説明

水中航走体の航走制御方法及び装置

【課題】 複数の水中航走体に装備する音響スキャンソナーの数を低減させる。
【解決手段】 音響スキャンソナー6を備え、位置表示装置2を搭載して航走できるようにした位置特定用水中航走体1と、位置表示装置2に対する相対位置を検出するための相対位置検出装置8を有する被誘導用水中航走体3を形成する。先ず、位置特定用水中航走体1を航走させて音響スキャンソナー6により海底4の特定位置4aを正確に検出させて、そこに位置表示装置2を設置させる。その後、被誘導用水中航走体3を航走させるときに、相対位置検出装置8により位置表示装置2との相対位置を検出させ、検出された位置表示装置2に向けて航走させることで、被誘導用水中航走体3を海底4の特定位置4aまで正確に到達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律航走できるようにしてある水中航走体の航走を制御するために用いる水中航走体の航走制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や湖沼における比較的深い領域や広範な領域の水中調査作業を行うための装置として、自律航行型の水中航走体が利用されるようになってきている。
【0003】
この種の水中航走体は、地球座標上の緯度及び経度と、深度からなる該水中航走体の存在する位置を計測し、その計測された存在位置を基に、予め与えられた経路を航走するようにしてある。
【0004】
この際、水中航走体が自身で地球座標上の緯度と経度を測位する方法としては、慣性航法による測位が一般的に用いられている。これは、水中航走体に、ジャイロを備えて該水中航走体のロール、ピッチ、ヨーを検出すると共に、該水中航走体に作用する加速度を検出できるようにしてある慣性航法装置を搭載して、たとえば、GPS等の海上測位システムを用いて測定した支援船の地球座標上における緯度と経度を基に与えられる上記水中航走体の航走を開始した始点の位置情報に、上記慣性航法装置により検出される水中航走体の加速度を2階積分することで得た航走距離(移動量)の情報を足し合わせることにより、水中航走体の地球座標上における緯度と経度を、該水中航走体自身で計測するようにしてある。
【0005】
ところで、上記水中航走体が自身で測位を行うための慣性航法による測位は、上述したように、水中航走体に作用する加速度を2階積分して求まる上記水中航走体の航走距離(移動量)に基づいて、該水中航走体の位置を計測するという計測原理上、上記水中航走体の加速度を検出するために用いる検出器の精度に依存して生じる加速度の検出誤差や、計算時の丸め誤差等の誤差が時間の経過と共に累積する。そのために、水中航走体の慣性航法による自律航走を長時間行うと、該慣性航法に基づいて水中航走体が自身で測位している地球座標上の緯度及び経度と、実際の水中航走体の地球座標上の緯度及び経度に、次第にずれが生じてしまう。
【0006】
そのため、水中航走体には、海底(水底)付近で自身で位置の正確な特定を行うことができるようにするための手段として、音波の発信・受信を行う送受波器を備えた高精度な音響式の位置特定装置(音響検出装置)、たとえば、サイドスキャンソナー等の音響スキャンソナーを搭載して、発信した超音波が対象物に反射されて戻ってくるまでの時間から対象物までの距離を測ると共に、反射波(反射音)の到来方向から対象物の方向を測定することにより、海底(水底)の地形を識別し、その識別された海底地形を基に水中航走体自身の位置を特定させ、更に、目標物や障害物等を把握させることが、一般的に行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
なお、上記水中航走体の深度の計測は、一般的に、該水中航走体に装備された深度計を用いるようにしてあり、その検出の際、積分計算を行うことはないため、時間の経過に伴って誤差が累積する虞はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−313087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、水中航走体は、支援船等の船で運搬する必要上、その大きさに制限がある。 そのため、水中航走体ごとに上記サイドスキャンソナー等の音響スキャンソナーのような高精度な音響式の位置特定装置を装備しようとすると、他の機能を有する装置の搭載が制限され、又、水中航走体自体が大型化するというのが実状である。
【0010】
更に、上記サイドスキャンソナー等の音響スキャンソナーのような高精度な音響式の位置特定装置は高価であるため、複数の水中航走体を運用する場合に、個々の水中航走体に要する装置コストが嵩んでしまう。
【0011】
そこで、本発明は、複数の水中航走体を運用する場合に、各水中航走体の大型化を招くことなく、該複数の水中航走体全体に対して装備すべき高精度な音響式の位置特定装置の数の削減と、別の機能を有する装置の装備数の増加を容易に実施することができるようにするための水中航走体の航走制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、音響式の位置特定装置を備えた位置特定用水中航走体を、位置表示装置を搭載した状態で航走させて、上記音響式の位置特定装置により検出された特定位置に、上記位置表示装置を設置させ、次いで、上記位置表示装置に対する相対位置を検出するための相対位置検出装置を備えた被誘導用水中航走体を航走させるときに、上記相対位置検出装置により上記位置表示装置に対する相対位置を検出させて、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにする水中航走体の航走制御方法とする。
【0013】
又、上記構成において、被誘導用水中航走体の相対位置検出装置に装備した送受波器よりパルス波を発信し、該パルス波が位置表示装置に備えたトランスポンダに受信されると、該トランスポンダが一定のタイムラグで返信用のパルス波を返信し、更に、この返信用のパルス波を上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置に装備した送受波器で受信するようにして、該送受波器よりパルス波を発信してから該送受波器で上記受信用のパルス波が受信されるまでの経過時間と、水中の音速とから、被誘導用水中航走体の相対位置検出装置より上記位置表示装置までの相対距離を計測し、この相対距離の計測結果を基に、上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置により上記位置表示装置に対する相対位置を検出させるようにする。
【0014】
更に、上記構成において、被誘導用水中航走体の航走中に、一直線状の配置とならない少なくとも3個所で、被誘導用水中航走体の相対位置検出装置により上記位置表示装置までの相対距離を計測して、その計測結果を重ね合わせることで、上記被誘導用水中航走体の上記位置表示装置に対する相対位置を検出するようにする。
【0015】
又、請求項4に対応して、音響式の位置特定装置を備え且つ位置表示装置を搭載して航走できると共に上記音響式の位置特定装置で検出された特定位置に上記位置表示装置を設置できるようにしてある位置特定用水中航走体と、相対位置検出装置を有する被誘導用水中航走体とを備えて、上記位置特定用水中航走体により上記特定位置に設置された位置表示装置に対する相対位置を上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置にて検出し、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにしてなる構成を有する水中航走体の航走制御装置とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)音響式の位置特定装置を備えた位置特定用水中航走体を、位置表示装置を搭載した状態で航走させて、上記音響式の位置特定装置により検出された特定位置に、上記位置表示装置を設置させ、次いで、上記位置表示装置に対する相対位置を検出するための相対位置検出装置を備えた被誘導用水中航走体を航走させるときに、上記相対位置検出装置により上記位置表示装置に対する相対位置を検出させて、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにする水中航走体の航走制御方法、及び、音響式の位置特定装置を備え且つ位置表示装置を搭載して航走できると共に上記音響式の位置特定装置で検出された特定位置に上記位置表示装置を設置できるようにしてある位置特定用水中航走体と、相対位置検出装置を有する被誘導用水中航走体とを備えて、上記位置特定用水中航走体により上記特定位置に設置された位置表示装置に対する相対位置を上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置にて検出し、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにしてなる構成を有する水中航走体の航走制御装置としてあるので、高精度な音響式の位置特定装置は、位置特定用水中航走体のみに装備すればよく、その他の被誘導用水中航走体については、相対位置検出装置により検出される位置表示装置との相対位置の情報を基に、該位置表示装置が設置してある特定位置を目標物として、該目標物となる特定位置に到達するように航走させたり、上記位置表示装置が設置してある特定位置を障害物として、該障害物となる特定位置を回避するように正確に航走させることができる。
(2)上記被誘導用水中航走体では、音響式の位置特定装置以外の他の機能を有する装置の搭載が容易になるため、被誘導用水中航走体を複数機運用することで、上記音響式の位置特定装置以外の他の機能を有する装置の装備数を容易に増加させることができる。又、各被誘導用水中航走体の大型化を防止することが可能になる。
(3)更に、高価な音響式の位置特定装置は、位置特定用水中航走体のみに装備すればよいため、上記各被誘導用水中航走体については、装置コストを大幅に低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の水中航走体の航走制御方法及び装置の実施の一形態を示すもので、位置特定用水中航走体により特定位置を検出した状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明の水中航走体の航走制御方法における図1に続く手順を示すもので、位置特定用水中航走体により、検出した特定位置に位置表示装置を設置した状態を示す概略側面図である。
【図3】本発明の水中航走体の航走制御方法で用いる装置構成を示す概要図である。
【図4】被誘導用水中航走体による位置表示装置の検出原理の概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図4は本発明の水中航走体の航走制御方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0020】
すなわち、本発明の水中航走体の航走制御方法の実施に用いる本発明の水中航走体の航走制御装置は、位置特定用水中航走体1と、該位置特定用水中航走体1により水底としての海底4の特定位置4aに設置するための単数又は複数の位置表示装置2と、単数又は複数機の被誘導用水中航走体3とを備えた構成とする。
【0021】
上記位置特定用水中航走体1は、図3に示すように、慣性航法装置5と、高精度な音響式の位置特定装置としてのサイドスキャンソナー等の音響スキャンソナー6とを備えてなる構成として、上記慣性航法装置5による慣性航法に基づく位置特定用水中航走体1自身の位置検出に加えて、上記音響スキャンソナー6により海底(水底)4の地形を識別して、その識別された海底4の地形を基に、該位置特定用水中航走体1自身の位置を正確に特定させると共に、目標物や障害物等の海底4の特定位置4aを把握できるようにする。
【0022】
更に、上記位置特定用水中航走体1には、上記単数又は複数基の位置表示装置2を取り出し可能に格納するための格納室7を設ける(図では1基の位置表示装置2を格納した状態が示してある)と共に、該格納室7内に格納されている位置表示装置2を取り出して上記音響スキャンソナー6により把握された海底4の特定位置4aに設置するための図示しない位置表示装置設置機構を備えてなる構成とする。
【0023】
上記被誘導用水中航走体3は、慣性航法装置5aを備えてなる構成として、慣性航法に基づいて該被誘導用水中航走体3自身の位置検出を行うことができるようにしてある。
【0024】
更に、上記被誘導用水中航走体3には、上記位置特定用水中航走体1により海底4の特定位置4aに設置された位置表示装置2との間で音響信号の送受信を行うことにより該被誘導用水中航走体3自身の上記位置表示装置2に対する相対的な位置を検出するための相対位置検出装置8を装備し、更に、該相対位置検出装置8で検出された上記位置表示装置2に対する上記被誘導用水中航走体3の相対位置に応じて、スラスター等の推進装置や操舵装置等の制御を介し該被誘導用水中航走体3の航走を制御するための水中航走体制御装置9を備えた構成とする。
【0025】
具体的には、たとえば、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8を、パルス波を発信、受信可能な送受波器(図示せず)を備えてなる構成とする。
【0026】
一方、上記位置表示装置2を、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器より発信されたパルス波を受信すると、或る一定のタイムラグで返信用のパルス波を返信するようにしてあるトランスポンダ(図示せず)を備えてなる構成とし、このトランスポンダにより返信される返信用のパルス波を、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器で受信できるようにしてある。これにより、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器よりパルス波を発信してから、上記返信用のパルス波が該送受波器で検出されるようになるまでの経過時間と、上記位置表示装置2のトランスポンダが上記送受波器より発信されたパルス波を受信してから返信用のパルス波を返信するまでのタイムラグと、水中の音速に関する情報(データ)とを基に、上記被誘導用水中航走体3から、上記位置表示装置2までの距離を測定することができるようにしてある。
【0027】
更に、上記相対位置検出装置8では、図4に示すように、上記被誘導用水中航走体3の進行方向を多少変化させた状態で航走させながら、一直線上の配置とならないで少なくとも3個所、すなわち、上記航走する被誘導用水中航走体3が時間経過に伴って、たとえば、図3におけるA点、B点、C点にそれぞれ位置しているときに、上記相対位置検出装置8の送受波器から発信するパルス波による上記位置表示装置2までの距離の測定を繰り返し実施して、上記A点に位置している被誘導用水中航走体3から上記位置表示装置2までの距離Laの測定結果と、上記B点に位置している被誘導用水中航走体3から上記位置表示装置2までの距離Lbの測定結果と、上記C点に位置している被誘導用水中航走体3から上記位置表示装置2までの距離Lcの測定結果とを重ね合わせることで、上記被誘導用水中航走体3の位置を基準とする上記位置表示装置2の相対的な位置を検出することができるようにしてある。
【0028】
なお、図3では、位置特定用水中航走体1における水中航走体制御装置の記載は省略してある。
【0029】
以上の構成としてある本発明の水中航走体の航走制御装置を使用する場合は、図1に示すように、先ず、上記位置特定用水中航走体1を航走させて、慣性航法装置5による該位置特定用水中航走体1自身による位置検出と共に、音響スキャンソナー6による海底4の地形の識別に基づく該位置特定用水中航走体1自身の正確な位置の特定を行わせる。
【0030】
その後、上記位置特定用水中航走体1が、該位置特定用水中航走体1自身の正確な位置の特定に基づいて、たとえば、図4に示すように、他の被誘導用水中航走体3の航走の目標物となる海底4の特定位置4aを検出して、該特定位置4aの上方に到達すると、上記位置特定用水中航走体1に装備してある図示しない位置表示装置設置機構により、該位置特定用水中航走体1の格納室7(図3参照)に搭載してある位置表示装置2を取り出して上記特定位置4aに設置する。
【0031】
次いで、図2に示すように、被誘導用水中航走体3を、慣性航法装置5による該被誘導用水中航走体3自身で検出させる位置情報を基に航走させて、該被誘導用水中航走体3に装備した相対位置検出装置8の送受波器と、上記海底4の特定位置4aに設置された位置表示装置2のトランスポンダとのパルス波の送受信が可能になる領域まで到達させる。
【0032】
上記のようにして被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器と、上記海底4の特定位置4aに設置された位置表示装置2のトランスポンダとのパルス波の送受信が可能になると、上記相対位置検出装置8により、上記図4に示した手法に基づいて、被誘導用水中航走体3の位置を基準とする上記位置表示装置2の相対位置の検出を行い、検出された上記位置表示装置2の方向へ向かうように、被誘導用水中航走体3の水中航走体制御装置9によるスラスター等の推進装置や操舵装置等の制御を介した被誘導用水中航走体3の航走の制御を行わせるようにする。これにより、上記被誘導用水中航走体3は、上記位置表示装置2へ向けて航走するようになるため、該被誘導用水中航走体3を、その目標物となる海底4の特定位置4aまで正確に航走させることができるようになる。
【0033】
又、上記被誘導用水中航走体3を複数機運用する場合は、各被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器を、それぞれ異なる波長のパルス波を発信するように設定すると共に、上記位置表示装置2のトランスポンダを、受信する波長の異なるパルス波に対し、それぞれ異なる波長の返信用のパルス波を返信する機能を備えるようにした構成として、上記各被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器で、該各送受波器ごとに予め設定された波長の返信用のパルス波が検出されたときの時間データのみを、それぞれの被誘導用水中航走体3と上記位置表示装置2との距離の測定に用いるようにすればよい。これにより、上記複数機の被誘導用水中航走体3を同時運用することができる。
【0034】
このように、本発明の水中航走体の航走制御方法及び装置によれば、高精度な音響式の位置特定装置であるサイドスキャンソナー等の音響スキャンソナー6は、位置特定用水中航走体1のみに装備すればよく、その他の被誘導用水中航走体3については、慣性航法装置5aと、位置表示装置2との音響信号の送受信を行う送受波器を具備した相対位置検出装置8のみしか搭載していなくても、位置表示装置2が設置してある海底4の特定位置4aを目標物として、該特定位置4aまで正確に航走させることができるようになる。
【0035】
更に、上記音響スキャンソナー6を装備しない上記被誘導用水中航走体3では、音響スキャンソナー6以外の他の機能を有する装置の搭載が容易になるため、被誘導用水中航走体3を複数機運用することで、上記音響スキャンソナー6以外の他の機能を有する装置の装備数を容易に増加させることができ、又、該各被誘導用水中航走体3の大型化を防止することが可能になる。
【0036】
更に、位置特定用水中航走体1と、複数機の被誘導用水中航走体3を運用する場合であっても、高価な音響式の位置特定装置である上記音響スキャンソナー6は、上記位置特定用水中航走体1に装備するのみでよいため、上記位置特定用水中航走体1以外の各被誘導用水中航走体3については、装置コストを大幅に低減させることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、被誘導用水中航走体3に装備する相対位置検出装置8の送受波器を小型化して、被誘導用水中航走体3において音響スキャンソナー6以外の他の機能を有する装置を装備するためのスペースを多く確保するという効果を得る観点からすると、上記相対位置検出装置8の送受波器は、位置表示装置2より返信される返信用のパルス波を単に受波する機能を有するものとすることが好ましいが、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8にアレイ式の送受波器を備えて、該送受波器により、上記位置表示装置2より返信される返信用のパルス波の到来する方向を検出できるようにした構成としてもよい。このようにすれば、被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8にて海底4の特定位置4aに設置された位置表示装置2の相対位置を検出する際に、アレイの配置にもよるが、被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器と上記位置表示装置2のトランスポンダとの間で図4に示すようにパルス波の送受信を3回繰り返すことなく、2回あるいは1回のパルス波の送受信で上記位置表示装置2の相対位置を正確に検出することが可能になる。
【0038】
位置表示装置2は、被誘導用水中航走体3の目標物となる海底4の特定位置4aではなく、位置特定用水中航走体1で特定した被誘導水中航走体3の航走コース上における障害物が存在する位置に設置するようにしてもよい。この場合は、被誘導用水中航走体3により上記位置表示装置2の相対的な位置が測定された時点で、上記被誘導用水中航走体3の水中航走体制御装置9により該被誘導用水中航走体3を上記位置表示装置2の設置個所を回避するような航走を行わせるようにすればよい。
【0039】
被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置による位置表示装置2の相対位置の検出を、単純な検出原理で行えるようにして、上記相対位置検出装置8の構成をシンプルなものとして小型化できるようにする効果を得る観点からすると、上記位置表示装置2は、上記被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8の送受波器との間でパルス波の送受信を行うためのトランスポンダを備えた形式のものとすることが好ましいが、被誘導用水中航走体3の相対位置検出装置8による位置表示装置2の相対的な位置の検出を所要の精度で実施できるようにしてあれば、位置表示装置2の設置位置に関する情報を音響信号に載せて被誘導用水中航走体3へ与えるようにしたり、位置表示装置2よりビーム状に音響信号を発信させ、このビーム状の音響信号を受けることができるか否かで被誘導用水中航走体3にて上記位置表示装置2の相対的な位置を測定させる等、いかなる形式の測定原理を採用した位置表示装置2を用いるようにしてもよい。この場合、被誘導用水中航走体3に備える相対位置検出装置8は、上記位置表示装置2の発する音響信号に対応して該位置表示装置2までの相対位置を計測する機能を備えるものを適宜選定して用いるようにすればよい。
【0040】
図1乃至図4に示した各水中航走体1,3、及び、位置表示装置2のサイズや形状は、図示するための便宜上のものであり、各水中航走体1,3、及び、位置表示装置2のサイズや形状は任意に設定してよい。上記位置特定用水中航走体1と被誘導用水中航走体3は、形状やサイズが相違していてもよい。
【0041】
位置特定用水中航走体1を航走させるときに複数の位置表示装置2を搭載しておき、該位置特定用水中航走体1の1回の航走で、目標物や障害物となる海底4の複数の特定位置4aに近接用の音響信号や回避用の音響信号を発する位置表示装置2をそれぞれ設置させるようにしてもよい。
【0042】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 位置特定用水中航走体
2 位置表示装置
3 被誘導用水中航走体
4 海底(水底)
4a 特定位置
6 音響スキャンソナー(音響式の位置特定装置)
8 相対位置検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響式の位置特定装置を備えた位置特定用水中航走体を、位置表示装置を搭載した状態で航走させて、上記音響式の位置特定装置により検出された特定位置に、上記位置表示装置を設置させ、次いで、上記位置表示装置に対する相対位置を検出するための相対位置検出装置を備えた被誘導用水中航走体を航走させるときに、上記相対位置検出装置により上記位置表示装置に対する相対位置を検出させて、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにすることを特徴とする水中航走体の航走制御方法。
【請求項2】
被誘導用水中航走体の相対位置検出装置に装備した送受波器よりパルス波を発信し、該パルス波が位置表示装置に備えたトランスポンダに受信されると、該トランスポンダが一定のタイムラグで返信用のパルス波を返信し、更に、この返信用のパルス波を上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置に装備した送受波器で受信するようにして、該送受波器よりパルス波を発信してから該送受波器で上記受信用のパルス波が受信されるまでの経過時間と、水中の音速とから、被誘導用水中航走体の相対位置検出装置より上記位置表示装置までの相対距離を計測し、この相対距離の計測結果を基に、上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置により上記位置表示装置に対する相対位置を検出させるようにする請求項1記載の水中航走体の航走制御方法。
【請求項3】
被誘導用水中航走体の航走中に、一直線状の配置とならない少なくとも3個所で、被誘導用水中航走体の相対位置検出装置により上記位置表示装置までの相対距離を計測して、その計測結果を重ね合わせることで、上記被誘導用水中航走体の上記位置表示装置に対する相対位置を検出するようにする請求項2記載の水中航走体の航走制御方法。
【請求項4】
音響式の位置特定装置を備え且つ位置表示装置を搭載して航走できると共に上記音響式の位置特定装置で検出された特定位置に上記位置表示装置を設置できるようにしてある位置特定用水中航走体と、相対位置検出装置を有する被誘導用水中航走体とを備えて、上記位置特定用水中航走体により上記特定位置に設置された位置表示装置に対する相対位置を上記被誘導用水中航走体の相対位置検出装置にて検出し、該相対位置の検出結果に応じて上記被誘導用水中航走体の航走を制御させるようにしてなる構成を有することを特徴とする水中航走体の航走制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−170575(P2011−170575A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33197(P2010−33197)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】