡法によって決定した。これを図1に示す。129.5℃の融解温度を、示差走査熱量測定法(例えばMettler Toledo DSC 822e、製造業者の使用説明書による)を用いて決定した。試料の結晶化度は、例えば、Macromol. Chem. 2001、(202)、2239-2246中に記載された方法で算出した。これは39%であった。
【0042】
実施例5:インサイチュで重合したカーボンナノチューブ/ポリエチレンマスターバッチおよび高密度ポリエチレン(HDPE)からのカーボンナノチューブ/ポリマー複合物の製造
13重量%のカーボンナノチューブ含量を有するインサイチュで重合したカーボンナノチューブ/ポリエチレンマスターバッチを、共回転二軸押出機中でHDPE(Lupolen 4261、Basell)中に組み込んだ。HDPEおよびカーボンナノチューブ/ポリエチレンマスターバッチの両方は、粉末形態であった。8重量%のマスターバッチおよび92重量%のHDPEをそれぞれ、最終生成物中のカーボンナノチューブ濃度が1重量%になるように、比率計量器を介して該押出機の主要な取入口中に供給した。使用した押出機は、Coperion Werner & Pfleidererからの、長さ/直径の比が36のZSK 26Mcであった(図2参照)。総処理量は、250 min-1の速度にて、16 kg/hであった。該押出機中、HDPEおよびポリエチレンマスターバッチの融解、および溶融HDPE中へのカーボンナノチューブの分配および分散混合が行われた。最後から二番目のバレルにおいて、水分を曝気によって除去した。4つの押出物を孔あきダイ中で形成し、次いで、水浴中で冷却し、およびストランドペレタイザーによって顆粒化した。
【0043】
最終生成物中のカーボンナノチューブの分散品質を、蛍光コントラストを用いる共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)(Leica TCS SP2共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM))によって決定した。CLSM画像中、カーボンナノチューブ凝集体は黒色粒子として見える。なぜなら、それらは蛍光を発しないからである。図3は、2つの顆粒の断面を示す。黒色粒子は見られるべきではない。これは、カーボンナノチューブが完全に分散し、および未分散の粒子が存在しないことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンまたはジオレフィンのインサイチュ気相重合によってカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物を製造するための方法であって、カーボンナノチューブに担持された重合触媒を使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
カーボンナノチューブが物理的にまたは化学的に処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カーボンナノチューブが、50〜10,000 meq/g カーボンナノチューブの酸性基含量を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの共触媒を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
触媒に比べて、共触媒の過剰、特に10〜500の共触媒/触媒のモル比、を確立することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの共触媒が、カーボンナノチューブに担持されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
共触媒含量が、総重量に基づいて0.01〜15重量%であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
気相重合を、0〜300℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって得ることができる、カーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物。
【請求項10】
0.1〜50重量%のカーボンナノチューブ含量を特徴とする、請求項9に記載のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物。
【請求項11】
カーボンナノチューブ/ポリマー複合物の製造における、請求項9または10に記載のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物またはカーボンナノチューブ/ゴム混合物の使用。
【請求項12】
ポリマー、ゴムまたは複合物中のカーボンナノチューブの分散が、均質であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物、カーボンナノチューブ/ゴム混合物、カーボンナノチューブ/ゴム複合物またはカーボンナノチューブ/ポリマー複合物。
【請求項13】
100〜180℃の融解温度および/または1〜50%、好ましくは5〜40%の結晶化度を特徴とする、請求項12に記載のカーボンナノチューブ/ポリマー混合物、カーボンナノチューブ/ゴム混合物、カーボンナノチューブ/ゴム複合物またはカーボンナノチューブ/ポリマー複合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545639(P2009−545639A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522137(P2009−522137)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006409
【国際公開番号】WO2008/014894
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】