説明

水性ポリアクリル酸溶液の製造方法

本発明は、少なくとも1種の水溶性開始剤および少なくとも1種の水溶性調節剤の存在下において、水性溶媒中のアクリル酸を、場合により水溶性モノエチレン系不飽和コモノマーと共にラジカル重合(radical polymerization)することによりアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの水溶液を製造する方法であって、この場合、前記重合が連続法によって行われ、また、重合後に得られた水性ポリマー溶液から低分子量成分が少なくとも部分的に分離される、前記方法に関する。重合に関して、好ましくは、マイクロ構造化ミキサーおよびリアクターを使用する。本方法には、好ましくは、マイクロ構造を有する少なくとも1機のリアクターおよび/またはミキサーを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の水溶性開始剤および少なくとも1種の水溶性調節剤の存在下において、水性溶媒中のアクリル酸を、場合により水溶性モノエチレン系不飽和コモノマーと共にラジカル重合(free-radical polymerization)することによりアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの水溶液を調製する方法であって、この場合、前記重合が連続法により行われ、またこの場合、重合後、得られたポリマー水溶液から低分子量成分が少なくとも部分的に除去される、前記方法に関する。本発明の好ましい実施形態においては、マイクロ構造を備えた少なくとも1機のリアクターおよび/またはミキサーが本方法で用いられる。
【背景技術】
【0002】
モル質量Mnが比較的小さいポリアクリル酸またはポリアクリル酸コポリマーは、特に炭酸カルシウム粒子に対する分散助剤および/または粉砕助剤として使用可能であることが知られている。通常、水性炭酸カルシウム懸濁液は、粉砕助剤としてポリカルボン酸塩を使用し、炭酸カルシウムの湿式粉砕により調製される。こうした炭酸カルシウム懸濁液は、製紙工業および塗料工業において賦形剤および白色顔料として使用されている。粉砕顔料は、良好な実施特性のために高微粉度であることが必要とされるが、それは非常に短い粉砕時間内に達成されなければならない。さらに、顔料懸濁液は、粉砕工程とさらなる処理工程との間に数日間の滞留時間が発生することが多いため、良好な保存安定性を有していなければならず、しかも、当該懸濁液はその期間の間中、ポンプによる汲み上げが可能でなければならない。
【0003】
EP 313 483 A1には、石灰用粉砕助剤として、平均分子量が200〜1900g/molのポリ(メタ)アクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーを使用することが開示されている。
【0004】
DE 36 20 149 A1には、水溶性メルカプタンを使用するポリ(メタ)アクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーの調製、および分散助剤としてのその使用が開示されている。それらの実施例には、数平均分子量Mnが770g/mol〜18,000g/molのポリアクリル酸が記載されている。
【0005】
US 6,395,813 B1には、重量平均分子量Mwが2000g/mol〜5800g/molのホスホネート終端ポリアクリル酸が開示されている。
【0006】
DE 103 11 617 A1には、炭酸カルシウムを湿式粉砕する際の補助剤として、重量平均分子量Mwが5000g/mol〜30,000g/molのポリアクリル酸を使用すること、またその場合、前記ポリアクリル酸が少なくとも2個の炭素原子を含む含硫黄有機末端基を有することが開示されている。
【0007】
US 4,509,987およびUS 5,317,053には、粒径が2μm未満の炭酸カルシウム粒子の水中分散剤が開示されている。使用される分散助剤は、AMPSと分子量が1000〜20,000g/molの少なくとも25重量%のアクリル酸のコポリマーである。
【0008】
例えば、J. Loiseauら、Macromolecules 2003, 36, 3066-3077により開示されているように、分散助剤として使用するためのポリアクリル酸が制御されたラジカル重合に関する方法により調製可能であることは、既に公知である。こうしたポリアクリル酸には、従来法で調製したポリアクリル酸に比べると、より良好な分散特性がある。
【0009】
US 2004/0097674および当該出願人の先行出願EP 2182 011 A1には、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)重合により調製可能なポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーが開示されている。比較的低分子量の水性ポリアクリル酸溶液を調製するためのRAFT重合に関する欠点の一つには、重合で使用するRAFT助剤のコストが比較的高いということがある。その理由は、RAFT助剤は触媒ではなく、その代わりに、ポリマー分子へ化学量的に加えられるためである。したがって、比較的低分子量というのは、必然的に、RAFT助剤が比較的多量で、ある場合にはアクリル酸に対し数重量パーセントで、使用されなければならないことを意味する。その上、含硫黄RAFT助剤は、ポリアクリル酸溶液に容認し難い悪臭をもたらす。このため、RAFT群は、使用前のさらなる製造工程で非活性化されなければならない。例えば、これは、煩雑かつコスト高であるアミンとの反応によるか、過酸化水素またはオゾンとの酸化により行うことが可能である。
【0010】
したがって、分散助剤として良好な特性を有する、低分子量のポリアクリル酸を低コストで調製する方法が依然として必要とされている。
【0011】
ポリマー水溶液または分散剤は、それらがラジカル重合によって調製された後に、ならびに所望のポリマーもまた、強烈な臭気により注目を集める好ましくない割合の有機成分が含まれる可能性があり、材料上の観点から(例えば、健康状態に有毒または有害であるという理由、あるいは所望の用途において悪影響をもたらすという理由から)好ましくない。こうした成分は、使用する調節剤、例えばメルカプタンであり得る。このため、こうした成分は、典型的には、ポリマー溶液または分散剤の使用前に除去される。
【0012】
容認し難い臭気の原因となり得るこうした揮発性低分子量成分を除去するため、ポリマー溶液または分散剤に、脱臭目的の後処理を施すことができることは周知である。これには化学的脱臭を挙げることができるが、その場合、悪影響を及ぼし得る成分は、例えば酸化剤で処理され、化学的に変換される。しかしまた、後処理は物理的脱臭であってもよく、その場合、揮発性成分は物理的方法により除去される。当業者に公知の物理的方法には、例えば、DE 1 248 943、DE 196 21 027 A1、DE 197 16 373 A1またはEP 967 232 A1により開示されているような水蒸気ストリッピング、あるいは、例えば、US 5,055,197またはEP 1 024 150 A1により開示されているような限外濾過が含まれる。
【0013】
EP 097 495 A1には、閉鎖循環系のリアクターを使用する、少なくとも70%のアクリル酸を含む水溶性ポリマーを調製するための連続法が開示されている。この循環系はミキサーが含まれており、その中でモノマー、開始剤および調節剤が水溶性ポリマーを含む循環混合物と混合される。その混合物は、熱交換器を通って流通し、重合する。重合後、形成されたポリマー溶液の一部は循環系から回収され、循環系中の残りのポリマー溶液は、循環系内で前述のミキサーへ流通を継続する。そのミキサー内で、モノマー、開始剤および調節剤が再度、循環モノマー溶液に供給される。
【0014】
本出願人に関する先行出願のWO 2009/133 186 A1には、反応領域および混合領域がマイクロ構造を有するリアクターを用いる、ラジカル重合によるポリマーの連続的調製法が開示されている。この重合においては、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマー、開始剤および調節剤が使用される。反応生産物には、後処理、例えば後重合、脱臭または中和を実施することができる。その実施例には、数平均分子量Mnが2900g/mol〜4900g/molで、多分散性Mw/Mnが1.9〜2.3のポリアクリル酸の調製方法の使用と、炭酸カルシウム分散剤を調製するためのその使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】EP 313 483 A1
【特許文献2】DE 36 20 149 A1
【特許文献3】US 6,395,813 B1
【特許文献4】DE 103 11 617 A1
【特許文献5】US 4,509,987
【特許文献6】US 5,317,053
【特許文献7】US 2004/0097674
【特許文献8】EP 2182 011 A1
【特許文献9】DE 1 248 943
【特許文献10】DE 196 21 027 A1
【特許文献11】DE 197 16 373 A1
【特許文献12】EP 967 232 A1
【特許文献13】US 5,055,197
【特許文献14】EP 1 024 150 A1
【特許文献15】EP 097 495 A1
【特許文献16】WO 2009/133 186 A1
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】J. Loiseauら、Macromolecules 2003, 36, 3066-3077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、炭酸カルシウム粒子分散剤用の助剤として使用する水性ポリアクリル酸溶液を調製するための低コストで改善された方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、少なくとも1種の水溶性開始剤および少なくとも1種の水溶性調節剤の存在下において、水性溶媒中のアクリル酸を、場合により水溶性モノエチレン系不飽和コモノマーと共にラジカル重合(free-radical polymerization)することによりアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの水溶液を調製する方法であって、この場合、
・ アクリル酸の量は、モノマーを全て合わせた総量に対して少なくとも50重量%であり、
・ ホモポリマーまたはコポリマーの数平均モル質量Mnは、1000g/mol〜20,000g/molであり、
前記方法が、少なくとも下記の工程、すなわち:
(Ia) 少なくとも1機のミキサーを含む混合ユニットへ反応物質および水を連続的に定量供給し、混合ユニット中の反応物質を温度TMで混合する工程と、
(Ia) 得られた水性反応混合物を、10℃〜200℃の範囲の温度Ttargetの温度調節媒体により温度が調節される少なくとも1つの反応領域を通過させることで連続的ラジカル重合を行なう工程であって、
反応混合物が反応領域の(流通方向に見て)第1の領域で加熱され、
その加熱領域を通過した後に、温度Ttargetと前記加熱領域の下流にある反応領域の任意の場所の実際温度TRとの間の温度差ΔT、│TR−Ttarget│が50≦Kであるが、ただし、Ttargetは混合温度TMよりも高いことを条件とする、前記工程
とを含んでなる連続法により重合を行うことを含み、
またここで、重合後、さらなる製造工程(II)において、得られた水性ポリマー溶液からモル質量Mnが≦1000g/molの低分子量成分が少なくとも部分的に除去される、
前記方法に関する。
【0019】
本重合は、好ましくは、マイクロ構造化ミキサー(microstructured mixers)およびリアクターを使用して実施する。Ttargetは、好ましくは、TMよりも少なくとも10K高い。
【0020】
除去しようとする低分子量成分は、特に、調節剤の残留物、アクリル酸から形成されるモノマーおよびオリゴマーの残留物、ならびにさらなる全てのモノマーである。本発明の好ましい実施形態においては、低分子量成分は、水性ポリマー溶液から蒸気によるストリッピングまたは限外濾過による除去される。
【0021】
驚いたことに、ポリアクリル酸の連続調製と低分子量成分の除去との組み合わせは、水性ポリマー溶液の臭気を有意に低減するだけでなく、さらには、無機顔料懸濁液(好ましくは炭酸カルシウム懸濁液)の調製で使用する場合に極めて良好な特性を有するポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーをもたらすことを見い出した。本発明に従って調製されるポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーは、ポリアクリル酸を使用する場合(その場合、揮発成分は酸化剤を使用して分解されるが、酸化生成物がポリマー溶液に残る)に比べ、粘性が有意に低い顔料懸濁液(特に炭酸カルシウム懸濁液)を得るために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本方法を実施するための好ましい装置を示す概略図である。
【図2】反応領域内の反応温度TRの代表的なプロットを示す概略図である。
【図3】さらなる成分を反応領域へ定量添加した場合における反応領域内の反応温度TRの代表的なプロファイルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関して、下記に明確に述べることができる。
【0024】
本発明による方法は、少なくとも2つの製造工程を含む。第1の製造工程(I)においては、アクリル酸と任意のさらなる水溶性コモノマーが連続法によりラジカル重合され、製造工程(I)は少なくとも2つの構成工程(Ia)および(Ib)、詳細には、出発物質の混合とそれ自体の重合を含む。さらなる(連続式またはバッチ式の)製造工程(II)においては、得られたアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーの溶液から低分子量成分が少なくとも部分的に除去される。本方法は、もちろん、場合によりさらなる製造工程または構成工程を含んでいてもよい。
【0025】
使用する出発物質
アクリル酸を、場合によりさらなるコポリマーと共に重合するのは水性溶媒中で実施する。
【0026】
本発明の明細書における「水性溶液」および「水性溶媒」という用語は、使用する溶媒が本質的に水であることを意味するものとする。これは、他の水混和性溶媒が少量存在することを除外するものではない。さらなる溶媒は、例えば、メタノール、エタノールまたはプロパノールなどのアルコールであってもよい。しかし一般的には、水の量は、溶媒を全て合わせた総量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%とすべきである。特に好ましいのは、溶媒としての水の単独使用である。しかし、とは言っても、本方法が、重合後に副反応による少量のアルコールが水性溶媒中に存在し得ることを除外するものではない。
【0027】
本発明によれば、アクリル酸に加えて、場合により、さらなる水溶性モノエチレン系不飽和コモノマーを本ポリマーの合成に使用することもできるが、そのアクリル酸の量はモノマーを全て合わせた総量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは95重量%であり、最も好ましくは、モノマーとしてのアクリル酸の単独使用である。
【0028】
コモノマーを使用することで、アクリル酸ポリマーの特性を変化させることができる。好適なモノエチレン系不飽和コモノマーの例には、酸性基を有する別のモノマー、例えばメタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸または無水マレイン酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、水溶性(メタ)アクリル酸誘導体、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルホルムアミド、アルカリ金属(3-メタクリロイルオキシ)プロパンスルホネート、ジメチルアミノエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノメタクリレートまたはポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0029】
アクリル酸および任意の酸性コモノマーは、遊離酸の形態で、あるいは完全にまたは部分的に中和された形態で使用することができる。
【0030】
本発明によれば、ラジカル重合は少なくとも1種の水溶性調節剤の存在下で行なわれる。ラジカル重合に好適な調節剤は当業者に公知であり、所望するポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーの特性によって適切に選択される。本明細書における「水溶性」という用語は、調節剤が少なくとも所望の使用濃度で水中に溶解し得ることを意味する。また、2種以上の調節剤の混合物を使用することができることも十分に理解されよう。
【0031】
調節剤は、好ましくは、重合に使用するモノマーの全重量に対して0.05〜25重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%の量で用いる。
【0032】
水溶性調節剤は、好ましくは、含硫黄または含リン水溶性調節剤、とりわけメルカプタンまたは次亜リン酸塩、特に含硫黄水溶性調節剤である。
【0033】
例えば、この種の化合物は、無機の亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩および次亜硫酸塩、または有機の硫化物、二硫化物、ポリ硫化物、スルホキシドおよびスルホンである。これらとしては、ジ-n-ブチルスルフィド、ジ-n-オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、ジイソプロピルジスルフィド、ジ-n-ブチルジスルフィド、ジ-n-ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジエタノールスルフィド、ジ-t-ブチルトリスルフィド、ジメチルスルホキシド、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィドおよび/またはジアリールスルフィドが挙げられる。
【0034】
好ましい調節剤は、単官能性、二官能性および多官能性のメルカプタン、メルカプトアルコールおよび/またはメルカプトカルボン酸である。これらの化合物の例は、アリルチオグリコレート、システイン、2-メルカプトエタノール、1,3-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、1,4-メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、チオ酢酸、チオ尿素およびアルキルメルカプタン、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタンまたはn-ドデシルメルカプタンなどである。
【0035】
結合形態に2個の硫黄原子を含む二官能性調節剤の例は、二官能性チオール、例えば、ジメルカプトプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプト-1-プロパノール、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトペンタン、ジメルカプトヘキサン、エチレングリコールビスチオグリコレートおよびブタンジオールビスチオグリコレートである。多官能性調節剤の例は、結合形態に3個以上の硫黄原子を含む化合物である。それらの例は、三官能性および/または四官能性メルカプタンである。
【0036】
調節剤として使用可能なリン化合物の例には、リン酸塩、リン酸水素塩、亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの塩が含まれ、特に亜リン酸塩および/または次亜リン酸塩である。
【0037】
本発明の実施に関して特に好ましいのは、メルカプトエタノール、亜硫酸水素ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムである。
【0038】
本発明によれば、少なくとも1種の水溶性開始剤または水溶性開始剤系が追加的に用いられる。この目的において有用であるのは、基本的に、エチレン系不飽和モノマーのラジカル重合で公知であって、しかもラジカル重合を熱的に開始することができる、全ての水溶性開始剤である。好適な水溶性開始剤は基本的に当業者に公知であり、所望の反応条件に従って適切に選択される。特に、所望の重合温度で適切な半減期を有する熱開始剤の選択に関心が向けられる。また、異なる開始剤の混合物を使用することができることも理解されよう。
【0039】
開始剤の量は、典型的には、重合するモノマーの総量に対して0.1〜20重量%、特に0.2〜10重量%、とりわけ0.5〜5重量%である。
【0040】
好適な熱開始剤には、特に、有機または無機過酸化物系の開始剤、アゾ開始剤またはレドックス開始剤系が含まれる。好適な重合開始剤の詳細例を以下に明示する。
【0041】
過酸化化合物:これら化合物としては、例えば、有機ペルオキシドおよびヒドロペルオキシド類、例えば、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、カプロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシオクトエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド;無機ペルオキシド類、例えば、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸およびそれらの塩、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸カリウムが挙げられる。
【0042】
アゾ化合物:これら化合物としては、例えば、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェート二水和物、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、または4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)が挙げられる。
【0043】
レドックス開始剤:これは、酸化剤、例えば、ペルオキソ二硫酸の塩、過酸化水素、または有機ペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド、および還元剤を含む開始剤系を意味するものと理解されたい。還元剤として、これらは、好ましくは、特に亜硫酸水素ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、およびアセトンへの亜硫酸水素塩付加物から選択される硫黄化合物を含む。さらに好適な還元剤は窒素化合物およびリン化合物であり、例えば、亜リン酸、次亜リン酸塩およびホスフィン酸塩、ジ-tert-ブチル次亜硝酸塩およびジクミル次亜硝酸塩、ならびにヒドラジンまたはヒドラジン水和物およびアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、さらに、少量のレドックス金属塩、例えば、鉄塩、バナジウム塩、銅塩、クロム塩またはマンガン塩、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウムレドックス開始剤系の添加を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の実施に関して特に好ましいのは、ナトリウムペルオキソジサルフェート、カリウムペルオキソジサルフェート、アンモニウムペルオキソジサルフェート、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェート二水和物、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、または2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパンである。
【0045】
使用する装置
本発明によれば、ラジカル重合は連続法によって行なわれる。本方法においては、製造工程(Ia)で、まず、使用する出発物質群を相互に連続的に混合させ、次いで、製造工程(Ib)で連続的に重合させる。混合および重合に関し、マイクロ構造を有する少なくとも1機のミキサーとマイクロ構造を有する少なくとも1機のリアクターが本発明においていずれの場合にも好ましく用いられる。
【0046】
マイクロ構造を有する装置は、その特徴的寸法により従来の装置とは異なる。流通装置(flow device)、例えば、ミキサーまたはリアクターの特徴的寸法は、本発明の内容においては、流通方向に対して直角方向の最小の大きさを意味するものと理解する。マイクロ装置の特徴的寸法は、従来の装置に比べると有意に小さい。その寸法は、特に、マイクロメートル〜ミリメートルの範囲であってよい。このため、マイクロ装置は、従来のリアクターと比べると、熱および進行する物質移動プロセスに関して、有意に異なる挙動を示す。表面積とリアクター容量の比が大きくなることによって、例えば、極めて良好な熱の供給および排出が可能となり、それによってまた、実質的に等温で高吸熱または高発熱反応を実施することが可能である。
【0047】
ミキサー:
本発明によれば、反応物質および水は、少なくとも1機のミキサーを含む混合装置中で互いに連続的に混合される。これには反応物質および水の流体を混合装置へ導入することが含まれており、水性反応混合物の流体が得られ、これが下流の重合装置で重合される。また、多数のミキサーを組み合わせて使用することができることは理解されよう。これらミキサーは、下記に指定した製造パラメーターがそのように確認できる限り、原則的に、マイクロ構造を有するミキサーであってもよいし、マイクロ構造を持たないミキサーであってもよい。
【0048】
本発明の明細書における「従来の」ミキサーとは、下記に定義したような、マイクロ構造を有していないミキサーを意味する。マイクロ構造を有していない適切なミキサーの例は、従来の動的ミキサー、例えば、混合ポンプおよび連続流通撹拌タンクと、パイプラインへ組み込まれた混合装置、例えば、バッフル、リストリクター、ジェットミキサー、TおよびYピース、ならびに静的ミキサーである。
【0049】
従来のミキサーは、それらの特徴的寸法によってマイクロ構造を有するミキサーとは異なる。流通装置(例えばミキサー)の特徴的寸法は、本発明の明細書においては、流通方向に対して直角方向の最小の大きさを意味するものと理解する。マイクロミキサーの特徴的寸法は従来のミキサーに比べると有意に小さく、通常、マイクロメートル〜ミリメートルの範囲である。
【0050】
従来のミキサーは10mmを超える混合に必要な範囲内の特徴的寸法を有しているが、それに対し、マイクロ構造を有するミキサーは10mmを超えない。本発明に従って用いられるマイクロ構造を有するミキサーの特徴的寸法は、好ましくは1μm〜10,000μmの範囲、より好ましくは10μm〜5000μmの範囲、特に25μm〜4000μmの範囲である。最適な特徴的寸法は、本発明においては、混合の質と、混合装置の障害(blockage)の頻発傾向に対する要望から決定される。また、マイクロ構造を有するミキサーはマイクロミキサーともいう。
【0051】
好適なマイクロミキサーの例は次のとおりである:
I 静的ミキサー
1. 層流拡散ミキサー
a) 「カオス的層流」ミキサー、例えば、Tミキサー、Yミキサーまたはサイクロンミキサー
b) 多積層ミキサーまたはインターデジタルミキサー
2. 対流クロス混合を有する層流拡散ミキサー、例えば、成形混合チャンネルまたは二次構造を有するチャンネル
3. 分離・再結合ミキサー、例えば、キャタピラーミキサー
II 動的ミキサー、例えば、混合ポンプ
III これらの組み合わせ、あるいは、
IV 乱流ミキサー、
これらはそれぞれ、特徴的寸法に関する上記の条件を満たす。
【0052】
好適な実施形態においては、少なくとも1つの混合チャンネルを備えたマイクロ構造を有するミキサーが使用される。混合は、層流、層流−カオス、または乱流式であってもよい。
【0053】
本発明による好ましいマイクロミキサーについて、これ以降、詳細に説明する。
【0054】
層流拡散ミキサー内では、マイクロ構造中、厚さが10〜2000μm、とりわけ20〜1000μm、特に40〜500μmの範囲の多数の極微な小さな薄い流通の層へと広がった流体の副流が、主要な流通方向に対して直角方向の分子拡散のみによって混合される。ミキサーはフーリエ数Fo=τ/τ(これは、混合器内の滞留時間と、個々の流通の層の間の拡散時間との比である)によって設計することができる。拡散時間Tについては、
【数1】

【0055】
であり、式中、sは流通の層の厚さの半値[m]であり、Dは拡散係数[m2/sec]である。通常、この比は、ミキサーの出口における流体が確実に非常に良好に分子混合されるように、1よりも大きく、好ましくは2よりも大きく、さらに好ましくは3よりも大きく、特に4よりも大きくなるように選択する。
【0056】
カオス−層流拡散ミキサーは、単純なTミキサーまたはYミキサーとして、またはいわゆる多積層ミキサーとして構成されていてもよい。TミキサーまたはYミキサーの場合、混合される2つ(または3つ以上)の副流が、TまたはY形状の配列を通って個々のチャンネルに供給される。この場合、横方向の拡散距離SDiffにとって重要な因子は、チャンネル幅δである。100μm〜1mmの典型的なチャンネル幅によって、液体に関する通常の混合時間が数秒〜数分となる。液体を本方法の場合のように混合する場合、例えば、流通・誘起横混合(flow-induced transverse mixing)によって、追加的に混合操作を促進することが有利である。
【0057】
多積層ミキサーまたはインターデジタルミキサーの場合、混合する副流を分配器で多数の微細流スレッドに分配し、その後、分配器の出口で、混合領域の層に交互に供給する。液体に関しては、数秒の範囲の混合時間が、従来の多積層ミキサーで達成される。一部の用途の場合(例えば、高速反応の場合)、これは十分でないことから、幾何学的手段または流体力学的手段によって流通の層を再度追加的にさらに集束させることにより、基本原理を開発した。幾何学的集束は、混合領域内の狭細化(constriction)によって達成する。流体力学的集束は、主要流に向かって直角に流通する2つの側流によって達成され、それにより流通の層がさらに圧縮される。上述の集束によって流通の層の横方向の寸法を数ミクロンとすることが可能となり、その結果、液体であっても数十ミリ秒内に混合することができる。
【0058】
使用する対流交差混合(convective crossmixing)を備えた層流拡散ミキサーは、構造化壁(structured walls)を有するマイクロミキサーであってもよい。構造化壁を有するマイクロミキサーの場合、二次構造(溝または突起)はチャンネル壁に配置する。これらは、好ましくは、主要な流通方向に対して特定の角度(例えば、約30°〜90°の角度)で配置する。慣性力が支配的な流通条件の場合、結果として二次渦が形成され、これが混合工程を促進する。
【0059】
さらなる適切な実施の形態では、使用するマイクロ構造を有するミキサーは、分離・再結合ミキサー(split-recombine mixer)である。分離・再結合ミキサーは、流通の分離と結合の繰り返しから構成される段階が特徴的である。未混合の液体流の2つの領域(通常、これは、2つの同等規模の層から出発される)が、それぞれ1つの段階で互いに別々に送られ、いずれの場合にも、2つの新しい領域に分配され、さらに再度合わさる。4つの全領域が互いに交互に配置される結果、元々の幾何学的配置が再度設定される。これらのそれぞれの段階においては、したがって、層の数が段階ごとに2倍になり、それによって層の厚さと拡散距離が半分になる。
【0060】
好適な分離・再結合ミキサーは、IMM製のキャタピラーミキサーとBTS-Ehrfeld製のキャタピラーミキサーである。
【0061】
好適な動的ミキサーの例は、例えば、マイクロミキシングポンプである。
【0062】
好ましい静的マイクロミキサーの例は、特に以下の拡散ミキサーである:
・ 「カオス的層流」ミキサー、例えば、キャピラリー直径が非常に小さく、混合ポイントで100μm〜1500μmの範囲、好ましくは100μm〜800μmの範囲のTピースまたはYピース、およびサイクロンミキサー;
・ 多積層ミキサー、例えばLH2およびLH25スプリットプレートミキサー、またはEhrfeld製のより大きいタイプ、およびIMM製のSIMMおよびStarlam(登録商標)インターデジタルミキサー;
・ 積層の伸長流(superimposed expanded flow)を有する多積層原理によるマイクロミキサー、例えば、IMM製のSuperFocus Interdigital SFIMMマイクロ構造ミキサー。
【0063】
乱流ミキサーは液体噴流の乱流相互浸透の原理に基づいている。これらは、好適なノズルを介して液体を圧縮することで生成することができる自由液体噴流であってもよい。噴流が互いにぶつかり、それが混合を引き起こす。こうしたミキサーは「衝突噴流マイクロミキサー」としても知られている。またこの原理は、実施される噴流が合流点で乱流的に浸透するということであると言えよう。こうしたミキサーは、微細流路を有する多数のプレートからなり、該プレートは別の上部の一つに配置される。混合については、液体流はチャンネルによって多数の副流に分割され、それらの液体流はプレート上方または下方からの液体流とぶつかる。これが強烈な微細乱流を引き起こし、迅速かつ良好な混合が確実となる。こうしたミキサーの詳細は、例えば、WO 2005/018786 A1に開示されている。
【0064】
マイクロ構造を備えたミキサーの場合、これは必ずしも必要不可欠とは限らないが、粒状不純物による障害を防ぐために、ミキサーのマイクロ構造化部分の上流にフィルターを設けることが望ましい。
【0065】
本発明によれば、反応物質は、所望の反応温度Ttargetより低い温度TMで、さらに好ましくは、例えば室温で混合される。使用するミキサーは、所望の混合温度を維持するために、適切な温度調節媒体と接触させることもできる。こうすることで、形成された混合熱が効率的に除去される。この場合、混合スペース内の温度差と、温度調節媒体および混合スペース内の混合物との温度差は最小であるはずである。一般的に、混合スペース内のΔTは5K以下とすべきである。
【0066】
反応領域
本発明の明細書における反応領域とは、液体流の流通方向に見て、重合が進行するリアクターの区域を意味するものと理解される。反応領域はリアクターの一部に配置されてもよいし、リアクター全体に配置されていても、2個以上のリアクター内に設けられていてもよい。好ましい実施の形態では、各反応領域は個別のリアクター内に設定する。
【0067】
反応領域は、基本的には、下記に明示した製造パラメーターがそのように確認できる限り、マイクロ構造を有する反応領域であってもよいし、マイクロ構造を有していない反応領域であってもよい。
【0068】
好ましくは、重合のために、マイクロ構造を備えた少なくとも1つの反応領域を有する少なくとも1個のリアクターを使用する。また、マイクロ構造を備えた1つの反応領域を有するリアクターは、ここで、またこれ以降、マイクロ構造を備えたリアクター、マイクロ構造化リアクターまたはマイクロリアクターとも呼ぶ。マイクロ構造化リアクターは、流通方向に直角に、熱均一性を確実にするのに適している。原則として、それぞれの異なる容量要素が、本質的に、特定の流通断面に対して同一温度を有する。
【0069】
従来のリアクターおよびマイクロリアクターは、それらの特徴的寸法により、特にそれらの反応領域の特徴的寸法により異なる。本発明の明細書において、装置(例えば、リアクター)の特徴的寸法は、流通方向に対して直角方向での最も小さな大きさを意味するものと理解されたい。マイクロリアクターの反応領域の特徴的寸法は従来のリアクターの寸法に比べて有意に小さく、典型的には、数百ナノメーター〜数十ミリメーターの範囲である。ほとんどの場合、1μm〜30mmの範囲である。従って、マイクロリアクターは、従来のリアクターと比較すると、進行する熱および物質移動プロセスに関して有意に異なる挙動を示す。表面積とリアクター容量との比が大きくなることによって、例えば、極めて良好な熱の供給と排出が可能になる。これがまた、実質的に等温で高吸熱または高発熱反応を実施することができる理由でもある。
【0070】
従来のリアクターは、特徴的寸法が>30mmで、これに対してマイクロリアクターは≦30mmである。通常、マイクロ構造を備えたリアクターの反応領域の特徴的寸法は、最大で30mm、例えば0.1〜30mm、好ましくは0.2〜30mm、より好ましくは0.4〜30mmであり;好ましくは最大で20mm、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.2〜20mm、より好ましくは0.4〜20mmであり;より好ましくは最大で15mm、例えば0.1〜15mm、好ましくは0.2〜15mm、より好ましくは0.4〜15mmであり;さらにより好ましくは最大で10mm、例えば0.1〜10mm、好ましくは0.2〜10mm、より好ましくは0.4〜10mmであり;よりさらに好ましくは最大で8mm、例えば0.1〜8mm、好ましくは0.2〜8mm、より好ましくは0.4〜8mmであり;特に、最大で6mm、例えば0.1〜6mm、好ましくは0.2〜6mm、より好ましくは0.4〜6mmであり;とりわけ、最大で4mm、例えば0.1〜4mm、好ましくは0.2〜4mm、より好ましくは0.4〜4mmであり、より一層特に0.4〜3mmである。
【0071】
本発明に従って使用するマイクロリアクターは、好ましくは、温度制御可能な管型リアクター、管束熱交換器、プレート熱交換器、および内部構造を有する温度制御可能な管型リアクターから選択される。特徴的寸法として、本発明に従って使用するための管型リアクター、管束熱交換器およびプレート熱交換器は、好ましくは、管またはキャピラリーの直径が0.1mm〜25mmの範囲、より好ましくは0.5mm〜6mmの範囲、さらに好ましくは0.7〜4mmの範囲、特に0.8mm〜3mmの範囲であり、層の高さまたはチャンネルの幅は、好ましくは0.2mm〜10mm、より好ましくは0.2mm〜6mm、特に0.2〜4mmの範囲である。本発明に従って使用する内部構造を有する管型リアクターは、管の直径が5mm〜500mmの範囲、好ましくは8mm〜200mmの範囲、より好ましくは10mm〜100mmの範囲である。あるいは、本発明に従い、混合構造がはめ込まれたプレート装置に類似のフラットなチャンネルを使用することもできる。これらは、高さが1mm〜20mmの範囲、幅が10mm〜1000mmの範囲であり、特に10mm〜500mmの範囲である。場合により、管型リアクターは、温度調節チャンネルにより浸透される混合要素を含んでいてもよい。
【0072】
ここで、最適な特徴的寸法は、許容され得る反応の非等温性、許容され得る最大圧力降下、およびリアクターの詰まり傾向に対する要望から決定される。
【0073】
この場合のリアクターは、マイクロリアクターが極めて良好に温度調節媒体と接触されるように、極めて良好な熱伝達がマイクロ構造を備えた反応領域内の反応混合物と温度調節媒体との間で行われ得るように、実質的に等温な反応状況が可能であるように構成される。
【0074】
特に好ましいマイクロリアクターは次のとおりである:
・ キャピラリー、キャピラリーの束からなる管型リアクターで、管の断面が0.1〜25mm、好ましくは0.5〜6mm、より好ましくは0.7〜4mmであり、追加的な混合内部構造を有していても、有していなくてもよく、この場合、温度調節媒体は管またはキャピラリーの周囲を流通していてもよい;
・ 管型リアクターであって、熱担体がキャピラリー/管に導入され、その温度が調節される生成物が管の周囲に導入され、内部構造(混合要素)により均一化されるもの;
・ プレートリアクターであって、プレート熱交換器と同様に、絶縁された平行なチャンネル、チャンネルのネットワーク、または流通が中断する内部(ポスト)を備えた領域もしくは有さない領域、生成物と熱媒体を平行に導くか、交互に熱媒体と生成物層を有する層構造に導き、反応中、化学的および熱的な均一性が確実となるようにプレートで構成されたもの;ならびに、
・ 「フラットな」チャンネル構造を有するリアクターで、高さに関してのみ「マイクロ寸法」を有し、しかも実質的に要望通りに広く、その典型的な櫛型の内部構造が流通プロフィールの形成を妨げ、それにより滞留時間分布が狭くなる(これは、規定の反応および滞留時間にとって重要である)もの。
【0075】
本発明の好ましい実施の形態では、実質的に栓流(plug flow)の滞留時間特性を有する少なくとも1機のリアクターが使用される。管型リアクターに栓流が存在する場合、反応混合物の状態(例えば、温度、組成など)は流通方向に変動し得るが、反応混合物の状態は流通方向に対して直角な個々の断面において同一である。したがって、管に入る全体積要素は、リアクター内で同一滞留時間を有する。例えて言うと、液体流は、管を通って容易にスライドする栓の配列であるかのように、管を流通する。さらには、流通方向に対して直角方向への物質移動が強まることにより、交差混合が流通方向に対して直角方向の濃度勾配を補償し得る。
【0076】
通常の層流が、マイクロ構造を備えた装置を流通するにもかかわらず、こうして逆混合(backmixing)を防止することができる。またさらに、狭い滞留時間の分布が、理想的な流管の場合と同様に達成され得る。
【0077】
ボーデンスタイン数(Bodenstein number)は無次元パラメーターであり、対流と分散流との比を説明するものである(例えば、M. Baerns, H. Hofmann, A. Renken, Chemische Reaktionstechnik [Chemical Reaction Technology], Lehrbuch der Technischen Chemie [Textbook of Industrial Chemistry], volume 1, 2nd edition, p. 332 ff)。したがって、これは、系内の逆混合を特性決定する。
【数2】

【0078】
ここで、uは流速[ms-1]であり、Lはリアクターの長さ[m]であり、Daxは軸方向分散係数[m2h-1]である。
【0079】
ゼロのボーデンスタイン数は、理想的な連続撹拌槽内の完全な逆混合に相応する。これに対し、無限大のボーデンスタイン数は、理想的な流管を通過する連続的流通の場合のように、逆混合が全く無いことを意味する。
【0080】
キャピラリーリアクターにおいて、物質パラメーターと流通状態の関数として、長さと直径の比を調整することにより、所望の逆混合挙動を形成することができる。基礎となる計算方法は当業者に公知である(例えば、M. Baerns, H. Hofmann, A. Renken: Chemische Reaktionstechnik, Lehrbuch der Technischen Chemie, volume 1, 2nd edition, p. 339 ff)。極めて低い逆混合挙動を達成しようとする場合、上述したボーデンスタイン数は、好ましくは10を超えるように、より好ましくは20を超えるように、とりわけ50を超えるように選択する。100を超えるボーデンスタイン数については、キャピラリーリアクターは、実質的に栓流特性を有する。
【0081】
本発明に従って使用するミキサーとリアクターのための有利な材料は、低温の領域でオーステナイト系のステンレススチール、例えば、それぞれ一般にV4AおよびV2Aとして知られている1.4541または1.4571、ならびにUSタイプSS316およびSS317Tiであることが確認された。より高い温度と腐食条件下では、ポリエーテルエーテルケトンが同様に好適である。しかし、本発明に従って使用するためのミキサーおよびリアクターに、材料および/または対応するコーティング剤として耐腐食性のより強いHastelloy(登録商標)タイプ、ガラスまたはセラミックを、例えば、TiM3、Ni-PTFE、Ni-PFAなどを使用することもできる。
【0082】
マイクロ構造化反応領域を有するリアクターの場合、粒状不純物による詰まり状態を防止するため、反応領域のマイクロ構造化部分の上流にフィルターを備えるのが望ましいが、これは必ずしも必要不可欠ではない。
【0083】
重合にとって必要な温度まで反応混合物を加熱するため、また所望の重合温度を維持するために、各反応領域の温度は、温度Ttargetの温度調節媒体により調節される。これは、反応領域の(流通方向から見て)第1の領域において、反応混合物がミキサーから第1の反応領域へ流れ出た後の反応混合物の加熱を含む。そして、流通方向の下流に配置されている、第1の反応領域と可能であればさらなる反応領域の(流通方向から見て)第2の領域で、重合に十分な温度に到達した後に重合する。
【0084】
重合装置が複数の反応領域を有する場合、これらの反応領域は、同一または異なる温度Ttargetを有していてもよい。異なる目標温度(target temperature)の領域の温度は、言うまでもなく、異なる温度調節媒体によって調節されなければならない。同一温度の領域は、リアクターの構造に従って、同一または異なる温度調節媒体によって調節することができる。
【0085】
温度調節媒体は熱容量が十分に高く、集中的に循環され、十分な出力のサーモスタットユニットが設定されてなければならない。また、反応領域と温度調節媒体の間の熱伝達は、反応領域の温度分布が実質的に極めて均質であることが保証されるように、できるだけ良好でなければならない。
【0086】
この目的において、重合反応の発熱および特徴的反応時間に従い、熱交換面積と反応体積との比は、通常250m2/m3、好ましくは500m2/m3、より好ましくは1000m2/m3、特に2000m2/m3を超えるように選択されなければならない。さらに、反応媒体の部分に関する熱伝達係数は、通常、50W/m2K、好ましくは100W/m2K、より好ましくは200W/m2K、特に400W/m2Kを超えなければならない。
【0087】
リアクターおよび温度調節媒体に関する最低必要条件として、本発明によれば、反応領域内のそれぞれのポイントでの温度調節媒体のTtargetと加熱領域を通過した後の実際の反応温度TRの間の温度差ΔT、│TR − Ttarget│は≦50Kである。その温度差は、好ましくは≦20Kであり、さらに好ましくは≦10K、最も好ましくは≦5Kである。こうして、本反応は、実質的に定義され、調節された条件下で進行させることができる。
【0088】
主たる流通方向に対して直角方向での反応媒体中の流通断面における最大温度差は、選択する重合パラメーターに依存する。流通断面における最大温度差は、好ましくは15K未満、より好ましくは10K未満、最も好ましくは5K未満である。
【0089】
体積特定熱伝達面積と熱伝達係数の積を決定するためには、以下の関係式を使用することができる:
【数3】

【0090】
式中、
αは熱伝達係数[W/m2K]であり、
A/Vは体積特定熱伝達面積[m2/m3]であり、
ΔHは反応エンタルピー[J/kg]であり、
ΔTは反応媒体中の許容し得る最大の温度偏差[K]であり、
ρは反応混合物中のモノマーの部分濃度[kg/m3]であり、
Δtは特徴的反応時間[s]である。
【0091】
好ましい重合装置
ラジカル重合に使用される装置は、ミキサーおよびリアクターの他に、慣用の構成要素、例えば、反応槽、生成物槽、定量装置およびそれぞれの装置部分の結合部をさらに含む。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、装置は次のもの含む:
・ 液体出発物質用の少なくとも2機の貯蔵槽、
・ 少なくとも2機の貯蔵槽からの液体流に対するそれぞれ1つの供給口、
・ 直列に接続されている1機または複数のミキサー(これに液体流が供給され、この中でそれらが混合されて反応混合物が得られる)であって、1つまたは複数の反応領域へ入る前の少なくとも流通方向に対して最後のミキサーが好ましくはマイクロ構造を装備しているもの、
・ 少なくとも1つの反応領域であって、好ましくはマイクロ構造を備えた反応領域、
・ 場合により1機または複数の添加装置および/または混合装置が備えられている出力槽。
【0093】
本発明の第2の実施形態では、装置は次のものを含む:
・ 液体出発物質用の少なくとも3機の貯蔵槽、
・ 少なくとも3機の貯蔵槽からの液体流に対するそれぞれ1つの供給口、
・ 直列に接続されている1機または複数のミキサー(これに液体流が供給され、この中でそれらが混合されて反応混合物が得られる)であって、1つまたは複数の反応領域へ入る前の少なくとも流通方向に対して最後のミキサーが好ましくはマイクロ構造を装備しているもの、
・ 少なくとも1つの反応領域であって、好ましくはマイクロ構造を備えた反応領域、
・ 場合により1機または複数の添加装置および/または混合装置が備えられている出力槽。
【0094】
さらに好適な実施形態では、装置は2つの反応領域を含み、それらのうちの少なくとも1つはマイクロ構造を有するが、好ましくは両方有する。
【0095】
同じく好適な実施形態では、本装置は、反応領域の下流に配置され、かつ流通方向に対して下流に少なくとも1つのさらなる反応領域が続く、液体モノマー流通に関する少なくとも1種のさらなる供給口(feed)を有する。
【0096】
好適な構造においては、この装置は、液体添加物流通に関する少なくとも1つのさらなる供給口を有しており、それは流通方向の最終反応領域の下流に配置される。
【0097】
この装置のさらに好適な構造においては、供給されるさらなる液体流と供給口が接続されている反応領域からの産出物がマイクロ構造を備えたミキサーへ導入され、そこで混合される。
【0098】
重合方法:
本発明によれば、重合するための連続法は、次に記載の少なくとも2つの工程、すなわち、具体的には、
(Ia) 少なくとも1機のミキサーを含む混合ユニットにおける反応物質と水の連続混合、および
(Ib) 少なくとも1つの反応領域での得られる反応混合物の連続的なラジカル重合、
を含む。
【0099】
製造工程(Ia)
工程(Ia)においては、少なくともアクリル酸、水、開始剤および少なくとも1種の調節剤が互いに連続的に混合される。また、さらなる成分(例えば、さらなるコモノマーまたはさらなる溶媒)が、同様に、製造工程(Ia)で別の成分と混合され得ることは十分に理解されよう。一般的に、反応物質は水溶液の形態で使用されるが、実質的に液体出発物質、例えばアクリル酸または液体調節剤を使用することが考えられる。通常、水は個別に定量供給されず、その代りに水は反応物質の水溶液の形態で定量供給される。しかし、追加の個別の流体に水を定量供給することが考えられることはまた十分に理解されよう。
【0100】
反応物質および調製済み混合物または溶液は、適切な貯蔵槽に保管可能であり、混合に関しては、水を含む反応物質の少なくとも2種の液体流がミキサーへ定量供給される。少なくとも2つの液体流の間の反応物質の分布については、成分が互いに悪影響を及ぼさない限り、当業者によって試みることができる。より詳しくは、開始剤を含む流体は調節剤も含むべきではない。
【0101】
好ましくは、少なくとも3つの液体流が相互に、詳しくは、アクリル酸含有流体、開始剤含有流体および調節剤含有流体が混合される。
【0102】
この場合、好ましくは、少なくともアクリル酸および開始剤は、それぞれ、別々に水と混合される。同様に、調節剤は水中に溶解させることができるが、場合により、追加の溶媒を用いることなく使用することができる。3つの液体成分はそれぞれ、連続流体として混合装置へ定量供給される。
【0103】
混合は1機のミキサーのみで一段階で達成することができるが、複数のミキサーを保有する混合装置を使用することもできる。この場合、例えば、第1のミキサーにより2つの流体を混合し、得られた混合物を第2のミキサーで第3の液体流と混合させることができる。本発明の好ましい実施形態では、アクリル酸含有流体、好ましくはアクリル酸・水混合物と、開始剤含有流体、好ましくは開始剤の水溶液を互いに混合させることができ、得られた水性混合物を第2のミキサーで調節剤含有流体、好ましくは調節剤の水溶液と混合することができる。
【0104】
使用するミキサーは従来のミキサーであっても、マイクロ構造を備えたミキサーであってもよい。両タイプのミキサーと詳細な実施形態は既に記載している。使用するミキサーの少なくとも1つは、好ましくはマイクロ構造を備えたミキサーであり、より好ましくは、使用される全てのミキサーがマイクロ構造を備えたミキサーである。別の好ましい実施形態では、液体流は2つ以上の段階で、すなわち、複数のミキサーを備えた1つの混合装置を使用して混合される。その場合には、1つまたは複数の反応領域へ入る前の流通方向における少なくとも最後のミキサーは、マイクロ構造を備えたミキサーである。
【0105】
しかし、ミキサーのタイプに関係なく、本発明によれば、混合温度TMは、確実に下流の製造工程(Ib)の目標温度Ttarget未満であるようにしなければならない。混合スペースのTMが均質ではないが特定の空間分布を有する場合、TMは混合スペースに存在する最高温度を意味する。
【0106】
さらに、混合温度は、混合領域において有意な変換がないようにすべきであり、ポリアクリル酸の形成は、代りに、少なくとも1つの反応領域で所望の温度でのみ行なわれる。混合領域内でのアクリル酸の変換は、一般に<2%、好ましくは<1%とすべきである。
【0107】
TtargetとTMの差は好ましくは≧10K、好ましくは≧20K、最も好ましくは≧30Kである。さらに、混合温度は、好ましくは10〜30℃、さらに好ましくはほぼ室温(18〜22℃)にしなければならない。
【0108】
混合ユニットまたはそれぞれのミキサー内の混合物の温度は、必要に応じて、ミキサーと接触している温度調節媒体により確実に行う必要がある。それらの特性により、熱交換は、マイクロ構造を備えたミキサーで特に良好であり、その結果、形成される全ての混合熱を急速に除去することができる。
【0109】
反応混合物中のモノマーの濃度は、好ましくは、ポリアクリル酸溶液が所望の濃度で得られ、使用に向けて濃縮する必要がないようにすべきである。一般的に、反応混合物中のアクリル酸濃度と場合によりさらなるモノマーの濃度は、反応混合物の全成分に対して10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%である。調節剤および開始剤の好ましい量は、既に冒頭で述べた。
【0110】
製造工程(Ib)
混合後、水性反応混合物の流体は、少なくとも1つの反応領域を通って連続的に通過し、そこでは、アクリル酸および場合によりさらなるエチレン系不飽和コモノマーがラジカルメカニズムにより重合する。
【0111】
本発明における反応領域の温度は、温度Ttargetの温度調節媒体により調節される。温度調節媒体の詳細は既に概説した。反応混合物が第1の反応領域へミキサーから流出した後、混合物は、反応領域の(流通方向に見て)第1の領域で加熱され、重合に十分な温度に到達した後に、第1反応領域の領域および場合によりさらなる反応領域のそれらの下流にある(流通方向に見て)第2の領域で重合する。
【0112】
本発明において、Ttargetは10℃〜200℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃、最も好ましくは60℃〜130℃、例えば80℃〜120℃の範囲である。Ttargetは所望の重合条件に従って当業者により選択され、例えば、選択する開始剤の性質、流速またはリアクターのタイプによって導かれる。
【0113】
重合中の典型的な温度プロフィールを図2に概略的に示す。x軸(「長さ」)は、流通方向における反応領域の広がりを意味する。反応混合物は、温度Ttargetの温度調節媒体によってその温度が調節されている反応領域へ温度TMで流通する。Ttargetは所望の重合温度に調節される。反応混合物は、それがリアクターの第1の領域を流通するにつれて、温度調節媒体により加熱される。加熱中は、まだなお重合はないか、少なくとも本質的に重合はない。重合に十分な温度に達した後に、すなわち、開始剤が有意な速度で分解する温度から、重合は開始される。発熱性重合の結果、反応混合物の実際の温度TRはTtargetよりも上昇し、そこで低温の温度調節媒体によって冷却される。その結果、温度TR(流通方向からみて)は徐々に再びTtargetに近づく。加熱領域と実際の重合領域の間の移行は、言うまでもなく流体である。おおよその推察においては、実際の反応領域の開始は、TRが加熱の間に(下記に定義したような)Ttarget−ΔTの値を超えるその時点であると考えることができる。
【0114】
本発明によれば、加熱領域を通過する流通後、加熱領域下流の反応領域における任意のポイントのTtargetと実際の反応温度TRの間の温度差ΔT、│TR−Ttarget│は、≦50K、好ましくは≦20K、さらに好ましくは≦10K、最も好ましくは≦5Kである。したがって、温度は、反応混合物の加熱後、すなわち実際の重合中に、常に、範囲Ttarget +/- ΔTの範囲内で変化する。温度調節媒体は並流で行うこともできるし、反応媒体に向流で行うこともできる。
【0115】
反応領域内の滞留時間tRは、一般に、5秒〜30分、好ましくは10秒〜15分、特に1/2分〜10分である。
【0116】
重合装置に複数の反応領域がある場合、これらの反応領域の温度は、同一または異なる目標温度Ttargetに調節することができる。異なるTtargetの領域は、もちろん、異なる温度調節媒体によって調節することができる。同じ温度の領域は、リアクターの構造に従って、同一温度調節媒体によって調節可能であるか、異なる温度調節媒体によって調節することができる。
【0117】
重合の間の圧力は、広い範囲で変えることができる。反応混合物が反応領域を通って押し進められ得る少なくとも十分な高圧が用いられ、反応領域の流通抵抗、従って必要な圧力は、反応領域の直径が小さくなると当然高まる。このため、特にマイクロ構造を有するリアクターの場合、これを考慮すべきである。同様に当然ながら、相当な気圧勾配がここで生じる可能性もある。反応領域での最小圧力は、不確定の滞留時間挙動の形成を伴う、コントロール不良な脱気を防止するために、モノマーおよび溶媒の蒸気圧よりも有意に高くなるように選択される。
【0118】
複数の反応領域が使用される場合、本発明の一実施形態においては、少なくとも2つの反応領域の間で少なくとも1つのさらなる液体流を混合することができる。これらは、例えば、モノマー含有流体、開始剤含有流体、溶媒含有流体、調節剤含有流体、それらの混合物および/または他のさらなる流体であってもよい。さらなる流体は、例えば、塩基水溶液であってもよく、それを用いることで、形成されるモノマーおよび/またはポリマーが完全にまたは部分的に中和され得る。
【0119】
好適な実施形態においては、追加の1種または複数の流体は、マイクロ構造を備えたミキサーを使用して混合される。同様に好適な実施形態においては、この追加流体の混合、またはこれらの追加の流体群の混合に関して、またさらなる反応に関して、少なくとも1機のリアクター、好ましくはミキサー機能を備えたリアクター、場合によりミキサー機能を備えたマイクロ構造化リアクターを使用する。
【0120】
さらなる定量供給の場合の典型的な温度プロフィールの一例を図3に示す。Ttargetより低温の追加流体が混合された後、温度はまずTtarget以下に下がり、次いで再度Ttargetに近づく。また、もちろん、他の温度プロフィール、例えば、温度はまず低下するが、その後、発熱反応によってTtargetを超え、次いで、再度Ttargetに近づくようなプロフィールも可能である。追加流体のタイプによって、定量供給された流体の注入口温度を、言うまでもなく、例えば、Ttargetに調節して、Ttargetからの有意な偏差が反応領域の定量供給部位でそれ以上生じないようにすることができる。
【0121】
残存モノマー含量が少ない非常に純粋なポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーを得るために、重合(主要重合)の後に、さらなる重合工程を行うことができる。さらなる重合は、主要重合と同じ開始剤系の存在下で、または主要重合とは異なる開始剤系の存在下で実施することができる。さらなる重合は、好ましくは、主要重合と少なくとも同じ温度で、好ましくは主要重合よりも高い温度で行われる。
【0122】
製造工程(II):低分子量成分の除去:
重合後のさらなる製造工程(II)において、低分子量成分が、好ましくは物理的方法または物理化学的方法により、得られたポリマー水溶液から少なくとも部分的に除去される。この製造工程は重合直後であってもよいか、水性ポリアクリル酸溶液をまず中間に貯蔵し、しばらく時間をおいて追加製造工程を実施することができる。低分子量成分の除去は、連続式またはバッチ式で行うことができる。
【0123】
低分子量成分は、モル質量≦1000g/mol、好ましくは≦500g/mol、特に≦300g/molの分子である。これらは調節剤の残留物、特に、調節剤として用いられる含硫黄調節剤の残留物、特に好ましくはメルカプタンであり得る。さらにこれらは、調節剤の分解生成物、例えば硫化水素またはそれらの変換生成物であり得る。低分子量成分のさらなる例としては、未重合モノマー、アクリル酸オリゴマーまたはポリマーフラグメントが含まれる。こうした低分子量成分は、例えば、それが不快臭を有するか、別の理由で生成物の使用に際し悪影響を及ぼし得るということから、最終生成物にとって極めて望ましくない可能性がある。
【0124】
しかし、「低分子量成分」という用語は、水または水との混合物中で場合により使用される有機溶媒は意味しないが、これは、水および/または溶媒の一部もまた除去経過中に除去され得るという可能性を除外するものではない。
【0125】
製造工程(II)は、特に、ポリアクリル酸の脱臭に用いることができる。「脱臭」は、当業者には、問題臭気の原因となり、かつ/または物質混合物の使用を妨げる物質混合物の揮発成分の除去および/または非活性化を意味することが理解されよう。
【0126】
低分子量成分の除去は、基本的には、任意の物理的または物理化学的分離方法によって実施することができる。こうした分離方法の例としては、蒸留による除去、水蒸気、不活性ガスまたは溶媒(液体−液体および液体−ガスの両方)を使用する抽出による除去、、吸収法(absorption)、クロマトグラフィー法または浸透圧法、例えば限外濾過が挙げられる。複数の除去方法を互いに組み合わせることが可能であることも十分に理解されよう。
【0127】
本発明の好ましい実施形態においては、低分子量成分の除去は、蒸気によるストリッピングによって行なわれる。当業者には、水蒸気ストリッピングについての好適な方法は公知である。例として、可能性のある実施形態に関して、DE 1 248 943、DE 196 21 027 A1、DE 197 16 373 A1またはEP 967 232 A1を参照されたい。
【0128】
水蒸気によるストリッピングの場合、水蒸気は、例えば、ポリマー水溶液を通過させることができる。そのために、ポリマー溶液は沸騰温度まで加熱することが可能であり、すなわち、加熱蒸気によって沸騰温度まで加熱され得る。一般に、通過させる水蒸気の量はポリマー水溶液の量に対して50〜1000重量%、好ましくは100〜500重量%である。水蒸気によるストリッピングは、例えばカラムで実施することもできる。水蒸気によるストリッピングは、一般には、0.1〜50bar、好ましくは0.2〜30bar、より好ましくは0.5〜10barの圧力で行われる。
【0129】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、低分子量成分の除去は限外濾過によって行なわれる。当業者には、限外濾過に適切な方法は公知である。可能な実施形態に関して、例として、US 5,055,197またはEP 1 024 150 A1を参照されたい。限外濾過については、Mnが≦1000g/molの物質を除去することができる膜を使用する。こうした膜は、当業者には公知である。限外濾過は、例えば、0.1〜50barの圧力で行うことができる。
【0130】
得られるポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマー:
得られるホモポリマーまたはアクリル酸のコポリマーは、好ましくは、1000g/mol〜20,000g/molの範囲、好ましくは1000g/mol〜10,000g/molの範囲、より好ましくは1000g/mol〜8000g/molの範囲の数平均分子量Mn(ゲル透過クロマトグラフィー、GPCによって測定可能;英語:サイズ排除クロマトグラフィー、水性溶媒中のSEC)を有する。またさらに、重量平均モル質量と数平均モル質量の比、Mw/Mnは、好ましくは≦2.5、さらに好ましくは≦2.2、最も好ましくは≦2.0である。
【0131】
水溶液中のホモポリマーまたはコポリマーの濃度は、典型的には、水溶液の全成分に対して10〜80重量%、好ましくは30〜55重量%、さらに好ましくは35〜52重量%である。これらは、好ましくは直ちに溶液の形態で処理される。
【0132】
得られた液状ポリマー組成物は、場合により、様々な乾燥方法、例えば噴霧乾燥、噴霧流動床、ローラー乾燥または真空凍結乾燥によって粉末形態に変換することができる。好ましいのは、噴霧乾燥の使用である。こうして得られた乾燥ポリマー粉末は、有利には、好適な溶媒に溶解させることにより再度ポリマー溶液に変換することができる。
【0133】
ポリマー溶液の使用:
本発明による方法によって調製されたアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーは、特に顔料用の分散剤として好適である。この目的においては、好ましいのは、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなどの無機顔料の使用である。特に好ましいのは、重質炭酸カルシウム(GCC)である。目的は、(顔料スラリーとして公知の)上記顔料の水系懸濁液剤の調製である。
【0134】
本発明による方法によって調製されたアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーは、より好ましくは、特に炭酸カルシウムの湿式粉砕用の粉砕助剤としての炭酸カルシウムスラリーの調製に使用することができる。
【0135】
炭酸カルシウムは天然の形態(例えば、石灰石、チョークまたは大理石など)であってもよいし、合成の形態(例えば、沈降炭酸カルシウムなど)であってもよい。
【0136】
粉砕は、水系懸濁液剤中で、連続式またはバッチ式で行われる。通常、この懸濁液における炭酸カルシウム含有量は≧50重量%、好ましくは≧60重量%、より好ましくは≧70重量%である。典型的には、いずれの場合にも懸濁液中に存在する炭酸カルシウムに対して、本発明に従い使用するためのポリアクリル酸を0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%で使用する。好ましくは、粉砕後のこれらの炭酸カルシウムスラリー中の粒子の95%は2μm未満の粒径を有し、粒子の75%は1μm未満の粒径を有する。この場合、分散および粉砕は特にエネルギー効率に優れており、顔料の均一な粒度分布を得ることができる。さらに、粉砕時間が短縮可能であり、得られる懸濁液は低粘性を有する。得られた炭酸カルシウムスラリーはレオロジー特性に優れており、24時間保存した後であっても、ポンプでのくみ出しが可能である。さらに、これらは長期間安定している。すなわち、時間に伴う粘性増加は極めて低い。
【0137】
本発明による方法によって調製したアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーを使用して調製された炭酸カルシウム懸濁液は、製紙業および塗料業における白色顔料として、また加熱可塑性樹脂の賦形剤として、優れた方法で使用することができる。所望により、これらは、使用前に、各種乾燥方法、例えば噴霧乾燥、ローラー乾燥またはパドル乾燥などによって粉末形態に変換することができる。
【0138】
しかし、得られたポリアクリル酸ホモポリマーまたはコポリマーは、もちろん、別の目的、例えば、洗浄組成物、食器用洗剤、水処理用のまたは油脂分野の化学物質としての工業用洗浄剤中で使用することもできる。
【0139】
本発明による連続法を実施するための好ましい装置:
これ以降、図1を参照して、連続式ラジカル重合を実施するための好ましい装置を詳細に説明する。参照番号は下記の意味を有する:
1 貯蔵槽
2 フィルター
3 場合によりマイクロ構造を備えたミキサー
4 貯蔵槽
5 フィルター
6 貯蔵槽
7 フィルター
8 マイクロ構造を備えたミキサー
9 温度調節可能なマイクロ構造化リアクター
10 温度調節可能で、場合によりマイクロ構造を備えたミキサー
11 温度調節可能で、場合によりマイクロ構造化されているリアクター
12 温度調節可能で、撹拌装置を備えた排出槽
13 低分子量成分を除去する装置。
【0140】
アクリル酸および水ならびに場合によりさらなるコモノマーの混合物は、慣用の定量供給装置および制御装置を備えた貯蔵槽1からフィルター2を通過させてミキサー3へ誘導される。ミキサー3は、場合によりマイクロ構造を備えたミキサーとして構成することができる。同様に、開始剤−水の混合物は、貯蔵槽4から慣用の定量供給装置および制御装置とフィルター5を通ってミキサー3に供給される。2種の液体流は、周囲温度で、ミキサー3中で混合される。
【0141】
ミキサー3から得られた混合物は、ミキサー8に供給される。同様に、調節剤は、貯蔵槽6から慣用の定量供給装置および制御装置とフィルター7を通ってミキサー8に供給される。ミキサー8はマイクロ構造を備えたミキサーとして構成される。2種の流体は、ミキサー8中、周囲温度で混合される。
【0142】
あるいは、この両方の混合操作は、1つの混合装置中で一緒に実施することができる(3+8)。
【0143】
ミキサー3および8、すなわち混合装置(3+8)は、下流側にマイクロ構造化リアクター9が連結されており、前記リアクターの温度は調節可能であり、実質的に一定の温度で、すなわち実質的に等温的に操作される。
【0144】
場合により、リアクター9の下流側には温度調節可能な第3のミキサー10が連結されており、添加剤、さらなる開始剤の溶液などが添加される。ミキサー10は、場合により、マイクロ構造を備えたミキサーとして構成されていてもよい。
【0145】
同様に、場合によっては、第3のミキサー10は、その下流側に温度調節可能なさらなるリアクター11を連結していてもよい。このリアクター11は、場合により、マイクロ構造化リアクターとして構成されていてもよい。
【0146】
次に、生成物は、任意に撹拌装置を備える温度調節可能な排出槽12へ通すことができる。ここで、場合によりさらなる添加剤を定量供給することができる。
【0147】
下流の装置13において、ポリマー溶液からの低分子量成分が少なくとも部分的に除去される。
【実施例】
【0148】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0149】
ポリアクリル酸の調製:
ポリマー1:
アクリル酸の水溶液(52重量%のアクリル酸)を、室温でマイクロミキサーを用いて、3重量%の水性開始剤溶液(2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド)と連続的に混合した。ここでアクリル酸溶液の流速は410g/hであり、開始剤溶液の流速は36g/hであった。続いて、得られた混合物を、室温で第2のマイクロミキサーを用いて、メルカプトエタノール(調節剤)の20重量%水溶液の43g/h流体と混合した。続いて、得られた反応混合物は、2機を直列接続した静的ミキサーリアクター(それぞれ、反応容量が約10mlでステンレススチール(1.4571)製であり、予め80℃に加熱したもの)を通して一定流速でポンプ輸送された。反応領域での反応混合物の滞留時間は約2.5分であった。次に、予め80℃に加熱された、内径が3mmで長さ10mのステンレススチール(1.4571)製の直列接続された反応キャピラリーにおいて、水酸化ナトリウム水溶液(50重量%)による中和を、72g/hの設定流速で行った。得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
【0150】
得られたポリアクリル酸溶液は、各種方法で後処理した。
【0151】
ポリマー2〜4:
アクリル酸の水溶液(約44重量%のアクリル酸)を、周囲温度でマイクロミキサーを用いて、3重量%の水性開始剤溶液(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)と連続的に混合した。ここでアクリル酸溶液の流速は570g/hであり、開始剤溶液の流速は84g/hであった。続いて、得られた混合物は、第2のマイクロミキサーを用いて、次亜リン酸ナトリウム(調節剤)の約59重量%水溶液の43g/h流体と室温で混合した。続いて、得られた反応混合物は、2機を直列接続した静的ミキサーリアクター(それぞれ、反応容量が約10mlでステンレススチール(1.4571)製であり、予め所望の実験温度に加熱したもの)を通して一定流速でポンプ輸送された。反応を終了するために、予め対応する実験温度まで加熱された、内径が3mmで長さ10mのステンレススチール(1.4571)製の直列接続された反応キャピラリーにおいて、得られた混合物をさらに反応させた。反応領域(さらなる反応領域を含む)での反応混合物の滞留時間は約3.5分であった。3つの実験は、80℃、100℃および120℃の反応温度で行った。得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
【0152】
ポリマー5:
第1反応領域の下流で定量供給する中間の開始剤
周囲温度でマイクロミキサーを混合した。ここでアクリル酸溶液の流速は570g/hであり、開始剤溶液の流速は84g/hであった。続いて、得られた混合物は、室温で、第2のマイクロミキサーを用いて、次亜リン酸ナトリウム(調節剤)の約59重量%水溶液の43g/h流体と混合した。続いて、得られた反応混合物は、2機を直列接続した静的ミキサーリアクター(それぞれ、反応容量が約10mlでステンレススチール(1.4571)製であり、予め所望の実験温度に加熱したもの)を通して一定流速でポンプ輸送された。さらに、2機の直列接続されている静的ミキサーリアクターの間で、3重量%の水性開始剤溶液(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)を42g/h流体で反応混合物へ定量供給した。反応を終了するため、予め対応する実験温度まで加熱された、内径が3mmで長さ10mのステンレススチール(1.4571)製の直列接続された反応キャピラリーにおいて、得られた混合物をさらに反応させた。得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
【0153】
ポリマー6:
従来のバッチ法によって調製された市販の水性ポリアクリル酸溶液。Mn=3950g/mol、Mw=8300g/mol、Mw/Mn=2.1。
【0154】
後処理:
方法1:過酸化水素による化学的後処理(比較)
まず、250mlの丸底フラスコに146gのポリマー1の水溶液を満たし、窒素大気下で油浴中90℃まで加熱した。その後、15gの過酸化水素の水溶液(50重量%)を加え、混合物を90℃で2時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。
【0155】
その際、ポリマー溶液の固形含量は40.4重量%であった;GPC分析は、数平均分子量Mnが3300g/molであり、重量平均分子量Mwが6500g/molであることを示した(Mw/Mn=2.0)。
【0156】
方法2:水蒸気ストリッピングによる物理的後処理
まず、500mlの丸底フラスコに100gのポリマー1の水溶液を満たし、これを油浴中で100℃まで加熱した。テフロンチューブを通して、1時間以内に大気圧で600gの水蒸気(100℃)をポリアクリル酸溶液へ通し、発生した蒸気を濃縮した。次に、ポリマー溶液を除去し、所望の固形含量(40%)をロータリーエバポレーターで得た。
【0157】
方法3:限外濾過による物理的後処理
膜(Roth-Zellutrans、幅45mm、長さ50cm、容量6.42ml/cm、MWCO:nominal 1000)を20分間脱イオン水中で軟化させ、次いで、すすいだ。100gのポリマー1の水溶液を密閉したチューブ状の膜内へ導入し、その密閉チューブを5Lの脱イオン水を入れた長方形バケットに入れた。60分後、この水を真水と置き換え、さらに2.5時間静置した。
【0158】
次に、チューブ内容物を取り出し、ロータリーエバポレーターにて原体積の約40%まで濃縮する。試料をチューブ状の膜内へ戻し入れ、その方法を繰り返す。
【0159】
第2の限外濾過工程の後で確認された固形含量は25.3重量%であった。後処理の結果を表1に要約する。
【0160】
粉砕助剤としての使用:
調製したポリアクリル酸溶液を試験するため、粉砕は、いずれの場合にもDispermatで実施する。
【0161】
この目的において、いずれの場合にも、300gの炭酸カルシウムと600gのセラミックビーズを混合し、最初に、(水道水が満たされた)500mlのジャケット付属槽中に充填する。次に、100gの水性ポリアクリル酸溶液(3重量%のポリアクリル酸)を試験するポリアクリル酸に加える。粉砕は、回転速度1200rpmでクロスビーム撹拌するDispermat AE-C型の粉砕ユニット(製造元:VMA-Getzmann)により行う。顔料の97%が粒径(PS)1μm未満を有する場合に粉砕を終了する(約70分、レーザー回折によりPSを測定する手段:Horiba LA 920)。粉砕後、スラリーを磁製吸引濾過により780μmフィルターを通して濾過してセラミックビーズを除去し、スラリーの固形含量を77%に調整する。スラリーの粘性は、Brookfield DV II粘度計(スピンドル番号No. 3)を用いて、直後、24時間後および168時間後に測定する。
【0162】
基本的に、顔料懸濁液には紙のコーティングスリップにおける良好な性能特性が存在し、その場合、顔料粒子の少なくとも90%が<2μmの粒径を有し、その懸濁液は24時間の保存期間後であっても引き続きポンプでくみ出せる。
【0163】
分散試験の結果を表2にまとめる。
【0164】
結果考察
実施例および比較例の結果からは、ポリアクリル酸の連続的調製とその後の低分子量成分の除去の組み合わせにより、特に高品質のポリアクリル酸が得られることが明らかである。炭酸カルシウム分散剤の分散に関する試験では、このポリアクリル酸を使用することで、特に低粘性のCaCO3分散剤が得られる。
【0165】
また連続重合単独であったとしても、バッチ重合によって従来通りに調製された、モル質量の点から比較可能なポリアクリル酸と比べた場合、有意に低粘性を示す分散剤が得られる。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水溶性開始剤および少なくとも1種の水溶性調節剤の存在下において、水性溶媒中のアクリル酸を、場合により水溶性モノエチレン系不飽和コモノマーと共にラジカル重合(free-radical polymerization)することによりアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの水溶液を調製する方法であって、この場合、
・ アクリル酸の量は、モノマーを全て合わせた総量に対して少なくとも50重量%であり、
・ ホモポリマーまたはコポリマーの数平均モル質量Mnは、1000g/mol〜20,000g/molであり、
前記方法が、少なくとも下記の工程、すなわち:
(Ia) 少なくとも1機のミキサーを含む混合ユニットへ反応物質および水を連続的に定量供給し、混合ユニット中の反応物質を温度TMで混合する工程と、
(Ib) 得られた水性反応混合物を、10℃〜200℃の範囲の温度Ttargetの温度調節媒体により温度が調節される少なくとも1つの反応領域を通過させることで連続的ラジカル重合を行なう工程であって、反応混合物が反応領域の(流通方向に見て)第1の領域で加熱され、その加熱領域を通過した後に、温度Ttargetと前記加熱領域の下流にある反応領域の任意の場所の実際温度TRとの間の温度差ΔT、│TR−Ttarget│が50≦Kであるが、ただし、Ttargetは混合温度TMよりも高いことを条件とする、前記工程
とを含んでなる連続法により重合を行うことを含み、
またここで、重合後、さらなる製造工程(II)において、得られた水性ポリマー溶液からモル質量Mnが≦1000g/molの低分子量成分が、
・蒸留による除去、
・水蒸気、不活性ガスまたは溶媒を使用する抽出による除去、
・吸収法、
・クロマトグラフィー法、または、
・浸透圧法
の群から選択される物理的または物理化学的な分離方法によって、少なくとも部分的に除去される、前記方法。
【請求項2】
水に溶解したアクリル酸の少なくとも1種の溶液、水に溶解した少なくとも1種の開始剤の溶液、および少なくとも1種の調節剤を工程(Ia)で互いに混合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(Ia)がマイクロ構造を有する少なくとも1機のミキサーを使用して実施され、この場合、ミキサーの特徴的寸法(流通方向に対して直角方向の最小の大きさ)が1μm〜10,000μmの範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(Ib)がマイクロ構造を有する少なくとも1つの反応領域を使用して実施され、この場合、反応領域の特徴的寸法(流通方向に対して直角方向の最小の大きさ)が0.1mm〜30mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TtargetがTMよりも少なくとも10K高い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
TMが10℃〜30℃である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
温度差ΔT=│TR -Ttarget│が≦20Kである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Ttargetが50℃〜200℃である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(Ib)における反応領域内の滞留時間tRが5秒〜30分である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの反応領域内の熱伝達係数および体積特定熱伝達面積の積が12,500W/m3Kより大きい、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
揮発成分の除去が蒸気によるストリッピングで行なわれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水蒸気が沸騰水性ポリマー溶液を通過する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
通過する水蒸気の量が水性ポリマー溶液の量に対して50〜1000重量%である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
揮発成分の除去が、Mnが≦1000g/molの物質を除去可能な膜を使用して限外濾過により行なわれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
限外濾過が0.1〜50barの圧力で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの多分散性(Mw/Mn)が≦2.5である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
アクリル酸の量が全モノマーを合わせた総量に対して少なくとも95重量%である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510202(P2013−510202A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537362(P2012−537362)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066583
【国際公開番号】WO2011/054789
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】