説明

水性塗料組成物

【課題】
塗膜形成後早期の段階から長期間に渡って耐汚染性を発揮し、且つ耐水性、耐候性などの塗膜物性にも優れた塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】
カルボニル基含有共重合体(I)、カルボニル基含有乳化重合体(II)、ヒドラジン誘導体(III)並びに親水化付与剤(IV)を含有してなり、(I)の固形分配合量が、(II)固形分100質量部に対して0.01〜30質量部の範囲内であって、親水化付与剤(IV)が、加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物、コロイダルシリカ及び光触媒活性酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であって、その固形分配合量が、(II)固形分100質量部に対して、オルガノシラン化合物が3〜30質量部の範囲内、シリカが1〜50質量部の範囲内、酸化チタンが0.05〜10質量部の範囲内にあることを特徴とする水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性に優れた塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野において水性への転換がされている。一般に、水性塗料は親水性基や乳化剤等により、溶剤型塗料と比較して仕上がり性、耐水性等の性能が劣る傾向にある。しかしながら昨今の市場のニーズに伴い、仕上がり性や耐水性が良好であり、さらには耐汚染性といった高機能を発揮する塗膜を形成するような水性塗料の開発が望まれている。
【0003】
一般に耐汚染性を付与させる手法としては、塗膜を撥水性にする手法と親水性にする手法が知られており、塗料設計者は被塗物及びそれに対して付着しうる汚れ成分の種類や性質等に応じていずれかの手法を選択することができる。
【0004】
塗膜表面を親水性にする方法として、塗料中にオルガノシリケートの変性縮合物を配合する方法が知られている(特許文献1参照)。該変性オルガノシリケートは、塗膜中で降雨水等の水分により加水分解され、シラノール基となって塗膜表層を親水化すると考えられている。この方法は降雨水等により付着した汚れ成分を洗い流す自浄作用を発揮することができる利点を有するものであるが、塗膜表面を親水化するまでに時間がかかり、親水化発現までに汚れが付着する問題を有している。
【0005】
一方、特許文献2には3級アミノ基及びカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂、カルボニル基含有アクリルエマルションおよびヒドラジド化合物を含む水性塗料組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、ポリフルオロアルキル基とカルボニル基と親水性基とを含有する共重合体と他の共重合体及びヒドラジノ基を有する化合物を特定質量比で含有する水性塗料組成物が開示されている。
【0007】
これら特許文献2及び3に記載の水性塗料組成物によれば、耐汚染性に優れた塗膜を形成でき、しかもその耐汚染性を長期間維持することができるものであるが、常温乾燥の条件では仕上がり性、耐水性、耐候性が不十分な点については否めない。このように耐汚染性と耐水性、耐候性などの塗膜物性をバランスよく発揮する塗膜を常温乾燥の条件で良好な仕上がり性で得ることは非常に困難であり、その開発が必要とされている。
【0008】
【特許文献1】WO99/05228号公報
【特許文献2】特開2000−119589号公報
【特許文献3】特開2002−194264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、常温乾燥の条件でも塗膜形成後早期の段階から長期間に渡って耐汚染性を発揮し、且つ耐水性、耐候性などの塗膜物性に優れ、且つ仕上がり性にも優れた塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記した課題を鋭意検討した結果、カルボニル基含有乳化重合体及びヒドラジン誘導体を含む水性塗料組成物中に、親水性基及びカルボニル基を含有する共重合体と特定の親水化付与剤を特定量含ませることで、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は
1. カルボニル基含有共重合体(I)、カルボニル基含有乳化重合体(II)、ヒドラジン誘導体(III)並びに親水化付与剤(IV)を含有してなり、カルボニル基含有共重合体(I)が、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(a)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)並びにモノマー(a)及びモノマー(b)以外の親水性重合性不飽和モノマー(c)を含むモノマー混合物を親水性有機溶剤の存在下で共重合することにより得られる共重合体であって、カルボニル基含有共重合体(I)の固形分配合量が、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して0.01〜30質量部の範囲内であって、親水化付与剤(IV)が、加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物、コロイダルシリカ及び光触媒活性酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であって、その固形分配合量が、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して、加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物が3〜30質量部の範囲内、コロイダルシリカが1〜50質量部の範囲内、光触媒活性酸化チタンが0.05〜10質量部の範囲内にあることを特徴とする水性塗料組成物、
2. カルボニル基含有共重合体(I)におけるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)と親水性重合性不飽和モノマー(c)の合計の共重合割合がカルボニル基含有共重合体(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%以上であって、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合割合が0.1〜70質量%の範囲内にあることを特徴とする1項に記載の水性塗料組成物、
3. 親水性重合性不飽和モノマー(c)が、25℃の水における溶解度が0.5以上の重合性不飽和モノマーである1項または2項に記載の水性塗料組成物、
4. 親水性重合性不飽和モノマー(c)が、エステル部の炭素数が1〜2のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有重合性不飽和モノマー、モルホリノ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホニル基含有重合性不飽和モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種である1項ないし3項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
5. カルボニル基含有共重合体(I)が、モノマー(a)、(b)及び(c)以外のその他の重合性不飽和モノマー(d)をさらに共重合したものである1項ないし4項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
6. その他の重合性不飽和モノマー(d)が、その成分の一部としてフッ素含有重合性不飽和モノマーを含む5項に記載の水性塗料組成物、
7. カルボニル基含有共重合体(I)の重量平均分子量が1000〜50000の範囲内にある1項ないし6項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
8. 被塗面に、1項ないし7項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性塗料組成物によれば塗膜形成後早期の段階から長期間に渡って耐汚染性を発揮でき、且つ耐水性、耐候性などの塗膜物性に優れ且つ仕上がり性が良好な塗膜を常温乾燥の条件でも形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
カルボニル基含有共重合体(I)
本発明においてカルボニル基含有共重合体(I)は、親水性有機溶剤の存在下で、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(a)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)及び親水性重合性不飽和モノマー(c)を含むモノマー混合物を溶液重合することにより得られる共重合体である。
【0013】
本発明においてカルボニル基含有重合性不飽和モノマー(a)は、後述されるカルボニル基含有乳化重合体(II)と共にヒドラジン誘導体(III)と架橋反応することによって形成塗膜の耐汚染性を長期間発揮させるとともに、乳化重合体(II)との相溶性を向上させ最終的に形成される塗膜の仕上がり性と耐候性などの塗膜物性を向上させるために共重合されるモノマーであり、例えば(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、特にダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好適である。
【0014】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)は、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜に親水性を与えると共に仕上がり性、耐候性を向上させる効果を与えるものであり、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
本明細書において親水性重合性不飽和モノマー(c)は、上記モノマー(a)及び(b)以外の重合性不飽和モノマーであって、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜を親水性に改質させ耐汚染性を発揮させるためにカルボニル基含有共重合体(I)に導入されるモノマーを総称するものであり、そのような親水性重合性不飽和モノマーとしては25℃の水に対する溶解度が0.5以上特に1.0以上の重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0016】
上記親水性重合性不飽和モノマー(c)の具体例としては、炭素数が1〜2のアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマー、アミド基含有重合性不飽和モノマー、モルホリノ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホニル基含有重合性不飽和モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
上記エステル部の炭素数が1〜2のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アリルアルコール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1、2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1、3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の水酸基含有アリル化合物;等が挙げられる。
【0020】
上記アルコキシポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば下記式で表すことができる化合物を挙げることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R1は炭素数が1〜24のアルキル基、pは2又は3の整数、qは2〜200の整数を示す)。
【0023】
上記アミド基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記モルホリノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。
【0025】
上記スルホニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0026】
本発明においては、上記カルボニル基含有共重合体(I)におけるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)と親水性重合性不飽和モノマー(c)の合計の共重合割合がカルボニル基含有共重合体(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%以上であって、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合割合が0.1〜70質量%の範囲内にあることが適している。
【0027】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)と親水性重合性不飽和モノマー(c)の合計の共重合割合が30質量%以上にあると、形成塗膜の耐汚染性や仕上がり性が良好であり、好適である。
【0028】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合量が0.1〜70質量%の範囲内にあると、形成される塗膜の仕上がり性、耐候性、耐汚染性、耐水性のバランスの点から好適である。
【0029】
本発明において、上記カルボニル基含有共重合体(I)は、モノマー(a)、(b)及び(c)以外のその他の重合性不飽和モノマー(d)を必要に応じて共重合していてもよい。その具体例としては、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等縮合多環アルキル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー:フマル酸エステル化合物;ブチルビニルエーテル 、シクロヘキシルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル 、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル 、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート、ヒドロキシブチルビニルエーテルとイソシアネートとを反応させてなるビニルエーテル末端ウレタンオリゴマー等のビニルエーテル化合物;等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、本発明の水性塗料組成物の塗膜形成段階において、上記カルボニル基含有共重合体(I)が塗膜表面に配向しやすくするために、上記その他の重合性不飽和モノマー(d)は、フッ素含有重合性不飽和モノマーをその成分の一部として含んでいてもよい。
【0031】
かかるフッ素含有重合性不飽和モノマーとしては、分子中にフッ素と重合性不飽和基を含有する化合物を挙げることができる。
【0032】
上記重合性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基などを挙げることができる。
【0033】
かかるフッ素含有重合性不飽和モノマーの具体例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有−α−オレフィン類;トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル等のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルおよび(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを挙げることができ、パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートが適している。
【0034】
かかるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては例えば、
CH=CHCOCH、CH=CHCOCH、CH=CHCOCH、CH=CHCOCH11、CH=CHCOCH13、CH=CHCOCH15、CH=CHCOCH17、CH=CHCOCH19、CH=CHCOCH1021、CH=CHCOCH1123、CH=CHCOCH1225、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH11、CH=C(CH)COCH13、CH=C(CH)COCH15、CH=C(CH)COCH17、CH=C(CH)COCH19、CH=C(CH)COCH1021、CH=C(CH)COCH1123、CH=C(CH)COCH1225、CH=CHCO、CH=CHCO、CH=CHCO、CH=CHCO11、CH=CHCO13、CH=CHCO15、CH=CHCO17、CH=CHCO19、CH=CHCO1021、CH=CHCO1123、CH=CHCO1225、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO11、CH=C(CH)CO13、CH=C(CH)CO15、CH=C(CH)CO17、CH=C(CH)CO19、CH=C(CH)CO1021、CH=C(CH)CO1123、CH=C(CH)CO1225、CH=C(CH)COCH2CFCHF、CH=C(CH)COCF(CF等が挙げられ、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記カルボニル基含有共重合体(I)に上記フッ素含有重合性不飽和モノマーを共重合する場合の共重合量としては、上記その他の重合性不飽和モノマー(d)中0.01質量%以上、特に0.01〜78質量%の範囲内にあることが望ましい。
【0036】
また、上記カルボニル基含有共重合体(I)の製造において、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の好適な共重合割合としては、
モノマー(a)が、0.1〜70質量%、好ましくは1〜40質量%、
モノマー(b)が、0.1〜70質量%、好ましくは1〜40質量%、
モノマー(c)が、29.9〜99.8質量%、好ましくは59〜98質量%、
モノマー(d)が、0〜69.9質量%、好ましくは0〜39質量%であることが、最終的に形成される塗膜の仕上がり性が良好であり、耐汚染性、耐水性、耐候性などの塗膜物性をバランスよく発揮することができ、適している。
【0037】
上記モノマーの共重合に用いられる重合開始剤としては、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、 tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4´−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0038】
上記重合開始剤の好適な使用量としては、カルボニル基含有共重合体(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.001〜15質量%、好ましくは0.2〜8質量%の範囲内であることが望ましい。
【0039】
溶液重合法を適用するにあたり、使用可能な親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;3−メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。特に、プロピレングリコールエーテル系有機溶剤を使用するとカルボニル基含有共重合体(I)の水溶解性又は水分散性が良好であり、それを含む水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成塗膜の耐水性、耐候性の点から適している。
【0040】
上記カルボニル基含有共重合体(I)の重量平均分子量としては1000〜50000、特に1000〜30000の範囲内であると、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の表層にカルボニル基含有共重合体(I)が配向することができ、塗膜表面が親水化されるので、効率よく耐汚染性を発揮することができ、適している。
【0041】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0042】
カルボニル基含有乳化重合体(II)
本発明においてカルボニル基含有乳化重合体(II)は、水及び乳化剤の存在下でカルボニル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーを乳化重合することにより得られる乳化重合体である。
【0043】
乳化重合体(II)の製造において使用されるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーの具体例としては、上記カルボニル基含有共重合体(I)におけるカルボニル基含有重合性不飽和モノマー(a)と同様であり、特にダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好適である。
【0044】
かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーの好ましい共重合割合としては0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%である。
【0045】
上記カルボニル基含有重合性不飽和モノマーに共重合するためのその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状の炭化水素基を有する直鎖又は分岐状(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート;アリルアルコール等の水酸基含有アリル化合物等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
上記乳化重合体(II)において使用されるその他の重合性不飽和モノマーは、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを0.01〜10.0質量%、特に0.01〜3.0質量%含むことが、本発明の水性塗料組成物の製造安定性や形成塗膜の仕上がり性の点から好適である。
【0047】
上記乳化重合体(II)の乳化重合において使用される乳化剤としては、従来公知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤の例としては、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを挙げることができる。
【0048】
アニオン性乳化剤としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム類、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物;等);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物;等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
両イオン性界面活性剤としては、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類等を挙げることができる。
【0051】
上記乳化剤としては、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基を分子中に含有する反応性乳化剤なども使用可能である。
【0052】
上記乳化剤の使用量としては、乳化重合体(II)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内とすることができる。
【0053】
一方、重合開始剤としては、上記共重合体(I)の説明で列記した中から適宜選択して使用することができる。
【0054】
上記重合開始剤の好適な使用量としては、乳化重合体(II)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.001〜5質量%、0.2〜3質量%の範囲内であることが望ましい。
【0055】
ヒドラジン誘導体(III)
本発明においては、上記カルボニル基含有共重合体(I)及びカルボニル基含有乳化重合体(II)に加えてヒドラジン誘導体(III)をさらに含んでなる。これにより、形成塗膜の耐汚染性を長期に渡って維持させ、耐水性、耐候性等の塗膜物性をより一層向上させることができる。
【0056】
かかるヒドラジン誘導体(III)としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの飽和脂肪族ジカルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾン等が好適に使用できる。以上に述べた化合物は、それぞれ単独で使用することができ又は2種もしくはそれ以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
上記ヒドラジン誘導体(III)の配合量としては、カルボニル基含有共重合体(I)及びカルボニル基含有乳化重合体(II)の合計のカルボニル基1モルに対し、ヒドラジン誘導体(III)に含まれるヒドラジド基が0.01〜2.0モル、好ましくは0.1〜1.5モルの範囲内となるような割合とすることが形成塗膜の耐ワレ性などの点から適している。
【0058】
親水化付与剤(IV)
本発明の水性塗料組成物は、上記カルボニル基含有共重合体(I)と共に形成塗膜に親水性を付与し、長期に渡って形成塗膜の低汚染性を発揮させるべく、加水分解性シリル基を有するオルガノシラン化合物、コロイダルシリカ及び光触媒活性チタンから選ばれる少なくとも1種の親水化付与剤(IV)を含有する。
【0059】
加水分解性シリル基を含有するオルガノシランとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、これらオルガノシラン同士の加水分解縮合物などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜を経時で親水性化させ、汚染自浄性を付与させ、低汚染性を高めるために、加水分解性シリル基を含有するオルガノシランが、オルガノシリケート類を含有するものであることが望ましい。そのような目的で使用し得るオルガノシリケート類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のオルガノシリケート化合物、これらオルガノシリケート化合物同士の加水分解縮合物などが挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、該加水分解縮合物とは、分岐状、直鎖状又は環状のいずれであってもよく、ポリオキシアルキレン類などで変性したものであってもよい。
【0061】
上記親水化付与剤(IV)として加水分解性シリル基を有するオルガノシラン化合物を使用する場合は、塗料組成物を2液型とし、このものを使用直前にそれ以外の成分と配合混合することが望ましい。
【0062】
本発明においてコロイダルシリカは、シリカ微粒子を溶媒に分散した分散液である。シリカ微粒子の平均粒子径としては、5〜200nm程度であり、10nm以下であることが望ましい。
【0063】
溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0064】
このようなコロイダルシリカ としては、市販品では、例えば「スノーテックス」シリーズ(日産化学工業社製)、「オスカル」(触媒化学工業社製)などが挙げられる。
【0065】
上記光触媒活性チタンとしては、光触媒活性を有するものであれば特に制限なく使用することができるが、好適なものとして、アナターゼ型二酸化チタンを挙げることができる。好適なアナターゼ型二酸化チタンの市販品としては、例えば、「ST−01」、「ST−21」、「ST−31」、「AMT600」(以上、石原テクノ(株)製)などを挙げることができる。
【0066】
水性塗料組成物:
本発明において、上記カルボニル基含有共重合体(I)の固形分使用量としては、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して0.01〜30質量部の範囲内であり、好ましくは0.1〜15質量部の範囲内であることが望ましい。0.01質量部未満では、形成塗膜に親水性を付与するには不充分であり、一方30質量部を超えると耐水性の低下や貯蔵性の低下、仕上がり性が低下するので好ましくない。
【0067】
また、上記親水化付与剤(IV)の固形分配合量としては、親水化付与剤(IV)が加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物の場合は、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して3〜30質量部の範囲内であり、好ましくは5〜20質量部の範囲内であることが望ましく、親水化付与剤(IV)がコロイダルシリカの場合は、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して1〜50質量部の範囲内であり、好ましくは5〜40質量部の範囲内であることが望ましく、親水化付与剤(IV)が光触媒活性酸化チタンの場合は、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲内であり、特に0.1〜5質量部の範囲内であることが望ましい。
【0068】
本発明において親水化付与剤(IV)の量がこの範囲内であると、形成塗膜の耐汚染性と、耐水性、光沢とをバランスよく発揮することができ、好ましい。
【0069】
上記本発明の水性塗料組成物は、製造安定性、形成塗膜の仕上がり性の点から、組成物中のカルボキシル基に対する中和剤を含むことが適している。中和剤の配合は塗料製造のどの段階においておこなってもよく、その際に使用し得る中和剤としては、酸性基を中和しうる塩基性化合物であればよく、その具体例としては例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類;アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明の水性塗料組成物が顔料を含む場合には、塗料分野にて使用される従来公知の顔料を使用することができる。その具体例としては、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラなどの着色顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明において、上記顔料の使用量は、顔料の種類や目的とする仕上がり性に応じて適宜調整できるが一般には水性塗料組成物に含まれる樹脂固形分100質量部当たり10〜200質量部、特に20〜150質量部の範囲内に調整されることが形成塗膜の仕上がり性、塗装作業性などの点から望ましい。
【0072】
上記本発明の水性塗料組成物は、硬化剤;増粘剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤等の塗料用添加剤;を必要に応じて配合することができる。
【0073】
上記本発明の水性塗料組成物は、新しい基材面や旧塗膜面に適用することができ、該基材としては、特に制限されるものではなく、例えば、コンクリート、モルタル、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、コンクリートブロック、木材、石材等の無機基材;プラスチック等の有機基材;鉄、アルミニウム等の金属などが挙げられ、また、旧塗膜としては、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂などの塗膜が挙げられる。これらの被塗面には、水性又は溶剤型の下塗り材を塗布してもよく、必要に応じて、該下塗り材を塗布した後、上記水性塗料組成物を上塗り材として塗布することができる。
【0074】
本発明の水性塗料組成物は、従来公知の手法で塗装することができ、乾燥方法としては、常温乾燥でも耐汚染性、耐候性等の物性に優れた塗膜を形成することが可能であるが必要に応じて加熱乾燥又は強制乾燥を行ってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0076】
カルボニル基含有共重合体の製造
製造例1〜7
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル70部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した後、四つ口フラスコ内液の温度を110℃に保ったまま下記表1に示す単量体、溶媒及び重合開始剤の混合物を滴下ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後1.5時間110℃に保ち、その後、追加の重合開始剤(tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)0.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル10部に溶解させた開始剤溶液を1.5時間かけて一定速度で滴下し、さらに3時間110℃に保ち、撹拌を続け、アクリル樹脂溶液(A−1)〜(A−7)を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
カルボニル基含有乳化重合体の製造
製造例8
2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水312部、「Newcol 707SF」(日本乳化剤社製、乳化剤、固形分30%)2.3部を加え、窒素置換後、80℃に保持した。下記組成のプレエマルジョンを4つ口フラスコに滴下する直前に0.7部の過硫酸アンモニウムを加え、該プレエマルジョンを3時間にわたって滴下した。
脱イオン水 338部
ダイアセトンアクリルアミド 32部
アクリル酸 3.2部
スチレン 97部
メチルメタクリレート 260部
2−エチルヘキシルアクリレート 100部
n−ブチルアクリレート 150部
「Newcol 707SF」 62部
過硫酸アンモニウム 1.2部
滴下終了後30分より30分間、0.7部の過硫酸アンモニウムを7部の脱イオン水に溶かした溶液を滴下し、さらに2時間80℃に保持し、その後約40〜60℃に降温した後、アンモニア水でpHを8〜9に調整し、固形分51.2%のカルボニル基含有乳化重合体を得た。
【0079】
水性塗料組成物の製造
実施例1〜24及び比較例1〜9
表2記載の成分配合により水性塗料組成物を製造した。
【0080】
【表2】

【0081】
(注1)二酸化チタン:「TITANIX JR−603」商品名、テイカ社製、
(注2)オルガノシリケート:「ES−40」商品名、コルコート社製、固形分97%
(注3)コロイダルシリカ:「スノーテックス20」商品名、日産化学社製、固形分20%
(注4)光触媒活性酸化チタン:「ST−40」商品名、石原産業社製
(注5)消泡剤:「SNデフォーマーA63」商品名、サンノプコ社製、
(注6)顔料分散剤:「ノプコサントK」商品名、サンノプコ社製、
(注7)増粘剤:2.5%ヒドロキシエチルセルロース。
【0082】
性能評価:
上記で得られた水性塗料組成物を用いて6ミルドクターブレードで引き塗りし、25℃で7日間養生し、テストパネルとし、下記評価試験に供した。結果を表2に併せて示す。
(1)耐汚染試験:
各テストパネルを、東京都川崎市屋外南側に30°の角度をつけて固定し、その状態のまま3ヶ月放置した後、塗膜の汚れ具合を目視により以下の基準で評価した。◎:放置前と比較して全く汚れがわからない。
○:放置前と比較して少々汚れているが、水洗でほぼきれいに汚れが落ちる。
△:放置前と比較して汚れが目立ち、水洗で若干汚れがおちる。
×:放置前と比較して汚れが目立ち、水洗してもその汚れが落ちない。
(2)初期水接触角:
各テストパネルの表面に脱イオン水を1滴(約15μl)滴下し、水滴の接触角を「コンタクトアングルメータCA−X150型」(商品名、協和化学(株)製)にて測定し、下記を基準として4段階で評価した。
た。
◎:55°未満、○:55°以上且つ70°未満、△:70°以上且つ75°未満、×:75°以上。
(3)促進耐候性試験後の接触角:
各テストパネルの塗膜を促進耐候性試験機「メタリングバーチカルMV3000」を用いて劣化させた後(光照射時間40時間)水接触角を測定し、下記を基準として4段階で評価した。
◎:50°未満、〇:50°以上且つ65°未満、△:65°以上且つ80°未満、×:80°以上。
(4)耐水性
各テストパネルを上水に20℃で7日間浸漬した後、塗面状態を観察し、下記基準にて評価した。
◎:非常に良好、○:良好、△:一部ブリスター発生、×:全面にブリスター発生。
(5)鏡面光沢度(60°グロス):
各テストパネルの鏡面光沢度(60°グロス)を測定し、下記を基準として4段階で評価した。
◎:80以上、〇:70以上且つ80未満、△:60以上且つ70未満、×:60未満。
(6)耐候性
各テストパネルをサンシャインウェザオメーターを用いて1,000時間耐候性試験を行い下記式によって光沢保持率(%)を算出することによって評価した。
光沢保持率(%)=(試験後の60°グロス)/(試験前の60°グロス)×100
◎:80%以上、○:70%以上で且つ80%未満、△:60%以上で且つ70%未満、×:60%未満。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル基含有共重合体(I)、カルボニル基含有乳化重合体(II)、ヒドラジン誘導体(III)並びに親水化付与剤(IV)を含有してなり、共重合体(I)が、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(a)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)並びにモノマー(a)及びモノマー(b)以外の親水性重合性不飽和モノマー(c)を含むモノマー混合物を親水性有機溶剤の存在下で共重合することにより得られる共重合体であって、カルボニル基含有共重合体(I)の固形分配合量が、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して0.01〜30質量部の範囲内であって、親水化付与剤(IV)が、加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物、コロイダルシリカ及び光触媒活性酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であって、その固形分配合量が、カルボニル基含有乳化重合体(II)固形分100質量部に対して、加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物が3〜30質量部の範囲内、コロイダルシリカが1〜50質量部の範囲内、光触媒活性酸化チタンが0.05〜10質量部の範囲内にあることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
カルボニル基含有共重合体(I)におけるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)と親水性重合性不飽和モノマー(c)の合計の共重合割合がカルボニル基含有共重合体(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%以上であって、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合割合が0.1〜70質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
親水性重合性不飽和モノマー(c)が、25℃の水における溶解度が0.5以上の重合性不飽和モノマーである請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
親水性重合性不飽和モノマー(c)が、エステル部の炭素数が1〜2のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有重合性不飽和モノマー、モルホリノ基含有重合性不飽和モノマー及びスルホニル基含有重合性不飽和モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
カルボニル基含有共重合体(I)が、モノマー(a)、(b)及び(c)以外のその他の重合性不飽和モノマー(d)をさらに共重合したものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
その他の重合性不飽和モノマー(d)が、その成分の一部としてフッ素含有重合性不飽和モノマーを含む請求項5に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
カルボニル基含有共重合体(I)の重量平均分子量が1000〜50000の範囲内にある請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
被塗面に、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2009−67871(P2009−67871A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236983(P2007−236983)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】