説明

水処理方法及びその装置

【課題】 簡単な構成で、原水が低濁度の場合でも、高濁度の場合でも、利用可能な水処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 濾過槽1への原水配管部に、凝集剤添加・攪拌機10を設け、原水に凝集剤を添加すると共に、急速攪拌して、微小なマイクロフロックを発生させる。次に、これを濾過槽1に送り込む。濾過槽1の上部には、緩速攪拌装置20があって、フロックを互に衝突させ、微小なマイクロフロックを、中程度の大きさのフロックに成長させる。濾過槽1の下部には、アンスラサイト層4と濾過砂層3との2層とからなる濾過層があって、ここでフロックを分離除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道の浄水場などで使用されている水処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水処理方法では、原水が高濁度の場合には、先ず、原水を混和池に導いて、凝集剤を添加し、かつ、攪拌してマイクロフロックの形成を図り、更に、これをフロック形成池に於いて、大きなフロックに成長させ、次に、沈殿池に送ってある程度のフロックを除去し、最後に濾過池で全てのフロックを除去する(例えば、特許文献1参照)。また原水が低濁度の場合には、原水に混和池で凝集剤を添加して、小さなフロックを形成させた後、フロック形成池や沈殿池を通さずに直接、濾過池に送って、フロックを除去する方法を採る。ただし、この方法は、原水が高濁度の場合には利用できない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−28976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の高濁度での水処理の場合のように、濾過池の他に、混和池、フロック形成池、沈殿池を設ける方式では、装置が全体として大型化して、大きな設置スペースが必要となる上に、各池ごとに配管やメンテナンスの費用がかかり、更に、各池には計測器類が必要で、かつ、制御項目が多くなって、自動化が難しくなる欠点がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、原水が高濁度でも低濁度でも、汚濁の除去が可能な水処理方法及びその装置を提供せんとするものである。更に、本発明は、装置を簡素化できると共に、自動化に好適な水処理方法及びその装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理方法の技術的手段は、原水に凝集剤を添加して、急速攪拌し、微小なマイクロフロックを形成して、これを濾過槽に送り、濾過槽の上部で緩速攪拌を行って微小なマイクロフロックを中程度の大きさのフロックに成長させ、濾過槽の下部でフロックを濾過して除去することにある。
【0007】
また、濾過槽の濾過層を、アンスラサイト層と濾過砂層との2層構成とするのがよい。
【0008】
本発明の水処理装置の技術的手段は、凝集剤添加・攪拌機と、濾過槽とからなり、凝集剤添加・攪拌機は濾過槽への原水配管部に設け、更に、濾過槽上部には緩速攪拌装置を設けると共に、濾過槽下部に濾過層を設けたことにある。
【0009】
また、濾過槽の濾過層内に、逆洗時の攪拌用の羽根を設けてもよい。更に、緩速攪拌装置として、濾過槽への原水の供給口である上部口を、上向き開口形式にすると共に、口壁の1箇所に切欠を設けて、この切欠を通って原水が槽内に流れ込むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水処理方法では、先ず原水に凝集剤を添加して急速攪拌し、微小なマイクロフロックを形成して、これを濾過槽に送り、濾過槽ではその上部で緩速攪拌により微小なマイクロフロックを中程度の大きさのフロックに成長させ、濾過槽の下部でこのフロックを濾過して除去する方式で水処理を行う。これにより低濁度から高濁度までの水処理が可能となる。更に、構成が簡単であるので、廉価に実施可能である。
【0011】
請求項2のものでは、濾過層が、アンスラサイト層と濾過砂層との2層構成であるので、空隙率の大きなアンスラサイト層が濾過砂層の負担を軽減することができ、目詰りの抑制ができる。
【0012】
本発明の水処理装置では、凝集剤添加・攪拌装置を配管部に設けただけで、凝集剤混和池や、フロック形成池、更には沈殿池を設けないので、装置全体の構成が簡単となり、設置スペースが少なくて済む上に、各池での制御が不要となるので、自動化が容易となる。
【0013】
請求項4のものは、濾過層間に逆洗作業時に使用する攪拌羽根が設けられているので、逆洗洗浄を効果的に行うことができ、逆洗時間の短縮と、高精度の洗浄が可能である。
【0014】
請求項5のものでは、上部口に切欠を設けて、ここから原水を槽内に供給するので、槽上部では原水のゆっくりとした一定状態の流れが発生し、この間にフロック同士が衝突して、フロックが大きく成長し、高濁度の場合でも確実な清浄化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の水処理方法を実施するための最良の形態を、以下の実施例に基づいて説明する。図1には、本発明の全体が示されている。濾過槽1の内部には、下段から順に、粒径2〜20mmの砂利が敷詰められた支持層2、濾過砂層3、アンスラサイト層4が層状に設けられている。また、槽の上下部には、槽内の水を流出入させる為の、上部口5と、下部口6とが設けられている。
【0016】
濾過槽1の内部には、逆洗作業時に使用する攪拌羽根7が設けられている。この羽根7は、槽の上端から垂下する回転軸8に取付けられていて、モータ9の回転によって一体に回転し、槽内はこの羽根7によって攪拌される。羽根7の取付位置は、濾過砂層3及びアンスラサイト層4に存在することが必要である。また、羽根7の傾斜の向きは、縦方向に交互に逆向きにする。これにより攪拌時の水流が局部的に異なるようになり、激しく攪拌されて、逆洗による洗浄回復効率が高まる。なお、この逆洗時には、下部口6から洗浄水を供給し、上部口5から排水するようにする。
【0017】
10は凝集剤添加・攪拌機で、原水導入用の配管部に設けられている。即ち、図2に示されるように、配管11を拡径させ、その内部に、モータ12で駆動される攪拌羽根13が取付けられていて、ここに凝集剤が供給口14から添加される。添加された凝集剤は原水と激しく急速に攪拌され、効率よく凝集されて、マイクロフロックが形成される。ただし、このフロックは激しく攪拌されている為、大きく成長することはない。
【0018】
このようにしてマイクロフロックの形成された原水は、上部口5から濾過槽1に送り込まれる。ただし、この原水をこのままで濾過することはできない。マイクロフロックは小さいままであり、原水が高濁度の場合には対応しきれず、また、フロックが小さいので、全てを濾過砂の間で除去しなければならず、砂が短時間で目詰りしてしまうことになる。この為、供給された原水のマイクロフロックを濾過槽1の上部で、ある程度までの大きさに成長させることが必要となる。
【0019】
このフロック成長の為には、緩速攪拌が必要である。即ち、急速攪拌で生じた微小フロックを、緩速攪拌で互に衝突させながら徐々に大きく成長させるのである。水の流れが速かったり、流れの向きが頻繁に変わったりすると、できたフロックがバラバラに砕けてしまい、大きくは成長しない。従って、濾過槽1には、緩速攪拌用の装置20の付設が必要である。
【0020】
この緩速攪拌用の装置20として、実施例1では、図3のように、上部口5を上向きに開口させ、かつ、口壁の1箇所に切欠21を設けて、原水をこの切欠21から槽内に流入させるようにする。これにより、原水はゆるやかな流れとなって、槽内を巡回するようになり、この間にフロック同士が互に衝突して、大きく成長することになる。
【0021】
(試験結果)
実施例1を、通常の上部口と、比較した試験の結果は次の通りである。
上部口:同一形状の上向き開口の上部口に、その口壁上端に3角形の切欠を設けたものと、切欠のないもの。
濾過槽の内径:700mm
流入配管の径:100mm
処理量:49リットル/分
原水濁度:平均1.00度(最大3.00度)
【0022】
【表1】

【0023】
上記の試験結果からみると、切欠(無)のものでは、処理水の濁度は、一応、水質基準の2度以下になっているが、比較的高い値である。切欠(有)のものは、処理水の濁度が、切欠(無)のものの約1/10まで下がり、0.1度以下の安定した値になっている。
【0024】
(他の実施例)
実施例1に於ける切欠21の個類を2個とし、180度の向きで設けるようにしてもよい。また、図5のように、濾過槽1の上端の槽内周に沿ってドーナツ状に樋22を設け、原水をこの樋部に流し込み、樋に沿って周回させた後に、樋端の切欠23から槽内へ流し込むようにしてもよい。更に、図6のように、槽1の内壁に周壁に沿って下向きに螺旋状に樋24を設け、この樋に沿って流すようにしてもよい。
【0025】
次に、濾過槽1での濾過作用について説明する。本発明の水処理は、高濁度の場合でも、低濁度の場合でも利用可能である。また、本発明では、フロック形成池を設けていない為、大きなフロックは形成できないが、槽上部での緩速攪拌によって、小から中程度の大きさのフロックを形成できる。更に、濾過方式は、2層濾過で、アンスラサイトと、濾過砂とを組み合わせている。アンスラサイトは空隙率が大きい為、濾過砂にかかる負担を和らげることができる。即ち、アンスラサイトの上部表面で、フロックの大きなものを除去し、フロックの小さなものは、アンスラサイト内部と濾過砂の内部とで除去する。槽内で除去されたフロックは、時々、逆洗作業によって槽外に排出する。逆洗時には、槽内の攪拌羽根を回転させ、槽下部の下方口から清浄水を送り込み、槽上部の上部口から排出するようにする。攪拌羽根は、羽根の向きが交互に逆向きになっているので、強い攪拌が生じ、逆洗時の洗浄回復率は高くて、砂などの表面に付着していた汚れを迅速かつ確実に洗浄除去できる。
【0026】
本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で自由に変形実施可能である。特に、配管部に設ける凝集剤添加・攪拌機の構成、濾過槽上部での緩速攪拌の方式、濾過槽での濾過方式などについては自由である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の装置全体を示す断面図。
【図2】凝集剤添加・攪拌機の断面図。
【図3】上部口の実施例1の斜視図。
【図4】実施試験時の濾過槽上部での水の流れの状態を示す図。
【図5】他の実施例の緩速攪拌装置の平面図。
【図6】更に他の実施例の緩速攪拌装置の平面と縦断面とを示す図。
【符号の説明】
【0028】
1 濾過槽
2 砂利支持層
3 濾過砂層
4 アンスラサイト層
5 上部口
6 下部口
7 攪拌羽根
10 凝集剤添加・攪拌機
13 攪拌羽根
14 凝集剤供給口
20 緩速攪拌装置
21 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に凝集剤を添加して、急速攪拌し、微小なマイクロフロックを形成して、これを濾過槽に送り、濾過槽の上部で緩速攪拌を行って微小なマイクロフロックを中程度の大きさのフロックに成長させ、濾過槽の下部でフロックを濾過して除去する水処理方法。
【請求項2】
濾過槽の濾過層を、アンスラサイト層と濾過砂層との2層構成とした請求項1記載の水処理方法。
【請求項3】
凝集剤添加・攪拌機と、濾過槽とからなり、凝集剤添加・攪拌機は濾過槽への原水配管部に設け、更に、濾過槽上部には緩速攪拌装置を設けると共に、濾過槽下部に濾過層を設けた水処理装置。
【請求項4】
濾過槽の濾過層内に、逆洗時の攪拌用の羽根を設けた請求項3記載の水処理装置。
【請求項5】
緩速攪拌装置として、濾過槽への原水供給口である上部口を、上向き開口形式にすると共に、口壁の1箇所に切欠を設けて、この切欠から原水が槽内に流れ込むようになっている請求項3記載の水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−218388(P2006−218388A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33836(P2005−33836)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000147291)株式会社清水合金製作所 (5)
【Fターム(参考)】