説明

水中油型乳化化粧料

【課題】 みずみずしさと「こく」のある使用感を与え、浸透感に優れ、乳化安定性にも優れているのみならず、シート等に含浸させて適用した場合に肌への密着感にも優れた水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】 (a)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上と、(b)親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルより選ばれる1種または2種以上と、(c)グリセリンモノアルキルエーテルから選ばれる1種または2種以上とを含有し、(b)と(c)のアルキル部分が直鎖状の飽和アルキル基であり、(a)〜(c)のモル濃度が、[(b)+(c)]/(a)=0.1〜1.0の関係を満たし、かつ[(a)+(c)]/(b)=3〜9の関係を満たす水中油型乳化化粧料において、(d)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を更に含み、粘度が1000〜7000mPa・sであることを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。より詳細には、みずみずしさと浸透感とを兼ね備え、なおかつ乳化安定性にも優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア化粧料は、皮膚本来の持つ機能を正常に働かせる、即ち恒常性維持機能を正常に機能させ、その結果として健康で美しい肌を維持・回復させる。そのために、スキンケア化粧料は、洗浄・清拭、抗乾燥、抗紫外線、抗酸化、賦活といった基本機能に加えて、日焼けや加齢による肌の悩みに対応した美白効果や、しわ・たるみの改善、ニキビ防止などの様々な機能を備えるようになっている。
【0003】
スキンケア化粧料は、上記の機能を発揮するのに適した種々の形態で提供され、各形態に応じた使用方法がとられる。例えば、化粧水や乳液などの場合、それらを肌に直接塗布することもあるし、シート等に含浸させて肌に適用する場合もある。如何なる使用形態をとるにしても、肌に適用したときの使用感触は化粧料を選択する上での重要な要因となる。
【0004】
特許文献1には、マスク状の吸収体に含浸させた状態で肌に適用する含浸マスク化粧料が記載されている。この化粧料は、マルメロ粘質物とカルボキシビニルポリマーを配合することにより適度な粘度を有するため、含浸マスクが肌からズレ落ちにくく、密着感がある一方、べたついた使用感を伴わないとされている。しかしながら、この化粧料はマスクによって肌を閉塞しない場合には配合した肌改善成分が肌内部まで浸透しないという問題があった。
【0005】
特許文献2には、特定の高級アルコール、親水性ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びグリセリン物アルキルエーテルを所定比率で含有する水中油型乳化化粧料が記載され、ビタミンA等の肌改善成分や皮膜形成成分を含まなくても肌の弾力やハリ感が得られ、なおかつ乳化安定性にも優れるとされている。しかし、この化粧料を肌に適用した際、みずみずしい感触は得られるが、浸透感(化粧料が崩壊して肌にしみ込んでゆく心地よさ)に欠け、シート等に含浸させて使用した場合の肌への密着感が劣るという問題があった。
【0006】
特許文献3には、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと室温で固形状である油性成分とを配合し、所定値以下の粒子径を持つ水中油型乳化組成物が記載され、皮膚に塗布したとき「こくのある使用感」が得られ、安定性、安全性に優れるとされている。しかし、この化粧料は浸透感に欠け、シートに含浸させた場合の密着感も十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−182724号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/113302号パンフレット
【特許文献3】特開平9−255529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的背景の下でなされたものであり、肌に塗布した際にみずみずしさと「こく」のある使用感を与え、浸透感に優れ、乳化安定性にも優れているのみならず、シート等に含浸させて適用した場合に肌への密着感にも優れた水中油型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を行った結果、特定の高級アルコール、親水性ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びグリセリン物アルキルエーテルを所定比率で含有する水中油型乳化化粧料にアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を更に配合し、その粘度を所定範囲とすることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち本発明は、
(a)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上と、
(b)親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルより選ばれる1種または2種以上と、
(c)グリセリンモノアルキルエーテルから選ばれる1種または2種以上と、
を含有し、
(b)と(c)のアルキル部分が直鎖状の飽和アルキル基であり、(a)〜(c)のモル濃度が、[(b)+(c)]/(a)=0.1〜1.0の関係を満たし、かつ[(a)+(c)]/(b)=3〜9の関係を満たす水中油型乳化化粧料において、
(d)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を更に含み、粘度が1000〜7000mPa・sである水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、べたつきがなく、みずみずしい感触を持ち、浸透感にも優れ、なおかつシート等に含浸させて使用したときに肌への密着性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の乳化化粧料は、(a)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上(以下、「高級アルコール」とする)を含有する。
本発明で使用される高級アルコール(成分a)は、直鎖状の飽和アルキル鎖からなるアルキル部を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。それらの中でも、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールから選択される1種又は2種以上を含むのが好ましい。中でもベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0013】
本発明の乳化化粧料において、高級アルコール(成分a)の配合量は、好ましくは0.1〜7.0質量%、より好ましくは、0.1〜2.0質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0014】
本発明の乳化化粧料は、(b)親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルより選ばれる1種または2種以上(以下、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」とする)を含有する。
本発明で用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分b)は、直鎖状の飽和アルキル鎖と、ポリオキシエチレン鎖とがエーテル結合により結合した構造を有するもののうち、親水性を示すものから選択される。本明細書における「親水性」とは、親水基と疎水基の相対的な強さによって求められるHLB値が10より大きいものを指すものとする。
【0015】
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分b)は、ポリオキシエチレン鎖の平均付加モル数が10〜30であるものが好適である。かかるポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分b)の具体例としては、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ベヘニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテルが特に好ましい。
【0016】
本発明の乳化化粧料において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分b)の配合量は、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%、さらに好ましくは0.1〜0.18質量%である。
【0017】
本発明の乳化化粧料は、(c)グリセリンモノアルキルエーテルから選ばれる1種または2種以上(以下「グリセリンモノアルキルエーテル」とする)を含有する。
本発明で用いられるグリセリンモノアルキルエーテル(成分c)は、直鎖状の飽和アルキル鎖と、グリセリンがエーテル結合により結合した構造を有するものから選択される。例えば、グリセリンモノセチルエーテル(キミルアルコール)、グリセリンモノステアリルエーテル(バチルアルコール)等が挙げられる。それらの中でも、グリセリンモノステアリルエーテルが特に好ましい。
【0018】
本発明の乳化化粧料において、グリセリンモノアルキルエーテル(成分c)の配合量は、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.05〜0.3質量%である。
【0019】
本発明の乳化化粧料においては、前記成分(a)〜(c)のモル濃度が、[(b)+(c)]/(a)=0.1〜1.0の関係を満たす必要がある。このモル濃度比率は、より好ましくは、0.1〜0.9、最も好ましくは0.2〜0.8である。[(b)+(c)]/(a)の値が0.1より小さい場合には、長期間の保管中に高級アルコールが析出しやすくなり、1.0を越える場合には、高温下で分離や粘度変化などの状態不良が起こるため、いずれも安定性に劣るものとなる。
【0020】
さらに、本発明の乳化化粧料においては、(a)〜(c)のモル濃度が、[(a)+(c)]/(b)=3〜9の関係も満たす必要がある。このモル濃度比率は、より好ましくは5〜8である。[(a)+(c)]/(b)の値が3より小さい場合には、安定な乳化物が得られ難く、はり感及びべたつきも不満足となる場合がある。逆に[(a)+(c)]/(b)の値が9を越える場合も、安定な乳化物が得られ難く、はり感に劣るようになる場合がある。
【0021】
本発明の乳化化粧料は、上記した水中油型乳化化粧料に、(d)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を更に配合したことを特徴とする。
本発明で用いられるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(成分d)は、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと呼ばれることもあり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸類、及びこれらアクリル酸類と短鎖アルコール(炭素数1〜4)とのエステルからなる第1のアクリル酸類モノマーと、アクリル酸類と長鎖アルコール(炭素数8〜40)とのエステルからなる第2のアクリル酸類モノマーとの架橋コポリマーを含む。
【0022】
本発明におけるアクリル酸・メタクリル酸共重合体(成分d)としては、市販のものを使用することもでき、例えば、ペミュレンTR−1、ペミュレンTR−2、カルボポールR1342、カルボポールR1382等を挙げることができる。
【0023】
本発明の乳化化粧料において、アクリル酸・メタクリル酸共重合体(成分d)の配合量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.1質量%である。配合量が0.01質量%未満であると、十分な浸透感及びシートに含浸させた際の密着感が得られ難く、15質量%を越えて配合するとべたつき等の使用感が悪くなる場合がある。
【0024】
更に本発明の乳化化粧料は、その粘度を1000〜7000mPa・sの範囲に調製したことを特徴としている。このような特定範囲の粘度とすることにより、肌への浸透感が向上し、肌への密着が容易になる。
【0025】
本発明の乳化化粧料には、上記必須成分(a)〜(d)に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、粉末、油分、活性剤、保湿剤、薬剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、高級アルコール(成分aに該当する物を除く)、多価アルコール、酸化防止剤、防腐剤、香料等を適宜配合することができる。
【0026】
本発明の水中油型乳化化粧料は、特に限定されるものではないが、皮膚に適用する形態、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液などの形態として提供するのが好ましい。特に、本発明の乳化化粧料をシートに含浸させて使用した場合、当該含浸シートは肌への密着性が極めて良好である。従って、本発明の乳化化粧料は、シートに含浸させたシート状化粧料の形態で提供するのに特に適している。
【0027】
本発明の乳化化粧料を含浸させるシートは、特に限定されるものではなく、従来から化粧料の分野で使用されている吸収性シートが使用できる。具体的には、コットン、絹、羊毛、ポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン等の織布又は不織布が挙げられ、中でも極細繊維からなる不織布を用いるのが好ましい。
ここで用いられる極細繊維は、分割型複合繊維の割繊により形成された繊度0.8dtex以下の繊維であることが望ましい。好ましくは0.5dtexであることが望ましい。
【実施例】
【0028】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0029】
(実施例1及び比較例1〜6)
下記の表1に掲げた組成を有する試料(乳液)を調製した。10名の専門パネルにより各試料の浸透感、みずみずしさ、やわらかさについて評価した。各試験項目について、以下の評価点基準に基づいて各専門パネルが評価し、その評価点の合計によって評価基準を設定した。それらの結果を表1に併せて示す。
【0030】
<評価点基準>
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
<評価基準>
◎:合計点が40点以上
○:合計点が30〜39点
△:合計点が20〜29点
×:合計点が19点以下
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示した結果より、親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分b)を用いて乳化した乳液(実施例1)は、他のノニオン系活性剤を用いて乳化した乳液(比較例2〜6)に比較して、みずみずしさ、浸透感、やわらかさにおいて優れることが示された。
【0033】
(実施例2〜3及び比較例7)
下記の表2に掲げた組成を有する試料(乳液)を調製した。10名の専門パネルにより、各試料(乳液)をシートに含浸したシート状化粧料の浸透感、みずみずしさ、やわらかさ、シートの密着性について評価した。評価点基準及び評価基準は前記した通りである。それらの方法を表2に併せて示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2に示した結果から、シート状化粧料とした場合に、アクリル酸・メタクリル酸共重合体(ペミュレンTR−2)を配合した本発明の実施例2及び3は、それを含有していない比較例7より特に浸透感及び肌への密着性が優れていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上と、
(b)親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルより選ばれる1種または2種以上と、
(c)グリセリンモノアルキルエーテルから選ばれる1種または2種以上と、
を含有し、
(b)と(c)のアルキル部分が直鎖状の飽和アルキル基であり、(a)〜(c)のモル濃度が、[(b)+(c)]/(a)=0.1〜1.0の関係を満たし、かつ[(a)+(c)]/(b)=3〜9の関係を満たす水中油型乳化化粧料において、
(d)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を更に含み、粘度が1000〜7000mPa・sであることを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化化粧料をシートに含浸させたことを特徴とするシート状化粧料。
【請求項3】
前記シートが、極細繊維からなる不織布であることを特徴とする、請求項2に記載のシート状化粧料。

【公開番号】特開2011−207817(P2011−207817A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77396(P2010−77396)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】