説明

水性液体洗浄剤組成物

【課題】クリーミーな泡質かつ高起泡性で皮膚に対する作用が温和な水性液体洗浄剤組成物を得る。
【解決手段】特定のリン酸エステルと炭素数高級アルコール及び炭素数5〜9のグリコール類を含有する水性液体洗浄剤組成物。好ましくは、弱酸性、pH4.5〜6.5であって、さらにベタイン系両性界面活性剤やアルキル基の炭素数が6〜10のアルキルグリセリルエーテルを含有する。ここで特定のリン酸エステルは、平均炭素数9〜15で分岐率10%以上のアルキル鎖又はアルケニル鎖を有する高級アルコールを適宜エチレンオキシド付加した後、リン酸化し、アルカリ金属で中和して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーミーな泡質で、かつ高起泡性の水性液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤や乳化剤として使用されるリン酸エステル系界面活性剤は一般にモノエステルとジエステルの混合物あるいはモノ、ジ、トリエステルの混合物として供給される。この混合物は水に対する溶解性や起泡力が低く、軽い泡質であって、洗浄性能が十分でないため、水性液体洗浄剤の基剤としては必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
このため、モノエステル含量を高め、対イオンを特定のものにしたり(例えば特許文献1)、疎水基として分岐鎖のものを用いたり、さらにpHを調整したり、他の添加成分を加えることにより(特許文献2〜4)、水に対する溶解性や起泡力を改善して水性液体洗浄剤として用いることが提案されている。しかしながら、これら水性液体洗浄剤は、皮膚に対する作用が温和で、かつ水に対する溶解性や起泡力を改善されたものの、クリーミーな泡質の点で十分に満足できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭53−26806号公報
【特許文献2】特開2003−313587号公報
【特許文献3】特開2004−137170号公報
【特許文献4】特開2004−331942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、リン酸エステル系界面活性剤を用いて、クリーミーな泡質で、かつ高起泡性の水性液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が65/35〜95/5で、(C)成分と(A)成分及び(B)成分の合計量の質量比(C)/[(A)+(B)]が1/2〜1/50である水性液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【0007】
(A)一般式(1)で表されるリン酸モノエステル又はその塩
【化1】

(式中、R1は平均炭素数9〜15で分岐率10%以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、X1及びX2はそれぞれ水素原子又はアルカリ金属を示し、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数で、0〜5の数を示す)
【0008】
(B)一般式(2)で表されるリン酸ジエステル又はその塩
【化2】

(式中、R1及びnは前記と同じ意味を示し、X3は水素原子又はアルカリ金属を示す)
(C)一般式(3)で表される高級アルコール
2−OH (3)
(式中、R2は炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を示す)
(D)炭素数5〜9のグリコール類
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性液体洗浄剤組成物は、成分(A)及び成分(B)のリン酸エステル系アニオン界面活性剤に加えて特定の高級アルコール及びグリコール類を用いることにより、リン酸エステル系アニオン界面活性剤のもつ皮膚に対する温和性を維持しつつ、クリーミーな泡質で、かつ高起泡性となる。また、高級アルコールを含有するにもかかわらず、透明ないし半透明の水性液体洗浄剤とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の(A)成分及び(B)成分は、例えば対応する脂肪族アルコールに必要によりエチレンオキサイドを付加させた後、無水リン酸又はオキシ塩化リン等のリン酸化剤で(A)成分と(B)成分とが前記のような質量比で得られるような条件で反応させ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリで完全又は部分中和することにより、(A)成分と(B)成分の混合物として得られる。
【0011】
ここで用いられる脂肪族アルコールとしては、前記のような平均炭素数及び分岐率を有するように脂肪族アルコールを混合した混合物、あるいは前記のような平均炭素数及び分岐率を有する市販の脂肪族アルコール、具体的には、いわゆるオキソアルコールを用いることができる。
【0012】
ここに平均炭素数は質量平均であり、起泡性の点から9〜15、好ましくは10〜14である。また、分岐率とは、R1で示される全アルキル基又はアルケニル基中の分岐アルキル基又はアルケニル基の割合(質量%)を示し、起泡性の点から10%以上、好ましくは10〜60%、更に好ましくは10〜40%である。
【0013】
このような平均炭素数及び分岐率(カッコ内に示す)を有する市販のオキソアルコールとしては、シェル社のリネボール911(10.2、21%)、ネオドール1(11.0、20%)、ネオドール23(12.7、20%)、三菱化学のダイアドール11(11.0、50%)、ダイアドール115(12.5、50%)、ドバノール23(12.6、25%)、ドバノール25(13.5、25%)、サソールのライアール111(11.0、60%)、日産化学のオキソコール1213(12.5、40%)等を挙げることができる。
【0014】
本発明に用いるリン酸エステル系界面活性剤におけるエチレンオキサイドの平均付加モル数nは0〜5、泡量の観点から好ましくは0.2〜1である。また、X1〜X3で示されるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、特にナトリウム及びカリウムが好ましい。
【0015】
本発明の水性液体洗浄剤組成物中の(A)成分と(B)成分の割合は、水溶性、起泡性等の観点から、質量比で、(A)/(B)=65/35〜95/5、好ましくは65/35〜90/10である。また、本発明の水性液体洗浄剤組成物中の(A)成分と(B)成分の合計含有量は、泡立ち及び洗浄力の観点から好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
【0016】
本発明の(C)成分において、R2は炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基であるが、クリーミーな泡質の観点から、炭素数14〜16の直鎖アルキル基が好ましい。また(C)成分として、油脂原料由来の混合高級アルコールを用いてもよく、油脂の例としてヤシ油、パーム核油、菜種油等が挙げられる。油脂由来高級アルコールは単独で用いても、異なる油脂由来高級アルコールを数種組み合わせてもよい。
【0017】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対し、質量比(C)/[(A)+(B)]として1/2〜1/50、好ましくは1/3〜1/20、さらに好ましくは1/4〜1/10である。本発明の水性液体洗浄剤組成物中の含有量としては、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは2〜5質量%である。
【0018】
本発明の(D)成分は炭素数5〜9のグリコール類であるが、特に炭素数5又は6のグリコール類が好ましく、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキサメチレングリコール(1,6−ヘキサンジオール)等が挙げられる。これらは2種以上を用いることもできる。その含有量は、本発明の水性液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。前述の(C)成分は泡質の向上に寄与するが、これを含有することでリン酸エステル系界面活性剤組成物は白濁する傾向がある。そこで(D)成分を組み合わせることで(C)成分の溶解性が改善され、組成物の透明性が向上する。
【0019】
本発明の水性液体洗浄剤組成物は、上記(A)成分〜(D)成分を前記量で含有し、かつ弱酸性であるのが好ましい。具体的には、水性液体洗浄剤組成物をイオン交換水で20倍(質量比)に希釈した時、25℃でpH4.5〜6.5を示すのが好ましい。
【0020】
本発明の水性液体洗浄剤組成物は、泡立ち及び泡持ちを改善するため、さらにベタイン系両性界面活性剤を含有するのが好ましい。ここでベタイン系両性界面活性剤としては、カルボベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、脂肪酸アミドベタイン系が挙げられる。これらのうち、ラウリン酸アミドベタイン、やし脂肪酸アミドベタイン等の脂肪酸アミドベタイン系両性界面活性剤が好ましい。これらベタイン系両性界面活性剤の含有量は、本発明の水性液体洗浄剤組成物中、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。
【0021】
本発明の水性液体洗浄剤組成物は、アルキル基の炭素数が6〜10のアルキルグリセリルエーテルを含有することにより、さらに泡立ちを向上させることができる。好ましいアルキルグリセリルエーテルは、α−モノグリセリルエーテルであり、具体的には、n−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、デシルグリセリルエーテルが挙げられる。これらアルキルグリセリルエーテルの含有量は、水性液体洗浄剤組成物中好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0022】
本発明の水性液体洗浄剤組成物中には増泡、増粘、洗浄力向上、感触向上等を目的として他の界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化アミノ酸塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン型ブロックポリマーの非イオン界面活性剤;第4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤を配合することもできる。
【0023】
本発明の水性液体洗浄剤組成物は、水を主たる媒体とするものであり、粘度や透明度を調整することで、液状、ゲル状、クリーム状等とすることができる。また、本願発明のリン酸エステルの皮膚に対する作用が温和なことから、洗顔料、全身洗浄剤等、皮膚洗浄剤として用いることが好ましい。
【0024】
本発明の水性液体洗浄剤組成物を透明ないし半透明とすれば、パール剤を配合した場合にきれいなパール外観を得ることができる。この場合、水性液体洗浄剤組成物の波長650nmでの透過率を55%以上、さらには65%以上とするのが好ましい。ここで透過率は、パール剤のかわりに水を用いて全量を100となるように配合して測定する。
【0025】
また本発明の水性液体洗浄剤組成物中には必要に応じて、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;メチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、エタノール等の粘度調整剤;トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェノール等の抗炎症剤;メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;香料、色素、酸化防止剤を配合することができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
表1に示すリン酸エステル混合物を用い、表2に示す組成の水性液体洗浄剤組成物を製造した。具体的には、成分(A)、(B)、(D)及びイオン交換水を混合し、pHを調整した後、粉砕した成分(C)を加え、加熱して全体が均一となるよう混合した。
【0027】
【表1】

【0028】
得られた水性液体洗浄剤組成物について、下記方法で起泡性、手洗いによる泡質及び泡立ち、並びに外観を観察、評価した。結果を表2に示す。
【0029】
(1)pHの測定
水性液体洗浄剤組成物2gを秤量し、イオン交換水38gを加えて5分間攪拌し、均一になった後、pHを、pH計(HORIBA pHメーターF−22)で25℃にて測定した。
【0030】
(2)起泡性の測定
水性液体洗浄剤組成物をイオン交換水で各10倍に希釈し、50ml有栓メスシリンダーに各5mlずつ取り、温度25℃の環境下、手により上下に50回振とうさせ、振とう直後の泡沫容積を測定した。
【0031】
(3)手洗い評価
各水性液体洗浄剤組成物0.5gを片方の手に取り、水道水を用いて希釈し、両手を水洗し手洗い試験を行い、泡質及び泡立ちについて以下の基準で判定した。泡質及び泡立ちともに比較品1を基準(×)として評価した。
【0032】
<泡質>
◎ クリーミーな泡
○ ややクリーミーな泡
△ ふつうの泡
× 軽い泡
【0033】
<泡立ち>
○ 非常に泡立つ
△ 泡立つ
× 不良
【0034】
(4)外観評価
各水性液体洗浄剤組成物の調整直後の外観を観察し、以下の基準にて判定した。液の外観は、透明→半透明→白濁の順に透過性が低くなることとした。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例2
以下に示す組成の水性液体全身洗浄剤を常法により製造した。得られた水性液体全身洗浄剤は刺激性の低いもので、クリーミーな泡質及び高起泡性のものであった。
【0037】
(成分) (質量%)
リン酸エステル混合物(1) 15%
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(30%) 10%
n−オクチルグリセリルエーテル 2%
ミリスチルアルコール 3%
ジプロピレングリコール 10%
48%水酸化カリウム pH6.0となる量
香料 0.5%
精製水 バランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が65/35〜95/5で、(C)成分と(A)成分及び(B)成分の合計量の質量比(C)/[(A)+(B)]が1/2〜1/50である水性液体洗浄剤組成物。
(A)次の一般式(1)で表されるリン酸モノエステル又はその塩
【化1】

(式中、R1は平均炭素数9〜15で分岐率10%以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、X1及びX2はそれぞれ水素原子又はアルカリ金属を示し、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数で、0〜5の数を示す)
(B)一般式(2)で表されるリン酸ジエステル又はその塩
【化2】

(式中、R1及びnは前記と同じ意味を示し、X3は水素原子又はアルカリ金属を示す)
(C)一般式(3)で表される高級アルコール
2−OH (3)
(式中、R2は炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を示す)
(D)炭素数5〜9のグリコール類
【請求項2】
イオン交換水で20倍に希釈した時のpHが4.5〜6.5である請求項1記載の水性液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらにベタイン系両性界面活性剤を含有する請求項1又は2記載の水性液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらにアルキル基の炭素数が6〜10のアルキルグリセリルエーテルを含有する請求項1〜3いずれか記載の水性液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−241261(P2006−241261A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57019(P2005−57019)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】