説明

水性分散液および水性分散体組成物

【課題】ポリオレフィン系水性分散液と水性樹脂との相溶性を改善した水性分散体組成物を提供する。
【解決手段】オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜40モル%、および前記ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位60〜98モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる分散体を含む水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性分散液およびそれを含む水性分散体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、加工性、耐水性、耐油性等の樹脂特性が優れる上に安価であることから、家庭電化製品や自動車部品用プラスティックとして多量に使用されており、その付加価値を高めるためにポリオレフィン成形品の表面に塗装する、あるいは他の樹脂との積層体を形成することが試みられているが、ポリオレフィンは極性が低く、一般の塗料や他の樹脂との付着性が悪いという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、あらかじめポリオレフィン成形品の表面をクロム酸、火炎、コロナ放電、プラズマ、溶剤等を用いて処理することにより成形品表面の極性を高め、塗料や他の樹脂との付着性を改善することが試みられてきたが、これらの処理においては、複雑な工程を必要としたり、腐食性の薬剤を多量に使用するため危険を伴ったりするといった問題点があった。
【0004】
このような状況下に、ポリオレフィン成形品の表面を塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を主成分とするプライマーで下塗りする方法(特許文献1)が提案されたが、これらの樹脂は人体に対して有害なトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒に溶解させて使用することから、安全性や環境上の問題が生じるおそれが高いといった欠点があった。そこで塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化する方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−321588号公報
【特許文献2】特開平6−73250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂の水性分散液(以下、ポリオレフィン系水性分散液と略すことがある)はポリオレフィン成形品に単独にて塗装されることもあるが、現在は、工程簡略化のために水性樹脂(アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂など)や顔料等と混合し、プライマー、塗料、インキまたは接着剤中の付着成分として用いられることが多い。しかし、低極性の樹脂を主成分とするポリオレフィン系水性分散液と極性の高い水性樹脂とは相溶性に乏しいため、乾燥皮膜とした場合に皮膜内での相分離を起こし、成形品への付着性が十分に発現されない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、ポリオレフィン系水性分散液と水性樹脂との相溶性を改善した水性分散体組成物を提供することを目的とする。この水性分散体組成物を用いることにより、ポリオレフィン成形品への優れた付着性が発現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜40モル%、および前記ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位60〜98モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる分散体を含む水性分散液を提供することによって達成される。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜40モル%、および前記ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位60〜98モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる分散体を含む水性分散液。
[2] [1]に記載の水性分散液とポリオレフィン系水性分散液、および他の水性樹脂を含む水性分散体組成物であり、[1]に記載の水性分散液が0.1重量%以上50重量%未満含むことを特徴とする水性分散体組成物。
[3] [2]に記載の水性分散体組成物を用いる、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた成形品への付着性を有するポリオレフィン系水性分散液と水性樹脂との相溶性を改善した水性分散体組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、塩基性物質の水溶液に分散してなる分散体を含むものである。
本発明におけるブロック共重合体(C)は、以下に述べる重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
【0011】
重合体ブロック(A)は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロックである。すなわち、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体により構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(A)におけるオレフィン系単量体単位の含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて50〜100モル%の範囲内であるのが好ましく、70〜100モル%の範囲内であるのがより好ましく、80〜100モル%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0012】
オレフィン系単量体単位とは、オレフィン系単量体から誘導される単位を意味する。オレフィン系単量体単位としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のα−オレフィン;2−ブテン;イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン;ビニルシクロヘキサン;β−ピネンなどのオレフィン系単量体から誘導される単位を挙げることができ、重合体ブロック(A)は、これらのオレフィン系単量体単位のうち1種または2種以上を含有することができる。重合体ブロック(A)は、エチレン、プロピレンから誘導される単位を含むのが好ましい。中でも、プロピレンから誘導される単位からなる重合体ブロック;プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィンから誘導される単位からなる共重合体ブロックであるのがより好ましい。上記のオレフィン系単量体単位がブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエンから誘導される単位の場合には、残存する不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0013】
重合体ブロック(A)を構成する重合体は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなるものである。従ってオレフィン系単量体単位のほかに、オレフィン系単量体以外の単位を含み得る。例えば必要に応じて、上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体から誘導される単位を0〜50モル%の範囲内の割合で含有することができる。該単量体単位の含有量は、0〜30モル%の範囲内であるのが好ましく、0〜20モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0014】
上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルが好ましい。
【0015】
重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体は、変性されていてもよい。該変性は、該重合体に対して、塩素化、臭素化等のハロゲン化;クロロスルフォン化;エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化などの公知の諸法を用いて行なうことができる。
【0016】
重合体ブロック(A)は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を減成したものであっても良い。これにより、重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、重合体ブロック(A)の分子量を調整することができる。減成の方法としては、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中400〜500℃にて熱分解する方法や、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中、有機過酸化物存在下にて分解する方法が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。前記有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
【0017】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基を有するビニル系単量体および、前記ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を含む重合体ブロックである。
【0018】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜40モル%含有する。該単位の含有量は2〜20モル%の範囲内であるのが好ましい。カルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量が40モル%を超える場合は、水性分散体の粘度が非常に高く、実用に耐えない。また、カルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量が2モル%を下回る場合は、水性分散液の分散粒子が大きくなり、さらには水性分散液が得られない場合がある。
【0019】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0020】
重合体ブロック(B)は、上記のカルボキシル基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて60〜98モル%含有する。該単位の含有量は、好ましくは80〜98モル%である。上記の他のビニル系単量体とは、カルボキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体を意味し、スチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0021】
本発明における重合体ブロック(B)を構成する、カルボキシル基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体は、塩素化されていてもよい。塩素化はラジカル付加法など公知の方法を用いて行なうことができる。この塩素化は後述するブロック共重合体(C)を製造した後に重合体ブロック(A)と共に行なうこともできる。なお、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートを指すものとする。
【0022】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロック(B)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量としては、5,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0023】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とから構成されていればよく、その製造方法は特に限定されない。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することにより製造することができる。この方法によれば、目的とする重量平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(C)を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0024】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)は、各種の方法により製造することができる。例えば、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、この二重結合を介して、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸またはチオ吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合法によりオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を製造する際の停止剤としてエチレンスルフィドを用いる方法などにより製造することができる。
【0025】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下における、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分のラジカル重合は、公知の方法によって進めることが可能である。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をトルエンに溶解した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶液法などが挙げられる。前記ラジカル重合を行う際のラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択することができる。特にアゾ系開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択できる。
【0026】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して得た分散体を含有する水性分散液である。詳しくは、ブロック共重合体(C)にブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を加え、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは60℃〜120℃にて加温溶融したものを、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含有する水溶液に分散させた後に、常圧または減圧下にてブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を留去することにより得た分散体を含有する水性分散液である。本発明の水性分散液は、水を溶媒とし分散体を含有する。
【0027】
ブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤としては、水溶性溶剤、疎水性溶剤、またはそれらの混合溶剤を使用することができる。
【0028】
水溶性溶剤としては、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの1種または2種以上を組み合わせて水溶性溶剤として用い得る。これらのうちでも、上記したブロック共重合体を加熱溶融する場合の容易さ、留去の容易さ等の観点から、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0029】
疎水性溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、p−メンタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、n−ヘプタン、トルエン、キシレンがさらに好ましい。
【0030】
塩基性物質は、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上のものを用い得る。上記の塩基性物質としては、アンモニア、ヒドロキシアミン、水酸化アンモニウム、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)オクチルアミン、(ジ)エタノールアミン、(ジ)プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、モルホリン等のアミン化合物;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の金属酸化物;水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩などが例示される。これらのうちでも、入手の容易さ、水性分散液の安定性の観点から、アンモニア、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(ジ)ブチルアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、アンモニア、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。尚、本発明において「(ジ)」とは、置換基が1または2つあることを意味する。例えば「(ジ)メチルアミン」は、メチルアミンおよびジメチルアミンの両方を意味する。
【0031】
これらの塩基性物質は、水溶液として、ブロック共重合体(C)の中和、分散に用いられる。塩基性物質の使用量は、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上である。この使用量は、分散粒子径を微細化する観点からは、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.2〜5.0当量の範囲内であるのが好ましく、0.3〜1.5当量の範囲内であるのがより好ましい。
【0032】
本発明の分散体におけるブロック共重合体(C)と塩基性物質の水溶液との配合割合は、ブロック共重合体(C)5〜70重量部に対して塩基性物質の水溶液95〜30重量部の範囲内であるのが好ましい。本発明の分散体中においてブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基のうちの一部、通常は5モル%以上が、塩基性物質によって中和されることにより、塩を形成する。
【0033】
本発明の水性分散液には、本発明の分散体の他に水性分散液の貯蔵安定性の向上等を目的に、本発明の水性分散液を含む水性分散体組成物の塗布により得られる皮膜の耐水性を低下させない程度に界面活性剤(D)が添加され得る。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が例示され、何れも使用できる。ノニオン界面活性剤の方が、耐水性低下を引き起こし難いため好ましい。
【0034】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0036】
水性分散液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の水性分散液への添加量は、ブロック共重合体(C)100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。20重量%を超える場合は、本発明の水性分散液を含む水性分散体組成物の塗布皮膜の密着性や耐水性を著しく低下させ、又、乾燥皮膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生し易いため、好ましくない。
【0037】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)を、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して製造される。製造条件を一例を挙げて説明すると次の通りである。上記したブロック共重合体(C)にブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を加えて、好ましくは50℃〜150℃にて加温溶融し、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含む水溶液を滴下した後、ブロック共重合体(C)を溶融可能な溶剤を、常圧下にて沸点以上に加温する、または減圧下にて留去することによって得られる。留去の方法としては、常圧下、沸点以上に加温する方法、減圧留去する方法が例示される。
【0038】
本発明の水性分散液は、分散体となる分散物質(分散粒子)の粒子径が小さいため、貯蔵安定性が良好であり、相分離が起こりにくい。本発明の水性分散液の分散物質の粒子径は、通常0.3μm未満、好ましくは、0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。下限については小さければ小さいほどよいが、製造可能なのは0.03μm程度である。このため、本発明の水性分散液はポリオレフィン系水性分散液や他の水性樹脂との混合性に優れ、これらの混合系を乾燥皮膜とする際の相溶化剤として有効である。
【0039】
本発明の水性分散体組成物は、本発明の水性分散体、ポリオレフィン系水性分散体、および水性樹脂を含むものである。
【0040】
本発明の水性分散液は、本発明における水性分散体組成物中にて、ポリオレフィン系水性分散体と他の水性樹脂との相溶化剤として機能する。そのため、本発明における水性分散体組成物は、付着成分であるポリオレフィン系水性分散液と他の水性樹脂が乾燥時に皮膜として一体となるため、ポリオレフィン樹脂への付着性に優れる。
【0041】
本発明のポリオレフィン系水性分散体とは、ポリオレフィン系樹脂に前記塩基性物質や前記界面活性剤を加える等の方法でポリオレフィン系樹脂を水中に分散させたものであり、本発明の水性分散体組成物の中では、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材に対する付着付与剤として機能する。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン系ランダム共重合体または、それらに極性を付与する目的で極性付与剤を用いて公知の方法で変性した変性プロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。
【0043】
プロピレン系ランダム共重合体としては、エチレン又はα − オレフィンを共重合して得られたポリプロピレン、エチレン− プロピレン共重合体、プロピレン− ブテン共重合体、エチレン− プロピレン− ブテン共重合体が挙げられ、これらの樹脂は、単独で用いても良いし、複数の樹脂を混合して用いても良い。エチレン又はα − オレフィンを共重合する際の重合触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒、或いはメタロセン触媒を用いることができる。
【0044】
変性プロピレン系ランダム共重合体を調製する際の極性付与剤としては、塩素、不飽和カルボン酸誘導体及び/ 又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上を用いる。これらは、二種或いは三種全てを組み合わせてもよい。
【0045】
極性付与剤として塩素を用いた場合、変性プロピレン系ランダム共重合体中の塩素含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは 3 5 重量%以下 である。3 5 重量% より多い場合は、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材への付着性が低下する。
【0046】
不飽和カルボン酸誘導体及び/ 又はその無水物とは、カルボキシル基を含有する不飽和化合物及びその無水物を意味し、誘導体とは該化合物のモノ又はジエステル、アミド、イミド等を意味する。例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸及びこれらの無水物、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N − フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは無水イタコン酸、無水マレイン酸である。不飽和カルボン酸誘導体及び/ 又はその無水物は、単独或いは2 種以上を混合して使用することができる。
変性プロピレン系ランダム共重合体中の不飽和カルボン酸誘導体及び/ 又はその無水物のグラフト重量は、20 重量%以下が好ましい。20重量% より多い場合は、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材への付着性が低下する。
【0047】
ラジカル重合性モノマーとは、( メタ) アクリル化合物、ビニル化合物を意味する。尚、( メタ) アクリル化合物とは、分子中に( メタ) アクリロイル基を少なくとも1 個含む化合物である。例えば、( メタ) アクリル酸、メチル( メタ) アクリレート、エチル( メタ) アクリレート、n − ブチル( メタ) アクリレート、シクロヘキシル(メタ) アクリレート、ヒドロキシエチル( メタ) アクリレート、イソボルニル( メタ) アクリレート、グリシジル( メタ) アクリレート、オクチル( メタ) アクリレート、ラウリル( メタ) アクリレート、トリデシル( メタ) アクリレート、ステアリル( メタ) アクリレート、シクロヘキシル( メタ) アクリレート、ベンジル( メタ) アクリレート、フェニル( メタ) アクリレート、ジメチルアミノエチル( メタ) アクリレート、ジエチルアミノエチル( メタ) アクリレート、ヒドロキシエチル( メタ) アクリレート、2 − ヒドロキシエチル( メタ) アクリレート、N , N − ジメチルアミノエチル( メタ) アクリレート、アセトアセトキシエチル( メタ) アクリレート、N − メチル( メタ) アクリルアミド、N −エチル( メタ) アクリルアミド、N − プロピル( メタ) アクリルアミド、N − イソプロピル( メタ) アクリルアミド、N − ブチル( メタ) アクリルアミド、N − イソブチル( メタ) アクリルアミド、N − t − ブチル( メタ) アクリルアミド、N , N − ジメチル( メタ)アクリルアミド、N , N − ジメチルアミノプロピル( メタ) アクリルアミド、N , N − メチレン− ビス( メタ) アクリルアミド、N − メチロール( メタ) アクリルアミド、ヒドロキシエチル( メタ) アクリルアミド、( メタ) アクリロイルモルホリン、n − ブチルビニルエーテル、4 − ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。これらは単独、或いは2 種以上を混合して使用することができ、その混合割合を自由に設定することができる。
【0048】
変性プロピレン系ランダム共重合体中のラジカル重合性モノマーのグラフト重量は、20 重量% 以下が好ましい。20重量% より多い場合は、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材への付着性が低下する。
【0049】
本発明の水性樹脂とは、本発明の水性分散液およびポリオレフィン系水性分散体以外の水性樹脂を意味する。このような水性樹脂としては、塗料組成物、インク組成物などに通常含まれている水性樹脂が挙げられ、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル系樹脂などの水性樹脂が挙げられる。
【0050】
例えば、アクリル樹脂としては、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する重合性不飽和モノマーや、それと共重合可能な重合性不飽和モノマーを、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用し重合することにより得ることができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0051】
これらと共重合可能な重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等、(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー、(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー、(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー、(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート等、(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー、(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー、(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー、(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等、(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等、(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレート等、(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0052】
ポリエステル樹脂としては、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル反応またはエステル交換反応によって製造することができる。上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0053】
前記アルコール成分としては、多価アルコールを使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン樹脂としては、多官能イソシアネート化合物、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール、及び、ジメチロールプロパンジオール又はジメチロールブタンジオール等の水酸基とカルボン酸基を共に有する親水化剤をジブチル錫ジラウレート等の触媒の存在下、イソシアナート基過剰の状態で反応させて得られたウレタンプレポリマーに、アミン類等の有機塩基又は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基によりカルボン酸を中和し、イオン交換水を加えて水性化した後、更に鎖伸長剤により高分子量化したウレタンディスパージョン;カルボン酸を含有しないウレタンプレポリマーを合成した後、カルボン酸、スルホン酸、エチレングリコール等の親水基を有したジオール又はジアミンを用いて鎖伸長した後、上記塩基性物質で中和して水性化し、必要により更に鎖伸長剤を用いて高分子量化したウレタンディスパージョン;必要により乳化剤も併用して得られたウレタンディスパージョンを挙げることができる。上記多官能イソシアネート化合物としては1,6−ヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物及びこれらのアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等の多官能イソシアネート化合物等を挙げることができる。また、上記ポリオールとして、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボナートポリオール等を挙げることができる。
【0055】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を分子中に1個以上有する水性樹脂で、当該技術分野で公知のものを使用することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂にエピクロヒドリンを付加して得られるノボラック型エポキシ樹脂を乳化剤で強制的にエマルション化した樹脂や、ビスフェノールに同様にエピクロヒドリンを付加して得られるビスフェノール型エポキシ樹脂を乳化剤で強制乳化した樹脂が挙げられる。
【0056】
本発明の水性分散液の水性分散体組成物への配合割合は、固形分として0.1重量%以上50重量%未満であることが好ましく、2重量%以上25重量%未満がより好ましい。本発明の水性分散液の配合割合が50重量%以上の場合は、ポリオレフィン系水性分散液や他の樹脂の性能が発揮され難く、また不経済である。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例において、分散粒子の平均粒子径測定、水性分散体組成物の調製、およびそれを使用したポリプロピレン樹脂への付着試験については次のようにして行った。
【0058】
(平均粒子径測定)
マルバーン社製「ゼータサイザー」を用いて動的光散乱法により測定した。
【0059】
(水性分散組成物の調製)
参考例にて調製した本発明の水性分散液、以下に示すポリオレフィン系水性分散液、および以下に示す通常塗料やインキ等に含まれる水性樹脂を表1に示す固形分換算重量比にて混合し、水性分散体組成物とした。
ポリオレフィン系水性分散液(1):
日本製紙ケミカル製アウローレン AE−301(固形分30%)
ポリオレフィン系水性分散液(2):
日本製紙ケミカル製スーパークロン E―415(固形分30%)
水性ポリエステル樹脂:東洋紡製バイロナール MD−1200(固形分35%)
水性ウレタン樹脂:DIC製ボンデイック BD−2250(固形分35%)
水性アクリル樹脂:中央理化工業製 リカボンドES−20(固形分44%)
【0060】
(塗装方法)
表面をイソプロピルアルコールで清拭したポリプロピレン基材に上記水性分散体組成物を噴霧塗布した。塗布後、試験片を乾燥機中で90℃30分間焼き付けし塗装板を得た。
【0061】
(付着試験:碁盤目剥離試験)
塗装板を23℃で24時間放置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目付着試験の方法に準じて2mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90℃方向にはく離させ、100マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方を付着性が良好とした。
【0062】
(参考例1)
(1)オレフィン系重合体(プロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%であるプロピレン系共重合体を、メタロセン触媒を用いて製造した。重量平均分子量80,000、Tm=75℃)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3) 上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4) 上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート85重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(1)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は18000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は16000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は34000であり、重合体ブロック(A)の融点は75℃であった。
(5) 上記(4)で得られたブロック共重合体(1)100重量部、トルエン50重量部およびイソプロピルアルコール100重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール3.3部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.0当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水400重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、トルエンおよびイソプロピルアルコールを110℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.13μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0063】
(参考例2)
(1)オレフィン系重合体(メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリプロピレンであり平均分子量160,000、Tm=70℃)を二軸押出機に供給し、400℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3) 上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4) 上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにt−ブチルアクリレート70重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびt−ブチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(4)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は50000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は35000、ブロック共重合体(4)の重量平均分子量は85000であり、重合体ブロック(A)の融点は70℃であった。
(5) 上記(4)で得られたブロック共重合体(2)100重量部およびテトラヒドロフラン200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水3.2部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水400重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランを100℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.11μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0064】
【表1】

【0065】
以上の結果から明らかなように、本発明の水性分散液はポリオレフィン系水性分散液および他の水性樹脂双方への相溶性に優れるため、ポリオレフィン系水性分散液および他の水性樹脂、および本発明の水性分散液を含むことからなる本発明における水性分散体組成物は、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる基材に対して優れた付着性を有する乾燥皮膜を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜40モル%、および前記ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位60〜98モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)を、前記カルボキシル基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる分散体を含む水性分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の水性分散液、ポリオレフィン系水性分散液および水性樹脂を含む水性分散体組成物であり、請求項1に記載の水性分散液が固形分として0.1重量%以上50重量%未満含むことを特徴とする水性分散体組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の水性分散体組成物を用いる、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。

【公開番号】特開2011−12218(P2011−12218A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159474(P2009−159474)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】