説明

水に分散可能なキサンタンガム含有組成物

本発明の一態様は、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含み、前記組成物中に存在するキサンタンガムを、キサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度において25℃の蒸留水中に2分以内に完全に分散できることを特徴とする、容易に水に分散可能な微粒子組成物に関する。本発明の微粒子キサンタンガム組成物は、これらが応用される水性環境の電解質レベルに依存する独自の粘度を高める性質を示す。本発明によるキサンタン組成物の好都合な性質は、キサンタンガムの化学的な変性に頼ることなく実現することができる。本発明によるキサンタン組成物は、例えば食品及び石油掘削流体において有利に応用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に容易に分散可能なキサンタンガムを含む微粒子組成物に関する。本発明の別の態様は、キサンタンガムを含む不連続の膨潤した粒子の高い粘稠性の水性分散体に関する。さらに本発明の別の態様は、キサンタンガムを含む容易に水に分散可能な微粒子組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キサントモナス菌の作用による水に可溶な多糖類のキサンタンガムの発酵生産は、よく知られている。キサントモナス親水性コロイド(「キサンタン」)は、細胞外ヘテロ多糖類である。このヘテロ多糖類は、主鎖の交互のモノマー残基に結合している短い側鎖によって置換されている(1→4)β−グルコース残基の骨格鎖を有する。キサンタンは、特に食品における増粘剤、安定化剤及び懸濁化剤としての使用を含む多種多様の工業的な応用を有している。さらに、キサンタンは油井掘削泥水において使用され、水攻法による石油の二次回収における粘度調整添加剤として使用される。また、キサンタンは、化粧品、医薬デリバリーシステム及び同様の組成物にも使用することができる。
【0003】
キサンタンは、キサントモナス属の細菌の好気性深部発酵によって工業的規模で製造される。発酵媒体は、炭水化物(例えば砂糖など)、微量元素及び他の栄養物を含んでいる。発酵が完了したら、得られた発酵液は熱処理される。熱処理後に、キサンタンは、アルコール沈殿によって回収される。
【0004】
キサンタンガムにおけるよく認識された困難な点は、分散性及び水和に対する抵抗性である。典型的には、キサンタンガム粉末は、高度の撹拌にかけて分散し、水和しなければならない。ガムの分散及び湿潤が完了したら、ガムの水和は、粘度の進展によって証明されるように非常に速い。
【0005】
キサンタンガムをさらに容易に水に分散可能にするために、従来技術ではいくつかの解決方法が提案されている。
【0006】
米国特許第4,357,260号は、キサンタンガム及びシリカから本質的になり、シリカに対するキサンタンガムの比率が、約19:1から1:1までの範囲である分散性キサンタンガム複合物を記載している。
【0007】
米国特許第4,363,669号は、グリオキサールで処理されたキサンタンガムと、グアーガム、タラガム、冷水可溶性タマリンドガム及び冷水可溶性ローカストビーンガムからなる群から選択される非分散性植物ガムとの分散性乾燥配合物を記載している。
【0008】
米国特許第4,654,086号は、キサンタンガムと、レシチン、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタンエステル、ナトリウムステアロイル2−ラクチレート、ステアリル−2−ラクチル酸、又はポリオキシルステアレートの中の1つ又は複数である界面活性剤とから本質的になり、キサンタンガム:界面活性剤の重量比が95:5から80:20までの範囲である分散可能な混合物に関するものである。
【0009】
米国特許第5,003,060号は、少なくとも1つの湿潤剤、分散剤又はこれらの組合せを含む水に容易に分散可能及び可溶性である固体の多孔性キサンタン顆粒を記載している。
【0010】
キサンタンガムの工業的な応用は、基本的には多糖類の粘度を高める性質に基づく。キサンタンガムは、比較的低濃度で高い粘稠性の水性系を製造することができるが、キサンタンガムの粘度を高める性質の更なる改良によって、キサンタンガムのいわゆる使用における費用を少なくすることは、非常に有利であるはずである。
【0011】
米国特許第6,391,596号は、高粘度キサンタンガムを記載している。このキサンタンガムは、海水中0.29重量%に溶解された場合、目盛盤読取値25を超える海水粘度を有することを特徴としている。
【0012】
米国特許第5,416,206号は、ブルックフィールドBL粘度計を使用して、20℃、30rpmにおいて12重量%塩化ナトリウム水溶液中のこの0.5重量%溶液で測定して800cP以上の粘度を有し、蒸留水中の0.5重量%溶液で決定された粘度に対する前記粘度の比率が1.5以上である塩水可溶性キサンタンガムに関する。
【0013】
Kuhn他(Starch/Starke 41(12)、1989年、467〜471頁)は、キサンタンガムを含む親水コロイドを用いたデンプンの調理押出し(cooking extrusion)を含む実験の結果を記載している。著者は、5〜30%のキサンタンを用いたデンプンの調理押出しは、高粘度の製品を与えたと観察している。この物において提供された結果は、キサンタン5%及びコーンスターチ95%の押し出された配合物は、押し出されたコーンスターチ95%及びキサンタン5%の乾燥混合された配合物よりも著しく高い粘度を示すことを示唆している。
【0014】
Miladinov他(Industrial Corps and Products、5(1996)、183〜188頁)は、塩化アジポイルを注入しながら同時に押し出されたデンプン及びキサンタンガムの粘度特性が決定された実験を記載している。押出生地及び非押出試料の水溶液の粘度が比較された。押出試料は、非押出材料より、蒸留水溶液においてより高い粘度を有することが見出された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、容易に水に分散可能であるキサンタンガム含有微粒子組成物を開発した。本発明による微粒子キサンタンガム含有組成物は、60%以下のデンプンを含む。これは、例えば粉砕及びその後の篩分けによってある範囲の粒径に調製することができる。典型的には、これらは、10〜1000μmの範囲内である。
【0016】
本発明の微粒子組成物の優れた水分散性は、1000mlのビーカーに蒸留水500mlを入れること、5cmの直径を有する4枚羽根車付き撹拌機で撹拌すること、300rpmの固定速度で作動させること、及びキサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度を与えるように前記キサンタン含有微粒子組成物を加えることを含む方法を使用して、前記組成物中に存在するキサンタンガムが、キサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度において25℃の蒸留水中に2分以内に完全に分散され得るという事実によって裏付けられる。
【0017】
本発明の微粒子キサンタンガム組成物は、独自の粘度を高める特性を有する。非常に低い電解質レベルの水性系で適用される場合、本発明の組成物は、短時間内に桁外れの高粘度を与えることができる。この本発明の組成物の好都合な特性は、電解質レベルが非常に低い組成物において特に明白である。典型的には、本明細書において前に記載のように0.7%キサンタンの濃度で蒸留水中に本発明による低い電解質の組成物を完全に分散させることによって得られた分散体は、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度(ブルックフィールドモデルLVF粘度計又は均等物、スピンドル3、12rpm)を示す。
【0018】
本発明の組成物は、非常に低い電解質レベルの水性系においては、異常なほど高い粘度を与えることができるが、本発明のキサンタン組成物が、高い電解質レベルを含む水性系において応用される場合、前記逆が真実であり、すなわち、観察される粘度増加は、異常なほど低い。米国食品医薬品局の規則は、キサンタンガムがいくつかの要件を満たすなら、食品に使用することができることを規定している。1つのそのような要件(21CFR172.695−2004年4月1日の改訂版)は、「2時間撹拌された1パーセントの添加剤及び1パーセントの塩化カリウムを含む水溶液が、ブルックフィールド粘度計、モデルLVF(又はブルックフィールドモデルLVT粘度計などの均等のモデル)によって、スピンドルNo.3を使用し、60r.p.m.で決定して、75°F(23.8℃)で600センチポイズ(600mPa.s)の最小粘度を有する」ということである。驚くべきことに、本発明者らは、本発明によるキサンタン組成物は、この試験手順にかけられると、典型的に300mPa.s未満の粘度を示すことを見出した。本発明の組成物は、高い電解質水性系において応用されると、その後の100℃までの温度への加熱が、著しい粘度増加を引き起こし、この粘度増加は、冷却後も維持される。このように、塩溶液において、加熱時の粘度変化は、デンプンの粘度変化によく似ているが、キサンタンで増粘された製品は、化学的な変性を使用することなしに、凍結解凍及び保存安定性の利点を与える。
【0019】
したがって、本発明による微粒子キサンタンガム含有組成物は、容易な水分散性と、顕著に改良された粘度を高める特性とを併せ持ち、前記粘度を高める特性は、前記組成物及び/又は前記組成物が適用される製品中の電解質濃度を操作することによって制御することができるという顕著な利益を与える。さらに、本発明は、前記好都合な特性を、キサンタンガムの化学的変性に頼ることなく、実現することができるという利益を与える。
【0020】
本発明の微粒子組成物は、
a.20重量%と60重量%との間の水及び乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含有する混合物を少なくとも60℃の温度で押し出すこと;
b.得られた押出物を乾燥すること;及び
c.前記押出物を乾燥の前、間又は後に微粒子組成物に変換すること
を含み、工程a.及びb.の間に塩化アジポイルを加えない、簡単な物理的な方法によって得ることができる。
【0021】
本発明者らは、理論によって縛られたくないが、本発明の微粒子組成物の有利な特性は、微粒子の構造を維持するために作用する分子間結合の存在の結果であると信じている。これらの結合は、比較的低いレベルの水を含む環境におけるキサンタン規則構造の溶解及びその後の再形成からもたらされ得る。そのような低い水分の環境において、キサンタン規則構造の再形成の速度は、互いに非共有結合して微粒子の構造を形成する分子群のネットワークをもたらしながら、低下する。キサンタンの高分子電解質特性のために、これらの粒子群は、超膨潤している高分子電解質ゲルのように挙動し、それゆえに、塩又は他の電解質が存在しない水中では、分子レベルで溶解されたキサンタンより、はるかに高い粘度を与えることができる。
【0022】
分散体のキサンタンは、粒子の形で実質的に保持されるので、粉末粒子の表面でリリースされたキサンタン分子を含む架橋及び凝集は、起こらない。したがって、水中の分散体における「魚の目」の形成をもたらす、よく知られた凝集作用は、本発明のキサンタン組成物については認められない。所望なら、この急速な分散に続いて、微粒子の構造を分裂させるためにその後の加熱で容易に分子溶液を得ることができる。本発明のキサンタン組成物が塩溶液で応用される場合、粒子の膨潤の程度が低くなり、その後の加熱時の微粒子構造の分裂は、デンプンに関して見られるような不可逆的な粘度増加をもたらすことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
したがって、本発明の一態様は、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含み、1000mlのビーカーに蒸留水500mlを入れること、5cmの直径を有する4枚羽根車付き撹拌機で撹拌すること、300rpmの固定速度で作動させること、及びキサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度を与えるようにキサンタン含有微粒子組成物を加えることを含む方法を使用して、前記組成物中に存在するキサンタンガムが、キサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度において25℃の蒸留水中に2分以内に完全に分散され得ることを特徴とする、容易に水に分散可能な微粒子組成物に関する。
【0024】
本明細書において使用される「微粒子」という用語は、広範に解釈され、任意の有孔性及び又は密度の粒子を含むものとする。好ましい実施形態によれば、本発明の微粒子組成物は、自由流動性組成物である。本発明の微粒子組成物は、好適には、均一な組成物の粒子並びに例えば塊状物又はカプセル化物などの形態の粒子から構成され得る。典型的には、本発明の組成物における粒子は、10〜1000μmの範囲内の容積加重平均粒径を示す。
【0025】
本明細書において使用される「キサンタン」又は「キサンタンガム」という用語は、キサントモナス属の細菌によって作られる細胞外で生産されたヘテロ多糖類を意味する。キサンタンガムの生産に好適に使用できるキサントモナス種の例は、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、キサントモナス・ベゴニアエ(Xanthomonas begoniae)、キサントモナス・マルバセラウム(Xanthomonas malvaceraum)、キサントモナス・カロタエ(Xanthomonas carotae)、キサントモナス・インカナエ(Xanthomonas incanae)、キサントモナス・ファセオリ(Xanthomonas phaseoli)、キサントモナス・ベシカトリア(Xanthomonas vesicatoria)、キサントモナス・パパベリコラ(Xanthomonas papavericola)、キサントモナス・トランスルセンス(Xanthomonas translucens)、キサントモナス・ベシカトリア(Xanthomonas vesicatoria)及びキサントモナス・ヘドラエ(Xanthomonas hedrae)を含む。
【0026】
本発明の利点は、実質的にキサンタンガムからなる微粒子組成物並びにキサンタンガム以外に1つ又は複数の追加成分を含む組成物で実現され得る。本発明の微粒子組成物に好適に組み込まれ得る追加成分の例は、多糖類、タンパク質、乳化剤、合成ポリマー及び糖類を含む。好ましくはこれらの追加成分は、水溶性である。本発明の組成物に好適に組み込まれ得る多糖類の例は、デンプン、穀粉、ローカストビーンガム、マルトデキストリン、及びこれらの組合せを含む。タンパク質の例は、大豆タンパク質、カゼイン及びグルテンを含む。好適な糖類は蔗糖、グルコース及びグルコースシロップを含む。このような一緒に処理される配合物は、キサンタンガム及び追加成分の微粒子形態の有益な機能性を結合することができる。例えば、焼成される製品におけるキサンタングルテン配合物の使用など。
【0027】
典型的には、本発明の組成物は、乾燥物の重量で少なくとも20%のキサンタンガムを含有する。さらに好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも40%のキサンタンガムを含有し、最も好ましくは、本発明の組成物は、乾燥物の重量で少なくとも50%のキサンタンガムを含有する。本発明の微粒子組成物において含有されるデンプンの量は、乾燥物の重量で、好ましくは50%を超えず、さらに好ましくは、これは40%を超えず、最も好ましくは、30%を超えない。
【0028】
本発明の組成物は、好適にローカストビーンガムを含むことができる。しかしながら、この組成物は、好ましくは、乾燥物の重量で60%以下のローカストビーンガムを含む。同じように、好ましい実施形態において、この組成物は、乾燥物の重量で70%以下のマルトデキストリン、好ましくは50%以下のマルトデキストリンを含む。さらに、この組成物は、好ましくは乾燥物の重量で80重量%以下のタンパク質、さらに好ましくは、70%以下のタンパク質を含有する。
【0029】
本明細書において前に述べたように、本発明による微粒子キサンタン組成物は、容易に水に分散可能である以外に、好ましくは、別の並はずれて好都合な特性、すなわち、粘度を高める能力が、高濃度の電解質を含む水性系において非常に低いということを示す。この好ましい実施形態によれば、米国食品医薬品局のセクション172.695において記載されている第1の粘度測定にかけた場合、本発明の組成物は、23.8℃で500mPa.s未満の粘度を与え、前記第1の粘度測定は、(a)塩化カリウム1重量%を含有する水溶液に前記組成物を加え、キサンタンガム1重量%を含有する水性組成物を生成する工程;(b)2時間撹拌する工程;及び(c)ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、60rpmでスピンドルNo.3を使用して、前記撹拌された水性組成物の粘度を決定する工程を含み、前記水性の撹拌された組成物を第2の粘度測定にかけた場合、23.8℃で少なくとも600mPa.sの粘度を与え、前記第2の粘度測定は、(a)第1の粘度測定後に前記撹拌された水性組成物を直ちに100℃の温度に加熱する工程;(b)100℃の温度を1分間維持する工程;(c)120±10分以内に23.8℃に冷却する工程;及び(d)ブルックフィールド粘度計モデルLVF粘度計又は均等物によって、スピンドルNo.3を60rpmで使用して、前記粘度を決定する工程を含む。
【0030】
本発明の特に有利な実施形態によれば、本発明の微粒子組成物の第1の粘度測定は、23.8℃で400mPa.s未満、より好ましくは、23.8℃で300mPa.s未満、最も好ましくは、23.8℃で200mPa.s未満を与える。
【0031】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、本発明の微粒子組成物は、前に定義された第1の粘度測定及び第2の粘度測定にかけた場合、第1の粘度測定からの粘度より少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%さらに高い第2の粘度測定からの粘度を与え、観察される粘度増加は、組成物中に含まれるキサンタンガムに大きく起因する。また、この特定の実施形態は、キサンタンガム以外に1つ又は複数の他の粘稠化剤を含む微粒子状組成物を含む。また、1つ又は複数の他の粘稠化剤の存在により、第1の粘度測定において決定された粘度が比較的高い場合、本発明の組成物中に含まれるキサンタンガムの特別な性質により、顕著な粘度増加は、第2の粘度測定においても観察されるはずである。デンプンなどのある種の粘稠化剤の粘度を高める能力は、加熱によって不可逆的に高められることは、この技術分野でよく知られている。しかしながら、前記観察された粘度増加は、キサンタンガムに大きく起因しているといえる。したがって、この実施形態による微粒子組成物は、粘度を高める性質が、加熱によって不可逆的に高められる粘稠化剤を含むことができるが、前記組成物は、これらの粘稠化剤の限界レベル以下しか含まない。最も好ましくは、この実施形態による微粒子組成物は、キサンタンガム以外に、水中における粘度を高める性質が、加熱によって不可逆的に高められる粘稠化剤を実質的に含まない。
【0032】
また、本発明は、前に定義された熱に敏感な微粒子組成物を液状水性組成物中に分散させ、キサンタンガムの規則形を変性するに十分な温度まで加熱するキサンタンガム溶液の調製方法も包含する。キサンタンガムの規則形の変性は、著しい粘度増加を伴う。したがって、これらの微粒子組成物を有利に使用して、容易にポンプで送ることができ、簡単な加熱によって、はるかに粘稠な系に変換することができる水性キサンタン分散体を素早く製造することも可能である。
【0033】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明の微粒子組成物は、容易な水分散性と著しく改良された粘度を高める性質とを併せ持つ。これらの改良された粘度を高める性質は、本明細書において前に記載されたように、0.7重量%キサンタンガムの濃度で25℃の蒸留水に組成物を分散して得られる分散体の粘度を測定することによって、裏付けることができる。キサンタン添加に続いて2分間の撹拌後、前記分散体は、ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、12rpmの回転速度でスピンドル3を使用して測定して、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度を示す。
【0034】
かなりのレベルの電解質が存在しない本発明の微粒子組成物は、比較的に少量を使用して、非常に短い時間内に非常に著しい粘度増加を与えることができるという利点をもたらす。この有利な特徴は、キサンタンの乾燥物の重量に基づき0.7%の濃度で25℃の蒸留水中に入れた場合に、2分間の撹拌後に、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度を有する分散体を与えるという事実によって裏付けられる。典型的に、本発明の組成物は、前記条件下において、25℃で少なくとも3000mPa.s、さらに好ましくは、25℃で少なくとも4000mPa.sの粘度を有する分散体を与える。また、本発明の微粒子組成物で達成することができる並はずれた速い粘度増加は、キサンタンガムの完全な分散後2分以内に、実質的な更なる粘度の増加がまったく観察されないという事実によっても証明される。換言すれば、2分間の撹拌後に得られた分散体の25℃での粘度は、さらに20分撹拌しても、100%を超えて増加しない。これに対し、商業的に利用可能な微粒子キサンタン調製物は、これらの同じ条件下で典型的に300%の程度の粘度増加を示す。
【0035】
固体NaClが加えられ、完全に溶解され、0.05Mのイオン強度を与える場合、キサンタン添加に続く2分間の撹拌後に得られた水性分散体は、最初の値の1/3(33%)未満、好ましくは1/5(20%)未満までの粘度の減少を示す。この塩の感応性は、粒子の高分子電解質の特徴の結果である。本発明の微粒子組成物は、塩溶液に分散される場合、粘度は、低いはずである。しかしながら、加熱してその後冷却したときには、粘度は不可逆的に変化し、この特徴は、製造又は調製中に加熱にかけられる食品組成物においては、非常に有利である。
【0036】
本発明者らは、本発明の容易に分散可能な組成物がかなりの量、例えば少なくとも10重量%の多糖類又はタンパク質をキサンタンガムに加えて含む場合、前記組成物が、蒸留水中に分散されたときに観察される粘度上昇の速度を、いくらか減少させることができることを認めた。キサンタンガムの重量で少なくとも10%の多糖類又はタンパク質を含むこれらの組成物は、典型的には、キサンタン添加に続く10分間の撹拌後に得られる分散体は、ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、12rpmの回転速度でスピンドル3を使用して測定して、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度を示すことを特徴とする。好ましくは、10分間の撹拌後に分散体は、25℃で少なくとも3000mPa.s、さらに好ましくは、25℃で少なくとも4000mPaの粘度を有する。
【0037】
本発明の組成物の有利な粘度を高める性質は、塩/電解質レベルに依存する。前記組成物が、電解質のかなりのレベルを含む水性環境において応用される場合、本発明の組成物の粘度を高める性質は、ほとんど目立たないことがある。したがって、本発明の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、キサンタン0.7%を含有する前記物質の分散体のイオン強度が、約0.025%塩化ナトリウムと同等又はそれ未満のイオン強度(すなわち、0.005Mより少ないイオン強度)を与えるような電解質の比較的低いレベルを含む。
【0038】
また、本発明は、電解質のかなりのレベルを含有する微粒子キサンタン組成物を包含する。この実施形態による微粒子組成物は、水中に容易に分散可能であり、最初は高い粘稠な水性相を与えないという利点を提供する。しかしながら、このようにして得られた分散体をキサンタンガムの規則形を変性するに十分高い温度に加熱することによって、前記分散体の粘度は、著しく上昇させることができる。したがって、簡単な加熱によって、はるかにずっと粘稠な系に変換することができる容易にポンプで送ることができる水性キサンタン分散体を素早く製造するために、このような電解質を含有する組成物を使用することができる。したがって、適切なキサンタン及び電解質の濃度で、小麦粉又はデンプンをこれらのキサンタン含有物質で置換することもできる。このような物質は、天然デンプンに関連する劣化及び乏しい凍結解凍安定性を示さない利点を有している。
【0039】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書において前に述べたように0.7重量%の濃度での蒸留水へのキサンタン添加に続く10分間の撹拌後に得られる分散体は、少なくとも0.005Mのイオン強度及び2000mPa.s未満の粘度を示し、同分散体は、100℃の温度に1分間加熱した後、少なくとも300%の粘度における増加を示す、キサンタン組成物(前記両粘度は、ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、12rpmの回転速度でスピンドル3を使用して測定される)に関する。特に好ましい実施形態によれば、10分間の撹拌後に得られる分散体は、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.05Mのイオン強度を示す。
【0040】
本発明の微粒子組成物の別の特別な性質は、前記組成物が水性環境に完全に分散されたときに明白になる。顕微鏡下で観察した場合、加熱前、水和されたキサンタン含有粒子は、不連続の膨潤された粒子として容易に同定することができる。これに対し、商業的に利用可能な微粒子キサンタン調製物は、水への完全な分散後、元の粒子は、もはや区別できない状態に分散する。したがって、好ましい実施形態において、本発明の微粒子組成物は、蒸留水にキサンタンガムを完全に分散後、前記キサンタンガムは主として、不連続の膨潤された粒子の形で得られた水性分散体中に存在するということを特徴とする。これらの膨潤された粒子の量は、元の乾燥物質の粒径に依存する。典型的には、他の電解質が存在しない蒸留水において、前記粒子は、切り離した場合、膨潤して、5から15倍だけ平均寸法において増加する。「膨潤された粒子」という用語は、本明細書において使用されるときは何時でも、完全に水和され、水和の結果として容積において実質的に増大した粒子を指す。
【0041】
さらに、本発明の組成物の他の特別で好ましい特徴は、70℃を超える温度への加熱時に非常に実質的な粘度変化を示すという本発明の組成物の水性分散体の傾向に関する。典型的には、本発明の組成物は、本明細書において前に述べたように0.7%のキサンタン濃度での蒸留水中への前記組成物の完全な分散1時間後、25℃での得られた分散体の粘度は、同分散体を100℃で1分間加熱した後に得られる水系の25℃の粘度より、少なくとも4倍も高いということを特徴とする。
【0042】
いかなる解釈によっても拘束されることを望まないが、これは、本発明の微粒子組成物に含まれるキサンタンが、分子状キサンタンへ戻るからであると信じている。本発明者らは、本発明の微粒子組成物におけるキサンタンの特別な性質は、規則正しい形で分子状キサンタンを維持する二重螺旋構造によって維持される分子状キサンタンのネットワークの結果であると仮定する。この証拠は、ある範囲の塩濃度で調製された0.75%微粒子キサンタンに関して測定された変性温度の調査から出て来る。熱的変化を測定するためにSetaram Micro DSC III(Setaram、Caluire、フランス)を使用した。使用した試料量は、約700mgであり、ベースラインは、蒸留水に関して得た。次いで、試料皿中の蒸留水を、キサンタンガム分散体で置換し、両方の皿を、マイクロカロリメータ中に入れた。直径9mm及び使用可能量1mlのステンレススチール皿(ハステロイ)を使用した。
【0043】
セルを20℃から120℃に1℃/分で加熱し、キサンタンガムの温度遷移を観察した。次いで、セルを1℃/分で20℃に冷却した。続いて1℃/分での120℃への再加熱、その後の20℃への再冷却を行った。キサンタンガム温度遷移の間のピーク温度(オンセット及びオフセット)及び吸収された、又は放出されたエネルギーをMicro DSC IIIに備え付けられたSetsoftソフトウェア(バージョン1.35)を使用して計算した。この曲線及び充当されるベースラインの間の面積からピークエンタルピーを算出した。エンタルピー値(ΔH)は乾燥キサンタンガムのグラム当たりのジュールで決定した。全ての測定を2回行った。この方法で測定された変性温度を、前記試料がRapid Viscosity Analyser中で加熱されたときの粘度ピーク温度と比較した。この濃度において、本発明者らは、観察された粘度ピークは、微粒子構造を維持するキサンタン螺旋の変性に起因するキサンタン粒子の膨潤(粘度の増加)及びその後の分裂(粘度の減少)によるものと解釈する。
【0044】
本発明の微粒子組成物中に含まれるキサンタンガムの特別な挙動の更なる結果は、微粒子物質を分散させ、次いでその後に加熱して微粒子構造を分裂させることによって、分子状に分散されたキサンタン溶液を、迅速かつ好都合に調製することができることである。前記分散体が、塩又はその他の電解質を含み、この濃度が、約1%を超える場合、この結果は、加熱時の粘度増加であり得る。塩及び他の電解質の存在下の高温での粘度におけるこの増加は、加熱を含む食品応用において価値があり得る。例えば、焼成する製品及び殺菌又は滅菌する食品など。また、キサンタンガムの高濃度溶液を塩環境において好都合に調製できるようになり、このことは、油井掘削への応用においてかなり有利である。
【0045】
本発明の微粒子組成物は、かなりの量の水を含有することができる。好ましくは、水の量は、前記組成物の自由流動性の特徴が損われるレベルを超えない。典型的には、本発明の組成物は、0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の水を含有する。
【0046】
本明細書において前に述べたように、本発明の組成物の有利な性質は、キサンタンガムを例えばグリオキサールなどで化学的に処理する必要なしに得ることができることである。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物中に含まれるキサンタンガムは、化学的に架橋され、又はグリオキサールで処理されていない。さらにもっと好ましくは、前記キサンタンガムは、化学的に処理されていない。本明細書で、「化学的に処理される」という用語は、多糖類中の反応性基と化学剤との間の化学的反応の結果として、キサンタンガムの化学的な性質の改変をいう。
【0047】
本発明の組成物は、組成物の分散性をさらに高めるために、好適には追加の界面活性剤を含むことができる。本発明の組成物に好適に入れることができる界面活性剤の例には、レシチン、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタンエステル、ナトリウムステアロイル2−ラクチレート、ステアリル−2−ラクチル酸、ポリオキシルステアレート及びこれらの任意の組合せが挙げられる。本発明の組成物におけるキサンタンガム:界面活性剤の重量比は、95:5を超え、さらに好ましくは、97:3を超える。
【0048】
本発明の微粒子組成物は、比較的温和な条件下でキサンタンガムの水性スラリーを押し出すことによって得ることができる。したがって、他の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び5と60重量%の間の水を含むスラリーを100℃未満の温度で押し出すことによって得ることができる。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガムを含有する不連続の膨潤した粒子の水性分散体であって、デンプンを含まないか、又はキサンタンガムの100重量%未満の量でデンプンを含み、分散体を20℃で24時間保存した場合、膨潤した粒子(水和後)の直径が、30%を超えて変化しない水性分散体に関する。本発明の分散体における膨潤した粒子の安定性は、キサンタン分子間の非共有結合相互作用によって維持される。換言すれば、この安定性は、例えば架橋剤の使用なしに有利に達成される。
【0050】
本発明の微粒子組成物は、冷水に分散した場合、崩壊せず、溶解しない膨潤したキサンタン粒子の分散体を生成する。いくつかの有利なレオロジー的な性質は、本発明の分散体における膨潤した粒子は、時間がたっても安定であるということと関係する。非常に好ましい実施形態によれば、本発明の分散体における膨潤した粒子の直径は、20℃で24時間保存した場合、20%を超えて変化せず、好ましくは、これは10%を超えて変化せず、最も好ましくは、5%を超えて変化しない。
【0051】
他の好ましい実施形態によれば、本発明の分散体は、分散体を100℃に1分間加熱後に得られる水性系の25℃での粘度よりも少なくとも5倍高い(前記粘度は、ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、12rpmの回転速度でスピンドル3を使用して測定される)25℃での粘度をさらに特徴とする。
【0052】
膨潤した粒子内に含まれるキサンタンガムの量は、乾燥物の重量で、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%である。水性分散体中に含まれるキサンタンガムの量は、好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.2重量%、最も好ましくは少なくとも0.3重量%である。典型的には、水性分散体中のキサンタンの量は、30重量%を超えず、さらに好ましくは、これは10重量%を超えず、最も好ましくは4重量%を超えない。
【0053】
本発明の更なる態様は、前に定義した水性分散体を含む食品に関するものである。好ましい実施形態において、前記食品は、デザート、フィリング(fillings)、ソース、バッター(batters)、生地、焼成製品及びスプレッドからなる群から選択される。
【0054】
本発明の他の態様は、本明細において前に定義された水性分散体を含む掘削流体に関する。
【0055】
さらに本発明の他の態様は、前記水性分散体及び薬学的に活性な物質を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、経口の液状調製物の形並びに注射可能な及び注入可能な溶液又は懸濁液の形であり得る。また、医薬組成物は、前記水性分散体及び薬学的に活性な物質を保持するカプセル、坐剤又は経皮デバイスの形をとることもできる。前記薬学的に活性な物質はキサンタンの分散体の膨潤した粒子の中又はこれを取り囲んで含有される。活性な物質を膨潤した粒子内に入れることによって、活性物質の放出を効果的に制御することができる。したがって、また活性物質の薬理効果は、医薬組成物をヒト又は動物に投与後制御された形で送達することができる。
【0056】
本発明の最後の態様は、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガムを含む容易に水に分散可能な微粒子組成物の製造方法に関する。一実施形態において、前記方法は、
a.20重量%と60重量%との間の水及び乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含有する混合物を少なくとも60℃の温度で押し出すこと;
b.得られた押出物を乾燥すること;及び
c.前記押出物を乾燥の前、間又は後に微粒子組成物に変換すること
を含み、工程a.及びb.の間に塩化アジポイルを加えない。代替実施形態においては、前記製造方法は、
a.20重量%と96重量%との間の水及び乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含む懸濁液を用意すること;
b.前記懸濁液を少なくとも100℃の乾燥温度を使用してローラー乾燥によって10重量%を超える水分含量に乾燥すること;及び
c.前記ローラー乾燥された懸濁液を少なくとも60℃の温度での乾燥によって微粒子組成物に変換すること
を含み、工程a.及びb.の間に塩化アジポイルを加えない。
【0057】
処理及び乾燥前のキサンタン配合物中への塩又は他の高分子電解質の混入は、水に分散した場合、分子状キサンタンと比較して低い粘度を有する即座に分散可能な粒子をもたらすはずである。
【0058】
本発明は、次の実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
共回転スクリューを有するTwin Screw Clestral BC12 押出装置(Clextral、Firmeny−Cedex、フランス)を使用し、幅13mm×厚さ1mmのスリットダイを通して、キサンタンガム(Satiaxane CX 910、Degusa Texturant Systems、フランス)を押し出した。次の押出条件に従った。
スクリュー直径(mm) 24
スクリュー長さ(mm) 400
スクリュー速度(rpm) 100
押出バレル内部滞留時間(秒) 40
固体給送速度(kg/時間) 3.50(水分含量:12.3重量%)
水流量(l/時間) 2.14
バレル内部の水の合計量(kg/時間) 2.57(水分含量:45.6重量%)
給送部の末端からバレルに沿った3つの加熱ゾーンの温度(℃):85、85及び70
【0060】
次いで、押し出したキサンタンガムを真空オーブン(Sanyo Gallenkamp PLC)中で、1000ミリバールの圧力下において65℃で約72時間乾燥させた。次いで、押し出したキサンタンガムは、0.25mmの篩を装着したCyclotecミルを使用して室温で125μmと250μmとの間の粒径に磨砕した。最終の水分含量は、8%未満(湿潤ベース)であった。
【0061】
粘度の決定は、Synchro−Lectric LVT ブルックフィールド粘度計(Brookfield Engineering Laboratories inc.、Stoughton Massachusetts、米国)を使用して、スピンドル3及び12rpmの回転速度で行った。1000mlのビーカーに500mlの蒸留水を入れること、5cmの直径を有する4枚羽根車で撹拌すること、300rpmの固定速度で動かすこと、及びキサンタンガムを加えて、キサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度を与えることを含む方法を使用して、押し出したキサンタンガムをキサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度で25℃において蒸留水中に2分以内に分散させた。測定された粘度の値は、8510mPa.sであった。
【0062】
加工されていない次の市販のキサンタンガム:キサンタンガム Satiaxane CX 910(Degusa);キサンタンガム E415(CPKelco);キサンタンガム pH Rapid(Tic Gums)もまた評価した。分散条件及び濃度(0.7%)は、同じであった。粘度は再び、Synchro−Lectric LVT ブルックフィールド粘度計(Brookfield Engineering Laboratories inc.、Stoughton Massachusetts、米国)を使用して、スピンドル2(粘度があまりに低すぎて、スピンドル3を使用して信頼できるように測定できなかった)及び12rpmの回転速度で測定した。次の結果を得た。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例2)
実施例1において記載したキサンタンガム調製物の分散体をさらに20分間撹拌したところ、粘度が次の値に変化した。
【0065】
【表2】

【0066】
(実施例3)
実施例1に記載した条件を使用して、実施例1で加工したキサンタンガムを1分間で蒸留水中に分散させた。固体NaClを0.01Mの最終の濃度を与えるように加えた。次いで、20分間撹拌した後に実施例2に記載したように粘度を測定した。1425mPasの粘度値を得た。
【0067】
(実施例4)
加工されていないキサンタンガム(Satiaxane CX 910、Degusa Texturant Systems、フランス)を次の物質:マルトデキストリン(マルトデキストリン DE5、Cerestar UK LTD、Manchester、英国);ライ麦粉(Doves farm foods、Salisbury、英国);小麦粉(Viking strong bread flour、Whitworth Bros.、Victoria Mills Wellingbourough UK)(キャリアと呼ばれる)と1:1の比率で配合した。次いで、実施例1において記載した条件下で均質な配合物を次いで一緒に共押出しし、磨砕し、篩にかけた。
【0068】
1.4%(共押出しした混合物の乾燥重量に基づいて)の共押出混合物(キサンタンガム0.7%/キャリア0.7%)を蒸留水に分散させ、実施例1及び2に記載した方法に従って分散体の粘度を評価した。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
(実施例5)
キサンタンガム(Satiaxane CX 910、Degusa Texturant Systems、フランス)をキサンタンの乾燥重量に基づいて5%の濃度で室温において水中に分散させ、次いでドラム乾燥した。稼動条件は、
水蒸気圧(バール) 1.3
ドラム回転速度(rpm) 3
ドラム乾燥後のキサンタンガム水分含量 17重量%
であった。
【0072】
ポストドラム乾燥法は、実施例1に述べたものと同じであった。ドラム乾燥したキサンタンガムの乾燥重量に基づいてドラム乾燥したキサンタンガム0.7%を蒸留水中に分散させ、その粘度を実施例1及び2に記載した方法に従って評価した。
【0073】
【表5】

【0074】
(実施例6)
実施例1による加工したキサンタンガム10gを25℃の0.1MのNaCl水溶液の500ml中に分散させ、300rpmの速度で2分間撹拌した。次いで、この分散体の一定分量25gをRapid Viscosity Analyser(Newport Scientific、Warriewood、オーストラリア)へ移した。95℃に加熱し、その後冷却したときの粘度を追跡した。図1に示した温度及び粘度プロファイル(Rapid Viscosity Analyserにおいて決定した)は、微粒子キサンタンの最初の膨潤、この構造の分裂が引き起こす最初の粘度開放、及びその後の冷却時の分子状に分散した規則正しい構造の形成を暗示している。粘度−温度プロファイルは、デンプン及び穀物粉に関して典型的に得られるものと似ていることを理解することができる。
【0075】
【表6】

【0076】
(実施例7)
加工されていないキサンタンガム(Satiaxane CX 910、Degusa Texturant Systems、フランス)を、大豆粉(Soja Austria SAN、Wien、オーストリア)、グルテン(Amygluten 140)及びレンネットカゼイン(高タンパク質牛乳抽出物、Kerry Foods、Ltd.)と1:1の比率で配合した。次いで、均質な配合物を実施例1に記載した条件下で共押出しし、磨砕し、篩にかけた。2%のキサンタンを含有する組成物の粘度(溶剤0.1M NaCl)を実施例6に記載したように測定した。この結果を図2に示す。
【0077】
【表7】

【0078】
(実施例8)
1%のキサンタンガム及び1:1共押出配合物を1%のKCl中に75°Fの温度で2時間かけて分散させた。懸濁液の不均質な性質(ビーカーの底に粒子が沈んでいる)のために、ブルックフィールド粘度計を使用する粘度の敏感な測定が不可能であったが、これを試みた場合、粘度は常に100mPas未満であった。100℃に加熱し、その後に2時間かけて75°Fに冷却した場合、ブルックフィールドLVT、スピンドルNo.3及び回転速度60rpmを用いて測定した粘度値は、次のとおりである。
【0079】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥物の重量で少なくとも10%、好ましくは20%のキサンタンガム及び60%以下、好ましくは50%以下のデンプンを含む容易に水に分散可能な微粒子組成物であり、1000mlのビーカーに蒸留水500mlを入れること、5cmの直径を有する4枚羽根車付き撹拌機で撹拌すること、300rpmの固定速度で作動させること、及びキサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度を与えるように前記キサンタン含有微粒子組成物を加えることを含む方法を使用して、前記組成物中に存在するキサンタンガムを、キサンタンの乾燥重量に基づいて0.7%の濃度において25℃の蒸留水中に2分以内に完全に分散できることを特徴とする組成物。
【請求項2】
米国食品医薬品局の連邦規則集の第3巻、タイトル21のセクション172.695において記載されている第1の粘度測定にかけた場合、23.8℃で500mPa.s未満の粘度を与え、前記第1の粘度測定は、
a.塩化カリウム1重量%を含有する水溶液に前記組成物を加え、キサンタンガム1重量%を含有する水性組成物を生成する工程;
b.2時間撹拌する工程;及び
c.ブルックフィールド粘度計モデルLVF粘度計又は均等物によって、スピンドルNo.3を60rpmで使用して、前記撹拌した水性組成物の粘度を決定する工程
を含み、
前記撹拌した水性組成物を第2の粘度測定にかけた場合、23.8℃で少なくとも600mPa.sの粘度を与え、前記第2の粘度測定は、
a.第1の粘度測定後に前記撹拌した水性組成物を直ちに100℃の温度に加熱する工程;
b.100℃の温度を1分間維持する工程;
c.120±10分以内に23.8℃に冷却する工程;及び
d.ブルックフィールド粘度計モデルLVF又は均等物によって、スピンドルNo.3を60rpmで使用して、前記粘度を決定する工程
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項2に定義された第1の粘度測定及び第2の粘度測定にかけた場合、第1の粘度測定からの粘度より少なくとも50%高い第2の粘度測定からの粘度を与え、観察された粘度増加が、組成物中に含まれるキサンタンガムに大きく起因する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
キサンタン添加に続く2分間の撹拌後に得られた分散体が、ブルックフィールドモデルLVF粘度計又は均等物によって、スピンドル3を12rpmの回転速度で使用して測定して、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度を示すことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
固体NaClを加え、完全に溶解し、0.05Mのイオン強度を与える場合、2分間の撹拌後に得られた分散体が、最初の値の1/5以下に粘度の減少を示す、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
2分間の撹拌後に得られた分散体の粘度が、さらに20分間撹拌したとき、100%を超えて増加しない、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
キサンタンガムの重量で少なくとも10%の多糖又はタンパク質をさらに含み、キサンタン添加に続く10分間の撹拌後に得られる分散体が、ブルックフィールドモデルLVF粘度計又は均等物によって、スピンドル3を12rpmの回転速度で使用して測定して、25℃で少なくとも2000mPa.sの粘度を示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
固体NaClを加え、完全に溶解して、0.05Mのイオン強度を与える場合、10分間の撹拌後に得られた分散体が、最初の値の1/5以下に粘度の減少を示す、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
10分間の撹拌後に得られた分散体の粘度が、さらに20分間撹拌したとき、100%を超えて増加しない、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
10〜1000μmの範囲内の容積加重平均粒径を示す、請求項1から9までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
蒸留水中へのキサンタンガムの完全な分散後、前記キサンタンガムが、得られた水性分散体中に不連続の膨潤した粒子の形で存在することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
乾燥物の重量で少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%のキサンタンガムを含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記キサンタンガムが化学的に処理されていない、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
不連続の膨潤した粒子の水性分散体であり、前記膨潤した粒子が、乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガムを含有し、前記分散体が、デンプンを含まないか、又はキサンタンガムの100重量%未満の量でデンプンを含有し、20℃で24時間保存した場合、膨潤した粒子の直径が、30%を超えて変化しない水性分散体。
【請求項15】
0.1と30重量%との間のキサンタンガムを含む、請求項14に記載の水性分散体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の水性分散体を含む食品。
【請求項17】
デザート、フィリング、バッター、生地及びスプレッドからなる群から選択される、請求項16に記載の食品。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の水性分散体を含む掘削流体。
【請求項19】
請求項14又は15に記載の水性分散体及び薬学的に活性な物質を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項2又は3に記載の微粒子組成物を液状水性組成物中に分散し、キサンタンガムの規則正しい形を変性するのに十分な温度に加熱する、キサンタンガム溶液の調製方法。
【請求項21】
乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガムを含有する容易に水に分散可能な微粒子組成物の製造方法であり、
a.20重量%と60重量%との間の水及び乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含有する混合物を少なくとも60℃の温度で押し出すこと;
b.得られた押出物を乾燥すること;及び
c.前記押出物を乾燥の前、間又は後に微粒子組成物に変換すること
を含み、工程a.及びb.の間に塩化アジポイルを加えない方法。
【請求項21】
乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガムを含有する容易に水に分散可能な微粒子組成物の製造方法であり、
a.20重量%と96重量%との間の水及び乾燥物の重量で少なくとも10%のキサンタンガム及び60%以下のデンプンを含む懸濁液を用意すること;
b.前記懸濁液を少なくとも100℃の乾燥温度を使用してローラー乾燥によって10重量%を超える水分含量に乾燥すること;及び
c.前記ローラー乾燥された懸濁液を少なくとも60℃の温度での乾燥によって微粒子組成物に変換すること
を含み、工程a.及びb.の間に塩化アジポイルを加えない方法。

【公表番号】特表2008−524372(P2008−524372A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546587(P2007−546587)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/NL2005/050078
【国際公開番号】WO2006/065136
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507200835)シーエスエム ネーデルラント ビー.ブイ. (1)
【出願人】(501038322)ユニバーシティ オブ ノッティンガム (10)
【Fターム(参考)】