説明

水性顔料分散液及びその製造方法、ならびにそれを用いた記録液

【課題】高い分散安定性と吐出性を有し、光沢性に優れた印刷物を与える水性顔料分散記録液を提供する。
【解決手段】顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(疎水性基含有カチオンポリマー)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(疎水性基含有アニオンポリマー)を含み、疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0〜8の水性顔料分散液。疎水性基含有アニオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位(モル比)が5/95〜50/50であるか、或いは、固形分に対する顔料の含有割合が51重量%以上。顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散した後、限外濾過・精密濾過を行い、さらに疎水性基含有アニオンポリマーを添加してこの水性顔料分散液を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料、疎水性基含有カチオンポリマー、及び疎水性基含有アニオンポリマーを含んでなる水性顔料分散液、ならびにその製造方法に関する。本発明はまた、このような水性顔料分散液を含む、特にインクジェットプリンター記録用に適した記録液に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、フルカラー化が容易であること、騒音が少ないこと、高解像度の画像が低価格で得られること、高速印字ができること、などの理由から、パーソナルユース、ビジネスユースの両面から急速に普及しつつある。現在、インクジェットプリンターに用いる記録液としては水性の記録液が主流であり、解像度の高い印刷物が得られるようになってきている。
【0003】
この水性記録液としては、従来、水溶性染料と液媒体を主成分とするものが主流であった。しかし、この水性記録液によって得られる印刷物は、水性記録液が水溶性染料を含むために、耐水性、耐光性、耐オゾン性等が不十分であった。そこで近年、このような染料に代えて、顔料を水性媒体中に分散させた顔料分散型の水性記録液(以下、単に「インク」と言うことがある。)が開発されている。
【0004】
近年では、印刷物の解像度向上に伴い、インク吐出ノズルからの1回のインク吐出量の低下が著しい。そしてインクジェットプリンターの印字速度向上に対する要求が高まっていることから、顔料分散型の水性記録液に対して、より高い顔料分散安定性やプリンタヘッドからのより高い吐出性、印刷物の耐擦過性、更にはインクジェット用記録紙での高い光沢性が求められてきている。これに対して、顔料分散型の水性記録液に、カチオン性基を含むポリマーとアニオン性基を含むポリマーを併用する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、水、着色剤と水溶性アニオン性共重合体及び、水溶性のカチオン性共重合体を使用したインクジェット組成物の記載がある。
また、特許文献2では、色材を含有してよいイオン性基を有する水不溶性ポリマーAのエマルジョン粒子と、この水不溶性ポリマーAと異なるイオン性基を有する水溶性ポリマーBを含有してなるポリマーエマルジョン組成物の記載がある。
そして、特許文献3、4では、側鎖にカチオン性基を有するアクリル系有機高分子化合物と、側鎖にアニオン性基を有するアクリル系有機高分子化合物と、顔料を使用した記録用水性顔料分散液の記載がある。
更に、特許文献5では、顔料、イオン性基含有ポリマーA、ポリマーAとは反対電荷を有する反応性乳化剤及びモノマーを重合してなるカプセル化顔料分散液が記載されている。
【特許文献1】特開平6−240191号公報(大日本インキ化学工業株式会社)
【特許文献2】特開2003−313430号公報(花王株式会社)
【特許文献3】特開2004−59625号公報(大日本インキ工業株式会社)
【特許文献4】特開2004−75820号公報(大日本インキ工業株式会社)
【特許文献5】WO2006/137393号公報(セイコーエプソン株式会社、三菱化学株式会社)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、染料及び顔料の耐水性付与のため、水溶性アニオン性共重合体と水溶性カチオン性共重合体の併用が提案されている。しかしながら、このものは、単に不溶化効果による耐水性付与を期待するものであり、得られたインク組成物での分散安定性、吐出性に問題がある。これらの分散安定性や吐出性を改善するために、インク組成物のpHは11以上が推奨されているが、人体への安全性やプリンター本体保守の観点から、現実的なものではない。
【0007】
また、特許文献2では、色材を含んでいても良い水不溶性ポリマーAのエマルジョン粒子の保存安定性の確保のため、ポリマーAとは反対電荷を有する水溶性ポリマーBが使用されている。しかしながら、単なる水溶性ポリマーを使用しても、加温や溶剤の存在、あるいはpHの変化等によりその分散安定性は低下しやすい。また、ポリマーAは水不溶性で電荷量が低いため、エマルジョン粒子に吸着できるポリマーBの量には限界があり、被覆ポリマー量不足による分散安定性の低下や、エマルジョン粒子に吸着していない過剰なポリマーBによる増粘等を引き起こし易い。
【0008】
特許文献3では、極性が異なる高分子化合物を組み合わせた場合や両性高分子化合物を使用した顔料分散液の製造時に頻発するゲル化や増粘を効果的に抑制し、低粘度で分散性や分散安定性に優れた分散液を得るため、側鎖にカチオン性基を有するアクリル系有機高分子化合物と側鎖にアニオン性基を有するアクリル系有機高分子化合物の混合物と顔料とを水性媒体中に分散させた分散液が提案されている。しかしながら、この処方ではポリマーは堅固なコンプレックスを形成しており、それ自身の凝集性が非常に強いため、顔料表面に吸着しにくくなり顔料分散能が低下する。このことから、顔料の小粒径化が困難で、更に顔料をポリマーで完全に被覆した状態にするのも困難である。
【0009】
特許文献4でも、上記と同様な効果を得るために、酸性顔料をカチオン性ポリマーで被覆し、更に外側をアニオン性ポリマーで被覆した分散液が提案されている。しかしながら、表面処理された顔料表面の官能基は均一でなく、その数も制限されるため、顔料をカチオンポリマーで均一に被覆することが困難であり、単に顔料表面の電荷量が低下してしまう。その結果、分散安定性や吐出性が低下し、顔料表面が均一に被覆されていないことによる写真専用紙上での光沢性の低下等が起こり易い。
【0010】
特許文献5では、顔料をイオン性基含有ポリマーで分散した顔料分散液に、反対のイオン性基を有する反応性乳化剤を吸着させモノマーを導入し、そのモノマーと反応性乳化剤を重合させてカプセル化した顔料分散液が提案されている。しかしながら、反応性乳化剤を使ってモノマーを導入しているため、顔料を含有しないポリマー微粒子を完全に抑制することは困難で、その結果分散液が増粘する問題があり、またモノマーの完全除去が困難であることから安全性に対する問題があった。
【0011】
このようなことから、より高い分散安定性と吐出性を有し、更に光沢性に優れた印刷物を提供できる、特にインクジェット用記録液として優れた水性顔料分散記録液の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはこのような課題を解決すべく、水性顔料分散型記録液について鋭意検討を行った。その結果、顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液において、疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、かつ疎水性基含有アニオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位のモル比を5/95〜50/50とすることで、顔料の分散安定性が良好となるばかりでなく、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の光沢性も優れたものとなることを見出した。
【0013】
また、顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液において、疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合を55重量%以上とすることで、顔料の分散安定性が良好となるばかりでなく、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の光沢性も優れたものとなることを見出した。
【0014】
また、顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散させた後、限外濾過・精密濾過を行い、さらに疎水性基含有アニオンポリマーを添加することで、該水性顔料分散液を安定的に製造できることを見出した。
【0015】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0016】
[1] 顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、該疎水性基含有アニオンポリマー中の、疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位のモル比が5/95〜50/50であることを特徴とする水性顔料分散液。
【0017】
[2] 顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、該水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が51重量%以上であることを特徴とする水性顔料分散液。
【0018】
[3] 水性顔料分散液のpHが7以上、かつ、9以下を満たすことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の水性顔料分散液。
【0019】
[4] 顔料が、それ単体では水に分散しないことを特徴とする、[1]ないし[3]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0020】
[5] 疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/カチオン性モノマー構造単位のモル比が40/60〜90/10であることを特徴とする、[1]ないし[4]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0021】
[6] 疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位のうち、少なくとも一種類は芳香族炭化水素由来の構造単位であることを特徴とする、[1]ないし[5]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0022】
[7] 疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位のうち、少なくとも一種類は炭素数4以上、かつ、12以下の脂肪族炭化水素由来の構造単位であることを特徴とする、[1]ないし[6]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0023】
[8] 疎水性基含有カチオンポリマー中のカチオン性モノマー構造単位が、四級アンモニウム塩構造を含有することを特徴とする、[1]ないし[7]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0024】
[9] 疎水性基含有カチオンポリマーの数平均分子量が500以上、かつ、50000以下を満たすことを特徴とする、[1]ないし[8]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0025】
[10] 疎水性基含有アニオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位が、芳香族炭化水素由来の構造単位及び脂肪族環式炭化水素由来の構造単位よりなる群から選ばれる1又は2以上を含有することを特徴とする、[1]ないし[9]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0026】
[11] 疎水性基含有アニオンポリマー中のアニオン性モノマー構造単位が、カルボン酸、カルボン酸のアルカリ金属塩、及びカルボン酸のアルカリ土類金属塩よりなる群から選ばれる1又は2以上の構造を含有することを特徴とする、[1]ないし[10]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0027】
[12] 疎水性基含有アニオンポリマーのアニオン性モノマー構造単位に含まれるカルボン酸及び/又はその塩が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸よりなる群から選ばれるカルボン酸及び/又はその塩であることを特徴とする、[11]に記載の水性顔料分散液。
【0028】
[13] 疎水性基含有アニオンポリマーの数平均分子量が2000以上、かつ、50000以下を満たすことを特徴とする、[1]ないし[12]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0029】
[14] 疎水性基含有アニオンポリマーが、疎水性モノマー構造単位とアニオン性モノマー構造単位の他に、非イオン性親水性モノマー構造単位を含有することを特徴とする、[1]ないし[13]のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【0030】
[15] [1]ないし[14]のいずれかに記載の水性顔料分散液の製造方法であって、顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散させた後、限外濾過法及び/又は精密濾過法により余剰ポリマーを除去し、その後、疎水性基含有アニオンポリマーを添加する工程を備えることを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
【0031】
[16] [1]ないし[14]のいずれかに記載の水性顔料分散液を含む記録液。
【0032】
[17] [1]ないし[14]のいずれかに記載の水性顔料分散液を含むインクジェット用記録液。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、光沢性に優れ、印字濃度が高く、にじみが抑制され印字品位が良く、更に耐擦過性、耐光性、耐水性などの堅牢性も良好な印刷物を与えるとともに、粘度が低く、吐出性が良好で且つ保存安定性が良好な、顔料分散型記録液を提供することができる。特に、本発明の記録液は、インクジェットプリンター等の記録液に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容には特定されない。
【0035】
1.水性顔料分散液
本発明の水性顔料分散液は、水性媒体中に、少なくとも顔料、疎水性基含有カチオンポリマー、及び疎水性基含有アニオンポリマーを含んでなり、水性顔料分散液中の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下を満たし、更に、以下の条件i又は条件iiを満たすものである。なお、本発明の水性顔料分散液は、下記条件iと条件iiを共に満たすものであってもよい。
条件i:疎水性基含有アニオンポリマー中の、疎水性モノマー構造単位/アニオン性モ
ノマー構造単位のモル比が5/95〜50/50
条件ii:水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が51重量%以上
【0036】
<モノマー構造単位の定義>
本発明において、モノマー構造単位とは、ポリマーの基本構造の構成単位である。ポリマーの基本構造とは、重合又は共重合による当該ポリマーの製造に用いられたモノマー分子に由来する構造、もしくはそれらが変性などにより修飾された構造である。又、ポリマーが天然高分子の場合には、繰り返し構造もしくはそれが変性等により修飾された構造である。
【0037】
<アニオン性基数・カチオン性基数の定義>
本発明において、疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数とは、疎水性基含有アニオンポリマー全体のアニオン性基数総量であり、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数とは、疎水性基含有カチオンポリマー全体のカチオン性基数総量である。
【0038】
[疎水性基含有カチオンポリマーの説明]
該疎水性基含有カチオンポリマーは、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するものであればよく、その他の制限は受けない。疎水性基含有カチオンポリマーは、カチオン性モノマー構造単位を含むことによりカチオン性基を含み、また、疎水性モノマー構造単位を含むことにより疎水性基を含む。
【0039】
該疎水性基含有カチオンポリマーの一次構造に制限はなく、具体的な例としては、直鎖型、星型、櫛型、分岐、ブロック型ポリマーなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。また、このポリマーは、例えば、合成ポリマー又は天然高分子でもよく、またそれらの誘導体や変性体であってもよい。
【0040】
該疎水性基含有カチオンポリマーとしては水溶性又は水分散性のポリマーが好ましい。
【0041】
<カチオン性基>
該疎水性基含有カチオンポリマーに含有されるカチオン性基としては、水性媒体中でカチオン電荷を有することができるものであり、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、環状アミン由来の基が挙げられる。これらは、一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アンモニウム塩の構造の何れでもよく、あるいはこれらをハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、アルキル若しくはアリールスルホン酸又は硫酸ジアルキル等の公知の四級化剤を用いて四級化したものも含まれる。中でも、次の理由から、四級アンモニウム塩構造がより好ましい。
即ち顔料を分散する際、分散安定性を確保するために電荷反発は重要な要素であるが、前述のカチオン性基のうち、水溶液中で最も解離状態になり易いのが四級アンモニウム塩であり、更には、pHがアルカリ側でも解離状態を保つことができるため、(後の工程で)疎水性基含有アニオンポリマーを添加する際にpHをアルカリ側に変化させても、pH変化による分散破壊が起こることなく疎水性基含有アニオンポリマーが吸着できるため、四級アンモニウム塩を選択することがより好ましい。
【0042】
<疎水性基>
該疎水性基含有カチオンポリマーに含有される疎水性基としては、炭素数1以上の脂肪族炭化水素由来の基、及び芳香族炭化水素由来の基が挙げられる。
ここで、脂肪族炭化水素は、飽和又は不飽和であり、直鎖、分岐、環状の何れでもよい。また、これら脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素は、1個以上の水素原子が、例えばフッ素、臭素、ヨウ素、塩素などのハロゲン原子で置換されていてもよい。更に、芳香族炭化水素は、1個以上の水素原子が、脂肪族炭化水素基(炭素数1以上)で置換されていてもよい。
【0043】
疎水性基含有カチオンポリマーにおける疎水性基としては、中でも、脂肪族炭化水素(特に炭素数4以上18以下の脂肪族炭化水素)由来の基、脂肪族環式炭化水素(特に炭素数4以上10以下の脂肪族環式炭化水素)由来の基、芳香族炭化水素由来の基がより好ましい。
【0044】
<カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位の導入>
疎水性基含有カチオンポリマーの構造中にカチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を導入するには、少なくとも一種類のカチオン性モノマーと少なくとも一種類の疎水性モノマーを含む重合性モノマーを重合してポリマーを得る方法、あるいはカチオン性基及び/又は疎水性基を含有しない重合性モノマーを重合しポリマーを得た後に、変性あるいは修飾反応によってカチオン性基及び/又は疎水性基をポリマー構造中に導入する方法などが挙げられる。
【0045】
(カチオン性モノマー構造単位)
カチオン性モノマー構造単位は、モノマー構造単位中にカチオン性基が含まれるものである。カチオン性モノマー構造単位としては、具体的には、以下のモノマー構造が挙げられるが、これらに限られるものではなく、従来公知のカチオン性モノマー構造であってよい。
【0046】
アクリレート系及びメタクリレート系モノマー型の構造単位としては、アミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、メチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、エチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、あるいはこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等が挙げられる。
【0047】
ビニルピリジン系モノマー型の構造単位としては、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、あるいはこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等が挙げられる。
【0048】
アミノスチレン系モノマー型の構造単位としては、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、あるいはこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等が挙げられる。
【0049】
これらのカチオン性モノマー構造単位は、疎水性基含有カチオンポリマー中に1種類以上含有されていればよく、2種類以上含有されていてもよい。
【0050】
この中でも特に、四級アンモニウム塩、三級アミンをハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等により四級化した構造を有するカチオン性モノマー構造単位が好ましく、メタ又はアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、メタ又はアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルクロライド塩のモノマー構造単位がより好ましい。
【0051】
(疎水性モノマー構造単位)
疎水性モノマー構造単位は、モノマー構造単位中にアニオン性基とカチオン性基を含まず、疎水性基を含むものである。非イオン性親水性基は含んでも含まなくても良いが、含む場合には、疎水性基の含有量が非イオン性親水性基の含有量の2.5重量倍を超えるような含有量であることが好ましい。
【0052】
ここで、非イオン性親水性基とは、アミド結合、アルキル基の炭素数が2〜5のポリアルキルエーテル結合(繰り返し数2以上)、水酸基、チオール基、アミド基、スルホンアミド基のような親水性の化学結合、官能基を指す。
【0053】
疎水性モノマー構造単位としては、具体的には、以下のモノマー構造が挙げられるが、これらに限られるものではなく、従来公知の疎水性モノマー構造であってよい。
【0054】
アクリレート系モノマー型の構造単位としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸クロロメチル、アクリル酸ジクロロメチル、アクリル酸トリクロロメチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸ブロモエチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、アクリル酸プロパルギル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸イソプロペニル、アクリル酸3−ブテニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸アントラセニル、アクリル酸ジフェニルエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸フェニルブチル、アクリル酸ジフェニルエチル、アクリル酸ジフェニルメチル、アクリル酸トリフェニルメチル、アクリル酸ナフチルメチル、アクリル酸ナフチルエチル等が挙げられる。
【0055】
メタクリレート系モノマー型の構造単位としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸クロロメチル、メタクリル酸ジクロロメチル、メタクリル酸トリクロロメチル、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸ブロモエチル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸プロパルギル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソプロペニル、メタクリル酸3−ブテニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸アントラセニル、メタクリル酸ジフェニルエチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェニルブチル、メタクリル酸ジフェニルエチル、メタクリル酸ジフェニルメチル、メタクリル酸トリフェニルメチル、メタクリル酸ナフチルメチル、メタクリル酸ナフチルエチル等が挙げられる。
【0056】
スチレン系モノマー型の構造単位としては、スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−(2−ヒドロキシエチル)スチレン、p−(2−ヒドロキシエチルオキシカルボニル)スチレン等が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリルアミド系モノマー型の構造単位としては、アルキル基の炭素数が5以上のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、又はアルキル基の炭素数が3以上のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
ビニルエーテル系モノマー型の構造単位としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0059】
アクリロニトリル系モノマー型の構造単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、アリルエステル系モノマー型の構造単位としての具体例としては、酢酸アリルが挙げられる。
【0060】
これらの疎水性モノマー構造単位は、疎水性基含有カチオンポリマー中に1種類以上含有されていればよく、2種類以上含有されていてもよい。
【0061】
この中でも特に、スチレン類、メタ又はアクリレート類のうち、疎水性基が炭素数4以上12以下の脂肪族炭化水素又は芳香族化合物由来の基であるものが好ましく、スチレン、メタ又はアクリル酸n−ブチル、メタ又はアクリル酸t−ブチル、メタ又はアクリル酸2−エチルへキシル、メタ又はアクリル酸ドデシル、メタ又はアクリル酸ベンジルをモノマー構造単位として含有することが好ましい。
【0062】
<疎水性基含有カチオンポリマーの合成方法>
上記のような、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有する疎水性基含有カチオンポリマーの合成方法としては、公知である種々の方法を選択できる。例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またこれら公知の重合方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。なかでも合成手法が簡便であることからラジカル重合法を用いて合成されるポリマーがより好ましい。
【0063】
(ラジカル重合に用いるモノマー)
疎水性基含有カチオンポリマーをラジカル重合法を用いて合成するには、少なくとも一種類のラジカル重合性のカチオン性モノマーと少なくとも一種類のラジカル重合性の疎水性モノマーを用いればよく、その他の重合性モノマーを用いてもよい。
【0064】
ラジカル重合性のカチオン性モノマーとしては、前述の疎水性基含有カチオンポリマーを構成するモノマー構造として例示したカチオン性モノマーを用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
ラジカル重合性のカチオン性モノマーは、少なくとも1種類を用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0065】
ラジカル重合性のカチオン性モノマーとしては、特に、四級アンモニウム塩、三級アミンをハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等により四級化した構造を有するものが好ましく、メタ又はアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、メタ又はアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルクロライド塩のモノマーがより好ましい。
【0066】
ラジカル重合性の疎水性モノマーとしては、前述の疎水性基含有カチオンポリマーを構成するモノマー構造として例示した疎水性モノマーを用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
ラジカル重合性の疎水性モノマーは、少なくとも1種類を重合モノマーとして用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0067】
ラジカル重合性の疎水性モノマーとしては、この中でも特に、スチレン類、メタ又はアクリレート類のうち、疎水性基が炭素数4以上12以下の脂肪族炭化水素又は芳香族化合物由来の基であるものが好ましく、スチレン、メタ又はアクリル酸n−ブチル、メタ又はアクリル酸t−ブチル、メタ又はアクリル酸2−エチルへキシル、メタ又はアクリル酸ドデシル、メタ又はアクリル酸ベンジルがより好ましい。
【0068】
(疎水性基含有カチオンポリマー中の各モノマー構造単位の割合)
本発明に係る疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/カチオン性モノマー構造単位のモル比は、40/60〜90/10が好ましく、より好ましくは60/40〜80/20である。
この範囲よりも疎水性モノマー構造単位が多く、カチオン性モノマー構造単位が少ないとポリマーの水溶性が著しく低下するため、顔料を容易に分散することが困難となり、逆に疎水性モノマー構造単位が少なく、カチオン性モノマー構造単位が多いと、顔料への吸着量が減少しかつ顔料から容易に離脱するため分散安定性が低下し易くなる。
【0069】
(重合反応溶媒)
疎水性基含有カチオンポリマーを合成する際のラジカル重合反応は、無溶媒又は溶媒の存在下に行なうことができる。
【0070】
重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
中でも、重合反応溶媒としては水性溶媒が好ましい。
【0071】
水性溶媒とは、水100%もしくは水と極性有機溶媒を任意の比率で混合した溶媒を指す。極性有機溶媒は、水と任意の比率で混合可能なものであれば良く、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のプロトン性溶媒、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒が例示される。これらの中で、特にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、水が好ましい。
【0072】
これらの溶媒は1種類のみからなる単一溶媒でも良いし、2種類以上からなる混合溶媒でも良い。
【0073】
(重合開始剤)
疎水性基含有カチオンポリマーを合成する際のラジカル重合反応には公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤でも油溶性の重合開始剤でも使用できる。
【0074】
<水溶性重合開始剤>
水溶性の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤、過硫酸カリ、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤単独、又は亜硫酸ソーダ、次亜硫酸ソーダ、硫酸第1鉄、硝酸第1鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ尿素等の水溶性還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0075】
<油溶性重合開始剤>
油溶性の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等のパーオキサイド重合開始剤、さらにヒドロペルオキサイド(t−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物と、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用する油溶性レドックス重合開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0076】
(連鎖移動剤)
重合反応は、連鎖移動剤の存在下で行っても良い。
連鎖移動剤としては特に制限はないが、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等のチオール系の連鎖移動剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0077】
(重合条件)
重合反応を行う際、ラジカル重合性モノマー、重合反応溶媒、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、ラジカル重合性モノマー、連鎖移動剤、重合反応溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が挙げられる。また、別の方法としては、ラジカル重合性モノマー、連鎖移動剤、重合反応溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液や連鎖移動剤、重合反応溶媒、又はこれらの混合物を、連続的に又は分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。中でも操作の簡便性から、原料を一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が好ましい。
【0078】
重合反応溶媒の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
重合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
ラジカル重合開始剤の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部である。
【0079】
(精製)
このようにして得られた疎水性基含有カチオンポリマーは未精製のまま使用しても特に問題はないが、常法に従って精製し、次の顔料分散工程へ供されるのが好ましい。精製方法としては、ポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒へポリマー溶液を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す再沈精製、ポリマー溶液にポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す分別沈澱精製、加熱蒸留や、減圧蒸留等によって未反応モノマーや反応溶媒を除去した後に、溶媒を水及び/又は水性溶媒に置換する方法、さらには限外濾過膜や透析膜などを用いて低分子不純物や低分子量オリゴマー成分を除去する方法などが挙げられる。
【0080】
<分子量>
本発明で用いる疎水性基含有カチオンポリマーの数平均分子量は、好ましくは50000以下、より好ましくは45000以下で、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上である。分子量がこの範囲より大きいと得られる水性顔料分散液の粘度が増大し、小さいと分散剤が顔料表面からはがれやすくなり、分散が不安定化する。
【0081】
[疎水性基含有アニオンポリマーの説明]
本発明で用いる疎水性基含有アニオンポリマーは、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するものであればよく、その他の制限は受けない。疎水性基含有アニオンポリマーは、アニオン性モノマー構造単位を含むことによりアニオン性基を含み、また、疎水性モノマー構造単位を含むことにより疎水性基を含む。
【0082】
該疎水性基含有アニオンポリマーの一次構造に制限はなく、具体的な例としては、直鎖型、星型、櫛型、分岐、ブロック型ポリマーが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。また、このポリマーは、例えば、合成ポリマー又は天然高分子でもよく、またそれらの誘導体や変性体であってもよい。
【0083】
該疎水性基含有アニオンポリマーとしては水溶性又は水分散性のポリマーが好ましい。
【0084】
<アニオン性基>
該疎水性基含有アニオンポリマーに含有されるアニオン性基とは、水性媒体中でアニオン電荷を有することができ、pKaが8以下の官能基であり、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸等の酸由来の酸性基あるいはそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩構造が挙げられる。この中で、以下の理由から、カルボン酸、カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ土類金属塩構造がより好ましい(以下、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を「アルカリ(土類)金属塩」と記す場合がある。)。
即ち、カルボン酸及び/又はカルボン酸のアルカリ金属(土類)塩は、紙面上でpH変化により容易に凝集することから、印字濃度を向上させる効果も期待できるためより好ましい。
【0085】
<疎水性基>
該疎水性基含有アニオンポリマーに含有される疎水性基としては、炭素数1以上の脂肪族炭化水素由来の基、及び芳香族炭化水素由来の基が挙げられる。
ここで、脂肪族炭化水素は、飽和又は不飽和であり、直鎖、分岐、環状の何れでもよい。また、これら脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素は、1個以上の水素原子が、例えばフッ素、臭素、ヨウ素、塩素などのハロゲン原子で置換されていてもよい。更に、芳香族炭化水素は、1個以上の水素原子が、脂肪族炭化水素基(炭素数1以上)で置換されていてもよい。
【0086】
疎水性基含有アニオンポリマーにおける疎水性基としては、中でも、脂肪族炭化水素(特に炭素数4以上18以下の脂肪族炭化水素)由来の基、脂肪族環式炭化水素(特に炭素数4以上10以下の脂肪族環式炭化水素)由来の基、芳香族炭化水素由来の基がより好ましい。
【0087】
<アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位の導入>
疎水性基含有アニオンポリマーの構造中にアニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を導入するには、少なくとも一種類のアニオン性モノマーと少なくとも一種類の疎水性モノマーを含む重合性モノマーを重合してポリマーを得る方法、あるいはアニオン性基及び/又は疎水性基を含有しない重合性モノマーを重合しポリマーを得た後に、変性あるいは修飾反応によってアニオン性基及び/又は疎水性基をポリマー導入する方法などが挙げられる。
【0088】
(アニオン性モノマー構造単位)
アニオン性モノマー構造単位は、モノマー構造単位中にアニオン性基が含まれるものである。アニオン性モノマー構造単位としては、具体的には、以下のモノマー構造が挙げられるが、これらに限られるものではなく、従来公知のアニオン性モノマー構造であってよい。
【0089】
アニオン性モノマー構造単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー型の構造、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー型の構造、ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー型の構造及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩等の構造を挙げることができる。
【0090】
これらのアニオン性モノマー構造単位は、疎水性基含有アニオンポリマー中に1種類以上含有されていればよく、2種類以上含有されていても良い。
【0091】
中でも、カルボン酸類の構造を有するアニオン性モノマー構造を有するアニオン性モノマー構造単位が好ましく、更に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はこれらのアルカリ金属(土類)塩由来のモノマー構造単位がより好ましい。
【0092】
(疎水性モノマー構造単位)
疎水性モノマー構造単位としては、前述の疎水性基含有アニオンポリマーの項で挙げた疎水性モノマー構造単位が同様に例示されるが、これらに限られるものではなく、従前公知の疎水性モノマー構造単位であってよい。
これらの疎水性モノマー構造単位は、疎水性基含有アニオンポリマー中に1種類以上含有されていればよく、2種類以上含有されていてもよい。
【0093】
中でも特に、スチレン類、メタ又はアクリル酸系モノマーのうち疎水性基が芳香族炭化水素及び脂肪族環式炭化水素由来の基であるモノマー構造が好ましく、更に好ましくはスチレン、メタ又はアクリル酸ベンジル、メタ又はアクリル酸シクロヘキシル、メタ又はアクリル酸イソボルニルをモノマー構造単位として含有することが好ましい。
【0094】
(非イオン性親水性モノマー構造単位)
本発明に係る疎水性基含有アニオンポリマーは、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位以外のモノマー構造単位として、非イオン性親水性基を有するモノマー構造単位(非イオン性親水性モノマー構造単位)を含有してもよい。
【0095】
非イオン性親水性モノマー構造単位は、モノマー構造単位中にアニオン性基とカチオン性基を含まず、非イオン性親水性基を含むものである。疎水性基は含んでも含まなくても良いが、含む場合には、疎水基の含有量が非イオン性親水性基の含有量の2.5重量倍以下となるような含有量であることが好ましい。
【0096】
ここで、非イオン性親水性基とは、アミド結合、アルキル基の炭素数が2〜5のポリアルキルエーテル結合(繰り返し数2以上)、水酸基、チオール基、アミド基、スルホンアミド基のような親水性の化学結合、官能基を指す。
【0097】
非イオン性親水性モノマー構造単位としては、具体的には、以下のモノマー構造が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知の非イオン性親水性モノマー構造であってよい。
【0098】
N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−N−ピロリドンエチル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルピペジリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、炭素数4〜5のN−ビニルラクタム、ビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜2のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジエタノールアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−(2−(ポリエチレングリコール)エチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−(2,2’−(ポリエチレングリコール)ジエチル)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコール繰り返し数3以上のラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコール繰り返し数4以上のステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートといった非イオン性親水性基に分類される、炭素数2〜5のアルキレンオキシドの開環構造を含む(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
非イオン性親水性モノマー構造単位としては、中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンが好ましい。
【0100】
これらの非イオン性親水性モノマー構造単位は、疎水性基含有アニオンポリマー中に1種類含有されてもよく、2種類以上含有されていてもよい。
【0101】
<疎水性基含有アニオンポリマーの合成方法>
上記のような、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位と、場合によってさらに非イオン性親水性モノマー構造単位を含有する疎水性基含有アニオンポリマーの合成方法としては、公知である種々の方法を選択できる。例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またこれら公知の重合方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。なかでも合成手法が簡便であることからラジカル重合法を用いて合成されるポリマーがより好ましい。
【0102】
(ラジカル重合に用いるモノマー)
疎水性基含有アニオンポリマーをラジカル重合法を用いて合成する際には、少なくとも一種類のラジカル重合性のアニオン性モノマーと少なくとも一種類のラジカル重合性の疎水性モノマーを用いればよい。さらにはラジカル重合性の非イオン性親水性モノマーを用いてもよく、その他のラジカル重合性モノマーを用いても良い。
【0103】
ラジカル重合性のアニオン性モノマーとしては、前述の疎水性基含有アニオンポリマーを構成するモノマー構造として例示したアニオン性モノマー類を用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
ラジカル重合性のアニオン性モノマーとしては、中でもカルボン酸類の構造を有するものが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はこれらのアルカリ金属(土類)塩のモノマーがより好ましい。
ラジカル重合性のアニオン性モノマーとしては、少なくとも1種類を重合モノマーとして用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0104】
ラジカル重合性の疎水性モノマーとしては、前述の疎水性基含有カチオンポリマーの説明において例示した疎水性モノマー類を同様に用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
【0105】
ラジカル重合性の疎水性モノマーとしては、中でも、スチレン類、メタ又はアクリル酸系モノマーのうち疎水性基が芳香族炭化水素及び脂肪族環式炭化水素由来の基であるラジカル重合性の疎水性モノマーが好ましく、更に好ましくはスチレン、メタ又はアクリル酸ベンジル、メタ又はアクリル酸シクロヘキシル、メタ又はアクリル酸イソボルニルがより好ましい。
ラジカル重合性の疎水性モノマーとしては、少なくとも1種類を重合モノマーとして用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0106】
ラジカル重合性の非イオン性親水性モノマーとしては、前述の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれていてもよい非イオン性親水性モノマー構造として例示した非イオン性親水性モノマー類を用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
【0107】
ラジカル重合性の非イオン性親水性モノマーとしては、少なくとも1種類を重合モノマーとして用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0108】
(疎水性基含有アニオンポリマー中の各モノマー構造単位の割合)
本発明に係る疎水性基含有アニオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位のモル比は、5/95〜50/50が好ましく、より好ましくは10/90〜50/50である。
この範囲よりも疎水性モノマー構造単位が少なく、アニオン性モノマー構造単位が多いと、ポリマーが顔料表面から脱離し、分散安定性が低下したり増粘したりといった問題点が起こる。逆に、疎水性モノマー構造単位が多く、アニオン性モノマー構造単位が少ないと、顔料表面の解離したアニオン性基数が所望の割合よりも少なくなってしまい、分散安定性や吐出性が低下しかつ印字物の光沢性も悪化するといった問題がある。
【0109】
また、本発明に係る疎水性基含有アニオンポリマーが、更に非イオン性親水性モノマー構造単位を含む場合、その含有割合は、50モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下である。疎水性基含有アニオンポリマーが非イオン性親水性モノマー構造単位を含有することにより、吐出性や光沢性が向上するという効果が得られる。しかし、この上限値より非イオン性親水性モノマー構造単位が多いと、ポリマー全体に占める疎水性モノマー構造単位、およびアニオン性モノマー構造単位の含有量が少なくなってしまい、分散安定性に悪影響を与えてしまう。
【0110】
(重合反応溶媒)
疎水性基含有アニオンポリマーを合成する際のラジカル重合反応は、無溶媒又は溶媒の存在下に行なうことができる。
【0111】
重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
中でも、重合反応溶媒としては水性溶媒が好ましい。
【0112】
水性溶媒とは、水100%もしくは水と極性有機溶媒を任意の比率で混合した溶媒を指す。極性有機溶媒は、水と任意の比率で混合可能なものであれば良く、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のプロトン性溶媒、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒が例示される。これらの中で、特にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、水が好ましい。
【0113】
これらの溶媒は1種類のみからなる単一溶媒でも良いし、2種類以上からなる混合溶媒でも良い。
【0114】
(重合開始剤)
疎水性基含有アニオンポリマーを合成する際のラジカル重合反応には公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤でも油溶性の重合開始剤でも使用できる。
【0115】
<水溶性重合開始剤>
水溶性の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤、過硫酸カリ、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤単独、又は亜硫酸ソーダ、次亜硫酸ソーダ、硫酸第1鉄、硝酸第1鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ尿素等の水溶性還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0116】
<油溶性重合開始剤>
油溶性の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等のパーオキサイド重合開始剤、さらにヒドロペルオキサイド(t−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物と、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用する油溶性レドックス重合開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0117】
(連鎖移動剤)
重合反応は、連鎖移動剤の存在下で行っても良い。
連鎖移動剤としては特に制限はないが、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等のチオール系の連鎖移動剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0118】
(重合条件)
重合反応を行う際、ラジカル重合性モノマー、重合反応溶媒、ラジカル開始剤、連鎖移動剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、ラジカル重合性モノマー、連鎖移動剤、重合反応溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が挙げられる。また、別の方法としては、ラジカル重合性モノマー、連鎖移動剤、重合反応溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液や連鎖移動剤、重合反応溶媒、又はこれらの混合物を、連続的に又は分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。中でも操作の簡便性から、原料を一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が好ましい。
【0119】
重合反応溶媒の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
重合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
ラジカル重合開始剤の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。
【0120】
(精製)
このようにして得られた疎水性基含有アニオンポリマーは未精製のまま使用しても特に問題はないが、常法に従って精製し、次の顔料分散工程へ供されるのが好ましい。精製方法としては、ポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒へポリマー溶液を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す再沈精製、ポリマー溶液にポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す分別沈澱精製、加熱蒸留や、減圧蒸留等によって未反応モノマーや反応溶媒を除去した後に、溶媒を水及び/又は水性溶媒に置換する方法、さらには限外濾過膜や透析膜などを用いて低分子不純物や低分子量オリゴマー成分を除去する方法などが挙げられる。
【0121】
<分子量>
本発明で用いる疎水性基含有アニオン性ポリマーの数平均分子量は好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上で、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下である。分子量がこの範囲より大きいと得られる水性顔料分散液の粘度が増大し、小さいとポリマーが顔料表面からはがれ易くなり、分散が不安定化する。
【0122】
[分散液中のカチオン性基数とアニオン性基数]
本発明の水性顔料分散液において、疎水性基含有カチオンポリマー中のカチオン性基数に対する疎水性基含有アニオンポリマー中のアニオン性基数の割合は好ましくは1.0倍以上、かつ、8倍以下である。この割合は、より好ましくは、2倍以上、かつ、7倍以下であり、さらに好ましくは、2.5倍以上、かつ、6倍以下である。この割合が1より小さくなると、分散液中で分散に寄与するアニオン性基量が少なくなり、保存安定性や吐出安定性、更には光沢性の低下を招く。また、この割合が大き過ぎる場合、分散液中で顔料に吸着したポリマーの広がりが顕著になる、あるいは、顔料表面に吸着していないポリマーが増加することで、粘度の上昇や保存安定性の悪化を招く。
【0123】
分散液中のカチオン性基数とアニオン性基数の割合の分析方法としては、例えば、該分散液を酸性にして分散体を沈殿分離した後、適当な有機溶媒でポリマーを抽出し、抽出ポリマーのNMRスペクトルから該カチオン性基数とアニオン性基数を見積もる方法が挙げられる。また、疎水性基含有カチオンポリマーに窒素原子が含まれ、かつ疎水性基含有アニオンポリマーに窒素原子が含まれない場合は、該分散液の不揮発分から顔料とポリマー(疎水性基含有カチオンポリマーと疎水性基含有アニオンポリマーの合計)の重量比を算出し、該分散液の窒素元素分析値から顔料(原料)の窒素元素分析値を差し引いた値と疎水性基含有カチオンポリマー(原料)の窒素元素分析値を比較することで、疎水性基含有カチオンポリマーと疎水性基含有アニオンポリマーの重量比を算出し、更に各ポリマーの共重合モノマー組成比からカチオン性基数とアニオン性基数の割合を算出することができる。
【0124】
[顔料]
本発明に用いられる顔料は、各用途において一般的なものを適宜選択すればよいが、それ単体では水に分散しないものが、顔料をポリマーで安定分散する観点から好ましい。更に、化学修飾がされておらず、また、顔料の小粒径化を促進するための結晶化抑止剤等の、顔料以外の不純物を含まないものが、ポリマーの顔料への吸着を阻害しないことからより好ましい。
特に限定されるわけではないが、以下に顔料の代表的な例を示す。
【0125】
炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカなどを代表とする体質顔料;
酸化チタン、酸化亜鉛、ゲーサイト、マグネタイト、酸化クロムなどを代表とする金属酸化物系顔料;
チタンイエロー、チタンバフ、アンチモンイエロー、バナジウムスズイエロー、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、マンガングリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、タングステンブルー、エジプトブルー、コバルトブラックなどを代表とする複合酸化物系顔料;
リトボン、カドミウムレッドイエロー、カドミウムレッドなどを代表とする硫化物系顔料;
ミネラルバイオレット、コバルトバイオレット、リン酸コバルトリチウム、リン酸コバルトナトリウム、リン酸コバルトカリウム、リン酸コバルトアンモニウム、リン酸ニッケル、リン酸銅を代表とするリン酸塩系顔料;
黄鉛、モリブデートオレンジを代表とするクロム酸塩系顔料;
群青、プルシアンブルーを代表とする金属錯塩系顔料;
アルミニウムペースト、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレスフレーク、ニッケルフレークを代表とする金属粉系顔料;
カーボンブラック、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸塩、二酸化チタン、被覆雲母、ITO(インジウムスズ酸化物)、ATO(アンチモンスズ酸化物)を代表とする真珠光沢顔料・真珠顔導電性顔料等の無機顔料;
キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料などの有機顔料
上記顔料の具体例としては下記に示すピグメントナンバーの顔料及び一般に色材分野で用いられている公知のカーボンブラックを挙げることができる。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0126】
赤色色剤:C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
【0127】
青色色剤:C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
【0128】
緑色色剤:C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55;
【0129】
黄色色剤:C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、23、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、215;
【0130】
オレンジ色剤:C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
【0131】
バイオレット色剤:C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50
【0132】
ブラウン色剤:C.I.ピグメントブラウン1、6、11、22、23、24、25、27、29、30、31、33、34、35、37、39、40、41、42、43、44、45
【0133】
黒色色剤:C.I.ピグメントブラック1、31、32
【0134】
上記顔料のうち、赤色顔料として好ましくは、キナクリドン系顔料、キサンテン系顔料、ペリレン系顔料、アンタントロン系顔料及びモノアゾ系顔料が挙げられ、その具体例としては、C.I.ピグメントレッド−5、−7、−12、−112、−81、−122、−123、146、−147、−168、−173、−202、−206、−207、−209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。このうちより好ましくはキナクリドン系顔料及びキナクリドン系顔料の2種類以上からなる固溶体である。
【0135】
上記顔料のうち、黄色顔料としては、モノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好であることから好ましい。その中でも、C.I.ピグメントイエロー−1、−3、−16、−17、−74、−95、−120、−128、−151、−155、−175、−215は、その色合いの面から特に好ましく、更にその中でもC.I.ピグメントイエロー−74、−155がノンハロゲン化合物であり環境に与える影響が小さいこと、微細化が可能である等のことから特に好ましい。
【0136】
上記顔料のうち、青色顔料として好ましくは、銅フタロシアニン顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.ピグメントブルー−15:3はその色合いの面から好ましい。
【0137】
また、本発明において用いられるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
【0138】
上記のカーボンブラックのDBP吸油量は、印字濃度の観点から、40ml/100g以上が好ましく、50ml/100g以上が更に好ましく、60ml/100g以上が特に好ましい。その上限としては、250ml/100g以下、特に200ml/100g以下が好ましい。ただし、写真専用紙での光沢性の観点からは、カーボンブラックのDBP吸油量は、30〜100ml/100gの範囲が好ましく、30〜70ml/100gの範囲が特に好ましい。
揮発分は、8重量%以下が好ましく、特に4重量%以下が好ましい。
pHは記録液の保存安定性の観点から3以上、中でも6以上であることが好ましく、その上限は11以下、特に9以下が好ましい。
BET比表面積は、通常100m/g以上であるが、中でも150m/g以上であることが好ましく、その上限は700m/g以下、特に600m/g以下が好ましい。
ここで、DBP吸油量はJISK6221A法で測定した値、揮発分はJISK6221の方法で測定した値、pHはカーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極メーターで測定した値、BET比表面積はJISK6217の方法で測定した値である。
【0139】
また、安全性の観点から、600〜1500℃での焼成や、水、温水、溶剤等で洗浄することにより、多環芳香族成分を低減させたカーボンブラックを使用することが好ましい。特に高温での焼成処理は、カーボンブラック表面の官能基が除去されることにより、分散剤がカーボンブラック表面により効率よく、より堅固に吸着されるため、より好ましい。
【0140】
上記カーボンブラックの具体例としては、次の(1)〜(4)に示す商品が挙げられる。
【0141】
(1)#2700B,#2650,#2650B,#2600,#2600B,2450B,2400B,#2350,#2300,#2300B,#2200B,#1000,#1000B,#990,#990B,#980,#980B,#970,#960,#960B,#950,#950B,#900,#900B,#850,#850B,MCF88,MCF88B,MA600,MA600B,#750B,#650B,#52,#52B,#50,#47,#47B,#45,#45B,#45L,#44,#44B,#40,#40B,#33,#33B,#32,#32B,#30,#30B,#25,#25B,#20,#20B,#10,#10B,#5,#5B,CF9,CF9B,#95,#260,MA77,MA77B,MA7,MA7B,MA8,MA8B,MA11,MA11B,MA100,MA100B,MA100R,MA100RB,MA100S,MA230,MA220,MA200RB,MA14,#3030B,#3040B,#3050B,#3230B,#3350B(以上、三菱化学社製品)。
【0142】
(2)Monarch 1400,Black Pearls 1400,Monarch 1300,Black Pearls 1300,Monarch 1100,Black Pearls 1100,Monarch 1000,Black Pearls 1000,Monarch 900,Black Pearls 900,Monarch 880,Black Pearls 880,Monarch 800,Black Pearls 800,Monarch 700,Black Pearls 700,Black Pearls 2000,VulcanXC72R,Vulcan XC72,Vulcan PA90,Vulcan 9A32,Mogul L,Black Pearls L,Regal 660R,Regal 660,Black Pearls 570,Black Pearls 520,Regal 400R,Regal 400,Regal 330R,Regal 330,Regal 300R,Black Pearls 490,Black Pearls 480,Black Pearls 470,Black Pearls 460,Black Pearls 450,Black Pearls 430,Black Pearls 420,Black Pearls 410,Regal 350R,Regal 350,Regal250R,Regal 250,Regal 99R,Regal 99I,Elftex Pellets 115,Elftex 8,Elftex 5,Elftex 12,Monarch 280,Black Pearls 280,Black Pearls 170,Black Pearls 160,Black Pearls 130,Monarch 120,Black Pearls 120(以上、キャボット社製品)。
【0143】
(3)Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Special Black 4,Special Black 4A,Special Black5,Special Black 6,Color Black S160,Color Black S170,Printex U,Printex V,Printex 150T,Printex 140U,Printex 140V,Printex 95,Printex 90,Printex 85,Printex 80,Printex 75,Printex 55,Printex 45,Printex 40,Printex P,Printex 60,Printex XE,Printex L6,Printex L,Printex 300,Printex 30,Printex 3,Printex 35,Printex 25,Printex 200,Printex A,Printex G,Special Black 550,Special Black 350,Special Black 250,Special Black 100(以上、デグッサ製品)。
【0144】
(4)Raven 7000,Raven 5750,Raven 5250,Raven 5000 ULTRA,Raven 3500,Raven 2000,Raven 1500,Raven 1255,Raven 1250,Raven 1200,Raven 1170,Raven 1060 ULTRA,Raven 1040,Raven 1035,Raven 1020,Raven 1000,Raven890H,Raven 890,Raven 850,Raven 790 ULTRA,Raven 760 ULTRA,Raven 520,Raven 500,Raven 450,Raven 430,Raven 420,Raven 410,CONDUCTEX 975 ULTRA,CONDUCTEX SC ULTRA,Raven H2O,Raven C ULTRA(以上、コロンビア社製品)。
【0145】
本発明に係る顔料としては、前記の顔料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の色材と組み合わせて用いることもできる。
【0146】
[水性媒体]
本発明の水性顔料分散液に用いる水性媒体としては、水及び/又は水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、チオジグリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、トリアゾール、ニコチンアミド、ジメチルアミノピリジン、ε−カプロラクタム、乳酸アミド、1,3−プロパンスルトン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、エチレン尿素、プロピレン尿素、尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
上述の水性媒体としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物であることが好ましい。
【0147】
[分散液中の顔料粒径等]
本発明の水性顔料分散液における前述の顔料の一次粒子の大きさは、目的に応じて任意に設定すればよいが、通常、10nm以上であり、且つ、800nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
ここで顔料の一次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)である。
【0148】
また、分散液中の顔料の平均分散粒子径は、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。また下限としては、通常10nm以上である。
上記平均粒子径の測定方法としては、SEMやTEM等の電子顕微鏡を用いて測定するか、市販の動的光散乱測定装置を使用して測定することができる。
【0149】
本発明の水性顔料分散液の粘度は、インクジェットヘッドからの吐出の観点から低い方が望ましく、顔料濃度8重量%の水性顔料分散液の粘度として20cp以下が好ましく、より好ましくは10cp以下である。
本発明の水性顔料分散液のpHは、分散液の安定性確保及びプリンター本体の保守のため、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH7〜9に調整することが好ましい。
特に限定されるものではないが、pH調整のために水酸化ナトリウム、硝酸、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を配合することができる。
【0150】
なお、本発明の水性顔料分散液に含まれる顔料、疎水性基含有カチオンポリマー及び疎水性基含有アニオンポリマーの好ましい含有割合は、後述の本発明の水性顔料分散液の製造方法の説明に記載される通りである。
【0151】
また、本発明の水性顔料分散液は、ポリマーとして疎水性基含有カチオンポリマー及び疎水性基含有アニオンポリマーを含有していれば良く、更に他のポリマーを含有していてもよい。その場合、他のポリマーとしては、特に限定されるものではないが、疎水性モノマー構造単位を有するポリマー(疎水性ポリマー)、非イオン性親水性モノマー構造単位及び疎水性モノマー構造単位(水溶性ノニオン性基及び疎水性基)を有するポリマー等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0152】
2.水性顔料分散液の製造方法
本発明の水性顔料分散液を製造する方法は特に限定されないが、顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散させ、その後、限外濾過法及び/又は精密濾過法により余剰ポリマーを除去し、その後、疎水性基含有アニオンポリマーを添加する、本発明の水性顔料分散液の製造方法により好適に製造される。
【0153】
[顔料の疎水性基含有カチオンポリマー分散]
顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散するには、例えば、所定量の該ポリマーと顔料とを、水を主成分とする水性媒体中で一般的な分散機を用いて分散処理をすれば良く、分散処理に用いる分散機としては、通常、顔料分散に使用される各種分散機が適宜使用できる。
【0154】
この分散機としては、特に限定されるものではないが、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。このうち、特に好ましい分散処理方法としては、ビーズをメディアとしてミルで分散後、超音波ホモジナイザーで分散する方法である。
【0155】
好ましい顔料の分散粒径を有する水性顔料分散液を得る方法としては、特に限定されるものではないが、分散機の分散メディアのサイズを小さくする、分散メディアの充填率を大きくする、分散液中の顔料濃度を高くする、処理時間を長くする方法や、あるいはそれらの手法を適宜組み合わせて用いられる。
なお、分散時における発熱により、分散液が増粘したり、発泡したりするなど望ましくない現象が起こる場合は、冷却しながら分散処理をすることが望ましい。
【0156】
顔料を分散するための前記疎水性基含有カチオンポリマーの量は、顔料100重量部に対しておよそ1〜500重量部の範囲の量とするのが好ましく、より好ましくは10〜200重量部である。ポリマー量が少なすぎると水性媒体中で顔料が分散不安定になり凝集を起こしてしまう。また、ポリマーの親−疎水バランスや、顔料粒子の総表面積、疎水性基と顔料粒子表面との親和性等により、顔料に対するポリマーの吸着量には限界があり、ポリマー量が極端に多すぎると、分散液の増粘、分散不安定化を引き起こすため好ましくない。
【0157】
[限外濾過・精密濾過膜(遊離の疎水性基含有カチオンポリマー除去)]
該濾過工程は、上記分散工程で得られた分散液中の遊離ポリマーを除去することが目的であり、限外濾過又は精密濾過、あるいは両方の方法を組み合わせて行うことが好ましい実施形態である。該濾過工程を省略すると、次工程で疎水性基含有アニオンポリマーを添加した際に、ゲル化や増粘が起こりやすく、意図しない(顔料を含まない疎水性基含有カチオンポリマーと疎水性基含有アニオンポリマーからなる)ポリマー微粒子が生成し、分散安定性の低下、吐出性不良、あるいは光沢性低下を招いてしまう。
【0158】
限外濾過膜、あるいは精密濾過膜を用いた濾過は、クロスフロー法で行うのが最適である。具体的な方法としては、疎水性基含有カチオンポリマーによる分散工程で得られた水性顔料分散液をポンプで送液・循環させ、濾過面と垂直方向に適当な流速を与えることで遊離ポリマーを濾液側へ透過させる。この方法で疎水性基含有カチオンポリマーが透過したかどうかの判定は、例えば透過液の電導度で確認することができる。
【0159】
使用される限外濾過膜又は精密濾過膜の材質に関して特に限定されず、従来公知のものが使用できるが、例えば、有機系膜の具体例としては、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、四フッ化エチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリビニルアルコールよりなるものが挙げられ、無機系膜としては、アルミナ、ジルコニア、チタニアよりなるものが挙げられる。
【0160】
限外濾過膜の分画分子量は、除去したいポリマーの分子量により適宜選択すればよく、本発明の場合、3000以上が好ましく、更に好ましくは6000以上である。
精密濾過膜の細孔孔径は、分散顔料粒子の大きさにより適宜選択すればよく、本発明の場合、300nm以下が好ましく、更に好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。細孔孔径が大きくなるに従い、顔料粒子の透過割合が増加してしまい、回収量が著しく低下してしまうため好ましくない。
【0161】
この濾過工程で得られる処理液中の顔料と疎水性基含有カチオンポリマーを含めた全固形分濃度は、1重量%以上60重量%以下が好ましく、更に好ましくは3重量%以上50重量%以下、より好ましくは5重量%以上40重量%以下である。固形分濃度が低すぎると濾液量が多くなり、濾過の効率が悪くなり、高すぎると膜詰まりを起こし易くなるため好ましくない。
限外濾過・精密濾過時の温度やpHは、使用する膜の適用範囲内、かつ分散安定性を保持できる範囲内であればよい。特に限定されないが、温度は10℃〜60℃が好ましく、より好ましくは15℃〜40℃である。pHは2〜8が好ましく、3〜7がより好ましい。
【0162】
[疎水性基含有アニオンポリマーの添加]
上記濾過工程により得た処理液中の顔料に、疎水性基含有アニオンポリマーを吸着させるには、例えば、所定量の該ポリマーと、濾過工程で得られた疎水性基含有カチオンポリマーが吸着した顔料粒子を有する分散液を混合した後、通常溶液の混合に使用される各種装置を使用して分散処理を行えばよく、その装置は特に限定されるものではないが、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、マグネティックスターラー、超音波分散機等を用いることができる。このうち、特に好ましい処理処方としては、超音波分散機が挙げられる。
【0163】
濾過工程で得られた分散液に添加される疎水性基含有アニオンポリマー全体の解離したイオン性基数の総量は、顔料粒子表面に吸着した疎水性基含有カチオンポリマー全体の解離したイオン性基数総量の1.0倍より多いことが好ましく、さらには、1.8倍より多いことが好ましい。ポリマー量がこれより少ない場合、水性媒体中で顔料が分散不安定になり凝集を起こしてしまう。また、ポリマー量が多すぎると顔料に吸着していない遊離ポリマー量が増え、分散液の増粘、分散不安定化を引き起こすため、ポリマー量は、顔料粒子表面に吸着したカチオン性基数総量の10倍以下となるアニオン性基数を有する量であることが好ましい。
【0164】
添加される疎水性基含有アニオンポリマー量は、一般的にポリマー中の全てのイオン性基が解離しているわけではないので、実際の解離しているイオン性基総量で規定するのが好ましい。
【0165】
本発明においては、疎水性基含有カチオンポリマー及び疎水性基含有アニオンポリマー以外の疎水性ポリマー、水溶性ノニオン性基、疎水性基を有するポリマー等の他のポリマーを配合する場合、これらのポリマーのうち、疎水性ポリマーは、疎水性基含有アニオンポリマーを添加するよりも前の時点で添加することが好ましく、水溶性ノニオン性基、疎水性基を含有するポリマー等は、疎水性基含有アニオンポリマーの添加と同時もしくは後に添加することが好ましい。
【0166】
また、分散液に添加して分散処理された疎水性基含有アニオンポリマーの一部は顔料に吸着していない遊離ポリマーとして存在し、分散液の増粘や分散不安定化を引き起こし、また吐出性や光沢性の低下を引き起こすことから、疎水性基含有アニオンポリマーの添加及びその分散処理後、濾過によりこの遊離ポリマーを除去することが好ましい。この場合は、疎水性基含有アニオンポリマー添加及び分散処理後に、限外濾過又は精密濾過、あるいは両者の方法を組み合わせてこの遊離ポリマーを除去することが好ましい。ここで実施する限外濾過・精密濾過は、前述の遊離の疎水性基含有カチオンポリマー除去のための濾過と同様の方法により行うことができ、用いる限外濾過膜・精密濾過膜の材質、分画分子量、細孔孔径についても同様のものを使用することができる。
【0167】
3.水性顔料分散液の全固形分濃度、顔料含有量等
本発明の水性顔料分散液、好ましくは上述の水性顔料分散液の製造方法で得られる水性顔料分散液に含まれる顔料と疎水性基含有カチオンポリマーと疎水性基含有アニオンポリマー及びその他のポリマーを含めた全固形分濃度は、0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、更に好ましくは1重量%以上40重量%以下、更に好ましくは5重量%以上30重量%以下である。この固形分濃度が低すぎると記録液を調製した時に十分な顔料濃度が確保できず、高すぎると増粘し、分散液の分散安定性が低下する。
【0168】
また、水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合は、51重量%以上であることが好ましい。水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合は、さらに好ましくは53重量%以上、より好ましくは55重量%以上である。水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合の上限は特に限定はないが、90重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは80重量%以下である。水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が多すぎると、分散が不安定となり耐熱性が悪化する、更には光沢性も大きく低下するといった問題が起こる。水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が少なすぎると、顔料に対してポリマー量が過剰に存在するため、それらのポリマーの一部は未吸着あるいは顔料表面から脱離した状態で存在することとなり、耐熱性、吐出安定性が悪化してしまう。
【0169】
また、本発明の水性顔料分散液が、疎水性基含有カチオンポリマー及び疎水性基含有アニオンポリマー以外の他のポリマーを含有する場合、これらのポリマーの含有量は5重量%以下であることが好ましい。即ち、他のポリマー、例えば疎水性ポリマーを配合することにより、顔料に対するポリマーの被覆量が高くなり、記録物の光沢性が高くなるという効果が得られるが、配合量が過度に多いと顔料表面の疎水性が高くなることにより分散安定性が低下する。
【0170】
4.記録液
本発明の水性顔料分散液は、記録液の着色剤成分として用いることができ、特にインクジェット記録液に用いることが好ましい。
本発明の記録液は、上述の本発明の水性顔料分散液の着色剤濃度を必要に応じて調製し、更には用途に応じて各種添加剤を加えて調製される。
【0171】
着色剤としては、上述の本発明の水性顔料分散液中の顔料に加え、さらに調色等の目的などで表面処理された自己分散性顔料や、染料、界面活性剤、ポリマー分散剤等で分散された顔料、あるいは、染料等を追加で含んでいても良い。
【0172】
本発明の記録液における全着色剤の濃度は、記録液全量に対する、全着色剤の濃度として0.1重量%以上、中でも0.5重量%以上であることが好ましく、その上限は20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に10重量%以下であることが好ましい。この着色剤濃度が高過ぎると増粘し、かつ吐出性が悪化し、低すぎると印字濃度が低くなりすぎる。一方で、水性顔料分散液に追加する着色剤の量は、水性顔料分散液中の顔料100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは75重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。この着色剤の追加量が多過ぎると本発明の効果が低下する。
【0173】
また、本発明の記録液に用いる溶媒は、水及び水溶性有機溶媒を含むことが好ましく、さらに所望により他の成分を含むことができる。
【0174】
本発明の記録液中の水溶性有機溶媒濃度は、適宜選択し決定すればよいが、通常、記録液に対して1重量%以上45重量%以下、中でも40重量%以下であることが好ましい。また記録液における水の含有量は、上述の着色剤や水溶性有機溶媒、及び以下に記載される任意の添加成分の濃度を適宜設定できる量であればよい。
【0175】
水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、チオジグリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、トリアゾール、ニコチンアミド、ジメチルアミノピリジン、ε−カプロラクタム、乳酸アミド、1,3−プロパンスルトン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、エチレン尿素、プロピレン尿素、尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパンが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0176】
本発明の記録液は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいても良い。
このような添加剤としては例えば、浸透促進剤、界面活性剤、表面張力調整剤、ヒドロトロピー剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、保湿剤、防黴剤、防錆剤等の記録液用添加剤として公知のものが挙げられる。
本発明の記録液における、これら添加剤の含有量は、記録液の全量に対して、通常その合計で30重量%以下、中でも20重量%以下であることが好ましい。
【0177】
浸透促進剤としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルグリコールエーテル等のカルビトール類、界面活性剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0178】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤等、任意のものの1種又は2種以上を使用できる。中でも非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤が好ましい。
【0179】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類等が挙げられる。
【0180】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルフォン酸塩類、アルキルナフタレンスルフォン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルフォン酸塩類、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、α−オレフィンスルフォン酸塩等が挙げられる。
【0181】
また、ポリマー系界面活性剤としては、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸/アクリル酸エステル共重合、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸ハーフエステル共重合体、スチレン/スチレンスルフォン酸共重合体、ビニルナフタレン/マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン/アクリル酸共重合体あるいはこれらの塩等が挙げられる。
【0182】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0183】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等の界面活性剤も使用することができる。
【0184】
これらの界面活性剤の含有量は、適宜選択し決定すればよい。通常は記録液に対して0.001重量%以上5重量%以下の範囲で添加することによって、印刷物の速乾性及び印字品位をより一層改良できる。
【0185】
表面張力調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、ノニオン、カチオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0186】
ヒドロトロピー剤としては、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等の1種又は2種以上が好ましい。
【0187】
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の1種又は2種以上を水溶性有機溶媒と兼ねるものとして添加することもできる。更に、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類の1種又は2種以上を添加することもできる。
【0188】
キレート剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、記録液に対して0.005重量%以上0.5重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
【0189】
防黴剤としては、特に限定されるものではないが、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、記録液に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0190】
また、本発明の記録液には、記録媒体への画像の定着性や耐擦性を更に向上させるためにポリマー微粒子を添加しても良い。ポリマー微粒子としては特に限定されないが、表面にイオン性基を有し、粒子径が10〜150nmのものが好ましい。これらのポリマー微粒子は、記録液に対して10重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
【0191】
また、記録液のpHを調整し、記録液の安定性を得るため、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、硝酸、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
記録液のpHとしては、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH6〜11程度に調整することが好ましい。
【実施例】
【0192】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
〔合成例1〕:疎水性基含有カチオンポリマーI:ポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのセパラブルフラスコに、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル13.9gを仕込み、更に、溶媒としてソルミックスA−11(エタノール85.5重量%とメタノール13.4重量%とイソプロピルアルコール1.1重量%の混合溶媒 日本アルコール販売(株)製)2200.0g、蒸留水330.0g、モノマーとしてスチレン415.0g、アクリエステルDMC(2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液 三菱レイヨン(株)製)442.0gを、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン35.1gを上記のフラスコ内に仕込んだ。
セパラブルフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から78℃まで1時間かけて上昇させ、78℃で10時間重合を行った。
重合終了後、エバポレーターで重合液を減圧濃縮した後、イソプロパノール/テトラヒドロフラン(1/2:v/v)混合溶媒中に濃縮した重合液を滴下して、生成したポリマーを沈殿させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、蒸留水5000.0gを加え混合した後、常圧蒸留により残存有機溶媒を除去してポリマー水溶液を得た。得られたポリマー水溶液を乾燥し、ポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド):疎水性基含有カチオンポリマーIを得た。
得られたポリマーの構造はDMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、疎水性基含有カチオンポリマーIの中のスチレン単位、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位の組成比は、70:30(モル比)であった。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定された数平均分子量(Mn)は13000、分子量分布は1.6であった。
【0194】
〔製造例1〕:疎水性基含有カチオンポリマーIブラック顔料分散液(分散液α)の調製
カーボンブラック(三菱化学(株)製:#960)28.0g、合成例1で得られた疎水性基含有カチオンポリマーIの水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーI濃度20.57重量%)81.7g、蒸留水170.0gを混合し、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(1)を得た。
分散液(1)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で40分間分散し、顔料分散液(2)を得た。
分散液(2)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液αを得た。
【0195】
(塩素イオン濃度測定)
蒸留水で10倍に希釈した分散液α10.0gにイオン強度調整剤(Thermo Electron Corporation:Cat.No.940011)0.20gを混合した液を調製し、イオン計(Thermo Orion Corporation:モデル290Aplus)に塩素複合電極(Thermo Electron Corporation:モデル9617)を装着して塩素イオン濃度の測定を行った。
分散液αの塩素イオン濃度は、0.044mol/Lであった。
【0196】
〔合成例2〕:疎水性基含有アニオンポリマー1:ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.25gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン262.5g、モノマーとしてアクリル酸67.75g、メタクリル酸イソボルニル52.25gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を1時間かけて70℃まで上昇させた後、更に8時間重合反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、反応液をアセトニトリル中に滴下して沈殿を得た。沈殿を回収し、真空乾燥することで粗ポリマーを得た。粗ポリマーに対し、イオン交換水を加えた後、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和し水溶液化した。得られたポリマー水溶液より精密濾過にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮乾固することにより、ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー1を得た。
得られたポリマーの構造は13C−NMRにより確認された。13C−NMRより求められた、ポリマー中のメタクリル酸イソボルニル単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、21:79(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は5800、分子量分布は1.6であった。
【0197】
(疎水性基含有アニオンポリマー1のナトリウムイオン濃度測定)
疎水性基含有アニオンポリマー1水溶液(13.67重量%)を蒸留水で10倍に希釈した液10.0gにイオン強度調整剤(Thermo Orion Corporation:Cat.No.841111)1gを混合した液を調製し、イオン計(Thermo Orion Corporation:モデル290Aplus)にナトリウム複合電極(Thermo Orion Corporation:モデル8611BN ROSSTM)を装着してナトリウムイオン濃度の測定を行った。
疎水性基含有アニオンポリマー1水溶液(13.67重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.81mol/Lであった。
【0198】
〔製造例2〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー1を含むブラック顔料分散液(分散液A)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー1の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー1濃度13.67重量%)20.14gを蒸留水99.86gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、20分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Aを得た。分散液A中の固形分に対する顔料の含有量は61.7重量%であった。
得られた分散液Aに含まれる疎水性基含有カチオンポリマーIのカチオン性基数と疎水性基含有アニオンポリマー1のアニオン性基数の比(以下C/A比とする)を以下の方法で求めた。C/A比は1/3.6であった。
【0199】
(分散液A中のC/A比の算出方法)
分散液Aを180℃で90分間加熱することにより測定した不揮発分は12.97重量%であり、分散液Aの顔料濃度は8重量%であるので、分散液Aの顔料とポリマーの比率は61.7/38.3(重量%)と算出された。疎水性基含有カチオンポリマーI、カーボンブラック(三菱化学(株)製:#960)、分散液Aの不揮発分、の有機元素分析を行い、各サンプルの窒素量を測定したところ、それぞれ3.43重量%、0.072重量%、0.60重量%であった。分散液Aの不揮発分中の窒素量からカーボンブラック由来の窒素量を引いた値を疎水性基含有カチオンポリマーI由来の窒素量とすると、分散液Aの不揮発分中の疎水性基含有カチオンポリマーIの比率は16.2重量%と計算され、この値をポリマーの比率38.3重量%から引いた値(=22.1重量%)が疎水性基含有アニオンポリマー1の比率となった。疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー1の存在比から、NMRにより求めた各ポリマーの組成比を用いて計算したC/A比は1/3.6であった。
【0200】
〔合成例3〕:疎水性基含有アニオンポリマー2:ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.28gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン164.0g、モノマーとしてアクリル酸84.68g、メタクリル酸イソボルニル65.32gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を1時間かけて70℃まで上昇させた後、更に5時間重合反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、反応液をアセトニトリル中に滴下して沈殿を得た。沈殿を回収し、真空乾燥することで粗ポリマーを得た。粗ポリマーに対し、イオン交換水を加えた後、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水溶液化した。得られたポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮乾固することにより、ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー2を得た。
得られたポリマーの構造は、13C−NMRにより確認された。13C−NMRより求められた、ポリマー中のメタクリル酸イソボルニル単位、アクリル酸ナトリウム単位、の組成比は19:81(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は12000、分子量分布は1.7であった。
【0201】
(疎水性基含有アニオンポリマー2のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー2水溶液(10.54重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.63mol/Lであった。
【0202】
〔製造例3〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー2を含むブラック顔料分散液(分散液B)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー2の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー2濃度10.54重量%)24.39gを蒸留水95.61gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Bを得た。分散液B中の固形分に対する顔料の含有量は66.1重量%であった。
得られた分散液BのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/2.8であった。
【0203】
〔合成例4〕:疎水性基含有アニオンポリマー3:ポリ(スチレン−co−イタコン酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.58gを仕込み、溶媒としてメタノール180g、モノマーとしてスチレン56.5g、イタコン酸143.4gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から60℃まで上昇させ、固体のイタコン酸を完全に溶解させた後、69℃まで上昇させ8時間重合反応を行った。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、撹拌しながら10重量%の水酸化ナトリウム−メタノール溶液440.8gを加えて中和した後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、粗ポリマー水溶液を得た。粗ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−イタコン酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー3を得た。
得られたポリマーの構造は、DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、ポリマー中のスチレン単位、イタコン酸ナトリウム単位の組成比は、45/55(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は14000、分子量分布は1.7であった。
【0204】
(疎水性基含有アニオンポリマー3のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー3水溶液(12.74重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.70mol/Lであった。
【0205】
〔製造例4〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー3を含むブラック顔料分散液(分散液C)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー3の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー3濃度12.74重量%)24.69gを蒸留水95.31gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、90分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Cを得た。分散液C中の固形分に対する顔料の含有量は66.7重量%であった。
得られた分散液CのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/4.5であった。
【0206】
〔合成例5〕疎水性基含有アニオンポリマー4:ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.25gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン262.5g、モノマーとしてアクリル酸59.98g、メタクリル酸シクロヘキシル60.02gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を1時間かけて70℃まで上昇させた後、更に8時間重合反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、反応液をエバポレーションでまで濃縮した。濃縮後の反応液をアセトニトリル中に滴下し沈殿を得た。沈殿を回収し、真空乾燥することで粗ポリマーを得た。粗ポリマーに対し、イオン交換水を加えた後、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水溶液化した。得られたポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮乾固することにより、ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー4を得た。
得られたポリマーの構造はH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、ポリマー中のメタクリル酸シクロヘキシル単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、45:55(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は11000、分子量分布は1.4であった。
【0207】
(疎水性基含有アニオンポリマー4のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー4水溶液(16.88重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.88mol/Lであった。
【0208】
〔製造例5〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー4を含むブラック顔料分散液(分散液D)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー4の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー4濃度16.88重量%)18.54gを蒸留水101.46gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、60分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Dを得た。分散液D中の固形分に対する顔料の含有量は62.3重量%であった。
得られた分散液DのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/3.0であった。
【0209】
〔合成例6〕疎水性基含有アニオンポリマー5:ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.28gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン164.0g、モノマーとしてアクリル酸94.72g、メタクリル酸シクロヘキシル55.28gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を1時間かけて70℃まで上昇させた後、更に5時間重合反応を行った。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、テトラヒドロフランで希釈した後、アセトニトリル中に滴下し、沈殿を得た。沈殿を回収し、真空乾燥することで粗ポリマーを得た。粗ポリマーに対し、イオン交換水を加えた後、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水溶液化した。得られたポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮乾固することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸シクロヘキシル):疎水性基含有アニオンポリマー5を得た。
得られたポリマーの構造は、H−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、ポリマー中のアクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸シクロヘキシル単位の組成比は、33:67(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は26000、分子量分布は1.8であった。
【0210】
(疎水性基含有アニオンポリマー5のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー5水溶液(11.26重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.71mol/Lであった。
【0211】
〔製造例6〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー5を含むブラック顔料分散液(分散液E)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー5の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー5濃度11.26重量%)22.23gを蒸留水97.77gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、60分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Eを得た。分散液E中の固形分に対する顔料の含有量は75.5重量%であった。
得られた分散液EのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/4.0であった。
【0212】
〔合成例7〕:疎水性基含有カチオンポリマーII:ポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)の合成
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのセパラブルフラスコに、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.76gを仕込み、次に、溶媒としてソルミックスA−11(エタノール85.5重量%とメタノール13.4重量%とイソプロピルアルコール1.1重量%の混合溶媒 日本アルコール販売(株)製)623.6g、蒸留水97.0g、モノマーとしてスチレン97.0g、アクリエステルDMC(2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液 三菱レイヨン(株)製)103.7gを、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール4.76gを、上記のフラスコ内に仕込んだ。
セパラブルフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から78℃まで45分間かけて上昇させ、78℃で10時間重合を行った。
重合終了後、エバポレーターで重合液を減圧濃縮した後、アセトン中に2.5倍に濃縮した重合液を滴下して生成したポリマーを沈殿させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、蒸留水1500gを加えて混合した後、常圧蒸留により残存有機溶媒を除去しポリマー水溶液を得た。得られたポリマー水溶液を乾燥し、ポリ(スチレン−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド):疎水性基含有カチオンポリマーIIを得た。
得られたポリマーの構造は、DMSOを溶媒としたH−NMRによって確認した。NMRデータより算出される、疎水性基含有カチオンポリマーII中のスチレン単位、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位の組成比は、70:30(モル比)であった。また、GPCによって測定された数平均分子量は7000、分子量分布は1.3であった。
【0213】
〔製造例7〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIブラック顔料分散液(分散液β)の調製
焼成品カーボンブラック(三菱化学(株)製:#2300Bを窒素雰囲気下に1200℃で1ヶ月間焼成したもの;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、疎水性基含有カチオンポリマーII水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーII濃度17.1重量%)98.5g、脱イオン水153.5gを混合し、ホモミキサーで60分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて60℃で7時間、更に40℃で1時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(3)を得た。
分散液(3)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で60分間分散し、顔料分散液(4)を得た。
分散液(4)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液βを得た。
【0214】
(塩素イオン濃度測定)
製造例1と同様に測定した分散液βの塩素イオン濃度は、0.050mol/Lであった。
【0215】
〔合成例8〕:疎水性基含有アニオンポリマー6:ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、溶媒としてテトラヒドロフラン1875g、モノマーとして、メタクリル酸イソボルニル301.72g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A 共栄社化学(株)製)654.90g、アクリル酸293.38gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を60℃まで上昇させたあと、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5.57gを加え、5時間重合反応を行った。バス温度を70℃まで上昇させ、更に2時間重合反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、蒸留水を加え、テトラヒドロフランを加熱留去し、粗ポリマー水溶液を得た。粗ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(メタクリル酸イソボルニル−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー6を得た。
得られたポリマーの構造はH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ポリマー中のメタクリル酸イソボルニル単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、26/20/54(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は12000、分子量分布は1.9であった。
【0216】
(疎水性基含有アニオンポリマー6のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー6水溶液(12.99重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.36mol/Lであった。
【0217】
〔製造例8〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIと疎水性基含有アニオンポリマー6を含むブラック顔料分散液(分散液F)の調製
分散液β65gに、疎水性基含有アニオンポリマー6の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー6濃度12.99重量%)31.47gを、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、40分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Fを得た。分散液F中の固形分に対する顔料の含有量は58.6重量%であった。
得られた分散液FのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/2.0であった。
【0218】
〔合成例9〕:疎水性基含有カチオンポリマーIII:ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)の合成
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのセパラブルフラスコに、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル18.45gを仕込み、次に、溶媒としてソルミックスA−11(エタノール85.5重量%とメタノール13.4重量%とイソプロピルアルコール1.1重量%の混合溶媒 日本アルコール販売(株)製)2251g、蒸留水70.31g、モノマーとしてスチレン269.8g、n−ブチルアクリレート249.0g、アクリエステルDMC(2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液 三菱レイヨン(株)製)351.5g、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール4.76gを上記のフラスコ内に仕込んだ。
セパラブルフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から78℃まで45分間かけて上昇させ、78℃で7時間重合を行った。
重合終了後、エバポレーターで有機溶媒分を除去しながら加水することにより、粗ポリマー水溶液を得た。粗ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド):疎水性基含有カチオンポリマーIIIを得た。
得られたポリマーの構造は、DMSOを溶媒としたH−NMRによって確認した。H−NMRにより求められた疎水性基含有カチオンポリマーIIIの中のスチレン単位、n−ブチルアクリレート単位、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位の組成比は、50:29:21(モル比)であった。また、GPCによって測定された数平均分子量(Mn)は8000、分子量分布は2.4であった。
【0219】
〔製造例9〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIIシアン顔料分散液(分散液γ)の調製
ピグメントブルー−15:3(大日精化工業(株)製;パウダー;固形分量100.0重量%)28.0g、疎水性基含有カチオンポリマーIII水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーIII濃度19.5重量%)86.2g、脱イオン水165.9gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で2時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(5)を得た。
分散液(5)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で120分間分散し、顔料分散液(6)を得た。
分散液(6)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液γを得た。
【0220】
(塩素イオン濃度測定)
製造例1と同様に測定した分散液γの塩素イオン濃度は、0.028mol/Lであった。
【0221】
〔製造例10〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIIと疎水性基含有アニオンポリマー6を含むシアン顔料分散液(分散液G)の調製
分散液γ300gに、疎水性基含有アニオンポリマー6の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー6濃度12.99重量%)117.6gを、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、75分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Gを得た。分散液G中の固形分に対する顔料の含有量は66.0重量%であった。
得られた分散液Gについて、以下の方法で求めたC/A比は1/4.9であった。
【0222】
(分散液G中のC/A比の算出方法)
シアン顔料(ピグメントブルー−15:3)、分散液Gの不揮発分のCu量を測定したところ、それぞれ10.8重量%、7.13重量%であり、分散液Gの顔料とポリマーの比率は66.0/34.0(重量%)と算出された。疎水性基含有カチオンポリマーIII、シアン顔料、分散液Gの不揮発分、の有機元素分析を行い、各サンプルの窒素量を測定したところ、それぞれ2.38重量%、18.79重量%、12.60重量%であった。分散液Gの不揮発分中の窒素量から顔料由来の窒素量を引いた値を疎水性基含有カチオンポリマーIII由来の窒素量とすると、分散液Gの不揮発分中の疎水性基含有カチオンポリマーIIIの比率は8.2重量%と計算され、この値をポリマーの比率34.0重量%から引いた値(=25.8重量%)が疎水性基含有アニオンポリマー6の比率となった。疎水性基含有カチオンポリマーIIIと疎水性基含有アニオンポリマー6の存在比から、NMRにより求めた各ポリマーの組成比を用いて計算したC/A比は1/4.9であった。
【0223】
〔合成例10〕:疎水性基含有カチオンポリマーIV:ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)の合成
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのセパラブルフラスコに、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル6.92gを仕込み、次に、溶媒としてソルミックスA−11(エタノール85.5重量%とメタノール13.4重量%とイソプロピルアルコール1.1重量%の混合溶媒 日本アルコール販売(株)製)1053gを、モノマーとしてスチレン219.4g、n−ブチルアクリレート202.5g、アクリエステルDMC(2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80重量%水溶液 三菱レイヨン(株)製)410.1gを上記のフラスコ内に仕込んだ。
セパラブルフラスコをオイルバスに浸し、バス温度を室温から78℃まで45分間かけて上昇させ、78℃で7時間重合を行った。
重合終了後、エバポレーターで有機溶媒分を除去しながら加水することにより、粗ポリマー水溶液を得た。粗ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド):疎水性基含有カチオンポリマーIVを得た。
得られたポリマーの構造は、DMSOを溶媒としたH−NMRによって確認した。H−NMRにより求められた疎水性基含有カチオンポリマーIVの中のスチレン単位、n−ブチルアクリレート単位、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位の組成比は、45:25:30(モル比)であった。また、GPCによって測定された数平均分子量(Mn)は17000、分子量分布は2.2であった。
【0224】
〔製造例11〕:疎水性基含有カチオンポリマーIVマゼンタ顔料分散液(分散液δ)の調製
ピグメントレッド−122(大日精化工業(株)製;ペースト;固形分27.0重量%)103.7g、疎水性基含有カチオンポリマーIV水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーIV濃度21.0重量%)80.2g、脱イオン水96.1gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて60℃で8時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(7)を得た。
分散液(7)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で120分間分散し、顔料分散液(8)を得た。
分散液(8)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液δを得た。
【0225】
(塩素イオン濃度測定)
製造例1と同様に測定した分散液δの塩素イオン濃度は、0.053mol/Lであった。
【0226】
〔製造例12〕:疎水性基含有カチオンポリマーIVと疎水性基含有アニオンポリマー6を含むマゼンタ顔料分散液(分散液H)の調製
分散液δ256gに蒸留水64gを加え希釈した分散液に疎水性基含有アニオンポリマー6の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー6濃度12.99重量%)158.7gを蒸留水25.2gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Hを得た。分散液H中の固形分に対する顔料の含有量は57.9重量%であった。
得られた分散液HのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/6.5であった。
【0227】
〔製造例13〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIIイエロー顔料分散液(分散液ε)の調製
ピグメントイエロー−74(大日精化工業(株)製;パウダー;固形分100.0重量%)28.0g、疎水性基含有カチオンポリマーIII水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーIII濃度19.5重量%)86.2g、脱イオン水165.9gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて25℃で16時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(9)を得た。
分散液(9)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で120分間分散し、顔料分散液(10)を得た。
分散液(10)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液εを得た。
【0228】
(塩素イオン濃度測定)
製造例1と同様に測定した分散液εの塩素イオン濃度は、0.049mol/Lであった。
【0229】
〔合成例11〕:疎水性基含有アニオンポリマー7:ポリ(アクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、溶媒としてテトラヒドロフラン405g、モノマーとして、アクリル酸イソボルニル75.5g、アクリル酸104.49gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を60℃まで上昇させた後、触媒として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.43gを加え、2時間重合反応を行った。バス温度を65℃まで上昇させ、更に2時間重合反応を行った。バス温度を70℃まで上昇させ、更に4時間重合反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却した反応液をアセトニトリル中に滴下し、沈殿を得た。沈殿を回収し、真空乾燥することで粗ポリマーを得た。粗ポリマーに対し、イオン交換水を加えた後、5N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水溶液化した。得られたポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(アクリル酸イソボルニル−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー7を得た。
得られたポリマーの構造はDMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ポリマー中のアクリル酸イソボルニル単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、25/75(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は11000、分子量分布は1.75であった。
【0230】
(疎水性基含有アニオンポリマー7のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー7水溶液(10.87重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.65mol/Lであった。
【0231】
〔製造例14〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIIと疎水性基含有アニオンポリマー7を含むイエロー顔料分散液(分散液I)の調製
分散液ε256gに蒸留水64gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー7の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー7濃度12.99重量%)158.7gを蒸留水25.2gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、60分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Iを得た。分散液I中の固形分に対する顔料の含有量は58.0重量%であった。
得られた分散液IのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/3.2であった。
【0232】
〔製造例15〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIブラック顔料分散液(分散液θ)の調製
カーボンブラック(三菱化学(株)製:#990)28.0g、疎水性基含有カチオンポリマーII水溶液(疎水性基含有カチオンポリマーII濃度17.1重量%)98.5g、脱イオン水153.5gを混合し、ホモミキサーで60分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとして自作のビーズミルを用いて60℃で7時間、更に40℃で1時間分散し、ビーズを除いた後、顔料濃度8重量%に調整して分散液(11)を得た。
分散液(11)を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で60分間分散し、顔料分散液(12)を得た。
分散液(12)に対して蒸留水を加え2倍に希釈した後に、精密濾過膜(Spectrum Laboratories Inc:材質ポリスルホン、細孔孔径0.05μm)により遊離ポリマーを除去した後、濃縮して顔料濃度が8重量%の分散液θを得た。
【0233】
(塩素イオン濃度測定)
製造例1と同様に測定した分散液θの塩素イオン濃度は、0.050mol/Lであった。
【0234】
〔製造例16〕:疎水性基含有カチオンポリマーIIと疎水性基含有アニオンポリマー6を含むブラック顔料分散液(分散液J)の調製
分散液θ20gに、疎水性基含有アニオンポリマー6の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー濃度12.99重量%)14.79gを、スターラー攪拌しながら滴下し、10分間スターラー攪拌を行った後、超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、15分間超音波照射した。次に、ロータリーエバポレータで濃縮し、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Jを得た。分散液J中の固形分に対する顔料の含有量は37.9重量%であった。
得られた分散液JのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/2.8であった。
【0235】
〔合成例12〕:疎水性基含有アニオンポリマー8:ポリ(スチレン−co−ビニルピロリドン−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.77gを仕込み、溶媒としてメタノール200g、モノマーとしてスチレン50.4g、ビニルピロリドン60.0g、アクリル酸40.0gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で7時間重合反応を行った。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、撹拌しながら5N水酸化ナトリウム水溶液124.17gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、粗ポリマー水溶液を得た。粗ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−ビニルピロリドン−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー8を得た。
得られたポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたポリマー中のスチレン単位、ビニルピロリドン単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、50/8/42(モル比)であった。また、GPCにより求められた数平均分子量(Mn)は15300、分子量分布は1.6であった。
【0236】
(疎水性基含有アニオンポリマー8のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー8水溶液(22.56重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.73mol/Lであった。
【0237】
〔製造例17〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー8を含むブラック顔料分散液(分散液K)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー8の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー8濃度10.82重量%)39.65gを蒸留水80.35gで希釈した水溶液を、スターラー攪拌しながら滴下し、10分間スターラー攪拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Kを得た。分散液K中の固形分に対する顔料の含有量は61.0重量%であった。
得られた分散液KのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。疎水性基含有カチオンポリマーI、疎水性基含有アニオンポリマー8の窒素量が、それぞれ3.43重量%、1.12重量%であることより計算したC/A比は1/2.2であった。
【0238】
〔実施例1〕
(記録液(インク組成物)の調製)
以下の処方により、インク化した。
分散液A 6.75g
蒸留水 4.87g
グリセリン 0.86g
トリエチレングリコール 0.72g
2−ピロリドン 0.33g
エチレン尿素 1.32g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.15g
【0239】
上記成分を混合し、15分撹拌、30分間超音波分散処理後、実施例1の記録液を得た。
【0240】
得られた実施例1の記録液について、下記(a)〜(e)の特性を以下の試験方法で評価した。
なお、プリンターとして、インクジェット記録方式プリンター(キヤノン(株)BJ−S700プリンター)を用い、印字用紙として市販の光沢紙(キヤノン(株)社製光沢紙SP−101)を用いた。
【0241】
(a)顔料の分散粒径
顔料の粒径は、実施例1の記録液を蒸留水で1000倍に希釈し、大塚電子(株)FPAR−1000に希薄系プローブを装着して測定し、顔料の分散粒子の平均粒径の値はCumulant法により算出した。
【0242】
(b)粘度
粘度は、実施例1の記録液についてレオメーター(REOLOGICA AB Insturuments;VAR−100;コーン1°/55φ)を使用して測定し、剪断速度100/秒の時の値を読み取った。
【0243】
(c)安定性
実施例1の記録液を70℃で15時間保持した後の顔料の分散粒径と粘度を、上記(a)、(b)と同様にして測定した。顔料の分散粒径の増大が小さいほどあるいは粘度の増加が少ないほど安定である。
【0244】
(d)吐出安定性
実施例1の記録液を、カートリッジに充填した後、プリンターで普通紙モードで印字用紙50枚に印字を実施し、かすれ等がないか目視観察し、以下の基準で評価した。
○:かすれなし
△:印刷途中でかすれる
×:画像がきれいに印刷できない
【0245】
(e)記録物の光沢度
実施例1の記録液を印字した印字用紙の光沢紙を、1日間室温で乾燥させたものの光沢度(Gloss)を測定した。測定は、Haze−Glossメーター(BYK Gardner社製 Cat.No.4601)を用いて行い、Gloss値は20°で測定した。
【0246】
〔実施例2〜5〕
実施例1において、分散液Aを分散液B,C,D,Eにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処方でインク化して実施例2,3,4,5の記録液を得た。
得られた実施例2〜5の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0247】
〔実施例6〕
(記録液(インク組成物)の調製)
以下の処方により、インク化した。
分散液F 5.63g
蒸留水 5.99g
グリセリン 0.86g
トリエチレングリコール 0.72g
2−ピロリドン 0.33g
エチレン尿素 1.32g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.15g
【0248】
上記成分を混合し、15分撹拌、30分間超音波分散処理後、実施例6の記録液を得た。
得られた実施例6の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0249】
〔実施例7〕
(記録液(インク組成物)の調製)
以下の処方により、インク化した。
分散液G 5.63g
蒸留水 6.60g
グリセリン 1.13g
2−ピロリドン 0.77g
1,6−ヘキサンジオール 0.74g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.15g
【0250】
上記成分を混合し、15分撹拌、30分間超音波分散処理後、実施例7の記録液を得た。
得られた実施例7の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0251】
〔実施例8,9〕
実施例7において、分散液Gを分散液H,Iにそれぞれ変更した以外は、実施例7と同様の処方でインク化して実施例8,9の記録液を得た。
得られた実施例8,9の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0252】
〔実施例10〕
実施例1において、分散液Aを分散液Jに変更した以外は、実施例1と同様の処方でインク化して実施例10の記録液を得た。
得られた実施例10の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0253】
〔実施例11〕
実施例1において、分散液Aを分散液Kに変更した以外は、実施例1と同様の処方でインク化して実施例11の記録液を得た。
得られた実施例11の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0254】
〔製造例18〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー2を含むブラック顔料分散液(分散液L)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー2の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー2濃度10.54重量%)8.78gを蒸留水111.22gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Lを得た。分散液L中の固形分に対する顔料の含有量は78.0重量%であった。
得られた分散液LのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/0.7であった。
【0255】
〔製造例19〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性モノマー構造単位を含有しないアニオンポリマーを含むブラック顔料分散液(分散液M)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業社製:Mn=25000)の水溶液(22.40重量%)8.75gを蒸留水111.25gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Mを得た。分散液M中の固形分に対する顔料の含有量は71.1重量%であった。
得られた分散液MのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/2.7であった。
【0256】
〔合成例13〕:疎水性基含有アニオンポリマー9:ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン3500.0g、モノマーとしてアクリル酸600.0g、n−ブチルアクリレート600.0g、スチレン400.0g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム/メタノール溶液で中和後、イソプロピルアルコール中に沈殿させた。沈殿を濾過し、真空乾燥することで、ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)とアクリル酸ナトリウムの混合物を得た。
上記ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)とアクリル酸ナトリウムの混合物30.0gを水970.0gに溶解した後、限外濾過処理により、アクリル酸ナトリウムを除去した。アクリル酸ナトリウム除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固することにより、ポリ(スチレン−co−n−ブチルアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム):疎水性基含有アニオンポリマー9を得た。
得られた疎水性基含有アニオンポリマー9の構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたポリマー中のアクリル酸ナトリウム単位、n−ブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、47:21:32(モル比)であった。また、GPCより求められた数平均分子量(Mn)は11000、分子量分布は1.6であった。
【0257】
(疎水性基含有アニオンポリマー9のナトリウムイオン濃度測定)
合成例2と同様に測定した疎水性基含有アニオンポリマー9水溶液(22.56重量%)のナトリウムイオン濃度の値は、0.73mol/Lであった。
【0258】
〔製造例20〕:疎水性基含有カチオンポリマーIと疎水性基含有アニオンポリマー9を含むブラック顔料分散液(分散液N)の調製
分散液α70gに蒸留水90gを加え希釈した分散液に、疎水性基含有アニオンポリマー9の水溶液(疎水性基含有アニオンポリマー9濃度22.56重量%)38.29gを蒸留水81.71gで希釈した水溶液を、スターラー撹拌しながら滴下し、10分間スターラー撹拌を行った後、30分間超音波洗浄器(BRANSONIC 5510J−DTH)で超音波照射し、さらに超音波分散機(SMT社製「ULTRASONIC HOMOGENIZER UH−600S」)にて、氷冷下、30分間超音波照射した。次に、精密濾過膜(旭化成ケミカルズ(株):マイクローザ:材質ポリスルホン、細孔孔径0.1μm)により水相中の遊離のランダムコポリマーや余分なイオン等を除去し、次いで濃縮した後、NaOH水溶液でpHを8に調整し、顔料濃度が8重量%の分散液Nを得た。分散液N中の固形分に対する顔料の含有量は45.6重量%であった。
得られた分散液NのC/A比を製造例2と同様な方法で求めた。C/A比は1/5.1であった。
【0259】
〔比較例1〜3〕
実施例1において、分散液Aを前記の分散液L,M,Nにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処方でインク化して比較例1,2,3の記録液を製造した。
得られた比較例1〜3の記録液について、実施例1と同様にして前記(a)〜(e)の特性(ただし、比較例1,2では(a)〜(d)の特性のみ)を評価し、結果を表1に示した。
【0260】
【表1】

【0261】
表1より次のことが明らかである。
比較例1は、実施例2と同じ疎水性基含有カチオンポリマー及び疎水性基含有アニオンポリマーを使用したが、C/A比が適切でない例である。この比較例1では、記録液における顔料の分散粒径は非常に大きく、かつ安定性にも欠けており、更にこの記録液はプリンターでの吐出も出来なかった。
また、比較例2は、用いたカチオン性基含有カチオンポリマーは実施例1〜5と同じであり、C/A比も適切な範囲であるが、疎水性モノマー構造単位を含有していないアニオンポリマーを使用した例である。この比較例2では、記録液の安定性は悪く、プリンターでの吐出も出来なかった。
更に、比較例3は、用いたカチオン性基含有カチオンポリマーは実施例1〜5と同じであるが、疎水性基含有アニオンポリマーの疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位のモル比が5/95〜50/50から外れており、更に水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が51重量%未満の例である。この比較例3では、吐出性安定性に欠けており、更に記録物の光沢度は実施例1〜5のいずれのものと比較しても劣っている。
【0262】
これに対して、実施例1〜11は、記録液の安定性及び吐出安定性が良好であり、更には記録物の光沢度も優れている。
【0263】
以上の結果から、本発明の水性顔料分散液は、顔料の分散安定性が良好となるばかりでなく、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の光沢性も優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、該疎水性基含有アニオンポリマー中の、疎水性モノマー構造単位/アニオン性モノマー構造単位のモル比が5/95〜50/50であることを特徴とする水性顔料分散液。
【請求項2】
顔料、カチオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有カチオンポリマーとする)、及び、アニオン性モノマー構造単位と疎水性モノマー構造単位を含有するポリマー(以下、疎水性基含有アニオンポリマーとする)を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の疎水性基含有アニオンポリマーに含まれるアニオン性基数が、疎水性基含有カチオンポリマーに含まれるカチオン性基数に対して1.0倍以上、かつ、8倍以下であり、該水性顔料分散液中の固形分に対する顔料の含有割合が51重量%以上であることを特徴とする水性顔料分散液。
【請求項3】
水性顔料分散液のpHが7以上、かつ、9以下を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性顔料分散液。
【請求項4】
顔料が、それ単体では水に分散しないことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項5】
疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位/カチオン性モノマー構造単位のモル比が40/60〜90/10であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項6】
疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位のうち、少なくとも一種類は芳香族炭化水素由来の構造単位であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項7】
疎水性基含有カチオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位のうち、少なくとも一種類は炭素数4以上、かつ、12以下の脂肪族炭化水素由来の構造単位であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項8】
疎水性基含有カチオンポリマー中のカチオン性モノマー構造単位が、四級アンモニウム塩構造を含有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項9】
疎水性基含有カチオンポリマーの数平均分子量が500以上、かつ、50000以下を満たすことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項10】
疎水性基含有アニオンポリマー中の疎水性モノマー構造単位が、芳香族炭化水素由来の構造単位及び脂肪族環式炭化水素由来の構造単位よりなる群から選ばれる1又は2以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項11】
疎水性基含有アニオンポリマー中のアニオン性モノマー構造単位が、カルボン酸、カルボン酸のアルカリ金属塩、及びカルボン酸のアルカリ土類金属塩よりなる群から選ばれる1又は2以上の構造を含有することを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項12】
疎水性基含有アニオンポリマーのアニオン性モノマー構造単位に含まれるカルボン酸及び/又はその塩が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸よりなる群から選ばれるカルボン酸及び/又はその塩であることを特徴とする、請求項11に記載の水性顔料分散液。
【請求項13】
疎水性基含有アニオンポリマーの数平均分子量が2000以上、かつ、50000以下を満たすことを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項14】
疎水性基含有アニオンポリマーが、疎水性モノマー構造単位とアニオン性モノマー構造単位の他に、非イオン性親水性モノマー構造単位を含有することを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法であって、顔料を疎水性基含有カチオンポリマーで分散させた後、限外濾過法及び/又は精密濾過法により余剰ポリマーを除去し、その後、疎水性基含有アニオンポリマーを添加する工程を備えることを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の水性顔料分散液を含む記録液。
【請求項17】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の水性顔料分散液を含むインクジェット用記録液。

【公開番号】特開2008−239961(P2008−239961A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36230(P2008−36230)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】