説明

水溶性フィルム

PVOH、キトサン、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩、並びに可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、界面活性剤、架橋剤、潤滑剤および増量剤のような任意構成成分の混合物から製造したフィルム形成性組成物を開示する。また、該組成物からのフィルムの製造方法、得られるフィルム、およびそのフィルムから製造しすすぎ添加剤のようなクリーニング用組成物を収容するパケットも開示する。上記組成物は、所定のpH閾値よりも低いときのみ可溶性であるフィルムのような物品を得るように配合し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2006年11月13日に出願された米国特許出願第11/559,262号の1部継続出願である2007年4月10日に出願された米国特許出願第11/733,595号の1部継続出願であり、これにより、2007年1月19日に出願された米国仮特許出願第60/885,838号の35 U.S.C. §119(e)による権利を主張する。これら出願の開示全体を、参照として本明細書に取り込む。
【0002】
本開示は、一般に、フィルムのような水溶性構造体に関する。さらに詳細には、本開示は、特定のpH範囲においてのみ可溶性である水溶性フィルムに関し、すすぎ添加剤のようなクリーニング活性剤の包装における用途を見出している。
【背景技術】
【0003】
水溶性高分子フィルムは、当該技術において既知であり、種々の文献に記載されている。そのような高分子フィルムは、一般に、包装材料において、給送すべき物質の分散、注入、溶解および投入を簡素化するために使用されている。そのような高分子材料の水溶性フィルムパッケージは、混合容器に直接添加して、有利なことに、毒性または汚染性物質との接触を回避し且つ混合容器中での正確な配合を可能にし得る。可溶性の前以って計量した高分子フィルムポーチ(porch)は、種々の用途、とりわけ、洗浄添加剤に関連する用途における消費者使用の利便性を助長する。以下で使用するとき、すすぎ添加剤とは、洗浄サイクルのすすぎ部分においての使用を意図し或いはすすぎ部分において最も有効であり、機械洗浄装置で洗浄することのできる繊維類または物品の審美性、風合、外観、衛生性または清浄性のような性質を改善することを意図する物質を称する。そのような洗浄添加剤は、好ましくは、アルカリ性洗剤洗浄を行った後にすすぎ添加され、限定されるものではないが、繊維柔軟剤、増白剤、再付着防止剤、漂白剤および食器洗浄用の界面活性剤すすぎ助剤がある。添加剤の放出は、洗浄サイクルの洗浄部分中よりもむしろすすぎ部分中で行うのが望ましい。さらに、これらの製品を洗浄サイクル開始時の初期に洗浄器に添加し、それによってクリーニング工程をモニタリングする必要性を回避し、添加剤を洗浄サイクルのすすぎ部分の開始時に導入することが望ましい。そのような添加剤を含ませるのに使用する高分子フィルムは、洗浄段階においては不溶性であってすすぎ段階において可溶性とならなければならず、溶解は、好ましくは、洗浄溶液のpHの違いによって誘発される。
【発明の概要】
【0004】
本開示の1つの局面は、PVOHポリマーをキトサンの希水溶液中でスラリー化する工程;スラリーに、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、界面活性剤、架橋剤、潤滑剤および増量剤のような任意構成成分を添加する工程;スラリーを撹拌しながら加熱し、それによってPVOHを可溶化する工程; 重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を溶液に添加し、必要に応じて、溶液を撹拌し、それによって重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を可溶化し、溶液を冷却する工程;および、溶液を注型し、溶媒を蒸発させ、それによって水溶性ポリマーフィルムを得る工程を含む水溶性フィルムの製造方法を提供する。
本開示のもう1つの局面は、PVOHと、20質量%までの量のキトサンと、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩との混合物を含む水溶性フィルムを提供する。
本開示のさらにもう1つの局面は、PVOHと、キトサンと、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩との混合物を含み、PVOH対キトサンの質量比が約12:1〜約3:1の範囲内であることを特徴とする水溶性フィルムを提供する。
本開示のさらにもう1つの局面は、本明細書の開示に従うフィルムを含む密封パケットを提供する。
【0005】
さらなる局面および利点は、当業者にとっては、図面と関連して行う以下の詳細な説明を検討することによって明白となろう。本明細書において説明する組成物、フィルムおよびパケットは種々の態様の実施態様が可能であるが、以下の説明は、特定の実施態様を含み、その開示は、例示であって、本発明を本明細書において説明する特定の実施態様に限定するものではないことを理解されたい。
本発明の理解をさらに容易にするため、1つの図面を本明細書に添付する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本明細書の開示に従うフィルムおよび通常のPVOHフィルムから製造され、1つのコンパートメントにおいてはADW洗剤を、もう一方のコンパートメントにおいてはすすぎ添加剤を含む2コンパートメントポーチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において説明するフィルム形成性組成物は、ポリビニルアルコール(PVOH)、キトサン、および重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩の組合せを含む。上記成分を本明細書の教示に従って配合して、所定のpH閾値を有する水溶液において可溶性であるフィルムのような物品を製造し得る。そのようなフィルムは、例えば、自動食器洗浄用洗剤組成物または洗濯用洗剤組成物において見出される添加剤のようなクリーニング活性剤またはすすぎ添加剤の遅延放出用の密封パケットの製造における利用を見出している。密封パケットは、加熱シーリングおよび接着剤シーリング(例えば、水溶性接着剤の使用による)のような方法および仕様のような任意の適切な方法によって製造し得る。
【0008】
上記組成物の主要成分は、PVOH、キトサンおよび重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩である。1つのタイプの実施態様においては、PVOHは、88%よりも高い、より好ましくは少なくとも92%の、より好ましくは98%以下の、例えば、約92%〜約98%の範囲の加水分解度を有する。もう1つのタイプの実施態様においては、PVOHは、完全に加水分解されている(例えば、99%〜100%)。PVOHの分子量は、特に制限されないが、20℃で約20cps〜約30cps (例えば、28cps)の4%水溶液粘度を有する中分子量PVOHが得られるフィルムの加工性および強度のために好ましい。PVOHは、フィルムの総質量(質量%)基準で約50質量%〜約90質量%(乾燥基準)の範囲、例えば、約60質量%〜約80質量%または約70質量%で存在する。
【0009】
キトサン(ポリ[-(1,4)-2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノース])は、キチン、例えば、甲殻類中に存在する天然産多糖類の部分または完全脱アセチル化形である。構造的には、キチンは、ベータ-(1,4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコース単位からなる多糖類であり、その幾分かは脱アセチル化されている:



式中、例えば、x = 0.85〜0.95、y = 0.15〜0.05である。脱アセチル化度は、通常、8〜15%で変動するが、キチンが得られる種並びに分離および精製に使用する方法に依存する。
【0010】
キチンは、一定の化学量論を有する1つのポリマーではなく、種々の結晶構造と脱アセチル化度を有し且つ種間でかなり大きな変動性を有するN-アセチルグルコサミンのポリマー群である。キチンのより広範囲の脱アセチル化によって得られる多糖類がキトサンである:



式中、例えば、x = 0.50〜0.10、y = 0.50〜0.90である。
【0011】
キチン同様、キトサンは、アセチルグルコサミンのポリマー群についての包括的用語であるが、概して50〜95%の脱アセチル化度を有する。キトサンは、D-グルコサミンのベータ-(1,4)-多糖類であり、セルロースにおけるC-2ヒドロキシル基がキトサンにおいては第一級アミン基によって置換されている以外は、構造的にはセルロースに類似している。多数の遊離アミン基(pKa = 6.3)は、キトサンを高分子の弱塩基にしている。キチンとキトサンは、双方とも、水、希塩基水溶液および大部分の有機溶媒には不溶性である。しかしながら、キチンとは異なり、キトサンは、希酸水溶液、通常はカルボン酸中で、キソトニウム(chisotonium)塩として可溶性である。従って、希酸水溶液中での溶解性は、キチンとキトサンを区別する簡単な方法である。
キトサンは、種々の分子量(ポリマー、例えば、50,000ダルトン(Da);オリゴマー、例えば、2,000Da)、粘度等級、および脱アセチル化度(例えば、40%〜98%)で入手可能である。キトサンは、一般に、無毒で生分解性であるとみなされている。アセチル化度は、ポリマーのアミン基pKa (ひいては溶解性挙動)および流動特性に対して有意の作用を有する。最大限に脱アセチル化したポリマー上のアミン基は、ポリマー源に応じて、5.5〜6.5の範囲のpKaを有する。低pHにおいては、ポリマーは可溶性であり、ソル-ゲル転移が約pH 7において生じる。天然キトサンおよび合成ポリ-D-グルコサミンの双方の使用を意図する。
【0012】
キトサンのアセチル化度は、フィルムが溶解し始めるpH値に影響を与える。アセチル化度が増大するにつれて、フィルムが溶解するpHは上昇する。キトサンのアセチル化度は、約9.2または9.3のpH溶解誘因によってフィルムを与えるためには、好ましくは約65%以下または70%以下、例えば、約50%〜約65%、約55%〜約65%または約60%〜約65%のような範囲内である(例えば、52%、62.5%または64%)。この物質は、当該技術において既知の方法による、商業的に入手し得る85%〜95%脱アセチル化キトサンの酢酸水溶液中での無水酢酸を使用する再アセチル化反応によって得ることができる。キトサンの分子量は特に制限はないが、約150,000Da〜約190,000Daの質量平均分子量が好ましい。キトサンは、約1質量%〜約20質量%の範囲内で存在し、以下の特定の含有量を意図する:15質量%まで、12質量%まで、10質量%まで、8質量%まで、4質量%〜12質量%および6質量%〜10質量%。PVOH対キトサンの質量比は、約12:1〜約3:1または約8:1〜約10:1の範囲内、例えば、約9:1を意図する。そのような低量のキトサンにより、フィルム溶解のための所望のpH誘発能力を与え得ることは、驚くべきことである。
【0013】
アセチル化度を判定するためには、約0.01、0.02および0.003Mの3通りの酢酸溶液と脱イオン水サンプルを調製し、240nmから190nmまでの第1の微分スペクトルを測定し記録する。3つのスペクトルの重ね合せは、上記酸における零交差点を示す。100mlの0.01M酢酸中の0.5mg〜3.5mg範囲のN-アセチルグルコサミンの4通りまたは5通りの参照溶液を調製し、上記のようなスペクトルを記録する。記録した全てのスペクトルを重ね合せ、零交差点上の各参照濃度における高さH (mm)を測定する。H対N-アセチルグルコサミン濃度の較正曲線を描く。曲線方程式 H = f(C)を決定する。500mgの乾燥キトサン(即ち、前以って凍結乾燥させた)を50mlの0.1M 酢酸に溶解し、次いで、水で500mlに希釈する。アセチル化度が高い場合、さらなる10倍希釈が必要である。溶液を、10mmの通路長を有するFar-UVキュベットに移す。種々の分光計を使用し得る:例えば、BECKMAN DU 640、KONTRON UVIKOV 810、およびPERKIN ELMER 550 SE。微分スペクトルを、1nmの光波(light with of 1nm)、30nm/秒の走査速度および4秒の時定数、チャート速度10cm/分で得る。0.11よりも低いアセチル化度については、最終結果を、補正曲線から推定した係数によって補正する。
【0014】
何ら特定の理論によって拘束するつもりはないが、キトサンのアセチル化度によるアミン基pKaの変化は、電荷斥力と関連しているものと信じている。従って、低アセチル化によるポリマーにおいては、アミン基のプロトン化は、得られる正電荷が互いに反発する性向を有するので、近隣アミン基の塩基度を低下させる(低めのpKa)。一方、高めのアセチル化ポリマーにおいては、遊離アミン基は互いにもっと隔離されており、電荷反発は生じない。これによって、高めの塩基度を生じ(高めのpKa)、これらの基は、典型的な第一級アミンのアミン基とより類似して挙動するものと予測される。
さらに、また、何ら特定の理論によって拘束するつもりはないが、下記で説明する実施例における重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩は、PVOH上の末端アルデヒド基と反応してヒドロキシスルホン酸塩付加物を形成することによって機能し、それにより、PVOHのアルデヒド基とキトサンのアミノ基間のシッフ塩基反応を阻止する。そのようなシッフ塩基形成は、最終フィルム中で時間の経過とともに生じて、1つのタイプの架橋を示すものと推定され、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩の不存在においては、フィルムは、全てのpHにおいてほぼ2週間で完全に不溶性となるまで、その水溶性を次第に喪失することを観察している。
【0015】
従って、本発明の1つの局面としては、例えば下記で説明する特定の方法により、PVOHの水溶液、キトサンおよび重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を混合し、その後、水を蒸発させることによって製造したフィルムまたは他の固形水溶性物品を意図する。重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩は、フィルム中に、好ましくは約1質量%まで、例えば、約0.01質量%〜約1質量%、または、より好ましくは約0.02質量%〜約0.25質量%の量で存在する。例えば、重亜硫酸ナトリウムは、好ましくは、約0.02質量%〜約0.2質量%の範囲の量、例えば、0.1質量%で使用する。換言すれば、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩は、フィルム中で使用するPVOHの質量基準で約0.9%までの量、例えば、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩のタイプに応じて約0.005%〜約0.9%または0.006%〜約0.8%で存在し得る。例えば、重亜硫酸ナトリウムは、好ましくは、PVOHの質量基準で約0.01%〜約0.22%の範囲内の量、例えば、0.1%で使用する。フィルム中に1質量%までの好ましい量で重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を含ませることにより、例えば、長期安定性および漂白/脱色性の双方を付与し得る。実際問題としては、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩は、1%を越えて、所望の用途用の組成物の性能(例えば、フィルム形成能力、引張強度、分解能力)に負の影響を与えない任意の量で添加し得る。従って、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩の量は、好ましくは、約20質量%以下、例えば、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下または2質量%以下である。
【0016】
上記フィルム組成物およびフィルムは、他の補助フィルム剤および加工剤、例えば、
限定するものではないが、その意図する目的に対して適切な量の可塑剤、潤滑剤、剥離剤、充填剤、増量剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、粘着防止剤、発泡防止剤、多層型シリケートタイプナノクレーのようなナノ粒子(例えば、ナトリウムモンモリロナイト)、漂白剤(例えば、重亜硫酸ナトリウム等)および他の機能性成分を含有し得る。そのような二次薬剤の量は、好ましくは約10質量%まで、より好ましくは約5質量%まで、例えば、4質量%までである。
架橋剤の例としては、限定するものではないが、ホウ砂、ホウ酸塩、ホウ酸、クエン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、第二銅塩、水溶性ポリアミド-エピクロロヒドリン、およびこれらの組合せがある。好ましい架橋剤としては、ホウ酸および水溶性ポリアミド-エピクロロヒドリン、とりわけホウ酸がある。水溶性ポリアミド-エピクロロヒドリンは、デラウェア州ウィルミントンのHercules社から商品名 POLYCUP 172として入手し得る。架橋剤は、架橋剤のタイプに応じて、好ましくは約10質量%までの量、例えば、約0.1質量%〜約10質量%または0.1質量%〜約5質量%で存在する。例えば、ホウ酸は、好ましくは、約0.3質量%〜約0.7質量%の範囲内の量、例えば、0.5質量%で使用する。換言すれば、架橋剤は、フィルム中で使用するPVOHの質量基準で約10%までの量、例えば、架橋剤のタイプに応じて約0.1%〜約10%または0.1%〜約5%で存在し得る。例えば、ホウ酸は、好ましくは、PVOHの質量基準で約0.5%〜約0.9%の範囲内の量、例えば、0.7%で使用する。
【0017】
ナトリウムモンモリロナイトナノクレーを、例えば、約10質量%の量で、本明細書において説明するような架橋剤と一緒に上記フィルム形成性組成物中に混入することにより、所定のpHの熱水中で可用性である完全に水不透過性のPVOHフィルムを形成させることができる。
可塑剤を含む実施態様は、好ましい、好ましい可塑剤としては、限定するものではないが、グリセリン、ソルビトールおよび2-メチル-1,3-プロパンジオールがある。グリセリンとソルビトールの組合せが好ましい。好ましい実施態様においては、グリセリンは、約10質量%〜約20質量%または12質量%〜約18質量%の量、例えば、約15質量%で使用する。好ましい実施態様においては、ソルビトールは、約1質量%〜約10質量%または2質量%〜約8質量%の量、例えば、約3質量%で使用する。
【0018】
フィルムは、本明細書において説明する組成物により、任意の適切な方法に従って製造し得る。以下の方法が好ましい:PVOHおよび重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を除く全成分をキトサン(例えば、2質量%)の低温溶液中に分散させ、PVOHを得られた溶液中でスラリー化し、撹拌しながら加熱(例えば、95℃に)してPVOHを可溶化し、次いで、85℃に冷却する;重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を、時間遅延期間後に添加し、混合し、溶液を注型し、フィルムを乾燥させてフィルムを得る。別法においては、PVOHを先ずキトサンの低温溶液中でスラリー化し得、その後、さらなる成分を添加し得る。当業者であれば、他の有用な構造体も成形法のような種々の操作によって製造し得ることは理解し得るであろう。
重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩の上記溶液への添加を、約2〜約24時間、好ましくは約4時間〜約20時間、より好ましくは約7時間〜約20時間の期間遅延させて、洗浄サイクルにおけるフィルムの湿潤強度を最適化することが好ましいことを見出した。この期間においては、ある程度のシッフ塩基形成が溶液中で生じて、軽度の架橋によりフィルムの強度を増強するが、その水溶性を不当に損なうことはないと信じている。
【0019】
得られるフィルムは、好ましくは、高アルカリ性溶液(例えば、9.3よりも高い、好ましくは10よりも高いpH)中で不溶性であり、さらにまた、好ましくは、洗剤組成物と接触したときに安定であるように配合する。また、得られるフィルムは、好ましくは、洗浄のすすぎ前段階において使用を意図する自動洗浄装置内での撹拌に耐えるに十分な湿潤強度も有する。
上記説明に従うフィルム実施態様の使用は、pH依存性の水溶性フィルムを提供する。また、上記説明に従うフィルム実施態様の使用は、pH依存性の水溶性放出手段も提供する。
上記フィルムは、クリーニング活性剤を含む洗剤組成物を収容するのに有用である。1つの実施態様においては、上記説明に従うフィルムは、パケットを製造するのに使用し得る。このパケットは、1種以上のクリーング活性剤を含む洗剤組成物を含み得る。クリーニング活性剤は、粉末、ゲル、ペースト、液体、錠剤またはこれらの任意の組合せのような任意の形状を有し得る。
【0020】
以下で使用するとき、すすぎ添加剤とは、洗浄サイクルのすすぎ部分においての使用を意図し或いはすすぎ部分において最も有効であり、機械洗浄装置で洗浄することのできる繊維類または物品の審美性、風合、外観、衛生性または清浄性のような性質を付与または改善することを意図する物質を称する。そのような洗浄添加剤は、好ましくは、アルカリ性洗剤洗浄を行った後にすすぎ添加し、限定するものではないが、繊維柔軟剤、増白剤、再付着防止剤、漂白剤および食器洗浄用の界面活性剤すすぎ助剤がある。添加剤の放出は、洗浄サイクルの洗浄部分中よりもむしろすすぎ部分中で行うのが望ましい。さらに、これらの製品を洗浄サイクル開始時の初期に添加し、それによってクリーニング工程をモニタリングする必要性を回避し、添加剤を洗浄サイクルのすすぎ部分開始時に添加することが望ましい。
【0021】
無機および有機の漂白剤は、本発明の使用における適切なクリーニング活性剤である。無機漂白剤としては、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩および過ケイ酸塩のようなパーハイドレート塩がある。無機パーハイドレート塩は、通常、アルカリ金属塩である。無機パーハイドレート塩は、結晶固形物として、さらなる保護なしで含ませ得る。また、塩もコーティーングし得る。
アルカリ金属過炭酸塩、とりわけ過炭酸ナトリウムは、本発明において使用する好ましいパーハイドレートである。過炭酸塩は、最も好ましくは、製品中に、製品内安定性を与えるコーティーング形で含ませる。製品内安定性を与える適切なコーティーング材料は、水溶性アルカリ金属硫酸塩および炭酸塩の混合塩を含む。そのようなコーティーングは、以前に、コーティーング方法と一緒にGB 1,466,799号に記載されている。上記混合塩コーティーング材料対過炭酸塩の質量比は、1:99〜1:9、好ましくは1:49〜1:19の範囲内にある。好ましくは、上記混合塩は、一般式 Na2SO4.n.Na2CO3 (式中、nは、0.1〜3であり;好ましくは、nは、0.3〜1.0であり;最も好ましくは、nは、0.2〜0.5である)を有する硫酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む。製品内安定性を与えるもう1つの適切なコーティーング材料は、パーオキシモノ過硫酸カリウムのような無機パーハイドレート塩の質量で好ましくは2%〜10%(通常は、3%〜5%)のSiO2の量で適用される1.8:1〜3.0:1、好ましくは1.8:1〜2.4:1のSiO2:Na2O比を有するケイ酸ナトリウムおよび/またはメタケイ酸ナトリウムを含む。また、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸塩とホウ酸塩、ケイ酸塩とホウ酸、ワックス類、オイル類並びに脂肪酸石けん類を含有する他のコーティーングも、本発明において有利に使用し得る。
【0022】
典型的な有機漂白剤は、ジアシルおよびテトラアシルパーオキサイド、とりわけ、ジパーオキシドデカン二酸、ジパーオキシテトラデカン二酸およびジパーオキシヘキサデカン二酸のような有機パーオキシ酸である。ジベンゾイルパーオキサイドは、本発明における好ましい有機パーオキシ酸である。ジアシルパーオキサイド、とりわけジベンゾイルパーオキサイドは、好ましくは、約0.1〜約100ミクロン、好ましくは約0.5〜約30ミクロン、より好ましくは約1〜約10ミクロンの質量平均直径を有する粒子形状で存在すべきである。粒子の好ましくは少なくとも約25%〜100%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%は、10ミクロンよりも小さく、好ましくは6ミクロンよりも小さい。
さらなる典型的な有機漂白剤としてはパーオキシ酸があり、特定の例は、アルキルパーオキシ酸およびアリールパーオキシ酸である。好ましい典型例は、(a) アルキルパーオキシ安息香酸のようなパーオキシ安息香酸およびその環置換誘導体、尚且つ、パーオキシ-α-ナフトエ酸およびモノ過フタル酸マグネシウム;(b) パーオキシラウリン酸、パーオキシステアリン酸、ε-フタルイミドパーオキシカプロン酸[フタロイミノパーオキシヘキサン酸(PAP)]、o-カルボキシベンズアミドパーオキシカプロン酸、N-ノネニルアミド過アジピン酸およびN-ノネニルアミドパースクシネートのような脂肪族または置換脂肪族パーオキシ酸;および、(c) 1,12-ジパーオキシカルボン酸、1,9-ジパーオキシアゼライン酸、ジパーオキシセバシン酸、ジパーオキシブラシル酸、ジパーオキシフタル酸、2-デシルジパーオキシブタン-1,4-二酸、N,N-テレフタロイルジ(6-アミノ過カプロン酸)のような脂肪族またはアラリファチック(araliphatic)パーオキシジカルボン酸である。
【0023】
漂白活性化剤は、典型的には、60℃以下の温度でのクリーニング過程において漂白作用を増強する有機過酸プレカーサーである。本発明において使用するのに適する漂白活性化剤としては、過加水分解条件下に、好ましくは1〜10個の炭素原子、とりわけ2〜4個の炭素原子を有する脂肪族パーオキシカルボン酸および/または必要に応じて置換した過安息香酸を与える化合物がある。適切な物質は、上記で明記した炭化水素数を有するO-アシルおよび/またはN-アシル基、および/または必要に応じて置換したベンゾイル基を担持する。好ましいのは、ポリアシル化アルキレンジアミン類、とりわけテトラアセチルエチレンジアミン(TAED);アシル化トリアジン誘導体、とりわけ1,5-ジアセチル-2,4-ジオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(DADHT);アシル化グリコールウリル類、とりわけテトラアセチルグリコールウリル(TAGU);N-アシルイミド類、とりわけN-ノナノイルスクシンイミド(NOSI);アシル化フェノールスルホネート類、とりわけn-ノナノイル-またはイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n-またはイソ-NOBS);無水カルボン酸類、とりわけ無水フタル酸;アシル化多価アルコール類、とりわけトリアセチン、二酢酸エチレングリコールおよび2,5-ジアセトキシ-2,5-ジヒドロフラン、さらにまた、クエン酸トリエチルアセチル(TEAC)である。
本発明において使用するのに好ましい漂白触媒としては、マンガントリアザシクロノナンおよび関連複合体(US-A-4246612号、US-A-5227084号);Co、Cu、MnおよびFeビスピリジルアミン並びに関連複合体(US-A-5114611号);および、ペンタミン酢酸コバルト(III)および関連複合体(US-A-4810410号).がある。本発明において使用するのに適する漂白触媒の完全な説明は、WO 99/06521号の34頁26行〜40頁16行において見出し得る。
【0024】
自動食器洗浄において使用する好ましい界面活性剤は、それ自体で或いは本明細書において開示する他の成分(例えば、泡立ち抑制剤)と組合せて低発泡性である。本発明において使用するのに好ましいのは、ノニオン性アルコキシル化界面活性剤(とりわけ、C6〜C18第一級アルコールから誘導されたエトキシ化物)、エトキシル化-プロポキシル化アルコール(例えば、Olin Corporation社のPoly-Tergent(登録商標) SLF18)、エポキシキャップドポリ(オキシアルキル化)アルコール(例えば、Olin Corporation社のPoly-Tergent(登録商標) SLF18B;WO-A-94/22800号参照)、エーテルキャップドポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤、およびミシガン州ワイアンドットのBASF-Wyandotte社からのPLURONIC(登録商標)、REVERSED PLURONIC(登録商標)およびTETRONIC(登録商標)のようなブロックポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン高分子化合物のような低および高曇り点ノニオン性界面活性剤およびそれらの混合物;C12〜C20アルキルアミンオキサイド(本発明において使用するのに好ましいアミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイドおよびヘキサデシルジメチルアミンオキサイドがある)およびアルキル両性カルボン酸界面活性剤、例えば、Miranol(登録商標) C2Mのような両性界面活性剤;ベタインおよびスルタイン類のような両性イオン界面活性剤;およびこれらの混合物である。本発明において使用するのに適する界面活性剤は、例えば、US-A-3,929,678号、US-A-4,259,217号、EP-A-0414 549号、WO-A-93/08876号およびWO-A-93/08874号に開示されている。界面活性剤は、典型的には、洗剤組成物の約0.2質量%〜約30質量%、より好ましくは約0.5質量%〜約10質量%、最も好ましくは約1質量%〜約5質量%の量で存在する。
【0025】
本発明において使用するのに適するビルダーとしては、クエン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩およびポリリン酸塩、例えば、三ポリリン酸ナトリウムおよび三ポリリン酸ナトリウム6水和物、三ポリリン酸カリウム、並びに混合三ポリリン酸ナトリウムおよびカリウム塩がある。
本発明において適する酵素類としては、CAREZYMEおよびCELLUZYME (Novo Nordisk A/S社)のような細菌および真菌セルラーゼ類;ペルオキシダーゼ類;AMANO-P (Amano Pharmaceutical社)、M1 LIPASEおよびLIPOMAX (Gist-Brocades社)並びにLIPOLASEおよびLIPOLASE ULTRA (Novo社)のようなリパ−ゼ類;クチナーゼ類;ESPERASE、ALCALASE、DURAZYMおよびSAVINASE (Novo社)並びにMAXATASE、MAXACAL、PROPERASEおよびMAXAPEM (Gist-Brocades社)のようなプロテアーゼ類; PURAFECT OX AM (Genencor社)並びにTERMAMYL、BAN、FUNGAMYL、DURAMYLおよびNATALASE (Novo社)のようなαおよびβアミラーゼ類;ペクチナーゼ類;およびこれらの混合物がある。酵素類は、本発明においては、好ましくは、小粒、顆粒または粒状物(cogranulate)として、典型的には洗剤組成物の約0.0001質量%〜約2質量%(純粋酵素)の範囲の量で添加する。
【0026】
本発明において使用するのに適する泡立ち抑制剤としては、低曇り点を有するノニオン性界面活性剤がある。本明細書において使用するときの“曇り点”は、ノニオン性界面活性剤の周知の性質であり、該界面活性剤が温度上昇とともに低い溶解性となる結果であり、第2相の外観が観察され得る温度を“曇り点”と称する(Kirk Othmer, pp. 360-362参照)。本明細書において使用するとき、“低曇り点”ノニオン性界面活性剤は、30℃よりも低い、好ましくは約20℃よりも低い、さらにより好ましくは約10℃よりも低い、最も好ましくは約7.5℃よりも低い曇り点を有するノニオン性界面活性剤成分系として定義する。典型的な低曇り点ノニオン性界面活性剤としては、ノニオン性アルコキシル化界面活性剤、とりわけ第一級アルコールから誘導されたエトキシ化物、およびポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン(PO/EO/PO)逆ブロックポリマーがある。また、そのような低曇り点ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エトキシル化-プロポキシル化アルコール(例えば、BASF Poly-Tergent(登録商標) SLF18)およびエポキシキャップドポリ(オキシアルキル化)アルコール類(例えば、例えばUS-A-5,576,281号に記載されているようなBASF Poly-Tergent(登録商標) SLF18B群のノニオン物)もある。
【0027】
本発明における他の適切な成分としては、再付着防止、除汚(soil release)または他の清浄化特性を有するクリーニング用ポリマーがある。そのような分散剤の質量平均分子量は、広範囲に亘って変動し得るが、好ましくは約1,000〜約500,000であり、より好ましくは約2,000〜約250,000であり、最も好ましくは約3,000〜約100,000である。Rohm & Haas社から商品名ACUSOL(登録商標) (例えば、ACUSOL 45N、445N、480Nおよび460N)として入手可能な約4500の公称分子量を有するポリアクリル酸ナトリウム、またはBASF社から商品名SOKALAN(登録商標) (例えば、SOKALAN PA30、PA20、PA15、PA10およびSOKALAN CP10)として入手可能であるようなアクリレート/マレートコポリマーは、本発明において好ましい。SOKALAN(登録商標) CP45の商品名で商業的に入手可能なポリマー分散剤は、メタクリル酸と無水マレイン酸のナトリウム塩の部分中和コポリマーであり、これも本発明においての使用に適している。また、アクリル酸/メタクリル酸コポリマーも、分散剤としての使用に適している。
本発明において使用する他の適切なポリマー分散剤は、AQUALIC(登録商標) ML9ポリマー(Nippon Shokubai社より供給)のようなアクリル酸とマレイン酸の両コモノマーを含有するコポリマーである。
本発明において使用する他の適切なポリマー分散剤は、ALCOSPERSE(登録商標)ポリマー(Alco社から供給)のようなカルボキシレートとスルホネートの両モノマーを含有するポリマーである。
【0028】
本発明における好ましい除汚ポリマーとしては、アルキルおよびヒドロキシアルキルセルロース(US-A-4,000,093号)、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびこれらのコポリマー、並びにエチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの混合物のテレフタレートエステル系のノニオン性およびアニオン性ポリマーがある。
本発明の組成物は、好ましくは、自動食器洗浄洗剤の約0.1質量%〜約20質量%、約1質量%〜約15質量%、約1質量%〜約10質量%のポリマー分散剤を含む。
また、重金属イオン封鎖剤および結晶成長抑制剤、例えば、塩または遊離酸形のジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホネート)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホネート)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホネート)、エチレンジホスホネート、ヒドロキシ-エチレン-1,1-ジホスホネート、ニトリロトリアセテート、エチレンジアミノテトラアセテート、エチレンジアミン-N,N'-ジスクシネートも本発明における使用に適している。
【0029】
また、有機銀コーティーング剤(とりわけ、ドイツ国ザルツベルゲン(Salzbergen)のWintershall社から販売されているWINOG 70のようなパラフィン類)、窒素含有腐蝕抑制剤化合物(例えば、ベンゾトリアゾールおよびベンズイミダゾール;GB-A-1137741号参照)、およびMn(II)化合物、とりわけ有機リガンドのMn(II)塩のような腐蝕抑制剤も、本発明における使用に適している。
ある種の非限定的な実施態様において有用なガラス手入れ粒状亜鉛含有材料は、以下を含み得る:アルミン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛および酸化亜鉛含有材料(即ち、カラミン)、リン酸亜鉛(即ち、オルソリン酸塩およびピロリン酸塩)、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛(即ち、オルソ-およびメタ-ケイ酸亜鉛)、ケイフッ化亜鉛、ホウ酸亜鉛、水酸化亜鉛およびヒドロキシ硫酸亜鉛。
本発明における他の適切な成分は、カルシウムイオン、ホウ酸およびプロピレングリコールのような酵素安定剤である。
【0030】
1つの実施態様においては、上記説明に従うフィルム実施態様の使用は、洗浄条件においては不溶性のままであり、すすぎ条件においては急速且つ完全に可溶化してすすぎ添加剤を放出する洗浄添加剤用の水溶性給送系を提供する。
また、上記説明に従うフィルム実施態様の使用は、すすぎ添加剤の給送手段も提供し、この手段は、洗浄サイクルの洗浄部分において添加し得、すすぎ添加剤を洗浄サイクルのすすぎ部分において給送する。
適切なすすぎ添加剤は、当該技術において既知である。食器洗浄用の市販のすすぎ助剤は、典型的には、低発泡性脂肪族アルコールポリエチレン/ポリプロピレングリコールエーテル、可溶化剤(例えば、クメンスルホネート)、有機酸(例えば、クエン酸)および溶媒(例えば、エタノール)の混合物である。そのようなすすぎ助剤の機能は、すすぎ表面から薄い凝集膜の形で排水するような形で水の界面張力に作用して、水滴、水条痕および水膜がその後の乾燥工程後の残存しないようにすることである。すすぎ助剤組成物およびその性能の試験方法の概要は、W. Schirmer等によって、Tens. Surf. Det. 28, 313 (1991) に提示されている。Henkelに付与されたヨーロッパ特許第0 197 434号は、混合エーテルを界面活性剤として含有するすすぎ助剤を記載している。また、繊維柔軟剤等のようなすすぎ助剤も、本明細書の開示に従うフィルム内でのカプセル化を意図し、またカプセル化に適している。
【0031】
本明細書において説明するフィルムは、当該フィルムから製造した或いは他の高分子材料のフィルムとの組合せを含む2以上のコンパートメントを含むパケットを製造するのに使用することができる。もう1つの実施態様においては、パケットは、2以上のコンパートメントを含み得、1つのコンパートメントは本発明のフィルムから部分的に製造し、好ましくは、そのフィルムはパケットの外壁を構成する。
追加のフィルムは、例えば、その高分子材料の注型、ブロー成形、押出または吹込み押出により、当該技術において既知のようにして得ることができる。追加のフィルムとして使用するのに適する好ましいポリマー、コポリマーまたはこれらの誘導体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸および塩類、ポリアミノ酸またはペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、澱粉およびゼラチンのような多糖類、キサンタム(xanthum)およびカラガム(carragum)のような天然ガムから選ばれる。より好ましいポリマーは、ポリアクリレートおよび水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレートから選ばれ、最も好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにこれらの組合せから選ばれる。好ましくは、ポーチ材料中のポリマー、例えば、PVOHポリマーの量は、少なくとも60%である。ポリマーは、好ましくは約1000〜1,000,000、より好ましくは約10,000〜300,000、さらにより好ましくは約20,000〜150,000の任意の質量平均分子量を有し得る。最も好ましいポーチ材料は、米国インディアナ州メリルビルのMONOSOL LLC社から販売されているような商標MONOSOL M8630として知られているPVOHフィルム、および相応する溶解性および変形性を有するPVOHフィルムである。本発明において使用するのに適する他のフィルムとしては、Aicello社から供給される商標PTフィルムとして知られるフィルムまたはKシリーズのフィルム、或いはKuraray社から供給されるVF-HPフィルムがある。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、例示のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
75μmフィルムを、下記の配合物から注型した(成分は全て固形物基準の質量%)。

【0033】
75μmフィルムを、この配合物から、以下の手順により製造した:PVOHを2質量%キトサン溶液(低温)中でスラリー化し、重亜硫酸ナトリウムを除いた他の全成分を添加し、撹拌しながら95℃に加熱してPVOHを可溶化し、85℃に冷却し、重亜硫酸ナトリウムを7時間の期間後に添加し、撹拌して可溶化し、溶液を注型し、乾燥させた。
上記したようなフィルムを、MONOSOL M-8630 PVOHフィルムと一緒に使用して、自動食器洗浄(ADW)洗剤およびすすぎ助剤配合物を収容する2コンパートメントパケットまたはポーチを形成した。パケットは、図1に断面で示すようにして構築し、本実施例に従うフィルム10がすすぎ助剤14を封入し、通常のPVOHフィルム12がADW洗剤18を封入している。パケットを、最高温度が40℃〜65℃で変動するADW装置内で試験した。本実施例に従うフィルムは、主洗浄サイクル(pH 10.5〜10.7)においては不溶性であり且つ破壊または崩壊しない十分な湿潤強度を有しており、第2のすすぎサイクル(約pH 9.3)において可溶性であった。本実施例に従うフィルムを周囲条件にてZIPLOCポリエチレンバッグ内で21日間保存し、上記したようなADW装置内で試験した。フィルムは、主洗浄サイクルにおいては不溶性であり且つ破壊または崩壊しない十分な湿潤強度を有しており、第2のすすぎサイクルにおいて可溶性であった。重亜硫酸ナトリウムを省いた以外は同様に配合したフィルムを使用し、フィルムを周囲条件にてZIPLOCポリエチレンバッグ内で21日間保存した場合、上記のようにして試験したときのフィルムは、洗浄およびすすぎサイクルの全体を通して不溶性であった。PVOHが部分加水分解PVOH (加水分解度 88%)であった以外は同様に配合したフィルムを使用した場合、フィルムは、主洗浄サイクルにおいて溶解した。
【0034】
(実施例2)
75μmフィルムを、下記の配合物から注型した(成分は全て固形物基準の質量%)。

【0035】
75μmフィルムを、この配合物から、以下の手順により製造した:PVOHおよび重亜硫酸ナトリウムを除いた全成分を2質量%キトサン溶液(低温)中に分散させ、PVOHを得られた溶液中でスラリー化し、撹拌しながら95℃に加熱してPVOHを可溶化し、85℃に冷却し、重亜硫酸ナトリウムを10時間の期間後に添加し、混合して可溶化し、溶液を注型し、乾燥させた。
上記したようなフィルムを、MONOSOL M-8630 PVOHフィルムと一緒に使用して、自動食器洗浄(ADW)洗剤およびすすぎ助剤配合物を収容する2コンパートメントパケットまたはポーチを形成した。パケットは、図1に断面で示すようにして構築し、本実施例に従うフィルム10がすすぎ助剤14を封入し、通常のPVOHフィルム12がADW洗剤18を封入している。パケットを、最高温度が40℃〜65℃で変動するADW装置内で試験した。本実施例に従うフィルムは、主洗浄サイクル(pH 10.5〜10.7)においては不溶性であり且つ破壊または崩壊しない十分な湿潤強度を有しており、第2のすすぎサイクル(約pH 9.3)において可溶性であった。本実施例に従うフィルムを周囲条件にてZIPLOCポリエチレンバッグ内で21日間保存し、上記したようなADW装置内で試験した。フィルムは、主洗浄サイクルにおいては不溶性であり且つ破壊または崩壊しない十分な湿潤強度を有しており、第2のすすぎサイクルにおいて可溶性であった。重亜硫酸ナトリウムを省いた以外は同様に配合したフィルムを使用し、フィルムを周囲条件にてZIPLOCポリエチレンバッグ内で21日間保存した場合、上記のようにして試験したときのフィルムは、洗浄およびすすぎサイクルの全体を通して不溶性であった。PVOHが88%の加水分解度を有した以外は同様にして配合したフィルムを使用した場合、フィルムは、主洗浄サイクルにおいて溶解した。
【0036】
(実施例3)
上記するように、実施例1または2のフィルムを使用して、1以上のコンパートメントにクリーニング用組成物を含ませるパケットを形成することが得る。適切なクリーニング用組成物の例は、下記の表3に示している。1つの実施態様において、実施例1または2のフィルムを使用して2コンパートメントパケットの少なくとも1つのコンパートメントを形成し、次いで、各コンパートメントにノニオン性界面活性剤またはすすぎ助剤のようなクリーニング活性剤を充填する。

【0037】
上記詳細な説明において引用した全ての文献を参考として本明細書に合体させる。本明細書におけるいずれかの用語の意味または定義が参考として合体させた文献のいずれかの用語の意味または定義と矛盾する限りにおいては、本明細書においてその用語に対して与えた意味または定義が適用される。
上記の説明は理解を明確にするためにのみ提示しており、本発明の範囲内の修正は当業者にとっては明白であり得るので、上記の説明からは無用な限定と理解すべきではない。
明細書全体を通して、組成物が各成分または材料を含むと説明されている場合、それらの組成物は、特に断らない限り、列挙した成分または材料の任意の組合せから本質的になり得るか或いはなり得るものとする。
本明細書において開示する方法およびその個々の工程の実施は、手動によっておよび/または電子装置の助けによってなし得る。各方法を特定の実施態様に関連して説明しているけれども、当業者であれば、これらの方法に関連した操作を実施する他の仕様も使用し得ることを容易に理解し得るであろう。例えば、種々の工程の順序は、特に断ってない限り、その方法の範囲または精神を逸脱することなく変更し得る。さらに、個々の工程の幾つかは、組合せ、省略し或いはさらなる工程に分割することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVOHと、20質量%までの量で存在するキトサンと、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩との混合物を含む水溶性フィルム。
【請求項2】
前記重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩が、重亜硫酸ナトリウムを含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩が、0.01質量%〜1質量%の範囲の量で存在する、請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
前記重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩が、0.02質量%〜0.25質量%の範囲の量で存在する、請求項3記載のフィルム。
【請求項5】
PVOHが、88%よりも高い加水分解度を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項6】
PVOHが、92%〜98%の範囲の加水分解度を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
キトサンが、約1質量%〜約20質量%の範囲の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項8】
キトサンが、約55%〜約65%の範囲のアセチル化度を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項9】
キトサンが、約60%〜約65%の範囲のアセチル化度を有する、請求項8記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、約9.3までのpHを有する水中で可溶性である、請求項1〜9のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項11】
前記フィルムが、約9.3よりも高いpHを有する水中で不溶性である、請求項1〜10のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項12】
可塑剤をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項13】
可塑剤が、約10質量%〜約20質量%の範囲で存在する、請求項12記載のフィルム。
【請求項14】
可塑剤が、グリセリンを含む、請求項12記載のフィルム。
【請求項15】
50質量%〜90質量%の92%〜98%範囲の加水分解度を有するPVOHと、1質量%〜20質量%の約60%〜65%範囲のアセチル化度を有するキトサンと、0.01質量%〜1質量%の重亜硫酸ナトリウムとを含み、約9.3以上のpHを有する水中で不溶性であることを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項16】
PVOHと、キトサンと、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩との混合物を含み、PVOH対キトサンの質量比が約12:1〜約3:1の範囲にあることを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項記載のフィルムを含む密封パケット。
【請求項18】
下記の工程を含むことを特徴とする、水溶性フィルムの製造方法:
PVOHポリマーとキトサンを含む溶液を調製する工程;
重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩を添加し、前記溶液を注型する工程;および、
溶媒を蒸発させ、それによって水溶性ポリマーフィルムを得る工程。
【請求項19】
PVOHとキトサンの前記溶液を下記の工程によって調製する、請求項18記載の方法:
PVOHポリマーをキトサンの希低温水溶液中でスラリー化する工程;
前記スラリーに、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、潤滑剤および増量剤のような任意構成成分を添加する工程;および、
前記スラリーを撹拌しながら加熱し、それによってPVOHを可溶化する工程。
【請求項20】
前記重亜硫酸またはメタ重亜硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩の、PVOHポリマーとキトサンを含む前記溶液への添加を、得られるフィルムの湿潤強度を増大させるに十分な時間遅らせることをさらに含む、請求項18〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記時間が少なくとも2時間である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1項記載の方法によって製造したフィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−509491(P2010−509491A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537318(P2009−537318)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/084566
【国際公開番号】WO2008/064014
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508122415)モノソル リミテッド ライアビリティ カンパニー (8)
【Fターム(参考)】