説明

水中油型の木質材料処理用組成物及び二剤型木質材料用防カビ組成物並びに木質材料の防カビ処理方法

【課題】それ自体が、木質材料のアルカリ焼けの原因とならないだけでなく、前処理でアルカリ性組成物を用いた場合にも、そのアルカリ焼けを防止することができ、尚かつ、木質材料に、防カビ性及び美観を与えることのできる、木質材料処理用組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物である。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料処理用組成物に関するものであって、より詳しくは、アルカリによる変色の心配が無い、木質材料処理用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質材料は、使用前に十分に乾燥して用いた場合であっても、その性質上、水分を吸収することが避けられず、そのため長期間の使用により、腐敗したり、カビが発生することが問題となっている。特に、柱,障子枠,桟,窓枠,敷居,鴨居,欄間等に使用される、いわゆる白木と呼ばれる未塗装の木質材料において、その問題が大きい。
【0003】
木質材料の処理剤としては、様々なものが開発されており、例えば特許文献1記載の「建築木材用撥水剤」等のように、防カビ剤とワックスを含む処理剤が提案されている。しかしながら、これらは、アルカリ性組成物であるため、木質材料がアルカリ焼け(変色)する恐れがある。
【0004】
また、既にカビが発生してしまった木質材料の場合には、防カビ剤による処理に先立って、カビ取りを行う必要があるが、公知のカビ取り剤としては、次亜塩素酸ナトリウムやジクロロイソシアヌル酸等の塩素系漂白剤を基剤としたものが一般的である。
【0005】
このカビ取り剤は、カビの色素を漂白する効果に優れているものの、安定化のために水酸化ナトリウム等のアルカリを配合することが一般的であり、上記と同様に、アルカリ焼けの問題が残る。
【0006】
また、木質材料の処理用組成物としては、防カビのために、水分を弾くことは勿論、木質材料に自然なツヤを与え、美観を損ねないという性質も求められるが、これらの全てを満足するものが無かった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−247854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的とするところは、それ自体が、木質材料のアルカリ焼けの原因とならないだけでなく、前処理でアルカリ性組成物を用いた場合にも、そのアルカリ焼けを防止することができ、尚かつ、木質材料に、防カビ性及び美観を与えることのできる、木質材料処理用組成物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、下記第一の発明から第五の発明によって、達成される。
【0010】
<第一の発明>
下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【0011】
<第二の発明>
更に増粘剤を含むことを特徴とする、第一の発明記載の水中油型の木質材料処理用組成物。
【0012】
<第三の発明>
木質材料が、アルカリ性組成物で処理した木質材料であることを特徴とする、第一又は第二の発明の水中油型の木質材料処理用組成物。
【0013】
<第四の発明>
下記第一剤と第二剤を含むことを特徴とする、二剤型木質材料用防カビ組成物。
(第一剤)アルカリ性組成物。
(第二剤)下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【0014】
<第五の発明>
アルカリ性組成物で処理した後、下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下である水中油型の木質材料処理用組成物で処理することを特徴とする、木質材料の防カビ処理方法。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物は、木質材料のアルカリ焼けの原因とならないだけでなく、前処理でアルカリ性組成物を用いた場合にも、そのアルカリ焼けによる変色を防止・回復することができ、尚かつ、木質材料に、防カビ性及び美観を与えることができるという、優れた利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[本発明の水中油型の木質材料処理用組成物(又は二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤)]
ワックスには、一般に、(X)石油ワックス、(Y)動植物ワックス、(Z)合成ワックスがあるが、本発明に用いられるワックス成分としては、(X),(Y),(Z)の少なくとも2種以上を用いることが好ましい。
【0017】
(X),(Y),(Z)の少なくとも2種以上を用いることによって、個々のワックスが有する特性をうまく組み合わせることができるからであり、特に、(Y)動植物ワックスと(X)石油ワックスの組合せは、木質材料の処理後の表面に、汚れが付き難く、また、ワックス自体にツヤが出て、白っぽい外観とならないという利点を有している。
【0018】
動植物ワックスとしては、カルナバワックス,キャンデリラワックス,木蝋,密蝋等の高級エステル類等が挙げられ、また、石油ワックスとしては、パラフィンワックス等が挙げられ、合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス,フィッシャー・トロプシュワックス等の高級炭化水素類,やし油・牛脂脂肪酸等のメチルエステル等の脂肪酸エステル系ワックス,ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド,ジヘプタデシルケトン等のケトン・アミン類,硬化ひまし油等の水素硬化油等が挙げられるが、特に、パラフィンワックスもしくはポリエチレンワックスと、カルナバワックスとの組み合わせが、防カビ剤を失活させる恐れが少なく、また防水性に優れ、更に処理後の木質材料表面に、自然なツヤを与えるため好ましい。
【0019】
カルナバワックスは、ヤシ科植物の葉から抽出される天然ワックスである。カルナバロウには、純度に応じて、1号,2号,3号等がある。
1号は、ヤシ科植物の葉の中でも、特に、若葉等からの抽出ワックスをいい、通常透き通ったクリーム色等をしている。2号は、茶色,3号は、通常黒である。
本発明には、1号あるいは1号を含む混合物を用いることが好ましい。
【0020】
パラフィンワックスとは、石油の精製工程から製造される通常白色のワックス(蝋)である。炭素数が20〜30程度の、直鎖状パラフィン系炭化水素を主成分とする、分子量が300〜500の炭化水素の混合物である。融点は、40〜100℃であるため、常温では板状・針状・無定型の結晶の集合体(固体)として存在する。
【0021】
具体的には、パラフィンワックス(融点47℃:商品名115日本精鑞製)として購入するこができる。
パラフィンは、撥水性に優れ、軟らかく、木にもなじみやすいという利点を有している。
本発明においては、パラフィンワックス+界面活性剤+水として、乳化して用いることが好ましい。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(10EO)ステアリルエーテル(青木油脂製:ブラウノンSR−710(10EO))とポリオキシエチレン(20EO)ステアリルエーテル(青木油脂製:ブラウノンSR−720(20EO))の混合物等を使用することができる。
【0022】
ポリエチレンワックスとは、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解で等によって製造される高級炭化水素で、三井ハイワックス(三井化学製),サンワックス(三洋化成工業製),エポレン(EastmanChemical製),アライドワックス(Allied Singnals製),ポリワックス(ベーカーペトロライト社製)等として購入することができる。
【0023】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物における、ワックスの含有量は、水中油型の木質材料処理用組成物の総量に対して、ワックス総量として5〜30重量%が好ましく、更に好ましくは10〜25重量%である。
【0024】
5重量%以上で、艶及び撥水性が特に優れており、30重量%以下で、艶や撥水性は十分に得られるため経済的であり、エマルジョンも得やすいからである。
【0025】
また、個々のワックスの含有量としては、水中油型の木質材料処理用組成物の総量に対して、1.5〜23重量%が好ましく、更に好ましくは3〜17重量%である。
1.5重量%以上で、十分な撥水性が得られ、23重量%以下で艶や撥水性が十分に得られるからである。
【0026】
更に、2種のワックス相互の含有比率としては、3:1〜1:3が好ましく、更に好ましくは、1:2〜2:1である。艶と撥水の両立の点で、特にこの範囲が有効だからである。
【0027】
特に2種のワックス相互の含有比率が1:2〜2:1、ワックス総量10重量%以上で、艶と撥水性の両立効果が、極めて良好となる。
【0028】
本発明において用いられる防カビ剤としては、防カビ効果を有するあらゆるものが使用でき、例えば、無機系防カビ剤,有機系防カビ剤,及びこれらの合成又は混合物等が挙げられるが、防カビ効果が高い点で、有機系が好ましい。これらは、一種だけで用いられる他、二種以上を併用しても良い。
【0029】
無機系防カビ剤としては、銀,亜鉛,銅等の防カビ性を有する金属,またはその塩化物,リン酸塩,チオスルファート塩,ケイ酸塩,並びにこれらをシリカゲル,ガラス,ゼオライト,ジルコニウム,アパタイト,セラミックス等に担持させたもの等が挙げられる。
【0030】
酸性で安定な有機系防カビ剤としては、ベンゾイミダゾール系や、メチルイソチアゾリン系等が挙げられるが、前者は、木質材料への防カビ性の付与にすぐれ、後者は、本発明の水中油型の木質材料処理用組成物自身の防カビ性に優れている。
【0031】
ベンズイミダゾール系としては、2−メトキシカルボニルアミノ−ベンゾイミダゾール等が挙げられ、アモルデンMCD−50(大和化学工業製)等として入手可能である。
【0032】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物における、防カビ剤の含有量は、水中油型の木質材料処理用組成物の総量に対して0.05〜2.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.05重量%以上で、防カビ性が特に優れ、2.0重量%で、防カビ性が十分で経済的だからである。
【0033】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物には、更に増粘剤を含有させることによって、酸性でも組成物の保存安定性を向上することができるため好ましい。
【0034】
増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー,CMC(カルボキシメチルセルロース),アルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステル,カゼインナトリウム,微結晶セルロース,デキストリン,トラガント等の有機系増粘剤,及びビーガムK(マグネシウム・アルミニウム・シリケート),ベントンLT(変性ヘクトライト)等の無機系増粘剤等が挙げられるが、本発明の水中油型の木質材料処理用組成物の、木質材料の腐敗やカビの発生を防止する目的を確実に達成するには、増粘剤自身が腐敗し難く、カビが生えにくい等の理由からカルボキシビニルポリマー等が好ましい。
カルボキシビニルポリマーは、商品名:ハイビスワコー104(和光純薬製)等として入手することが可能である。
【0035】
これらの増粘剤を使用することによって、防カビ剤の沈降が防止でき、また水中油型エマルジョンの安定性が更に向上する。
【0036】
防カビ剤が沈降していても、水中油型の木質材料処理用組成物を使用前に良く振れば使用可能であるが、あらかじめ均一に分散しておくことで、効果も安定して発揮できるため好ましい。
【0037】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物における、増粘剤の含有量は、水中油型の木質材料処理用組成物の総量に対して0.06〜0.42重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0038】
0.06重量%以上で、防カビ剤の沈降防止効果がより確実に得られ、0.42重量%以下で防カビ剤の沈降防止効果が十分に得られるとともに、水中油型の木質材料処理用組成物の製造が特に容易となるからである。
【0039】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物には、この他、防カビ性や、撥水性を阻害せず、またpHを4.5以下に維持できる範囲で、他の成分を適宜含有させることができる。
【0040】
他の成分の例としては、水,アルコール,上記のワックス成分以外の油脂,その他の溶媒や、界面活性剤,pH調整剤,殺菌剤,防腐剤,色素,紫外線吸収剤,顔料,浸透促進剤,割れ抑制剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物は、pHが4.5以下のものである。
例えば、リン酸,クエン酸,りんご酸,酒石酸,乳酸等の酸を含有させることによって、pHを4.5以下とすることができるが、特にリン酸が好ましい。
【0042】
pHを4.5以下とすることによって、例えば後述する、本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物における第一剤のようなアルカリ性組成物による前処理後も、アルカリ焼けを防止・回復することができる。
【0043】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物を製造するには、一般的な方法で良く、各材料を混合するだけで良いが、木質材料表面に、ムラ無く塗布でき、均一な防カビ性を付与するためには、処理用組成物自体が、均一なエマルジョン状であることが好ましく、均質な水中油型組成物とするためには、材料の添加ごとに、均一分散させることが好ましく、例えば下記の方法等によって、製造することができる。
まず、2つ以上のワックス成分を均一に分散し、その後イオン交換水等で希釈する。そして、更に防腐剤や防カビ剤等を添加し、均一に分散後、事前にアンモニア水で中和し増粘させたカルボキシビニルポリマーゲル等の増粘剤ゲルを入れ、ここでも均一に分散し、液を増粘させる(カルボキシビニルポリマーを添加後分散、その後アンモニア水を添加し、中和・増粘させてもよい)。そして、その後、イオン交換水で約10%濃度に希釈したリン酸等の酸成分を入れ、ここでも均一に攪拌する等の方法で製造することが好ましい。
【0044】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物を適用する木質材料とは、例えば柱,障子枠,桟,窓枠,敷居,鴨居,欄間等の、建築用および土木工事用に用いられる木材(含:合板)であり、いわゆる白木と呼ばれる未塗装の木質材料等が挙げられ、何科の木であっても良く、特に種類は問わないが、水分を吸収し易く、腐敗やカビ発生が起こり易い種類の木に対して、特に有効である。
【0045】
但し、上記の木質材料に、あらかじめカビ取り処理その他の前処理をしたものであっても良く、特に、本発明の水中油型の木質材料処理用組成物自体がpH4.5以下であることから、前処理としてアルカリ性の組成物を用いる場合に、特に有用である。本発明の組成物によって、アルカリを中和し、アルカリ焼け(変色)を防止又は回復し得るからである。
【0046】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物を、木質材料に適用する方法は、特に限定されないが、例えば、トリガースプレー等によって、水中油型の木質材料処理用組成物を霧状や泡状に噴射して塗布する方法の他、液状の水中油型の木質材料処理用組成物に木質材料を浸漬する方法,スポンジ、布等の塗布具を用いて、均一に塗布する方法等が挙げられる。
【0047】
[本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物]
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物は、下記第一剤と第二剤を含むことを特徴とするものである。
【0048】
(第一剤)アルカリ性組成物。
(第二剤)下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物。
【0049】
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【0050】
第一剤のアルカリ性組成物としては、例えば、アルカリ性のカビ取り剤等が挙げられる。
アリカリ性カビ取り剤としては、次亜塩素酸ナトリウム又はジクロロイソシアヌル酸等の塩素系漂白剤を基剤としたものが挙げられる。
【0051】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物における、塩素系漂白剤の含有量は、水等に溶解させて、溶液状とした段階で、アルカリ性組成物の総量に対して0.5〜3重量%となるような組成とすることが好ましく、更に好ましくは1〜2重量%である。
0.5重量%以上で、カビ取り効果がより向上し、3重量%以下で、カビ取り効果が十分であるとともに、人体により安全で、安定性に優れるからである。
【0052】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物は、カビ等の細胞壁を破壊し、防カビ剤の効果を向上させるため,及び安定化等のために、水酸化ナトリウムその他のアルカリを含有していることが好ましい。
【0053】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物における、アルカリの含有量は、水等に溶解させて、溶液状とした段階で、アルカリ性組成物の総量に対して0.3〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜6.0重量%である。
0.3重量%以上で、アルカリのよる効果が特に良好で、10重量%以下で、アルカリの効果が十分で、経済的であるとともに、安全性の点でもより好ましいからである。
【0054】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物は、更に保存安定性を高めるために、界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0055】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名ブラウノンEL−1512P(12EO),EL−1515(15EO),EL−1519L(19EO)),ポリオキシエチレンオレイルエーテル(商品名ブラウノンEN−1509(9EO),EN−1511(11EO)),ポリオキシエチレンヤシアルコールエーテル(商品名COCOSURF120(12EO))等のポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル系,ソルビタン脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸エステル,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のエステル系,ポリオキシエチレンヒマシ油,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体,プロピレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体等のエーテル・エステル系その他の、非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、常温で固形化可能なものであれば良く、洗浄性等の点ではポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系が好ましい。
【0056】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物における、界面活性剤の含有量は、水等に溶解させて、溶液状とした段階で、アルカリ性組成物の総量に対して0.05〜2.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0057】
0.05重量%以上で、保存安定性特に優れ、2.0重量%以下で十分効果が得られるからである。
【0058】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物には、この他、第一剤の目的を阻害しない範囲で、他の成分を適宜含有させることができる。
【0059】
他の成分の例としては、水,アルコール,油脂その他の溶媒や、pH調整剤,殺菌剤,防腐剤,色素,紫外線吸収剤,顔料,浸透促進剤,割れ抑制剤等が挙げられる。
【0060】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤であるアルカリ性組成物の剤形は、溶液,エマルジョン,ゲル状の他,粉末,顆粒状等の固形状が挙げられ、特に限定されるものでは無いが、組成物の保存安定性のためには、粉末又は顆粒状が好ましい。
粉末,顆粒状の場合には、使用持に水等の適当な溶媒に溶解して、用いることができる。
【0061】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤としては、上記の本発明の、水中油型の木質材料処理用組成物と同様の方法で、製造することができる。
【0062】
本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物を適用するには、まず、第一剤であるアルカリ性組成物で、木質材料を処理した後、第二剤を適用する。
【0063】
第一剤の適用方法は、木質材料に直接噴霧する等しても良いが、布やスポンジに第一剤を取り、処理を必要とする部位に塗り拡げ、カビや汚れを擦り取る方法が、第一剤の無駄がなく、確実に適用できるため好ましい。
第一剤が、カビ取り処理剤である場合には、カビや汚れが浮いてきたら、布等で拭き取る。
更に、木質材料の表面に、均一に塗布し、1時間程度放置すると、更にカビや汚れの除去を確実とすることができる。
【0064】
第一剤の適用後は、例えば第一剤がカビ取り剤等の塩素系化合物を含有している場合には、第一剤の適用後、室温であれば、数時間以上,好ましくは半日以上自然乾燥して塩素成分を十分に飛ばした後に、第二剤を適用することが好ましい。第二剤の酸性組成物と反応するおそれが無く、塩素ガスの発生も無く安全だからである。
【0065】
第二剤は、木質材料に直接噴霧する等しても良いが、布等に一旦取り、塗り拡げる方法が、全体にムラ無く薄く適用できるため好ましい。第二剤の適用後は、室温なら、例えば20分以上,好ましくは30分以上乾燥後、必要に応じて、布等で余分な第二剤を拭き取る等することが好ましい。
【0066】
[本発明の木質材料の防カビ処理方法]
本発明の木質材料の防カビ処理方法は、アルカリ性組成物で処理した後、下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下である水中油型の木質材料処理用組成物で処理することを特徴としている。
【0067】
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【0068】
アルカリ性組成物による処理や、水中油型の木質材料処理用組成物による処理方法は、上述の二剤型木質材料用防カビ組成物の使用方法と同様である。
【0069】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限られるものでは無い。
【実施例】
【0070】
尚、実施例に先立ち、本発明の性能を確認するための試験方法等を以下に記載する。
【0071】
[つやの評価]
(水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤の評価)
処理組成物をスポンジに0.3mlつけ、5cm×5cm×1cmの白木に塗布、5分間放置後、乾いたきれいなウエスで表面をふく。その後肉眼により、下記の基準に従って評価を行う。
【0072】
未処理の部分より濡れたようになった:○
未処理の部分より、白っぽくなった:△
未処理の部分と比較して変化がなかった:×
【0073】
[撥水性の評価]
(水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤の評価)
処理組成物をスポンジに0.3mlつけ、5cm×5cm×1cmの白木に塗布、5分間放置後乾いたきれいなウエスで表面をふく。その後スポイドで水を0.03g5箇所にたらす。そのまま5分間放置後、水が、落としたところから拡がった箇所の数によって、下記の基準で評価を行う。
【0074】
5箇所:×
4箇所〜3箇所:△
2箇所〜1箇所:○
0箇所:◎
【0075】
[カビ取り効果測定試験]
(二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤の評価)
黒カビが発生した木片を、4×4×1cmに切断し、測色色差計(スガ試験機株式会社製:SMカラーコンピューターSM−5−1S−2B)を用いて明度(L値)を測定し、L値の差が±2以内の試験片を、評価サンプルとして使用した。
評価サンプルに、実施例(本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤)又は比較例の被験組成物を、各々1mlずつ滴下し、30分間放置後、風乾し、目視にて観察した結果を、下記の基準に基づいて評価した。
【0076】
滴下したところに、全く黒いくすみが無い場合:○
滴下したところに、わずかに黒いくすがある場合:△
滴下したところに、一部でも、カビ汚れが残っている場合:×
【0077】
[カビ防止性試験]
(水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤の評価)
JIS Z2911に規定の方法に従って、カビ防止性試験を行った。滅菌シャーレに、カビ用寒天培地を約15ml分注する。培地を固化後、カビの菌液を含む寒天培地を約5ml重層する。ポリエチレンテレフタレート製のプラスチックプレートに、実施例(本発明の水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤)又は比較例の被験組成物を、各々30g/m<SUP>2</SUP>ずつ塗布し、1時間風乾させたものを、被験試料として培地中央に埋め込み、シャーレに蓋をして28℃で1週間培養して防カビ効果の有無を確認する。
【0078】
供試カビとしては、JIS Z−2911カビ抵抗性試験木竹製品指定カビ Aspergillus niger FERM s-1,Penicillium citrinum FERM s-5,Cladosporium cladosporioides FERM s-8,Chaetomium globosum FERM s-11,の混合物を用いた。
判定は、下記の基準に基づいて行った。
【0079】
菌の発育阻止幅が5mm以上のものを:○
菌の発育阻止幅が5mm未満のもの:△
菌の発育阻止が全く見られなかったもの:×
【0080】
[アルカリ焼け回復性試験]
(水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤の評価)
未塗装,未使用の木質材料に、カビ取り剤(本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤)を塗布し、30分間放置して、木質材料をアルカリ焼け(変色)させる。変色した木質材料を切断し、測色色差計を用いて明度(L値)を測定し、L値の差が±2以内の試験片を、評価サンプルとして使用した。
評価サンプルに、実施例(本発明の水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤)又は比較例の被験組成物を、各々1mlずつ滴下し、30分間放置後、表面をウエスで磨き、表面の余分な液を除去後、目視にて観察した結果を、下記の基準に基づいて評価した。
尚、本試験は、第二剤のアルカリ変色の回復効果を確認するために、カビが生えていない白木に、敢えて第一剤を塗布してアルカリ焼けを起こさせて用いたものである。
【0081】
元の木の色に近い,もしくはほぼ同色に回復したもの:○
少し変色が残ったもの:△
殆ど色が回復しなかったもの:×
全く回復しなかったもの:××
【0082】
[水中油型の木質材料処理用組成物,あるいは二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤の安定性試験]
水中油型エマルジョンの安定性を下記の基準に従って判定した。
【0083】
○:安定なエマルジョンであり、そのまま使用できる。
△:振ると一時的に均一になり使用できる。
×:振っても均一にならない。
【0084】
[二剤型木質材料用防カビ組成物の第一剤の安定性試験]
第一剤の保存安定性を下記の基準に従って判定した。
【0085】
○:保存安定性に優れている。
△:やや保存安定性に優れている。
×:保存安定性が劣る。
【0086】
[実施例1〜2,比較例1〜2]
表1に示した組成に従い、本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の、第一剤を製造し、上述の評価方法に従って評価した結果を、表1に示す。
尚、実施例及び比較例の第一剤は、5gを水80mlに入れて溶解したものを、カビ取り剤として使用した。
【0087】
[実施例3〜8,比較例3〜5]
表2に示した組成で製造した、本発明の二剤型木質材料用防カビ組成物の第二剤(実施例3〜8,比較例3〜5)を、上述の評価方法に従って評価した結果を、表1に示す。
尚、アルカリ焼け回復テストにおいては、第一剤として、上記の実施例2の第一剤を用いた。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表2から分かる通り、実施例3〜8の本願発明の水中油型の木質材料処理用組成物は、比較例3〜5の組成物に比べて、防カビ性,アルカリ焼けの回復性等に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の水中油型の木質材料処理用組成物は、それ自体が木質材料のアルカリ焼けの原因とならないだけでなく、前処理でアルカリ性組成物を用いた場合にも、そのアルカリ焼けによる変色を防止・回復することができ、尚かつ、木質材料に、防カビ性及び美観を与えることができるという、優れた利点を有しているため、例えば柱,障子枠,桟,窓枠,敷居,鴨居,欄間等の、建築用および土木工事用に用いられる木材(含:合板)であり、いわゆる白木と呼ばれる未塗装の木質材料等の、防カビ加工に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【請求項2】
更に増粘剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の水中油型の木質材料処理用組成物。
【請求項3】
木質材料が、アルカリ性組成物で処理した木質材料であることを特徴とする、請求項1又は2記載の水中油型の木質材料処理用組成物。
【請求項4】
下記第一剤と第二剤を含むことを特徴とする、二剤型木質材料用防カビ組成物。
(第一剤)アルカリ性組成物。
(第二剤)下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下であることを特徴とする、水中油型の木質材料処理用組成物。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤
【請求項5】
アルカリ性組成物で処理した後、下記(A)及び(B)を含み、pH4.5以下である水中油型の木質材料処理用組成物で処理することを特徴とする、木質材料の防カビ処理方法。
(A)少なくとも2種以上のワックス成分
(B)防カビ剤

【公開番号】特開2008−230154(P2008−230154A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76014(P2007−76014)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】