説明

水位計測系の非凝縮性ガス排出装置

【課題】水位計測系内に非凝縮性ガスの蓄積・滞留するのを防止し、これにより高精度で給水加熱器等の水位を測定することができる水位計測系の非凝縮性ガス排出装置を提供する。
【解決手段】立ち上がり配管部3、上部配管部4及び連絡配管部5からなる上部計装配管2aと、下部計装配管2bと、前記上部計装配管2aと下部計装配管2bに接続された水位計1と、前記連絡配管部5に接続された制御弁11を有するベント管12と、前記制御弁11を開閉制御する制御装置8と、を有するプラント機器の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置において、前記立ち上がり配管部3、上部配管部4及び連絡配管部5の少なくとも一つに水素濃度検出器6及び温度検出器7を設置し、前記制御装置8は前記水素濃度検出器6及び温度検出器7の検出値に基づいて前記制御弁11を開閉制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水加熱器等のプラント機器に設置された水位計測系の非凝縮性ガス排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力プラントにおける給水加熱器やドレンタンク等のプラント機器では、機器内の水位を監視するために水位計測装置が設置されている。このような水位計側装置では、計装配管に非凝縮性ガスが蓄積・滞留すると、計測誤差が増加するため、計装配管に非凝縮性ガスの排出手段を設け非凝縮性ガスが計装配管に蓄積・滞留するのを防止している。図3により従来の非凝縮性ガス排出装置を説明する(特許文献1)。
【0003】
給水加熱器20には原子炉給水を加熱するためにタービン抽気配管21を介してタービン抽気が供給され、原子炉給水を加熱して凝縮されたタービン抽気のドレンは、給水加熱器20の底部に設けられるドレン配管(図示せず)から外部に排出される。タービン抽気には水素ガス、酸素ガス等の非凝縮性ガスが含まれており、この非凝縮性ガスは、給水加熱器20内の気相部に一時的に滞留した後、ベントライン22から外部へ排出される。
【0004】
水位計測系10は、給水加熱器20の上部から上方に引き出され水位計1に接続される上部計装配管2aと給水加熱器20の下部から下方に引き出され水位計1に接続される下部計装配管2bとを有する。
【0005】
また、この上部計装配管2aには給水加熱器20内の非凝縮性ガスが混入するため、水位測定用計装配管2aにベント管12を接続し、上部計装配管2aに蓄積・滞留した非凝縮性ガスをベント管12に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−20497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した非凝縮性ガス排出装置においては、常時、低圧側の上部計装配管2a内に非凝縮性ガス排出の流れが発生するため、水位計測値が変動し、正確な水位を測定することが困難であった。また、計装配管内に非凝縮性ガスが蓄積・滞留すると蒸気流入が妨げられるため、これによる温度低下を検出することでガス蓄積・滞留を推定する手段も知られているが、この方法は十分に温度が低下した後に初めて蓄積・滞留を判定可能となるため、蓄積・滞留の検知遅れが大きな課題となっていた。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、水位計測系内に非凝縮性ガスの蓄積・滞留するのを防止し、これにより高精度で給水加熱器等の水位を測定することができる水位計測系の非凝縮性ガス排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明に係る水位計測系の非凝縮性ガス排出装置は、立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部からなる上部計装配管と、下部計装配管と、前記上部計装配管と下部計装配管に接続された水位計と、前記連絡配管部に接続された制御弁を有するベント管と、前記制御弁を開閉制御する制御装置と、を有するプラント機器の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置において、前記立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部の少なくとも一つに水素濃度検出器及び温度検出器を設置し、前記制御装置は前記水素濃度検出器及び温度検出器の検出値に基づいて前記制御弁を開閉制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る水位計測系の非凝縮性ガス排出装置は、立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部からなる上部計装配管と、下部計装配管と、前記上部計装配管と下部計装配管に接続された水位計と、前記連絡配管部に接続された制御弁を有するベント管と、前記制御弁を開閉制御する制御装置と、を有するプラント機器の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置において、前記立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部の少なくとも一つに水素濃度検出器を設置し、前記制御装置は前記水素濃度検出器の検出値に基づいて前記制御弁を開閉制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水位計測系内に非凝縮性ガスの蓄積・滞留するのを防止し、これにより給水加熱器等のプラント機器の水位を高精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る非凝縮性ガス排出装置の構成図。
【図2】第2の実施形態に係る非凝縮性ガス排出装置の構成図。
【図3】従来の非凝縮性ガス排出装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る水位計測系の非凝縮性ガス排出装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態では非凝縮性ガス排出装置を給水加熱器に適用した例を説明するが、これに限定されず、他の機器に適用してもよいことはもちろんである。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る水位計測系の非凝縮性ガス排出装置を図1により説明する。
(構成)
第1の実施形態に係る水位計測系10は、一端が給水加熱器20の上部に接続され他端が水位計1に接続される上部計装配管2aと、一端が給水加熱器20の下部に接続され他端が水位計1に接続される下部計装配管2bから構成される。
【0015】
上部計装配管2aは、給水加熱器20との接続部である立ち上がり配管部3、上部配管部4、水位計1との連絡配管部5からなり、ベント管12は制御弁11を介して連絡部配管5の上部に接続されている。
【0016】
上部計装配管2aの立ち上がり配管部3、上部配管部4、連絡配管部5にはそれぞれ水素濃度検出器6及び温度検出器7が設けられ、これらの水素濃度検出器6及び温度検出器7からの信号は制御装置8に入力される。また、制御装置8はベント管12の制御弁11に制御信号を出力するとともに、警報装置9に警報発生の有無を指示する。
【0017】
(作用)
このように構成された本第1の実施形態において、いずれかの水素濃度検出器6が上部計装配管2a内に水素を主成分とする所定の基準値以上の非凝縮性ガスを検知した場合、又は非凝縮性ガスが上部計装配管2a内に蓄積した際に蒸気流入が妨げられることによる温度低下が所定の基準値以上であることを温度検出器7が検出した場合に、制御装置8はベント管12に設置した制御弁11が開となるように制御する。また、水素濃度検出器6又は温度検出器7の検出値が予め設定された所定値を超えた場合、制御装置8は警報装置9に警報を発報するように指示する。
【0018】
なお、制御弁11は必要に応じて手動操作により任意に開閉可能であるようにしてもよい。また、本実施形態では水素濃度検出器6及び温度検出器7を立ち上がり配管部3、上部配管部4、連絡配管部5にそれぞれ設けているが、必ずしも全てに設置する必要はなく、一部省略することもできる。
さらに、本実施形態ではベント管12を連絡部配管5の上部に接続しているが、上部配管4に接続してもよい。
【0019】
(効果)
本第1の実施形態によれば、非凝縮性ガスの滞留・蓄積の起こりやすい主として原子力発電所起動時及び負荷上昇時において、給水加熱器20の水位計測系の計装配管内の非凝縮性ガスを少なくとも1以上の水素濃度検出器6及び温度検出器7により監視し、いずれかの検出器が基準値以上の非凝縮性ガスを検出した場合、ベント管12の制御弁11を開とすることにより、非凝縮性ガスをベント管12に排出することにより、水位計の計測誤差を最小にし、信頼性を高めることができる。
【0020】
また、通常運転時は制御弁11を閉とすることで、差圧式の水位計1で水位計測を実施する場合の測定値の変動要因となる低圧側の上部計装配管2aからのベント管12への流れの発生を排除することができる。
【0021】
さらに、警報監視を併用することにより、非凝縮性ガス滞留・蓄積を確実に確認することができる。また、非凝縮性ガス滞留・蓄積を確認しても、制御弁11が何らかの原因で閉の状態にある場合は、手動操作により制御弁11を開くことにより、非凝縮性ガスをベント管12に確実に排出することができる。
【0022】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る水位計測系10の非凝縮性ガス排出装置を図2により説明する。なお、上記の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第2の実施形態は非凝縮性ガスの検知を水素濃度検出器6のみで行うことを特徴としている。
【0023】
図2において、水素濃度検出器6は、上部計装配管2aの立ち上がり配管部3、上部配管部4、連絡配管部5のいずれか又は全てに設置されている。
このように構成された本第2の実施形態において、水素濃度検出器6が水位計測系に水素を主成分とする基準値以上の非凝縮性ガスを検知した場合に、制御装置8はベント管12に設置した制御弁11が開となるように制御する。
また、水素濃度検出器6の検出値が予め設定された所定値を超えた場合、制御装置8は警報装置9に警報を発報するように指示する。
【0024】
本第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様な作用効果を奏するほか、非凝縮性ガスの検知を水素濃度検出器6のみで行うことにより、機器点数の削減及び低コスト化を実現できる。
【0025】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1…水位計、2a…上部計装配管、2b…下部計装配管、3…立ち上がり配管部、4…上部配管部、5…連絡配管部、6…水素濃度検出器、7…温度検出器、8…制御装置、9…警報装置、10…水位計測系、11…制御弁、12…ベント管、20…給水加熱器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部からなる上部計装配管と、下部計装配管と、前記上部計装配管と下部計装配管に接続された水位計と、前記連絡配管部に接続された制御弁を有するベント管と、前記制御弁を開閉制御する制御装置と、を有するプラント機器の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置において、
前記立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部の少なくとも一つに水素濃度検出器及び温度検出器を設置し、前記制御装置は前記水素濃度検出器及び温度検出器の検出値に基づいて前記制御弁を開閉制御することを特徴とする水位計測系の非凝縮性ガス排出装置。
【請求項2】
立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部からなる上部計装配管と、下部計装配管と、前記上部計装配管と下部計装配管に接続された水位計と、前記連絡配管部に接続された制御弁を有するベント管と、前記制御弁を開閉制御する制御装置と、を有するプラント機器の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置において、
前記立ち上がり配管部、上部配管部及び連絡配管部の少なくとも一つに水素濃度検出器を設置し、前記制御装置は前記水素濃度検出器の検出値に基づいて前記制御弁を開閉制御することを特徴とする水位計測系の非凝縮性ガス排出装置。
【請求項3】
前記水素濃度検出器又は温度検出器の検出値が予め設定された所定値を超えた場合、前記制御装置は警報装置に警報を発生させることを特徴とする請求項1又は2記載の水位計測系の非凝縮性ガス排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145406(P2012−145406A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3128(P2011−3128)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】