説明

水処理方法

【課題】静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理を効率的に行い、凝集剤の使用量および汚泥の発生量を削減する水処理方法を提供する。
【解決手段】静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水を処理対象とし、エチレンジアミンジコハク酸を用いて原水の処理を行う水処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称する場合がある)の製造工場における水系分散体の製造工程では、着色成分等を含有する水が発生する場合がある。これらの水には、着色成分である顔料、染料等の他に、顔料等の分散性を上げるために界面活性剤等の分散剤等が含まれていることが多いため、固形分濃度とともに化学的酸素要求量(COD)が大きく、このままの状態で河川や下水道等に排出することはできない。このため、これらの水は、工場内の水処理施設にて処理された後に再利用されたり、処理された後に外部に排出される。
【0003】
特に、近年、トナーの製造方法として、従来の混練粉砕法に代わり、乳化重合法によるトナーを始め、懸濁重合法、溶解懸濁法などの各種化学的トナー製法が開発され、実施されている。例えば乳化重合法では、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させて形成された樹脂分散液と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を界面活性剤の存在下、水系溶媒中で撹拌、混合しながら、凝集、加熱融合させ、所定の粒径、粒度分布、形状、構造などを有する着色樹脂粒子であるトナー粒子を作製するが、この過程で界面活性剤水溶液や、着色剤分散液、離型剤分散液、エマルション水溶液、装置洗浄水等の界面活性剤を含有する界面活性剤含有液が発生する場合がある。
【0004】
通常、一般の水処理としては、凝集沈殿処理が利用される場合が多い。凝集沈殿処理とは、非特許文献1の141〜153ページに記載されているように、水処理の分野において最も一般的に用いられている固液分離操作であり、広く用いられている。凝集沈殿処理は、原水に凝集剤を添加することによりフロック(凝集により生じた粗大粒子)を生じさせ、水とフロックとの比重差により、フロックを沈殿させて固液分離を行う処理方法である。こうして固体として分離されたフロックは、産業廃棄物の汚泥として処理され、固体を分離した水は、化学的酸素要求量を低減し、再利用されたり、河川や下水道等へ排出できる。これらの固液分離した後の汚泥は、そのまま加圧濾過脱水装置にて脱水処理される場合が多い。加圧濾過脱水装置とは、非特許文献1の182ページにも記載されているように、水処理の分野において最も一般的に用いられている脱水装置である。
【0005】
特許文献1には、有機汚染物質含有排水を固液分離する排水処理方法において、発生した汚泥の一部を、被処理原水側に戻して循環することにより、汚泥の最終処理が容易な排水処理方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、エマルション排水の処理に、加圧浮上分離を行う方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、界面活性剤を含有する排水に対して、無機凝集剤と高分子凝集剤と有機凝結剤を用いる、低ランニングコストかつ運転管理が容易な処理方法が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−136408号公報
【特許文献2】特開平9−225474号公報
【特許文献3】特開2006−7208号公報
【非特許文献1】通商産業省環境立地局監修、「五訂 公害防止の技術と法規(水質編)」、平成13年発行、141〜153ページ、182ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理を効率的に行い、凝集剤の使用量および汚泥の発生量を削減する水処理方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水を処理対象とし、エチレンジアミンジコハク酸を用いて前記原水の処理を行う水処理方法である。
【0011】
また、前記水処理方法において、前記原水の処理が、エチレンジアミンジコハク酸を含む原水へ凝集剤を添加し、凝集反応を行う反応工程と、前記反応工程で凝集反応した凝集物からフロックを形成するフロック形成工程と、前記フロックと分離液とに分離するフロック分離工程と、を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記水処理方法において、前記静電荷像現像用トナーの製造工程が、樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液と、着色剤を分散した着色剤分散液と、離型剤を分散した離型剤分散液とを混合し、凝集粒子を形成する凝集工程と、凝集系内のpHを調整して前記凝集粒子の凝集の成長を停止する停止工程と、前記凝集粒子を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して、融合させる融合工程と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によると、エチレンジアミンジコハク酸を用いない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理を効率的に行い、凝集剤の使用量および汚泥の発生量を削減する。
【0014】
本発明の請求項2によると、原水がエチレンジアミンジコハク酸を含まない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理を効率的に行い、凝集剤の使用量および汚泥の発生量をより削減する。
【0015】
本発明の請求項3によると、前記凝集工程と、前記停止工程と、前記融合工程とを含む静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理において、処理を効率的に行い、凝集剤の使用量および汚泥の発生量をより削減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。ここでは、本発明の実施の形態に係る水処理方法について、凝集沈殿処理を例にして説明する。本実施形態に係る水処理方法は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水を処理対象とするものであればよく、特に限定されるものではない。
【0017】
本発明者らが検討した結果によれば、トナー製造工程から発生する、界面活性剤水溶液や、着色剤分散液、離型剤分散液、エマルション水溶液、装置洗浄水等の界面活性剤を含有する界面活性剤含有液において、界面活性剤の作用により、凝集沈殿処理における沈降時間が長くなり、また、凝集沈殿させるために使用する無機凝集剤、例えば塩化第二鉄等の添加量が増加し、その結果、凝集沈殿物の量、つまり産業廃棄物として処理する汚泥が多量に発生することがある。これは、無機凝集剤として使用している塩化第二鉄等の無機塩のうちのある量が、界面活性剤含有液中に含まれる界面活性剤と電荷中和反応し、凝集剤としての作用が阻害されているためであると考えられる。
【0018】
さらに、本発明者らは、界面活性剤の凝集体を形成し、界面活性剤の表面積を低減すれば、界面活性剤が凝集剤により沈降し、凝集剤と中和反応する界面活性剤の量が低減すると考えた。すなわち、界面活性剤により中和反応される凝集剤が少なくなるため、使用する凝集剤量が少なくなり、発生する汚泥量が低減すると考えた。
【0019】
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、トナー製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水の処理において、原水に対して、例えば、凝集剤を添加して凝集処理を行う前工程において、原水にエチレンジアミンジコハク酸を添加することにより、使用する凝集剤量が少なくなり、発生する汚泥量が低減することを見出した。エチレンジアミンジコハク酸が界面活性剤と配位することでコロイド錯体を形成することにより、界面活性剤の表面積が低減され、使用する凝集剤量が少なくなり、発生する汚泥量が低減すると考えられる。
【0020】
また、このようにして得られた凝集反応液についてフロックを形成させた後、遠心分離装置(デカンタ、多孔板式遠心沈降機等)を用いた遠心分離によりフロックが濃縮された沈殿物(汚泥スラリ)と分離液とに分離する分離処理を施した後、得られた汚泥スラリを加圧ろ過機(フィルタプレス、加圧葉状ろ過機、加圧ヌッチェ等)等を使用して、固形分を分離除去することにより、固液分離時間が大幅に短縮されることを見出した。
【0021】
上記凝集処理と遠心分離による分離処理とを組み合わせることにより、水処理で使用する凝集剤の使用量と汚泥発生量を大幅に低減すると共に、水処理に要する時間も短縮されるため、生産性も大幅に改善される。
【0022】
[水処理方法]
本実施形態に係る水処理方法について、図面を用いて以下に具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略構成を図1に示し、その構成について説明する。本実施形態に係る水処理装置の一例である水処理装置1は、図1に示すように、原水槽10と、反応槽12と、凝集槽14と、凝集沈殿槽16と、生物処理槽18と、後沈殿槽20と、砂ろ過装置22と、活性炭ろ過吸着装置24と、汚泥濃縮装置26、脱水装置28とを備える。図1の水処理装置1の構成は一例であって、これに限定されるものではない。また、
【0024】
図1の水処理装置1において、原水槽10、反応槽12、凝集槽14、凝集沈殿槽16、生物処理槽18、後沈殿槽20、砂ろ過装置22、活性炭ろ過吸着装置24の入口と出口とがそれぞれ直列に配管等を介して接続されている。また、汚泥濃縮装置26の入口は、凝集沈殿槽16の下部および後沈殿槽20下部と配管等を介して接続され、汚泥濃縮装置26の出口は、脱水装置28の入口と配管等を介して接続されている。また、エチレンジアミンジコハク酸を添加する添加手段として、添加配管がポンプ等を介して原水槽10に、凝集剤添加手段として凝集剤添加配管がポンプ等を介して反応槽12および凝集槽14にそれぞれ接続されていてもよい。原水槽10、反応槽12、および凝集槽14には撹拌羽根等の撹拌手段が設置されてもよい。
【0025】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0026】
トナー製造工程から発生する界面活性剤を含む原水(以下、単に「原水」と呼ぶ場合がある。)は、原水槽10に一時的に貯留され、原水槽10において撹拌羽根等の撹拌手段により撹拌されながら、エチレンジアミンジコハク酸が、またはポンプ等によりエチレンジアミンジコハク酸を含むエチレンジアミンジコハク酸含有溶液が添加される(エチレンジアミンジコハク酸添加工程)。その後、エチレンジアミンジコハク酸を含むエチレンジアミンジコハク酸含有原水は、反応槽12に送液される。エチレンジアミンジコハク酸は、凝集剤の添加前に添加されればよく、添加の態様としては特に制限はない。例えば、原水槽10と反応槽12とを接続する配管等において添加されてもよい。また、原水槽10とは別に、原水槽10の前段側に、または原水槽10と反応槽12との間に、エチレンジアミンジコハク酸を添加、混合するための混合槽を設けてもよい。
【0027】
処理対象の原水にエチレンジアミンジコハク酸が含まれている場合は、エチレンジアミンジコハク酸の添加工程を省略してもよい。
【0028】
エチレンジアミンジコハク酸の含有量は、処理する原水に対して1mg/L以上3,000mg/L以下の範囲の濃度であることが好ましく、10mg/L以上1,500mg/L以下の範囲の濃度であることがより好ましい。エチレンジアミンジコハク酸の含有量が1mg/Lより少ないと、凝集効果が少なく発生する汚泥の含水率が高くなる場合があり、3,000mg/Lより多いと、発生する汚泥量が増加して分離工程での分離が困難となる場合がある。
【0029】
次に、エチレンジアミンジコハク酸含有原水について、凝集処理が行われる(凝集処理工程)。凝集処理は、反応槽12における、被処理水であるエチレンジアミンジコハク酸含有原水への凝集剤の添加および凝集反応を行い凝集物を得る反応工程と、凝集槽14における、反応工程で凝集反応した反応液の凝集物からフロックを形成するフロック形成工程と、凝集沈殿槽16における、凝集沈殿によりフロックと分離液とに分離するフロック分離工程と、を含む。なお、凝集沈殿処理の代わりに加圧浮上処理等による固液分離処理を行ってもよい。
【0030】
反応槽12において撹拌羽根等の撹拌手段により急速撹拌されながらポンプ等により凝集剤が添加され、凝集反応が行われる(反応工程)。その後、凝集反応が行われた反応液は、凝集槽14に送液される。
【0031】
処理対象となる原水は、界面活性剤、特にアニオン系界面活性剤を含むものであればよいが、原水のCODは、例えば、1mg/L以上50,000mg/L以下の範囲である。
【0032】
この反応工程において使用される凝集剤としては、一般の無機系凝集剤などを用いればよい。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリシリカ鉄凝集剤等、あるいはこれらの組み合わせが用いられ、安価であること、凝集性が良好であること等から、塩化第二鉄が用いられることが好ましい。また、凝集剤として、上記無機系凝集剤および後述する有機系凝集剤から選択される2つ以上の凝集剤を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
無機系凝集剤の添加量は、処理するエチレンジアミンジコハク酸含有原水に対して500mg/L以上5,000mg/L以下の範囲の濃度であることが好ましく、1,000mg/L以上3,000mg/L以下の範囲の濃度であることがより好ましい。添加量が500mg/Lより少ないと、凝集効果が少なく発生する汚泥の含水率が高くなる場合があり、5,000mg/Lより多いと、発生する汚泥量が増加して次工程での分離が困難となる場合がある。
【0034】
この反応工程では、反応槽12において、酸(塩酸、硫酸等)あるいはアルカリ(水酸化ナトリウム水溶液等)を添加し、pH調整を行ってもよい。
【0035】
凝集反応時の反応液のpHは、凝集効果の点から、pH5以上6以下の範囲であることが好ましく、pH5.6以上6.0以下の範囲であることがより好ましい。pHが6より高いと、凝集反応が十分でなく着色成分等が除去出来ない場合があり、また、着色成分等を除去するには多量の凝集剤を必要とする場合がある。また、pHが5より低いと、無機系凝集剤より生成した水酸化物の溶解度が増加し凝集剤由来の着色が残る場合がある。特に、凝集剤として塩化第二鉄を用い、反応槽12におけるpHを5.6以上6.0以下の範囲とすることにより優れた凝集効果を発揮する。
【0036】
反応工程において撹拌羽根等の撹拌手段によって急速撹拌することによりpH調整および凝集反応が行われるが、撹拌速度は、100rpm以上500rpm以下の範囲であることが好ましく、250rpm以上400rpm以下の範囲であることがより好ましい。撹拌速度が100rpmより小さいと、凝集反応が十分に行われず、細かい粒子が減らない場合があり、500rpmより大きいと、一度形成された凝集物が再び細かくなってしまう場合がある。
【0037】
反応工程において、通常、エチレンジアミンジコハク酸含有原水は反応槽12に連続的に流入され、反応液は連続的に凝集槽14へ排出される。このとき、反応槽12における滞留時間としては、5分以上20分以下の範囲であることが好ましく、10分以上15分以下の範囲であることがより好ましい。滞留時間が5分より小さいと、反応が十分ではなく、着色が除去出来ない場合があり、20分より大きいと、処理効率が低下する場合がある。
【0038】
次に、凝集槽14において、反応槽12から移送された反応液に対して、撹拌羽根等の撹拌手段により緩速撹拌が行われ、水中の懸濁物質が成長したフロックが形成される(フロック形成工程)。このとき、高分子凝集剤などの有機系凝集剤などが添加されてもよい。このフロック中には、主に、トナー製造において使用された顔料、離型剤、トナー粒子等が含まれている。フロックは、緩速撹拌されることにより成長する。このとき得られるフロックの懸濁液(処理液)の固形分濃度は0.5重量%以上1.5重量%以下程度である。なお、反応槽12と凝集槽14とを一体化した槽を使用して、1つの槽内で反応工程と、フロック形成工程とが行われてもよい。
【0039】
有機系凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系等のアニオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリエチレンオキサイド系等のノニオン性高分子凝集剤;アクリル酸ジメチルアミノエチル系等の両性高分子凝集剤を使用すればよい。凝集性が良好であること等から、ポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を使用することがより好ましい。有機系凝集剤は反応工程において添加してもよい。
【0040】
高分子凝集剤の添加量としては、処理するエチレンジアミンジコハク酸含有原水に対して1mg/L以上50mg/L以下の範囲の濃度であることが好ましく、2mg/L以上20mg/L以下の範囲の濃度であることがより好ましい。添加量が1mg/Lより少ないと、処理後の水に着色成分が残ってしまったり、凝集効果が少なく、発生する汚泥の含水率が高くなる場合があり、50mg/Lより多いと、発生する汚泥の粘着性が増し、次工程での処理性が悪化する場合がある。
【0041】
高分子凝集剤を使用しなくてもフロックが十分に成長する場合には、高分子凝集剤は必ずしも必要ないが、無機系凝集剤と高分子凝集剤の組み合わせ使用は、静電荷像現像用トナーの乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法等の化学的トナー製法による製造工程から発生する、界面活性剤、着色剤、離型剤、シリカ、その他多成分を含有する原水の処理に対して有効である。無機系凝集剤として塩化第二鉄を使用し、さらにフロックを成長させるために有機系凝集剤としてポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を併用することが好ましい。
【0042】
フロック形成工程において撹拌羽根等の撹拌手段によって撹拌することによりフロックを成長させるが、撹拌速度は、60rpm以上500rpm以下の範囲であることが好ましく、100rpm以上300rpm以下の範囲であることがより好ましい。撹拌速度が60rpmより小さいと、フロックの形成が十分ではなく、細かい粒子が減らない場合があり、500rpmより大きいと、一度形成されたフロックが再び細かくなってしまう場合がある。
【0043】
凝集槽14においてフロック形成された処理液は、次に凝集沈殿槽16に送液される。フロック形成工程において、反応液は通常、凝集槽14に連続的に流入され、フロック形成された処理液は連続的に凝集沈殿槽16へ送液される。このとき、凝集槽14における滞留時間としては、5分以上20分以下の範囲であることが好ましく、10分以上15分以下の範囲であることがより好ましい。滞留時間が5分より小さいと、フロックの形成が十分ではなく、細かい粒子が減らない場合があり、20分より大きいと、処理効率が低下する場合がある。また、凝集槽14においてバッチ式で水の凝集処理が行われてもよい。この場合、処理時間は5分以上15分以下の範囲であることが好ましく、5分以上10分以下の範囲であることがより好ましい。
【0044】
凝集工程における処理する水の温度としては、通常、10℃以上30℃以下の範囲で行われ、好ましくは、15℃以上25℃以下の範囲で行われる。
【0045】
凝集沈殿槽16に送液された処理液は、凝集沈殿槽16において自然沈降分離によって、フロックが濃縮された沈殿物(汚泥スラリ)と分離液とに分離される(フロック分離工程)。なお、フロック分離工程において、凝集沈殿処理の代わりに加圧浮上処理等を行ってもよいが、汚泥の発生量の点から凝集沈殿処理および加圧浮上処理のうち少なくとも1つを行うことが好ましい。なお、加圧浮上処理とは、加圧水が減圧されることにより加圧状態で溶け込んだ空気が微細気泡となって放出される特性を利用した水処理方法であり、加圧浮上槽内に加圧水を流入させ、発生した微細気泡に水内の浮遊物質を付着させ、浮遊物質を浮上分離させる処理方法である。
【0046】
凝集沈殿槽16において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理槽18に送液されて生物処理が行われ、溶存有機物が除去される。生物処理槽18では活性汚泥に生息するバクテリア等で溶存有機物が分解処理され、次の後沈殿槽20で自然沈降により、活性汚泥と上澄み水に分離される。後沈殿槽20で得られた上澄み水は、砂濾過装置22で残存固形物が除去された後、活性炭ろ過吸着装置24で溶存化学物質や生物処理工程で処理しきれなかった溶存有機物が吸着処理された後、再利用あるいは河川等に放流される。なお、水性状によっては生物処理工程が省略される場合もある。
【0047】
一方、凝集沈殿槽16において分離液と分離された汚泥スラリおよび後沈殿槽20で得られた汚泥スラリは、ポンプ等にて汚泥濃縮装置26へ搬送される。汚泥濃縮装置26において汚泥スラリは水分である汚泥分離液と固形分とに分離される(分離工程)。汚泥濃縮装置26においては、例えば6時間以上12時間以下程度をかけて、自然沈降にて濃縮される。濃縮前の汚泥スラリの固形分濃度は0.5重量%以上1.5重量%以下程度である。また、濃縮後の固形分濃度は2.0重量%以上4.0重量%以下程度である。汚泥濃縮装置26における自然沈降が不十分な場合には、フロック形成工程と同様の高分子凝集剤を添加してもよい。
【0048】
濃縮後の汚泥スラリは、脱水装置28で脱水処理された(脱水工程)後、産業廃棄物の汚泥として処理される。なお、脱水後の汚泥ケーキの固形分濃度は15重量%以上50重量%以下程度である。なお、汚泥濃縮装置26および脱水装置28で発生したろ過液は、トナー製造工程で発生した原水を貯蔵する原水槽10へ移送され、新たな原水と混合された後、上述の水処理方法で処理されてもよい。
【0049】
脱水装置28としては、加圧葉状ろ過機、加圧ヌッチェ、フィルタプレス等の加圧ろ過機、真空ろ過機等が挙げられるが、通常は、フィルタプレスが用いられる。また、発生する汚泥の量が減少すること、処理時間が短縮されること、凝集工程にて使用する凝集剤の量が減少すること、装置のメンテナンス性等の点から脱水工程の前に遠心分離装置を使用した遠心濃縮により脱水してもよい。
【0050】
本実施形態の水処理方法のフロック分離工程において、処理効率の点から、自然沈降の代わりに遠心分離処理を行うことが好ましい。遠心分離処理により、固液分離時間が大幅に短縮する。
【0051】
遠心分離手段を設けた水処理装置の一例の概略構成を図2に示す。この場合、図2に示すように、凝集槽14の出口は、遠心分離手段である遠心分離装置30の入口と配管等により接続され、遠心分離装置30の出口と生物処理槽18の入口とが配管等により接続されている。また、汚泥濃縮装置26の入口は、遠心分離装置30の下部および後沈殿槽20下部と配管等を介して接続されている。凝集槽14から排出される処理液はポンプ等にて遠心分離装置30へ送られ、遠心分離装置30において、分離液と汚泥スラリとに分離される(フロック分離工程)。
【0052】
遠心分離装置30において汚泥スラリと分離された分離液および汚泥スラリは、図1の水処理方法と同様にして処理される。汚泥スラリの性状によっては、汚泥濃縮装置26による処理は省略されてもよい。
【0053】
図3は本実施形態で用いられる遠心分離装置30の一例である連続式スクリュデカンタの断面図である。スクリュデカンタは、ケーシング50の中央に外胴ボウル52と内胴スクリュ54とを有し、両端が軸封装置で支持され、水平に固定されている。外胴ボウル52は円筒型と円錐型を一体としたボウルである。内胴スクリュ54はパイプ56とそれに溶接されたスクリュ羽根58とを備える。凝集槽14から排出される処理液はフィードパイプ60を通じて、内胴スクリュ54のパイプ56内に供給され、パイプ56にある複数個の吸入液吐出口62を経由して、外胴ボウル52内へ供給される。
【0054】
外胴ボウル52を高速回転させると、遠心力(例えば、遠心効果2,000G以上3,500G以下程度、ここでGは重力加速度)により、固形物の遠心分離が促進され、外胴ボウル52内壁に固形物であるフロックの沈殿物(汚泥)が堆積する。この時、内胴スクリュ54を外胴ボウル52と僅かに回転差を与えながら、外胴ボウル52と同一方向に回転させると、外胴ボウル52の内壁に堆積した汚泥の濃縮液がスクリュ羽根58によって外胴ボウル52の円錐側へ搬送され、外胴ボウル52の傾斜面の固形物排出口64より外部へ自動排出される。このとき得られる汚泥濃縮液の固形分濃度は、10重量%以上20重量%以下程度である。また、遠心分離後の分離液は、外胴ボウル52の大径側にある分離液排出口66より外部へ自動排出される。
【0055】
本発明の実施の形態に係る水処理方法および水処理装置は、界面活性剤を使用する静電荷像現像用トナーの製造工程から排出される水を処理対象とすることが好ましい。また、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法は、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法などの各種化学的トナー製造方法による製造工程、特に、界面活性剤を多量に使用する乳化重合法によるトナーの製造工程から排出される水の処理に好ましく適用可能である。乳化重合法では、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させて形成された樹脂分散液と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を水系溶媒中で撹拌、混合しながら、凝集、加熱融合させ、所定の粒径、粒度、形状、構造を有する着色樹脂粒子であるトナー粒子を作製する。乳化重合法は、トナーの原材料となるラテックスポリマの製造工程と、着色剤分散液、離型剤分散液等の分散液の製造工程と、現像用トナーの製造工程とに大きく分けられる。以下に、それぞれについて例を挙げ説明する。
【0056】
<静電荷像現像用トナー製造工程>
(樹脂粒子の製造工程)
樹脂粒子を生成するには、通常、重合性単量体と界面活性剤とを水に加え、撹拌してエマルションとする。重合性単量体エマルションが生成したら、該エマルションの好ましくは25重量%以下(すなわち、少量のエマルション)と、遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物にさらに残りのエマルションを追加し、所定の温度で、所定の時間、重合を続けて重合を完了し、樹脂粒子(エマルション分散液)を生成させる。この樹脂粒子の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、樹脂粒子等の固形分を含有するエマルション分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。樹脂粒子が生成したら、着色剤分散液、離型剤分散液等とともに凝集させて凝集粒子とし、次にこれを融合させてトナー粒子とする。
【0057】
前記重合性単量体の種類としては、遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。重合性単量体の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類等が挙げられ、これらの重合性単量体は重合されて、単独重合体あるいは共重合体とされる。これらのうち、樹脂として、親水性が低く界面活性剤が樹脂表面に付着しており、エチレンジアミンジコハク酸が界面活性剤とコロイド錯体を形成しやすい等の点から、重合性単量体として少なくともスチレンとビニル基を有するエステル類とを用いた、スチレンとビニル基を有するエステル類とを含む共重合体を用いることが好ましい。
【0058】
また、自己乳化性を持つポリエステル類、ポリウレタン類のような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し、分散させてもよい。また、樹脂粒子として、アンモニア成分を含むものも用いられる。
【0059】
樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を使用すればよく、一般的にはアニオン系界面活性剤が、分散力が強く、樹脂粒子の分散に優れているため、好ましく用いられる。非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0060】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0061】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0062】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる。
【0063】
遊離基開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等の過酸化物類;2,2'-アゾビスプロパン、2,2'−ジクロロ−2,2'−アゾビスプロパン、1,1'−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2'−アゾビス(2−ジアミノプロパン)塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−ジアミノプロパン)硝酸塩、2,2'−アゾビスイソブタン、2,2'−アゾビスイソブチルアミド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2'−ジクロロ−2,2'−アゾビスブタン、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1'−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2'−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1'−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1'−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1'−アゾビス−1−シクロへプタンニトリル、1,1'−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1'−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1'−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4'−アゾビス-4-シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2'−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物類;1,4−ビス(ペンタエチレン)−2−テトラゼン、1,4−ジメトキシカルボニル−1,4−ジフェニル−2−テトラゼン等が挙げられる。
【0064】
本実施形態において、樹脂粒子の大きさは、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上1μm以下程度である。
【0065】
(着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程)
着色剤分散液は、着色剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。同様にして、離型剤分散液は、離型剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。この着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤等の固形分を含有する着色剤分散液や、界面活性剤、離型剤等の固形分を含有する離型剤分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。
【0066】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などが挙げられる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、着色剤分散液中の着色剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0068】
また離型剤として働くワックスの種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;などが挙げられる。離型剤の融点は、例えば、50℃以上100℃以下の範囲であり、70℃以上100℃以下の範囲であることが好ましい。
【0069】
また、離型剤分散液中の離型剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0070】
界面活性剤としては、上記樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0071】
(トナーの製造工程)
上記調製法により得られた樹脂粒子は、例えば次のような方法でトナーの調製に用いられる。上記調製法により得られた樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液と、着色剤分散液と、離型剤分散液と、必要に応じて凝集剤と、必要に応じて帯電制御剤と、および必要に応じて他の添加剤とを混合し、得られた混合物を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)近辺の温度、好ましくは、樹脂粒子のTg±10℃で、凝集粒子を形成するのに効果的な時間、例えば1時間以上8時間以下加熱して、トナー大の凝集粒子を形成する(凝集工程)。次に、凝集系内のpHを調整して凝集粒子の凝集の成長を停止する(停止工程)。この凝集粒子懸濁液を、樹脂粒子のTgまたはそれより高い温度、好ましくは樹脂粒子のTg+40℃、例えば約60℃以上約120℃以下に加熱して合体または融合させてトナー粒子を造粒し(融合工程)、このトナー粒子をろ過などの手段で母液から分離して、イオン交換水などで洗浄(洗浄工程)した後、乾燥する。
【0072】
樹脂粒子は、通常トナーの結着樹脂として用いられ、トナーの固形分に対して75重量%以上98重量%以下程度トナー内に存在する。
【0073】
着色剤は、通常トナー中に、着色に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して1重量%以上15重量%以下程度、好ましくは3重量%以上10重量%以下程度存在する。
【0074】
離型剤として働くワックス類の好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5重量%以上20重量%以下程度である。
【0075】
必要に応じて使用される凝集剤は、融合に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01重量%以上10重量%以下程度を用いればよい。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のアニオン性界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等の塩類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。好ましい凝集剤としては、硝酸等の窒素成分を有するものが挙げられる。
【0076】
帯電制御剤は、帯電させるのに効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.1重量%以上5重量%以下で使用してもよい。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0077】
その他必要に応じて添加剤として、無機粒子等を湿式添加してもよい。湿式添加する無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等で水に分散して、シリカ等の無機粒子分散液として湿式添加してもよい。
【0078】
本実施形態において使用される無機粒子の分散液中の大きさは、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、4nm以上150nm以下程度である。
【0079】
以上のような樹脂粒子の製造工程、着色剤分散液の製造工程、離型剤分散液の製造工程、トナー製造工程等の製造工程(トナーの洗浄工程を含む)から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤、離型剤、無機粒子、トナー等の固形分を含有する界面活性剤水溶液、エマルション分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、無機粒子分散液、トナー分散液、装置洗浄水等の界面活性剤含有液が排出される。これらの原水は原水槽に集められ、上記水処理方法による処理が施される。
【0080】
本実施形態に係る水処理方法は、乳化重合法等の化学的トナー製造方法による静電荷像現像用トナーの製造工程から排出される、界面活性剤を含有する原水の処理に適用されることが好ましいが、その各工程のうち、顔料分散液製造工程、離型剤分散液製造工程、トナー融合工程、トナー洗浄工程等から排出される、例えば、界面活性剤含有量が0.1重量%以上4重量%以下の液の処理に適用される。界面活性剤含有量が0.1重量%より低い場合には、膜分離等の技術を適用してもよい。このように、水処理の処理効率を考慮して、各工程から排出される水中に含有される界面活性剤量に応じて、異なる水処理方法を適用してもよい。また、ラテックスポリマ(エマルション分散液)製造工程から排出される液に対しては、遠心濃縮等の濃縮処理が困難な場合があるため、濃硫酸を用いた加熱酸分解法等の他の水処理方法を適用してもよい。
【0081】
本実施形態に係る水処理方法は、以上のような乳化重合法等の化学的トナー製造方法による静電荷像現像用トナーの製造工程から排出される固形分含有水の処理に適用されることが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
<静電荷像現像用トナーの製造例>
以下に、本実施例および比較例における水処理が施される水が排出される、静電荷像現像用トナーの製造例を示す。
【0084】
(エマルション分散液(樹脂粒子分散液)の調製)
スチレン 320重量部
n−ブチルアクリレート 80重量部
アクリル酸 10重量部
ドデカンチオール 10重量部
この溶液420重量部と、非イオン性界面活性剤(三洋化成社製、ノニポール400)6重量部、およびアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)10重量部とをイオン交換水550重量部に溶解した溶液をフラスコ中に入れて分散、乳化し、10分間ゆっくりと撹拌、混合しながら、過硫酸アンモニウム4重量部を溶解したイオン交換水50重量部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で充分に置換してから撹拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、エマルション分散液を得た。
【0085】
エマルション分散液で得られた樹脂粒子は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で樹脂粒子の体積平均粒径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津制作所社製、DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移点を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製、HLC−8020)を用い、THFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33,000であった。
【0086】
(着色剤分散液の調製)
顔料 150重量部
アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 20重量部
イオン交換水 400重量部
以上を混合して、アルティマイザーにて分散処理し、着色剤分散液を調製した。なお、顔料は、イエロー用としてはC.I.ピグメントイエロー74(大日精化社製)、シアン用としてはC.I.ピグメントブルー15:3(BASF社製)、マゼンタ用としてはC.I.ピグメントレッド122(大日精化社製)、ブラック用としてはカーボンブラック(キャボット社製)をそれぞれ使用した。
【0087】
(離型剤分散液の調製)
パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP0190、融点85℃)50重量部
カチオン性界面活性剤(花王(株)製、サニゾールB50) 5重量部
イオン交換水 200重量部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザ(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザで分散処理し、体積平均粒径が550nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液を調製した。
【0088】
(凝集粒子の調製)
エマルション分散液 200重量部
着色剤分散液 30重量部
離型剤分散液 70重量部
カチオン性界面活性剤(花王(株)製、サニゾールB50) 1.5重量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザ(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5μmである凝集粒子(体積:95cm)が形成されていることが確認された。
【0089】
(付着粒子の調製)
調製した上記凝集粒子の分散液に、上記樹脂粒子分散液を緩やかに60重量部追加した。なお、前記樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積は25cmであった。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃に上げて1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.7μmである付着粒子が形成されていることが確認された。
【0090】
その後、調製した上記付着粒子の分散液に、アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)3重量部を追加した後、前記ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら、105℃まで加熱し、3時間保持した。そして、冷却後、反応生成物を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、静電荷像現像用トナーを得た。
【0091】
(処理対象水1の組成)
処理対象水1とは、上記静電荷像現像用トナーの製造を行う製造工場から排出される水であり、その中には、顔料分散液、離型剤(ワックス)分散液、エマルション分散液、界面活性剤水溶液等が含まれる水である。処理対象水1の主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の固形分濃度は0.01重量%、化学的酸素要求量(COD)は87mg/Lであった。
界面活性剤 0.008重量部
ラテックスポリマ 0.070重量部
着色剤 0.016重量部
ワックス 0.012重量部
水 999.9重量部
この水にエチレンジアミンジコハク酸(EDDS、キレスト株式会社製)を0.5重量部(処理する原水に対して500mg/L)添加し、30分混合撹拌したものを処理対象水1とした。
【0092】
なお、固形分濃度は、アルミ製の容器に、水サンプルを入れ、オーブンにて水分を蒸発させる方法で測定した。また、化学的酸素要求量は、JIS K 0102 17にて定められている方法で測定した。具体的には、試料に酸化剤を加え、一定の条件の下で反応させ、そのとき消費した酸化剤の量を酸素の量に換算して表す試験方法である。
【0093】
(処理対象水2の組成)
エチレンジアミンジコハク酸を添加しない以外は、濃度、組成は処理対象水1と同じであるものを処理対象水2とした。
【0094】
(処理対象水3の組成)
エチレンジアミンジコハク酸の添加量を1.5重量部(処理する原水に対して1,500mg/L)とした以外は、濃度、組成は処理対象水1と同じであるものを処理対象水3とした。
【0095】
(処理対象水4の組成)
エチレンジアミンジコハク酸の添加量を0.01重量部(処理する原水に対して10mg/L)とした以外は、濃度、組成は処理対象水1と同じであるものを処理対象水4とした。
【0096】
(処理対象水5の組成)
エチレンジアミンジコハク酸の添加量を3.0重量部(処理する原水に対して3,000mg/L)とした以外は、濃度、組成は処理対象水1と同じであるものを処理対象水5とした。
【0097】
(処理対象水6の組成)
エチレンジアミンジコハク酸の添加量を0.001重量部(処理する原水に対して1mg/L)とした以外は、濃度、組成は処理対象水1と同じであるものを処理対象水6とした。
【0098】
(実施例1)
[処理対象水1の処理]
処理対象水1を、図1に示す水処理装置を用いて処理した。処理対象水1を、まず原水槽10に蓄え、そこからポンプにて反応槽12へ送液し、無機凝集剤(塩化第二鉄)を1,000mg/L添加し、撹拌速度500rpm、滞留時間10分にて、pH5.7で、凝集反応を行った。次に、得られた反応液をポンプで凝集槽14(18m)へ送液し、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を1mg/Lを添加し、撹拌速度300rpm、滞留時間10分にてフロック形成を行った。フロック形成は良好であった。次に、凝集槽14においてフロック形成された処理液を、ポンプで凝集沈殿槽16に送液した。送液された処理液を、凝集沈殿槽16において自然沈降分離によって、フロックが濃縮された汚泥スラリと分離液とに分離した。分離に要した時間は1時間であった。凝集沈殿槽16において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理槽18にポンプで送液して生物処理(活性汚泥処理)を行い、後沈殿槽20で自然沈降により、活性汚泥と上澄み水に分離し、上澄み水は、砂濾過装置22で残存固形物を除去した後、活性炭ろ過吸着装置24で溶存有機物を吸着処理した。この処理水の化学的酸素要求量は<5mg/Lであった。また、凝集沈殿槽16において分離液と分離された汚泥スラリ、および後沈殿槽20で得られた汚泥スラリは、汚泥濃縮装置26において自然沈降にて濃縮し、脱水装置28(フィルタプレス)による脱水処理工程を経て、汚泥として回収した。処理対象水1を18m処理したが、最終的な汚泥発生量は、1.1g/Lであった。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例2)
[処理対象水1の処理]
処理対象水1を、図2に示す水処理装置を用いて処理した。処理対象水1を、まず原水槽10に蓄え、そこからポンプにて反応槽12へ送液し、無機凝集剤(塩化第二鉄)を1,000mg/L添加し、撹拌速度500rpm、滞留時間10分にて、pH5.8で、凝集反応を行った。次に、得られた反応液をポンプで凝集槽14へ送液し、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を1mg/Lを添加し、撹拌速度300rpm、滞留時間10分にてフロック形成を行った。フロック形成は良好であった。次に、凝集槽14においてフロック形成された処理液を、ポンプで遠心分離装置30に送液した。遠心分離装置30としては、遠心効果3,000Gの能力を持つスクリュデカンタ(石川島播磨重工業社製HS型、図3参照)を使用し、通常運転(18m/hr)にて処理した。分離に要した時間は1時間であった。遠心分離装置30において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理槽18にポンプで送液して生物処理(活性汚泥処理)を行い、後沈殿槽20で自然沈降により、活性汚泥と上澄み水に分離し、上澄み水は、砂濾過装置22で残存固形物を除去した後、活性炭ろ過吸着装置24で溶存有機物を吸着処理した。この処理水の化学的酸素要求量は<5mg/Lであった。また、遠心分離装置30において分離液と分離された汚泥スラリ、および後沈殿槽20で得られた汚泥スラリは、汚泥濃縮装置26において自然沈降にて濃縮し、脱水装置28(フィルタプレス)による脱水処理工程を経て、汚泥として回収した。処理対象水1を18m処理したが、最終的な汚泥発生量は、1.0g/Lであった。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例3)
[処理対象水3の処理]
処理対象水3を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例4)
[処理対象水4の処理]
処理対象水4を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例5)
[処理対象水5の処理]
処理対象水5を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例6)
[処理対象水6の処理]
処理対象水6を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
[処理対象水2の処理]
処理対象水2を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行ったが、凝集反応が良好でなかったため、さらに1,000mg/Lの無機凝集剤(塩化第二鉄)を添加し、凝集を行い、次に、得られた反応液をポンプで凝集槽14へ送液し、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を2mg/Lを添加し、撹拌速度300rpm、滞留時間10分にてフロック形成を行った。フロック形成は良好であった。次に、凝集槽14においてフロック形成された処理液を、ポンプで凝集沈殿槽16に送液した。送液された処理液を、凝集沈殿槽16において自然沈降分離によって、フロックが濃縮された汚泥スラリと分離液とに分離した。分離に要した時間は5時間であった。凝集沈殿槽16において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理槽18にポンプで送液して生物処理(活性汚泥処理)を行い、後沈殿槽20で自然沈降により、活性汚泥と上澄み水に分離し、上澄み水は、砂濾過装置22で残存固形物を除去した後、活性炭ろ過吸着装置24で溶存有機物を吸着処理した。この処理水の化学的酸素要求量は<5mg/Lであった。また、凝集沈殿槽16において分離液と分離された汚泥スラリ、および後沈殿槽20で得られた汚泥スラリは、汚泥濃縮装置26において自然沈降にて濃縮し、脱水装置28(フィルタプレス)による脱水処理工程を経て、汚泥として回収した。処理対象水2を18m処理したが、最終的な汚泥発生量は、10g/Lであった。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例2)
[処理対象水2の処理]
処理対象水2を用いた以外は、実施例2と同様の処理を行ったが、凝集反応が良好でなかったため、さらに1,000mg/Lの無機凝集剤(塩化第二鉄)を添加し、凝集を行い、次に、得られた反応液をポンプで凝集槽14へ送液し、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を2mg/Lを添加し、撹拌速度300rpm、滞留時間10分にてフロック形成を行った。フロック形成は良好であった。次に、凝集槽14においてフロック形成された処理液を、ポンプで遠心分離装置30に送液し、通常運転(18m/hr)にて処理した。分離に要した時間は3時間であった。遠心分離装置30において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理槽18にポンプで送液して生物処理(活性汚泥処理)を行い、後沈殿槽20で自然沈降により、活性汚泥と上澄み水に分離し、上澄み水は、砂濾過装置22で残存固形物を除去した後、活性炭ろ過吸着装置24で溶存有機物を吸着処理した。この処理水の化学的酸素要求量は<5mg/Lであった。また、遠心分離装置30において分離液と分離された汚泥スラリ、および後沈殿槽20で得られた汚泥スラリは、汚泥濃縮装置26において自然沈降にて濃縮し、脱水装置28(フィルタプレス)による脱水処理工程を経て、汚泥として回収した。処理対象水1を18m処理したが、最終的な汚泥発生量は、8g/Lであった。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示すように、エチレンジアミンジコハク酸を添加した処理対象水1,3〜6を用いた実施例1〜6では、エチレンジアミンジコハク酸を添加しない処理対象水2を用いた比較例1,2に比べて、処理が効率的であり、凝集剤の使用量および汚泥の発生量が低減した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る水処理方法に用いられる遠心分離装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1,3 水処理装置、10 原水槽、12 反応槽、14 凝集槽、16 凝集沈殿槽、18 生物処理槽、20 後沈殿槽、22 砂ろ過装置、24 活性炭ろ過吸着装置、26 汚泥濃縮装置、28 脱水装置、30 遠心分離装置、50 ケーシング、52 外胴ボウル、54 内胴スクリュ、56 パイプ、58 スクリュ羽根、60 フィードパイプ、62 吸入液吐出口、64 固形物排出口、66 分離液排出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、界面活性剤を含む原水を処理対象とし、
エチレンジアミンジコハク酸を用いて前記原水の処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記原水の処理が、
エチレンジアミンジコハク酸を含む原水へ凝集剤を添加し、凝集反応を行う反応工程と、
前記反応工程で凝集反応した凝集物からフロックを形成するフロック形成工程と、
前記フロックと分離液とに分離するフロック分離工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記静電荷像現像用トナーの製造工程が、
樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液と、着色剤を分散した着色剤分散液と、離型剤を分散した離型剤分散液とを混合し、凝集粒子を形成する凝集工程と、
凝集系内のpHを調整して前記凝集粒子の凝集の成長を停止する停止工程と、
前記凝集粒子を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して、融合させる融合工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−137150(P2010−137150A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314793(P2008−314793)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】