説明

水ジェット推進艇

【課題】触媒をエンジンの近くに配置すると共に、エンジンからの振動による排気系統の不具合の発生を抑えることができる水ジェット推進艇を提供する。
【解決手段】水ジェット推進艇において、第1排気管41は、エンジン3に固定され、排気ポートに接続される。ダンパー部は、エンジンからの振動を低減する。触媒ユニット42は、第1排気管に接続される。触媒ユニットは、ダンパー部を介してエンジンに取り付けられる。第2排気管は、可撓性を有する第1可撓管を含み、触媒ユニットに接続される。ウォーターロック44は、船体に固定され、第2排気管に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水ジェット推進艇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水ジェット推進艇には、排気通路に配置される触媒を備えるものがある。例えば、特許文献1は、触媒を備えるウォータビークルを開示している。触媒は、取付フランジを介して中間排気管に支持されている。中間排気管は、エンジンのシリンダヘッドにボルトにより固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−11393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排出ガスが高温に保たれた状態で触媒を通過することにより、触媒による排出ガスの処理効率が向上する。このため、エンジンから触媒までの排気通路の経路長は、短い方が好ましい。従って、触媒を含む触媒ユニットをエンジンに近い位置に配置するために、触媒ユニットがエンジンに固定される場合がある。
【0005】
しかし、上述した特許文献1では、中間排気管がエンジンのシリンダヘッドにボルトにより固定されている。このため、エンジンの振動が、中間排気管と触媒とに直接的に伝わってしまう。この場合、触媒の位置がずれたり、或いは、触媒が損傷したりするなど、触媒ユニットに不具合が生じ易くなる。また、触媒ユニットは、ウォーターロックに接続される。ウォーターロックが船体に固定されている場合、エンジンからの振動により触媒ユニットが振動しても、ウォーターロックは触媒ユニットの振動と同調し難い。このため、ウォーターロックと触媒ユニットとの接続部分が損傷し易くなる。
【0006】
本発明の課題は、触媒をエンジンの近くに配置すると共に、エンジンからの振動による排気系統の不具合の発生を抑えることができる水ジェット推進艇を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る水ジェット推進艇は、船体と、エンジンと、ジェット推進ユニットと、第1排気管と、ダンパー部と、触媒ユニットと、第2排気管と、ウォーターロックと、を備える。エンジンは、排気ポートを含み、船体に収容される。ジェット推進ユニットは、エンジンにより駆動される。ジェット推進ユニットは、船体のまわりの水を吸い込んで噴射する。第1排気管は、エンジンに固定され、排気ポートに接続される。ダンパー部は、エンジンからの振動を低減する。触媒ユニットは、第1排気管に接続される。触媒ユニットは、ダンパー部を介してエンジンに取り付けられる。第2排気管は、可撓性を有する第1可撓管を含み、触媒ユニットに接続される。ウォーターロックは、船体に固定され、第2排気管に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る水ジェット推進艇では、触媒ユニットが、ダンパー部を介してエンジンに取り付けられる。このため、触媒ユニットがエンジンの近くに配置される。また、エンジンから触媒ユニットに伝わる振動がダンパー部によって低減される。さらに、第2排気管が、触媒ユニットとウォーターロックとの間に配置されている。第2排気管の第1可撓管は、可撓性を有する。このため、触媒ユニットとウォーターロックとの振動差が第1可撓管によって吸収される。これにより、ウォーターロックと触媒ユニットとの接続部分が損傷することが抑えられる。このように、本発明の一態様に係る水ジェット推進艇では、触媒をエンジンの近くに配置すると共に、エンジンからの振動による排気系統の不具合の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る水ジェット推進艇の全体構成を示す断面図。
【図2】エンジン及び排気通路の一部を示す側面図。
【図3】排気マニホールドユニットを取り外した状態のエンジン及び排気通路の一部を示す側面図。
【図4】エンジン及び排気通路の一部を示す平面図。
【図5】前側配管の側面図。
【図6】前側配管と後側配管とジョイント部との断面図。
【図7】エンジンおよび排気通路の一部を示す背面図。
【図8】触媒ユニットの断面図。
【図9】図7におけるIX−IX断面図。
【図10】触媒ユニットの平面図。
【図11】支持ブラケットの斜視図。
【図12】触媒ユニットと支持ブラケットとの取付構造を示す拡大断面図。
【図13】エンジン及び排気通路の一部を後方且つ上方から見た図。
【図14】図4におけるXIV−XIV断面の一部を示す図。
【図15】他の実施形態に係るエンジンおよび排気通路の一部を示す平面図。
【図16】他の実施形態に係るウォーターロックを示す背面図。
【図17】実施形態と他の実施形態とに係る水ジェット推進艇におけるウォーターロックの配置を示す平面図。
【図18】他の実施形態に係る水ジェット推進艇の船体内の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る水ジェット推進艇について説明する。図面において、FWDは、推進艇の前進方向を示している。BWDは、推進艇の後進方向を示している。Wは、水ジェット推進艇の幅方向すなわち左右方向を示している。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る水ジェット推進艇1の全体構成を示す断面図である。水ジェット推進艇1は、いわゆるパーソナルウォータークラフト(PWC)である。水ジェット推進艇1は、船体2と、エンジン3と、排気通路4と、ジェット推進ユニット5と、を備えている。船体2は、デッキ2aとハル2bとを有する。エンジン3は、船体2の内部に収容されている。ジェット推進ユニット5は、エンジン3によって駆動される。排気通路4は、エンジン3から船体2の外部へ排出ガスを導く。言い換えれば、排気通路4は、エンジン3から水中へ排出ガスを導く。
【0012】
船体2の内部には、エンジンルーム2cが設けられている。エンジンルーム2cは、エンジン3および燃料タンク6などを収納する。エンジンルーム2cの後部には、仕切り板2dが配置されている。仕切り板2dは、ハル2bから鉛直上向きに延びるように配置されている。仕切り板2dは、船体2の内部を前後方向に仕切る。また、仕切り板2dは、ロールの発生を抑制するように構成されている。なお、ロールとは、船体2が前後方向を軸として捩じれる現象である。デッキ2aにはシート7が取り付けられている。シート7は、エンジン3の上方に配置されている。シート7の前方には、船体2を操舵するためのステアリング8が配置されている。
【0013】
なお、以下の説明において、前後左右の方向及び傾斜などの方向は、水ジェット推進艇1が静水に浮かんでいるときの姿勢において、シート7に着座したライダーから視たときの方向をいうものとする。
【0014】
エンジン3は、直列4気筒4ストロークエンジンからなる。エンジン3は、クランク軸31を有する。クランク軸31は、前後方向に延びるように配置されている。クランク軸31の後方には、カップリング部33が配置されている。カップリング部33は、エンジン3の出力軸とジェット推進ユニット5の入力軸とを連結する。具体的には、カップリング部33は、一対のカップリング33aおよび33bを有する。カップリング33aは、クランク軸31に固定されている。カップリング33bは、後述するインペラシャフト50に固定されている。カップリング33aおよび33bは、クランク軸31とインペラシャフト50とを接続している。カップリング33aおよび33bは、クランク軸31の回転をインペラシャフト50に伝達する。
【0015】
排気通路4には、排気マニホールドユニット41と、触媒ユニット42と、排気管部43と、ウォーターロック44と、排気管45とが設けられている。排気通路4の詳細な構成に付いては後述する。
【0016】
ジェット推進ユニット5は、船体2のまわりの水を吸い込んで噴射する。ジェット推進ユニット5は、インペラシャフト50と、インペラ51と、インペラハウジング52と、ノズル53と、デフレクタ54と、バケット55とを含む。インペラシャフト50は、エンジンルーム2cから仕切り板2dを通り、後方に延びるように配置されている。インペラシャフト50の後部は、船体2の水吸引部2eを通ってインペラハウジング52内に導出されている。インペラハウジング52は、水吸引部2eの後部に接続されている。ノズル53は、インペラハウジング52の後方に配置されている。
【0017】
インペラ51は、インペラシャフト50の後部に取り付けられている。インペラ51は、インペラハウジング52の内部に配置されている。インペラ51は、インペラシャフト50とともに回転して、水吸引部2eから水を吸引する。インペラ51は、吸引した水をノズル53から後方に噴射させる。デフレクタ54は、ノズル53の後方に配置されている。デフレクタ54は、ノズル53からの水の噴射方向を左右方向に転換するように構成されている。バケット55は、デフレクタ54の後方に配置されている。バケット55は、ノズル53およびデフレクタ54からの水の噴射方向を前方に転換可能に構成されている。
【0018】
図2は、エンジン3及び排気通路4の一部を示す側面図である。また、図3は、後述する排気マニホールドユニット41を取り外した状態のエンジン3及び排気通路4の一部を示す側面図である。エンジン3は、クランクケース32とシリンダ34とシリンダヘッド35とを有する。クランクケース32は、上述したクランク軸31を保持する。クランクケース32の底部には、オイルパン36が取り付けられている。クランクケース32の側方にはオイルクーラー37が配置されている。また、クランクケース32の前部には、オイルポンプ38が取り付けられている。オイルポンプ38は、クランク軸31の回転によって駆動される。オイルポンプ38は、オイルパン36内の油を汲み上げて、シリンダ34の内部に供給する。オイルパン36内の油は、オイルクーラー37において冷却される。シリンダ34およびシリンダヘッド35は、クランクケース32の上方に配置されている。シリンダ34及びシリンダヘッド35の側方には、蓄電制御装置39が配置されている。蓄電制御装置39は、レクチファイアとレギュレータとが一体化された装置である。レクチファイアは、エンジン3によって駆動される発電機(図示せず)によって生成された交流電流を直流電流に整流する。レギュレータは、バッテリー(図示せず)に充電される電力の電圧を制御する。
【0019】
図3に示すように、シリンダヘッド35は、複数の排気ポート35a−35dを有する。本実施形態では、シリンダヘッド35は、第1〜第4排気ポート35a−35dを有する。エンジン3で発生した排出ガスは、第1〜第4排気ポート35a−35dからエンジン3の外部に排出される。第1〜第4排気ポート35a−35dは、シリンダヘッド35の側面に形成されている。第1〜第4排気ポート35a−35dは、それぞれ、エンジン3の側方に向けて開口している。第1〜第4排気ポート35a−35dは、前方から後方へ向かって順に配置されている。すなわち、第1排気ポート35aは、第1〜第4排気ポート35a−35dのなかで最も前方に位置している。第4排気ポート35dは、第1〜第4排気ポート35a−35dのなかで最も後方に位置している。第1〜第4排気ポート35a−35dの周囲には、水流路35eが設けられている。水流路35eには、ウォーターポンプ(図示せず)により汲み上げられた水が流れる。
【0020】
図4は、エンジン3及び排気通路4の一部を示す平面図である。なお、図4では、理解の容易のため図2に示されている蓄電制御装置39が省略されている。排気マニホールドユニット41は、エンジン3に接続されている。排気マニホールドユニット41は、第1〜第4排気ポート35a−35dに取り付けられている。排気マニホールドユニット41は、エンジン3から排出される排出ガスを案内する。排気マニホールドユニット41は、エンジン3と触媒ユニット42とを連結している。排気マニホールドユニット41は、本発明の「第1排気管」の一例である。排気マニホールドユニット41は、エンジン3に固定されている。具体的には、排気マニホールドユニット41は、ボルトなどの固定部材によって、シリンダヘッド35の側面に固定されている。排気マニホールドユニット41は、エンジン3の一側方において前後方向に延びている。また、排気マニホールドユニット41は、エンジン3よりも後方の位置において、エンジン3の他側方に向かって湾曲するように構成されている。
【0021】
排気マニホールドユニット41は、前側配管61と、後側配管62と、ジョイント部63とを含む。前側配管61は、エンジン3に接続される。前側配管61は、アルミニウムなどの金属で形成されている。前側配管61は、エンジン3の側方において前後方向に延びるように構成されている。前側配管61は、エンジン3の側面に対向するように配置されている。前側配管61は、複数の枝部61a−61dと、幹部61eとを含む。枝部61a−61dは、第1〜第4排気ポート35a−35dにそれぞれ接続されている。枝部61a−61dは、第1〜第4排気ポート35a−35dから側方へ延びるように構成されている。具体的には、枝部61a−61dは、第1〜第4排気ポート35a−35dから側方且つ下方に向かって延びるように構成されている。本実施形態では、複数の枝部61a−61dは、第1〜第4枝部61a−61dを有する。第1〜第4枝部61a−61dは、前方から後方へ向かって順に配置されている。すなわち、第1枝部61aは、第1〜第4枝部61a−61dのなかで最も前方に位置している。第4枝部61dは、第1〜第4枝部61dのなかで最も後方に位置している。幹部61eは、エンジン3の側方において前後方向に延びるように配置されている。図2に示すように、側面視において、幹部61eの上面および下面は、概ね水平に配置されている。幹部61eの直径は、前後方向に亘って概ね一定である。側面視において、幹部61eの軸線AX1(図5参照)は、第1〜第4排気ポート35a−35dよりも下方に位置している。
【0022】
図5は、前側配管61の側面図である。幹部61eは、複数の枝部61a−61dからの排出ガスが集合されるように構成されている。具体的には、第1〜第4枝部61dは、それぞれ幹部61eに接続されている。幹部61eは、複数の接続口61f−61iを有する。具体的には、接続口61f−61iは、第1〜第4接続口61f−61iを有する。第1〜第4接続口61f−61iは、前方から後方へ向かって順に配置されている。すなわち、第1接続口61fは、第1〜第4接続口61f−61iのなかで最も前方に位置している。第4接続口61iは、第1〜第4接続口61iのなかで最も後方に位置している。第1接続口61fは、第1枝部61aに接続される。第2接続口61gは、第2枝部61bに接続される。第3接続口61hは、第3枝部61cに接続される。第4接続口61iは、第4枝部61dに接続される。
【0023】
図4に示すように、ジョイント部63は、前側配管61と後側配管62とを接続する。ジョイント部63は、前側配管61の下流に配置されている。ジョイント部63は、前側配管61の後方に配置されている。ジョイント部63は、可撓性を有する材料、たとえばゴムからなる。ジョイント部63は、円筒形状を有している。ジョイント部63の外径は、幹部61eの外径よりも大きい。前側配管61の下流側端部は、ジョイント部63に挿入されている。これにより、前側配管61は、ジョイント部63に接続されている。ジョイント部63は、本発明の一実施形態における「第2可撓管」の一例である。
【0024】
後側配管62は、ジョイント部63の下流に配置されている。後側配管62は、ジョイント部63の後方に配置されている。後側配管62は、触媒ユニット42に向かって湾曲するように構成されている。後側配管62は、アルミニウムなどの金属で形成されている。後側配管62の上流側端部は、ジョイント部63に挿入されている。これにより、後側配管62は、ジョイント部63に接続されている。
【0025】
図6は、前側配管61とジョイント部63と後側配管62との断面図である。図6に示すように、前側配管61は、前側内管61mと前側外管61nとを有する。前側内管61mと前側外管61nとの間には、冷却水が流れるウォータージャケット部61pが形成されている。前側内管61mの下流側端部は、前側外管61nの下流側端部から突出している。同様に、後側配管62は、後側内管62mと後側外管62nとを有する。後側内管62mと後側外管62nとの間には、冷却水が流れるウォータージャケット部62pが形成されている。後側内管62mの上流側端部は、後側外管62nの上流側端部から突出している。ジョイント部63は、前側外管61nの下流側端部の外面と後側外管62nの上流側端部の外面とに跨って被せられている。ジョイント部63は、前側外管61nと後側外管62nとに、締め付け具付きのバンド80aによって固定されている。前側内管61mの下流側端部には段部61kが形成されている。また、後側内管62mの上流側端部には、段部62kが形成されている。前側内管61mの段部61kと後側内管62mの段部62kとの間には、側面断面視においてL字状の隙間が設けられている。この隙間には、シールリング80cが嵌め込まれている。シールリング80cは、断熱ゴム製であり、例えばシリコンゴム製である。シールリング80cには、耐熱金属製の弾性リング80dが取付けられている。弾性リング80dは、例えば、相互に絡まった複数のステンレスワイヤーが圧縮されることにより成形される。また、前側内管61mの下流側端部の外面と後側内管62mの上流側端部の外面とに跨ってスリーブ80eが被せられている。スリーブ80eは、例えばゴムなどの可撓性を有する材料で形成されている。スリーブ80eは、締め付け具付きのバンド80bによって前側内管61mと後側内管62mとにそれぞれ固定されている。前側配管61のウォータージャケット部61pと、後側配管62のウォータージャケット部62pとは、ジョイント部63の内面とスリーブ80eの外面との間の空間63pを介して互いに連通している。このように、前側配管61のウォータージャケット部61pと、後側配管62のウォータージャケット部62pと、ジョイント部63の内面とスリーブ80eの外面との間の空間63pとによって、排気マニホールドユニット41のウォータージャケット部68aが構成されている。前側配管61のウォータージャケット部61pは、上述したエンジン3の水流路35e(図3参照)に連通している。従って、排気マニホールドユニット41のウォータージャケット部68aは、エンジン3の水流路35eに連通している。
【0026】
触媒ユニット42は、後側配管62の下流に配置されている。触媒ユニット42は、排気マニホールドユニット41に接続されている。触媒ユニット42は、シリンダヘッド35の後面に対向するように配置されている。
【0027】
図7は、エンジン3および排気通路4の一部を示す背面図である。図8は、触媒ユニット42の軸線を通る鉛直面での触媒ユニット42の断面図である。触媒ユニット42は、触媒部材64と触媒収容管65を含む。触媒収容管65は、触媒部材64を収容している。触媒収容管65は、アルミニウムなどの金属で形成されている。触媒収容管65は、本発明の「管体」の一例である。触媒部材64は、排気通路4中に配置されている。触媒部材64は、排出ガスに含まれる成分(たとえば、HC、CO、NOxなど)の反応を促進する。触媒部材64は、所定の温度(約300℃)以上の場合に、排出ガスに含まれる成分(たとえば、HC、CO、NOxなど)を効率良く反応させることが可能である。そこで、触媒部材64に到達する排出ガスの温度が低下しないように、触媒部材64は、エンジン3の第1〜第4排気ポート35a−35d近傍に設けられている。
【0028】
具体的には、触媒ユニット42は、エンジン3のシリンダヘッド35の後面に対向するように配置されている。触媒ユニット42は、シリンダヘッド35の後方に配置されている。触媒ユニット42は、シリンダヘッド35の後面に対向する領域を幅方向に沿って延びるように配置されている。触媒ユニット42は、図3に示すように、第1〜第4排気ポート35a−35dと略同一の高さ位置に配置されている。また、図4に示すように、触媒ユニット42は、エンジン3のクランク軸31の上方に配置されている。触媒ユニット42は、クランク軸31を通る中心線C1と平面視において重なるように配置されている。具体的には、平面視において、触媒ユニット42の前部は、クランク軸31の後端部と重なっている。
【0029】
触媒収容管65は、第1触媒収容管66と第2触媒収容管67とを有する。第2触媒収容管67は、第1触媒収容管66と別体の部材である。第1触媒収容管66と第2触媒収容管67とは、触媒ユニット42の軸線方向に並んで配置されている。すなわち、第1触媒収容管66と第2触媒収容管67とは、幅方向に並んで配置されている。第1触媒収容管66は、後側配管62と一体的に形成されている。第2触媒収容管67は、後述する排気管部43の上流管75と一体的に形成されている。
【0030】
図8に示すように、触媒部材64は、フランジ部64aと触媒担体64bとを有している。触媒担体64bは、例えばハニカム構造を有する円筒形の部材であり、触媒が担持されている。触媒担体64bは、例えば、金属製であるが、セラミックなどの他の材料によって形成されてもよい。フランジ部64aは、環状の形状を有している。フランジ部64aは、触媒担体64bの外周面に固定されている。フランジ部64aは、触媒担体64bの外周面から径方向における外方へ向かって突出するように構成されている。フランジ部64aが第1触媒収容管66と第2触媒収容管67との間に挟まれることにより、触媒部材64が触媒収容管65に保持される。フランジ部64aと第1触媒収容管66と第2触媒収容管67とは、ボルトなどの固定部材によって互いに固定される。
【0031】
触媒収容管65は、拡径部65aと、直線部65bと、縮径部65cとを有する。拡径部65aは、触媒部材64よりも上流に位置している。拡径部65aは、下流へ向かって徐々に大きくなる断面積を有する。拡径部65aの内面の底部65dは、水平に幅方向に延びるように構成されている。拡径部65aの内面の上部65eは、下流且つ上方へ向かって傾斜している。直線部65bは、拡径部65aと縮径部65cとの間に位置している。直線部65bは、触媒部材64を収容している。直線部65bの内面の底部65fは、水平に幅方向に延びるように構成されている。直線部65bの内面の底部65fは、拡径部65aの内面の底部65dよりも下方に位置している。触媒部材64は、直線部65bの内面に対して隙間を空けて配置されている。触媒担体64bの底部64cは、拡径部65aの内面の底部65dと概ね同じ高さに位置している。縮径部65cは、触媒部材64よりも下流に位置している。縮径部65cは、下流へ向かって徐々に小さくなる断面積を有する。縮径部65cの内面の底部65gは、水平に幅方向に延びるように構成されている。縮径部65cの内面の上部65hは、下流且つ下方へ向かって傾斜している。排気マニホールドユニット41と触媒ユニット42と排気管部43との内面の底部は、下流へ向かって上昇する部分がないように構成されている。
【0032】
触媒収容管65には、ウォータージャケット部68bが形成されている。ウォータージャケット部68bは、触媒収容管65の外面と内面との間に配置されており、水が通過可能な流路を構成している。ウォータージャケット部68bは、排出ガスが流通することに起因して触媒ユニット42が高温になるのを抑制するように構成されている。触媒ユニット42のウォータージャケット部68bは、上述した排気マニホールドユニット41のウォータージャケット部68aに連通している。ウォータージャケット部68bは、排出ガスが流通する触媒部材64の周囲を取り囲むように構成されている。水がウォータージャケット部68bを流れることにより、触媒ユニット42が冷却される。図9は、図7におけるIX−IX断面図である。図9に示すように、触媒部材64のフランジ部64aには、ウォータージャケット部68cが形成されている。フランジ部64aのウォータージャケット部68cは、触媒収容管65のウォータージャケット部68bに連通している。これにより、水が触媒担体64bには直接的に接触せずに、触媒部材64が冷却される。ただし、図9に示すように、フランジ部64aのうちシリンダヘッド35に対向する部分には、ウォータージャケット部68cが形成されていない。フランジ部64aのうちシリンダヘッド35に対向する部分には、凹部64dが形成されている。凹部64dは、フランジ部64aの内方へ向けて凹んだ形状を有する。すなわち、凹部64dは、シリンダヘッド35から離れるように凹んだ形状を有する。フランジ部64aのこのような形状により、フランジ部64aとシリンダヘッド35の間の隙間が拡大されている。
【0033】
図2,図4,図7に示すように、触媒ユニット42は、支持ブラケット71及びダンパー部72を介してエンジン3に支持されている。支持ブラケット71は、本発明の一実施形態における「支持部材」の一例である。支持ブラケット71は、触媒ユニット42の下方に配置されている。支持ブラケット71は、エンジン3に固定されている。具体的には、支持ブラケット71は、エンジン3のクランクケース32とカバー部材40(フライホールマグネットカバー)とに固定されている。カバー部材40は、クランクケース32の後部に取り付けられている。
【0034】
ダンパー部72は、エンジン3からの振動を低減する。ダンパー部72は、ゴム製の複数のダンパー72a−72dを有する。具体的には、ダンパー部72は、第1〜第4ダンパー72a−72dを有する。第1〜第4ダンパー72a−72dは、本発明の一実施形態における「弾性部材」の一例である。図4に示すように、第1ダンパー72aは、クランク軸31を通る中心線C1の左方に配置される。第2ダンパー72bは、クランク軸31を通る中心線C1の右方に配置される。第3ダンパー72cは、第1ダンパー72aの前方に配置される。第3ダンパー72cは、クランク軸31を通る中心線C1の左方に配置される。第4ダンパー72dは、第2ダンパー72bの前方に配置される。第4ダンパー72dは、クランク軸31を通る中心線C1の右方に配置される。また、第1ダンパー72a及び第2ダンパー72bは、触媒部材54の中心軸線C2(図10参照)よりも後方に配置されている。すなわち、第1ダンパー72a及び第2ダンパー72bは、触媒部材54の中心軸線C2よりもエンジン3から離れた位置に配置されている。第3ダンパー72c及び第4ダンパー72dは、触媒部材54の中心軸線C2よりも前方に配置されている。すなわち、第3ダンパー72c及び第4ダンパー72dは、触媒部材54の中心軸線C2よりもエンジン3に近い位置に配置されている。
【0035】
触媒ユニット42は、第1〜第4ダンパー72a−72dを介して、支持ブラケット71に取り付けられている。触媒ユニット42の触媒収容管65は、触媒収容管65を支持ブラケット71に取り付けるための第1〜第4取付部69a〜69dを有する。第1〜第4取付部69a〜69dは、それぞれ板状の形状を有する。第1〜第4取付部69a〜69dは、それぞれ第1〜第4ダンパー72a−72dに対応して配置されている。図10は、触媒ユニット42の平面図である。図10に示すように、第1〜第4取付部69a〜69dには、上下方向に貫通する第1〜第4取付穴69e−69hが形成されている。図11は、支持ブラケット71の斜視図である。図11に示すように、支持ブラケット71は、第1〜第4支持部71a−71dを有する。第1〜第4支持部71a−71dは、第1〜第4ダンパー72a−72dに対応して配置されている。第1〜第4支持部71a−71dには、後述するボルトが通される孔71e−71hが形成されている。第1〜第4支持部71a−71dの上面は平坦な形状を有しており、第1〜第4ダンパー72a−72dを支持する。
【0036】
図12は、第1ダンパー72aを介した触媒ユニット42と支持ブラケット71との取付構造を示す拡大断面図である。第1ダンパー72aは、第1取付部69aの第1取付穴71aにはめ込まれる。第1ダンパー72aは、円筒形状を有している。第1ダンパー72aの外周面には、環状の溝部72eが形成されている。溝部72eは、第1取付穴71aの縁部と噛み合っている。第1ダンパー72aには、貫通孔72fが形成されている。貫通孔72fには、金属製のカラー72gが嵌め込まれている。ボルト89がワッシャー72hとカラー72gに挿入されるとともに、第1支持部71aの孔71eに螺合している。第2〜第4ダンパー72b−72dを介した触媒ユニット42と支持ブラケット71との取付構造も、それぞれ第1ダンパー72aを介した取付構造と同様である。これによって、触媒ユニット42は、第1〜第4ダンパー72a−72dを介して支持ブラケット71に取り付けられている。
【0037】
図2及び図7に示されているように、ダンパー部72による触媒ユニット42の支持方向は、上下方向である。これに対して、触媒ユニット42において、排出ガスの通過方向は水平方向である。具体的には、触媒ユニット42において、排出ガスの通過方向は幅方向である。従って、ダンパー部72による触媒ユニット42の支持方向は、触媒ユニット42における排出ガスの通過方向に対して垂直である。
【0038】
図7及び図10に示すように、触媒ユニット42の触媒収容管65の外面は、第1〜第4凹部73a−73dを含む。第1〜第4凹部73a−73dは、それぞれ第1〜第4取付部69a−69dの上方に位置する。すなわち、第1〜第4凹部73a−73dは、それぞれ第1〜第4取付孔69e−69hの上方に位置する。第1〜第4凹部73a−73dは、触媒収容管65の外面から触媒収容管65の内方へ向けて凹んだ形状を有する。第1〜第4凹部73a−73dは、それぞれ、第1〜第4取付部69a−69dから上方へ延びるように構成されている。また、図10に示すように、触媒収容管65の内面は、第1〜第4湾曲部73e−73hを有する。第1〜第4湾曲部73e−73hは、それぞれ第1〜第4凹部73a−73dの裏側に位置している。第1〜第4湾曲部73e−73hは、触媒収容管65の内方へ向かって突出するように湾曲した形状を有する。第1湾曲部73e及び第3湾曲部73gは、触媒部材64よりも上流に位置している。第2湾曲部73f及び第4湾曲部73hは、触媒部材64よりも下流に位置している。触媒部材64は、幅方向すなわち排出ガスの通過方向において第1湾曲部73eと第2湾曲部73fとの間に位置している。触媒部材64は、幅方向すなわち排出ガスの通過方向において第3湾曲部73gと第4湾曲部73hとの間に位置している。
【0039】
図4に示すように、支持ブラケット71は、カップリング部33の上方に位置する部分が凹んだ形状を有する。具体的には、支持ブラケット71の後部には、凹部71iが形成されている。凹部71iは、支持ブラケット71の後部からエンジン3へ向けて凹んだ形状を有する。図11に示すように、凹部71iは、第1支持部71aと第2支持部62bとの間に位置している。図13に示すように、エンジン3の後方且つ上方の位置から、或いは、エンジン3の後方からエンジン3を見たときに、支持ブラケット71の下方の位置を容易に視認することができる。
【0040】
図4に示すように、排気管部43は、触媒ユニット42の下流に配置されている。排気管部43は、エンジン3から排出される排出ガスを案内する。排気管部43は、触媒ユニット42とウォーターロック44とを連結する。排気管部43は、本発明の一実施形態における「第2排気管」の一例である。排気管部43は、触媒ユニット42と接続されている部分の近傍で後方に湾曲するように構成されている。排気管部43は、上流管75と接続管76とを含む。図8に示すように、上流管75は、下方且つ側方へ向かって延び、接続管76へ向かって湾曲するように構成されている。上流管75は、アルミニウムなどの金属で形成されている。上流管75には、ウォータージャケット部68dが形成されている。上流管75のウォータージャケット部68dは、触媒収容管65のウォータージャケット部68bに連通している。上流管75の下流側端部は、接続管76に接続されている。接続管76は、上流管75とウォーターロック44とを接続する。
【0041】
図14は、図4におけるXIV−XIV断面の一部を示す図である。図14に示すように、接続管76は、テールパイプ77と、内管78と、排気ホース79とを有する。テールパイプ77は、上流管75の下流側端部に連結される。テールパイプ77は、アルミニウムなどの金属で形成されている。テールパイプ77は、ボルトなどの固定部材によって上流管75に固定されている。テールパイプ77は、前後方向に延びるように配置されている。テールパイプ77には、ウォータージャケット部68eが形成されている。テールパイプ77のウォータージャケット部68eは、上流管75のウォータージャケット部68dに連通している。
【0042】
排気ホース79は、テールパイプ77の外周面の下流側端部からウォーターロック44に向って延びるように構成されている。排気ホース79は、可撓性を有する材料、たとえばゴムからなり、円筒形状を有している。排気ホース79は、本発明の一実施形態における「第1可撓管」の一例である。テールパイプ77の下流側端部が排気ホース79に挿入されている。これによって、排気ホース79は、テールパイプ77に接続されている。
【0043】
内管78は、排気ホース79の内部に配置されている。内管78は、排気ホース79の内周面の下流側端部からウォーターロック44の内部に延びるように配置されている。内管78は、例えば、アルミ二ウムなどの金属製の円筒状パイプからなる。内管78の先端部(下流側端部)には、先端側に行くほど直径が徐々に大きくなる広角部78aが形成されている。広角部78aは、滑らかに湾曲したベルマウス状の形状を有する。内管78の上流側端部は、テールパイプ77の下流側部分の内面に螺合している。これにより、内管78がテールパイプ77に固定されている。内管78の下流側端部は、ウォーターロック44の内部に位置している。
【0044】
内管78の外径は、排気ホース79の内径よりも小さい。このため、内管78の外周面と排気ホース79の内周面との間には、冷却水通路79aが形成されている。冷却水通路79aは、テールパイプ77のウォータージャケット部68eに連通している。また、冷却水通路79aは、ウォーターロック44の内部空間に連通している。
【0045】
図8及び図14に示すように、排気管部43の内面の底部は、下流に向かって上方に傾斜する部分がないように構成されている。より具体的には、排気管部43のうち上流管75の内面の底部は、下流に向かって下方に傾斜するように構成されている。また、接続管76の内面の底部は、水平にウォーターロック44に向かって延びるように構成されている。
【0046】
ウォーターロック44は、長手方向が前後方向に延びるように配置されている。ウォーターロック44は、排気管部43の下流側端部に接続されている。従って、ウォーターロック44は、排気通路4において触媒部材64よりも下流に配置されている。ウォーターロック44は、排気管45(図1参照)に接続されている。排気管45の先端は、船体2の外部に配置されており、排出ガスは、排気管45から船体2の外部に放出される。すなわち、排出ガスは、排気管45から水中に放出される。ウォーターロック44は、排気管45から浸入する水がエンジン3側に向かって流入するのを抑制するように構成されている。ウォーターロック44は、船体2に固定されている。図2に示すように、ウォーターロック44の下部は、触媒ユニット42の下部よりも下方に配置されている。また、図7に示すように、ウォーターロック44の幅方向の寸法L1は、ウォーターロック44の上下方向の寸法L2よりも小さい。
【0047】
図14に示すように、ウォーターロック44は、密閉されたタンク状に形成されている。ウォーターロック44の上流側端部には、円筒状の接続部44aが設けられている。接続部44aは、排気ホース79に挿入されている。これにより、排気ホース79の下流側端部は、接続部44aに接続されている。ウォーターロック44の内部は、パーテーション81によって、上流側部分と下流側部分とに区画されている。パーテーション81は、板部材で構成されている。パーテーション81は、下流側へ向けて突出するように湾曲した曲面形状を有する。ウォーターロック44の内部には、一対のパーテーションパイプ82,83が配置されている。パーテーションパイプ82,83は、上下に間隔を開けて配置されている。パーテーションパイプ82,83は、パーテーション81を貫通している。パーテーション81の下部には、水抜き孔81aが形成されている。ウォーターロック44の内部の上流側部分に溜まった冷却水は、水抜き孔81aを通って下流側部分に流れる。ウォーターロック44の上面には取付穴44bが形成されている。排気管45の上流側端部は、取付穴44bを通って、ウォーターロック44の下流側部分に挿入されている。排気管45の上流側端部は、ウォーターロック44の底部近傍まで延びている。
【0048】
本実施形態に係る水ジェット推進艇1は、以下の特徴を有する。
【0049】
排気マニホールドユニット41は、触媒ユニット42に結合されており、触媒ユニット42は、エンジン3の後面に対向するように配置されている。これにより、エンジン3の第1〜第4排気ポート35a−35dから触媒ユニット42までの排気通路4の経路長が短縮されている。その結果、高温の排出ガスを触媒ユニット42に導くことができるので、エンジン3の始動後に、速やかに触媒ユニット42を活性化させることができる。これにより、排出ガス中に含まれる有害成分(たとえば、HC、CO、NOxなど)を、触媒ユニット42で充分に反応させて、効率的に浄化することがきる。さらに、触媒ユニット42がエンジン3の近くに配置されることにより、重量物を左右方向に関して船体中心に、且つ、前後方向に関して後方寄りに集中して配置することができる。これにより、水ジェット推進艇1の左右のバランスを向上させることができる。また、エンジン3及び排気系統の構成部品をコンパクトに配置することができる。
【0050】
触媒ユニット42は、ダンパー部72を介して支持ブラケット71に支持されている。このため、ダンパー部72によって、エンジン3の駆動時の振動を減衰させることができる。つまり、エンジン3の振動が触媒ユニット42に直接的に伝達されることを抑制することができる。これにより、触媒部材64の位置がずれたり、或いは、触媒部材64が損傷したりするなどの触媒ユニット42の不具合の発生を抑えることができる。特に、上述したような触媒ユニット42の構造においては、触媒担体64bとフランジ部64aとの固定が振動によって緩むこと、或いは、触媒担体64bが振動によってフランジ部64aに対して移動することが抑えられる。
【0051】
排気管部43の排気ホース79は、可撓性を有する。このため、触媒ユニット42とウォーターロック44との振動差が排気ホース79によって吸収される。これにより、ウォーターロック44と触媒ユニット42との接続部分が損傷することが抑えられる。また、排気マニホールドユニット41のジョイント部63は、可撓性を有する。このため、触媒ユニット42と前側配管61との振動差がジョイント部63によって吸収される。これにより、前側配管61と触媒ユニット42との接続部分が損傷することが抑えられる。このように、本実施形態に係る水ジェット推進艇1では、触媒ユニット42をエンジン3の近くに配置すると共に、エンジン3からの振動による排気系統の不具合の発生を抑えることができる。
【0052】
第1〜第4ダンパー72a−72dがクランク軸31を通る中心線C1の左右に分かれて配置されている。このため、エンジン3からの振動が、ダンパー部72によって、より効果的に吸収される。
【0053】
触媒ユニット42は、クランク軸31を通る中心線C1と平面視において重なるように配置されている。このため、水ジェット推進艇1の左右のバランスを向上させることができる。
【0054】
ダンパー部72による触媒ユニット42の支持方向は、触媒ユニット42における排出ガスの通過方向に対して垂直である。このため、触媒ユニット42の振動によって、触媒部材64の位置がずれることを抑えることができる。
【0055】
支持ブラケット71に凹部71iが形成されている。このため、図13に示すように、エンジン3の後方且つ上方の位置から、或いは、エンジン3の後方からエンジン3を見たときに、支持ブラケット71の下方に位置を容易に視認することができる。従って、カップリング33a,33bの位置を確認するときに、支持ブラケット71が妨げとならない。これにより、カップリング33a,33bを接続するときの作業性を向上させることができる。
【0056】
触媒収容管65の内面に、湾曲部73e−73hが形成されている。このため、排出ガスが、触媒収容管65内において、湾曲部73e−73hによって案内される。特に、排出ガスの流れは、後側配管62において略垂直に曲がるが、第1湾曲部73eによって触媒部材64の中心へ向けて案内される。このため、触媒部材64の特定の部分に偏って多量の排出ガスが流れることが抑制される。これにより、触媒部材64での処理効率を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
上記の実施形態では、触媒ユニット42がエンジン3の後面に対向するように配置されているが、触媒ユニット42の配置はこの位置に限られない。例えば、図15に示すように、触媒ユニット42がエンジン3の前面に対向するように配置されてもよい。或いは、触媒ユニット42がエンジン3の側面に対向するように配置されてもよい。ダンパーの数は上記の実施形態のように4つに限らず、4つより少ない、或いは、4つより多くてもよい。排気ポートの数は上記の実施形態のように4つに限らず、4つより少ない、或いは、4つより多くてもよい。
【0059】
ウォーターロックの形状は上記の実施形態のような形状に限られない。例えば、図16に示すように、円筒形状のウォーターロック84が備えられてもよい。ただし、上記の実施形態のようにウォーターロック44の幅方向の寸法L1が上下方向の寸法L2より小さい場合、同じ容積の円筒形状のウォーターロック84と比べて、幅方向の寸法L1を小さくすることができる。図17(a)は、円筒形状のウォーターロック84を備える水ジェット推進艇10の平面図である。図17(b)は、上記の実施形態と同様のウォーターロック44を備える水ジェット推進艇1の平面図である。図17に示すように、上記の実施形態におけるウォーターロック44のエンジン3からの幅方向への突出距離D2は、円筒形状のウォーターロック44のエンジン3からの幅方向への突出距離D1よりも小さい。このように、上記の実施形態におけるウォーターロック44によって、排気系統の配置スペースを幅方向に小型化することができる。
【0060】
上記の実施形態の水ジェット推進艇1は、パーソナルウォータークラフトであるが、水ジェット推進艇はスポーツボートであってもよい。例えば、図18に示す水ジェット推進艇11は、スポーツボートであり、複数の駆動装置12a,12bを備える。各駆動装置12a,12bは、上述した実施形態と同様のエンジン3と排気通路4とジェット推進ユニット5とを備えている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、触媒をエンジンの近くに配置すると共に、エンジンからの振動による排気系統の不具合の発生を抑えることができる水ジェット推進艇を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 水ジェット推進艇
2 船体
3 エンジン
5 ジェット推進ユニット
31 クランク軸
33 カップリング部
35a−35d 第1〜第4排気ポート
41 排気マニホールドユニット
42 触媒ユニット
43 排気管部
44 ウォーターロック
63 ジョイント部
64 触媒部材
64a フランジ部
65 触媒収容管
66 第1触媒収容管
67 第2触媒収容管
69e−69h 第1〜第4取付孔
71 支持ブラケット
71i 凹部
72 ダンパー部
72a−72d 第1〜第4ダンパー
73e 第1湾曲部
79 排気ホース
89 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
排気ポートを含み、前記船体に収容されるエンジンと、
前記エンジンにより駆動され、前記船体のまわりの水を吸い込んで噴射するジェット推進ユニットと、
前記エンジンに固定され、前記排気ポートに接続される第1排気管と、
前記エンジンからの振動を低減するダンパー部と、
前記第1排気管に接続され、前記ダンパー部を介して前記エンジンに取り付けられる触媒ユニットと、
可撓性を有する第1可撓管を含み、前記触媒ユニットに接続される第2排気管と、
前記船体に固定され、前記第2排気管に接続されるウォーターロックと、
を備える水ジェット推進艇。
【請求項2】
前記第1排気管は、可撓性を有する第2可撓管を含む、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。
【請求項3】
前記第1排気管は、前記エンジンの側方において前後方向に延びるように構成されており、
前記触媒ユニットは、前記エンジンの前面または後面に対向するように配置される、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。
【請求項4】
前記エンジンは、前後方向に延びるように配置されたクランク軸をさらに含み、
前記ダンパー部は、前記クランク軸を通る中心線の左方に配置される第1ダンパーと、前記クランク軸を通る中心線の右方に配置される第2ダンパーとを含む、
請求項3に記載の水ジェット推進艇。
【請求項5】
前記エンジンは、前後方向に延びるように配置されたクランク軸をさらに含み、
前記触媒ユニットは、前記クランク軸を通る中心線と平面視において重なるように配置されている、
請求項3に記載の水ジェット推進艇。
【請求項6】
前記触媒ユニットにおける排出ガスの通過方向は水平方向であり、
前記ダンパー部による前記触媒ユニットの支持方向は、前記触媒ユニットにおける排出ガスの通過方向に対して垂直である、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。
【請求項7】
前記エンジンの出力軸と前記ジェット推進ユニットの入力軸とを連結するカップリング部と、
前記エンジンに固定される支持部材と、
をさらに備え、
前記エンジンは、前記ダンパー部及び前記支持部材を介して前記触媒ユニットを支持しており、
前記支持部材は、前記カップリング部の上方に位置する部分が凹んだ形状を有する、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。
【請求項8】
前記触媒ユニットを前記エンジンに取り付けるためのボルトと、
前記エンジンに固定される支持部材と、
をさらに備え、
前記エンジンは、前記ダンパー部及び前記支持部材を介して前記触媒ユニットを支持しており、
前記ダンパー部は、貫通孔が形成された弾性部材を含み、
前記触媒ユニットは、前記弾性部材がはめ込まれる取付孔を含み、
前記ボルトは、前記弾性部材の貫通孔に挿入され、前記支持部材に固定される、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。
【請求項9】
前記触媒ユニットは、触媒部材と、前記触媒部材を収容する管体とを含み、
前記管体の外面は、前記取付孔の上方に位置する凹部を含み、
前記管体の内面は、前記凹部の裏側に位置しており前記管体の内方へ向かって突出するように湾曲した湾曲部を有する、
請求項8に記載の水ジェット推進艇。
【請求項10】
前記触媒ユニットは、触媒部材と、前記触媒部材を収容する管体とを含み、
前記触媒部材はフランジ部を含み、
前記管体は、第1管体と、前記第1管体と別体の第2管体とを含み、
前記フランジ部が前記第1管体と前記第2管体との間に挟まれることにより、前記触媒部材が前記管体に保持される、
請求項1に記載の水ジェット推進艇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−14279(P2013−14279A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149723(P2011−149723)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】