説明

水分バリアおよび防湿性構造としての食用配合物

【課題】水バリアまたは防湿性構造として使用するための食用配合物が提供される。
【解決手段】a)低いミネラル含有率の酪農成分、b)低いミネラル含有率のカカオ成分、c)モノおよびジグリセリドの脂肪酸の酢酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸の乳酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸のクエン酸エステル、およびポリリシノール酸ポリグリセロールからなる群から選択された乳化剤、d)脂肪成分、およびe)飽和溶液が少なくとも0.84の水分活性を有する少なくとも1つの糖および/またはポリオールが特定比率で配合された食用配合物ないし食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品から環境へ、環境から食品へ、または食品内で前記食品の様々な成分間の水分の移動を防止するために、例えば食品内の大量のバリア層として使用するのに適切な食用配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
完成した食品と環境の間で水分の移動を防止するために、および不均一構造の食品の成分間で水分の移動を防止するために、食用バリア配合物がバリア層などの形態で使用されている。水分の損失または獲得は、食物の品質に有害な変化をもたらすことがあるので、バリア配合物は製品の品質を維持し、食品の有効寿命を延長することができる。
【0003】
これらの理由から、このようなバリア層に適切な食用配合物に対する多大な関心がある。
【0004】
当技術分野では、水分の移動に関して該当する食物成分の含水量を測定する値として、水分活性(aw)が使用されている。これは食物成分中の水分の相対利用度を示す。これは、個々の食物成分の水蒸気圧と、同じ温度における純水の蒸気圧との比率と定義される。したがって、純粋な蒸留水は、正確に1の水分活性を有する。水分は、高いawを有する成分から低いawを有する成分へと移行する傾向がある。
【0005】
食品産業で使用されているバリア配合物のうち、脂質含有配合物が、本来の疎水性によって重要な役割を果たしている。結晶化した脂肪部分(固形脂肪分SFCとも呼ばれる)は、密集した結晶構造とその低い移動性が水分子の拡散を大いに妨げるので、脂肪系水分バリアで最も機能的な成分であると考えられている。したがって、結晶化した脂肪の部分が高い脂肪配合物を使用して、バリアを開発しようという試みがある。脂質の総含有率が高く、結晶化した脂肪の部分が大きいバリア配合物は、分解し易く、したがって比較的厚い層で適用しなければならない。しかし、これは望ましくない。というのは、達成されたバリア特性が、好ましくない味、蝋様の食感、高いエネルギ含有量、および場合によってはトランス構造の脂肪酸成分の高い含有率など、食品に与えられる好ましくない特性と釣り合ってしまうことがあるからである。後者の2つの特性は、現代の食品が適合すべき栄養要件に不適当であるので、特に不都合である。
【0006】
連続的な脂肪成分と分散した無脂肪成分で作成された配合物は、水分バリアの機能性と、脂質含有率の低下による有利な官能的性質との妥協点を表す。さらに、無脂肪部分は配合物の機械的強度を向上させ、したがって分解の危険性を低下させると考えられている。連続的な脂肪相および分散した無脂肪成分を備えるバリア配合物を、不均一バリアと呼ぶ。無脂肪成分では、この場合も結晶質構造の部分が大きいことが特に有用である。というのは、結晶質構造が水分子の拡散を防止するからである。水分バリアの機能性を維持するために、前記無脂肪結晶は水中で低い可溶性を有することが好ましい。というのは、これがないと時間の経過とともに溶解してしまうからである。その結果、このような配合物に関心が向けられ、それが多数の先行技術の出版物に反映している。
【0007】
Uniliverの特許文献1は、重量で40から95%の脂肪および重量で5から60%の乳糖を含む脂肪系水分バリアを開示している。カカオ粉末または固形乳などのさらなる包含物は、10%未満を構成し、全く存在しないことが好ましい。このような配合物は、不良の感覚プロフィール(例えば少ない甘味)および栄養プロフィール(例えば多い脂肪)という欠点を有する。これらの配合物は、0.9のawを有する成分と接触してもそのままであると主張されている。
【0008】
Friesland Brandsの特許文献2は、連続的な脂肪相で構成された、つまり少なくとも60から99%の脂肪および1から15%の二酸化珪素、珪酸塩、またはセルロースなどの水溶性および脂溶性包含物で構成された食物中の水分バリアを開示している。このような成分は、官能的性質に悪影響を及ぼすので、食品中において望ましくない。
【0009】
特許文献3は、SiO2、CaO、ZnO、TiO2またはMnOなどの連続的な無機物質で構成された水分バリアを開示している。スパッタリングまたは化学プラズマ蒸着によってコーティングを適用する。
【0010】
LuFranceの特許文献4およびGervais Danoneの特許文献5は、重量で43から68%の脂肪、25%未満の乾燥および脱脂カカオ、17%未満の脱脂粉乳、および13%を超える糖を含むチョコレートまたはチョコレート様製品の固形マスを開示している。脂肪はカカオ脂であることが好ましく糖は蔗糖、乳糖、果糖およびその混合物を含む。
【0011】
非特許文献1の報告によると、従来のブラックおよびミルクチョコレート配合物は、0.75に対応する水分活性以下の隣接水系に対して安定している。これより高いawでは、その水分摂取が有意になる、つまりそれぞれ1.5%および2.8%を超え、その結果、許容できないほど軟化してしまう。
【0012】
【特許文献1】国際公開第97/15198号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0241287(A1)号明細書
【特許文献3】米国特許第5,741,505号明細書
【特許文献4】米国特許第6,733,805号明細書
【特許文献5】米国特許第6,790,466号明細書
【特許文献6】米国特許第6,488,975号明細書
【特許文献7】欧州特許第1346640号明細書
【非特許文献1】Ravichandranその他(Confectionery Production, Nov. 1997, 33-34)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高い水分活性を有する食物成分と、これより低い水分活性を有する食物成分との間に水分バリア層として適切な食用配合物を提供することであり、配合物は、食品の全体的な官能的性質を悪化させない。これは、配合物が高い防湿性を有することを意味する。さらに、配合物は、味が好ましく、蝋様の食感がなく、脂肪含有率が低く、エネルギ含有率が低くなければならず、トランス構造の脂肪酸成分を含まない。
【0014】
特に、本発明の目的は、0.80以上の水分活性を有する食物成分と、0.80未満の水分活性を有する食物成分の間の水分バリア層として適切な食用配合物を提供することである。
【0015】
前記食用配合物を備える食品を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、配合物の総重量に基づき、
a)重量で5.5%以下、好ましくは重量で3.5%以下、さらに好ましくは重量で2.8%以下、最も好ましくは重量で1.8%以下の灰分に換算して低いミネラル含有率を有する、重量で0から50%の酪農成分、
b)重量で4.5%以下、好ましくは重量で3.5%以下、さらに好ましくは重量で2.5%以下の灰分に換算して低いミネラル含有率を有する、重量で0から25%のカカオ成分、
c)モノおよびジグリセリドの脂肪酸の酢酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸の乳酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸のクエン酸エステル、およびポリリシノール酸ポリグリセロールで構成されたリストから選択された、重量で0から2%の乳化剤、
d)脂肪成分、
e)飽和溶液が少なくとも0.84、好ましくは少なくとも0.89、さらに好ましくは0.94の水分活性を有する、重量で0から60%の少なくとも1つの糖および/またはポリオール、を備え、
(i)配合物の総脂肪含有率が、重量で25から60%であり、
(ii)成分a)の含有率が5%未満である場合に、
成分b)の含有率が、重量で少なくとも2%であるか、
成分c)の含有率が、重量で少なくとも0.3%である、
食用配合物によって達成される。
【0017】
さらに、上述した配合物を備える食品が提供される。このような食品内には、配合物が、少なくとも2つの他の成分を、前記少なくとも2つの成分の間に配置され、それと接触することによって分離する層などの構造の形態で存在することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の発明者らは、本発明による配合物が、以下の特徴を同時に有することによって、従来の配合物および純粋な脂肪バリアから識別されることを発見した。つまり、
−蝋様の食感がなく、個々の用途に応じた(甘味から塩味までの範囲の)好ましい味、つまり甘いまたはそれほど甘くない味。
−比較的低い脂肪含有率および高いタンパク質含有率による良好な栄養プロフィール、
−低い水透過率、つまり良好な水分移動の阻止、および
−高い防湿性である。この特徴は、低い水分摂取によって定量化することができる。これは、配合物が食品中の水性成分と直接的に接触しても、感覚プロフィールが維持されることを意味する。
【0019】
隣接する相間に水分活性の勾配がある場合は必ず、機械的に無傷のバリアを通って水分移動が生じることができ、幾つかの段階を含む。第一段階では、水分子が、水分活性の高い方の成分との境界面でバリア表面中に溶解する。第二段階では、バリアを通した水分子の拡散があり、第三段階では、水分子が、水分活性の低い方の相中に放出される。
【0020】
本文書で使用する「バリアの機能性」とは、水分活性の低い方の相と水分活性の高い方の相との間の層として配置された場合に、材料が水分の移動を大幅に減少させる能力である。
【0021】
例えばチョコレートなどの水分活性が比較的低い配合物を、水分活性が高めの配合物と直接的に接触させると、水分活性の勾配により、水分活性の低い方の配合物に水分が移動する。水分が増加すると、往々にして、例えば脆性の損失など、水分活性が低めの配合物に望ましくない変化を引き起こす。
【0022】
本文書で使用する「防湿性」とは、水分活性が低い材料が、その有効寿命を通して、水分活性が高い配合物と直接的に接触した場合にその特性、特に官能的性質を維持する能力である。防湿性は、大幅に阻害された水分摂取、または有意に水分を摂取しても性質を維持する構造に起因することがある。(防湿性が良好な材料は、バリアの機能性も呈する傾向があるが、これは必須ではない。)
【0023】
本発明の発明者らは、単純な水分摂取試験の結果が、以上で説明したような「バリアの機能性」および「防湿性」と非常によく相関することを発見した。水分摂取試験を実行するには、配合物を長方形のタブレット(38mm×23mm×6mm)に成形し、相対湿度および温度を制御した雰囲気に曝露する。ある期間にわたって複数の複製の重量変化を記録する。その結果を、サンプルの元の重量に基づく複製の平均重量増加として表す。例えば、本発明の趣旨では機能的バリアと見なされない従来のチョコレート配合物は、相対湿度95%/10℃で28日間保存した場合、6%を超える水分摂取率を有する。本文書の趣旨で十分な防湿性およびバリアの機能性がある配合物は、相対湿度95%/10℃で28日間保存した場合、3.5%以下の水分摂取率を有する。好ましい配合物は、相対湿度95%/10℃で28日間保存した場合、3.0%以下の水分摂取率を有する。さらに好ましい配合物は、相対湿度95%/10℃で28日間保存した場合に、1.5%以下の水分摂取率を有する。最も好ましい配合物は、相対湿度95%/10℃で28日間保存した場合に、0.8%以下の水分摂取率を有する。
【0024】
さらなる利点として、甘味または塩味用途に適合させるために、糖および/またはポリオールの含有率を調節することによって、および/または香味料添加剤を添加することによって、および/または着色剤を添加することによって、配合物の味プロフィールまたは外観をカスタマイズすることも可能である。そのために、本発明の目的に反する方法で水分バリアおよび防湿性の性質が影響されない限り、任意の適切な化合物を配合物に添加することができる。したがって、配合物を、所望の外観を達成するために着族剤としてのビートレッド(E162)、インジゴチンブルー(E132)、またはキノリンイエロ(E104)などの添加剤、または所望の味を達成するために鮭の風味、燻製の風味、ブルーチーズの風味などの添加剤と配合することが予想される。
【0025】
本発明による配合物は、チョコレート配合物でよいが、この用語は決してこの意味に限定されない。つまり、配合物は、チョコレートのような味がして、同じ外観を有することができるが、「チョコレート」という用語に関して法的命令で規定された要件に適合していない。したがって、本発明の配合物は、官能的性質に関してブラックチョコレート、ミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートとして処方することができる。
【0026】
一般的な慣例によると、重量で約19%の乾燥脱脂カカオを含むチョコレート配合物はブラックチョコレートと呼ばれ、約6%の乾燥脱脂カカオを含むチョコレート配合物はミルクチョコレートと呼ばれ、基本的に乾燥脱脂カカオがないチョコレート配合物はホワイトチョコレートと呼ばれる。
【0027】
つまり、本発明の配合物をチョコレート配合物またはチョコレート様配合物と考えられる限り、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレートまたはブラックチョコレートなどの任意のタイプの従来通りのチョコレートとして使用することができる。例えば、典型的なホワイトチョコレートは、重量で40から55%の糖、重量で20から40%の全脂粉乳、および重量で20から30%のカカオ脂を含む。典型的なミルクチョコレートは、重量で40から55%の糖、重量で20から30%の全脂粉乳、重量で10から25%のカカオ脂、および重量で6から20%のカカオマスを含む。典型的なブラックチョコレートは、重量で30から60%の糖、重量で0から20%のカカオ脂、重量で26から50%のカカオマス、および0から10%のカカオ粉末を含む。
【0028】
a)酪農成分
低いミネラル含有率を有する酪農成分は、乳または乳清から由来し、重量で10%以下の水分含有率および重量で50%以下の脂肪含有率で、例えばナノ濾過法、イオン交換、電気透析法またはダイアフィルトレーションなどの標準的な脱塩技術を経ていてもよい任意の成分である。
【0029】
本発明の観念では、脂肪含有率が重量で50%を超えるミルク由来の任意の材料は、脂肪成分と見なされ、酪農成分とは見なされない。
【0030】
脂肪含有率が10%以下の酪農成分は、脂肪含有率がこれより高いものより好まれている。本発明の観念に入る適切な酪農成分は、全乳、脱脂乳、乳清、乳清タンパク濃縮物、乳タンパク濃縮物、または乳清浸透液で構成されたグループから得られた(しかし、それに制限されない)成分を脱塩し、乾燥することによって誘導することができる。
【0031】
以下の表1は、従来の非脱塩酪農成分である脱脂粉乳、乳清タンパク濃縮物(35%タンパク)、乳清粉末、および乳清浸透粉末中の灰分の典型的な値および1価イオンのプロフィールを示す。
【0032】
本発明の観念で低いミネラル含有率を有する酪農成分として適切であるために、酪農製品は、重量で5.5%未満、好ましくは重量で3.5%未満、さらに好ましくは重量で2.8%未満、最も好ましくは重量で1.8%未満の灰分を有する。
【0033】
非脱塩酪農成分の典型的な組成を下表で示す。
【0034】
【表1】

【0035】
乾燥物質中のプロテイン濃縮物が25%を超える脱塩酪農成分は、栄養プロフィールが好ましく、所望の乳様の官能的印象を提供することができる実質的量の乳タンパクを取り込むことができるので関心が高い。酪農製品の灰分は、ミネラル含有率を測定する値と見なすことができる。灰分とは、製品をマッフル炉に入れて550℃で少なくとも1時間かけて灰にした後、残っている無機残留物である。灰分は、灰にする前の初期サンプル重量に対する無機残留物の重量パーセンテージで表される。1価イオンの含有率を採取して、ミネラル組成をさらに特徴付けることができる。本発明では、1価イオンの含有量は、ナトリウム、カリウム、および塩化物イオンの含量の合計である。NaおよびKイオンの含量を割り出すために食物サンプルを準備する1つの方法は、サンプルを硝酸などの酸と混合し、その後に混合物を高周波レンジ内の閉じた容器に入れて加熱することによって、これを消化することである。
【0036】
これで、例えばPerkin&ElmerからのOPTIMA4300計器を使用し、当技術分野でICP−OESとして知られている誘導結合プラズマ光学分光分析などの方法で、結果の溶液中のNaおよびKイオンの含量を分析することができる。食物サンプル中のClイオンの含量を割り出すには、レドックス電極、例えばMettler Toledo DM141−SCを使用して、これを水中で溶解させ、0.25mol/lの硝酸で酸性化し、0.1mol/lの硝酸銀溶液で硝化することができる。滴定週末点は通常、滴定曲線の変曲点から読み取る。
【0037】
酪農成分は、従来の自然な酪農製品より低い1価イオンの含量を有することが好ましい。1価イオンの含量は22000mg/kg未満、好ましくは15000mg/kg未満、さらに好ましくは9000mg/kg未満、最も好ましくは4000mg/kg未満である。以下の表2は、本発明の範囲内で適切な酪農成分の例を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
本発明による配合物は、0%と50%の間の適切な酪農成分を含む。特に有利であるのは、10%から50%を含む配合物であり、さらに有利であるのは、25%から50%の適切な酪農成分を含む配合物である。
【0040】
b)カカオ成分
本出願で使用する「カカオ成分」という用語は、カカオから獲得可能な任意の成分の無脂肪部分を指すが、本発明に適切なカカオ成分を製造するプロセスは、カカオ液、カカオニブ、またはカカオ豆など、実質的量のカカオ脂を含む材料にも適用することができる。これらの成分の脂肪部分は脂肪成分と見なされる。
【0041】
本発明による配合物に適切なカカオ成分を製造するために、特許文献6および特許文献7を参照する。他のプロセスも想像される。例えば、本発明によるカカオ成分は、市販されている任意の天然カカオ源を調製して獲得することができる。適切なカカオの開始材料は、アルカリ化した、またはアルカリ化していないカカオ粉末、カカオ液、カカオニブまたはカカオの殻を含む。第一段階で、カカオの開始材料を水中に懸濁させ、色素、香味料化合物、灰、ミネラル、糖などの水溶性成分の実質的部分を抽出する。水とは、水道水、蒸留水、脱イオン水、または抽出したカカオの開始材料の灰分に悪影響を及ぼさない任意の水溶液を意味する。例えば、所望に応じてpHまたは風味を調製するために、食物で許容可能な酸および塩基、さらにエタノールなどの極性溶媒を添加することができる。抽出に使用される水の量は、実質的量の水溶性成分を抽出するために適切な懸濁液を生成するように選択される。水の温度は、広範囲の適切な状態にわたって変化することができる。通常、抽出温度は0℃と100℃の間で生じる。幾つかの実施形態では、高脂肪カカオの開始材料を融点で懸濁させるように、温度が選択される。
【0042】
カカオの開始材料1に対して、好ましくは少なくとも1の水、さらに好ましくは約4から約20の水を添加する。次に、水溶性成分の実質的部分が抽出されるまで、この混合物を高剪断状態で攪拌する。
【0043】
幾つかの実施形態では、カカオの開始材料をバッチ式に複数回抽出し、他の実施形態では、抽出は連続的にすることができる。
【0044】
上澄みを、微細濾過、真空濾過、遠心分離などの任意の適切な技術を使用して分離することができる。さらに、ナノ濾過、イオン交換、電気透析などの任意の適切な技術を使用して、溶解した成分を上澄みから取り出すことができる。
【0045】
水を除去した後に上述した分離の濃縮水と見なすことができるカカオ成分は、本発明に適している。カカオ成分は、灰分が重量で4.5%以下、好ましくは重量で3.5%以下、さらに好ましくは重量で2.5%以下と減少し、好ましくはカカオ開始材料に対してカリウム塩が少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも75%と大幅に減少することを特徴とする。
【0046】
灰分およびカリウム含量は、基本的に酪農成分に関して説明したものと同じ方法で割り出されるが、カカオ成分の灰分を割り出す際には、600℃の温度を適用する。
【0047】
本発明による配合物は、0%と25%の間の無脂肪カカオ成分を含んでよい。使用量は、配合物の所望の官能的性質によって決定される。つまり、「ホワイトチョコレート味」の配合物は、無脂肪カカオ成分を含まず、「ミルクチョコレート味」の配合物は通常、3%から10%の無脂肪カカオ成分を含み、「ブラックチョコレート味」の配合物は、最高30%の無脂肪カカオ成分を含むことができる。
【0048】
c)乳化剤
脂肪系の水分バリアは通常、少なくとも部分的に溶解した/液体形態で食品の他の成分に適用され、その後の冷却段階で脂肪の結晶化を通してバリア特性を生じる。液体バリア材料を適用している場合は、不規則な形状に適合し、薄い層にして都合よく適用できるように、その良好な流動性が望ましい。「見かけ粘度」は、一方では、溶解した脂肪系バリア配合物、溶解したチョコレートまたは化合物材料などの液体の流動挙動を特徴付ける。「見かけ粘度」は、例えばHaake VT550およびSV1などの同心シリンダプローブを使用した回転式粘度計で測定できる通りの剪断率に対する剪断応力の指数である。当技術分野では、溶解したチョコレートまたは脂肪系バリア配合物などの懸濁物の見かけ粘度は、適用される温度と剪断速度との両方に依存する。したがって、温度および剪断速度は、見かけ粘度に関する全ての報告値とともに示さなければならない。本文書を通じて、粘度の数字は「見かけ粘度」を指す。
【0049】
しかし、不均質バリア、特に脂肪含量が重量で45%未満の不均質バリアの場合、流れ挙動が、分散した無脂肪粒子間の摩擦によって損なわれることがある。
【0050】
したがって、比較的低い脂肪含量を維持しながら、所望の流れ挙動を獲得するために、任意選択で配合物に乳化剤を取り込むことが有用である。
【0051】
乳化剤は、非イオン性またはイオン性でよい。イオン性乳化剤は陽イオン、陰イオンおよび両性乳化剤を含む。両性乳化剤は、環境条件に依存する電荷を特徴とする。非イオン性乳化剤の例は、脂肪酸のモノおよびジグリセリド(E471)、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの酢酸エステル(E472a)、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの乳酸エステル(E472b)、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのクエン酸エステル(E472c)、およびポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR、E476)である。食品に使用される陰イオン性乳化剤の例は、乳酸ナトリウムステアロイル、クエン酸グリセリルステアレート、および乳酸カルシウムステアロイル2である。両性乳化剤の例は、レシチン(E322)またはアンモニウムホスファチド(E442)である。イオン性乳化剤より非イオン性乳化剤の方が好ましい。好ましい乳化剤はクエン酸エステルから選択され、これはPGPRと配合することができる。
【0052】
本発明による配合物は、重量で0%と2%の間の適切な乳化剤を含む。特に有利なのは、重量で0.3%から1.2%を含む配合物であり、さらに有利なのは、重量で0%から0.8%の適切な乳化剤を含む配合物である。
【0053】
d)脂肪性成分
脂肪性成分は、バターまたは無水乳脂またはその混合物の形態のカカオ脂および乳脂から選択することができる。カカオ脂および乳脂は、植物性脂肪、特にCBE(カカオ脂等価物)、CBS(カカオ脂代用品)、CBR(カカオ脂置換品)、または任意の他の食品用脂肪で一部または完全に置換することができる。
【0054】
本発明では、脂肪性成分と、酪農成分、カカオ成分、または他の任意選択の成分に含むことができる量の脂肪とを含む配合物の脂肪部分は、食品の意図された保存温度で少なくとも60%の固形脂肪分(SFC)を有する。固形脂肪分は、特定の温度で固体であるか、結晶化するサンプル中の脂肪の部分を特徴付けるために頻繁に使用される尺度である。SFCを測定する1つの方法は、固体と液体相との間の分子可動性の差に基づき、例えばBrukerからのMinispec計器を使用するp−NMR(パルス状核磁気共鳴)と呼ばれる方法、およびISO8292またはIUPAC2.150に記載されている手順で分析される。以下の表3は、幾つかの脂肪性成分のSFCを示す。表から、例えばカカオ脂(CB)またはカカオ脂代用品DP3292が、リストアップされた全温度で適切な脂肪性成分になることが明白である。純粋な無水乳脂肪(AMF)は、リストアップされたどの温度でも適切ではないが、カカオ脂と乳脂肪との混合物が、本発明の配合物の混合比および保存温度に応じて適切なことがあることも明白である。つまり、CBとAMFの90:10の混合物は、保存温度が20℃を超えない場合に適切であり、CBとAMFの80:20の混合物は、16℃以下の保存温度で適切であり、CBとAMFの70:30の混合物は、10℃以下の保存温度を必要とする。CBE(DP2742)およびCBR(Couva 500R)は、20℃以下の保存温度で明確に適切であり、25℃でのその適合性が境界線である。
【0055】
【表3】

【0056】
本発明による配合物は、全配合物の総重量に基づいて25%と60%の間の全脂肪を含む。全脂肪とは、脂肪性成分から誘導した脂肪と、他の成分、つまりカカオまたは酪農成分から誘導した脂肪との合計である。前述したように、往々にして食品のカロリ含量を減少させることが望ましい。脂肪含量および選択された糖/ポリオールに応じて、本発明の配合物は、約240kcal/100gから約700kcal/100gの範囲のカロリ含量を有し、これに対して純粋な脂肪バリアは900kcal/100gである。25%から50%を含む配合物が特に有利であり、25%から45%の適切な全脂肪を含む配合物がさらに有利であり、25%から35%の適切な全脂肪を含む配合物が最も有利である。
【0057】
e)糖/ポリオール
本発明の観念に入る適切な糖またはポリオールは、飽和蔗糖溶液の水分活性(0.84)以上の水分活性を有する飽和溶液を形成するものである。水中でawが0.89以上の飽和溶液を形成する糖またはポリオールが好ましい。水中でawが0.94以上の飽和溶液を形成する糖またはポリオールが、さらに好ましい。awが0.84以上の飽和溶液を形成する糖またはポリオールの例は、蔗糖、デキストロース、麦芽糖、トレハロース、乳糖、ガラクトース、マルチトール、ラクチトール、およびエリトリトールである。awが0.89以上の飽和溶液を形成する糖またはポリオールの例は、デキストロース、麦芽糖、トレハロース、乳糖、ガラクトース、マルチトール、ラクチトール、エリトリトールである。awが0.94以上の飽和溶液を形成する糖またはポリオールの例は、麦芽糖、トレハロース、乳糖、ガラクトースおよびエリトリトールである。水分活性が0.84未満の飽和溶液を形成し、したがって本発明の観念では適切ではない糖またはポリオールの例は果糖、キシリトール、およびソルビトールである。適切な糖の幾つかは、無水または水化結晶変性で結晶化することができる。水和物の方が無水結晶形態より好ましい。例えば、アルファ−乳糖1水和物が無水アルファ−またはベータ−乳糖より好ましく、デキストロース1水和物は無水デキストロースより好ましく、麦芽糖1水和物は無水麦芽糖より好ましく、ラクチトール1水和物は無水ラクチトールより好ましく、トレハロース2水和物は無水トレハロースより好ましい。全ての市販の糖またはポリオール成分は、無視できる量のミネラル(<0.1%の灰分)しか含まず、これは水分バリア用途におけるその性能に影響を及ぼさない。
【0058】
本発明の観念に入る乳糖は、少なくとも97%、さらに好ましくは少なくとも99%の乳糖1水和物で構成された材料を指す。
【0059】
前述したように、蔗糖も使用することができるが、前述した代替糖/ポリオールの1つまたは複数を使用すると、機能性配合物が非常に多くなるが、感覚プロフィールは有意に変化しない。食品のカロリ含量を減少させるために、糖ではなくポリオールを使用することが好ましい。例えば、400kcal/100gのカロリ含量を有する糖と比較して、マルチトールおよびラクチトールは240kcal/100gのカロリ含量を有し、エリトリトールは20kcal/100gのカロリ含量を有する。糖または糖混合物は、最終的に個々の用途で望ましいバリア機能性、甘味およびカロリ含量を提供する最適の組合せとして選択される。
【0060】
本発明による配合物は、0%と60%の間の適切な糖/ポリオールを含む。20%から60%を含む配合物が特に有利であり、25%から60%の適切な糖/ポリオールを含む配合物がさらに有利である。
【0061】
本発明による配合物は、好ましくは重量で1%以下、さらに好ましくは重量で0.8%以下、最も好ましくは重量で0.6%以下の灰分を有する。配合物全体の灰分は、酪農成分に関して上述したものと同じ方法で割り出される。
【0062】
高い水分活性を有する食物成分
高い水分活性を有する食物成分の例は、果物、果物料理、果物のスプレッド、コンフィチュール、野菜のスプレッドまたは料理、フレッシュチーズ、ヨーグルトまたは他の酪農系デザート、プリン、およびアイスクリームを含むが、それに制限されない。
【0063】
これらの化合物の水分活性は0.80以上、好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上であり、最大0.99でもよい。
【0064】
低い水分活性を有する食物成分
低い水分活性を有する食物成分の例は、乾燥果物、ビスケット料理、穀物料理、ウェハースなど、チョコレートおよび他の脂肪系菓子、キャラメル、タフィーなど、および糖果を含むが、それに制限されない。
【0065】
これらの化合物の水分活性は0.80未満、好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.55以下、最も好ましくは0.50以下である。
【0066】
水分活性(aw)の割り出し
水分活性(aw)は、平衡相対湿度パーセント(%ERH)を100で割った値と定義される。これは、食品にかかる平衡蒸気圧(p)と純水にかかるそれ(p0)との比率と定義することもできる。
w=p/p0
水分活性に100を掛けると、食物と平衡状態にある雰囲気の相対湿度になる。
ERH(%)=100×aw
実際には、水分活性は、食物サンプル中の「結合」水に対する「自由」水の尺度である。
水分活性(aw値)は、25℃で計器AquaLab Model XC−2を使用し、計器の製造業者の指示に従って測定される。計器の線形オフセットを既知の塩の標準値と照らし合わせて検証し、その一方がサンプルより高いawを表示し、他方がサンプルより低いawを表示する。蒸留水のawの測定値は1.000±0.003と設定される。2つの連続する値の差が0.003未満になるまで、サンプルのaw値の測定を繰り返す。サンプルに割り当てられるaw値は、その2つの値の平均である。
【0067】
本発明による配合物は、菓子などの食品の外皮、内包物、またはバリア層として適用することができる。これは、0.99などの非常に高いawを有する食物成分と直接接触する状態で使用するのに適している。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本発明の実際的な実施形態として開示されているが、本発明をこれらの実施例に制限されるものではない。
【0069】
比較実施例には§のマークがある。
【0070】
一般的手順
他に示していない限り、一般的に以下の手順を適用する。
【0071】
40℃、2/sの剪断速度で混合物の粘度を測定した。同心シリンダプローブSV1を装備した粘度計Haake VT550を使用した。
【0072】
カンチで練り、粘度を測定した後、次に液体配合物を調合して、長方形のタブレット(38×23×6mm)に成形した。3個の複製タブレットをそれぞれ、重量で17%のNaCl水溶液(89%の相対湿度に相当)または重量で8.5%のNaCl水溶液(95%の相対湿度に相当)の乾燥器に入れた。乾燥器を、10℃の保存室内に最大40日間入れた。サンプルの水分摂取を、初期重量に対する重量増加として測定し、3つの複製サンプルの平均として報告する。
【0073】
1.配合物タブレットの糖およびポリオール/水分摂取の影響
表4aによる成分を混合し、約30μmの粒子サイズ(Malvern Mastersizerで測定してレーザ回折によるD90)を獲得するために、パイロット規模の3ロール精製装置(Buehler、スイス、Uzwil)を通る2つの通路内で混合物を精製することによって、白い配合物を製造した。その結果精製された混合物を、精製フレークと呼ぶ。表4bによると、精製フレークの計量部分を、均質な混合物が獲得されるまで、パイロット規模のカンチ(サンプルP800およびV200:Richard Frisse GmbH(ドイツ、Bad Salzuflen)が製造した60kgカンチ;サンプルP300;Aoustinのパイロット規模のカンチType MX6I:RPA Process Technologies S.A.S.、フランス、ナンテール)内でさらなるカカオ脂と50℃(ジャケット温度)で4時間混合した。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
配合P300とV200は、共通して最終混合物中に33.3%用量の好ましい糖を有し、サンプルP800は、17.7%の好ましくない糖を含む。
【0077】
95%RHで28日間保存した後、サンプルP800は、3.5%の吸湿性を有し、これはサンプルP300およびV200よりも非常に高く、好ましくない糖分蔗糖の存在に帰すことができる。
【0078】
(実施例2)
好ましい糖、脱塩酪農成分、および好ましい乳化剤を使用した配合物タブレットの吸湿性
表5aによる成分を混合して、白い化合物を製造した。約30μmの粒子サイズ(Malvern Mastersizerで測定してレーザ回折によるD90)を獲得するために、パイロット規模の3ロール精製装置(Buehler、スイス、Uzwil)を通る2つの通路内で混合物を精製した。その結果精製された混合物を、精製フレークと呼ぶ。表5bによると、精製フレークの計量部分を、均質な混合物が獲得されるまで、Aoustinのパイロット規模のカンチ(Type MX6I:RPA Process Technologies S.A.S.、フランス、ナンテール)内でさらなる成分と50℃(ジャケット温度)で4時間混合した。
【0079】
処方は両方とも、最終混合物中に、
−40%の総脂肪含量、
−8%の乳脂肪含量、
−0.5%の乳化剤用量、
−60%の糖と酪農成分用量の組合せ
を有する。
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
95%RHで保存した後、サンプルR02は、比較用のサンプルR37と比較して、吸湿性の大きい減少を示した。これらのデータは、脱塩した酪農成分および好ましい糖および乳化剤を選択することによって吸湿性が低下し、したがって水分バリア特性を改良する可能性を実証する。
【0083】
3.乳化剤の影響
表6aによる成分を混合し、約30μmの粒子サイズ(Malvern Mastersizerで測定してレーザ回折によるD90)を獲得するために、パイロット規模の3ロール精製装置(Buehler、スイス、Uzwil)を通る2つの通路内で混合物を精製することにより、白い配合物を製造した。その結果精製された混合物を、精製フレークと呼ぶ。表6bによると、精製フレークの計量部分を、均質な混合物が獲得されるまで、Aoustinのパイロット規模のカンチ(Type MX6I:RPA Process Technologies S.A.S.、フランス、ナンテール)内でさらなる成分と50℃(ジャケット温度)で4時間混合した。
【0084】
処方は全て、最終混合物中に、
−40%の総脂肪含量、
−8%の乳脂肪含量、
−30%の脱脂粉乳用量、および
−30%の蔗糖用量、
−それぞれ0.5%(A100、A120、A130)または1.0%(A140)の乳化剤用量
を有する。
【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
データは、レシチン(A100)ではなくCAE(A120)を使用すると、同じ粘度を有するが、吸水率が約60%減少した白い配合物が獲得されることを示す。PGPR(A130)またはCAEとPGPRの組合せ(A140)を使用すると、レシチン(A100)を有する比較用のサンプルと比較して、吸水率がなお非常に低い状態(個々にA140は約40%、A130は約50%)で、粘度をさらに大幅に低下させることができる。
【0088】
89%RHで40日間保存した後、比較用のサンプルA100では多少のひび割れ/剥離が生じて、水分が配合物バー内に浸透し、実質的外層が変色を示すことが認められた。ひび割れ/剥離は、他のサンプルのいずれにも観察されず、変色が生じた層ははるかに薄かった。
【0089】
実施例は、イオン性乳化剤と比較して、非イオン性乳化剤で水分バリア配合物を処方する方が好ましいことを実証する。
【0090】
(実施例4)
カカオ成分の脱塩の影響
4.1.膜濾過による脱塩カカオ粉末の調製
アルカリ化していないカカオ粉末(Kraft Foods、オーストリア、Bludenz;組成は重量で11%の脂肪、6%の灰分、32%の繊維、28.1%のタンパク質;粒子サイズD90=17μm)を、重量で最大10%のカカオ粉末の濃度、20℃の温度で超純水中に懸濁させた。粉末は、震動、攪拌、超音波、および高いポンプ速度での再循環などの水を混合する攪拌加工で懸濁させた。この懸濁液を、0.1と0.5μmの間の孔径の親水性セルロース膜(Schleicher&Schuell RC 55/58)上の十字流で再循環させた。透過水(乾燥収量約10〜20%)は、カカオ粉末の水溶性成分を含む無色明澄な溶液であった。濃縮水は、水中にカカオ粉末がある懸濁液であった。例えば(真空)蒸着または凍結乾燥によって濃縮水と透過水との両方から水を分離除去した後、乾燥収量が約80〜90%の濃縮水が獲得された。
【0091】
このように、風味プロフィールおよび組成が非常に異なる2つのカカオ粉末を獲得した(表7)。分析結果は、乾燥した濃縮水中で全灰分の約30%の減少、およびカリウムの45%の減少を示し、したがって部分的に脱塩したカカオ粉末と見なすことができる。
【0092】
【表10】

【0093】
カリウム含量は、酪農成分a)に関して説明した通りに分析し、濃縮水中のカリウム含量の減少を、下式に従って元の粉末と対比して計算した。
【0094】
減少量=100%*(1−(濃縮水−K/元−K))
ここで、濃縮水−Kは、濃縮水のカリウム含量を意味し、元−Kは、元の粉末のカリウム含量を意味する。
【0095】
4.2.乳化合物の吸湿性に及ぼす変性カカオ粉末の影響
表8aによる成分を混合し、約30μmから35μmの粒子サイズ(Malvern Mastersizerで測定してレーザ回折によるD90)を獲得するために、パイロット規模の3ロール精製装置(Buehler、スイス、Uzwil)を通る2つの通路内で混合物を精製することによって、乳化合物を製造した。その結果精製された混合物を、精製フレークと呼ぶ。表8bによると、精製フレークの計量部分を、均質な混合物が獲得されるまで、パイロット規模のAoustinカンチ(Type MX6I:RPA Process Technologies S.A.S.、フランス、ナンテール)内でさらなる成分と50℃(ジャケット温度)で2.5時間混合した。その結果の化合物は両方とも、約9%の無脂肪カカオ固形物を含む。
【0096】
液体化合物を調合して、長方形のタブレット(38mm×23mm×6mm)に成形した。色の見かけには、わずかな違いしかなかった(表8b参照)。従来のカカオ粉末を含むサンプルは、強い「ブラックカカオの風味」を呈し、脱塩したカカオ粉末を含むサンプルは、特に苦味に関して全体的な風味がそれほど強力でなかった。
【0097】
タブレットを、ビニール袋に入れて16℃で1日保存した。次に5つの複製タブレットをそれぞれ、重量で8.5%のNaCl水溶液(95%の相対湿度に相当)の乾燥器に入れた。乾燥器を、10℃の保存室内に入れた。21日保存した後の複製5個の平均吸湿性が表8bに示され、これは従来のカカオ粉末(05O 200AO)と比較して脱塩カカオ粉末(05O 300AO)の吸湿性が(95%RHで)約40%低下することを実証する。
【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】
(実施例5)
ウェハースと水性乳ムースフィリングとの間に使用する場合の化合物のバリア特性
表9に従って白い化合物MCS、MCTLを製造し、水性フィリングで充填したウェハースコーン上のバリアとして使用した。化合物中の灰分計算値(リン酸3カルシウムを含む)は、MCSでは4.4%、MCTLでは2.3%である。
【0101】
比較用に、純粋な特殊脂肪の水分バリアとして設計されたDanisco Barrier System 2000(DBS)も使用した。
【0102】
表9による成分をStephan調理器具内で混合した。次に、混合物をパイロット規模の3ロール精製装置(Buehler、スイス、Uzwil)を通る2つの通路内で精製し、精製した混合物を移動させてStephan調理器具に戻し、ここで表9による追加の成分を添加した(#)のマークが付いている)。サンプルDBSの場合は、成分をDaniscoから受け取ったままの状態で使用した。
【0103】
約8gの液体を、30から40℃の温度でウェハースのコーン(重量9g;初期水分活性0.35)の内側に均等に分配した。冷却してバリア層を結晶化させた後、約0.93の水分活性を有する15gの乳系ムースをコーンに充填した。次に、コーンの頂部を約4gのバリア層で覆い、冷却して、個別にビニール袋内に密封し、4℃で保存した。
【0104】
様々な保存時間の後、専門家のグループが、5ポイントスケール(5pts=非常に優れている、3.5pts=合格の境界線、および1pts=全体的に不合格)を使用し、ウェハースとトッピング層の両方のサクサク感に焦点を絞って、サンプルを評価した。
【0105】
最初から、サンプルDBSは品質を急速に失い、40日を超える保存時間で不合格であった。サンプルMCSは約35日までは良好な品質(>4.5pts)を維持し、次に急速に品質を失い、これも40日を超える保存時間の後、不合格であることが判明した。この比較は、この用途では不均一な化合物が純粋な脂肪バリアより優れていることを実証しているが、40日を超える有効寿命が必要な場合、従来通りの脱脂粉乳を使用した化合物は適切でない。
【0106】
比較用のサンプルMCSと対照的に、サンプルMCTLは、80日を超える保存時間の後でも非常に優れた品質(5pts)を呈した。MCTLサンプルでは、乳フィリングがその品質(軟らかく、湿ったきめ)を非常に良好に維持したが、MCSおよびDBSサンプルでは、40日を超えた保存時間の後に大きく変化した(体積を失い、乾燥し、噛みにくいきめ)ことも観察された。
【0107】
この実施例は、本発明による脱塩酪農成分および好ましい糖を使用した不均一な水分バリアの優れた性能を明らかに実証している。
【0108】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水バリアまたは防湿性構造として使用するための食用配合物であって、
配合物の総重量に基づき、
a)5.5重量%以下、好ましくは3.5重量%以下、さらに好ましくは2.8重量%以下、最も好ましくは1.8重量%以下の灰分に換算して低いミネラル含有率を有する、0から50重量%の酪農成分、
b)4.5重量%以下、好ましくは3.5重量%以下、さらに好ましくは2.5重量%以下の灰分に換算して低いミネラル含有率を有する、0から25重量%のカカオ成分、
c)モノおよびジグリセリドの脂肪酸の酢酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸の乳酸エステル、モノおよびジグリセリドの脂肪酸のクエン酸エステル、およびポリリシノール酸ポリグリセロールで構成されたリストから選択された、0から2重量%の乳化剤、
d)脂肪成分、
e)飽和溶液が少なくとも0.84、好ましくは少なくとも0.89、さらに好ましくは0.94の水分活性を有する、0から60重量%の少なくとも1つの糖および/またはポリオール、
を備え、
(i)前記配合物の総脂肪含有率が、25から60重量%であり、
(ii)成分a)の前記含有率が5重量%未満である場合に、
成分b)の前記含有率が、少なくとも2重量%であるか、
成分c)の前記含有率が、少なくとも0.3重量%である、
ことを特徴とする前記食用配合物。
【請求項2】
前記酪農成分a)の前記含有率は、5から50重量%であり、
成分a)、b)およびc)の前記総含有率は、5から50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記配合物の前記総脂肪含有率は、25から50重量%、好ましくは25から40重量%、さらに好ましくは25から35重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
成分e)は、蔗糖、デキストロース、麦芽糖、トレハロース、乳糖、ガラクトース、マルチトール、ラクチトールおよびエリトリトールおよびその水和物で構成されたリストから選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配合物。
【請求項5】
成分e)は、乳糖1水和物、デキストロース1水和物、麦芽糖1水和物、ラクチトール1水和物およびトレハロース2水和物で構成されたリストから選択されることを特徴とする請求項4に記載の配合物。
【請求項6】
成分e)は、20から60重量%の量で存在することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の配合物。
【請求項7】
成分c)は、0から1.2重量%の量で存在することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の配合物。
【請求項8】
成分a)は、25から50重量%の量で存在することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の配合物。
【請求項9】
560kcal/100g未満、好ましくは490kcal/100g未満のカロリ含量を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の配合物。
【請求項10】
前記全配合物の前記灰分は、1重量%以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の配合物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の前記配合物を備えることを特徴とする食品。
【請求項12】
0.80以上の水分活性を有する少なくとも1つの成分A)、および0.80未満の水分活性を有する少なくとも1つの成分B)を備えることを特徴とする請求項11に記載の食品。
【請求項13】
前記少なくとも1つの成分A)および前記少なくとも1つの成分B)は、請求項1から10のいずれかに記載の前記配合物と接触するか、それから分離されていることを特徴とする請求項12に記載の食品。
【請求項14】
請求項1から10のいずれかに記載の前記配合物が、0.5から4mmの厚さを有する層の形態で存在することを特徴とする請求項13に記載の食品。

【公開番号】特開2008−283971(P2008−283971A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−129934(P2008−129934)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(501175214)クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド (56)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS R & D, INC.
【Fターム(参考)】