説明

水性化粧料及びその製造方法

【課題】溶液安定性を有すると共に浸透性に優れた水性化粧料を提供する。
【解決手段】(A)セラミド類を含有し、油相として水相中に分散するセラミド類含有粒子と、(B)脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方の脂肪酸成分と、(C)IOBが2.2以上且つ組成物中での全含有量が3質量%以上20質量%以下である第一の多価アルコール及び、IOBが2.0以下且つ組成物中での全含有量が0又は3質量%以下である第二の多価アルコールを含む多価アルコール成分と、を含むと共に、組成物中での界面活性剤の全含有量が0、又は1質量%以下であり、前記セラミド類の組成物中における全質量が前記脂肪酸成分の全質量の3.0倍以上である水性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、皮膚の角質層に存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築し、水分を維持していくために重要な役割を果たしている。人間の皮膚には、7種類の異なったタイプのセラミドが存在し、機能もそれぞれ異なっている。
しかしながら、セラミドは結晶性の高い物質であり、他の油剤への溶解性が低く、低温で結晶を析出する等の理由のため、化粧料に配合する場合、安定性を確保することが困難であった。また、水性のセラミド分散物は、界面活性剤等を用いて分散することは可能であるが、その粒子径を充分に小さくすることが難しく、透明性を欠いた分散物となることがあった。このような観点から、セラミドを含有すると共に安定性に優れた種々の技術が開発されている。
【0003】
セラミド類を透明に可溶化し、安定に配合する技術として、イオン性界面活性剤を用いる必要がなく、特定の脂肪酸や特定の界面活性剤を配合することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2には、セラミド、糖セラミド、コレステロール及びコレステロール脂肪酸エステルを含み、安定且つ皮膚保湿効果に優れた化粧料が開示されている。
特許文献3には、セラミド類、所定のカルボン酸、塩基、所定量の界面活性剤を含有し、界面活性剤の配合量が少なくても保存安定性及び使用感に優れた化粧料に好適な水中油型エマルションが開示されている。
【0004】
しかしながら、前述したように、セラミドは結晶性が高いため、安定な水乳化分散物を作製しても、一般的な化粧料成分と混合した場合に、乳濁したり析出物を発生したりすることが多かった。
また、例えば保湿性やバリア機能といった機能性を化粧料に付加するためにセラミド類を用いるとしても、セラミド類の浸透性は機能発揮の観点からは未だ充分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−316217号公報
【特許文献2】特公平8−18948号公報
【特許文献3】特開2006−312622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明は、溶液安定性を有すると共に浸透性に優れた水性化粧料、及び該水性化粧料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1] (A) セラミド類を含有し、油相として水相中に分散するセラミド類含有粒子と、(B) 脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方の脂肪酸成分と、(C)IOBが2.2以上且つ組成物中での全含有量が3質量%以上20質量%以下である第一の多価アルコール及び、IOBが2.0以下且つ組成物中での全含有量が0又は3質量%以下である第二の多価アルコールを含む多価アルコール成分と、を含むと共に、組成物中での界面活性剤の全含有量が0、又は1質量%以下であり、前記セラミド類の組成物中における全質量が前記脂肪酸成分の全質量の3.0倍以上である水性化粧料。
[2] 前記第一の多価アルコールがグリセリン、1,3−ブチレングリコール又はこれらの組み合わせである[1]に記載の水性化粧料。
[3] 前記脂肪酸成分が、炭素数10〜30の脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方である[1]又は[2]に記載の水性化粧料。
[4] 前記脂肪酸成分が、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の水性化粧料。
[5] 前記セラミド類含有粒子の体積平均粒径が500nm以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の水性化粧料。
[6] 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である[1]〜[5]のいずれかに記載の水性化粧料。
[7] 前記水性化粧料中に含まれる第二の多価アルコールのIOBが1.0以上2.0以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の水性化粧料。
[8] 前記第二の多価アルコールの含有量が、前記第一の多価アルコールの全含有量の80質量%以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の水性化粧料。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の水性化粧料の製造方法であって、少なくともセラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合して、多価アルコール成分を水相成分として有するセラミド分散物を得ること、該セラミド分散物と、水性組成物とを混合すること、を含む水性化粧料の製造方法。
[10] 前記多価アルコール成分を、前記油相成分と前記水相成分とを混合する際に前記水相成分として添加するか、又は、混合後に得られたセラミド分散液に添加する[9]に記載の水性化粧料の製造方法。
[11] 前記セラミド類を、セラミドの良溶媒に溶解することを含む[9]又は[10]に記載の水性化粧料の製造方法。
[12] 前記油相成分と前記水相成分とを、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合する[9]〜[11]のいずれかに記載の水性化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶液安定性を有すると共に浸透性に優れた水性化粧料、及び該水性化粧料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水性化粧料は、(A)セラミド類を含有し、油相として水相中に分散するセラミド類含有粒子と、(B)脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方の脂肪酸成分と、(C) IOBが2.2以上且つ組成物中での全含有量が3質量%以上20質量%以下である第一の多価アルコール及び、IOBが2.0以下且つ組成物中での全含有量が0又は3質量%以下である第二の多価アルコールを含む多価アルコール成分と、を含むと共に、組成物中での界面活性剤の全含有量が0、又は1質量%以下であり、前記セラミド類の組成物中における全質量が前記脂肪酸成分の全質量の3.0倍以上である水性化粧料である。
【0010】
本発明によれば、IOBに着目して区別された各々所定量の2種の多価アルコールを含む多価アルコール成分と、所定の脂肪酸成分とを含む水性化粧料であるので、機能性成分であるセラミド類の浸透性を高めると共に、セラミド類含有粒子の凝集発生を抑制して溶液安定性を良好なものにすることができる。
【0011】
本発明において「水相」とは、溶媒の種類にかかわらず「油相」に対する語として使用する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0012】
1−1.セラミド類含有粒子
本発明におけるセラミド類含有粒子は、セラミド類を少なくとも含有し、油相(油滴)として水相に分散される粒子である。
【0013】
本発明におけるセラミド類は、セラミド及びその誘導体を包含するものであり、合成品、抽出品等の由来は問わない。本発明における「セラミド類」とは、後述する天然型セラミド及びこれを基本骨格として有する化合物、並びにこれらの化合物を派生しうる前駆物質を包含し、天然型セラミド、スフィンゴ糖脂質などの糖修飾セラミド、合成セラミド、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシン、これらの誘導体を総称したものである。以下、本発明におけるセラミド類について詳述する。
【0014】
(天然型セラミド)
本発明において、天然型セラミドとは、ヒトの皮膚の角質層に存在するものと同じ構造を有するセラミドのことを意味する。また、天然型セラミドのより好ましい態様は、スフィンゴ糖脂質を包含せず、且つその分子構造中に水酸基を3個以上有する態様である。
以下、本発明に用いうる天然型セラミドについて詳細に説明する。
【0015】
本発明に好適に用いうる天然型セラミドとしては、セラミド1、セラミド9、セラミド4、セラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6、セラミド7、セラミド8、セラミド3B等を挙げることができる。
【0016】
また、溶解性を付与するために分子内に二重結合を導入することや、浸透性を付与するために疎水基を導入することなど、上記セラミド類に目的に応じて、修飾を加えたものを用いることもできる。
【0017】
これら天然型と称される一般的な構造を有するセラミドは、天然物(抽出物)、微生物発酵法で得られたものあるが、合成物、動物由来のものをさらに含んでもよい。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いるが、さらに必要に応じて非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。
なお、本発明の水性化粧料を、皮膚のエモリエントなどの目的に使用する場合には、バリア効果の観点から、天然型の光学活性体をより多く使用するのが好ましい。
【0018】
このような天然型セラミドは、市販品としても入手可能であり、例えば、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社製)、Ceramide TIC-001(高砂香料社製)、CERAMIDE II(Quest International社製)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社製)、CERAMIDE2(セダーマ社製)等が挙げられ、また、前記例示化合物(1−5)は、「セラミド3」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として、前記例示化合物(1−7)は、「セラミド6」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として入手可能である。
【0019】
セラミド類含有粒子が含有する天然型セラミドは、1種であっても、2種以上を併用してもよいが、セラミド類は一般に融点が高く、結晶性が高いことから、2種以上併用すると、乳化安定・取り扱い性の観点で好ましい。
【0020】
(糖修飾セラミド)
糖修飾セラミドは、分子内に糖類を含むセラミド化合物である。該セラミド化合物の分子内に含まれる糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトースなどの単糖類、ラクトース、マルトースなどの二糖類、さらには、これらの単糖類や二糖類をグルコシド結合により高分子化したオリゴ糖類、多糖類などが挙げられる。また、糖類としては、糖の単位におけるヒドロキシル基を他の基で置き換えた糖誘導体であっても構わない。このような糖誘導体としては、例えば、グルコサミンやクルクロン酸、N-アセチルグルコサミンなどがある。中でも、分散安定性の観点から、糖単位の数が1〜5である糖類が好ましく、具体的には、グルコース、ラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。
糖修飾セラミドの具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
糖修飾セラミドは、合成によっても、市販品としても入手可能である。例えば、上記例示化合物(4−1)は、岡安商店、「コメスフィンゴ糖脂質」(商品名)として入手可能である。
【0023】
(合成セラミド)
セラミド類似体は、セラミドの構造を模倣して合成されたものである。このような合成セラミドの公知の化合物としては、例えば、下記構造式に示されるような合成セラミド(3−1)及び(3−2)を挙げることができる。
【0024】
【化2】

【0025】
合成セラミドを適用する場合、例えば、本発明の水性化粧料の使用感と保湿感等の観点からは、天然型セラミドや糖修飾セラミドの構造を模倣して合成された合成セラミドであることが好ましく、天然型セラミドの構造を模倣して合成された合成セラミドであることがより好ましい。合成セラミドは、市販品としても入手可能である。例えば、上記例示化合物(3−2)(セチルヒドロキシプロリンパルミタミド)は、symrise株式会社製「CeramideBio」(商品名)として入手可能である。
【0026】
(スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン)
スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンとしては、合成品、天然品を問わず、天然型のスフィンゴシン、スフィンゴシン類縁体を使用することができる。
【0027】
天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)、アセチル化体等が挙げられる。
【0028】
これらのスフィンゴシンは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。具体例としては、例えば、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び以下に記載の例示化合物を挙げることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
フィトスフィンゴシンとしては、天然からの抽出品、合成品のいずれを用いてもよい。また、合成によっても、市販品としても入手可能である。
天然型スフィンゴシン類の市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DSphytosphingosine(DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられ、さらに、前記例示化合物(5−5)は、エボニック(旧デグサ)社製、「フィトスフィンゴシン」(商品名)として入手可能である。
【0031】
(酸)
本発明において、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンなどのスフィンゴシン類を使用する場合には、その化合物と塩を形成しうる酸性残基を有する化合物を併用することが好ましい。酸性残基を有する化合物としては、無機酸又は炭素数5以下の有機酸が好ましい。
【0032】
無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられ、リン酸、塩酸が好ましい。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。これらの化合物としては、リン酸、塩酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましく、特に乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましい。
【0033】
併用される酸は、スフィンゴシン類とあらかじめ混合して用いてもよく、セラミド類縁体含有粒子の形成時に添加してもよく、セラミド類含有粒子形成後にpH調整剤として添加して使用してもよい。
酸を併用する場合、添加量としては、用いられるスフィンゴシン類100質量部に対して、1〜50質量部程度であることが好ましい。
【0034】
(セラミド類の含有量)
本発明の水性化粧料を使用する際におけるセラミド成分の経皮からの効率的な吸収、及びセラミドに起因する効果発現の期待の観点からは、セラミド類含有粒子中の油相に含まれる油成分の全質量に対して、セラミド類を20質量%以上100質量%以下含有することがより好ましく、30質量%以上100質量%以下含有することが更に好ましい。このように、セラミド類の全質量に対して天然型セラミドが30質量%以上であることが天然型セラミドの効果発現の期待の観点から好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0035】
本発明の水性化粧料中におけるセラミド類の含有量としては、0.001質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.01質量%以上3質量%以下の範囲であることより好ましい。水性化粧料中に、セラミド類を上記範囲で含有することで、本発明の水性化粧料の保湿性・バリア機能回復効果が得られる。
【0036】
(セラミド類含有粒子の粒径)
セラミド類含有粒子の体積平均粒径は、セラミド類含有粒子の安定性及び皮膚浸透性の観点から、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは2nm以上150nm以下であり、3nm以上150nm以下が更に好ましく、5nm以上120nm以下が更により好ましく、5nm以上100nm以下が最も好ましい。
【0037】
本発明における分散粒子の粒径は、市販の種々の粒度分布計等で計測可能であるが、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用したものとする。
動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0038】
本発明における分散粒子の粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値であり、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
即ち、粒径の測定方法は、本発明の乳化物から分取した試料に含まれる油成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時の体積平均径として求めることができる。
【0039】
セラミド類含有粒子の形成態様としては、1)セラミド類含有粒子(油相)を予め固体粒子として形成した後、分散媒(水相)に分散させる態様の他、2)セラミド類を加熱して溶融状態とするか、或いは、適切な溶剤に溶解して液状とした後、水相に添加して分散させ、その後、常温に降温するか、或いは、溶剤を除去することで、セラミド類含有粒子を系中で形成する態様が挙げられる。また、天然型セラミド等は、他の油成分と相溶させるか、有機溶剤に溶解して調製する方が好ましい。
【0040】
(他の油成分)
本発明の水性化粧料は、水相に、セラミド類含有粒子を分散させて油相として構成されるものであるが、油相中に前記した天然型セラミド等のセラミド類とは異なる油成分(本明細書においては、適宜、他の油成分と称する。)及び/又は溶媒を含有させて、該油成分及び/又は溶媒中に、天然型セラミドを含む油滴様の分散粒子が、天然型セラミド類含有粒子として存在する形態を採ることもできる。なお、かかる形態を採る場合、本発明におけるセラミド類含有粒子の平均粒径とは、セラミド類含有粒子を含む油滴様の分散粒子の平均粒径を意味する。
【0041】
なお、本発明における「他の油成分」とは、常温では、セラミド類とは分離しない油成分を指し、「溶媒」とはセラミド類を溶解できる溶媒のことをいい、たとえばアルコール類が挙げられる。
【0042】
ここで、本発明において併用しうる他の油成分には特に制限はない。他の油成分としては、例えば、水性化粧料の使用目的に応じて添加される有効成分としての油成分であってもよく、また、分散安定性、皮膚に対する使用感の改善、水性化粧料の物性制御のために用いられる油成分であってもよい。以下、本発明に使用しうる他の油成分について述べる。なお、本発明における「(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩」のうち、炭素数10〜30の脂肪酸は、他の油成分としてセラミド含有粒子に含有されてもよい。炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩の詳細については後述する。
【0043】
(有効成分としての油成分)
本発明においては、水性媒体、特に水に不溶又は難溶の、化粧品用機能性成分を油成分として含むことが好ましい。本発明の水性化粧料が、例えば、後述するカロチノイド類等の機能性油成分を含むことで、本発明の水性化粧料に優れたエモリエント効果、皮膚の老化防止効果や酸化防止効果を付与することができる。
本明細書における「機能性成分」とは、生体に適用した場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る成分を意味する。
【0044】
本発明で使用することのできる油成分としては、水性媒体、特に水に不溶又は難溶の、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定は無いが、カロチノイド類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含むラジカル捕捉剤、またココナッツ油等の油脂類が好ましく用いられる。
【0045】
なお、水性媒体に不溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01g以下であることをいい、水性媒体に難溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01gを超え0.1g以下であることをいう。
【0046】
カロチノイド類
有効成分としての油成分としては、天然色素を含むカロチノイド類を好ましく用いることができる。
【0047】
本発明の水性化粧料に使用可能なカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリア等の天然物のものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイド類に含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0048】
カロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
【0049】
カロチノイド類としては、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0050】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばシス・トランス混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0051】
なお、上記のカロチノイド類は、セラミド類含有粒子に含有させる他、セラミド類含有粒子とは別に、水性化粧料中に含有されてもよい。
【0052】
油脂類
他の油成分として用いられる油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
【0053】
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
【0054】
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0055】
上記の中でも、水性化粧料中における分散粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドである、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0056】
本発明において、前記油脂は市販品を用いることができる。また、本発明において、前記油脂は1種単独で用いても混合して用いてもよい。
【0057】
本発明に使用しうる他の油成分であるフェノール性水酸基を有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、カテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ビタミンE類及びビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル及び没食子酸オクチルが挙げられる。
【0058】
アミン系化合物としてフェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミン又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0059】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0060】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特にビタミンE類が好ましく用いられる。
【0061】
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0062】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
【0063】
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0064】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として水性化粧料の特に油相に含まれていることが、効果的に油成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0065】
以上説明した、カロチノイド類、油脂類等の他の油成分の含有量は、本発明の水性化粧料の剤型に応じて適宜設定することができる。
【0066】
1−2.炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
本発明の水性化粧料は、炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩(以下、適宜「脂肪酸成分」と総称する場合がある。)を含有する。このような脂肪酸成分であれば、セラミド類の浸透性を高めることができる。また、脂肪酸成分は、水性化粧料を調製する際に、油相成分及び水相成分の混合工程において系中に容易に溶解するので、水性化粧料に含まれる微細なセラミド類含有粒子の分散安定性を良好にすることができ、水性化粧料の透明性を損なうことがない。
【0067】
脂肪酸成分として、炭素数10〜30の脂肪酸が適用される場合、該脂肪酸は油相成分として水性化粧料に含まれ、前記セラミド含有粒子の構成成分の一つとして含まれることが好ましい。
また、脂肪酸成分として、炭素数10〜30の脂肪酸の塩(脂肪酸塩)が適用される場合、該脂肪酸塩は、水性媒体に可溶であるので水性化粧料の水相成分とすることができる。本発明における脂肪酸成分としては、炭素数10〜30の脂肪酸又はその塩を単独で含んでもよいし、双方を併用してもよい。
【0068】
炭素数10〜30の脂肪酸としては、飽和又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。乳化及び分散安定性の観点からは、炭素数10〜30の脂肪酸としては、室温程度、例えば30℃で液体である脂肪酸であることが好ましい。
【0069】
本発明における脂肪酸成分として具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸等、及びこれらの塩を例示することができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、色味、臭い、及び皮膚刺激性の観点から、本発明における脂肪酸成分としては、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましく、オレイン酸であることが特に好ましい。
【0070】
脂肪酸成分として脂肪酸塩を適用する場合、該脂肪酸塩を構成する塩構造としては、ナトリウム、カリウム等の金属塩や、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン等の塩基性アミノ酸塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。塩の種類は、用いられる脂肪酸の種類等により適宜選択されるが、溶解性及び分散性の観点からは、ナトリウム塩などの金属塩が好ましい。
【0071】
本発明の水性化粧料では、界面活性剤等の乳化剤に代わりに脂肪酸成分を用いてセラミド類を分散させる。このため、界面活性剤等の乳化剤を用いた場合よりも、セラミド類の角質への浸透性を向上させることができる。本水性化粧料において脂肪酸成分は、セラミド類を良好に分散可能にする量で含有されていればよく、保存安定性及び浸透性の観点から、セラミド類の組成物中の全質量は、脂肪酸成分の全質量の3.0倍以上であることが好ましく、3.0倍以上100倍以下であることがより好ましく、4.0倍以上20倍以下であることがより好ましい。セラミド類を脂肪酸成分の3.0倍以上とすることにより過剰な脂肪酸の分離、析出を抑制することができるため好ましい。一方、セラミド類を脂肪酸成分の100倍以下とすることにより、セラミド類への定着が充分となって好ましい。
【0072】
また、水性化粧料の透明性の観点からは、脂肪酸成分の含有量は、水性化粧料の全質量の0.00001質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.00005質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
1−3.多価アルコール成分
本発明の水性化粧料における多価アルコール成分は、IOBが2.2以上且つ組成物中での全含有量が3質量%以上20質量%以下である第一の多価アルコールと、IOBが2.0以下且つ組成物中での全含有量が0又は3質量%以下である第二の多価アルコールとを含む。本発明では、このようにIOBが異なる2種の多価アルコール成分のうち、IOBが高い第一の多価アルコールを、IOBの低い第二の多価アルコールによりも多量に含むので、セラミド類含有粒子の凝集発生を効果的に抑制し、溶液安定性を良好なものにする。
なお、本発明において「多価アルコール」とは化合物中に水酸基を2以上有し、25℃で液体の物質を意味する。
【0074】
ここで、IOB(Inorganic Organic Balance)とは、有機概念図に基づき求められる無機性値及び有機性値の比を表わすものとして周知のものであり、油性基剤の極性の度合いを表し、下記の式(I)で表される。[「有機化合物の予測と有機概念図」、藤田(化学の領域11−10)、1957年、p.719〜725、「有機概念図による乳化処方設計」日本エマルジョン株式会社、矢口、1985年、p.98]に従って、具体的には、下記式(I)により求められる。
IOB=無機性値(IV)/有機性値(OV) (I)
【0075】
本発明では、第一の多価アルコールは、IOBが2.2以上のものである。このような第一の多価アルコールとしては、プロピレングリコール(IOB=3.33)、グリセリン(IOB=5.00)、1,3−ブチレングリコージグリセリン(IOB=3.5)等、又はこれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
中でも、粒子安定性の観点からIOBが2.4以上のものが好ましく、2.8以上のものだより好ましく、3.2以上のものが最も好ましい。であることが好ましく、特に、グリセリンが好ましい。
【0076】
一方、第二の多価アルコールは、IOBが2.0以下のものである。このような第二の多価アルコールとしては、イソプレングリコール(IOB=2.00)、ジプロピレングリコール(IOB=1.83)、エトキシジグリコール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)(IOB=1.63)ペンチレングリコール(IOB=2.00)、ヘキシレングリコール(IOB=1.82)等、又はこれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
本発明の水性化粧料中に含まれる第二の多価アルコールとしては、粒子安定性の観点からIOBが1.0以上2.0以下のものが好ましく、1.5以上、2.0以下であることが最も好ましい。
【0077】
第一の多価アルコールの水性化粧料における含有量は、3質量%以上20質量%以下である。第一の多価アルコールの含有量が3質量%以下では、第一の多価アルコールによる保湿効果が期待できない。また、第一の多価アルコールの含有量が20質量%以上であると、粒子安定性が悪化し、透明感が低下するため好ましくない。第一の多価アルコールの含有量は、5.0質量%〜15.0質量%であることがより好ましい。
【0078】
第二の多価アルコールの水性化粧料における含有量は、3質量%以下である。3質量%以下とすることにより、水性化粧料の溶液安定性を損なうことがない。粒子安定性の観点から、第二の多価アルコールの含有量は、0.0質量%〜2.0質量%であることが好ましく、0.0質量%〜1.0質量%以下であることがより好ましく、0、即ち水性化粧料中に含まれないことが特に好ましい。
また、溶液安定性の観点から、第二の多価アルコールの含有量は、第一の多価アルコールの全含有量の80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。
また、第一の多価アルコールの水性化粧料における含有量は、安定性と保湿性付与の観点より、セラミド類の全質量の3倍〜1000倍であることが5倍〜1000倍であることがより好ましく、10倍〜1000倍であることがより好ましい。
【0079】
多価アルコールは、一般に、保湿機能や粘度調整機能等を有し、水と油成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細な微粒子を形成しやすくする機能も有している。このことより、水性化粧料に含まれる分散粒子の粒子径をより微細化できる。また、多価アルコールの添加により、水性化粧料の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
このような観点から、多価アルコール成分として、第一の多価アルコール及び第二の多価アルコール以外にIOBが2.0を超えると共に2.2未満の第三の多価アルコールを、本発明の効果を妨げない範囲で含んでもよい。
本発明に使用できる第三の多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
【0080】
また、多価アルコール成分として使用される多価アルコールは、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であることが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、例えば、本発明の水性化粧料を皮膚に適用する場合であれば、皮膚浸透性をより高いものとすることができる。
【0081】
多価アルコール成分としての総含有量は、水性化粧料の全質量に対して3質量%以上であれば特に制限はないが、スティンギング(肌でのぴりぴり感)抑制の観点から、水性化粧料の全質量に対して20質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
第三の多価アルコールを含んで多価アルコール成分を構成する場合には、第一の多価アルコールによる効果を充分に発揮させる観点から、多価アルコール成分に占める第一の多価アルコールの含有量は、多価アルコール成分全質量の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0082】
1−4.界面活性剤
本発明の水性化粧料は、界面活性剤を含有してもよい。ここで、界面活性剤には、前記の脂肪酸成分は包含されない。界面活性剤の含有量は0、又は水性化粧料の全質量の1質量%以下である。また、水性化粧料の透明性、安定性の観点から、イオン性界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤の水性組成物中の含有量は、セラミド類の全質量に対して10倍〜100倍であってもよい。
このような本発明における脂肪酸成分以外の界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各界面活性剤が該当する。
【0083】
イオン性界面活性剤の例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、レシチン等が挙げられる。塩類としては、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。
これらのイオン性界面活性剤の含有量は、化粧料に用いた場合の皮膚刺激性の観点から、油成分の全質量に対して0.1倍量以下であることが好ましく、水性化粧料中に含まれないことが更に好ましい。
【0084】
非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、本発明の水性化粧料における油相成分として含有することができる。
本水性化粧料が非イオン性界面活性剤を含有する場合、非イオン性界面活性剤の含有量は、分散粒子の微細化の観点から水性化粧料の全質量に対して1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、また0.3質量%以上であることが好ましい。
【0085】
このような非イオン性界面活性剤は、中でも、乳化安定性の観点からポリグリセリン酸脂肪酸エステルであることが好ましく、特にHLBが10以上16以下のポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、適宜、「特定ポリグリセリン脂肪酸エステル」と称する。)であることがより好ましい。該ポリグリセリン脂肪酸エステルは油相に含有してもよい。
【0086】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤は、油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、油相として水性化粧料中に含まれるセラミド類含有粒子の粒径を細かくすることができる点で好ましい。
【0087】
ここで、HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0088】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0089】
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、その少なくとも一つが、平均重合度が10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸とのエステルであることが特に好ましい。
【0090】
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのHLBは10以上16以下である。
【0091】
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノリノール酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、デカグリセリンオレイン酸エステルが最も好ましい。
本発明においては、これらの特定ポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は2種以上用いることができる。
【0092】
本発明における界面活性剤としては、HLBが10以上16以下のポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種と、それとは分子構造の異なるHLBが5以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種以上とを組み合わせてもよい。なお、該HLBが5以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、上述したポリグリセリン脂肪酸エステルに包含されるポリグリセリン脂肪酸エステルあってもよいし、それ以外のポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
【0093】
さらに、本発明においては、界面活性剤として、デカグリセリンオレイン酸エステル、及び、グリセリンの重合度が10未満であり、且つ脂肪酸の炭素数が12〜18のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する態様が好ましい。該グリセリンの重合度が10未満であり、且つ脂肪酸の炭素数が12〜18のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及びテトラグリセリン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種であり、且つそのHLBが5.0以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであることがより好ましい。
【0094】
デカグリセリンオレイン酸エステルと好適に併用される、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及びテトラグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=6)、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=6)、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=14.5)、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=11)、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=9)、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=9)が挙げられる。
【0095】
本発明において、デカグリセリンオレイン酸エステルと、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及び/又はテトラグリセリン脂肪酸エステルとを併用する場合、その含有比率は、セラミド分散物の適用形態に応じて、適宜に設定することができるが、(デカグリセリン脂肪酸エステル)/(テトラグリセリン脂肪酸エステル及び/又はヘキサグリセリン脂肪酸エステル)=1/0〜1/1の範囲が好ましく、より好ましくは1/0.5であり、更に好ましくは1/0.25である。
【0096】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を適用することもできる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製、NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO−CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL DGDO、NIKKOL DGMIS、NIKKOL DGTIS、NIKKOL Tetraglyn 1−SV、NIKKOL Tetraglyn 1−O、NIKKOL Tetraglyn 3−S、NIKKOL Tetraglyn 5−S、NIKKOL Tetraglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn 1−L、NIKKOL Hexaglyn 1−M、NIKKOL Hexaglyn 1−SV、NIKKOL Hexaglyn 1−O、NIKKOL Hexaglyn 3−S、NIKKOL Hexaglyn 4−B、NIKKOL Hexaglyn 5−S、NIKKOL Hexaglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、NIKKOL Decaglyn 2−SV、NIKKOL Decaglyn 2−ISV、NIKKOL Decaglyn 3−SV、NIKKOL Decaglyn 3−OV、NIKKOL Decaglyn 5−SV、NIKKOL Decaglyn 5−HS、NIKKOL Decaglyn 5−IS、NIKKOL Decaglyn 5−OV、NIKKOL Decaglyn 5−O−R、NIKKOL Decaglyn 7−S、NIKKOL Decaglyn 7−O、NIKKOL Decaglyn 10−SV、NIKKOL Decaglyn 10−IS、NIKKOL Decaglyn 10−OV、NIKKOL Decaglyn 10−MAC、NIKKOL Decaglyn PR−20、三菱化学フーズ(株)製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0097】
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0098】
さらに、他の非イオン性界面活性剤の例としては、他のグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、これらの界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0099】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0100】
ソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製、NIKKOL SL−10、SP−10V、SS−10V、SS−10MV、SS−15V、SS−30V、SI−10RV、SI−15RV、SO−10V、SO−15MV、SO−15V、SO−30V、SO−10R、SO−15R、SO−30R、SO−15EX、第一工業製薬(株)製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0101】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0102】
ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リュートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0103】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
【0104】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0105】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0106】
1−5.高分子化合物
本発明の水性化粧料は、高分子化合物を含んでもよい。該高分子化合物としては、例えば、水溶性高分子化合物、両親媒性高分子、非水溶性高分子が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、広く合成高分子、天然高分子、半合成高分子のいずれも用いることができる。特に糖類、タンパク質類およびそれらの複合体が好ましい。
【0107】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デキストリン、デンプン誘導体、ガム類、ムコ多糖類、セルロース類等を含むがこれらに限定されるものではない。
これらの中で、代表的なものは、アガロース、アラビノース、アミロース、アミロペクチン、アカシアガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルキルグリコシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルドース、イヌリン、オリゴ糖、ガッティガム、カードラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ガラクトース、キサンタンガム、キシロース、キシログルカン、キチン、キトサン、グアーガム、クラスターデキストリン、β−グルカン、グルクロン酸、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グリセルアルデヒド、グルコサミン、グルコース、グルコマンナン、ケトース、コンドロイチン硫酸、サイリウムシードガム、ジェランガム、シクロデキストリン、スクロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロビオース、ソルビトール、デオキシリボース、デキストリン、転化糖、デンプン、大豆多糖類、糖アルコール、糖タンパク質、トラガントガム、トレハロース、ヒアルロン酸、フコース、フルクトース、プルラン、ペクチン、ヘパリン、ヘミセルロース、マルトース、マンニトール、マンナン、ラクトース、リボース等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0108】
これらの糖類の中では、粘度増加による分散安定性の観点からガム類、多糖類が好ましく、カロチノイド類の安定性の観点から、キサンタンガム、アラビアガム、プルランなどが更に好ましい。
【0109】
また、タンパク質類としては、アミノ酸がペプチド結合で重合したポリマー又はオリゴマーであればいかなる種類のものも用いることができるが、より好ましくは天然由来で且つ水溶性のものである。
タンパク質にはアミノ酸からなる単純タンパク質と、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質とがあり、いずれも用いることが出来る。単純タンパク質の例としては、ゼラチン、カゼイン、フィブロイン、セリシン、ケラチン、プロタミン等が挙げられる。また複合タンパク質としては、炭水化物に結合したタンパク質である糖タンパク質、脂質に結合したタンパク質であるリポタンパク質、金属イオンに結合したタンパク質である金属タンパク質、リボ核酸に結合したタンパク質である核タンパク質、リン酸基に結合したタンパク質であるリンタンパク質等がある。
【0110】
一方、一般的には、タンパク質原料から呼称される場合も多く、動物性筋肉タンパク質、乳タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質(小麦グルテン)、大豆タンパク質、酵母タンパク質、細菌タンパク質等が挙げられる。
なお、このようなタンパク質は、混合物としても使用してもよい。
また、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン等、皮膚にある高分子を化粧料中に配合することも好ましい。
上記のごとき高分子化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0111】
1−6.水溶性有機溶媒
本発明の水性化粧料は、水溶性有機溶媒を含有していてもよい。なお、本明細書における「油成分」には包含されない。
本発明における水溶性有機溶媒は、天然成分を含む油相として、後述する水性溶液との混合に用いられる。この水性有機溶媒は同時に、天然成分を抽出する抽出液の主成分である。即ち、本発明において天然成分は、水溶性有機溶媒を主成分とする抽出液へ抽出された状態で、水性溶液との混合に使用される。
【0112】
本発明に用いられる水溶性有機溶媒とは、水に対する25℃での溶解度が10質量%以上の有機溶媒を指す。水に対する溶解度はできあがった分散物の安定性の観点から30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0113】
水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、複数の水溶性有機溶媒の混合溶媒でもよい。また、水との混合物として用いてもよい。水との混合物を用いる場合には、上記水溶性有機溶媒は、少なくとも50容量%以上含まれていることが好ましく、70容量%以上であることがより好ましい。
【0114】
水溶性有機溶媒は、後述する水性化粧料の製造方法において、セラミド分散物を調製する際に、油相成分を混合して油相を調製するために好ましく用いられ、水相との混合後には除去されることが好ましい。
【0115】
このような水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品への用途に限定した場合、エタノール、プロピレングリコール、又はアセトンが好ましく、エタノール、又はエタノールと水との混合液が特に好ましい。
【0116】
1−7.その他の成分
上記した各成分の他、本発明の水性化粧料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、水性化粧料の用途に応じて、例えば、種々の薬効成分、防腐剤、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
そのような他の添加物としては、例えば、グリシンベタイン、キシリトール、トレハロース、尿素、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸等の保湿剤;アラントイン等の薬効剤;セルロースパウダー、ナイロンパウダー、架橋型シリコーン末、架橋型メチルポリシロキサン、多孔質セルロースパウダー、多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体;無水シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機粉体;メントール、カンファー等の清涼剤などの他、植物エキス、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素等が挙げられる。
【0117】
本発明の水性化粧料において、セラミド類含有粒子を、油相に他の油成分とともに用いる場合には、油相として含有される分散粒子の粒子径は、水性化粧料に含有される成分による因子以外に、後述するセラミド分散物の製造方法における攪拌条件(剪断力・温度・圧力)やマイクロミキサーの使用条件、油相と水相比率、などの要因によって目的とする150nm以下の微細化された油相粒子を得ることができる。
【0118】
本発明の水性化粧料の透明性は、外観を目視することによって概略判断することができるが、一般に、水性化粧料の濁度により判断することができる。水性化粧料の濁度は、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550((株)島津製作所製)を使用し、10mmセルにて、25℃における660nmの吸光度として測定することができる。本発明の水性化粧料が透明であることは、この660nmの吸光度による測定で0.050以下とする。水性化粧料の透明性としては、好ましくは0.040以下である。
【0119】
本発明の水性化粧料のpHは5以上9以下であることが好ましく、より好ましくはpH6以上8.5以下である。水性化粧料のpHはこの範囲内にすることにより、良好な分散安定性及び保存安定性を示す水性化粧料となる。水性化粧料のpHをこの範囲に調整するために、各種pH調整剤を用いてもよい。
pH調整剤は、水性化粧料の製造工程において、pHを所定の範囲内となるように、油相又は水相を調製する際に添加・配合してもよく、得られた水性化粧料に対して直接添加してもよい。使用可能なpH調整剤としては、塩酸、リン酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ等、この分野で通常用いられる各種無機塩類や、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等を用いることができる。
【0120】
2.水性化粧料の製造方法
本発明の水性化粧料は、脂肪酸若しくはその塩と、油相成分として水相中に分散されたセラミド類含有粒子と、少なくとも多価アルコール成分を含む水相成分と、で構成されていれば如何なる方法で製造してもよい。
【0121】
本発明の水性化粧料の好適な製造方法の一つは、微細で良好な溶液安定性を示すセラミド類含有粒子を形成するという観点から、脂肪酸若しくはその塩と、油相として水相中に分散されたセラミド類含有粒子とを含むセラミド分散物を予め製造した後に、他の必須成分又は任意成分を含む水性組成物と混合する方法である。この際、多価アルコール成分は、セラミド分散物を製造する際に水相成分として添加してもよく、得られたセラミド分散物の水相に添加してもよく、多価アルコール成分の一部ずつを双方で添加してもよい。
【0122】
この方法を採る場合、水性組成物としては、水などの水性媒体を主成分とする水溶液を用いることができ、上述した天然多糖類、多価アルコール等を含むものとして構成することができる。水性組成物は、セラミド分散物の水相成分との関係において適宜選択することができる。
また、セラミド分散物と水性組成物との配合比率は、前記した各成分の含有量が、上述した水性化粧料中の含有量の範囲内となれば如何なる配合比率で混合してもよいが、一般に、1:0.1〜1:10000とすることが好ましく、1:0.1〜1:1000とすることが更に好ましい。
【0123】
以下、本発明の水性化粧料の好適な製造方法に用いうるセラミド分散物に関して、更に詳細に説明する。
【0124】
(セラミド分散物)
水性化粧料を製造する際に調製されるセラミド分散物は、油相として水相中に分散されたセラミド類含有粒子と、油相成分又は水相成分である脂肪酸成分とを含む透明なセラミド分散物であり、少なくともセラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合することを含む製造方法により得ることができる。
本方法によれば、40℃以下の温度で油相成分と水相成分とを混合するので、油相成分が良好に溶解すると共に、経時安定性及び保存安定性に優れたセラミド分散物を得ることができる。
【0125】
油相を調製する際には、セラミド類を溶解させるための前述した水溶性有機溶媒を好ましく用いることができる。この目的で使用される水溶性有機溶媒としては前述したものをそのまま例示することができる。
【0126】
セラミド分散物を調製する際において油相成分と水相成分との混合時の温度は40℃以下である。この混合時の40℃以下の温度は、油相成分と水相成分とを混合する際に達成できればよいが、適用される混合(乳化)方法によって設定される領域を適宜変更することができる。マイクロミキサーを用いた方法では、少なくとも混合直前から分散直後までの領域における温度を40℃以下とすればよい。
【0127】
水相成分と油相成分との混合は、100MPa以上の剪断力を付加する高圧乳化法や、水相成分に油相成分を直接注入するジェット注入法などを公知の方法を用いてもよい。
セラミド類含有粒子の粒子径、分散安定性、保存安定性の観点から、油相成分及び水相成分を各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合するマイクロミキサーを用いた方法を用いることが好ましい。
【0128】
このとき、水相の粘度は30mPa・s以下であることが、セラミド類含有粒子の微粒子化の観点から好ましい。
【0129】
セラミド分散物の製造方法としては、例えば、a)脂肪酸塩(存在する場合)を含む水性媒体(水等)を用いて水相を調製し、b)少なくともセラミド類を含む油相成分を用いて油相を調製し、c)前記油相と、前記水相とを、マイクロミキサーを用いて、後に詳述する方法にて混合して分散を行い、体積平均粒径が1nm以上100nm以下のセラミド類含有粒子(分散粒子)を含むセラミド分散物(エマルション)を得るステップが挙げられる。
【0130】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を上記範囲とすることにより、有効成分を充分に含み、実用上充分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0131】
セラミド分散物を用いて粉末状態の組成物を得たい場合は、上記により得られたエマルション状態のセラミド分散物を噴霧乾燥等により乾燥させる工程を追加することで、粉末状態の組成物を得ることができる。
セラミド分散物の製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のセラミド分散物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せも同様である。
【0132】
(マイクロミキサー)
セラミド分散物の製造に適用される製造方法においては、体積平均粒径が1nm以上100nmのセラミド類含有粒子を安定に形成するため、油相成分と、水相成分とを、各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm以上1mm以下であるマイクロ流路に通過させた後に組み合わせて混合する製造方法をとることが好ましい。
【0133】
油相成分と水相成分との前記混合は、より微小な分散粒子を得るとの観点から、対向流衝突による混合であることが好ましい。
【0134】
対向流衝突により混合させる最も適切な装置は、対抗衝突型マイクロミキサーである。マイクロミキサーは、主に2つの異なる液を微小空間中で混合するもので、一方の液が機能性油成分を含有する有機溶媒相であり、もう一方が水性溶液とする水相である。
マイクロ化学プロセスの一つである粒径が小さなエマルション調製にマイクロミキサーを適用した場合、比較的低エネルギーで発熱が少なく、通常の攪拌乳化分散方式や高圧ホモジナイザー乳化分散に比べて、粒径が揃っていて、保存安定性にも優れる良好なエマルション又はディスパージョンを得易い。熱劣化し易い天然成分を含む乳化に最適な方法である。
【0135】
マイクロミキサーを用いて乳化又は分散する方法の概要は、水相と油相とをそれぞれ微小空間に分け、それぞれの微小空間同士を接触、あるいは衝突させることにある。公知となっているマイクロミキサーとしては、層流を維持してミキシングする方法と、流れを乱して、すなわち乱流でミキシングする方法の2種を挙げることができ、このいずれを用いてもよいが、安定性及び透明性の点では乱流を用いた方法が好ましい。乱流を用いたマイクロミキサーとしては、櫛歯型マイクロミキサー(IMM社製等)と、衝突型マイクロミキサー(KMミキサー等)を挙げることができる。
【0136】
本発明において、衝突型マイクロミキサーでミクロ混合して乳化する場合、乳化時の温度(乳化温度)は、得られるエマルションの粒径均一性の観点からマイクロミキサーの前記別な微小空間の温度(マイクロミキサーのミクロ混合部の温度)を40℃以下としてミクロ混合することが好ましく、0℃〜40℃がより好ましく、5℃〜30℃が特に好ましい。前記乳化温度0℃以上とすることにより、分散媒の主体が水であるため、乳化温度管理でき好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は40℃以下であることが好ましい。前記保温温度を40℃以下とすることにより、保温温度の管理が容易に制御でき、また、乳化性能に悪影響があるミクロな突沸現象を無くすことができる。前記保温温度は35℃以下の温度で制御することがさらに好ましい。
【0137】
本発明において、マイクロミキサーの微小空間に分けられる前後の水相、油相、及びマイクロミキサーの前記微小空間及び前記別な微小空間の保温温度を室温より高くして、ミクロ混合して乳化した後は、マイクロミキサーにより得られた水中油滴型エマルションは採取後、冷却して常温にすることは特に好ましい。
【0138】
本発明におけるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、1μm以上1mm以下であり、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm以上50,000μm以下が好ましい。
本発明における水相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、混合安定性の観点から、1,000μm以上50,000μm以下が特に好ましい。
【0139】
油相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm以上20,000μm以下が特に好ましい。
【0140】
また、マイクロミキサーで混合(乳化分散)する場合、乳化分散時の油相と水相の流量としては、用いるマイクロミキサーによっても異なるが、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープ化の観点から、水相の流量としては、10ml/min以上500ml/min以下が好ましく、20ml/min以上350ml/min以下がより好ましく、50ml/min以上200ml/min以下が特に好ましい。
【0141】
油相の流量としては、エマルション粒子径の微細化及び粒子径分布のシャープ化の観点から、1ml/min以上100ml/min以下が好ましく、さらには3ml/min以上50ml/min以下がより好ましく、5ml/min以上50ml/min以下が特に好ましい。
【0142】
両相の流量をマイクロチャンネルの断面積で割った値、すなわち両相の流速比(Vo/Vw)は、粒子の微細化とマイクロミキサーの設計上、0.05以上5以下の範囲であることが好ましい。但し、Voは水不溶性天然成分を含む有機溶媒相の流速であり、Vwは水相の流速である。また、流速比(Vo/Vw)が0.1以上3以下であることが、さらなる粒子の微細化の観点から最も好ましい範囲である。
【0143】
また、水相及び油相の送液圧力としては、水相と油相は0.030MPa以上5MPa以下と0.010MPa以上1MPa以下が好ましく、さらには、0.1MPa以上2MPa以下と0.02MPa以上0.5MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上1MPa以下と0.04MPa以上0.2MPa以下が特に好ましい。前記水相の送液圧力を0.030MPa以上5MPa以下とすることにより、安定な送液流量を維持できる傾向となり、油相の送液圧力を0.010MPa以上1MPa以下とすることにより、均一な混合性が得られる傾向となり好ましい。
【0144】
セラミド分散物の製造に適用しうる製造方法では、用いられた水溶性有機溶媒は、マイクロ流路を通して乳化又は分散後、除去することが好ましい。溶媒を除去する方法としては、ロータリーエバポレーター、フラッシュエバポレーター、超音波アトマイザー等を用いた蒸発法、限外濾過膜、逆浸透膜等の膜分離法が知られているが、特に限外濾過膜法が好ましい。
【0145】
限外濾過(Ultra Filter:略してUF)とは、原液(水、高分子物質、低分子物質、コロイド物質等の混合水溶液)を加圧し、UF装置に注水することにより、原液を透過液(低分子物質)と濃縮液(高分子物質、コロイド物質)2系統の溶液に分離し、取り出すことができる装置である。
【0146】
限外濾過膜は、ロブ−スリーラーヤン法により作製される典型的な非対称膜である。使用される高分子素材は、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ化ビニリデン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。限外濾過法では逆浸透法等と異なり、前処理をおこなわないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。限外濾過膜の性能指標は分画分子量であり、これが1,000〜300,000まで各種の膜が市販されている。市販の膜モジュールとしては、マイクローザーUF(旭化成ケミカルズ(株))、キャピラリー型エレメントNTU−3306(日東電工(株))等があるがこれに限定されるものではない。
【0147】
得られた乳化物からの溶媒除去には、膜の材質は溶媒耐性の観点から、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミドが特に好ましい。膜モジュールの形態としては、実験室スケールでは平膜が主に用いられるが工業的には中空糸型、スパイラル型が用いられるが、中空糸型が特に好ましい。また、分画分子量は有効成分の種類によって異なるが、通常、5,000〜100,000の範囲のものが用いられる。
【0148】
操作温度は0℃〜80℃まで可能であるが、有効成分の劣化を考慮すると10℃〜40℃の範囲が特に好ましい。
【0149】
ラボスケールの限外濾過装置としては、平膜型モジュールを用いる、ADVANTEC−UHP(アドバンテック(株))、フロータイプラボテストユニットRUM−2(日東電工(株))等がある。工業的にはそれぞれの膜モジュールを必要能力に応じた大きさと本数を任意に組み合わせてプラントを構成することができる。ベンチスケールのユニットとしては、RUW−5A(日東電工(株))等が市販されている。
【0150】
本発明のセラミド分散物に適用しうる製造方法では、溶媒除去に引き続き、得られた乳化物を濃縮化する工程を加えてもよい。濃縮方法としては、蒸発法、濾過膜法等溶媒除去と同じ方法、装置を用いることができる。濃縮の場合も限外濾過膜法が好ましい方法である。溶媒除去と同一膜を使うことができれば好ましいが、必要に応じて、分画分子量の異なる限外濾過膜を使用することもできる。また、溶媒除去とは異なる温度で運転し、濃縮効率を高めることも可能である。
【0151】
上記マイクロミキサーによる混合により得られたセラミド分散物は、水中油滴型エマルションである。本発明においては、セラミド分散物が含むセラミド類含有粒子の体積平均粒径(メジアン径)を、2nm以上150nm以下とするものである。得られた分散物の透明性の観点からは、より好ましくは5nm以上50nm以下である。セラミド類含有粒子(分散粒子)の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができ、その詳細は、既述のとおりである。
【0152】
3.水性化粧料の用途
本発明の化粧料は、化粧水、美容液、ジェル、乳液、洗顔料等、化粧料として知られている一般的な剤形のいかなる態様であってよい。本発明におけるセラミド類含有粒子の粒径が小さいという特徴を生かすためには、透明性の高い剤型にすることが好ましく、化粧水、美容液、ジェル製剤であることが好ましい。
【実施例】
【0153】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0154】
[実施例1]
(セラミド分散物の調製−1)
下記油相液1組成に記載の各成分を室温にて約30分間攪拌して、油相液1を調製した。
水相液1の調製は、純水に下記水相液1組成に記載の化合物を加えて約50℃に加温し、充分に攪拌溶解した後、残りの成分を加えて混合し、液温を30℃に調整した。
【0155】
<油相液1組成>
セラミド3B〔天然型セラミド〕 0.9部
セラミド6〔天然型セラミド〕 1.1部
オレイン酸(融点:14℃) 0.4部
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 97.6部
【0156】
<水相液1組成>
純水 97.14部
グリセリン 1.43部
1,3−ブチレングリコール 1.43部
水酸化ナトリウム 適量
【0157】
得られた油相液1(油相)と水相液1(水相)を、それぞれ1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサー100/100を用いてミクロ混合して、30℃のセラミド分散液1を得た。なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記のとおりである。
【0158】
−マイクロチャンネル−
油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
−流量−
外環に水相を21.0ml/min.の流量で導入し、内環に油相を3.0ml/min.の流量で導入してミクロ混合した。
【0159】
得られたセラミド分散液1を大川原製作所製の「エバポール(CEP−lab)」を使用し、エタノール濃度が0.1質量%以下になるまで繰り返し脱溶媒することで、セラミド濃度が2.0質量%になるように濃縮、調整し、pH=7.5のセラミド分散物Aを得た。ここで、セラミド濃度とは、セラミド分散物の全質量を基準としたセラミド類の含有量である。
【0160】
(水性化粧料の調製)
セラミド分散物以外の、第一の多価アルコール及び第二の多価アルコールを含む表1に記載の各成分を、調製後の水性化粧料において表1記載の量となるように室温で混合溶解した後、全体で100質量部となるように残量を水で調整し、水性化粧料Aを得た。
【0161】
[実施例2]
実施例2は、セラミド分散物の調製を、以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてセラミド分散物Bを得た。
即ち、油相液1と水相液1の調製は実施例1と同様に実施した。得られた水相液1をスターラー攪拌し、油相液1を、ゆっくり滴下し、30℃の水性化粧料Bを得た。
【0162】
[実施例3〜6]
実施例3〜5は、水性化粧料中の各成分の最終濃度が表1のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミド分散物C〜Fを得た後に、水性化粧料C〜Fを得た。
【0163】
[比較例1及び比較例2]
オレイン酸0.4部の代わりにポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部を用いた以外はそれぞれ実施例1及び実施例2と同様にして、セラミド分散物G及びHを得た後に、実施例1と同様にして、水性化粧料G及びHを得た。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、オレイン酸ポリグリセリル−10(HLB=12.0)を用いた。
[比較例3〜8]
比較例3〜8は、水性化粧料中の各成分の最終濃度が表1のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミド分散物I〜Nを得た後に、水性化粧料I〜Nを得た。
【0164】
<評価>
1.セラミド類含有粒子の粒径
調製直後の各水性化粧料中におけるセラミド類含有粒子(或いはそれを含む油滴様の分散粒子)の粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した。該粒径の測定は、セラミド類含有粒子の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて行った。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時の体積平均粒径として求めた。
【0165】
2.セラミド浸透性の評価
セラミド分散物の角層への浸透性を、成人男女(男性3名、女性2名)で評価を実施した。朝晩、1日2回、上腕部に1回80mg/6cmで塗布を実施した。1週間塗布を続けた後、塗布部を石鹸洗浄し、塗布部について、テープストリッピングを実施した。5層までストリッピングした後、各テープの付着物をエタノール抽出した後、セラミド量をLC−MSで定量した。セラミドVIの定量値より、角層への浸透性を以下基準で評価した。
評価は、比較例2の水性化粧料の浸透量を1.0としたときの各水性化粧料の浸透量に基づいて行った。結果を下記表1に示す。なお、表中「−」になっているものは、安定性が悪く、浸透性の評価ができなかった。
◎ :8.0以上
○ :2.0以上
× :2.0未満
なお、セラミド浸透性の評価が「×」の水性化粧料のうち、よりセラミド浸透性に劣るもの(1.0以下)については「××」で示した。
【0166】
3.保湿感の評価
作製した水性化粧料を女性10名で保湿性の評価を実施した。前腕部に水性化粧料を約0.2g塗布し、使用後の感触を以下基準で評価した。結果を下記表1に示す。
○:保湿感を十分に感じる
△:保湿感を感じる
×:保湿感を感じない
【0167】
4.水性化粧料の経時安定性の評価
経時安定性の評価は、濁度を用いて以下の方法により行った。
実施例1〜5及び比較例1〜7の各水性化粧料の調製直後の濁度を、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550((株)島津製作所製)を使用し、10mmセルにて660nmの吸光度として測定した。(測定温度:25℃)
さらに、各水性化粧料を60℃の恒温槽に24時間保管し、次に4℃の冷蔵庫に24時間保管するという繰り返しを7サイクル(2週間)実施した後、25℃に戻して再度濁度を測定した。
各水性化粧料の濁度の変化として、経時保存後の濁度と調製直後の濁度との差を算出し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
○:濁度の変化が0.05未満(濁度の変化はわかるが、化粧料としての商品価値上は問題の無いレベル)
△:濁度の変化が0.05〜0.1未満(化粧料としての商品価値上なんとか許容できるレベル)
×:濁度の変化が0.1以上(化粧料としての商品価値がないレベル)
なお、経時安定性の評価が「×」の水性化粧料のうち、より経時安定性に劣るもの(濁度の変化が0.3以上)については「××」で示した。
【0168】
【表1】

【0169】
表1に示されるように、脂肪酸成分を含み、IOBが2.2以上の多価アルコールを3質量%以上含む実施例の水性化粧料では、セラミド浸透性、保湿感、経時安定性のいずれにおいても良好であることが分かる。
特に、IOBが2.0以下の第二の多価アルコールを極少量又は含まない実施例の水性化粧料では、経時安定性が更に良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セラミド類を含有し、油相として水相中に分散するセラミド類含有粒子と、
(B)脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方の脂肪酸成分と、
(C)IOBが2.2以上且つ組成物中での全含有量が3質量%以上20質量%以下である第一の多価アルコール及び、IOBが2.0以下且つ組成物中での全含有量が0又は3質量%以下である第二の多価アルコールを含む多価アルコール成分と、
を含むと共に、組成物中での界面活性剤の全含有量が0、又は1質量%以下であり、前記セラミド類の組成物中における全質量が前記脂肪酸成分の全質量の3.0倍以上である水性化粧料。
【請求項2】
前記第一の多価アルコールが、グリセリン、1,3−ブチレングリコール又はこれらの組み合わせである請求項1記載の水性化粧料。
【請求項3】
前記脂肪酸成分が、炭素数10〜30の脂肪酸及び脂肪酸塩の少なくとも一方である請求項1又は請求項2記載の水性化粧料。
【請求項4】
前記脂肪酸成分が、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の水性化粧料。
【請求項5】
前記セラミド類含有粒子の体積平均粒径が、500nm以下である請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の水性化粧料。
【請求項6】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の水性化粧料。
【請求項7】
前記水性化粧料中に含まれる第二の多価アルコールのIOBが、1.0以上2.0以下である請求項1〜請求項6のいずれか一項記載の水性化粧料。
【請求項8】
前記第二の多価アルコールの含有量が、前記第一の多価アルコールの全含有量の80質量%以下である請求項1〜請求項7のいずれか一項記載の水性化粧料。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の水性化粧料の製造方法であって、
少なくともセラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合して、多価アルコール成分を水相成分として有するセラミド分散物を得ること、
該セラミド分散物と、水性組成物とを混合すること、
を含む水性化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記多価アルコール成分を、前記油相成分と前記水相成分とを混合する際に前記水相成分として添加するか、又は、混合後に得られたセラミド分散液に添加する請求項9記載の水性化粧料の製造方法。
【請求項11】
前記セラミド類を、セラミドの良溶媒に溶解することを含む請求項9又は請求項10記載の水性化粧料の製造方法。
【請求項12】
前記油相成分と前記水相成分とを、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合する請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の水性化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2011−231100(P2011−231100A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54511(P2011−54511)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】