説明

水性バインダー組成物

本発明は、(a)モノマー構成単位としてC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物またはその混合物を含有する少なくとも1つのエマルジョンポリマー(b)5000〜40000Daの質量平均分子量を有する少なくとも1つの水溶性アルキド樹脂、ならびに(c)水性エマルジョンの形において100000Daより大きい質量平均分子量を有する少なくとも1つのアルキド樹脂を含有する水性バインダー組成物であって、(a)、(b)および(c)からの混合物の固体含有率が60質量%より小さいことを特徴とする水性バインダー組成物、ならびにその使用および製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料中の成分として、殊に高光沢塗料(高光沢ワニス(Hochglanzlacke))のために使用することができる水性バインダー組成物に関する。
【0002】
通常、塗料のためのバインダーは、2つのグループに分類されうる:溶媒含有系または溶媒または分散媒として水を有する系。
【0003】
第一のグループには、なかでもアルキドバインダーの大部分が含まれ;第二のグループには、なかでもアクリレート分散液が含まれる。
【0004】
目下のところ、第一のグループは世界政策上の理由から非難にさらされており、それゆえ低い割合の揮発性有機化合物(VOC含量)を有する、水をベースとする系への切り替えが望ましいとされる。
【0005】
EP1382663は、水乳化性もしくは水希釈性の生成物を開示する。水希釈性油またはアルキド樹脂は、環状オレフィン系不飽和無水物と反応させられる。
【0006】
EP874875は、水ベースのハイブリッドバインダー組成物、ならびに着色混合物またはラッカー混合物中での成分としてのそれらの使用を開示し、その際、ハイブリッドバインダー組成物は、60〜95質量%の乾燥含有率を有する。
【0007】
DE3427647は、水性樹脂と水不溶性の樹脂粒子とからの水性コーティング材料を開示し、その際、水性樹脂対水不溶性の樹脂粒子の固体質量比は、99/1〜40/60である。開示されたコーティング材料は、焼付ワニス(Einbrennlacke)として使用される。
【0008】
しかし、従来技術のこれらの組成物は、それらが光沢および表面平滑性に関して所望された要求に応えないという欠点を有する。
【0009】
それゆえ、本発明の課題は、塗料のための、殊に高光沢ワニスのための水性バインダー組成物を開発することにあって、ならびにその製造および、高い隠ぺい力を同時に示しながら非常に高い光沢および低い光沢曇り(Glanzschleier)によって際立つその配合物であった。
【0010】
本発明に従って、該課題は、
a)モノマー構成単位としてC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物またはその混合物を含有する少なくとも1つのエマルジョンポリマー
b)5000〜40000Daの質量平均分子量を有する少なくとも1つの水溶性アルキド樹脂、ならびに
c)水性エマルジョンの形において100000Daより大きい質量平均分子量を有する少なくとも1つのアルキド樹脂を含有し、(a)、(b)および(c)からの混合物の固体含有率が60質量%より小さいことを特徴とする、水性バインダー組成物によって解決された。
【0011】
さらに、有利なエマルジョンポリマーは、一般式I
【化1】

[式中、Rは、H原子またはメチル基であり、Rは、H原子または、C原子1〜20個を有する脂肪族または芳香族の炭化水素基であり、かつnは、3〜15の整数およびとりわけ有利には4〜12の整数である]の化合物を含有する。
【0012】
有利には、エマルジョンコポリマー(a)は全体的に、
a)C〜C−アルキル(メタ)アクリレート、炭素原子20個までを有するビニル芳香族化合物から選択される主モノマー40〜99.5質量%、
b)式IまたはIIのモノマー0.5〜30質量%、
c)さらなるモノマー0〜50質量%
からなる。
【0013】
とりわけ有利には、エマルジョンコポリマーは、
a)主モノマー50〜98質量%、
b)式IまたはIIのモノマー2〜20質量%および
c)さらなるモノマー0〜40質量%
からなる。
【0014】
極めて有利には、エマルジョンコポリマーは、
a)主モノマー60〜97質量%
b)式IまたはIIのモノマー3〜15質量%および
c)さらなるモノマー0〜30質量%
からなる。
【0015】
主モノマーとして挙げられるべきものは、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−、イソ−またはt−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0016】
殊に、アルキル(メタ)アクリレートの混合物も適している。
【0017】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンおよび有利にはスチレンが考慮に入れられる。
【0018】
有利な主モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、殊にC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物、殊にスチレンおよび前述のモノマーの混合物である。
【0019】
さらなるモノマーは、例えばヒドロキシル基を含有するモノマー、殊にC〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エチレン系不飽和酸、殊にカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸またはイタコン酸、およびそれらの無水物、ジカルボン酸およびそれらの無水物または半エステル、例えばマレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸である。
【0020】
有利には、エマルジョンポリマーは、50℃より小さい、有利には40℃より小さい、とりわけ有利には30℃より小さいガラス転移温度Tgを有する。
【0021】
ガラス転移温度Tは、この場合、ASTM D 3418−82に準拠した示差熱分析(DSC)によって測定された"中点温度"と理解される(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Volume A21, VCH Weinheim 1992, p.169ならびにZosel, Farbe und Lack 82 (1976), pp.125-134を比較のこと、同様にDIN53765も参照のこと)。
【0022】
フォックスに従って(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 4 Auflage, Band 19, Weinheim (1980), pp. 17, 18)、ガラス転移温度Tを推断することができる。低度にもしくは架橋されなかった混合ポリマーのガラス転移温度に関して、高いモル質量において次の良好な近似が適用される:
【数1】

【0023】
[式中、X,X,・・・,Xは、質量分率1,2,・・・,nであり、かつT,T,・・・,Tは、そのつどモノマー1,2,・・・,nの1つから単に構成されたポリマーのケルビン単位でのガラス転移温度を意味する]。後者は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, 5th Edition, Weinheim, Vol. A 21 (1992) p.169またはJ.Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook 3rd Edition, J. Wiley, New York 1989から公知である。
【0024】
エマルジョンポリマー(a)の体積平均粒度(G. R. McGowan, M. A. Langhorst, J. Coll. And Interface Sci. 89, 1 (1982) 92-104に記載された流体学的分別(Hydrodynamischer Fraktionierung)(HDF)に従う)は、<500nm、有利には<200nmおよびとりわけ有利には<100nmである。
【0025】
アルキド樹脂は、乾性油、脂肪酸等でエステル化されているポリエステルと理解される(U. Poth, Polyester und Alkydharze, Vincentz Network 2005)。
【0026】
アルキド樹脂(b)は、場合により中和後に、水希釈性の、十分に高い酸価、有利には30〜65mg KOH/gアルキド樹脂固体、および>5000〜<40000Da、有利には>8000〜<35000Daおよびとりわけ有利には>10000〜<35000Daの質量平均分子量を有するアルキド樹脂をベースとするアルキド樹脂溶液と理解される。
【0027】
アルキド樹脂(c)は、体積平均粒度(流体力学的分別に従う)<200nm、有利には<100nmおよび質量平均分子量>100000Da、殊に>500000Daを有する水性アルキドエマルジョンである。
【0028】
成分(c)は、有機溶剤中、例えばTHF(テトラヒドロフラン)中に完全に溶け、また室温では造膜性である。
【0029】
アルキド樹脂(b)は、例えば製品WorleeSol(登録商標) 61 A、WorleeSol(登録商標) 61 E、WorleeSol(登録商標) 65 A、Synthalat(登録商標) W 46またはSynthalat(登録商標) W 48と理解される。有利には、Synthalat(登録商標) W 46またはSynthalat(登録商標) W 48が使用される。
【0030】
成分(c)は、例えばアルキド樹脂WorleeSol(登録商標) E 150 Wと理解される。
【0031】
エマルジョンコポリマーの製造は、公知の仕方でエマルジョン重合によって行われうる。
【0032】
通常、エマルジョン重合の場合、イオン性および/または非イオン性の乳化剤および/または保護コロイドもしくは安定剤が界面活性化合物として使用される。
【0033】
適した保護コロイドの詳細な記載は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Band XIV/1, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, pp.411-420に見られる。乳化剤として、アニオン性、カチオン性のみならず非イオン性の乳化剤も考慮に入れられる。有利には、随伴する界面活性物質として、その分子量が保護コロイドとは異なり通常2000g/モル未満である乳化剤がもっぱら使用される。当然の事ながら、界面活性剤物質の混合物が使用される場合、個々の成分は互いに相溶性でなければならず、このことは、疑わしい場合には、わずかな予備試験を手がかりにして検査することができる。有利には、アニオン性および非イオン性の乳化剤が界面活性物質として使用される。慣例の随伴する乳化剤は、例えばエトキシル化脂肪アルコール(EO単位:3〜50、アルキル基;C〜C36)、エトキシル化モノ−、ジ−およびトリ−アルキルフェノール(EO単位:3〜50、アルキル基C〜C)、スルホコハク酸のジアルキルエステルのアルカリ金属塩ならびにアルキルスルフェート(アルキル基C〜C12)の、エトキシル化アルカノール(EO単位:4〜30、アルキル基:C12〜C18)の、エトキシル化アルキルフェノール(EO単位:3〜50、アルキル基:C〜C)の、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)の、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C〜C18)のおよびエトキシル化脂肪アルコールのスルフェートのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0034】
適した乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Band 14/1, Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961, pp. 192-208にも見られる。
【0035】
通常、界面活性物質は、重合されるべき全てのモノマーに対して0.1〜10質量%の量で使用される。
【0036】
エマルジョン重合のための水溶性開始剤は、例えばペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素または有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0037】
適しているのは、殊に、いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系である。
【0038】
レドックス開始剤系は、少なくとも1つのたいてい無機還元剤と無機酸化剤または有機酸化剤とからなる。
【0039】
酸化成分は、例えば、すでに前で挙げられたエマルジョン重合のための開始剤である。
【0040】
還元成分は、例えば、亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族アルデヒドおよびケトンの重亜硫酸付加化合物、例えば重亜硫酸アセトンまたは還元剤、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸およびその塩、またはアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、金属性成分が複数の原子化状態で挙動しうる可溶性金属化合物の併用下で使用することができる。
【0041】
通例のレドックス開始剤系は、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/Na−ヒドロキシメタンスルフィン酸である。個々の成分、例えば還元成分は、混合物であってもよく、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとからの混合物であってもよい。
【0042】
一般的に、開始剤の量は、重合されるべき全てのモノマーに対して0.1〜10質量%、有利には0.1〜5質量%である。エマルジョン重合に際して、複数の別の開始剤も使用されうる。
【0043】
エマルジョン重合は、一般に30〜150℃で、有利には50〜95℃で行われる。重合媒体は、水のみからでも、水およびそれと混合可能な液体、例えばメタノールとからの混合物からなってもよい。有利には、水のみが使用される。エマルジョン重合は、バッチプロセスのみならず、段階方式または勾配方式を含めた供給法の形でも実施することができる。有利なのは、重合出発物質の一部またはポリマーシードも装入し、重合温度に加熱し、部分的に重合し、引き続き重合出発物質の残部を、通常、その1つ以上がモノマーを純粋な形でまたは乳化された形で含有する、複数の空間的に分離された供給流を介して、連続的に、段階的にまたは濃度勾配の重ね合わせ下で重合を維持しながら重合帯域に供給する供給法である。
【0044】
開始剤をラジカル水性エマルジョン重合の過程で重合容器に添加する方法は、平均的な当業者に公知である。それは完全に重合容器中に装入してもよいし、ラジカル水性エマルジョン重合の過程におけるその消費に応じて連続的にまたは段階的にセットしてもよい。個々に、これは、開始剤系の化学的性質のみならず、重合温度にも依存する。有利には、一部が装入され、残部は重合帯域の消費に応じて供給される。
【0045】
残留モノマーを除去するために、実際のエマルジョン重合の終了後にも、すなわち、少なくとも95%のモノマーの変換後にも開始剤を添加してよい。通常、レドックス系が使用される。引き続き、物理的脱臭も実施してよい。
【0046】
ポリマー分散液に対して、通常20〜70質量%、有利には40〜60質量%のポリマー含有率(固体含有率)を有する水性ポリマー分散液が得られる。
【0047】
ポリマー(a)は、成分(b)および(c)と一緒に、個々にまたはプレミックスして、バインダー組成物として着色混合物またはワニス混合物中に加えられる。
【0048】
成分(b)の割合(全バインダー固体に対してアルキド樹脂固体を算出)は、10から35%の間に、有利には18から25%の間にある。成分(a)対成分(c)の比は、1:9から9:1の間に、有利には3:7から7:3の間に、殊に有利には4:6から6:4の間にある。
【0049】
添加−光開始剤の付加または乾燥促進によって、表面架橋を発生させることができる。
【0050】
光開始剤として、日光によって活性化されるもの、例えばベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体が考慮に入れられる。乾燥促進のために、例えばCoまたはMnをベースとする、水性アルキド樹脂のために推奨される金属化合物が適している(U. Poth, p.183fに概要)。
【0051】
塗料は、さらに顔料を含有する。顔料として、ひとまとめにして、全ての顔料および充填剤、例えば着色顔料、白色顔料および無機充填剤が示される。
【0052】
無機白色顔料、例えば、有利にはルチル型の二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)または有色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒、マンガン紫、パリブルーまたはシュバインフルト緑(Schweinfurter Gruen)が挙げられる。無機顔料の他に、本発明による分散着色剤は、有機着色顔料、例えばセピア、ガンボージ、カッセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノイド染料およびインジゴ染料ならびにジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料および金属錯体顔料を含有してもよい。
【0053】
光散乱を高めるために空気包有物を有する合成白色顔料も使用してよい。例は、RhopaqueTM−分散液である。
【0054】
例えば、適した充填剤は、アルミノケイ酸塩、例えば長石、ケイ酸塩、例えばカオリン、タルク、雲母、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(例えばカルサイトまたはチョークの形の)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等である。当然の事ながら、塗料中では微細粒の充填剤が有利である。充填剤は、個々の成分として使用してもよい。しかしながら、実際には、充填剤混合物、例えば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクがとりわけ適していることが示された。本発明による光沢のある塗料に関して、場合によっては少量の非常に微細粒の充填剤が許容されうる。有利には、充填剤の使用は省かれる。
【0055】
顔料の割合は、顔料体積濃度(PVK)、すなわち、顔料の体積対乾燥された塗料の全体積からの商によって表される。本発明による高光沢ワニスは、12〜35%、有利には15〜30%の範囲のPVKを有する。
【0056】
本発明による水性塗料は、ポリマーと顔料の他にさらに助剤も含有してよい。
【0057】
通常の助剤には、重合に際して使用される乳化剤の他に、湿潤剤または分散剤、例えばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムまたはポリリン酸アンモニウム、アクリル酸コポリマーまたは無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ポリホスホネート、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウムならびにナフタリンスルホン酸塩、殊にそのナトリウム塩が含まれる。
【0058】
さらに、レベリング剤、抑泡剤、殺虫剤、および増粘剤が挙げられる。
【0059】
増粘剤として考慮に入れられるのは、例えば会合性増粘剤である。有利な会合性増粘剤は、ポリウレタン増粘剤である。増粘剤の量は、塗料に対する増粘剤固体が、有利には1質量%未満、とりわけ有利には0.6質量%未満である。
【0060】
本発明による塗料の製造は、公知の仕方で、このために通常の混合装置中での成分の混合によって行われる。顔料、水および場合により助剤から水性のペーストまたは分散液を準備し、その後に初めてポリマーバインダー、すなわち、一般にポリマーの水性分散液を顔料ペーストもしくは顔料分散液と混合することが適していることが示された。
【0061】
本発明による塗料は、不揮発性成分を、一般に30〜75質量%および有利には40〜65質量%含有する。これは、水ではないが、少なくともしかし、バインダー固体、顔料および助剤固体の全量である、配合物の全成分と理解されるべきである。揮発性成分は、主として水である。
【0062】
有利には、塗料は高光沢塗料である。
【0063】
塗料の光沢の測定は、DIN67530に従って行われる:塗料は、240μmのギャップ幅でガラス板上に塗布され、かつ72時間のあいだ室温で乾燥される。試験体は、較正された反射率計に取り付けられ、かつ定義された入射角にて、投げ返された光がどの程度まで反射したのか、または散乱したのかが確かめられる。出された反射率計値は、光沢の度合である(値が高ければ高いほど、それだけますます光沢は高くなる)。
【0064】
高光沢ワニスの光沢は、有利には20゜では60より大きく、かつ60゜では80より大きい。
【0065】
反射率計値は23゜にて測定され、かつ入射角に依存して、例えば20゜では40と無次元で示される。
【0066】
本発明による塗料は、通常の仕方で、例えば刷毛塗布、噴霧、浸漬、ロール塗布、ドクターブレード塗布等によって基材上に塗布することができる。
【0067】
有利には、それは建築塗料として、すなわち、建築物または建築物部材の被覆のために使用される。基材は、鉱物性の下地、例えば下塗り、セッコウまたはセッコウボード、組積造またはコンクリート、木質材料、金属または紙、例えば壁紙またはプラスチック、例えばPVCであってもよい。
【0068】
本発明による塗料は、取り扱いが簡単なこと、良好な加工特性、高い隠ぺい力およびなかでも高い光沢によって際立つ。塗料は有害物質に乏しい。使用される処理装置は、容易に水で洗浄されうる。
【0069】
実施例
分散液I
計量供給装置および温度調節を備え付けた重合容器中に、
装入物:
水528.0g
33%の固体含有率および30nmの平均粒度を有するポリスチレンシード分散液46.7gおよび
ラウリル硫酸ナトリウムの15%の水溶液3.67g
を装入し、かつ攪拌下で85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流2の5%を添加し、かつ5分攪拌した。その後、供給流1を180分で計量供給し、かつそれと並行して供給流2の残量を195分で計量供給した。
【0070】
供給流1:
水543.2g
ラウリル硫酸ナトリウムの15%の水溶液125.4g
n−ブチルアクリレート458.0g
メチルメタクリレート399.6g
スチレン165.1g
メタクリル酸22.78g
ウレイドメタクリレート21.45g
Bisomer MPEG 350 MA 33.0g(Laporte Performance Chemicals社 UK)
供給流2:
水83.6g
ペルオキソ二硫酸ナトリウム4.4g。
【0071】
供給流1が終了したら、水22gを添加した;供給流2が終了したら、引き続き30分、後重合し、かつアンモニア7.47g(25%の水溶液として)で中和した。その後、過酸化水素13.2g(5%の水溶液として)を添加し、かつ水4.96g中のアスコルビン酸0.557gの溶液を60分で計量供給した。
【0072】
引き続き、分散液を冷却し、かつ125μmのフィルターを介して濾過した。46%の分散液2.48kgが得られた。
【0073】
分散液II
計量供給装置および温度調節を備え付けた重合容器中に、
装入物:
水286g
33%の固体含有率および30nmの平均粒度を有するポリスチレンシード分散液47.7g
を装入し、かつ攪拌下で82℃に加熱した。この温度で、供給流2の25%を添加し、かつさらに5分攪拌した。その後、供給流1および供給流2の残量を、82℃を維持しながら180分で計量供給した。
【0074】
供給流1:
水519g
脂肪アルコールエトキシレート55.0g、エトキシル化度 約30(20%の水溶液として)
ナトリウム−C1214−アルキルポリグリコールエーテルスルフェート73.3g、エトキシル化度 約30(30%の水溶液として)
アクリルアミド37.4g(50%の水溶液として)
アクリル酸32.9g
スチレン503g
n−ブチルアクリレート545g
供給流2:
水29.2g
ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.2g。
【0075】
供給した後、水32gを添加し、かつさらに15分重合した。引き続き、アンモニア7.95g(25%の水溶液として)を添加し、かつ供給流3および4を並行して60分で計量供給した。
【0076】
供給流3:
t−ブチルヒドロペルオキシド11.1g(10%の水溶液として)
供給流4:
水33.1g
アスコルビン酸0.684g。
【0077】
次いで、過酸化水素9.5g(5%の水溶液として)、アンモニア13.4g(25%の水溶液として)および水6.1gを添加し、かつそれを80℃にて60分、後攪拌した。引き続き、分散液を冷却し、かつ125μmのフィルターを介して濾過分離した。50.5%の分散液2300gが得られた。
【0078】
水性ワニス中で使用されるハイブリッドを、以下のように製造した:
ハイブリッドI
WorleeSol(登録商標) E 150 27.5gからの装入物に、攪拌下で分散液I27.5gを加えた。
【0079】
ハイブリッドII
Synthalat(登録商標) W 46 16.9gからの装入物に、攪拌下でハイブリッドI55gを加える。
【0080】
ハイブリッドIII
WorleeSol(登録商標) E 150 W 41.2gからの装入物に、攪拌下で分散液I13.8gを加える。
【0081】
ハイブリッドIV
WorleeSol(登録商標) E 150 W 13.8gからの装入物に、攪拌下で分散液I41.2gを加える。
【0082】
ハイブリッドV
WorleeSol(登録商標) E 150 W 5.5gからの装入物に、攪拌下で分散液I49.5gを加える。
【0083】
ハイブリッドVI
WorleeSol(登録商標) E 150 W 27.5gからの装入物に、攪拌下で、40%に希釈された分散液II27.5gを加える。
【0084】
ハイブリッドVII
Synthalat(登録商標) AEM 700 TC 27.5gからの装入物に、攪拌下で分散液I27.5gを加える。
【0085】
ハイブリッドの成分およびそれ以外の実施例の中で使用したバインダーは、製造元および特性が付記された後続の表中で一覧表示されている。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
水性ワニスの製造
個々の成分(製造元証明 第1表および第2表を参照のこと)を、以下の表中で記載された量(質量部)および順序で、歯付きディスク攪拌機(Zahnscheibenruehrer)による攪拌下で計量供給した。二酸化チタン顔料の添加後に回転数を2000rpmに高め、かつ顔料ペーストが滑らかになるまで、すなわち、小塊がなくなるまで分散した。次いで、必要な場合には、室温に冷却させ、かつ回転数を減少させた状態で残りの成分を添加した。
【0089】
水性ワニスの試験
水性ワニスを、粘度(2つのせん断速度にて)および光沢の測定によって特性決定した。そのために、箱型ドクターブレード(Kastenrakel)(ギャップ高さ240μm)を用いてガラス板上に延ばし、かつ標準雰囲気(23℃、相対湿度50%)において3日間、乾燥させた。視覚的な光沢印象(Glanzeindruck)を表すために、DINに従う光沢および光沢曇り(ヘイズ)を測定した。光沢曇りは、拡散反射の度合であり、それは物体の反射に際してワニス表面において乳白色の反射像として認められうる。高光沢の表面は、殊により感度の高い20゜の幾何学的配置における高い光沢値および低いヘイズ値によって際立つ。
【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
実施例1〜5は、本発明による水性ワニスにより、溶剤をベースとするアルキド樹脂ワニス(例えばGlasurit(登録商標) EA)の光沢レベルが達成されることを示す。市販の分散ワニス(例えばGlasurit(登録商標) 白色塗料、水希釈性)の光沢レベルをはるかに凌いでいる。その際、3つの主要なバインダー成分を、部分的に、または例4のように完全にプレミックスして使用してもよい。
【0093】
【表5】

【0094】
例6〜9では、アルキドエマルジョン対アクリレート分散液の比を変えた。アルキドエマルジョンの割合が減少すると、光沢値はより低くなり、かつなかでもヘイズ(光沢曇り)が高まるという結果になった。
【0095】
例10では、アクリレート成分の分散液Iを分散液IIで代用した。これによっても高い光沢が達成されたが、しかしヘイズは、ハイブリッドIを用いた時のようにすっかり低いといわけではなかった。分散液IIだけ(例11)では、すなわち、アルキドエマルジョンなしでは、ヘイズはさらに上昇した。
【0096】
【表6】

【0097】
比較例12〜14は、本発明によらないアルキド成分の影響をはっきりと示す:3つの全ての場合において、低い光沢値および極端に高いヘイズが結果生じた。ワニスは、視覚的にもかろうじて絹糸光沢が現れていただけか、またはそれどころか絹糸光沢は現れなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)モノマー構成単位としてC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物またはその混合物を含有する少なくとも1つのエマルジョンポリマー
b)5000〜40000Daの質量平均分子量を有する少なくとも1つの水溶性アルキド樹脂、ならびに
c)水性エマルジョンの形において100000Daより大きい質量平均分子量を有する少なくとも1つのアルキド樹脂を含有する水性バインダー組成物であって、(a)、(b)および(c)からの混合物の固体含有率が60質量%より小さいことを特徴とする、水性バインダー組成物。
【請求項2】
アルキド樹脂(b)が、30〜65mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1記載の水性バインダー組成物。
【請求項3】
ビニル芳香族化合物が、ビニルトルエン、α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンまたはスチレンの群から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性バインダー組成物。
【請求項4】
〜C−アルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレートまたはt−ブチルアクリレート、エチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートの群またはその混合物から選択されていることを特徴とする、請求項3記載の水性バインダー組成物。
【請求項5】
エマルジョンポリマー(a)が、
(i)式I
【化1】

[式中、Rは、H原子またはメチル基であり、Rは、H原子またはC原子1〜20個を有する脂肪族または芳香族の炭化水素基であり、かつnは、3〜15の整数である]のモノマーまたはその混合物3〜15質量%を含有し、
(ii)C〜C−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物またはそれらの混合物40〜97質量%および
(iii)さらなるモノマー0〜50質量%を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項6】
がC〜C−アルキル基であることを特徴とする、請求項5記載の水性バインダー組成物。
【請求項7】
エマルジョンコポリマー(a)のガラス転移温度が50℃より小さいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項8】
成分(b)が、Synthalat(登録商標) W 46またはSynthalat(登録商標) W 48であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項9】
成分(c)が、WorleeSol(登録商標) E 150 Wであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項10】
成分(c)の体積平均粒度が<200nmであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項11】
成分(a)の体積平均粒度が<500nmであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項12】
全バインダーに対する成分(b)の割合が10〜35%である(全バインダー固体に対してアルキド樹脂固体を算出)ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項13】
成分(c)対成分(a)の比が1:9〜9:1である(エマルジョンポリマー固体に対してアルキド樹脂固体を算出)ことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の水性バインダー組成物。
【請求項14】
塗料中での成分としての、請求項1から13までのいずれか1項記載のバインダー組成物の使用。
【請求項15】
高光沢ワニス中の成分としての、請求項1から13までのいずれか1項記載のバインダー組成物の使用。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項記載のバインダー組成物を含有する塗料。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項記載の成分(a)、(b)および(c)が個々にまたは混合物として使用されることを特徴とする、請求項16記載の塗料。
【請求項18】
20゜(゜は入射角)において60より大きい光沢を有する高光沢ワニスであることを特徴とする、請求項16または17記載の塗料。

【公表番号】特表2009−511730(P2009−511730A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536413(P2008−536413)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067063
【国際公開番号】WO2007/042449
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】