説明

水中溶接部検査装置

【課題】検査対象の表面の状態によって、使い分けが可能な渦流探傷装置を提供すること。
【解決手段】CCDカメラ20は、対象物の撮影を行う撮影装置20aと、撮影によって得た映像を外部に出力する映像出力装置20bからなり、渦流探傷プローブ11は、対象物における欠陥の検知を行う検知装置12と、検知によって得たデータを目視で欠陥の認識が可能な形式に画像処理を行う画像処理装置13と、画像処理によって画像処理データを外部に出力する画像処理データ出力装置14と、からなり、CCDカメラ20の周囲に複数台設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に液体を保有する液体タンクの内面を遠隔操作で渦流探傷検査するための水中溶接部検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の導体に交流を流したコイルを近づけると、表面又は内部に存在する欠陥(例えば表面傷)が、コイルに誘起される電流、電圧の変化として検出できる。渦流探傷装置は、この原理を利用した欠陥検出装置であり、例えば、特許文献1に開示されている。
以下、渦流探傷コイルを内蔵し被検査体に密着又は近接させるものを「渦流探傷プローブ」と呼ぶ。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、液体タンクの内面(被検査面)に沿って遠隔操作で移動可能な移動装置に水中溶接部検査装置が取り付けられるので、この移動装置を遠隔操作することにより、内部に液体を保有する液体タンクの内面を遠隔操作で渦流探傷検査することができるものである。
【0004】
特許文献1においては、溶接部の検査を行う際に、溶接時の熱影響があった熱影響部についても同時に検査を行うために、図1(側面図)、図2(平面図)で示すように渦流探傷プローブ(溶接部用)2及び2つの渦流探傷プローブ(平面用)3から構成されている遠隔渦流探傷装置1を使用して、被検査面4における欠陥の有無を検査する構成になっている。
このような構成をとることによって、同時に検査を行いたい検査幅を任意に設定することができるようになっている。
【0005】
なお、渦流探傷プローブは、検査対象の表面を画像認識し、周囲の検査対象部分と変化を検知した場合には、色分けを行って出力するものである。
よって、出力結果について、作業員が確認することで、欠陥等の異常を検知できるといった仕組みになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2010−025801公報、「遠隔渦流探傷装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、渦流探傷プローブを使用した場合は、認識精度が高い機器であるため、例えば、仕上げを行っていない等の理由によって、溶接部の表面が粗い状態のまま使用されている場合には、溶接部に自然に発生するような微小な凹凸等からなる雑信号も認識してしまい、実際に処理をしなければならない欠陥による信号が、かかる雑信号に埋もれる場合があった。
また、検知信号が発生した場合には、検知の度に作業員がかかる傷の状況を検査する、或いは、検知信号が発生した部分について、別途CCDカメラ等によって再検査を行って目視で確認する、といった作業が行われており、実際の欠陥発生頻度に対する作業員の負担軽減について改善の余地を有していた。
【0008】
本発明は上述した点に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、雑信号を認識する頻度を低減させ、傷の状況を検査する作業員の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、CCDカメラと渦流探傷プローブを有する水中壁面検査装置であって、
前記CCDカメラは、対象物の撮影を行う撮影装置と、
該撮影によって得た映像を外部に出力する映像出力装置からなり、
前記渦流探傷プローブは、対象物における欠陥の検知を行う検知装置と、
該検知によって得たデータを目視で欠陥の認識が可能な形式に画像処理を行う画像処理装置と、
前記画像処理によって画像処理データを外部に出力する画像処理データ出力装置と、からなり、
前記CCDカメラの周囲に複数台設置されている、ことを特徴とする水中壁面検査装置が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記検知装置は、対象物に表面の状態変化を認識することで欠陥の検知を行う複数のプローブセンサと、該プローブセンサを保持するプローブホルダからなり、
前記プローブセンサは、進行方向に対して斜めに配置されている。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の構成によれば、検査対象である溶接部の表面が粗いことが分かっている場合には、溶接部の点検について、過流探傷プローブに代えてCCDカメラによって点検を行うことによって、欠陥発見の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術による水中溶接部検査装置の側面図である。
【図2】従来技術による水中溶接部検査装置の平面図である。
【図3】本発明による水中溶接部検査装置の正面図である。
【図4】本発明による水中溶接部検査装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図3は、本発明による水中溶接部検査装置の正面図であり、図4は、本発明による水中溶接部検査装置の平面図である。
この図において、10は水中溶接部検査装置、11は渦流探傷プローブ、12は検知装置、12aはプローブセンサ、12bはプローブホルダ、13は画像処理装置、14は画像処理データ出力装置、15は車輪、16は支持フレーム、16aは第1支持フレーム、16bは第2支持フレーム、18は昇降装置、19はリニアベアリング、20はCCDカメラ、21はストッパー、25は被検査面、26は移動装置である。
【0015】
渦流探傷プローブ11は、検知装置12、画像処理装置13、画像処理データ出力装置14からなる。
検知装置12は、プローブホルダ12b及び複数のプローブセンサ12aから構成されている。
交流を流したプローブセンサ12aを、被検査面25である金属等の導体に近づけると、表面又は内部に存在する欠陥(例えば表面傷)が、コイルに誘起される電流、電圧の変化として検出することができる。
プローブセンサ12aは、実際に対象物の表面について欠陥の有無を検知する部分であり、互いに重複する検査領域を有するように進行方向に対して斜めに配置された状態で、プローブホルダ12bによって保持されている。
この構成によって、高い検出精度を維持したままで、検出幅を広くすることができるという効果がある。
プローブホルダ12bは、その下端に空転可能な3以上(この例で4輪)の車輪15を有し、車輪15が被検査面25に接触する渦流探傷時に、各車輪15により渦流探傷プローブ11を被検査面25に対して垂直に保持するようになっている。
3以上の車輪15の配置は、この機能を満たす限りで任意である。なお車輪15の回転方向は、移動装置26の進行方向と同一に設定する。
画像処理装置13は、被検査面25の監視を行い、監視によって得たデータから周囲の部分と著しく状態が変化している部分(欠陥である可能性が高い部分)を検知し、かかる部分を状態変化の度合に応じて色分けをする画像処理を行う。
この画像処理データを出力して、作業員が欠陥の有無について確認を行うことが可能になる。
画像処理データ出力装置14は、画像処理装置13によって作成した画像処理データを外部に設置されたモニター等の出力装置に出力する。
なお、この例における渦流探傷プローブ11は、複数個の渦探傷プローブを組み合わせて独自にアレイ化したものを用いている。
【0016】
支持フレーム16は、この例では、渦流探傷プローブ11を支持する第1支持フレーム16aと、CCDカメラ20を支持する第2支持フレーム16bとからなる。
なお、第1支持フレーム16aは、この例においては、CCDカメラ20をストッパー21によって固定している。
【0017】
また、この例において、第1支持フレーム16aは、第2支持フレーム16bにリニアベアリング19によって移動可能(図3において被検査面25に垂直な方向)に支持されている。
【0018】
昇降装置18は、この例では、第2支持フレーム16bを被検査面25に対して垂直に昇降させている。
【0019】
CCDカメラ20は、撮影装置20aと映像出力装置20bからなり、撮影装置20aによって被検査面25の撮影を行い、その映像を映像出力装置20bによって、外部の出力装置に出力を行う。
撮影された映像はそのまま出力装置に出力されることになるため、作業員が目視で欠陥の有無を確認する必要がある。
ここで、CCDカメラ20は、渦流探傷プローブ11のように欠陥の可能性がある部分を装置自身が判断するような装置ではない。そのため、仕上げ等がなされていない等の理由により、被検査面25の表面が予め粗いことが分かっている場合に、従来使用していた、複数の渦流探傷プローブ11からなる検査装置に代えて、本発明にかかるCCDカメラ20と渦流探傷プローブ11を組み合わせた検査装置を使用することができる。
【0020】
また、本発明においては、CCDカメラ20の周囲に渦流探傷プローブ11を複数台設置している構成になっている。
かかる構成によって溶接部の近辺を検査する場合、被検査面25における欠陥ではない表面の荒れが比較的多い部分である溶接部においては、CCDカメラ20によって撮影された映像を作業員が監視を行い、表面の荒れが比較的少ない部分である溶接部の周囲(例えば、熱影響部)については、渦流探傷プローブ11によって検査を行うことで、高い作業効率を実現することが可能になる。
【0021】
なお、同一の被検査面25を繰り返し検査する場合であって、ある検出した信号に対象部分が欠陥ではないと確証が取れた場合には、かかる情報を模擬欠陥データベースに登録しておくことができる。
これによって、複数回検査を行っている被検査面25の検査を行う場合には、信号を検知した際に、まず模擬欠陥データベースを参照し、そこに登録のある場合には、かかる信号についての検査を行わない設定を渦流探傷プローブ11に行うことも可能である。
【0022】
また、CCDカメラ20及び渦流探傷プローブ11に研削器具(図示しない)を設置させておき、その場で処置を行うことが可能な欠陥である場合には、研削によってかかる欠陥を取り除く作業を行うことも可能である。
【0023】
被検査面25は、移動装置26が移動可能な範囲で平面でも曲面であってもよい。また、被検査面25は、渦流探傷が可能な金属面である限り、1〜2mm程度の溶接線や起伏(凸凹)があってもよい。
【0024】
移動装置26は、図示しない防水ケーブル等を介して、本発明の水中溶接部検査装置10と外部の制御装置との間で信号の送受信ができるようになっている。
【0025】
上述した本発明の構成によれば、液体タンクの内面(被検査面)に沿って遠隔操作で移動可能な移動装置26に本発明の水中溶接部検査装置10が取り付けられるので、この移動装置26を遠隔操作することにより、内部に液体を保有する液体タンクの内面を遠隔操作で渦流探傷検査することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
10 水中溶接部検査装置、11 渦流探傷プローブ、12 検知装置、
12a プローブセンサ、12b プローブホルダ、13 画像処理装置、
14 画像処理データ出力装置、15 車輪、16 支持フレーム、
16a 第1支持フレーム、16b 第2支持フレーム、18 昇降装置、
19 リニアベアリング、20 CCDカメラ、20a 撮影装置、
20b 映像出力装置、21 ストッパー、25 被検査面、26 移動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCDカメラと渦流探傷プローブを有する水中壁面検査装置であって、
前記CCDカメラは、対象物の撮影を行う撮影装置と、
該撮影によって得た映像を外部に出力する映像出力装置からなり、
前記渦流探傷プローブは、対象物における欠陥の検知を行う検知装置と、
該検知によって得たデータを目視で欠陥の認識が可能な形式に画像処理を行う画像処理装置と、
前記画像処理によって画像処理データを外部に出力する画像処理データ出力装置と、からなり、
前記CCDカメラの周囲に複数台設置されている、ことを特徴とする水中壁面検査装置。
【請求項2】
前記検知装置は、対象物に表面の状態変化を認識することで欠陥の検知を行う複数のプローブセンサと、該プローブセンサを保持するプローブホルダからなり、
前記プローブセンサは、進行方向に対して斜めに配置されている、ことを特徴とする水中壁面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−127767(P2012−127767A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278717(P2010−278717)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】