説明

水浄化方法および水浄化装置

【課題】ゼオライトによる吸着能、イオン交換能を効率良く発揮させることにより、安価に水の浄化を行うことが可能な水浄化方法および水浄化装置の提供。
【解決手段】ゼオライト化発泡ガラスを入れた浮子10と、この浮子10を複数連結して曳航し、浮上油11が浮遊する被処理水の水域12を囲む曳航船13と、この水域12に直に浮遊させるかさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラス14とから構成される水浄化装置である。浮子10は、細長いネットにかさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラスを充填したものである。浮子10により囲まれた水域12内の浮上油11を含む水は、この水域12内に浮遊させたゼオライト化発泡ガラス14と接触し、間隙の中まで浸入し、ゼオライトによる吸着能、イオン交換能により浄化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトの吸着能およびイオン交換能を利用した水浄化方法および水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトはその特性から、イオン吸着による水処理、海水処理および底泥の改善、高度な保水性による土壌改良や、肥料成分の保持による土壌埋設材などに広く使用されている。また、このゼオライトの吸着性、イオン交換性を利用するものとして、例えば特許文献1に記載のように、溶融したガラスにゼオライトを添加することにより、ガラスに発根性、抗菌性、防腐性、水浄化性および油を改質する特性を付加させる技術が知られている。
【0003】
ところで、多孔質ガラスや発泡ガラス等についても、表面積が十分に大きいことから吸着作用を有するので、上記ゼオライトと同様の用途に使用されることがある。例えば、特許文献2には、多孔質ガラス等に機能性共重合体を固定化したものが記載されている。また、特許文献3には、液体中の塩基性物質を、成分中のSiO2含有量が96重量%以上であり、かつ粉末状または繊維状あるいは織物状とした多孔質ガラスを用いて処理することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−293566号公報
【特許文献2】特開2002−316838号公報
【特許文献3】特開平4−66183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記多孔質ガラスや発泡ガラス等でも表面積は十分に大きく、それなりの吸着作用を有するものの、前述のゼオライトと比較すると、用途によっては吸着作用が不足することがある。ゼオライトそのものは粉末状であるので、そのままでは取り扱いにくいという問題があるが、特許文献1に記載の技術では、溶融したガラスにゼオライトを添加することによりこの問題を解決している。
【0006】
ところが、特許文献1に記載のガラス組成物は、ゼオライトを溶融ガラス中に溶け込ませているので、ガラス組成物に添加したゼオライトのうち、ガラス組成物の表面に露出した部分しか吸着性、イオン交換性を発揮しない。そのため、ゼオライトの添加量の割に吸着能、イオン交換能があまり発揮できず、効率が良いとはいえない。ゼオライトは非常に高価であるので、この高効率化が望まれている。
【0007】
そこで、本発明においては、ゼオライトによる吸着能、イオン交換能を効率良く発揮させることにより、安価に水の浄化を行うことが可能な水浄化方法および水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水浄化方法は、表面がゼオライト化された発泡ガラス(以下、「ゼオライト化発泡ガラス」と称す。)を被処理水に接触させることを特徴とする。ゼオライト化発泡ガラスでは、発泡ガラスの表面に露出した部分だけでなく、間隙内面までゼオライト化されている。このようなゼオライト化発泡ガラスに接触した被処理水は、間隙の中まで浸入し、発泡ガラス表面および間隙内面のゼオライトと接触することにより浄化される。
【0009】
ここで、ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1未満のものを用いることが可能である。かさ比重1未満のものを用いると、ゼオライト化発泡ガラスが水面に浮遊するので、この水面近傍の水に集中的にゼオライトを接触させることができる。なお、ゼオライト化発泡ガラスとして、連続間隙を有するものを用いた場合、そのかさ比重は0.3〜0.6である。
【0010】
また、ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1超のものを用いることが可能である。かさ比重1超のものを用いると、ゼオライト化発泡ガラスが水域の水底に沈むので、水域の水底近傍の水にゼオライトを接触させることができる。なお、ゼオライト化発泡ガラスとして、間隙率10〜40%の間隙を有するものを用いた場合、このゼオライト化発泡ガラスは連続間隙と独立間隙が混在し、かさ比重は0.8〜1.5である。
【0011】
また、このゼオライト化発泡ガラスは、被処理水の水域に散布することにより、広くその水域の水をゼオライトに接触させることができる。このとき、発泡ガラスがかさ比重1未満のものであれば、前述のようにゼオライト化発泡ガラスが水域の水面に浮遊するので、水域の水面近傍の水にゼオライトを接触させることができる。一方、かさ比重1超のものであれば、ゼオライト化発泡ガラスが水域の水底に沈むので、水域の水底近傍の水にゼオライトを接触させることができる。
【0012】
また、かさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスをネットに入れた浮子によって被処理水の水域を囲むことにより、この囲まれた水域内の水がこの囲まれた水域外へ浸出する際、浮子のネット内のゼオライト化発泡ガラスと接触する。
【0013】
ゼオライト化発泡ガラスとしては、(1)ガラス微粉末に発泡剤とゼオライト化前駆物質を混合した後、焼成したもの、(2)ガラス微粉末にゼオライト化前駆物質を混合しゼオライト化させた後、発泡剤を混合し、焼成したもの、(3)ガラス微粉末に発泡剤を混合焼成し発泡ガラスを製造した後、ゼオライト化前駆物質を付着させ、マイクロ波によりゼオライト化したもの等を用いることができる。
【0014】
本発明の水浄化装置は、かさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスをネットに入れて被処理水の水域を囲む浮子と、この浮子により囲まれた水域に浮遊させるかさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスとから構成されるものである。本発明の水浄化装置によれば、浮子により囲まれた水域内の水は、この水域内に浮遊するゼオライト化発泡ガラスと接触することにより浄化される。また、この水域内の水がこの水域外へ浸出する際、浮子のネット内のゼオライト化発泡ガラスと接触し、浄化される。
【0015】
本発明の別の水浄化装置は、ゼオライト化発泡ガラスを、通水性を有する容器内に入れたものである。本発明の水浄化装置によれば、ゼオライト化発泡ガラスを入れた通水性を有する容器内に被処理水が導入されると、この被処理水が容器を通過する際にゼオライト化発泡ガラスと接触し、浄化される。
【0016】
ここで、容器は、排水ピットであり、ゼオライト化発泡ガラスはかさ比重1未満であるとすれば、この排水ピットに被処理水が導入されると、この被処理水が排水ピットを通過する際に、排水ピット内に浮遊するゼオライト化発泡ガラスと接触し、浄化される。
【0017】
本発明の別の水浄化装置は、かさ比重1超のゼオライト化発泡ガラスを被処理水の水域の底泥中または底泥上に敷設したものである。本発明の水浄化装置によれば、底泥から水域に溶出する成分がゼオライト化発泡ガラスと接触し、吸着除去される。
【0018】
本発明の別の水浄化装置は、ゼオライト化発泡ガラスをろ材として用いたものである。本発明の水浄化装置によれば、被処理水がろ過される際、ゼオライト化発泡ガラスに接触し、浄化される。
【発明の効果】
【0019】
(1)ゼオライト化発泡ガラスを被処理水に接触させることにより、被処理水を間隙の中まで浸入させ、発泡ガラスの表面に露出したゼオライトだけでなく、間隙内面のゼオライトにまで接触させ、ゼオライトによる吸着能、イオン交換能を効率良く発揮させることができ、安価に水の浄化を行うことが可能となる。
【0020】
(2)ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1未満のものを用いることにより、ゼオライト化発泡ガラスを被処理水の水面近傍に浮遊させ、この水面近傍の水に集中的にゼオライトを接触させて浄化することが可能となる。
【0021】
(3)ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1超のものを用いることにより、ゼオライト化発泡ガラスを水域の水底に沈ませ、この水底近傍の水に集中的にゼオライトを接触させて浄化することが可能となる。
【0022】
(4)ゼオライト化発泡ガラスを被処理水の水域に散布することにより、広くその水域の被処理水にゼオライトを接触させて浄化することが可能となる。
【0023】
(5)かさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスをネットに入れた浮子によって被処理水の水域を囲むことにより、この囲まれた水域内の水がこの囲まれた水域外へ浸出する際、浮子のネット内のゼオライト化発泡ガラスと接触し、浄化されるので、この浮子により囲まれた水域外を汚染することがない。
【0024】
(6)かさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスをネットに入れて被処理水の水域を囲む浮子と、この浮子により囲まれた水域に浮遊させるかさ比重1未満のゼオライト化発泡ガラスとから構成される水浄化装置により、浮子により囲まれた水域内の水を浄化することができるとともに、この水域内の水がこの水域外へ浸出する際、浮子のネット内のゼオライト化発泡ガラスにより浄化することができ、この浮子により囲まれた水域外を汚染することがない。この水浄化装置によれば、タンカ事故等による油回収や、ダム、湖沼等の閉鎖性水域の浄化を行うことができる。
【0025】
(7)ゼオライト化発泡ガラスを、通水性を有する容器内に入れた水浄化装置により、被処理水が容器を通過する際に浄化することができる。この水浄化装置によれば、ダム、湖沼等の閉鎖性水域等への流入水の汚濁物質、栄養塩、重金属の除去や、アオコの吸着除去およびその吸着により溶出したアンモニアや溶解性有機物等の除去を行うことができる。
【0026】
(8)容器が、排水ピットであり、ゼオライト化発泡ガラスがかさ比重1未満である場合、被処理水が排水ピットを通過する際に、浄化することができる。この水浄化装置によれば、事業場での排水ピット内の油の回収を行うことができる。
【0027】
(9)かさ比重1超のゼオライト化発泡ガラスを被処理水の水域の底泥中または底泥上に敷設した水浄化装置により、底泥から水域に溶出する成分を吸着除去することができる。この水浄化装置によれば、底質改善を行うことができる。
【0028】
(10)ゼオライト化発泡ガラスをろ材として用いた水浄化装置により、被処理水がろ過される際に浄化することができる。この水浄化装置は、有機物や窒素分の多い、すなわち汚濁または汚染レベルの高い汚水の浄化施設、重金属の除去施設、流動床・固定床方式の浄化槽、浄水場に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ゼオライトの一般化学式は以下のように表される。
X(M2+,M2+)O・Al23・SiO2・H2
但し、M2+,M2+:アルカリ源、Al2:アルミナ源、Si:シリカ源である。
【0030】
したがって、合成に当たってはこれら3つの原料と水とを加え、合成温度、合成時間、合成圧力等を調整することで各種ゼオライトを生成することができる。石炭灰から作られる人工ゼオライトは、石炭灰に含まれるシリカ分とアルミナ分にアルカリ源となる苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を加えて、オートクレーブによる水熱処理で合成される。
【0031】
本実施形態において使用するガラスは、有色廃ガラスである。この有色廃ガラスは、表1のガラスカレットの化学組成(単位:質量%)に示すように、ソーダガラスであることから、シリカ源およびアルカリ源(Na)は含まれているものの、アルミナ源はほとんど含まれていない。したがって、ゼオライト化に当たっては、ガラス表面の活性化とアルミナ源(アルミニウム)の添加が必要となる。また、アルミニウム成分は発泡ガラス表面と十分に濡れることが必要であるので、液体状で供給されることが望ましい。
【0032】
【表1】

【0033】
一方、ゼオライトにはゼオライト水(Zeolytic Water)が必要であり、これにより構造が保たれるので、少なくとも生成時は水分の存在が必要である。但し、この水は加熱により除かれても、ゼオライトの構造は保持され、水分存在下では再水和が行われるとされており、構造ができてしまえば、さらに高温処理が行われてもゼオライトそのものは残る。
【0034】
以上のことから、ガラスをゼオライト化させるために必要なアルミナ源として、次のように、ゼオライト化条件を決定する。
〔アルミナ源の添加+水溶液化法〕
(1)液体状で供給される市販のアルミン酸ソーダ(NaAlO2)を使用する方法
(2)次に示すアルミナ源に苛性ソーダを加え、水溶液化する方法
・γアルミナ
・カオリンAl23・2SiO2・2H2
・メタカオリン(カオリンを焼成したもの、Al2Si27
・モンモリロナイトNa0.3(Al,Mg)2(Si,Al)410(OH)2・xH2
・アロフェン(Al23)(SiO21.32.5(H2O)
・水酸化アルミニウムAl(OH)3
【0035】
ゼオライト化発泡ガラスの製造は、以下の3つの方法のいずれかにより行う。
(1)ガラス微粉末に発泡剤とゼオライト化前駆物質を混合した後、焼成する方法(以下、「手法1」と称す。図1参照。)
(2)ガラス微粉末にゼオライト化前駆物質を混合しゼオライト化させた後、発泡剤を混合し、焼成する方法(以下、「手法2」と称す。図2参照。)
(3)ガラス微粉末に発泡剤を混合焼成し発泡ガラスを製造した後、ゼオライト化前駆物質を付着させ、マイクロ波によりゼオライト化する方法(以下、「手法3」と称す。図3参照。)
【0036】
手法1は発泡ガラスの生成温度とゼオライトの生成温度が異なることから、ゼオライト化が最も困難と考えられる条件であるが、その代わり最も経済性が向上する条件でもある。すなわち、発泡ガラスを生成するには、発泡剤の発泡温度等から850〜900℃程度必要であるが、反対にゼオライトは高温になると構造破壊を生じる可能性がある。
【0037】
発泡ガラスの生成温度はガラスの溶融温度および発泡剤の発泡温度で決定される。使用する廃ガラスを溶融させるには750〜800℃必要である。また、従来の発泡ガラス製造に使われている発泡剤は炭酸カルシウム(連続間隙で吸水性大の場合)で、最終加熱温度が一般に950℃以上と高い。これは炭酸カルシウムの分解温度が900℃であるので、これより高い温度、通常950℃程度が必要となるからである。また、このような高温度においては、ビン、ガラスなどのソーダガラスではどうしても粘性が低くなりすぎ、気泡の保持が困難である。このため、高価な炭化ケイ素を多量に加えなければならないという弊害も生じてくる。
【0038】
そこで、発泡ガラスの生成温度を低下させるため、本実施形態においては新しい発泡剤としてドロマイトを使用する。ドロマイトは、炭酸カルシウムより低い750〜850℃前後で分解反応が起こる。したがって、発泡剤としてドロマイトを使用することにより、発泡ガラスの生成温度を50〜100℃低下させ、炭酸カルシウムより低温(約850〜900℃)で生成することができる。なお、これにより、発泡ガラスの製造において部分的には850〜900℃程度にゼオライトが加熱されることになるが、過渡的状態で作るとともにその時間が10分弱であることから、平均的な加熱温度は低く、ゼオライトを保持することが可能である。
【0039】
また、ゼオライトは原則として水分の存在下で生成するが、手法1ではゼオライト化に必要なアルミナ源として粘土鉱物を採用し、粘土鉱物中に含有する水分を利用する。また、この粘土鉱物には600℃程度で水分として蒸発するOH基を多数持っており、かつ発泡ガラス化するときにガラス表面が溶融により覆われてしまい、内部が加圧条件(水熱に近い条件)になることが考えられる。具体的には通常の発泡ガラス製造条件に対して、中間温度での保持時間を長くすることによりゼオライトを生成する。
【0040】
手法2では、廃ガラスを微粉砕後、ゼオライト化に必要なアルミナ源を加え、水熱条件でゼオライト化させた後、発泡剤を混ぜ、焼成、発泡させることにより、ゼオライト化発泡ガラスを生成する。但し、通常の水熱合成では多量のアルカリ中で処理を行うが、工業的にはアルカリ源を最小限として、水熱を実質的に水蒸気のみで行う。また、アルミナ源は、手法1と同じく天然鉱物を主として使用するようにして、活性な各種粘土鉱物を使用する。これらの粘土鉱物はそれのみでもゼオライト化する可能性があり、よりゼオライト化が容易となる。
【0041】
手法3では、発泡ガラス製造後、アルミナ源を加え、マイクロ波処理によりゼオライト化させる。アルミナ源は水溶液状(水酸化アルミニウム+水酸化ナトリウムまたはアルミン酸ナトリウム)で添加し、反応を起こしやすくするとともに、マイクロ波によるOH基の活性化および発泡ガラス表面での溶融化によりゼオライトを形成する。
【0042】
上記方法により得られるゼオライト化発泡ガラスは、添加材量、微粉砕ガラスの粒度、焼成温度や焼成時間等の製造条件によりその比重を調整することができる。また、発泡剤の種類および添加量を調整することにより連続間隙を有するものとしたり、間隙率10〜40%の連続間隙および独立間隙が混在するものとしたりすることができる。
【0043】
なお、間隙率とは、発泡ガラス全体の体積に対する隙間の割合を百分率で表したものである。間隙率は吸水率と等しく、次式により求められる。
間隙率(吸水率)Q(%)=(mS−mD)/mD×100
但し、mS:試料の質量(g)、mD:乾燥後の試料の質量(g)である。
【実施例1】
【0044】
図4は本発明の1実施例としてのタンカ事故等による油回収の例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図4において、本実施例の水浄化装置は、ゼオライト化発泡ガラス(図示せず。)を入れた浮子10と、この浮子10を複数連結して曳航し、浮上油11が浮遊する被処理水の水域12を囲む曳航船13と、この水域12に直に浮遊させるかさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラス14とから構成される。浮子10は、細長いネットにかさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラスを充填したものである。
【0045】
本実施例によれば、浮子10により囲まれた水域12内の浮上油11を含む水は、この水域12内に浮遊させたゼオライト化発泡ガラス14と接触し、間隙の中まで浸入する。ここで、ゼオライト化発泡ガラス14は、発泡ガラスの表面に露出した部分だけでなく、間隙内面までゼオライト化されているので、浮上油11を含む水は発泡ガラスの表面に露出したゼオライトだけでなく、間隙内面のゼオライトにまで接触する。これにより、浮上油11を含む水は、このゼオライトによる吸着能、イオン交換能により浄化される。また、浮子10により囲まれたこの水域12内の水は、この水域12外へ浸出する際、浮子10内のゼオライト化発泡ガラスと接触し、浄化されるので、この浮子10により囲まれた水域12外を汚染することはない。
【0046】
なお、浮上油11を吸着したゼオライト化発泡ガラスは、回収した後、熱焼することにより、浮上油11のみが二酸化炭素となって除去される。これにより、ゼオライト化発泡ガラスは再生される。この浮上油11の除去後の再生ゼオライト化発泡ガラスは、再度浄化に利用したり、建設材料として再利用したりすることが可能である。
【0047】
この方法は、湖沼、ダム、浄水場取水口、海域において浮遊汚濁物質であるアオコや赤潮対策として応用することも可能である。要するに、かさ比重0.3〜0.6の軽いゼオライト化発泡ガラスを被処理水域に散布すると、このゼオライト化発泡ガラスが被処理水域の水面近傍に浮遊した状態で水面近傍の水と接触するので、この水面近傍の水に集中的にゼオライトを接触させて浄化することが可能となる。
【実施例2】
【0048】
図5は本発明の1実施例としてのダム等の閉鎖性水域での用途例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図5において、本実施例の水浄化装置は、ダム等の閉鎖性水域20に流れ込む支流21に設けた浄化システム22と、この支流21からの流入水を囲んで仕切るフェンス23と、閉鎖性水域20の底泥中または底泥上に散布したかさ比重1〜1.5のゼオライト化発泡ガラス24と、通水性を有するネットに収容してフェンス23により囲まれた水域26内に浮遊させたかさ比重0.3〜0.6のゼオライト化発泡ガラス25とから構成される。
【0049】
浄化システム22は、通水性を有する容器内にゼオライト化発泡ガラスを入れたものである。フェンス23は、前述の浮子10と同様に、通水性を有する細長いネットにかさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラスを充填したものであり、閉鎖性水域20の水面に浮遊する浮子である。また、フェンス23の下方には、水中で増殖した藻類28がフェンス23により囲まれた水域26外に拡散しないようにゼオライト化発泡ガラスを収容した通水性を有するネット27を備える。ネット27の最下部には、ネット27が浮上しないように重り(図示せず。)を設けている。なお、ネット27に代えて、同様に水中で増殖した藻類28がフェンス23により囲まれた水域26外に拡散しないように仕切る仕切板(図示せず。)を備える構成とすることも可能である。
【0050】
閉鎖性水域20の底泥中または底泥上に散布したゼオライト化発泡ガラスは、間隙率10〜40%であってかさ比重1〜1.5の連続間隙と独立間隙が混在するものである。このようなかさ比重1超のゼオライト化発泡ガラスは、閉鎖性水域20の水底に沈む。なお、ネットに収容したゼオライト化発泡ガラス25は、ネットに収容せずにそのままフェンス23により囲まれた水域26内に散布して浮遊させることも可能である。
【0051】
本実施例によれば、支流21から閉鎖性水域20に流れ込む水は、通水性を有する容器内に入れたゼオライト化発泡ガラスと接触し、前述のようにゼオライトによる吸着能、イオン交換能により浄化されることにより、栄養塩が除去される。また、水域26で増殖した藻類28を水域26の水とともに浄化施設22に戻して通水ろ過することにより、アオコや赤潮を除去できる。また、水域の水底の泥から溶出する栄養塩は、この底泥中または底泥上に散布されたゼオライト化発泡ガラスにより吸着除去される。これにより、栄養塩が閉鎖性水域20の藻類28に供給されるのを防止することができ、藻類28の増殖を防止することができる。
【0052】
また、支流21から閉鎖性水域20に流れ込む水は、フェンス23およびネット27により囲まれ、仕切られていることから、このフェンス23およびネット27により囲まれた水域26の水は、フェンス23およびネット27を通過する際、このフェンス23およびネット27内のゼオライト化発泡ガラスと接触することにより浄化される。したがって、アオコのような浮遊物質がこのフェンス23およびネット27により囲まれた水域26外に流出することはない。
【実施例3】
【0053】
図6は本発明の1実施例としてのアオコ除去による池浄化の例を示す図である。
図6において、本実施例の水浄化装置は、修景池30から水を吸い上げる水中ポンプ31と、通水性を有する容器32内に接触材としてのゼオライト化発泡ガラス33を入れ、水中ポンプ31により吸い上げたアオコ34を含む水を通水ろ過させる浄化プラント32とから構成される。
【0054】
アオコのような浮遊物質を従来の接触材で除去した場合、接触材内部で除去されたアオコは、加水分解や生物分解によってアンモニアや溶解性有機物等に分解される。アンモニアは硝化細菌によって硝酸まで酸化される。河川水のような希薄な水域の場合は、好気性雰囲気の条件下におかれ、さらに脱窒に必要な有機物が少ないため脱窒が困難である。そのため、溶出したアンモニアは硝化反応までに留まり、脱窒による窒素除去まで至らない。しかし、本実施例のようにゼオライト化発泡ガラスを接触材に用いることで、溶出したアンモニアを吸着することができ、希薄な水質における高窒素除去率の浄化を行うことが可能となる。
【実施例4】
【0055】
図7は本発明の1実施例としての底質改善の例を示す断面図である。
図7において、本実施例の水浄化装置は、間隙率10〜40%であってかさ比重1〜1.5の連続間隙と独立間隙が混在するゼオライト化発泡ガラス40を被処理水の水域41の底泥42中または底泥42上に敷設したものである。
【0056】
本実施例によれば、底泥42から溶出するアンモニア態窒素(NH4)、リン酸イオン(PO4)、鉛(Pb)、硫黄(S)等がゼオライト化発泡ガラス40によって吸着、除去され、底質改善を行うことができる。
【実施例5】
【0057】
図8は本発明の1実施例としての事業場での排水ピット内の油の回収の例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図8において、本実施例の水浄化装置は、通水性を有する容器としての排水ピット50に、かさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するゼオライト化発泡ガラス51が散布されたものである。
【0058】
本実施例における水浄化装置では、排水ピット50の上方から流入する排水に含まれる油が浮上して浮上油52として浮遊するが、この浮上油52が同じく排水ピット50内に浮遊するゼオライト化発泡ガラス51と接触することにより吸着、除去される。これにより、排水ピット50の下方からは油が除去された水が排出される。
【実施例6】
【0059】
図9は汚濁または汚濁レベルの高い汚水浄化施設への適用例を示す図である。
図9において、本実施例の汚水浄化施設は、上流側から順に、最初沈殿槽60、曝気槽61、最終沈殿槽62、ゼオライト化発泡ガラス64による接触曝気槽63を配置したものである。接触曝気槽63は、ろ材としてゼオライト化発泡ガラス64を用いたものである。
【0060】
本実施例における汚水浄化施設は、公衆トイレの浄化槽の高度処理、畜産排水(し尿の処理)、食品廃水などの汚濁または汚濁レベルの高い被処理水を浄化するものであるが、本実施例では、この被処理水がろ過される際、ゼオライト化発泡ガラスと接触することで、有機物や窒素分が除去される。
【0061】
また、ゼオライト化発泡ガラスをろ材として用いる例として、図10に示す浄水場が挙げられる。
図10において、本実施例の浄水場は、上流側から順に、沈砂池70、着水井71、混和池72、フロック形成池73、沈澱池74、急速ろ過池75を配置したものである。急速ろ過池75には、ろ材としてゼオライト化発泡ガラス76を用いている。
【実施例7】
【0062】
図11は反応槽の流動床方式への適用例を示す図である。
図11において、本実施例の水浄化装置は、曝気槽80にゼオライト化発泡ガラスからなる担体81を充填し、曝気槽80の下部から空気を供給することにより曝気を行うものである。曝気槽80に充填された担体81は、曝気により曝気槽80内全体に流動するため、排水、酸素、微生物の大きな接触効率および高い酸素供給効率が得られる。これにより、高負荷処理が可能となるうえ、担体81の目詰まりが防止される。なお、ゼオライト化発泡ガラスは、流動床方式のみならず固定床方式にも適用可能である。
【実施例8】
【0063】
図12は水域直接浄化システムへの適用例を示す図である。
図12において、本実施例の水域直接浄化システムは、最上流側の粒径の大きい、例えば、粒径80〜100mmのゼオライト化発泡ガラス90から順に粒径の小さな、例えば、それぞれ粒径60〜70mmおよび30〜40mmのゼオライト化発泡ガラス91,92を接触材として接触槽内に充填したものである。特に、第1槽、第2槽の接触槽は目詰まりを起こしやすい箇所であるため、粒径を大きくし、容積充填率を60〜80%とすかすかの状態(例えば、第1槽を60%、第2槽を70〜80%)としておく。
【0064】
なお、本実施例において第3槽、第4槽、第5槽は、粒径は同じであるが、第3槽は第4槽および第5槽よりも容積充填率が低い状態としておく。また、ゼオライト化発泡ガラス90,91,92は、かさ比重0.3〜0.6の連続間隙を有するものを用いる。
【0065】
従来の間隙率の小さい接触材(骨材、礫)は、流入濃度が高いと目詰まりを起こしやすい。そのため、逆洗を頻繁に行う必要があるが、本実施例における水域直接浄化システムでは、最も目詰まりが起こりやすい第1槽、第2槽がすかすかの状態であり、逆洗の際に接触材が流動するため、目詰まりはすぐに解消される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、水の浄化を行うことが可能な水浄化方法および水浄化装置として有用である。特に、タンカ事故等による油回収、ダム、湖沼等の閉鎖性水域の浄化、流入水の汚濁物質、栄養塩、重金属の除去、アオコの吸着除去およびその吸着により溶出したアンモニアや溶解性有機物の除去、事業場での排水ピット内の油の回収、底質改善、汚濁または汚染レベルの高い汚水浄化施設、流動床・固定床方式の浄化槽、浄水場等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ゼオライト化発泡ガラスの第1の製造方法を示すフロー図である。
【図2】ゼオライト化発泡ガラスの第2の製造方法を示すフロー図である。
【図3】ゼオライト化発泡ガラスの第3の製造方法を示すフロー図である。
【図4】本発明の1実施例としてのタンカ事故等による油回収の例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明の1実施例としてのダム等の閉鎖性水域での用途例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】本発明の1実施例としてのアオコ除去による池浄化の例を示す図である。
【図7】本発明の1実施例としての底質改善の例を示す断面図である。
【図8】本発明の1実施例としての事業場での排水ピット内の油の回収の例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図9】汚濁または汚濁レベルの高い汚水浄化施設への適用例を示す図である。
【図10】浄水場への適用例を示す図である。
【図11】反応槽の流動床方式への適用例を示す図である。
【図12】水域直接浄化システムへの適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 浮子
11,52 浮上油
12,26,41 水域
13 曳航船
14,24,25,33,40,51,64,76,90,91,92 ゼオライト化発泡ガラス
20 閉鎖性水域
21 支流
22 浄化システム
23 フェンス
26 水域
27 ネット
28 藻類
30 修景池
31 水中ポンプ
32 容器
34 アオコ
41 水域
42 底泥
50 排水ピット
60 最初沈殿槽
61 曝気槽
62 最終沈殿槽
63 接触曝気槽
70 沈砂池
71 着水井
72 混和池
73 フロック形成池
74 沈澱池
75 急速ろ過池
80 曝気槽
81 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がゼオライト化された発泡ガラス(以下、「ゼオライト化発泡ガラス」と称す。)を被処理水に接触させることを特徴とする水浄化方法。
【請求項2】
前記ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1未満のものを用いた請求項1記載の水浄化方法。
【請求項3】
前記ゼオライト化発泡ガラスとして、かさ比重1超のものを用いた請求項1記載の水浄化方法。
【請求項4】
前記ゼオライト化発泡ガラスとして、連続間隙を有するものを用いた請求項1または2に記載の水浄化方法。
【請求項5】
前記ゼオライト化発泡ガラスとして、間隙率10〜40%の間隙を有するものを用いた請求項1または3に記載の水浄化方法。
【請求項6】
前記ゼオライト化発泡ガラスを前記被処理水の水域に散布することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水浄化方法。
【請求項7】
前記ゼオライト化発泡ガラスをネットに入れた浮子により前記被処理水の水域を囲むことを特徴とする請求項2または4に記載の水浄化方法。
【請求項8】
前記ゼオライト化発泡ガラスは、ガラス微粉末に発泡剤とゼオライト化前駆物質を混合した後、焼成したものである請求項1から7のいずれかに記載の水浄化方法。
【請求項9】
前記ゼオライト化発泡ガラスは、ガラス微粉末にゼオライト化前駆物質を混合しゼオライト化させた後、発泡剤を混合し、焼成したものである請求項1から7のいずれかに記載の水浄化方法。
【請求項10】
前記ゼオライト化発泡ガラスは、ガラス微粉末に発泡剤を混合焼成し発泡ガラスを製造した後、ゼオライト化前駆物質を付着させ、マイクロ波によりゼオライト化したものである請求項1から7のいずれかに記載の水浄化方法。
【請求項11】
表面がゼオライト化されたかさ比重1未満の発泡ガラスをネットに入れて被処理水の水域を囲む浮子と、この浮子により囲まれた水域に浮遊させる表面がゼオライト化されたかさ比重1未満の発泡ガラスとから構成される水浄化装置。
【請求項12】
表面がゼオライト化された発泡ガラスを、通水性を有する容器内に入れた水浄化装置。
【請求項13】
前記容器は、排水ピットであり、前記発泡ガラスはかさ比重1未満である請求項12記載の水浄化装置。
【請求項14】
表面がゼオライト化されたかさ比重1超の発泡ガラスを被処理水の水域の底泥中または底泥上に敷設した水浄化装置。
【請求項15】
表面がゼオライト化された発泡ガラスを、ろ材として用いた水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−95385(P2006−95385A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282347(P2004−282347)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(597104053)日本建設技術株式会社 (24)
【Fターム(参考)】