説明

水栓装置

【課題】 電波センサから放射される電波を導波管を通じて吐水空間に電波を放射することにより、スパウトや受水部の形に関係なく被洗浄物を検知することを可能とする。
【解決手段】 本発明では、吐水部であるスパウト内部に導波管と水路配管を構成し、吐水口から吐水空間に向かって電波を放射させているため、吐水口近傍の電波強度が最も強くなり、被洗浄物が吐水口に向かって近づく状態を検知したいエリアと、洗面行為以外の検知したくないエリアとの電力差を大きくすることができ、使い勝手がよく、誤検知の少ない水栓装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば公衆トイレの手洗い場や、家庭の洗面化粧台や、キッチンに備えている水栓装置に係わり、特に利用者の手又は利用者が保持する被洗浄物あるいはコップを検知して、水栓装置からの吐止水を自動で制御する水栓装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
手洗い後の濡れた手で水栓装置を触りたくなかったり、調理器具や食材等を持ち、手のふさがった状態だったりした時に、水栓装置の蛇口を操作することなく自動的に吐水を開始できる水栓装置があり、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、台所流し台に二種類の検知センサを配置し、手洗いだけでなく食器洗い時に洗浄中以外の食器を検知し続けて、洗浄終了後にも流しっぱなしになることを防ぐシステムを開示している。
【特許文献1】特開平4−83027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された従来技術は、台所流し台において、人体や食器等の物体を検知すると弁が開き、吐水口から水道水が供給されるシステムになっている。また、物体検知の為に、吐水口近傍領域と広範囲領域の2個のセンサを配設しているため、広範囲検知用センサで食器や調理器具を検知しても、一定期間吐水口近傍の人体を検知しない場合は、水道水の供給を停止できる、使い勝手の良いシステムになっている。
【0005】
しかしながら、検知手段に発光・受光素子を用い、投光素子から放射された赤外線が被検知体からの反射した一部の量を受光素子が検知する構成になっている為、被検知体である食器や調理器具の材質や色によっては検知できない物が発生する。例えば、フライパンのような黒色の物や、透明性のコップでは、発光素子から投光される赤外線が吸収又は透過するため、受光素子に反射光が届かない為、結果的にこのような材質の被検知体は、吐水口近傍に差し出しただけでは、水道水の供給が行われないことになる。
【0006】
また、近年では、洗面ボール(または流し台のシンク)や水栓金具は、インテリアとの調和を考慮され、吐水部分と受水部分が一体となり、吐水部分が無い水栓装置だったり、壁から水栓装置が突出している形態だったり、水栓装置から吐水される水の形態が滝状になっているものがある。このように水栓装置自身の形状や出てくる水の形態が様々構成される場合、被検知体を検知するためのセンサの設置場所がなく、吐水口近傍に利用者が差し出す手や被洗浄物だけを確実に検知することができないという課題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、水栓装置を利用する人が、水栓装置の形状や被洗浄物によらず、差し出した時に速やかに吐水が開始する使い勝手の良い手洗い装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、吐水口を備えた吐水部と、前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、前記吐水部内部に設けられ、一端が前記バルブに接続され、他端が前記吐水口に接続された水路配管と、送信信号を放射し、被検知体により反射した反射信号を受信するアンテナと、前記アンテナで受信した反射信号によって被検知体の有無を判断する検知部と、前記検知部から得られる信号に基づいて前記バルブの開閉を制御する制御部と、を備えた水栓装置であって、前記吐水口内部に、前記水路配管と併設して導波管を設け、前記導波管は、一端が前記アンテナの電波放射面に向けて開口し、他端は、前記アンテナから放射される電波の電波強度が前記吐水口近傍にて最大となるように、前記吐水口近傍にて開口していることを特徴とする水栓装置である。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記制御部は、送信信号と反射信号の差分信号から得られる速度情報に基づいて前記吐水口から吐水される水流のみの状態であることを検知すると、前記バルブを閉動作することを特徴とする水栓装置である。
【発明の効果】
【0010】
水栓装置を利用する人が、水栓装置の形状や被洗浄物によらず、差し出した時に速やかに吐水が開始する使い勝手の良い手洗い装置という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる手洗い装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
(第1の実施例)
【0012】
図1に水栓装置の第1の実施例の縦断面図を示し、図2に電波センサ及び制御部の制御ブロック図を示す。
【0013】
図1に示す水栓装置10は、水道水を供給するための吐水部であるスパウト1と、スパウト1から吐水される水を受ける陶器性の受水部2と、受水部2の内部にスパウト1からの吐止水を切替えるバルブ部4と、被検知体である手や器などの被洗浄物を検知するための電波センサ3と、バルブ部4のon,offを制御する制御部5とで構成されている。また、スパウト1は受水部2とスパウト根元部1bで接続されており、スパウト内部には、受水部2内に配設されている電波センサ3から生成される送信波をスパウト1の吐水口1a付近までもらさず導く導波管6と、同じく受水部2内に配設されている一端がバルブ部4に接続され、他端が吐水口1aである水路配管7が設けられている。尚、電波センサ3とバルブ部4は、スパウト内に収納できると、どちらか一方が故障したときにスパウト1を取り外すだけで交換できるため都合がよいが、収納するスペースが必要なためサイズが大きくなる。従って利用される現場に応じてコンパクト性とメンテ性の両視点から選択するのが望ましく、本実施例ではコンパクト性を重視し、受水部に収納する構成を前提に以下説明する。
【0014】
電波センサ3は、電波を生成する発振回路11と、発振回路11で生成された電波を被検知体に向かって放射するための導波管6内部に送信し、被検知体からの反射電波を導波管6内部を通過し受信する送受信一体のアンテナ12と、発振回路11と線路を介して接続され、更にアンテナ12とも接続されており、両者の信号を検波して得られたドップラー信号から被検知体の有無や速度を判断する検知部13と、で構成されている。この検知部13で得られた被検知体の動きに伴う信号は制御部5に出力し、制御部5内部にある被検知体の速度を抽出する速度抽出部14で、被検知体の状態を識別し、その結果を判定部15にてあらかじめ記憶部16に設定している閾値と比較し判断する。この速度抽出部14、FFTで構成しても良いし、フィルターで構成しても良いが、複雑な演算を行える場合は前者を選択し、得られる信号が単一ではなく所定の帯域がある場合は後者を選択することが望ましく、本実施例ではフィルターを用いている。この制御部5での信号処理プロセスについては後述する。尚アンテナ12は、送受信別体でも構わないが、本発明においては、導波管6との接続部の構成をコンパクトに構成するため一体にしている。
【0015】
次に図3,図4,図5を用いて導波管構造とその特性について説明する。
導波管6は、使用する電波の周波数と通過させたい発振モードに基づきその内部の通路内部の寸法は下式により決定されており、ここではサイズを最も小さくできるTE10モードを想定した形状にしている。形状は方形でも円形でも良く、スパウト1のデザインにより決定すればよくここでは方形型を採用している。また、導波管6の先端1a側の開放端6aには、水道水の進入を防ぐための封し部材8が挿入されている。
ここでアンテナの励振方向を図3(a)のB−B方向としたときに導波管内部の横方向(励振方向と直行方向)をa、縦方向(励振方向)をb、とすると
方形型:λ=((m/a)2+(n/b)20.5 ・・・式(1)
また、導波管6が円管の場合、その内部の半径をrとすると、
円形型:λ=2πr/k (k:定数) ・・・式(2)
ここで、λは電波センサ3が使用する周波数における空間の波長とし、m,nは通過させたい発振モードであり、TE10モードの場合はm=1,n=0となる。また、定数kは発振モードにより変わる。
【0016】
図4に示す電波分布のそれぞれの曲線は、電波センサ3から放射される電波ビームが等しい放射強度となる点を結んで得られ、外側の曲線ほど放射強度が弱くなっている。即ち導波管出口の電波強度が最も大きくなり、出口から離れるにつれてほぼ球状に電波強度が減衰していることを示している。この図4(a)と図4(b)の出口の電波強度がほぼ電波センサ3から放射された電波強度と一致していることを図では示している。
従って、この導波管6は、管路内部6eの寸法を上式の最低寸法を維持すれば、図4(a)に示すように複数の屈曲部を有しても良いし、図4(b)に示すように導波管6の中央部6(d)において導波管内部の通路6eが太くなっても良いし、また、図示していないが、湾曲させてもよい。従って、受水部2のデザインに併せてスパウト1の形は自由に変更しても損失無くアンテナ12から放射される電波をロスすることなく導波管内部を通り、吐水空間に導くことができる。
【0017】
このように導波管6は、金属製の配管をスパウト内部に配設し引き回しても良いし、図5(a)に示すようにスパウト根元1bから所定の長さだけ挿入し、スパウト1を導波管に見立て吐水口1aから吐水空間に向かって電波を放射させても良い。この方法だと、スパウト内に金属製の配管を構成しないため、組立てが容易になるメリットがある。但し、被検知体からの反射信号をスパウト1と導波管6の隙間からもらさないように、導波管6の外周は、金属製のシール部材21に隙間無く接続されており、更にシール部材21がスパウト内周部と隙間無く接続すると良い。また、図5(c)のように、吐水口1aには、導波管6から放射される電波の放射方向を規制する指向部材22を配置すると、被検知体をより高精度に検知することができ都合が良い。この指向部材22の先端の電波を吐水空間に放射する構造については後述する。
尚、導波管6は金属製の配管を利用することを前提に述べてきたが、スパウト1を鋳物で形成する場合は、水路及び導波管をそれぞれ独立して併設するよう構成すれば、双方の部材をスパウトと一体化でき、組立て不用なシステムが可能になる。
【0018】
次に導波管6と水路配管7の併設構成について、図6にて説明する。図6(a),(b)それぞれの左上部分にスパウト1内における水路配管7と導波管6の上下関係の配置を示し、右部分にその位置関係における電波強度を示す解析結果を示す。
図6(a)は、導波管6が水路配管7の上方に配置している状態であり、吐水状態の時に吐水空間に向かって電波を放射した解析結果を右横から示したものである。一方、図6(b)は導波管6が水路配管7の下側に配置した状態であり、同じく吐水状態にある時の電波分布を解析した結果である。尚図6(c)に止水状態の解析結果を示す。止水状態では導波管6と水路配管7の上下関係による電波分布の差がほとんど無いため、実施例では導波管6が下にある時の解析結果を示している。図から分かるように、電波は水に反射するため、導波管6が水路配管7の上にある場合は、吐水口1aから受水部2に向かって給水される水流を挟んで下側への電波の放射が制限されており、導波管6が下にある場合は、その反対に電波が水流を挟んで上側への広がりを制限されている。この図6(b)と図6(c)の状態を比べると、特に差異があるのは吐水口1aより下方の電波強度であり、止水時よりも吐水時の方が吐水口1a下方の電波強度が強くなっている。これは水流により電波の上方への広がりを遮断しているだけではなく、下側への反射を促していることを意味しており、水と電波の空間に放射される位置が略同一であるために、上方へ拡散するかなりの量が遮断されていることによるものである。すなわち図1の電波センサ3から導波管を使わずに直接電波を放射した場合は、水流に当たる前に電波が拡散されるため、水流で反射される量はごく一部となり、吐水口下側の電波強度の増加現象はなくなる。従って、導波管を水路配管に併設し吐水口から吐水空間に向かって電波を放射すると、水路をはさんだ他側の空間の移動体を検知しにくくなるため、吐水中に上方空間を検知したくなく吐水口下方を検知したい場合は、導波管を下側に配置し、逆に水使用中の手の揺らぎを検知して吐水を継続したい場合は、導波管を上側に配置すればよい。尚本実施例では、前者の導波管を下側に配置した例を採用しており、以下使い勝手の観点から説明する。
【0019】
次に図6の導波管と水路構成との配置の関係と、吐止水時の電波放射分布の違いとで水栓装置10の使い勝手の関係について、図7を用い説明する。
上記のように止水中における導波管6からの電波の放射状態は図6(c)である。この時に、検知したいのは吐水口1aに近づく手やコップや雑巾などの被洗浄物であり、一方検知したくないのは、受水部2の前面側で、手についた石鹸を掌やこぶし全体に満遍なく引き伸ばす手もみ行為や、手に付着した水を振り落とす水きり行為や、うがいした水を捨てるために顔を受水部に近づける行為である。この検知したくない人の行為は、一般に図7のエリアCで行われるために、このエリアCへの電波強度を低くしたい。但し、使い勝手を考えると、吐水口1aに到達する前に被洗浄体を検知して、被検知体が洗浄ポイントである到達点に止まる前に吐水口から水を給水することが望ましい。従って、図中のエリアAにて被検知体を検知したい。そこで図6(a)、図6(b)に示すような水路配管に併設して導波管を配置し、吐水口から吐水空間に向かって電波を放射すると、吐水口近傍が吐水空間内部で最も電波強度が強く、導波管6の開放端からの電波指向性はほぼ無指向状態であることから、吐水口から距離が離れるほど電波が拡散し、エリアAとエリアCの電力差が大きくなる。従ってエリアAで手を検知し、エリアCで手よりも大きな体を検知しにくくなり誤検知の小さな水栓装置を構成することができる。また、吐水開始後は、被洗浄体を満遍なく洗浄したり、コップへの水汲みなどを行うために水流に対して直交して被洗浄物を差し出すため、吐水口1aの下方で水を利用することになり、図中のエリアBを検知したい。このように水栓装置1を使用する利用者に対してストレスを与えず使い勝手を提供するためには、使用前はエリアAの被検知体の有無を判定し、使用中はその行為を確実に見極めるためにエリアBの被検知体を見極めることが重要であるため、吐水前はエリアAの電界強度が大きく、吐水中はエリアBの電界強度が大きいのが望ましい。その場合は、導波管6は水路配管7の下側に配置し、電波を水流に反射させる構成にした方が使い勝手の良い水栓装置1を提供できることになり、本実施例で採用している。
【0020】
更に検知精度を向上させる方法として、エリアCとエリアAの電波強度の差をつけることが望ましく、導波管先端から放射される電波の指向方向を設定する方法について図8を用いて説明する。図8(a)は第1の例の外観図であり、図8(b)は、図8(a)のC視断面図である。図に示すように導波管を経路の途中で分岐するすると、導波管内部の点Pから上部の通路を通り開放端P1までの距離と、点Pから下部の通路を通ったときの開放端P2の寸法は分岐した分の寸法x分長いため、その寸法分使用する周波数の波長における位相が遅れることになり、電波は遅れている下方側へ電波が曲がることになる。また、図8(c)は、第2の例の外観図であり、導波管先端形状を上辺から下辺に向かって斜めに切り落とした形にしており、上辺のほうが突出した構成になっている。この場合も電波は導波管内部を電波が伝送される際、下方側が先に開放になることから下方へと電波が拡散する効果により下方側へ曲がるため、この両者のいずれかを導波管6の先端に構成すると、導波管先端から放射される電波の最大指向方向は下側へ向くことになる。最大指向方向がエリアA及びエリアC方向に向くとエリアCの被検知体が大きい場合に反射電力量が大きくなり誤検知する可能性があるが、導波管先端に指向方向を下側に定め、エリアA及びC側においては距離に応じて電波の拡散が大きくなるために、電波強度差が大きくなり、エリアAでの被検知体の検知精度が高まり吐水口に向かう被洗浄体と受水部2の前面で使用する使用者の行為とを確実に見極めることが可能になり、吐水タイミングが早く,使用中に吐水の継続が途切れることなく、しかも誤検知の少ない水栓装置を提供することが可能になる。尚、この指向を下方側に変更する構造としては、端面の加工を容易に行えるようであれば、第2の例の方が省スペースになるが、水道水の進入を防ぐための先端の封し部材8の取り付けが容易なのは端面が揃っている第1の例であり、それぞれの特長を生かして選択すればよい。本実施例では、省スペースを優先し、第2の例を採用している。
【0021】
以上の構成において、電波センサ3が被検知体からの信号を受信し、水栓装置10からの給水制御について、図9に示す制御フローと、図10〜図11に示す電波センサ3からの検知信号が速度抽出部を通過したときの状態とを用いて説明する。
使用者が水栓装置10に近づくき、吐水口に向かって手を差し出すと、S01において電波センサ3から得られた検知信号は、制御部5の速度抽出部14を通過し、判定部15があらかじめ記憶部16に設定している加速・減速・等速のそれぞれの信号パターンと比較し、図10(a)のような時間の経過と共に速度が低下する動きは、水栓装置10を使う動作であるエリアA内における減速する動きと判断し、制御部5はバルブ部4に開信号を出力し、吐水口先端から水道水を供給することになる。このように、手が吐水口1a近傍の洗浄するポイントに到達する前に手の進入を検知すると、洗浄ポイントにおいて給水されるまでの時間が無いため使い勝手の良い水栓装置となる。尚、S01において、図10(b)に示す時間の経過にかかわらず一定速度の等速信号は、判定部15は受水部2の周辺のコップや歯ブラシなどを取る横切る動きと判断し、また図10(c)に示す時間の経過と共に速度増加する加速信号は、判定部16は吐水口1aから受水部2の外側に加速する動作と判断し、制御部5はバルブ部4を閉状態に保持する。
【0022】
吐水口から水道水が供給されると、前記のように導波管から放射された電波は、水流とぶつかるために、エリアB側への電波強度が増大する。その状況において、制御部5は、差し出された手に水道水がぶつかり飛散している状態かどうかをS03にて判定している。このS03において、電波センサ3から得られて制御部5の速度抽出部14を通過した信号fが記憶部16であらかじめ設定している周波数f1,f2に対して、図11(a)に示すようにf1<f<f2になった場合、判定部15は、手の表面で飛散した水滴によって、導波管先端から放射される開口面の垂直方向に対して様々な方向の動き成分が得られている状態であると判断し、S02に戻り引き続きバルブ部4を開状態に継続する。また、図11(b)のようにf<f1のときは、判定部15は、コップや茶碗のような器に水道水を汲んでいて、器の水面の揺らいでいる状況であり、導波管先端から放射される開口面の垂直方向に対してを直交している動きと判断し、この時もS02に戻り引き続きバルブ部4を開状態に継続する。しかしながら、図11(c)に示すf>f2の信号を得られた場合は、判定部15は、導波管の開口面の垂直方向と水流方向が略平行であり水道水の流速をそのまま得れていると判断し、S04にて制御部5は、バルブ部4に閉信号の出力を行い、水道水の供給を停止する。このようにエリアBの電界強度が増大すると、速度抽出部を通過した信号のS/N比が向上し、図11に示すように容易に水道水と被洗浄物やコップとの干渉して飛散水が発生している状態を把握でき、吐水口からの水道水の供給を継続すべきか止水すべきかを判断しやすくなる。図11では、説明の都合上各動作における電波センサ3からの周波数成分が分かりやすい例を示したが、速度抽出部14が複数の帯域フィルターか、f2以上の周波数のみを通過させるハイパスフィルターと、f1からf2の帯域を通過させるバンドパスフィルターと、f1のみを通過させるローパスフィルターの3つのフィルターとで構成させても良い。その場合は、判定部15は、S03において、f2以下の帯域で信号が得られた場合は、手洗い中か水汲み中の動作であると判断し吐水を継続し、得られない場合は水流のみの状態になったと判断し止水としても良い。あるいは、f2以上の帯域の信号に着目し、信号がある場合は水流のみの状態であり止水になり、信号がない場合は、水流に対して手または器が干渉している状態であると判断し、吐水を継続すると良い。尚、フィルターはCR回路で構成しても、ソフトウエアでも構成してよいが、前者はCRの時定数のみの遅れで信号を得ることができ、判定時間を迅速にできるため洗浄終了時の止水のタイミングが早くなる。一方後者は、通過させたい周波数の信号と遮断したい周波数の信号との差を大きくすることができるため、検知部13における検知感度が向上し、止水判定制度が高まり、誤検知のないシステムになるため、目的に応じて選択すると良い。
【0023】
(第2の実施例)
【0024】
図12に水栓装置の第2の実施例の概観図を示し、図13(a)に図12の点線部の断面図を示す。また、図13(b)は、図13(a)のD方向からみた導波管の断面構造を示す。
【0025】
図12に示す水栓装置30は、水道水を供給するための吐水部であるスパウト31と、スパウト31から吐水される水を受ける受水部32と、図示していないが、第1の実施例同様受水部32の内部にスパウト31からの吐止水を切替えるバルブ部と、被検知体である被洗浄物を検知するための電波センサ33と、バルブ部のon,offを制御する制御部とで構成されている。また、スパウト31は、電波センサ33から生成される送信波をスパウト31の吐水口31a付近までもらさず導く導波管36と、同じく受水部32内に配設されている一端がバルブ部34に接続され、他端が吐水口31aである水路配管37が設けられている。
【0026】
導波管36は、電波センサ33との接続は、第1の実施例のように1つの端面で接続されており、導波管の経路の途中36bにて二股に分岐されており、吐水空間への出口は36c、36dのように2箇所から電波が放射される構成になっている。それぞれの出口から放射される電波の量は同一になるように、分岐部からの出口までの寸法、内部通路面積は同一になっている。また、この2つの出口は、水路配管37の下方に配置されており、それぞれの出口先端は、図13(b)に示すようにそれぞれの内側方向と、図13(a)に示すように受水部側の下方向に電波の指向が向くように開口面がカットされている。従って、導波管出口から放射される電波の強度は略同一となり、また吐水口先端よりも前方を検知しつつ、吐水口下方にも電波強度を確保している。第1の実施例同様電波が水流にぶつかり吐水口下方側の電波強度が増加しているため、水栓装置を使用している際にも被洗浄体から飛散水を検知することができ、誤って止水することのない快適な水栓装置を提供することができる。更にそれぞれの導波管からの電波の放射方向を内向き且つ下向きに指向を持たせることにより、図7に示すエリアAとエリアCの電波強度差を大きくさせることができ誤検知のない水栓装置システムを構成することができる。尚、電波センサ33の構成,導波管構造,検知範囲の設定や制御フローについては、第1の実施例と同様につき省略する。ここでは、電波と水流とは吐水空間でぶつかるように構成すれば、水流のみの状態と被洗浄物による飛散水との識別ができるため平行に配置しても良い。
【0027】
次に図14に示す電波分布の解析結果を用いて使用者が吐水を開始するときの検知メカニズムについて説明する。前記のように導波管先端を分割すると、導波管の開放端36c,36dからの指向方向はそれぞれの内側に向かって放射されるものの、空間に向かって電波の拡散が発生し、その拡散した電波の一部がP36c,P36dの方向にも得られる。従って、水栓装置31に対して使用者が正面方向から利用するだけでなく、X方向やY方向から使用したい場合にも、被検知体である手や器などの被洗浄物を検知しやすく、手が吐水口に到達する前に検知でき、最適なタイミングで吐水する快適な水栓装置を提供することが可能になる。尚、検知に必要な強度とは、受水部32内の被洗浄物からの反射信号と、受水部32より外側で使用者が受水部に近づいた時の反射信号や、受水部32の上方から受水部32を覗き込む動作をした時に得られる反射信号との差であり、この差が大きくするほど誤検知のない水栓装置が提供でき、受水部の形状に合わせて、導波管先端のカット形状を調整し、前方の使用者からの反射信号を抑制するには、分割したそれぞれの開放端の内側により向かうようカットし、受水部上方からの反射信号を抑制するには開放端からの放射方向が下側に向かうようにカットすると良い。
【0028】
(第3の実施例)
【0029】
図15に手洗い装置の第3の実施例の概観図を示す。図16(a)にスパウト部の外観図を示し、図16(b)にスパウトを下から見たときの導波管と水路配管の構成を示し、図16(c)にスパウトの吐水口先端を前面から見た図を示す。
【0030】
水栓装置50は、水道水を供給するための吐水部であるスパウト51と、スパウト51から吐水される水を受ける受水部52と、スパウト51からの吐止水を切替えるバルブ部と、被検知体である被洗浄物を検知するための電波センサ53と、バルブ部のon,offを制御する制御部とで構成されている。また、スパウト51は、電波センサ53から生成される送信波をスパウト51の吐水口51a付近までもらさず導く導波管56と、同じく受水部52内に配設されている一端がバルブ部に接続され、他端が吐水口51aである水路配管57が設けられている。水路配管57は、左右方向に幅広構造にしており、吐水する水の形態が滝状になっている。
【0031】
導波管56は、電波センサ53との接続は、1つの端面56eで接続されており、導波管の経路の途中56aにて二股に分岐されており、吐水空間への出口は56b、56cのように2箇所から電波が放射される構成になっている。それぞれの出口から放射される電波の量は同一になるように、電波センサ53との接続位置は調整されており、接続位置から56cまでの経路と、接続位置から56aまでの経路の長さが、電波センサ53が使用する電波の波長に着目し、それぞれの出口から放射される位相が同位相になるようにしている。尚、図17(a)には略同位相の状態を示す電波分布の解析状態を示し、図17(b)には、位相が180度ずれている時の解析結果を示す。本実施例では、この図17(a)になるように電波センサ53と導波管の接続位置56eをD−D方向に調整し、設定している。接続位置が受水部やスパウトに干渉して調整できない場合は、56bと56cの間隔や、導波管の前出方向(E−E)の長さで調整しても良いが、第二の実施例同様分岐部からの出口までの寸法、内部通路面積は同一になっていると分割したそれぞれの管路内の損失が同一であり、同量の電波放射量を確保しやすく良い。
【0032】
また、この2つの出口は、電波放射量を同一量に保持した状態に、更に水路配管57と平行で左右方向に隣接して配置されており、それぞれの出口先端は、開口面の垂直方向と水路配管の吐水方向とが一致するようにほぼ無指向状態で放射すれば、吐水口近傍と受水部前側の電力差を大きくできるため、誤検知の少ないシステムになるが、受水部が小さい場合には、更に強度差を設けたほうが望ましたく、図16(b)に示すようにそれぞれの内側方向と、図示していないが受水部側の下方向に電波の指向が向くように開口面がカットされている。このようにそれぞれの導波管出口から放射される電波は、吐水口先端の前方下方で交錯するようになると、それぞれの導波管出口から放射された電波は滝状の水流を挟み込むように水流の横方向ににぶつかるように構成するため、検知部が水流のみの状態と、水流に被洗浄体である手や器が差し出されている状態とを水流による流速変化を用いて識別することが可能になる。更に、水栓装置を使用している時に吐水口下方で使用している様を被洗浄体で発生する飛散水を検知することができ、誤って止水することのない快適な水栓装置を提供することができる。また、第2の実施例同様幅広に吐水する吐水口にあわせて吐水口前方を左右方向に幅広く検知範囲を有しいてるため、水栓装置51に対して使用者が正面方向から真ん中で利用するだけでなく、吐水口の恥のほうで使用する場合や、横方向から(X方向やY方向)使用したい場合にも、被検知体である手や器などの被洗浄物を検知しやすく、手が吐水口に到達する前に検知でき、最適なタイミングで吐水する快適な水栓装置を提供することが可能になる。尚、電波センサ33の構成,導波管構造,検知範囲の設定や制御フローについては、第1の実施例と同様につき省略する。
【0033】
以上3つの水栓装置の実施例を用いて説明したように、水栓装置の形態が変わった場合にも電波センサの構造を変えずに水栓装置にあった導波管の構造を変えるだけで、吐水口先端近傍に差し出される使用者の手や雑巾などの被洗浄物や器などを検知して使用する目的の場所に到達するか否かの最適なタイミングでスパウトからの吐水を開始し、水流と電波のぶつかりにより水流のみの常態か使用中の被洗浄物からの飛散している常態かを電波センサで得られる速度情報により識別し、使用中には吐水の継続を行い、使用後に速やかに止水する誤検知のない快適な水栓装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施例を示す図である。
【図2】電波センサ及び制御部のブロック図である。
【図3】第1の実施例における導波管の外観図である。
【図4】電波が導波管内部を伝達する状態を解析した図である。
【図5】スパウト内の導波管の状態を示した図である。
【図6】導波管と水路配管の配置違いによる電波状態を解析した図である。
【図7】水栓装置内のセンサ検知範囲を示す図である。
【図8】導波管の吐水空間側の開放端の構造を示す図である
【図9】制御部が行う制御フローを示す図である。
【図10】吐水空間で使用者の使用行為に応じた速度変化を示す図である。
【図11】電波センサがバルブ開状態で検知する波形を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施例を示す外観図である。
【図13】導波管と水路配管の構成を示す図である。
【図14】第2の実施例の導波管から放射される電波状態を解析した図である。
【図15】本発明の第3の実施例を示す外観図である
【図16】導波管と水路配管構成を示す図である。
【図17】電波が導波管内部を伝達する状態を解析した図である。
【符号の説明】
【0035】
1,31,51、…スパウト
2,32,52、…受水部
3,33,53、…導波管
4、…バルブ
5、…制御部
6,36,56、…導波管
7,37,57、…水路配管
8、…封し部材
10,30,50、…水栓装置
11、…発振回路
12、…アンテナ
13、…検知部
14、…速度抽出部
15、…判定部
16、…記憶部
21、…シール部材
22、…指向部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を備えた吐水部と、
前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、
前記吐水部内部に設けられ、一端が前記バルブに接続され、他端が前記吐水口に接続された水路配管と、
送信信号を放射し、被検知体により反射した反射信号を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した反射信号によって被検知体の有無を判断する検知部と、
前記検知部から得られる信号に基づいて前記バルブの開閉を制御する制御部と、
を備えた水栓装置であって、
前記吐水口内部に、前記水路配管と併設して導波管を設け、
前記導波管は、一端が前記アンテナの電波放射面に向けて開口し、
他端は、前記アンテナから放射される電波の電波強度が前記吐水口近傍にて最大となるように、前記吐水口近傍にて開口していることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記制御部は、送信信号と反射信号の差分信号から得られる速度情報に基づいて前記吐水口から吐水される水流のみの状態であることを検知すると、前記バルブを閉動作することを特徴とする請求項1記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−236266(P2010−236266A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85332(P2009−85332)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】