説明

水力発電設備用のタービン

【課題】タービン、および簡素化された構造を有しかつより大きな出力をもたらす当該タービンを有する水力発電設備を提供する。
【解決手段】電気エネルギーを発生させるための水力発電設備用のタービン。当該タービンは、ローター(4)および複数のタービンブレード(1)と、貫流方向にローターの後方に配置されかつタービンの支持機構として機能する複数の支持ブレード(5)を有する案内機構(6)であって、支持ブレード(5)が貫流方向に対して傾斜した状態で配置された案内機構(6)と、を具備してなり、ローター(4)のタービンブレード(1)のピッチ角は可変となっており、かつ、タービンブレード(1)が貫流方向に実質的にタービンによって乱されていない流入流れを得るよう、タービンは上流側ロータータービンの形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを発生させるための水力発電設備用のタービン、ならびに当該タービンを有する水力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンを備えた水力発電設備所すなわち水力発電設備は公知であるが、これは実質的に三つの段階に分けられる。第1の段階は概して支持機構に相当し、これを用いてタービンは流路内でその本来の位置で保持される。たいていはローターの前方に配置される案内機構がさらに設けられる。最後に、ローター自体はブレードと共にその後方に配置される。これは、この種のタービンに関する流れは三つの段階すなわち位置において影響を受けることを意味する。
【0003】
非特許文献1には、数多くの水力発電設備が示されている。これには、たとえばカプラン(Kaplan)チューブタービンが示されている。このタービンは、入力シャフト、タービンおよび吸入ホースを有し、これらは実質的に直線状に配置され、かつ水平であるかあるいは水平面に対して僅かに傾斜している。これは、より大きなエネルギー出力に好都合な、流れの方向における複数の変化が回避されるという利点を有する。タービンは、支持ブレード、案内ブレードおよびその後方に配置された、付随するブレードを備えたローターを有する。
【0004】
直線流タービンユニットも公知であるが、この場合、発電機は流動チューブの外側に同心状に配置され、この結果、発電機はハウジングベッセルの内部には配置されない。ローターは、ハブとローターブレードとローターリングとを具備してなるが、これらは通常、ユニットを形成するために、溶接構造体の形態で製造される。支持用の十字形構造体が、流動方向に関して、案内ベーンおよびローターブレードを備えたローターの上流に配置される。
【0005】
ローターの前方に配置された案内機構は、案内ブレードあるいは支持ブレードの回動によって利用され、ブレードが互いに重なり、これによって流路を閉塞するようにブレードを調整することによってタービンが停止させられる。
【0006】
従来技術文献としては、概して、特許文献1〜5が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第34 29 288号明細書(DE 34 29 288 A1)
【特許文献2】独国特許第884 930号明細書(DE 884 930 C)
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 622 543号明細書(EP 0 622 543 A1)
【特許文献4】スイス国特許第332 959号明細書(CH 332 959)
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0001432号明細書(US 2005/0001432 A1)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jurgen GieseckeおよびEmil Mosonyi、「Wasserkraftanlagen(水力発電設備)」、第3版、Springer Verlag、2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、タービン、および簡素化された構造を有しかつより大きな出力をもたらす当該タービンを有する水力発電設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、請求項1に記載されたタービンによって、かつ請求項6に記載された水力発電設備によって達成される。
【0011】
それゆえ、水力発電設備用のタービンが提供される。当該タービンは複数のブレードを備えたローターを有するが、ここで、当該ローターは(流動方向に関して)案内機構の前方に配置される。ローターのブレードのピッチ角は可変となっている。
【0012】
ローターが(流動方向に関して)案内機構の前方に配置されるという事実によって、流れはまずローターに衝突し、そしてその後でのみ案内機構に衝突し、したがってローターにとって最適な流動状況がもたらされる。
【0013】
別個の支持機構が設けられないという事実は、支持機構周りの流動損失が完全になくなり、これによって従来技術と比べて効率の改善がもたらされることを意味する。
【0014】
本発明の一態様によれば、ローターは、それに対してタービンブレードを結合するための球状ハブを有する。当該ハブの球状構造によって、大きな範囲にわたってタービンブレードのピッチ角を調整することが可能となっている。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、タービンブレードは確実なロッキング関係で球状ハブに対して搭載されており、この結果、タービンブレードがハブと一つになるとき不利な流動状況を回避することが可能となっている。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、タービンブレードのピッチ角は−20°ないし140°の角度内で調整でき、この結果、タービンブレードのピッチ角が適切に調整されるならば、ローターを減速あるいは加速させることができる。
【0017】
本発明のさらなる態様は、従属請求項の対象事項である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】第1実施形態によるタービンの概略図である。
【図1b】第1実施形態によるタービンのさらなる概略図である。
【図1c】第1実施形態によるタービンの正面図である。
【図2a】第2実施形態によるタービンの概略図である。
【図2b】第2実施形態によるタービンのさらなる概略図である。
【図2c】第2実施形態によるタービンの正面図である。
【図3a】第3実施形態によるタービンの概略図である。
【図3b】第3実施形態によるタービンのさらなる概略図である。
【図3c】第3実施形態によるタービンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明について詳しく説明する。
【0020】
図1aは、第1実施形態によるタービンの概略図である。図1bは図1aに示すタービンを別の方向から見て示す図である。図1cは図1aおよび図1bのタービンの正面図である。タービンは、タービンブレード1を備えたローター4を有するが、このタービンブレード1は、実質的に球形状を有するハブ3に対して連結されている。タービンブレード1を備えたローター4は、流動方向に関して案内機構6の前方に配置されている。本タービンは、それゆえ、上流側ロータータービンである。すなわち、案内機構6はローター4の後方に存在し、かつ同時に流路内でローターを支持しており、この結果、付加的支持機構を省略することが可能となっている。それゆえ案内機構6はまた取り付け構造体を有する。
【0021】
したがって、流れはまず、乱されていない状態でローター4に衝突し、この結果、流れが案内機構6に衝突する前に、最大量のエネルギーを流れから取り出すことができる。この点に関して案内機構は、水の最適放出流量がスワール損失を低減することによって保証され、これによって堆積物付着およびこれに伴う効率の落ち込みが阻止されるように設計されている。
【0022】
案内機構は支持ブレード5を有する。第1実施形態においては、七つの支持ブレード5が存在する。この支持ブレード5は、好ましくは、調整可能には設計されない。
【0023】
ローター4のブレード1は、−20°から140°の、好ましくは−10°から120°の範囲で可変であり、この結果、タービンブレード1のピッチ調整が可能となっている。このようにして、ローターのブレードは、タービンブレード1とローターとの間に隙間を形成することなく、どのようなポジションへでも変位させることができる。なぜなら、タービンブレード1は、ハブに対して、その球形状によって、確実なロッキング関係で搭載されているからである。
【0024】
90°にわたるブレード1の調整によって、ブレードは「フェザリングポジション」と呼ばれるポジションへと回動させられる。すなわち、水はローター4を動作させることなくブレードを通過し、案内機構6を経て流れる。この結果、タービンが運転状態にないときでさえ水はタービン流路を経て流れることができ、ローターを減速させ、ことによると停止させるために流路を遮蔽する必要はない。
【0025】
支持ブレードの調整機能は、ローター4のブレードの調整により、そしてブレードはフェザリングポジションとなるように回動させることができるという事実によってローター4を停止できるという事実により、必要とされない。
【0026】
図2aないし図2cは、第2実施形態に基づくタービンを示している。この例では、第2実施形態のタービンの構造は、実質的に、第1実施形態のタービンの構造と一致している。第1実施形態と同じように、案内機構には七つの支持ブレード5が存在する。だが、第1実施形態とは異なり、ローターには四つのブレードが存在する。
【0027】
図3aないし図3cはそれぞれ、第3実施形態に基づくタービンを示している。第3実施形態のタービンの構造は、実質的に、第1および第2実施形態のタービンの構造と一致している。第1および第2実施形態のタービンとは対照的に、案内機構には、五つの支持ブレード5が存在する。
【0028】
先に提示した三つの実施形態において、ローター4のブレード1は調整可能となっており、この結果、タービンはブレードの調整によって停止可能である。これは、案内機構のブレードの調整機能は、流路内の流れを遮るために、必要ではないことを意味する。
【0029】
先に提示した三つの実施形態において、ローターはシャフト10に対して接続されており、このシャフト10は、その回転運動を電気エネルギーへと変換するために、発電機に対して接続できる。
【0030】
本発明によるタービンは、それゆえ、上流側ロータータービンである。すなわち、案内機構はローターの後方に配置されている。案内機構は、タービン用の支持および取り付け構造体である。ローター4のブレード1は、−20°ないし140°の角度内で調整可能となっている、ローター4のハブ3は実質的に球状構造のものであり、この結果、ローター3のブレード1は、隙間が生じないように、所望の角度へと設定できる。流れは、それゆえ、それがさらに案内機構6へ到達する前に、まずローター4に衝突し、それゆえ、ローター4にとって最適な流動状況がもたらされる。本発明に基づくタービンは、それゆえ、ただ二つの段階、すなわちローターおよび案内機構を有する。
【0031】
水力発電設備用の上記タービンは、好ましくは、電力を発生させるための発電機に対して(シャフト10によって)、変速機を介さない方式で接続されている。すなわち当該方式は、タービンおよび発電機からなる無変速機システムを含む。
【0032】
タービンに接続された発電機は、好ましくは、その回転速度が可変であるようになっている。この目的のために、システムあるいは水力発電設備は、発電機に加えて、好ましくは、整流器、およびネットワークに接続可能なインバーターを有する。整流器およびインバーターを備えたことにより、発電機は異なる回転速度で運転することができる。なぜなら、発電機によって生み出される電圧あるいは出力は、整流器およびインバーターによって、所要のネットワーク周波数へと変換できるからである。
【0033】
発電機の可変速度設計構造によって、より大きな出力を得ることが可能となる。なぜなら、発電機の回転速度が、ネットワークが要求する周波数を提供するのに十分でない場合でさえ、発電機によって生み出される電力をネットワークに供給できるからである。
【0034】
本発明によるタービンが発電機に接続され、そして水力発電設備において使用される場合、水源(水の流れのない部分)および放出された水(蓄積段階のもと潮流動作によって露出させられる部分)との間には、かなりの差が生じ得る。だが、水力発電設備によって生み出された電力は、水源と放出された水との間の高さの差に直接依存する。いま定速発電機を備えたタービンが使用される場合、この発電機は、水頭(水源と放出された水との間の高さの差)が発電機にとって必要な回転速度を実現するときだけ採用可能である。
【0035】
(後続のインバーターを備えた)本発明に基づく可変速度発電機はまた、所要の回転速度よりも低い回転速度で、すなわち異なる出力レベルでも運転することができる。したがって、本発明に基づくタービンはまた、タービンの回転速度が、さもなければ要求される回転速度を下回ったときでも運転可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 タービンブレード
3 ハブ
4 ローター
5 支持ブレード
6 案内機構
10 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを発生させるための水力発電設備用のタービンであって、
ローター(4)および複数のタービンブレード(1)と、
貫流方向に前記ローターの後方に配置されかつ前記タービンの支持機構として機能する複数の支持ブレード(5)を有する案内機構(6)であって、前記支持ブレード(5)が前記貫流方向に対して傾斜した状態で配置された案内機構(6)と、を具備してなり、
前記ローター(4)の前記タービンブレード(1)のピッチ角は可変となっており、かつ
前記タービンブレード(1)が貫流方向に実質的に前記タービンによって乱されていない流入流れを得るよう、前記タービンは上流側ロータータービンの形態であることを特徴とするタービン。
【請求項2】
前記ローター(4)は、前記ブレード(1)を前記ローター(4)に対して結合するための半球状ハブ(3)を有していることを特徴とする請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記ブレード(1)は、前記ハブ(3)に対して、確実なロッキング関係で結合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタービン。
【請求項4】
前記タービンブレード(1)の前記ピッチ角は、−20°ないし140°の間で調整可能であるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタービン。
【請求項5】
前記タービンは流路内に配置されてなると共に、前記案内機構(6)は前記流路内で前記ローター(4)を支持するようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタービン。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の少なくとも一つのタービンを備えた水力発電設備。
【請求項7】
電気エネルギーを発生させるための発電機をさらに具備してなり、前記発電機は前記タービンに対して変速機を介さずに接続されていることを特徴とする請求項6に記載の水力発電設備。
【請求項8】
前記発電機は回転速度が可変となっていることを特徴とする請求項6に記載の水力発電設備。
【請求項9】
前記発電機の出力電圧を整流するための整流器と、一方では前記整流器に対してかつ他方ではネットワーク接続部に対して接続されたインバーターとをさらに具備してなり、前記インバーターは、前記ネットワークが要求する周波数で、前記ネットワークに対して電力を供給する役割を果たすようになっていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の水力発電設備。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公開番号】特開2011−102592(P2011−102592A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16287(P2011−16287)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【分割の表示】特願2008−518767(P2008−518767)の分割
【原出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】