説明

水性系への添加物としての酸化アルキレン単位を含有するコポリマーの使用

工業技術装置におけるリン酸塩又はホスホン酸塩を含有する水性系への添加物としての、(a)アクリル酸及び/又は前記アクリル酸の水溶性塩50〜93mol%、(b)メタクリル酸及び/又は前記メタクリル酸の水溶性塩5〜30mol%(c)式I[式中、変数は次の意味を表す:R1は、水素又はメチル、R2は、化学結合又は非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキレン、R3は、同じ又は異なる、非分枝又は分枝したC2〜C4−アルキレン基、R4は、非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキル、nは、3〜50]の少なくとも1種の非イオン性モノマー2〜20mol%をランダム状に又はブロック状に重合により組み込んで含有する酸化アルキレン単位を有するコポリマーの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業技術装置におけるリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する水性系への添加物としての、
(a) アクリル酸及び/又は前記アクリル酸の水溶性塩50〜93mol%、
(b) メタクリル酸及び/又は前記メタクリル酸の水溶性塩5〜30mol%及び
(c) 式I
【化1】

[式中、変数は次の意味を表す:
1は、水素又はメチル、
2は、化学結合又は非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキレン、
3は、同じ又は異なる、非分枝又は分枝したC2〜C4−アルキレン基、
4は、非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキル、
nは、3〜50]の少なくとも1種の非イオン性モノマー2〜20mol%をランダム状に又はブロック状に重合により組み込んで含有する、酸化アルキレン単位を有するコポリマーの使用に関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記コポリマーと、ポリリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する水処理及び腐食防止のための調製剤に関する。
【0003】
工業技術装置の熱を伝達する構成要素である水性系は、通常では多様な物質の添加により安定化されている。
【0004】
この冷媒及び熱媒には、通常では沈着物の形成及び腐食を抑制するためにリン含有の調製剤が添加されている。これは、特に線状又は環状のポリリン酸塩及びホスホン酸塩、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(GBTC)及びアミノトリメチレン−ホスホン酸(ATMP)のナトリウム塩である。ポリリン酸塩及びホスホン酸塩は、溶液中で水の硬度を高めるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを捕捉し、さらに前記塩は系中に存在する金属イオン、特に鉄(II)イオン及びカルシウムイオンと共に系の金属表面上に薄い保護膜を形成することにより腐食の抑制に作用する。特に水の硬度が高い場合には、しかしながら不所望に厚いホスホン酸カルシウム及びリン酸カルシウムの皮膜並びに粒状のホスホン酸カルシウム及びリン酸カルシウムのアグロメレートが形成されてしまい、これが導管系を詰まらせる。さらに、しばしば、特にポリリン酸塩の加水分解によりリン酸カルシウムの析出が生じる。
【0005】
この不所望の副作用を軽減しかつそれによりポリリン酸塩及びホスホン酸塩の安定化するために、有機ポリマー、特に酸化アルキレンを含有するモノマーのコポリマーをベースとする有機ポリマーも使用される。これは、特に、ポリアルキレングリコールアリルエーテルを有する、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸のコポリマーである(EP-A-554 074, JP-A-56-81 320, JP-A-57-84 794, JP-A-57-185 308)。EP-A-1 158 009には、この目的のために、アリルエーテルをベースとする低分子量のモノマーを有するアクリル酸のコポリマーが開示されている。
【0006】
JP-A-63-89 687には、アクリル酸又はメタクリル酸及びポリアルキレングリコールメタクリラートのコポリマーが、窒素含有複素環式化合物と組み合わせて、鋼及び銅の代替の腐食防止剤として使用されている。
【0007】
酸化アルキレンを含有するコポリマーは、特に水循環系中のケイ酸塩の皮膜の阻害剤としても記載されている。JP-A-2000-24691には、この目的で、不飽和カルボン酸及びポリ酸化アルキレン単位を含有する、>50000〜3000000の平均分子量Mwを有するモノマーのコポリマーが請求されている。詳細には、アクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリラートとのコポリマーが開示されている。JP-A-10-57 988によると、これはアクリル酸又はメタクリル酸とポリアルキレングリコールビニルエーテルをベースとするコポリマーであることもできる。
【0008】
アクリル酸、メタクリル酸及びポリアルキレングリコールメタクリラートをベースとするターポリマーは、今まで、製紙工業における鉱物性顔料用の分散剤及び/又は磨砕助剤(US-A-2004/019148)として又は洗剤及び洗浄剤への鉱衣防止添加剤(WO-A-03/104373)として記載されている。このような適用は、しかしながら、ポリマーのアルカリ安定性及び温度安定性に関して明らかに長期間にわたりはるかに高い要求を課せられる本願発明の適用分野とは比較できない。
【0009】
最終的に、リン酸塩イオンは、水中でさえも天然成分として含まれていることがあり、特に、河川又は海からの水の場合がそうであり、工業的水性系中に持ち込まれ、リン酸塩沈殿物及びリン酸塩皮膜の不所望な形成が生じてしまう。
【0010】
これについての例として、製糖工業が挙げられる。この場合に甜菜の洗浄のために使用される水はしばしばリン酸塩を含有し、前記リン酸塩は生じる糖水溶液(いわゆる糖汁)の蒸発の際に共に沈殿し、同様に沈殿する糖結晶から手間をかけて分離しなければならない。
【0011】
従って、本発明の根底をなす課題は、リン酸塩イオン及びホスホン酸塩イオンを水性系中で安定化することができかつ不所望な難溶性リン酸塩沈殿物及びホスホン酸塩沈殿物の形成を抑制することができるポリマーを提供することである。
【0012】
従って、工業技術装置におけるリン酸塩又はホスホン酸塩を含有する水性系への添加物としての、
(a) アクリル酸及び/又は前記アクリル酸の水溶性塩50〜93mol%、
(b) メタクリル酸及び/又は前記メタクリル酸の水溶性塩5〜30mol%及び
(c) 式I
【化2】

[式中、変数は次の意味を表す:
1は、水素又はメチル、
2は、化学結合又は非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキレン、
3は、同じ又は異なる、非分枝又は分枝したC2〜C4−アルキレン基、
4は、非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキル、
nは、3〜50]の少なくとも1種の非イオン性モノマー2〜20mol%をランダム状に又はブロック状に重合により組み込んで含有する、酸化アルキレン単位を有するコポリマーの使用が見出された。
【0013】
さらに、前記コポリマー及びポリリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する水処理及び腐食防止のための調製剤が見出された。
【0014】
本発明により使用することができるアルキレンオキシド単位を含有するコポリマーは、重合により組み込まれた成分(a)及び(b)としてアクリル酸又はメタクリル酸及び/又は前記酸の水溶性塩、特にアルカリ金属塩、例えばカリウム塩及び特にナトリウム塩、及びアンモニウム塩を含有する。
【0015】
本発明により使用することができるコポリマーに対するアクリル酸(a)の割合は、50〜93mol%、有利に65〜85mol%、特に有利に65〜75mol%である。
【0016】
メタクリル酸(b)は、本発明により使用することができるコポリマー中に5〜30mol%、特に10〜25mol%、特に15〜25mol%含有されている。
【0017】
前記コポリマーは、成分(c)として式I
【化3】

[式中、変数は次の意味を有する:
1は、水素又はメチル、有利にメチル、
2は、化学結合又は非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキレン、有利に化学結合、
3は、同じ又は異なる、非分枝又は分枝したC2〜C4−アルキレン基、有利にC2〜C3−アルキレン基、特に有利にエチレン、
4は、非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキル、有利にC1〜C2−アルキル、
nは、3〜50、有利に5〜40、特に有利に10〜30]の非イオン性モノマーを含有する。
【0018】
モノマーIのための特に適当な例としては、次のものが挙げられる:メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリ(プロピレンオキシド−コ−エチレンオキシド)(メタ)アクリラート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリラート及びエトキシポリ(プロピレンオキシド−コ−エチレンオキシド)(メタ)アクリラート、この場合には、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラートが有利であり、メトキシポリエチレングリコールメタクリラートは特に有利である。
【0019】
この場合、ポリアルキレングリコールは、3〜50個、有利に5〜40個、特に10〜30個の酸化アルキレン単位を含有する。
【0020】
本発明により使用することができるコポリマーに対する非イオン性モノマー(c)の割合は、2〜20mol%、有利に5〜15mol%、特に5〜10mol%である。
【0021】
本発明により使用することができるコポリマーは、一般に3000〜50000、有利に10000〜30000、特に有利に15000〜25000の平均分子量Mwを有する。
【0022】
前記コポリマーのK値は、通常、15〜40、有利に20〜35、特に27〜30である(25℃で1質量%の水溶液中で測定、H. Fikentscher著, Cellulose-Chemie, 第13巻, 第58〜64頁及び第71〜74頁(1932)による)。
【0023】
本発明により使用することができるコポリマーは、前記モノマーのラジカル重合によって製造することができる。この場合には、全ての公知のラジカル重合法により作業することができる。塊状重合の他に、特に溶液重合及び乳化重合の方法を挙げることができ、この場合には、溶液重合が好ましい。
【0024】
前記重合は、有利に溶剤として水中で実施される。しかし、この重合は、アルコール性溶剤中で、特にC1〜C4−アルコール、例えばメタノール、エタノール及びイソプロパノール、又は前記溶剤と水との混合物中でも行うことができる。
【0025】
重合開始剤としては、熱により分解して、その際にラジカルを形成する化合物ならびに光化学的に分解して、その際にラジカルを形成する化合物(光開始剤)が適当である。
【0026】
熱により活性化可能な重合開始剤は、20〜180℃、有利に50〜90℃の範囲内の分解温度を有する開始剤が好ましい。適当な熱開始剤の例は、無機ペルオキソ化合物、例えばペルオキソ二硫酸塩(ペルオキソ二硫酸アンモニウム及び有利にペルオキソ二硫酸ナトリウム)、ペルオキソ硫酸塩、過炭酸塩及び過酸化水素;有機ペルオキソ化合物、例えば過酸化ジアセチル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ジアミル、過酸化ジオクタノイル、過酸化ジデカノイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジベンゾイル、ビス(o−トルイル)ペルオキシド、過酸化スクシニル、過酢酸tert−ブチル、過マレイン酸tert−ブチル、過イソ酪酸tert−ブチル、過ピバル酸tert−ブチル、過オクタン酸tert−ブチル、過ネオデカン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過酸化tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノアート及びジイソプロピルペルオキシジカルバマート;アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及びアゾビス(2−アミドプロパン)二塩酸塩である。
【0027】
前記開始剤は、還元性化合物との組み合わせで開始剤/調節剤系として使用することができる。この種の還元性化合物の例としては、リン含有化合物、例えば亜リン酸、次亜リン酸塩及びホスフィン酸塩、硫黄含有化合物、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、ならびにヒドラジンが挙げられる。
【0028】
適当な光開始剤の例は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルジアルキルケトン及びその誘導体である。
【0029】
有利に熱開始剤が使用され、この場合には、無機ペルオキソ化合物、特にペルオキソ二硫酸ナトリウム(ペル硫酸ナトリウム)が好ましい。特に有利に、このペルオキソ化合物は、硫黄含有還元剤、特に亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせでレドックス開始剤系として使用される。前記の開始剤/調節剤系を使用する場合には、末端基として−SO3-Na+及び/又は−SO4-Na+を有するコポリマーが得られる。
【0030】
これとは別に、リン含有開始剤/調節剤系、例えば次亜リン酸塩/ホスフィン酸塩を使用することもできる。
【0031】
光開始剤もしくは開始剤/調節剤系の量は、それぞれ使用されるモノマーに合わせることができる。例えば、有利な系のペルオキソ二硫酸塩/亜硫酸水素塩を使用する場合には、通常、モノマー(a)、(b)及び(c)の全量に対してそれぞれ、ペルオキソ二硫酸塩2〜6質量%、有利に3〜5質量%及び一般に亜硫酸水素塩5〜30質量%、有利に5〜10質量%が使用される。
【0032】
望ましい場合には、重合調節剤を使用することもできる。当業者に公知の化合物、例えば硫黄化合物、例えばメルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコラート、チオグリコール酸及びドデシルメルカプタンが適している。重合調節剤を使用する場合、この重合調節剤の使用量は、モノマー(a)、(b)及び(c)の全量に対してそれぞれ、一般に0.1〜15質量%、有利に0.1〜5質量%、特に有利に0.1〜2.5質量%である。
【0033】
重合温度は、一般に30〜200℃、有利に50〜150℃、特に有利に80〜120℃である。
【0034】
この重合は大気圧下で実施することができるが、しかしながら、有利に閉鎖された系中で発生される固有圧下で行なわれる。
【0035】
本発明により使用することができるコポリマーを製造する場合、モノマー(a)、(b)及び(c)は、それ自体として使用することができるが、モノマー(c)の製造の際に生じる反応混合物を使用することもできる。例えばメトキシポリエチレングリコールメタクリラートの代わりにポリエチレングリコールモノメチルエーテルと過剰量のメタクリル酸とのエステル化の際に生じるモノマー混合物を使用することができる。有利に、(1)アクリル酸、(2)メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物及び(3)ラジカル開始剤を同時に合わせることにより、エステル化を重合混合物中でin situで実施することもできる。その際、場合により前記エステル化のために必要な触媒、例えばメタンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸を付加的に使用することができる。
【0036】
本発明により使用することができるコポリマーは、等重合度反応、例えばアクリル酸/メタクリル酸コポリマーとポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとの反応によって製造することもできる。しかしながら、前記モノマーのラジカル共重合が有利である。
【0037】
この適用にとって望ましい場合には、本発明により使用することができるカルボン酸基含有コポリマーの製造の際に生じる水溶液を、塩基、特に苛性ソーダ液の添加によって中和又は部分的に中和することができ、つまり4〜8、特に4.5〜7.5の範囲内のpH値に調節することができる。
【0038】
本発明により使用されるコポリマーは、工業技術装置中でのリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する水性系への添加剤として特に適している。
【0039】
特に、前記コポリマーは、熱伝達プロセスの場合に使用される、硬度安定のため及び腐食保護のためにポリリン酸塩イオン又はホスホン酸塩イオンを含有する水循環系への添加剤として重要である。
【0040】
本発明により使用されるコポリマーは、前記イオンを安定化し、それによりその作用を促進し、かつ水の硬度が高くかつpH値が高い場合であっても、不所望な難溶性のリン酸塩及びホスホン酸塩の皮膜及び沈殿物の形成を有効に抑制する。
【0041】
前記コポリマーは、水性系に、つまり水循環系に別個に添加されるか、又は既に予め他の添加剤と混合して、例えば特に、ポリリン酸塩及び/又はホスホン酸塩並びに所望の場合に他の成分、例えば殺菌剤及び界面活性剤を含有する水性調製剤の形で使用することができる。
【0042】
水処理及び/又は腐食保護のための調製剤中に使用されるポリリン酸塩(これは線状又は環状であることができる)の例として、トリリン酸ナトリウム及びヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0043】
適当なホスホン酸塩の例は、冒頭に述べた塩のHEDP、GBTC及びATMPの他に、エチレンジアミンテトラメチレンホスホナート、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホナート、及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホナートである。
【0044】
本発明により使用することができるコポリマーは、しかしながら、リン酸塩は添加されないがいずれにせよリン酸塩含有の水性系への添加剤としても特に重要である、それというのも前記コポリマーはこの場合でも難溶性のリン酸塩の沈殿物及び皮膜の形成を抑制するためである。
【0045】
この使用分野の特別な例として、製糖工業を挙げることができる。このコポリマーは、この場合、蒸発を考慮される糖水溶液中に、不所望なリン酸塩沈殿物の形成を有効に抑制できる。
【0046】
実施例
A) 酸化アルキレン単位を有するコポリマーの製造
コポリマーI
窒素供給管、還流冷却器及び計量供給装置を備えた反応器中で、蒸留水619gと亜燐酸2.2gとの混合物を窒素供給下で攪拌しながら100℃の内部温度に加熱した。次いで、同時に(1)アクリル酸123.3gと蒸留水368.5gとからなる混合物、(2)蒸留水72.0gと、メタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリラート(ポリエチレングリコールのMw:1100)との4:1のモル比での混合物216gとからなる混合物、(3)40%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液46g及び(4)蒸留水164.6g中のペルオキソ二硫酸ナトリウム18.4gの溶液を連続して5時間添加した。100℃で窒素下で2時間撹拌し、引き続き室温に冷却した後、50質量%の苛性ソーダ液190gを添加した。
【0047】
固体含量25.7質量%及びK値27.2(1質量%の水溶液、25℃)を有するコポリマーIの僅かに黄色の透明な溶液が得られた。
【0048】
B) 冷却水循環系中でのリン酸カルシウム及びホスホン酸カルシウムの抑制のための適用
B1) リン酸カルシウム−抑制
コポリマーIのリン酸カルシウム抑制作用の試験のために、次の試薬を使用した:
リン酸塩決定のためのバナジン酸/モリブド酸−試薬(Merck)
試験溶液A: 5質量%のH3PO4水溶液0.42g、蒸留水で1リットルに補充
試験溶液B: CaCl2・6H2O 1.64g/l
MgSO4・7H2O 0.89g/l
NaHCO3 1.08g/l
次のように行った:
試験溶液A100mlを、Lupolen(R)(BASF)からなる閉鎖可能な300mlビーカー中に装入し、次いでまずそれぞれコポリマーIの0.1質量%の水溶液2、4もしくは5ml、引き続き試験溶液B100mlを添加した。
【0049】
その際にそれぞれ得られた試験溶液は次のパラメータを有していた:
全硬度:5.4mmol/l
炭酸塩硬度:6.42mmol/l
リン酸塩含有量:10ppm
ポリマー含有量:10、20もしくは25ppm。
【0050】
閉鎖されたビーカーを、次いで70℃で24時間振盪した(Schuettelwasserbad 1086, GFL)。室温に冷却後(約1h)、前記試料溶液を、孔径0.45μmの膜フィルターを介して吸引した。
【0051】
リン酸塩残留量の測定のために、濾液50mlにバナジン酸/モリブド酸−試薬10mlを添加した。10分後に、リン酸塩含有量を測光(Dr. Lange Photometer, Typ LP2W)により黄変の強度について校正曲線を用いて決定した。
【0052】
表1にはそれぞれ達成された抑制率が%で示されている。100%の抑制率の場合にはリン酸カルシウム沈殿は形成されず、<100%の抑制率の場合には試験溶液のリン酸塩含有量はリン酸カルシウムの形成による相応して低下する。
【0053】
表1
【表1】

【0054】
B2) ホスホン酸カルシウム−抑制
コポリマーIのホスホン酸カルシウム抑制作用の試験のために、次の試薬を使用した:
Dr. Lange Fertigtest LCK 350
試験溶液A: HEDP(Dequest(R) 2010, Solutia)の1質量%の溶液2.2g、蒸留水で1リットルに補充
試験溶液B: CaCl2・6H2O 1.64g/l
MgSO4・7H2O 0.89g/l
NaHCO3 1.08g/l
次のように行った:
試験溶液A100mlを、Lupolen(R)(BASF)からなる閉鎖可能な300mlビーカー中に装入し、次いでまずそれぞれコポリマーIの0.1質量%の水溶液2、4もしくは5ml、引き続き試験溶液B100mlを添加した。
【0055】
その際にそれぞれ得られた試験溶液は次のパラメータを有していた:
全体の硬度:5.4mmol/l
炭酸塩硬度:6.42mmol/l
ホスホン酸塩含有量、リン酸塩として計算して:10ppm
ポリマー含有量:10、20もしくは25ppm。
【0056】
閉鎖されたビーカーを、次いで70℃で24時間振盪した(Schuettelwasserbad 1086, GFL)。室温に冷却後(約1h)、前記試料溶液を、孔径0.45μmの膜フィルターを介して吸引した。
【0057】
濾液中のホスホン酸塩残留量を、 Dr. Lange Fertigtest LCK 350により測光によって決定した。
【0058】
表2にはそれぞれ達成された抑制率が%で示されている。100%の抑制率の場合にはホスホン酸カルシウム沈殿は形成されず、<100%の抑制率の場合には試験溶液のホスホン酸塩含有量はホスホン酸カルシウムの形成による相応して低下する。
【0059】
表2
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業技術装置におけるリン酸塩又はホスホン酸塩を含有する水性系への添加物としての、
(a) アクリル酸及び/又は前記アクリル酸の水溶性塩50〜93mol%、
(b) メタクリル酸及び/又は前記メタクリル酸の水溶性塩5〜30mol%及び
(c) 式I
【化1】

[式中、変数は次の意味を表す:
1は、水素又はメチル、
2は、化学結合又は非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキレン、
3は、同じ又は異なる、非分枝又は分枝したC2〜C4−アルキレン基、
4は、非分枝又は分枝したC1〜C6−アルキル、
nは、3〜50]の少なくとも1種の非イオン性モノマー2〜20mol%をランダム状に又はブロック状に重合により組み込んで含有する酸化アルキレン単位を有するコポリマーの使用。
【請求項2】
コポリマーが成分(a)65〜85mol%、成分(b)10〜25mol%及び成分(c)5〜15mol%を重合により組み込んで含有することを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
コポリマーが成分(a)65〜75mol%、成分(b)15〜25mol%及び成分(c)5〜10mol%を重合により組み込んで含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
コポリマーは、R1がメチルを表わし、R2が化学的結合を表わし、R3がC2〜C3−アルキレンを表わし、R4がC1〜C2−アルキルを表わし、nが5〜40を表わす式Iの非イオン性モノマーを成分(c)として重合により組み込んで含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
コポリマーは、R1がメチルを表わし、R2が化学的結合を表わし、R3がエチレンを表わし、R4がメチルを表わし、nが10〜30を表わす式Iの非イオン性モノマーを成分(c)として重合により組み込んで含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
コポリマーを、循環されている水性系に添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
コポリマーを、伝熱プロセスで使用された水循環系に添加することを特徴とする、請求項6記載の使用。
【請求項8】
コポリマーを、濃縮が行われる水性系に添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
コポリマーを、製糖工業において生じる、蒸発が行われる糖水溶液に添加することを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
請求項1から5までのいずれか1項記載のコポリマー及びポリリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する、水処理のための調製剤。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項記載のコポリマー及びポリリン酸塩及び/又はホスホン酸塩を含有する、腐食防止のための調製剤。

【公表番号】特表2009−503126(P2009−503126A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516318(P2008−516318)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063234
【国際公開番号】WO2006/134140
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】