説明

水分調整剤の製造方法、水分調整剤

【課題】衛生上安全で、かつ低コストで製造が可能な水分調整剤を提供する。また、家畜排泄物の含水率を調節するための水分調整剤を、低コスト、かつ効率的に製造することが可能な水分調整剤の製造方法を提供する。
【解決手段】家畜排泄物に水を加えて混合し有機廃棄物のスラリーを形成する(S1)。スラリーを脱水機11に入れ、所定の含水率になるまで脱水を行う。脱塩有機廃棄物を乾燥機に投入し、熱風などによって少なくとも60℃以上に加熱し乾燥させる(S3)。脱塩有機廃棄物は、含水率が5質量%以上かつ20質量%以下となる。乾燥機の熱源となる排熱は、例えば、セメント製造工程(工場)のセメントキルンで生じた排熱を利用すれば良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物を含む有機廃棄物を用いた水分調整剤およびその製造方法に関し、更に詳しくは、家畜排泄物を含む有機廃棄物を堆肥化する際に、この有機廃棄物の含水率の調整に用いるのに好適な低含水率の同質の有機廃棄物もしくは堆肥化を行った有機廃棄物を主剤とした水分調整剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
【0003】
しかし、家畜排泄物を発酵させて堆肥を製造する際に、家畜排泄物をそのまま好気性発酵させようとしても、家畜排泄物は含水率が高い(例えば含水率80質量%以上)ので、発酵が進みにくい。家畜排泄物の好気性発酵を促進させるためには、例えば、含水率を50〜70質量%程度にするのが好ましい。
【0004】
このため、例えば、天日乾燥やドライヤー乾燥などによって、家畜排泄物の含水率を下げた後、発酵させて堆肥を得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、家畜排泄物に、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させて家畜排泄物の含水率を下げた後、発酵させて堆肥を得る方法も知られている。
【0005】
上記おが屑、籾殻、バーク粉等は新たに購入する必要があり、さらにこれら資材は分解が遅いために堆肥の品質低下や農場から発生させる堆肥を増加させ、肥料利用を阻害する場合があった。
【0006】
おが屑、籾殻、バーク粉等の代わりに発酵させた堆肥を利用する戻し堆肥の方法も知られている。
【0007】
また、乾燥させた堆肥を燃料として利用することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−4033号公報
【特許文献2】特開平11−77095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、家畜排泄物の含水率を下げるために、家畜排泄物を天日乾燥させる方法では、寒冷地や冬季、多湿気候などの環境下では充分に含水率を下げることが困難であり、また、所定の含水率まで水分を蒸発させるのに時間がかかるという課題があった。
【0010】
また、ドライヤー乾燥により家畜排泄物の含水率を下げる方法では、化石燃料や多量の電力が必要となるため、製造コストが高くなり、また、温室効果ガスの排出量が増加して環境にも好ましくない。一方、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させて家畜排泄物の含水率を下げる方法は、近年、これらの材料の発生量が減少した結果、こうしたおが屑、籾殻、バーク材等を低コストで大量に入手することが困難になりつつあり、やはり、製造コストが高くなるという課題があった。
【0011】
戻し堆肥は堆肥製造量が増えるため、使用量が多いことと、塩素濃度が上がるために堆肥化での労力ががかかること、製造された堆肥が塩素濃度および/または塩素化合物濃度が高いために、作物の生育障害を発生させる場合がある。
【0012】
畜産農家での燃料利用は、燃焼炉の塩素による腐食、臭い、焼却灰の肥料利用が進まないなどの問題がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、家畜排泄物の含水率を調節するための水分調整剤を、低コスト、かつ効率的に製造することが可能な水分調整剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、衛生上安全あり、かつ低コストで製造が可能な水分調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は次のような水分調整剤及びその製造方法を提供した。
すなわち、本発明の水分調整剤の製造方法は、家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、設備から排出される排熱により少なくとも60℃以上に加熱し、その含水率を25質量%以下とすることを特徴と。
【0016】
前記スラリーまたは洗浄水は、前記有機廃棄物に水を加えたものであればよい。
前記水分調整剤の最大粒子径を20mm以下にすることが好ましい。
前記家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれを含有してなるスラリーまたは洗浄水に脱水処理を施し、前記有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去してもよい。
【0017】
前記水分調整剤の塩素濃度を4000ppm以下にすることが好ましい。
前記有機廃棄物を前記設備に移動させる工程と、得られた水分調整剤を前記有機廃棄物の発生源に移動させる工程とを含むことが好ましい。
前記設備で利用される資材を更に添加し、含水率を調整してもよい。
前記設備は、セメント製造設備、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設であればよい。
【0018】
前記有機廃棄物を加熱した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、最大粒子径を20mm以下に調整することも好ましい。
前記設備の排熱により、前記有機廃棄物を少なくとも60℃以上に加熱し、植物種子、微生物、細菌を死滅させることが好ましい。
【0019】
また、本発明の水分調整剤は、前記各項記載の水分調整剤の製造方法によって製造したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水分調整剤、水分調整剤の製造方法によれば、有機廃棄物を加熱して乾燥させる乾燥工程において、工場設備等で生じた排熱を利用することにより、新たに化石燃料を燃焼させて熱源を発生させることなく、余剰な熱エネルギーを有効に活用できる。これにより、温室効果ガスの発生を抑制して地球環境の保全に役立つと共に、低コストで水分調整剤を製造することが可能になる。
【0021】
また、工場設備等で利用される低含水率の資材を有機廃棄物の発生源に移動(運搬)させ、あるいは工場内において、有機廃棄物に対して低含水率の資材を混合することによって、一層低コストに有機廃棄物の含水率を低減することができる。
【0022】
含水率を25質量%以下としたので、水分の多い家畜排泄物などの含水率を従来に比べて少量の調整剤で効果的に低減させ、発酵に適した含水率にすることができる。また、最大粒子径を20mm以下にすることによって、家畜排泄物との混合を容易に行うことができ、均一な混合物を得ることができる。 さらに、脱水処理を施し、水分調整剤の塩素濃度を4000ppm以下とすることによって、堆肥中の塩素濃度を低減し、これを燃料として用いる際に塩素/塩素化合物による炉の腐食等を防いだり、製品への塩素成分による影響を抑制することができる。
【0023】
本発明の水分調整剤を用いて製造した堆肥を工場設備で燃料として利用するなら、向上設備で利用される低含水率の資材であれば、いったん発生源に移動させるだけで低コストで畜産廃棄物を燃料化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における水分調整剤の製造方法の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の水分調整剤の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】脱塩有機廃棄物からケーキを得るまでの工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の水分調整剤の最良の形態について説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の水分調整剤は、家畜排泄物を含む有機廃棄物と水とを含有してなるスラリーまたは洗浄水を、脱水し、これによって得られるケーキもしくはこれにより製造される堆肥を、設備から排出される排熱により、少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱してなる水分調整剤であって、含水率が25質量%以下であることを特徴とする。
【0026】
なお、ここでいう設備(工場)としては、セメント製造設備、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設が挙げられる。他にも、有機廃棄物を排出する畜産農家などの設備も好ましく適用することができる。
【0027】
この水分調整剤の含水率は、25質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上かつ15質量%以下、更に好ましくは、5質量%以上かつ10質量%以下である。この水分調整剤を上記の家畜排泄物と混合することにより、水分が多量に含まれた家畜排泄物の含水率を容易に下げることができる。
【0028】
また、水分調整剤は、最大粒子径が20mm以下、更に好ましくは2〜20mmであるのが好ましい。最大粒子径を20mm以下にすることによって、家畜排泄物との混合を容易にし、均一な混合物を得ることができる。さらに、燃料向け堆肥を製造しようとするとき、水分調整剤の塩素濃度が4000ppm以下であることが好ましい。これにより、堆肥中の塩素濃度を低減し、燃料として最適な塩素濃度を保つことができる。
【0029】
この水分調整剤は、例えば、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物に混合して用いる。これにより、水分を多量に含む家畜排泄物の含水率を、好気性発酵を促進させるのに最適な50〜70質量%程度に調整することができる。
【0030】
以下、本発明に係る水分調整剤の製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水分調整剤の製造方法に用いられる装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の水分調整剤の製造方法を示すフローチャートである。
図1において、11は上記の家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水に含まれる有機廃棄物の脱塩を行う脱塩設備(装置)(但し、図1では脱水機と表示する)、12は脱塩された有機廃棄物の乾燥を排熱を利用して行う乾燥設備(装置)(但し、図1では乾燥機と表示する)、13は乾燥後の有機廃棄物の粉砕、分級などを行う粉砕機、15は有機廃棄物の発酵を行う発酵設備である。
【0031】
脱塩設備(脱水機)11は、上記の家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水を貯留する槽と、これを固液分離するスクリュープレス等からなる固液分離機とを備えている。乾燥設備(乾燥機)12は、セメント製造設備のセメントキルン、仮焼炉、クリンカクーラー、サスペンションプレヒーター等で生じた排熱を用いて乾燥または加熱乾燥する。
【0032】
発酵設備15は、脱塩有機廃棄物を発酵させる際に生じる発酵熱を用いて、この脱塩有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥させる設備であり、例えば、縦型密閉式発酵槽、横型開放式発酵槽、横型開放式堆肥舎等が好適に用いられる。
【0033】
粉砕機13は、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径20mm以下の粒子状とする分級機能を有するもの、例えば、自動乳鉢、解砕機、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
【0034】
本発明の水分調整剤を製造する際には、まず、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物(有機廃棄物)を用意する。次に、例えば、この家畜排泄物に水を加えて混合し有機廃棄物のスラリーを形成する(S1)。このような水の添加は、家畜排泄物(有機廃棄物)の含水率が低い場合に行えば良い。有機廃棄物のスラリーとしては、例えば、豚の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、牛の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、鶏のケージ等を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリー等が挙げられる。これら高含水率有機廃棄物は、その用途によっては、2種類以上を混合してもよい。また、豚や牛の糞尿のように含水率が80質量%以上と高含水率になっている場合、特に洗浄水を加えなくても良い。
【0035】
このスラリー中の水には、家畜排泄物に含まれる塩素が溶出される。このスラリーを脱水機11に入れ、所定の含水率になるまで脱水を行う。これにより、塩素を溶解した水分が脱水され、脱塩有機廃棄物が得られる(S2)。
【0036】
次に、図3の工程図に示すように、家畜排泄物含有処理水、食品廃棄物含有処理水等の高含水率有機廃棄物を脱塩設備の1次槽に一旦貯留し、送液ポンプ等を用いて1次固液分離機に投入し、この高含水率有機廃棄物をケーキ(固形分)と1次スラリー(水溶液)に固液分離する。次いで、この固液分離により生じた1次スラリーを調整槽に投入して貯留し、この1次スラリーを調整槽の計量槽等の定量供給装置を介して1次曝気槽に導入し、この1次スラリーに1次曝気処理を施す。
【0037】
次いで、この1次曝気処理が施されたスラリーを、送液ポンプ等を用いて2次固液分離機に投入し、このスラリーをケーキ(固形分)と2次スラリー(水溶液)に分離し、この固液分離により生じた2次スラリーを2次曝気槽に投入し、2次曝気処理を施す。次いで、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬槽に投入して膜浸漬処理を施し、汚泥と処理水とに分離する。次いで、この汚泥を脱水処理装置に導入して、脱水処理を施し、更にケーキ(余剰汚泥)を得る。
【0038】
これにより、高含水率有機廃棄物は、前記一連の固液分離により効果的に脱塩処理が施され、塩素濃度が4000ppm以下、好ましくは3000ppm以下であり、かつ含水率が90質量%以下、好ましくは80質量%以下のケーキ状の脱塩有機廃棄物となる。この膜浸漬槽及び脱水処理装置から排出される処理水は、処理水受槽に一旦貯留された後、放流される。
【0039】
なお、こうした脱塩処理は、水分調整剤によって含水率を低減させる対象物の種類によっては、特に行わなくても良い。例えば、水分調整剤の製造に用いる場合には、脱塩処理を行わなくてもよい。
【0040】
このような脱水機11、即ち脱塩設備を経て得られた脱塩有機廃棄物は、例えば含水率が90質量%以下、残留塩素濃度が4000ppm以下である。
【0041】
次に、脱塩有機廃棄物に、本発明によって得られた水分調整剤(低塩素(塩素濃度が4000ppm以下のもの))を添加し、含水率を50質量%〜70質量%に調整した後、発酵熱により乾燥され、例えば、含水率50質量%以下になる。
【0042】
更に、これを乾燥機12に投入し、例えば、セメント製造設備から排出される排熱によって脱塩有機廃棄物を少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱させ、所定の含水率まで水分を蒸発させる。乾燥機12の熱源となる排熱は、セメント製造設備のセメントキルンで生じた排熱の他、各種製造業における設備(工場)、発電所、リサイクル設備などでの製造、処理、発電などの過程で生じる排熱を乾燥機12の熱源として利用できる。具体例としては、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設などから排出される排熱が挙げられる。
【0043】
以上のような乾燥機12で乾燥された脱塩有機廃棄物は、含水率が25質量%以下となる。また、最大粒子径が20mm以下、塩素濃度が4000ppm以下である。
【0044】
なお、排熱の発生源としてセメント製造設備を利用する場合、セメント製造設備で生じる資材、例えば石灰等を有機廃棄物に混合し、含水率の低減(乾燥)を促進させることも好ましい。こうしたセメント製造設備で生じる、例えば含水率が5〜15質量%の石灰を混合することによって、含水率の低減を促進できるだけでなく、石灰の水和熱の発生により温度上昇、発酵を促進させることができる。また、他の設備(工場)で生じる低含水率の各種資材を混合することも好ましい。
【0045】
本発明の水分調整剤は、例えば、水分の多い(例えば含水率80質量%以上)家畜排泄物から発酵堆肥を得るために利用できる。鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物と、本発明の水分調整剤とを、例えば混合機に投入し、混合する(S5)。これによって、例えば含水率80質量%以上の家畜排泄物の含水率を50〜70質量%まで下げる。
【0046】
次に、水分調整剤を混合して含水率を低減させた家畜排泄物を発酵設備16に入れて、好気性発酵させる(S6)。こうした発酵時に、含水率を50〜70質量%まで下げた家畜排泄物を用いることによって、発酵が効果的に促進される。以上の工程を経て、発酵堆肥が形成される(S7)。
【0047】
以上のように、本発明の水分調整剤によれば、乾燥工程で、例えば、セメント製造工程などの各種設備(工場)で生じた排熱を利用することにより、新たに化石燃料を燃焼させて熱源を発生させることなく、余剰な熱エネルギーを有効に活用できる。これにより、温室効果ガスの発生を抑制して地球環境の保全に役立つと共に、低コストで水分調整剤を製造することが可能になる。
【0048】
また、水分調整剤の含水率を5質量%以上かつ25質量%以下とすることによって、水分の多い家畜排泄物などの含水率を効果的に低減させ、発酵に適した含水率にすることができる。
更に、最大粒子径を20mm以下、好ましくは2〜20mmにすることによって、家畜排泄物との混合を容易にし、均一な混合物を得ることができる。そして、水分調整剤の塩素濃度が4000ppm以下にすることによって、家畜排泄物の塩素濃度を低減し、燃料用途に適した塩素濃度を保つことができる。
【0049】
また、こうして得られた水分調整剤は、設備の排熱により、有機廃棄物少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱されているため、植物種子、微生物、細菌が死滅し、衛生上も安全な水分調整剤を得ることができる。
【0050】
なお、各種設備で生じた資材、例えば、セメント製造設備で生じる資材、例えば石灰、または、製造した水分調整剤を、トラックなどの運搬手段で有機廃棄物の発生源、例えば農場、牧場、養鶏場に移動(運搬)し、この移動の戻り時に有機廃棄物の発生源で生じた有機廃棄物を各種設備に移動(運搬)させるのが好ましい。
【0051】
資材や水分調整剤を往路の運搬物として有機廃棄物の発生源に運搬し、有機廃棄物を復路の運搬物として各種設備に運搬するようなサイクルを確立すれば、運搬経費の削減ができると共に、有機廃棄物の回収から水分調整剤の製造、そして水分調整剤の提供に至るまで、一連のサイクルとして安定して運用することが可能になる。
【0052】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0053】
含水率80質量%の豚糞を、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥し、含水率15質量%の乾燥豚糞を得た。これを分級、および解砕して、平均粒径5mm、最大粒径20mmの水分調整剤を得た。次に含水率80質量%の豚糞100kgに対して、上記の水分調整剤を44kgの割合で添加して含水率を60質量%に調整した。これを開放式直線型堆肥舎にて堆肥化した。その結果、良質な堆肥が得られた。
【実施例2】
【0054】
含水率35質量%の発酵牛糞を、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率10質量%の乾燥発酵牛糞を得た。これを分級、および解砕して平均粒径3mm、最大粒径20mmの水分調整剤を得た。次に含水率85質量%の牛糞100kgに、上記の水分調整剤を36kgの割合で添加して含水率を65質量%に調整した。これを密閉式縦型発酵槽にて堆肥化した。その結果、良質な堆肥が得られた。
【実施例3】
【0055】
浄化設備を有する養豚場にて、原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水機にて脱水し含水率80質量%、塩素濃度2000ppmの脱水ケーキを得た。この脱水ケーキを、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率15質量%、塩素濃度2000ppmの乾燥物を得た。これを分級、および解砕して平均粒径5mm、最大粒径20mmの水分調整剤を得た。次に原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水槽で脱水して得られた含水率80質量%、塩素濃度2000ppmの豚糞の脱水ケーキ100kgに対して、上記の水分調整剤を44kgの割合で添加して含水率を60質量%に調整した。これを密閉式縦型発酵槽にて堆肥化した。その結果、含水率20質量%、塩素濃度2000ppmで燃料として利用可能な堆肥が得られた。
【実施例4】
【0056】
浄化設備を有する養豚場にて、原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水機にて脱水し含水率80質量%、塩素濃度1500ppmの脱水ケーキを得て、これを開放式直線型堆肥舎にて堆肥化し含水率40質量%、塩素濃度1800ppmの発酵堆肥を製造した。この発酵堆肥を、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率10質量%、塩素濃度1800ppmの乾燥物を得た。これを分級、および解砕して平均粒径2mm、最大粒径20mmの水分調整剤を得た。次に、原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水槽で脱水して得られた含水率78質量%、塩素濃度1500ppmの豚糞の脱水ケーキ100kgに対して、上記の水分調整剤を24kgの割合で添加して含水率を65質量%に調整した。これを密閉式縦型発酵槽にて堆肥化した。その結果、含水率20質量%、塩素濃度1650ppmで燃料として利用可能な堆肥が得られた。
【0057】
(比較例)
含水率80質量%の豚糞を化石燃料の燃焼によるロータリードライヤーで乾燥して含水率45質量%の乾燥豚糞を得た。これを分級、および解砕して粒度調整を試みたが、含水率が高く、湿潤状態のため良好な調整ができなかった。次に含水率80質量%の豚糞100kgに、上記の乾燥豚糞を添加して含水率60質量%にしようとすると、133kgもの上記の乾燥豚糞が必要になり、原料となる含水率80質量%の豚糞が不足する結果となった。
【実施例5】
【0058】
セメント工場等で生じた含水率が5〜15質量%の資材を、有機廃棄物の引取りに従来は空荷であった運搬車に積載し、有機廃棄物の発生源である養豚場に運搬した。そして、この養豚場で生じた含水率が80質量%の豚糞に資材を混合または堆肥化することによって、含水率20質量%、塩素濃度2000ppmで燃料として利用可能な堆肥が得られた。
【符号の説明】
【0059】
11 脱水機、12乾燥機、13 粉砕機、16 発酵設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、設備から排出される排熱により少なくとも60℃以上に加熱し、その含水率を25質量%以下とすることを特徴とする水分調整剤の製造方法。
【請求項2】
前記水分調整剤の塩素濃度を4000ppm以下にすることを特徴とする請求項1記載の水分調整剤の製造方法。
【請求項3】
前記有機廃棄物を加熱した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、最大粒子径を20mm以下に調整することを特徴とする請求項1または2記載の水分調整剤の製造方法。
【請求項4】
前記設備の排熱により、前記有機廃棄物を少なくとも60℃以上に加熱し、植物種子、微生物、細菌を死滅させることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項項記載の水分調整剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項記載の水分調整剤の製造方法によって製造したことを特徴とする水分調整剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−234220(P2010−234220A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83819(P2009−83819)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】