説明

水栓用発電機

【課題】本発明は、径方向の寸法の小さく、動翼羽根を安定して効率よく回転させることができる水栓用発電機を提供する。
【解決手段】 給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒体と、 前記給水流路に設けられ、動翼羽根を有し、前記給水流路に対して略平行な回転軸の周りに回転する動翼と、前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、前記動翼羽根に向けて水を噴出させる第一のノズルと、前記マグネットに隣接して設けられた導水路に向けて水を噴出させる第二のノズルと、を備え、前記第二のノズルへの水の流れが前記第一のノズルへの水の流れに影響を与えない程度に、前記第二のノズルを、前記第一のノズルから離間させて配置することを特徴とする水栓用発電機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水の流れを利用して発電する水栓用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛇口の下に差し出された手をセンサで感知し、蛇口から水を自動的に吐水する自動水栓装置が知られている。また、そのような自動水栓装置の流路に小型発電機を配設し、この発電機で得られた電力を蓄電しておき、上述のセンサなどの回路の電力を補う装置も知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1に開示をされているような軸流式発電機においては、噴流口により形成された旋回流により動翼を回転させる構成となっている。
【0004】
また、例えば、特許文献2や特許文献3に開示をされているような軸流式発電機においては、動翼の軸方向に対して略平行である水流方向を変化させ、水を動翼羽根の径外方向から動翼羽根に噴出する第一ノズルを備え、マグネットの径外側にマグネットに隣接しない水路を設けて、その水路にバイパス弁を備えた構成となっている。
【0005】
このような従来の発電機において、マグネットの径外側にマグネットに隣接しない水路を設ける必要があったため、径方向の寸法が大きくなってしまうという課題があった。
そのため、径方向の寸法を小さくするために、マグネットに隣接した水路に連通する第二のノズルを設けることが考えられるが、動翼羽根を安定して効率よく回転させるためには、第二のノズルの配置を工夫する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−336982号公報
【特許文献2】特開2005−299634号公報
【特許文献3】特開2005−171877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、径方向の寸法の小さく、動翼羽根を安定して効率よく回転させることができる水栓用発電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒体と、 前記給水流路に設けられ、動翼羽根を有し、前記給水流路に対して略平行な回転軸の周りに回転する動翼と、前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、前記動翼羽根に向けて水を噴出させる第一のノズルと、前記マグネットに隣接して設けられた導水路に向けて水を噴出させる第二のノズルと、を備え、前記第二のノズルへの水の流れが前記第一のノズルへの水の流れに影響を与えない程度に、前記第二のノズルを、前記第一のノズルから離間させて配置することを特徴とする水栓用発電機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、径方向の寸法の小さく、動翼羽根を安定して効率よく回転させることができる水栓用発電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電機の模式断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る発電機を備えた自動水栓装置の取付例を表す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る発電機を備えた自動水栓装置の模式断面図である。
【図4】マグネットを説明するための模式斜視図である。
【図5】ステータを説明するための模式斜視図である。
【図6】本実施の形態に係る発電機に備えられるキャップを説明するための模式斜視図である。
【図7】図1におけるA−A矢視断面図である。
【図8】図1におけるA−A矢視断面図である。
【図9】開閉弁を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
尚、各図面中、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る発電機1の模式断面図である。
発電機1には、主として、給水流入口201、給水流出口202、給水流路203、筒体13、キャップ14、動翼15、マグネットM、ステータ9、封止部材51が備えられ、これらは、ケース12(図3を参照)の中に収容されている。尚、キャップ14の上方に描かれた矢印は、流水の方向を示している。
ここで、発電機1の説明をする前に、発電機1を備えた自動水栓装置3の説明をする。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態に係る発電機を備えた自動水栓装置(以下、単に「自動水栓装置」とも称する)の取付例を表す模式図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る発電機を備えた自動水栓装置の模式断面図である。
【0014】
尚、図中の矢印は、流水の方向を示している。
【0015】
自動水栓装置3は、例えば、洗面台2などに取り付けられる。自動水栓装置3は、配管4を介して、水道水等の流入口5に接続されている。自動水栓装置3は、円筒状の本体3aと、この本体3aの上部に設けられ、本体3aの径外方向に延出する吐水部3bとを有する。吐水部3bの先端には、吐水口6が形成され、さらにこの吐水口6の近傍にはセンサ7が内蔵されている。
【0016】
自動水栓装置3の内部には、流入口5から流入し、配管4内を流れてきた給水を、吐水口6へと導く給水流路10が形成されている。本体3aの内部には、その給水流路10を開閉するための電磁弁8が内蔵され、さらに電磁弁8の下流側には、吐水量を一定に制限するための定流量弁55が内蔵されている。また、水道等の元圧が使用圧よりも高すぎる場合に減圧するための減圧弁または調圧弁(図示省略)が、電磁弁8より上流側に内蔵されている。尚、定流量弁55、減圧弁、調圧弁は、必要に応じて適宜設けるようにすればよい。
【0017】
定流量弁55より下流の吐水部3bの内部には、発電機1が備えられている。本体3aの内部には、発電機1で発電された電力を充電しておく充電器56、センサ7の駆動や電磁弁8の開閉などを制御する制御部57が設けられている。発電機1は、電磁弁8及び定流量弁55よりも下流側に配設されているため、水道の元圧(一次圧)が、発電機1に直接作用することはない。そのため、発電機1は、それほど高い耐圧性を要求されず、このような配置は、信頼性やコストの点で有利である。
【0018】
また、充電器56と制御部57とは、図示しない配線を介して接続されている。そして、充電器56及び制御部57は、本体3aの上部であって、給水流路10の最も上方の位置よりもさらに上方の位置に配置されている。そのため、 給水流路10を形成する流路管の外面に結露した水滴が、落下または流路管を伝って流れ落ちても、制御部57が浸水することを防ぐことができ、制御部57の故障を防止することができる。同様に、充電器56も給水流路10の上方に設けているため、充電器56が浸水することを防ぎ、充電器56の故障をも防止することができる。
【0019】
発電機1に設けられたコイル50(図5参照)と制御部57とは、図示しない配線を介して接続され、コイル50の出力が制御部57を介して充電器56に送られるようになっている。
【0020】
なお、水栓用発電機1は、水栓装置3の水栓金具(本体3a及び吐水部3b)の内部に設けられることに限らない。例えば、水栓装置3の水栓金具と、これよりも上流側に設けられた止水栓(元栓)105(図2参照)との間を接続する配管(流路)4に設けてもよい。
【0021】
自動水栓装置3は、生活空間において好適に使用される。使用目的としては、例えば、キッチン用水栓装置、リビングダイニング用水栓装置、シャワー用水栓装置、トイレ用水栓装置、洗面所用水栓装置などが挙げられる。また、本実施の形態に係る発電機1は、人体感知センサを用いた自動水栓装置3に限らず、例えば、手動スイッチのオン/オフによるワンタッチ水栓装置、流量をカウントして止水する定量吐水水栓装置、設定時間を経過すると止水するタイマー水栓装置などにも適用させることができる。また、発電された電力を、例えば、ライトアップ、アルカリイオン水や銀イオン含有水などの電解機能水の生成、流量表示(計量)、温度表示、音声ガイドなどに用いることもできる。
【0022】
また、自動水栓装置3において、吐出流量は、例えば、毎分100リットル以下、望ましくは毎分30リットル以下に設定されている。特に、洗面所用水栓においては、毎分5リットル以下に設定されていることが望ましい。また、トイレ用水栓のような吐出流量が比較的多い場合には、給水管から、発電機1に流れる水流を分岐させて、発電機1を流れる流量を毎分30リットル以下に調整することが望ましい。これは、給水管からのすべての水流を発電機1に流すと、動翼15の回転数が大きくなりすぎ、騒音や軸摩耗が増大する可能性が懸念され、また、回転数が増大しても適正回転数以下でなければ、渦電流やコイル熱によるエネルギー損失が生じるため、結果として発電量は増大しないからである。尚、水栓装置が取り付けられる水道管の給水圧としては、例えば、日本においては50kPa(キロパスカル)程度の低水圧である場合もあり得る。
【0023】
次に、図1に戻って、発電機1について説明する。
筒体13は、小径部13aと大径部13bとからなる段付き形状を呈し、その内部が給水流路に連通した状態で、図2、図3に図示される吐水部3bに配設される。この際、筒体13(動翼15)の回転軸(中心軸)が、流水の方向に対して略平行となるようにして配設される。また、筒体13は、小径部13aを下流側に、大径部13bを上流側に向けて配設される。
【0024】
筒体13の内部には、上流側から順に、給水流入口201、キャップ14、動翼15、軸受17、給水流出口202が設けられている。また、給水流入口201と給水流出口202との間には、給水流路203が設けられている。軸受17は小径部13aの内部に設けられ、キャップ14及び動翼15は大径部13bの内部に設けられている。
【0025】
大径部13bの上流端の開口は、Oリング52を介して、封止部材51により液密になるよう塞がれている。封止部材51の内部には段付き孔が設けられている。そして、その段部51aは環状に形成され、この段部51aの上にキャップ14が支持されている。キャップ14は、筒体13に対して固定され、回転はしない。
尚、キャップ14とキャップ14の周面に設けられた第一ノズル18についての詳細は後述する。
【0026】
キャップ14の下流側には、動翼15が設けられている。動翼15は、円柱状を呈し、径内方向に突出した複数の突起状の動翼羽根19が設けられている。周方向に見て隣り合う動翼羽根19間の空間は、動翼流路72として機能する。尚、動翼羽根19についての詳細は後述する。
【0027】
そして、後述する動翼リング15aの端面やマグネットMと、筒体13や封止部材51との間には動翼15を回転可能とするための隙間が設けられ、この隙間が導水路60となる。
【0028】
また、軸受17と一体化された中心軸24が上流側に向けて突出するようにして設けられている。中心軸24は、動翼15のボス部15bを挿通しており、中心軸24のまわりを動翼15が回転可能とされている。尚、動翼15と中心軸24とを一体化し、中心軸24の両端部をキャップ14と軸受17とに支持させて、中心軸24と一体化された動翼15が回転するようにしてもよい。すなわち、動翼15の回転軸が給水流路に対して略平行となるように、動翼羽根部を有する動翼15を給水流路に設ければよい。ここでいう動翼15の回転軸は、中心軸24と同じである。
【0029】
軸受17は、筒体13の内周面に対して固定されたリング部材21と、このリング部材21の中心に設けられた軸支持部22とを備え、リング部材21と軸支持部22とは、放射状に設けられた連結部材23によって結合されている。各連結部材23の間は、閉塞されておらず貫通しているため、筒体13内部の給水の流れが妨げられることはない。
【0030】
筒体13の大径部13bの内部には、動翼羽根19の下流側であって径外方側の側端面に設けられた動翼リング15aと、動翼リング15aの外周部に固定された円環状のマグネットMとが収容されている。筒体13の小径部13aの外側には、マグネットMの下流側の径方向に略直角な方向の端面に対向させるようにしてステータ9が設けられている。
【0031】
また、マグネットMは、動翼羽根19と給水流出口202との間に設けている。このようにマグネットMを配置させることによって、径方向の寸法が小さくても、発電量を確保できる発電機を設けることができる。その理由は、動翼羽根19と給水流出口202との間であって、第一ノズル18の下流側である空間に、径方向に大きなマグネットMを配置させることができるからである。
【0032】
本実施の形態においては、ステータ9を、マグネットMの径方向に略直角な方向の端面に対向配置させる構造のため、ステータ9をマグネットMの径外方向に対向配置させる場合(「ラジアル配置」)に比べて、径方向寸法を小さくすることができる。また、動翼15の径外方にステータ9を配置しない分、動翼15の径方向寸法の拡大が図れ、発電量を増加させることができる。
【0033】
また、筒体13を樹脂などのような電気伝導度の低い材料で形成するものとすれば、金属で形成した場合と比べて渦電流損が低減できるので、発電量をさらに増加させることができる。この場合、磁束が通過する大径部13bのみを樹脂などのような電気伝導度の低い材料で形成するようにしてもよい。
【0034】
次に、マグネットMとステータ9について説明をする。
図4は、マグネットMを説明するための模式斜視図である。
図5は、ステータ9を説明するための模式斜視図である。
図4に示すように、マグネットMの径外方向の端面(外周面)には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。
【0035】
図5に示すように、ステータ9は、いずれも軟磁性体(例えば、圧延鋼)からなる第1ヨーク31、第2ヨーク32およびこれらに連接するインダクタ31a、ヨーク31b、インダクタ32aと、これら第1ヨーク31、第2ヨーク32、インダクタ31a、ヨーク31b、インダクタ32aで囲まれた空間内に配置されるコイル50とを有する。
【0036】
円環状に巻回されたコイル50は、その内周面部、外周面部および径方向に略直角な方向の両端面部が、第1ヨーク31、第2ヨーク32、インダクタ31a、ヨーク31b、インダクタ32a、第3ヨーク33によって囲まれている。
【0037】
第1ヨーク31は、略円環状を呈し、コイル50の内周面部を囲むようにして配置され、その径方向に略直角な方向の一端部には、径外方向に向けて、複数のヨーク31bが一体的に設けられている。第1ヨーク31において、コイル50の内周面部に対向する部分と、ヨーク31bとは、略直角となっている。ヨーク31bは、コイル50の周方向に沿って等間隔で配置されている。ヨーク31bの一端は、さらにコイル50の径方向に略直角な方向に延出してインダクタ31aを形成している。
【0038】
第2ヨーク32は、略円環状を呈し、コイル50の外周面部を囲むようにして配置され、その径方向に略直角な方向の一端部には、複数のインダクタ32aが径方向に略直角な方向に向けて一体的に設けられている。インダクタ32aは、コイル50の周方向に沿って等間隔で配置されるとともに、第1ヨーク31の各インダクタ31aの間に配置されるようになっている。すなわち、第1ヨーク31のインダクタ31aと、第2ヨーク32のインダクタ32aとが、コイル50の周方向に沿って、交互に、且つ互いに離間して並んでいる。また、インダクタ31a、32aは、コイル50の外周面部を囲むようにして配置された部分(第2ヨーク32)の直上に設けられ、コイル50の中心から各インダクタ31a、32aまでの距離は略同一となっている。
【0039】
インダクタ31a、32aは、径方向に略直角な方向に延出するようにして設けられ、その内周面(コイル50の中心方向に位置する側の面)が、マグネットMの外周面(径外方向の面)と対向するようになっている。また、ヨーク31bは、コイル50の一方の端面部と対向している。そのコイル50の一方の端面部は、ヨーク31b及び筒体13のフランジ部13cを間に挟んで、マグネットMの径方向に略直角な方向の端面と対向している。
【0040】
ここで、発電機1の径方向の寸法を小さくしようとすれば、マグネットMの径方向の寸法も小さくしなければならない。しかしその場合でも、マグネットMの径方向に略直角な方向の寸法は小さくする必要がなく、また、場合によっては大きくすることもできる。
【0041】
本実施の形態においては、インダクタ31a、32aをマグネットMの外周面に対向するように設けている。そのため、マグネットMの外周面からの磁束をインダクタ31a、32aを介してコイル50に導くことができ、径方向寸法を小さくした場合でも、その影響を少なくすることができ、所定の発電量を確保することができる。
【0042】
このように、発電量を確保したまま発電機1の径方向寸法の小型化を図ることができれば、例えば、発電機1が配設される自動水栓装置3の寸法をも小さくすることができる。その結果、自動水栓装置3の設置性、操作性などを向上させることができ、また、自動水栓装置3の外観デザインの採用に関する許容性をも向上させることができる。例えば、従来よりも細身の現代的なデザインを採用することができるようにもなる。
【0043】
第3ヨーク33は、リングプレート状を呈し、コイル50の他方の端面部と対向して設けられる。また、第3ヨーク33の外周側の一部が切り欠かれて、図示しないコイル配線の取り出し部が形成されている。
【0044】
第3ヨーク33は、第1ヨーク31及び第2ヨーク32におけるそれぞれのヨーク31a、ヨーク31b、インダクタ32aが設けられた端部と反対側の端部に結合されている。第1ヨーク31〜第3ヨーク33によって囲まれた空間内に、コイル50が収容され、コイル50からの配線は、第3ヨーク33の外周側に形成された図示しないコイル配線の取り出し部から外部に引き出されるようになっている。このように、コイル50の配線は、第3ヨーク33の外周側に形成された図示しないコイル配線の取り出し部を介して、外周側から外部に取り出されるので、内周側から取り出す場合に比べて、制御部57までの配線の取りまわしが容易となる。
【0045】
また、第3ヨーク33には、例えば、凸状の位置決め部が設けられており、この位置決め部を、第1ヨーク31及び第2ヨーク32のそれぞれに形成された凹状の切り欠き部に係合させることで、第1ヨーク31及び第2ヨーク32は、それぞれ周方向の所定の位置に位置決めされる。これにより、インダクタ31a、32a間のピッチ精度を向上させることができる。尚、第3ヨーク33に凹状の位置決め部を、第1ヨーク31及び第2ヨーク32のそれぞれに凸状の位置決め部を設けるようにすることもできる。
【0046】
また、第2ヨーク32には切り欠き部39aが、第3ヨーク33には切り欠き部39bが設けられている。このように、各ヨーク32、33において、コイルの周面部を囲むようにして設けられた部分に、インダクタ31a、32aが設けられた一端側から隣接するインダクタの間を切り欠いた切り欠き部39a、39bを間欠的に設けることで、各ヨーク32、33を周方向に磁気的に絶縁するようにしている。そして、各ヨーク32、33の周面に沿って形成される磁路のうち、発電に必要のない部分を削り取ることで、鉄損を抑制することができ発電量を増加させることができる。
【0047】
尚、マグネットMの下流側端面に対向させてステータ9が配置されている場合を説明したが、ステータ9は、マグネットMの上流側端面に対向させて配置してもよく、あるいは、マグネットMの上流側及び下流側の両端面にそれぞれ対向させて1対のステータ9を配置させてもよい。
【0048】
図6(a)は、本実施の形態に係る発電機1に備えられるキャップ14を説明するための模式斜視図である。
また、図7及び図8は、図1におけるA−A矢視断面図である。
尚、図1において説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
図6(a)、図7に示すように、キャップ14は、円柱体の一方の端面(上流側に位置する面)に円錐体を一体的に設けた形状を呈している。また、円柱体の他方の端面(下流側に位置する面)にはフランジ部14aが設けられている。
【0050】
また、キャップ14の内部には、フランジ部14aが設けられた側の端面に開口した円柱形状を呈した空間部14b(図1を参照)が設けられている。そして、空間部14bには動翼15の上流端側に設けられた動翼羽根19が収納されている。キャップ14の中心軸上であって、空間部14bに面する側の面には動翼15を挿通する中心軸24の一端が支持されている。
【0051】
また、キャップ14の周面には、空間部14bに連通する3つの第一ノズル18が設けられている。これら3つの第一ノズル18は、動翼15の周囲において120度の角度関係で、均等(等間隔)に配置されている。
なお、3つの第一ノズル18を配置する場合に、それぞれの第一ノズルの周方向での配置角度は120度に限定されるものではなく、第一ノズル18から噴出される水流が動翼15の周方向において対称性を保つように配置されていればよい。すなわち、動翼15の回転角に対する動翼15のトルクのばらつきが小さくなるように、第一ノズル18を配置することができる。
【0052】
一方、キャップ14の周面には、3つの柱301が設けられており、各々の第一ノズル18への流路を区画している。第一ノズル18および柱301は、その下面がフランジ部14aの上面に接するようにしてキャップ周面の周方向に沿って等間隔に設けられている。そして、第一ノズル18は、空間部14bに収納された動翼羽根19に向けて開口されており、その方向は、動翼羽根19の外接円の接線方向よりは内側に向くようにされている。
【0053】
なお、フランジ部14aをキャップ14と別体で設けてもよい。この場合には、フランジ部14aとキャップ14を接合させることによって、第一ノズル18を形成することができる。
【0054】
このような第一ノズル18によれば、回転軸(中心軸)に対して略平行な方向から流れてくる水を、流れの方向を変えて、回転軸(中心軸)に対して略垂直な平面内において、動翼羽根19の径外方向から動翼羽根19に向けて噴出させることができる。
【0055】
すなわち、動翼15の回転軸(中心軸)に対して略平行な方向から流れてくる水を、回転軸(中心軸)に対して略垂直な方向に、流れの方向を変えて、動翼羽根19の径外方向から動翼羽根19に向けて噴出させる複数の第一ノズル18が設けられている。そして、これら複数の第一ノズル18は、動翼19の周囲に等間隔(均等)に配置されている。
【0056】
このようにすれば、水流が給水流入口からそれぞれの第一ノズル18を通過して動翼羽根19に衝突するまでの距離を均一にすることができる。そのため、水流の変動による動翼羽根19での脈動を抑制できる。なお、軸流式でない場合には、各第一ノズル18までの水路の長さが均一ではないため、第一ノズル18を動翼15の周囲に均等に配置しても、水流が各第一ノズル18を通過して動翼羽根19に衝突するまでの距離を均一にすることができない。
【0057】
これに対して、本実施形態によれば、軸流式の流路形態において、動翼15の周囲に複数の第一ノズル18を等間隔に配置することにより、水流が各第一ノズル18を介して動翼羽根19に衝突するまでの距離を均一にできる。その結果として、水流の変動による動翼羽根19での脈動などを抑制できる。
【0058】
なお、図6(b)に表した具体例のように、キャップ14の周面に障害物204を設けてもよい。この場合においては、水は障害物204を迂回するように流れる。そして、この具体例においても、動翼15の回転軸に対して略平行な方向から流れてくる水を、回転軸(中心軸)に対して略垂直な方向に、流れの方向を変えて、複数の第一ノズル18から動翼羽根19の径外方向から動翼羽根19に向けて噴出させることができる。その結果として、図6(a)に関して前述した効果を得ることができる。
【0059】
またさらに、本実施形態によれば、3つ以上の第一ノズル18を動翼15の周囲に均等(等間隔)に設けることで、各々の動翼羽根19に対して噴流をばらつきを抑えて当てることができ、安定して動翼を回転させることができる。すなわち、動翼羽根19に噴流が均等に当たらないと、各々の動翼羽根19が受ける水圧が偏り、動翼15が振動してしまうという問題が生じる。
【0060】
例えば、第一ノズル18の数を1つのみにした場合には、動翼15に対して、片側のみから水圧がかかることとなる。この場合、動翼15の回転軸に対して一方向からの力が加わるため、偏心しやすい。また、軸受けが一方向のみに向けて摩耗しやすく、使用するに従ってガタなどが生じやすくなる。また、第一ノズル18に供給される水流の変動の影響を受けやすい。例えば、水流の脈動などによって、動翼15の回転が不安定になったり、振動や騒音が発生しやすくなる。
【0061】
一方、第一ノズル18の数を2つにした場合も、それぞれの第一ノズル18から噴射される水流のバランスが少し偏っただけでも、動翼15の回転軸が偏ってしまい、振動や騒音が発生しやすい。また、軸受けの片減りも生じやすくなる。
【0062】
これに対して、3つ以上の第一ノズル18を動翼15の周囲に等間隔に設けた場合には、動翼15に噴射する水流を分散させることにより、より安定して回転させることができる。すなわち、第一ノズル18を3つ以上設けた場合には、これら第一ノズル18に供給される水流が変動しても、それぞれの第一ノズル18から噴射される水流のバランスが偏ることを抑制できる。つまり、第一ノズル18を3つ以上設けることにより、水流のばらつきも分散することができる。そして、これら第一ノズル18を等間隔に配置して水流を動翼15に作用させることにより、動翼15にかかる水圧の偏りを抑制し、常に安定して回転させ、振動や騒音の発生を抑制できる。また、軸受けの片減りも抑制できる。
【0063】
また、3つ以上の第一ノズル18を設けることにより、製造上の寸法の誤差などの影響も吸収しやすくなる。例えば、キャップ14を成型する際に生ずる寸法の誤差により、第一ノズル18の位置がずれることなどがあり得る。第一ノズル18の数を2つにした場合には、第一ノズル18の位置がわずかにずれただけでも、動翼15に対する水圧のバランスが偏りやすくなる。つまり、動翼15の回転が偏心したり、振動や騒音などが生じやすくなる。
【0064】
これに対して、3つ以上の第一ノズル18を設ける場合には、それぞれの第一ノズル18の位置がずれても、その影響は分散され、動翼15に対する水圧のバランスの偏りも緩和される。つまり、製造上の寸法の誤差などによる影響も分散させ緩和できる。 本実施形態において、第一ノズル18の数は3つには限定されない。例えば、4つの第一ノズル18を動翼15の周囲に等間隔に配置しても、前述したような水圧の偏りの抑制などの各種の効果を得ることができる。またさらに、5つ以上の第一ノズル18を動翼15の周囲に等間隔に配置することによっても、前述したような水圧の偏りの抑制などの効果を同様に得ることができる。
【0065】
動翼羽根19の上流側端面は動翼15の天井部15dに支持されており、下流側端面19aは動翼15の羽根支持面15cに支持されている(図1を参照)。そのため、動翼15の径外方向の端面(外周面)においては、動翼羽根19は支持されておらず、動翼15の径外方向の端面(外周面)から内部に向けて流水が可能となっている。
天井部15dを設けることで、動翼羽根19に流入した水が、動翼15の軸方向に対して略平行の上流側端面から逃げることを防止することができる。そのため、動翼羽根の回転効率を向上させることができる。
【0066】
図7に示すように、動翼羽根19は曲線で構成されており、動翼15の中心に向けてその先端が接近するような向きに湾曲している。動翼羽根19の出口側先端19bと動翼15のボス部15bとは離隔されており、動翼羽根19の入口側から出口側に向けて動翼羽根19に沿った円滑な水の流れが形成されるようになっている。そのため、羽根車効率を向上させることができ、水力エネルギーを効率よく電力に変換することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、図7及び図8に表したように、第一ノズル18から噴出される水流62aの方向は、動翼羽根19の外接円の接線方向よりは内側に向くようになる。より具体的には、図8に表したように、水流62aの方向は、動翼羽根19の外接円(破線)510とその接線520との接点において接線520に対して垂直な垂線530に対して、傾斜している。すなわち、水流62aの方向は、外接円520の接点における接線520の垂線530に対して、非平行かつ非垂直である。例えば、水流62aの方向は、外接円510の接点における接線520の垂線530に対して、45度以上90度未満に設定することができる。
このようにすると、各第一ノズル18から旋回流を形成するように水流が噴射される。その結果として、全ての第一ノズル18からの水流が、全体として旋回流を形成する。このため、動翼羽根19の外周側から動翼15の回転軸に向けて、動翼羽根19に沿った円滑な水の流れを生じさせることができる。その結果として、動翼羽根19に効率よく水流を作用させ、動翼15を効率よく回転させることができる。
また第一ノズルから噴射される水の流量が増大した時には、遠心力でより多く水が動翼羽根19側に流れずに導水路60を通過して動翼羽根より下流側に導水するようにすることができる。よって、流量増大時における動翼羽根19の回転数の増大を低減することができる。
【0068】
動翼羽根19の枚数は、第一ノズル18の数の整数倍とは異なる値となっている。例えば、図7に例示をしたものでは、動翼羽根19の枚数を11枚、第一ノズル18の数を3つとしている。動翼羽根19の枚数を第一ノズル18の数の整数倍とは異なる値とすれば、各動翼羽根19への噴出時期をずらすことができるので、動翼15の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0069】
動翼羽根19の出口側先端19bは、動翼羽根19の下流側端面を支持する羽根支持面15cより動翼15の内側に向けて突出するようにして設けられている。そのため、羽根支持面15cの内側に設けられる流水路15e(図1を参照)の径方向寸法を大きくすることができるので、圧損を抑制することができる。また、動翼羽根19の径方向長さを長くすることができるので、動翼羽根19の面積を大きくすることができる。その結果、羽根車効率を向上させることができ、水力エネルギーを効率よく電力に変換することができる。
【0070】
動翼羽根19の下流側端面19aの位置(図1を参照)は、第一ノズル18より下流側となるようにされている。そのため、第一ノズル18から噴出された水流のうち、下流側に向けて拡散されたものをも動翼羽根19に当てることができる。その結果、羽根車効率を向上させることができ、水力エネルギーを効率よく電力に変換することができる。
【0071】
図6(a)に示すように、このような第一ノズル18によれば、中心軸24に対して略平行な方向から流れてくる水流62aを、中心軸24に対して略垂直な平面内において、動翼15(動翼羽根19)の径外方向から内側に向けて噴出させることができる。
【0072】
次に、第二ノズル401について、説明する。
図1に示すように、環状に形成された段部51aには、第二ノズル401が設けられている。第二ノズル401は、マグネットMに隣接して設けられた導水路60に向けて水を噴出させることができる。これによって、径方向の寸法の小さい構成にすることができる。
また、第一ノズル18から動翼羽根19に向けて噴射させる水量を減らすことができるので、高水圧時などにおいて、動翼羽根19を安定して効率よく回転させることができる。
また、図7に示すように、第二ノズル401は、第一ノズル18と第一ノズル18との中間位置の径方向外周側の近傍に、略等間隔で配置されている。このように、第二ノズル402を第一ノズル18から離間させて配置することによって、第二ノズル401への水の流れが第一ノズル18への水の流れに影響を与えないようにすることができるので、動翼羽根19を安定して効率よく回転させることができる。
ここでは、第一ノズル18が3個設けられ、第二ノズル401が3個設けられている。なお、第二ノズルの個数は、第一ノズルの個数と異ならせてもよい。
【0073】
図9は、第二ノズルに設けた開閉弁を説明するための模式断面図である。図9(a)は、開閉弁が閉じた状態を示し、図9(b)は開閉弁が開いた状態を示す。
【0074】
図9に示すように、第二ノズル401には、開閉弁500が設けられている。開閉弁500は、弁体501と弾性体502とで構成させている。
水圧が低い場合には、弁体501にかかる水圧が小さいため、弁体501は、弾性体502に押されて、閉じた状態になっている。そして、水圧が高い場合には、弁体501にかかる水圧が大きいため、弁体501は、弾性体502に押される以上の力を受けて、開いた状態になる。
このように、水圧によって、第二ノズル401に設けた開閉弁500が開閉するため、動翼羽根19を安定して効率よく回転させることができる。そのため、発電機の耐久性を高めることができる。
【0075】
また、第二ノズルは、旋回流を形成するように水流を噴射させてもよい。具体的には、軸中心に対して右方向(時計回り)あるいは左方向(反時計回り)にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜するように、設けることもできる。
その際には、マグネットMの回転方向が右方向(時計回り)である場合には、第二ノズルの形成する旋回流を左方向(反時計回り)にすることで、動翼羽根19をより安定して効率よく回転させることができる。
一方、マグネットMの回転方向が左方向(反時計回り)である場合には、第二ノズルの形成する旋回流を右方向(時計回り)にすることで、動翼羽根19をより安定して効率よく回転させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 発電機、3 自動水栓装置、9 ステータ、13 筒体、14 キャップ、14a フランジ部、14b 空間部、15 動翼、15a 動翼リング、15b ボス部、15c 羽根支持面、15d 天井部、15e 流水路、18 第一ノズル、19 動翼羽根、31a インダクタ、32a インダクタ、50 コイル、60 導水路、62a 水流、90 ステータ、201 給水流入口、202 給水流出口、203 給水流路、204 障害物、301 柱、401 第二ノズル、500 開閉弁、501 弁体、502、弾性体、M マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒体と、
前記給水流路に設けられ、動翼羽根を有し、前記給水流路に対して略平行な回転軸の周りに回転する動翼と、
前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、
前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、
前記動翼羽根に向けて水を噴出させる第一のノズルと、
前記マグネットに隣接して設けられた導水路に向けて水を噴出させる第二のノズルと、
を備え、
前記第二のノズルへの水の流れが前記第一のノズルへの水の流れに影響を与えない程度に、前記第二のノズルを、前記第一のノズルから離間させて配置することを特徴とする水栓用発電機。
【請求項2】
前記第一のノズルは、複数設けられ、
前記第二のノズルを、前記動翼の周方向において前記第一のノズルと前記第一のノズルの中間位置の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1記載の水栓用発電機。
【請求項3】
前記第二のノズルに、前記導水路に向けて噴射する水の流量を制御する開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の水栓用発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236505(P2010−236505A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87721(P2009−87721)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】