説明

水性メタリック塗料組成物

【課題】メタリック顔料と水との反応が長期にわたり抑制され、かつ付着性、耐水性及び外観に優れた塗膜を形成し得る水性メタリック塗料組成物を提供すること。


【解決手段】一般式(I)
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。]
で表されるエチレン性不飽和モノマー(a)、


一般式(II)
[式中、Rは前記と同じ意味を有し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは2〜30の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位


は同じであっても又は互いに異なっていても良い。]
で表されるエチレン性不飽和モノマー(b)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)
を共重合して得られ、酸価が20〜200mgKOH/gであり、モノマー(a)とモノマー(b)のモル比が20/80〜80/20である顔料分散用樹脂と、メタリック顔料を含有する水性メタリック塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性メタリック塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムフレークなどのメタリック顔料を含む水性メタリック塗料は、メタリック顔料が塗料中の多量の水と接触して腐食し、水素ガスが発生するという問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、水性メタリック塗料中にりん酸エステル類を含有させ、該エステル類のりん原子に結合した酸性ヒドロキシル基による吸着作用を利用して、メタリック顔料の表面をりん酸エステル類で保護し、水とメタリック顔料との反応を抑制することが提案されている。しかしながら、かかるりん酸エステル類を含有する水性メタリック塗料は、長期間にわたってこの反応を抑制することが困難であり、かつ形成されるメタリック塗膜の付着性、耐水性、耐チッピング性、メタリック外観なども十分でないという欠点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、りん酸エステルで処理したアルミニウムフレークを含有する水性メタリック塗料が、特許文献2には、オルトりん酸とエポキシ化合物との反応生成物を含有する水性メタリック塗料が、特許文献3には、オルトりん酸とグリシジル基含有アクリル重合体とから得られるりん酸塩化アクリル重合体を含有する水性メタリック塗料が、そして特許文献4には、スチレンとアリルアルコールとの重合体及びp−(t−アミル)フェノールとオルトりん酸又は五酸化りんとの反応生成物を含有する水性メタリック塗料がそれぞれ開示されている。しかしながら、これらの水性メタリック塗料は、いずれもその塗膜の付着性、耐水性、メタリック外観などが十分でない。
【0005】
また、特許文献5には、特定の構造を有するりん酸エステルモノマー0.1〜5重量%とα,β−エチレン性不飽和単量体99.9〜95重量%を共重合させて得られる、OHV(水酸基価)=30〜150及びMn=1,500〜20,000のアクリル樹脂を含有する、耐水変色性及びメタリック感に優れる塗膜を形成できるメタリック塗料組成物が開示されている。しかしながら、該メタリック塗料組成物によって形成される塗膜は、温水浸漬後の付着性が不十分である。
【0006】
また、特許文献6には、アルキレンオキサイド鎖を有するリン酸基含有モノマーと、他のエチレン性モノマーを共重合して得られるアクリル重合体を用いた水性塗料組成物が開示されている。しかしながら、アルキレンオキサイド鎖を有するリン酸基含有モノマーは親水性が高く、塗膜の耐水性確保の観点から使用量が制限されるため、アクリル重合体中のリン酸量が十分ではなく、長期間にわたってメタリック顔料と水の反応を抑制することが困難である。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−168670号公報
【特許文献2】特開昭61−47771号公報
【特許文献3】特開平1−190765号公報
【特許文献4】特公平2−46624号公報
【特許文献5】特開昭62−30167号公報
【特許文献6】特開平4−25578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制することができる顔料分散用樹脂を含有する、付着性、耐水性及び塗膜外観に優れた塗膜を形成し得る水性メタリック塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有する2種類のりん酸基含有エチレン性不飽和モノマーと、その他のエチレン性不飽和モノマーを共重合してなる顔料分散用樹脂が、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制するのに有効であり、該顔料分散用樹脂を含有する水性メタリック塗料から形成される塗膜が、優れた付着性、耐水性及び外観を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。]
で表されるリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、
下記一般式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、Rは前記と同じ意味を有し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは2〜30の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位

【0015】
は各々同じであっても又は互いに異なっていても良い。]
で表されるリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)、及び
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)
を共重合せしめることにより得られ、酸価が20〜200mgKOH/gであり、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)のモル数Mとリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)のモル数Mの比M/Mが20/80〜80/20の範囲内である顔料分散用樹脂と、
メタリック顔料を含有することを特徴とする水性メタリック塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従う顔料分散用樹脂を用いることにより、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制することが可能となり、かかる顔料分散用樹脂を含有する水性メタリック塗料を用いることにより、付着性、耐水性及び外観に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に従う顔料分散用樹脂及びそれを含有する水性メタリック塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0018】
顔料分散用樹脂
本発明に従う顔料分散用樹脂は、後記のリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)を共重合せしめることにより得られ、酸価が20〜200mgKOH/g、好ましくは40〜170mgKOH/gであり、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)のモル数Mとリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)のモル数Mの比M/Mが、20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40の範囲内である。
【0019】
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)は、一般式(I)
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜3、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基を表す。]
で表される化合物である。Rで表わされる炭素数3のアルキレン基としては、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。
【0022】
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)は、一般式(II)
【0024】
【化4】

【0025】
[式中、Rは前記と同じ意味を有し、Rは炭素数1〜10、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4のアルキレン基を表し、mは2〜30、好ましくは3〜20、さらに好ましくは4〜15の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位

【0026】
は各々同じであっても又は互いに異なっていても良い。]
で表される化合物である。
【0027】
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)は、例えば、水酸基を含有した(メタ)アクリレート類を、常法に従いアルキレンオキサイドで変性し、五酸化りんやオキシ塩化りん等の公知のりん酸化剤を作用させた後、加水分解することにより、また、(メタ)アクリル酸を、常法に従いアルキレンオキサイドで変性し、五酸化りんやオキシ塩化りん等の公知のりん酸化剤を作用させた後、加水分解することにより、容易に合成することができる。該アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどを挙げることができ、中でもプロピレンオキサイドを用いることが好ましい。
【0028】
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)は、上記リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)及び(b)以外のエチレン性不飽和モノマーであって、顔料分散用樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用される。
【0029】
そのようなモノマー(c)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのC〜C24の直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーと有機ラクトンの付加物(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン2モル付加物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン2モル付加物など)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキサイドの開環付加物やプロピレンオキサイドの開環付加物などの水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン等のオキセタン環含有(メタ)アクリレートモノマー;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性エチレン性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの紫外線安定性エチレン性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和モノマーは1種のみで又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0030】
上記エチレン性不飽和モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として、アルキル基の炭素数が6〜18、好ましくは8〜18、更に好ましくは10〜14のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが、得られる塗膜の付着性に優れるため、特に好適である。
【0031】
アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数6〜18のアルキルエステルが挙げられ、これらは1種のみで又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0032】
上記アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)〜(c)の合計量を基準にして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0033】
また、上記エチレン性不飽和モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として、ビニル芳香族化合物を含有することが、得られる塗膜の付着性に優れるため、好ましい。ビニル芳香族化合物としては、前記したように、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができ、中でもスチレンを用いることが特に好ましい。
【0034】
上記ビニル芳香族化合物の含有量は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)〜(c)の合計量を基準にして、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲内であることが好適であり、なかでも、スチレンの含有量が、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0035】
上記エチレン性不飽和モノマー(c)として、アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレート及び/又はビニル芳香族化合物を用いた場合に、得られる塗膜の付着性が優れる理由は明確ではないが、顔料分散用樹脂の側鎖に、上記アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレート及び/又はビニル芳香族化合物に由来する比較的疎水性が高い部分が存在することが、下層塗膜との相互作用を向上させ、塗膜の付着性向上に寄与することが推察される。
【0036】
また、本発明の水性メタリック塗料組成物が硬化剤を含有する場合、本発明に従う顔料分散用樹脂は、硬化剤成分、例えばアミノ樹脂やブロック化されてもよいポリイソシアネート化合物と反応し、架橋塗膜中にとりこまれることが塗膜性能上望ましく、そのため、上記エチレン性不飽和モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0037】
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマーは、得られる共重合体の水酸基価が15〜150mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/gの範囲内となる量で使用することが好適である。
【0038】
上記リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)の共重合に際しての使用割合は厳密に制限されるものではなく、共重合体の酸価及びリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)とリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)のモル比M/Mが前記の値となる範囲内において、適宜調整することができるが、一般には、エチレン性不飽和モノマー(a)〜(c)の合計量を基準にして次の範囲内とすることができる。
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a):5〜49質量%、好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%、
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b):5〜49質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜35質量%、
その他のエチレン性不飽和モノマー(c):10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%、特に好ましくは45〜70質量%。
【0039】
また、その他のエチレン性不飽和モノマー(c)が、前記アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレート、前記ビニル芳香族化合物及び前記水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含有することが好ましく、その使用量は、次の範囲内とすることができる。
アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレート:エチレン性不飽和モノマー(a)〜(c)の合計量を基準として、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%、
ビニル芳香族化合物:エチレン性不飽和モノマー(a)〜(c)の合計量を基準として、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%、
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー:得られる共重合体の水酸基価が15〜150mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/g、特に好ましくは40〜90mgKOH/gの範囲内となる量。
【0040】
本発明に従う顔料分散用樹脂の重量平均分子量は2,000〜100,000、好ましくは4,000〜50,000の範囲内であることが好適である。
【0041】
なお、本明細書における、顔料分散用樹脂、後記するメラミン樹脂などの樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIという測定条件を使用した。
【0042】
上記エチレン性不飽和モノマー(a)、(b)及び(c)の共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。
【0043】
溶液重合法による共重合法としては、例えば、上記エチレン性不飽和モノマー(a)、(b)及び(c)とラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶媒に溶解もしくは分散せしめ、通常、約80〜約200℃程度の温度で、1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0044】
上記共重合反応において使用し得る有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は1種のみもしくは2種以上を組合せて使用することができる。これらの有機溶剤は、通常、モノマー成分の合計量100質量部あたり400質量部以下の範囲内で使用することが好ましい。
【0045】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーの合計量100質量部あたり、0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部の範囲内であることが好適である。
【0046】
上記重合反応において、モノマー成分や重合開始剤の添加方法は特に制約されるものではないが、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下することが、重合反応における温度制御、ゲル化物のような不良な架橋物の生成の抑制、などの点から好適である。
【0047】
本発明の水性メタリック塗料組成物は、上記顔料分散用樹脂を含有することにより、メタリック顔料と水との反応を長期にわたって抑制し、付着性、耐水性及び外観に優れた塗膜を形成することができる。その機構は明確ではないが、顔料分散用樹脂中の、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)に由来するポリマー主鎖から比較的近い距離に位置するリン酸基がメタリック顔料表面に強固に吸着して水との反応を抑制し、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)に由来するポリマー主鎖から比較的遠い距離に位置するリン酸基とアルキレンオキサイド鎖による親水性の側鎖が、該樹脂により被覆されたメタリック顔料を水性媒体中に均一に分散させるため、メタリック顔料の配向性が向上して塗膜外観が向上し、さらにメタリック顔料と塗膜形成樹脂との相互作用が向上して、付着性及び耐水性に優れた強固な塗膜が形成されることが推察される。
【0048】
水性メタリック塗料組成物
本発明の水性メタリック塗料組成物は、上記顔料分散用樹脂とメタリック顔料を含有することを特徴とする水性メタリック塗料組成物である。
【0049】
メタリック顔料は塗膜にキラキラとした光輝感や光干渉性模様を付与する顔料であり、具体的には、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などから選ばれる少なくとも1種の顔料を使用することができる。これらのメタリック顔料はりん片状であることが好ましい。
【0050】
メタリック顔料の配合量は、通常、塗料固形分に対するメタリック顔料の質量割合として、1〜40%、好ましくは5〜35%、さらに好ましくは8〜30%の範囲内とすることができる。
【0051】
本発明に従う顔料分散用樹脂の配合量は、通常、メタリック顔料100質量部あたり、固形分として、0.1〜50質量部、好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内とすることができる。
【0052】
また、本発明に従う顔料分散用樹脂は、塗料に配合するに先立ち、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノールなどの塩基であらかじめ中和しておくことができる。
【0053】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、基体樹脂、硬化剤、本発明に従う顔料分散用樹脂及びメタリック顔料、ならびに場合により、さらに他の塗料添加物を水性媒体中で混合、分散せしめることによって調製することができる。
【0054】
基体樹脂としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂などをベースとする水溶性又は水分散性の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、その分子中に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0055】
また、硬化剤としては、これらの官能基と反応し得るアミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物などが挙げられ、なかでも、水酸基と反応し得るアミノ樹脂又はブロック化ポリイソシアネート化合物が好適である。
【0056】
上記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化アミノ樹脂をアルコールによってエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0057】
上記アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、中でも、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールでエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールでエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールでエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂などのアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0058】
また、上記メラミン樹脂は、通常、600〜5,000、特に800〜4,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0059】
また、メラミン樹脂を硬化剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸や、これらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0060】
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタン等のブロック剤でブロックしたものを使用することができる。
【0061】
基体樹脂と硬化剤との配合比率は、これら両者の合計固形分質量に基づき、前者は50〜90%、特に60〜80%、後者は50〜10%、特に40〜20%の範囲内が適している。
【0062】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、以上に述べた基体樹脂、硬化剤、本発明に従う顔料分散用樹脂及びメタリック顔料を、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、親水性有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの塗料添加物と共に、それ自体既知の方法で、水性媒体中にて混合、分散せしめることによって調製することができる。その際、本発明に従う顔料分散用樹脂とメタリック顔料とをあらかじめ混合して顔料分散液を調整しておき、その顔料分散液を基体樹脂などと共に水性媒体中で混合、分散せしめることが好ましい。より具体的には、例えば、固形分含有率を30〜70質量%に調整した本発明に従う顔料分散用樹脂溶液にメタリック顔料を均一に混合してメタリック顔料の表面に顔料分散用樹脂を吸着させ、次いで前記塩基で中和し、分散せしめてから、これらを基体樹脂などと共に水中で混合、分散せしめることが好ましい。
【0063】
水性メタリック塗料組成物は、金属製又はプラスチック製の自動車外板などの被塗物に直接塗装することが可能であるが、一般には、被塗物に、電着塗料などの下塗り塗料及び場合によりさらに中塗り塗料などをあらかじめ塗装し、これらの塗膜を硬化させた後、その塗面に上記の如くして調製される水性メタリック塗料組成物を塗装することが好ましい。
【0064】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装することができ、特に、回転霧化方式の静電塗装機もしくはエアスプレー塗装機を用いて塗装することが好ましい。また、水性メタリック塗料組成物は、硬化塗膜で5〜30μmの膜厚となるように塗装することが好ましく、中でも10〜20μmの膜厚となるように塗装することがさらに好ましい。
【0065】
水性メタリック塗料組成物によって形成されるメタリック塗膜は、100〜170℃で10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。
【0066】
また、該メタリック塗膜を硬化させてから又は硬化させずに、該メタリック塗膜上にクリヤー塗料をさらに塗装することもできる。メタリック塗膜上にクリヤー塗料を塗装する場合は、水性メタリック塗料組成物の塗装後に、塗膜が硬化しない条件でプレヒート(予備乾燥)を行なった後、クリヤー塗料を塗装することが好ましい。プレヒートの温度は約50〜約100℃の範囲内であることが好適であり、プレヒートの時間は約30秒間〜約10分間、さらに好ましくは約1〜約5分間の範囲内であることが好適である。
【0067】
特に、未硬化のメタリック塗膜上に、クリヤー塗料を回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装した後、約100〜約180℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱して両塗膜を同時に硬化させることにより、優れた外観を有する塗膜を形成せしめることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0069】
顔料分散用樹脂の製造
製造例1
攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル120部を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持してから、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(分子量210)6部、アシッドホスホキシペンタ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート(分子量456)34部、n−ブチルアクリレート30部、スチレン20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部からなる混合物(I)103部を4時間を要して滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成を行なった。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル30部とからなる開始剤溶液を1時間を要して滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成して顔料分散用樹脂(P1)を得た。
【0070】
顔料分散用樹脂(P1)におけるリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)のモル数Mは6/210=0.029、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)のモル数Mは34/456=0.075、M/Mは28/72であった。また、顔料分散用樹脂(P1)の酸価は112mgKOH/g、水酸基価は48mgKOH/g、重量平均分子量は17,000、固形分濃度は40%であった。
【0071】
製造例2〜18
製造例1において、混合物(I)を下記表1に示す配合とする以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度40%である顔料分散用樹脂(P2)〜(P18)を得た。得られた顔料分散用樹脂(P2)〜(P18)のM/M、酸価、水酸基価及び重量平均分子量を製造例1の顔料分散用樹脂溶液と併せて下記表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】

アクリルエマルション(AE)の製造
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水32.1部、「NEWCOL 562SF」(日本乳化剤社製、商品名、乳化剤)0.267部を加え、80℃に加温してから、脱イオン水1.110部に溶解した過硫酸アンモニウム0.033部及び下記のプレエマルション1の全量の1%量を投入し、同温度で20分間熟成した。その後、メチルメタクリレート14.45部、n−ブチルメタクリレート7.12部、アリルメタクリレート0.67部、脱イオン水21.63部及び「NEWCOL 562SF」0.267部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション1)を2時間かけて反応容器に滴下し、その後、1時間熟成した。
【0074】
ついで、メチルメタクリレート2.29部、n−ブチルメタクリレート2.48部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.98部、メタクリル酸0.78部、脱イオン水9.77部及び「NEWCOL 562SF」0.114部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション2)を2時間かけて反応容器に滴下した。また、上記プレエマルション2と同時に過硫酸アンモニウム0.003部を脱イオン水1.110部に溶解したものを2時間かけて滴下した。その後、1時間熟成して、脱イオン水19.53部に2−(ジメチルアミノ)エタノール0.294部を溶解したものを投入し、固形分含有率25%、pH8.5、粒子径120nmのアクリルエマルション(AE)を得た。
【0075】
ポリエステル水溶液(PE)の製造
製造例20
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール78.75部(0.75モル)、トリメチロールプロパン34.13部(0.25モル)、アジピン酸65.7部(0.45モル)及びイソフタル酸74.7部(0.45モル)を仕込み、3時間を要して150℃から230℃に昇温し、同温度で1.5時間維持して縮合水を系外に流出させながら縮合反応を行なった。その後、トルエン3部を加えて還流させながら、攪拌と脱水を継続して行い、カルボキシル基による酸価が8mgKOH/gになるまで反応せしめ、生成する水をトルエンと共沸させて除去した。その後、温度を170℃に下げてから、無水トリメリット酸6.72部(0.035モル)を投入し、同温度で30分間熟成してから、ジエチレングリコールモノブチルエーテル20部を加え、温度を80℃に下げた。かくして酸価が25mgKOH/g、水酸基価が93mgKOH/g、数平均分子量が1,700の水溶性ポリエステルを得た。これに2−(ジメチルアミノ)エタノール9部を加えて中和し、脱イオン水で固形分含有率35%のポリエステル水溶液(PE)を得た。
【0076】
水性メタリック塗料の製造
実施例1
アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、アルミニウム顔料含有率73%)17.8部、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、製造例1で得た顔料分散用樹脂(P1)8部、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、顔料分散液を得た。
【0077】
次に、製造例19で得たアクリルエマルション(AE)200部、製造例20で得たポリエステル水溶液(PE)57部、「サイメル327」(メラミン樹脂、商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、固形分90%)33部及び上記顔料分散液51部を均一に混合し、更に、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えてpH8.4、固形分含有率25%の水性メタリック塗料(X1)を得た。
【0078】
実施例2〜11、比較例1〜7
実施例1において、製造例1で得た顔料分散用樹脂(P1)の代わりに、製造例2〜18で得た顔料分散用樹脂(P2)〜(P18)を使用する以外は、実施例1と同様にして、pH8.4〜8.5、固形分含有率25%である水性メタリック塗料(X2)〜(X18)を得た。
【0079】
塗料性能試験
ガス発生量:実施例1〜11及び比較例1〜7で得た水性メタリック塗料(X1)〜(X18)(いずれも固形分含有率は25%であり、塗料中のアルミニウム顔料の含有率は2.8%である)150gを容量300mlの三角フラスコの底部に入れ、この容器中央部にメスピペットをほぼ垂直方向に差し込み、メスピペットの下端部が水性メタリック塗料中に没し且つフラスコ底部との間に約5mmの隙間があるようにして保持する。そして、メスピペットの外側と三角フラスコの蓋部内側をコルク栓などで密閉し、外部から遮断しておき、メスピペットの内側は外部と連通させておく。それを40℃で10日間貯蔵し、貯蔵中に発生したガスの圧力で押し上げられたメスピペット内部の水性メタリック塗料の体積をメスピペットの目盛りから読み取る。その結果を表2に示す。
【0080】
塗膜性能試験
カチオン電着塗料及び中塗り塗料を塗装し加熱硬化せしめた鋼板に、実施例1〜11及び比較例1〜7で得た水性メタリック塗料(X1)〜(X18)を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で、5分間のプレヒートを行ってから、マジクロンKINO−1200(関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料)を乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して両塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。得られた各試験板について、下記の塗膜試験方法により評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0081】
(塗膜試験方法)
層間付着性: 塗装鋼板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。◎は100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなハガレが生じていない、○は100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなハガレが生じている、△は99〜90個残存、×は残存数が89個以下であることを示す。
耐水性: 塗装鋼板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥した塗板を試験板とする以外、上記の層間付着性試験と同様にして試験を行なった。なお、評価基準も同じである。
メタリック外観: 目視で評価する。○はメタリックムラの発生が全くもしくはほとんど認められない、△はメタリックムラの発生が少し認められる、×はメタリックムラの発生が多く認められることを示す。
【0082】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。]
で表されるリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、
下記一般式(II)
【化2】

[式中、Rは前記と同じ意味を有し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは2〜30の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位

は各々同じであっても又は互いに異なっていても良い。]
で表されるリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)、及び
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)
を共重合せしめることにより得られ、酸価が20〜200mgKOH/gであり、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)のモル数Mとリン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)のモル数Mの比M/Mが20/80〜80/20の範囲内である顔料分散用樹脂と、
メタリック顔料を含有することを特徴とする水性メタリック塗料組成物。
【請求項2】
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部として、炭素数6〜18のアルキル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項3】
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部として、ビニル芳香族化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項4】
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項5】
顔料分散用樹脂が15〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することを特徴とする請求項4に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項6】
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)、及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)の合計量を基準として、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)の割合が、5〜30質量%であり、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)の割合が、10〜40質量%であり、その他のエチレン性不飽和モノマー(c)の割合が、30〜80質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項7】
その他のエチレン性不飽和モノマー(c)が、アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族化合物及び水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含有し、該アルキル基の炭素数が6〜18のアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)の合計量を基準として5〜50質量%であり、該ビニル芳香族化合物の含有量が、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a)、リン酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)の合計量を基準として5〜50質量%であり、該水酸基含有エチレン性不飽和モノマーの含有量が、顔料分散用樹脂の水酸基価が15〜150mgKOH/gの範囲内となる量であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項8】
顔料分散用樹脂をメタリック顔料100質量部あたり0.1〜50質量部の範囲内の量で含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項9】
メタリック顔料がアルミニウム顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項10】
さらに基体樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項11】
さらに硬化剤を含有することを特徴とする請求項10に記載の記載の水性メタリック塗料組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物が塗装された物品。
【請求項13】
被塗物上に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性メタリック塗料組成物を塗装し、得られた未硬化の水性メタリック塗膜の上にクリヤー塗料を塗装した後、加熱して両塗膜を同時に硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2007−197705(P2007−197705A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348700(P2006−348700)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】