説明

水硬性組成物

【課題】練りあがり時間の短縮、初期分散性向上、低粘性化、硬化物性向上を同時に高いレベルで満足できる、粗骨材を含有し単位水硬性粉体量が多い水硬性組成物を提供する。
【解決手段】アクリル酸と特定のポリアルキレングリコールアクリレート系単量体とを構成単量体とし、全構成単量体中のアクリル酸の割合が50モル%以上である共重合体と、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下であり、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水/水硬性粉体重量比が0.33以下であり、粗骨材を含有する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度領域のコンクリートは一般強度のコンクリートに比べ、水/水硬性粉体重量比の小さい組成で練り混ぜられて調製されている。かかる高強度コンクリートには、その性質上一般に、練り混ぜに要する時間が長い、所定の流動性を得るための添加量が多くなる、コンクリート粘性が高い、コンクリート硬化に長い時間を要することで施工期間が長くなるなどの複数の課題がある。
【0003】
ところで、従来、コンクリート等の水硬性組成物用の混和剤として、不飽和カルボン酸系単量体と、ポリアルキレングリコールエステル系単量体もしくはポリアルキレングリコールエーテル系単量体との共重合体を用いることが知られている。特許文献1には、高強度コンクリートの作業性や施工性を改善することを課題として、(メタ)アクリル酸系単量体、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を含む特定4種又は5種の単量体をそれぞれ所定の共重合比率となるように共重合した共重合体を含有する超高強度水硬性セメント組成物が開示されている。また、特許文献2には、セメント組成物の流動性、モルタルの混練性を課題として、炭素数3〜7のオキシアルキレン基を導入したポリアルキレングリコールアクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体を用いたセメント添加剤が開示されている。また、特許文献3には、優れた流動性と硬化遅延性が小さいことを課題として、ポリアクリル酸の一部にポリアルキレングリコールの長さの異なるポリオキシアルキレングリコールをエステル化したセメント分散剤が開示されている。
【特許文献1】特開平6−191918号公報
【特許文献2】特開2000−191357号公報
【特許文献3】特開2002−53359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現行の水硬性組成物用混和剤では、水/水硬性粉体重量比の小さい組成で粗骨材を含まないモルタルやセメントペーストを練り上げるのに比べて、同じ水/水硬性粉体重量比であっても粗骨材を含有するコンクリートを混練すると、粗骨材表面をモルタルやセメントペーストが被覆する速度が遅く、均一に練り上げるのに時間がかかる傾向があった。練り混ぜ時間の短縮、流動性確保のための添加量の低減、粘性の適正化、施工期間の短縮などの特性に対して、更なる向上が望まれる。
【0005】
本発明の課題は、練りあがり時間の短縮、初期分散性向上、低粘性化、硬化物性向上を同時に高いレベルで満足できる、粗骨材を含有し単位水硬性粉体量が多い水硬性組成物を提供することである。特許文献1では、アクリル酸由来の構成単位とアクリル酸とアルキレングリコールのエステル由来の構成単位を有する重合体が具体的に開示されていない。特許文献2及び3では粗骨材を含有する水硬性組成物に対して検討がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アクリル酸からなる構成単位と下記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体と、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下であり、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物に関する。
【0007】
【化4】

【0008】
〔式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、qは0〜2の整数を表し、rは0〜1の整数を表す。〕
【0009】
また、本発明は、アクリル酸からなる構成単位と上記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体を含有する水硬性組成物用の分散剤であって、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物用の分散剤に関する。
【0010】
また、本発明は、水、水硬性粉体、及び粗骨材を含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物を製造する、水硬性組成物の製造方法であって、
アクリル酸からなる構成単位と上記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体〔以下、共重合体(I)という〕、水及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程と、
前記モルタルと粗骨材とを混練する工程と、
を有する水硬性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共重合体(I)が低添加量で、強度特性の低下を引き起こすことなく、水硬性組成物の粘性が小さく取り扱い易い水硬性組成物を調製することができる。本発明により、高い減水性を有し、練上がりが速く、水硬性組成物の粘性が下がることで施工性が向上し、かつ早強性に優れた水硬性組成物、例えば超高強度コンクリートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
共重合体(I)は、アクリル酸からなる構成単位〔以下、アクリル酸単位という〕と上記一般式(A)で表される構成単位〔以下、構成単位(A)という〕を含む。すなわち、共重合体(I)の一例としては、アクリル酸と、構成単位(A)の由来となるポリアルキレングリコールとアクリル酸のエステルである単量体〔以下、単量体(A)という〕とを構成単量体とする。アクリル酸は塩を形成していても良い。従来から、不飽和カルボン酸系単量体とポリアルキレングリコールエステル系単量体との共重合体を水硬性組成物混和剤として用いることは知られている。しかし、ポリアルキレングリコールエステル系単量体と共重合させる単量体としてアクリル酸を用いた場合、メタクリル酸とほぼ同等の吸着特性を有するものの、ポリアルキレングリコールエステル系単量体については、アクリル酸のエステルは、メタクリル酸のエステルよりも加水分解が起こり易いので、流動保持性や製品としての効果の安定性が低いと考えられていた。このような理由からメタクリル酸を中心に検討がなされており、アクリル酸を主鎖とする共重合体に注目した検討は多くはなされていない。本発明者らは、水/水硬性粉体重量比の小さい0.33以下で粗骨材を含む水硬性組成物においては、メタクリル酸よりもアクリル酸を主鎖とする共重合体(I)を用いた方が、低添加量で練上がり性が早く、粘性が小さく取り扱い易い水硬性組成物(例えばコンクリート)を調製でき、強度特性の低下も引き起こさないことを見出した。これは、水/水硬性粉体重量比の小さい領域では、水硬性組成物の単位体積あたりの水硬性粉体の量が多いので相対的に共重合体(I)の添加量も多くなり加水分解の影響が小さくなるため、さらにシリカフューム等の微粒子が併用される系では、水硬性組成物の塩基性が低下し加水分解が起こりにくくなるためと推定される。そして、共重合体(I)が、主鎖としてアクリル酸ユニットを多く含むことで、共重合体の主鎖の柔軟性が高まるため、濃厚スラリーのような粉体粒子間隔の狭い状態でも、可動度(分子運動性)が大きい本共重合体は、粉体表面への吸着が容易であり、粉体に吸着した際には分子量のわりに嵩高い吸着形態をとりうることができる。その結果、水硬性粉体表面が本共重合体によって速やかに濡れる(親水化)ため、濃厚スラリーの粘性が低下し、低い水粉体比でもスラリーが容易に粗骨材を被覆することができ、粗骨材を含む材料の混合性に優れるものと推察される。
【0013】
アクリル酸単位は、下記一般式(A’)の構造を有する。一般式(A’)中、Mは水素原子又は塩を形成する対イオンである。よって、本発明の共重合体(I)は、下記一般式(A’)で表される構成単位と上記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中の一般式(A’)で表される構成単位の割合が50モル%以上の共重合体である。
【0014】
【化5】

【0015】
単量体(A)の一例としては、ポリアルキレングリコールとアクリル酸とのモノエステルであり、一般式(A)となる構造を有する。一般式(A)中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2又は3、より好ましくは炭素数2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)である。nはAOの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、好ましくは5〜150、より好ましくは8〜80、更に好ましくは10〜40である。Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。qは0〜2の整数を表し、好ましくは0である。rは0〜1の整数を表し、好ましくは1である。
【0016】
共重合体(I)は、アクリル酸単位と構成単位(A)とを構成単位とし、全構成単位中のアクリル酸単位の割合が50モル%以上である。全構成単位中のアクリル酸単位の割合の下限値は好ましくは55モル%、より好ましくは60モル%である。また、アクリル酸単位の上限値は、好ましくは95モル%、より好ましくは93モル%、更に好ましくは90モル%である。従って、全構成単位中のアクリル酸単位の割合は、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは55〜93モル%、更に好ましくは60〜90モル%、より更に好ましくは60〜85モル%である。
【0017】
また、重量基準では、全構成単位中のアクリル酸単位の割合が1.0重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以上、更に好ましくは2.0重量%以上、更により好ましくは2.5重量%以上であり、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、更により好ましくは40重量%以下である。従って、全構成単位中のアクリル酸単位の割合は、好ましくは1.0〜80重量%、より好ましくは1.5〜70重量%、更に好ましくは2.0〜60重量%、更により好ましくは2.5〜40重量%である。なかでも構成単位(A)のnが8〜80の数である場合、このような重量%でアクリル酸単位を用いることは、耐塩性と初期分散性の観点から好ましい。
【0018】
全構成単位中のアクリル酸単位の割合が50モル%以上であるので、構成単位(A)の割合は50モル%以下である。全構成単位中の構成単位(A)の割合の下限値は、好ましくは5モル%、より好ましくは7モル%、更に好ましくは10モル%である。構成単位(A)の割合の上限値は好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%である。従って、全構成単位中の構成単位(A)の割合の割合は、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは7〜45モル%、更に好ましくは10〜40モル%である。
【0019】
共重合体(I)は、アクリル酸と単量体(A)以外の単量体(その他の単量体)に由来する構成単位を含むこともできるが、全構成単位中、アクリル酸単位と構成単位(A)の合計の割合が92モル%以上、更に93モル%以上、更に94モル%以上、更に95モル%以上であることが好ましい。その他の構成単位の由来となる単量体としては、例えばメタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸、およびその金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類;アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールとメタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類へのアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類;前記不飽和ジカルボン酸類とアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類とグリコールもしくは付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の水硬性組成物は、共重合体(I)の単独使用も可能であるが保持性の観点から水硬性組成物用混和剤の成分として公知の、共重合体(I)以外の(共)重合体〔以下、(共)重合体(II)という〕を含有することもできるが、共重合体(I)と(共)重合体(II)の合計中、共重合体(I)の割合が有効分換算で50〜99重量%、更に70〜98重量%、より更に80〜97重量%であることが好ましい。(共)重合体(II)としては、水硬性粉体の分散剤として知られているポリカルボン酸系(共)重合体又はリン酸基(塩)を有する(共)重合体を、単独、或いはそれぞれ二種以上を用いる事ができる。(共)重合体(II)としては、メタクリル酸と単量体(A)の共重合体、アクリル酸とポリアルキレングリコールメタクリレートの共重合体、メタクリル酸とポリアルキレングリコールメタクリレートの共重合体等が挙げられる。なお、(共)重合体は、重合体及び/又は共重合体の意味である。
【0021】
また、(共)重合体(II)のうち、リン酸基又はその塩を有するものとしては、ポリオキシアルキレン基とリン酸基を有する重合体が挙げられる。例えば、特開2006−052381号公報記載の重合体が挙げられる。具体的には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を平均3〜200モル導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルと、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0022】
また、水/水硬性粉体重量比が好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下の場合は、水硬性組成物の良好な練り上がり性の観点から、水硬性組成物に用いる(共)重合体、すなわち高分子混和剤、中でも分散剤として、共重合体(I)のみを用いることが好ましく、練上がり性、初期流動性、低粘性および早硬性の4つをバランスよく満足させる観点から共重合体(I)が1種であることがより好ましい。
【0023】
共重合体(I)の重量平均分子量は、初期分散性の観点から、1000〜200000が好ましく、10000〜100000がより好ましく、20000〜60000が更に好ましい。この重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.5mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0024】
共重合体(I)は、単量体成分と開始剤を用いて、溶液重合や塊状重合などの公知の重合方法により製造することができる。また高分子反応法により合成することも可能である。ちなみに、高分子反応法とは、不飽和カルボン酸を重合後に、ポリアルキレングリコール系化合物とエステル化反応を行うことで、グラフト共重合体を得る方法である。
【0025】
重合開始剤は公知のものを使用することができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド等が好適に使用できる。
【0026】
本発明の水硬性組成物は、共重合体と、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有するコンクリート等の水硬性組成物である。
【0027】
本発明の水硬性組成物は、単位水硬性粉体量が500kg/m3以上であることが好ましい。単位水硬性粉体量は800kg/m3以上がより好ましく、1000kg/m3以上がより好ましく、1250kg/m3以上が更に好ましい。また、単位水硬性粉体量は2200kg/m3以下が好ましく、2000kg/m3以下がより好ましく、1800kg/m3以下が更に好ましく、1500kg/m3以下がより更に好ましい。従って、単位水硬性粉体量は、500〜2200kg/m3が好ましく、800〜2000kg/m3がより好ましく、1000〜1800kg/m3が更に好ましく、1250〜1500kg/m3がより更に好ましい。
【0028】
本発明に用いられる水硬性粉体としては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、対硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、ビーライトセメント(例えば低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント製)ハイフローセメント(太平洋セメント製))、各種混合セメント(高炉セメント、シリカフュームセメント、フライアッシュセメント)、エコセメント(太平洋セメント製)などのセメントが挙げられる。これらのなかでも、共重合体(I)の加水分解を抑制する観点から、中庸熱セメント、ビーライトセメント及びシリカフュームセメントが好ましい。
【0029】
石粉(炭酸カルシウムの粉末)、高炉スラグ(ブレーン値3000〜10000cm2/g)、フライアッシュなどのフィラーを水硬性粉体と併用することもできる。
【0030】
本発明の水硬性組成物は、シリカフュームなどの微粒子を含有することができる。シリカフュームにはジルコニアフューム、アルミナフューム、チタンフュームも含む。また、上記シリカフュームセメント等のような予めセメントと混合した製品を用いることもできる。微粒子は、比表面積(BET法)が5m2/g以上、更に10〜30m2/g、より更に12〜28m2/gであることが好ましい。本発明では、水硬性粉体として、シリカフュームを8〜20重量%混入したセメントを用いることが好ましい。なお、シリカフュームとは、フェロシリコン、電融ジルコニア、金属シリコンをアーク式電気炉で製造する際に発生する排ガスから捕集される非晶質の二酸化珪素を主成分とする平均粒径0.1μm程度の非常に細かい球状の微粒子である。その成分は80重量%以上が非晶質のSiO2であり、少量成分としてAl2O3、Fe2O3、CaO、TiO2などが含まれる。
【0031】
シリカフュームなどの微粒子を含有することで、水硬性組成物の塩基性が低下し共重合体(I)の加水分解が抑制される。さらに、共重合体(I)との相互作用により微粒子の凝集を抑制する効果があると考えられる。微粒子による材料粒子間への充填、材料粒子間でのボールベアリング効果、ポゾラン反応により、混練性や硬化体の強度が向上する。
【0032】
本発明の水硬性組成物は、粗骨材を含有する。粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。中でも、強度向上の観点から、粗骨材の強度が高い硬質砂岩の使用がより好ましい。また、骨材として細骨材等を含有することもでき、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。粗骨材とは、目開き5mmのふるいに重量で85%以上とどまる骨材(土木学会コンクリート標準示方書)をいう。また、細骨材とは、目開き10mmふるいを全部通り、目開き5mmふるいを重量で85%以上通過する骨材(土木学会コンクリート標準示方書)をいう。
【0033】
本発明の水硬性組成物において、粗骨材の含有量は、水硬性組成物の硬化の際の収縮性及び硬化後の強度の観点から、300〜1100kg/m3であり、350〜1100kg/m3が好ましく、600〜1050kg/m3がより好ましく、700〜1000kg/m3がより更に好ましく、800〜950kg/m3が特に好ましい。また、体積基準では115〜500L/m3(水硬性組成物1m3あたりの体積(リットル))が好ましく、130〜500L/m3がより好ましく、200〜450L/m3が更に好ましく、250〜450が更に好ましい。
【0034】
細骨材と粗骨材の容積比〔細骨材/(細骨材+粗骨材)容積比、s/aと表記されることもある〕は0.08〜0.60が好ましく、0.10〜0.55がより好ましく、0.12〜0.40が更に好ましく、0.12〜0.30がより更に好ましく、0.12〜0.30がより更に好ましく、0.12〜0.16がより更に好ましい。
【0035】
本発明の水硬性組成物における骨材の含有量(細骨材と粗骨材の合計量)は、400〜2000kg/m3が好ましく、600〜1800kg/m3がより好ましく、700〜1400kg/m3が更に好ましく、800〜1200kg/m3がより更に好ましい。本発明の水硬性組成物として、粗骨材を含有する超高強度コンクリートが挙げられる。
【0036】
本発明の水硬性組成物は、材齢1日強度が25N/mm2以上、更に30N/mm2以上、より更に40N/mm2以上であることが好ましい。材齢1日強度は、JIS A1108に基づいて測定されたものである。このような材齢1日強度を達成するために、水/水硬性粉体重量比を小さくする、セメントの種類を選択する、共重合体(I)のアクリル酸単位を調整する、早強剤を併用する等が挙げられる。
【0037】
本発明の水硬性組成物は、硬化体が火炎等に曝され加熱された時の爆裂防止の観点から、合成繊維等の繊維を含有することが好ましい。繊維は、例えば100℃で軟化又は溶融することで体積減少又は分解・揮発する長さが6〜50mm、直径が5〜500μmの合成繊維が挙げられる。硬化体が加熱された際には、繊維が体積減少又は分解・揮発することで加熱による硬化体の膨張による歪を緩和し、硬化体の爆裂を防止することができる。合成繊維としては、ポリアセタール繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の合繊繊維、レーヨン繊維等の再生繊維が挙げられ、中でもポリアセタール繊維が好ましい。繊維は水硬性組成物に対して0.01〜5.0体積%、更に0.05〜3.5体積%、80N/mm2以上の高強度コンクリートを得る観点から、より更に0.1〜3.5体積%用いることが好ましい。
【0038】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物の乾燥収縮や水/水硬性粉体重量比の小さい領域で硬化後の強度を維持しつつ自己収縮を抑制する観点から膨張材を含有することが好ましい。膨張材は、JIS A 6202に制定されているものを使用できる。具体的には、カルシウムサルホアルミネートを主成分とする膨張材及び生石灰を主成分とする膨張材から選ばれる膨張材が挙げられる。膨張材は水硬性粉体(特にセメント)100重量部に対して1〜30重量部、更に3〜20重量部、より更に5〜15重量部用いることが好ましい。
【0039】
本発明の水硬性組成物は、共重合体(I)以外のその他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系等の高性能減水剤;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;炭素数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物、平均分子量400〜10000のポリアルキレングリコール等の収縮低減剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0040】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体重量比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量比、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が0.33以下であり、0.25以下、更に0.20以下、更に0.18以下、更に0.15以下であることが好ましい。水硬性組成物の粘性低減効果、練り上がり速度向上効果の発現及び流動保持性の観点から、水/水硬性粉体重量比は0.07〜0.25であることが好ましく、0.08〜0.20がより好ましく、0.08〜0.18が更に好ましく、0.08〜0.15がより更に好ましい。なお、水硬性組成物が微粒子及び/又は膨張材を含有する場合(例えば、微粒子及び/又は膨張材が配合された水硬性粉体を用いる場合)、水硬性粉体と微粒子及び/又は膨張材との合計量を水硬性粉体の量としてW/P又はW/Cを算出する。
【0041】
本発明により、共重合体(I)を含有する、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物用の分散剤が提供される。かかる分散剤は、共重合体(I)を有効分換算で80〜100重量%、更に90〜100重量%、より更に95〜100重量%含有することが好ましい。
【0042】
また、本発明により、水、水硬性粉体、及び粗骨材を含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物を製造する、水硬性組成物の製造方法であって、
共重合体(I)、水及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程と、
前記モルタルと粗骨材とを混練する工程と、
を有する水硬性組成物の製造方法が提供される。共重合体(I)は、有効分換算で、水硬性粉体100重量部に対して、0.01〜5.0重量部、更に0.05〜4.0重量部、より更に0.1〜3.0重量部用いることが好ましい。共重合体(I)は、水溶液で用いることができるが、水溶液中の共重合体(I)の濃度や水溶液の使用量は、水硬性粉体に対する共重合体(I)の割合が上記範囲となるように適宜設定できる。共重合体(I)、水及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程における混練時間は、水/水硬性粉体重量比が0.33〜0.25超では0.5〜3分が好ましく、0.25〜0.15超では1.5〜10分が好ましく、0.15以下では3〜30分が好ましい。モルタルと粗骨材とを混練する工程は、水/水硬性粉体重量比が0.33以下では1〜4分が好ましい。水/水硬性粉体重量比が0.33〜0.25超では、モルタルを調製する工程で粗骨材も混練し、水硬性組成物を調整してもよい。なお、練り上がりの終了は、目視でモルタル又は水硬性組成物が均一になり、混練機に付着したモルタルが流動性を有することを確認することで判断できる。
【0043】
また、モルタルを調製する工程及びモルタルと粗骨材を混練する工程で用いる混練機は、傾胴ミキサ、パン型ミキサ、強制二軸ミキサ、ジクロスミキサ などが使用でき、中でも強制二軸ミキサ(例えば IHI社製DAM60)やジクロスミキサ(例えば 北川鉄工所製のWHQ−60A)の使用が好ましい。
【実施例】
【0044】
製造例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水6118gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で78℃まで昇温した。次にメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート5100gとアクリル酸631gを水2300gに混合溶解した単量体溶液と、3−メルカプトプロピオン酸33gを水177gに溶解したもの、過硫酸アンモニウム31gを水179gに溶解したものの3者をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに過硫酸アンモニウム15gを水75gに溶解させたものを0.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて78℃に温度を維持し、熟成を行うことで重合反応を完結させた。得られたものを48%水酸化ナトリウム水溶液で中和することで、pH5.5、重量平均分子量41,600、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.21の共重合体(A−1)の水溶液を得た。
【0045】
製造例2〜10及び比較製造例1〜5
単量体の種類及び比率を表1のように変更し、製造例1に準じて共重合体を製造した。
【0046】
【表1】


【0047】
表中の記号は以下の意味である。
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・PEGA:ポリエチレングリコールアクリレート
・PEGMA:ポリエチレングリコールメタクリレート
・EOp:エチレンオキサイド平均付加モル数
【0048】
実施例1及び比較例1
表1の共重合体を用いて、表2の配合1によりコンクリートを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0049】
(1)コンクリート配合1
【0050】
【表2】

【0051】
W:上水道水
C:シリカフュームプレミックスセメント(太平洋セメント製;密度=3.07g/cm3
S:硬質砂岩砕砂(細骨材、密度=2.57g/cm3
G1:関西 シンワ砕石(粗骨材、密度=2.61g/cm3、粗粒率FM=7.12)
G2:関西 シンワ砕石(粗骨材、密度=2.61g/cm3、粗粒率FM=6.74)
E:膨張材 Σ2000(電気化学工業製;密度=3.07g/cm3
PA:繊維 ポリアセタール繊維(ダイワボウポリテック製 白色 毛状 長さ:約10mm、密度1.40g/cm3(実測値))
W/P=W/(C+E)
なお、粗骨材の含有量は、(433+433)=866kg/m3、(433/2.61+433/2.61)=332L/m3である。
【0052】
(2)コンクリートの調製
配合1に従い、30リットルの強制2軸ミキサに、セメント及び細骨材を投入し30秒空練りを行った。そこへ表1に記載する共重合体(セメント分散剤)を含む水を投入し、360秒(6分)混練することでモルタルペーストを調整した。さらにここへ砂利を投入し120秒(2分)混練することでコンクリートを得た。
【0053】
(3)評価方法
調製した各コンクリートについて、スランプフロー、材齢1日後の圧縮強度を、それぞれJIS A1101、JIS A1108にしたがって測定した。コンクリートの練り上がり速度に関しては、モルタル段階での性状変化より判断し、またコンクリートの粘性を評価するため、練り混ぜから10分後に、Lフロー速度を測定した。Lフロー速度とは、L型フロー試験法で測定した値であり、Lフロー速度が大きい程、コンクリートの粘性が低く、作業性がよいことを示す。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
(注)
1)重量%は、セメントに対する分散剤有効分の重量%である。セメント分散剤は、30重量%濃度の水溶液として使用し、水溶液の水の量は、練り水の量に含む。
2)比較例1−5は実施例1−2と同一流動性(スランプフロー値)となるようにコンクリートを調製して比較したものである。流動性が同一でも、実施例1−2の方が練り上がり性、粘性、硬化物性のいずれも優れる。
【0056】
なお、表中、セメント分散剤C−1、C−2、D−1、D−2は以下のものである。
・C−1:共重合体A−2/共重合体B−3=50/50(重量比)の混合系
・C−2:共重合体A−2/共重合体B−2=80/20(重量比)の混合系
・D−1:共重合体A−2/共重合体B−2=20/80(重量比)の混合系
・D−2:共重合体B−2/共重合体B−4=50/50(重量比)の混合系
【0057】
実施例2及び参考例
表1の共重合体A−2及びB−1を用いて、表4の配合2及び配合3によりコンクリートを製造し、評価を行った。結果を表5に示す。
【0058】
(1)コンクリート配合2及び配合3
【0059】
【表4】

【0060】
W:上水道水
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製/住友大阪セメント製=1:1(重量比);密度=3.16g/cm3
S:城陽産 山砂(細骨材、密度=2.55g/cm3
G1:鳥形山産 石灰砕石2010(粗骨材、密度=2.72g/cm3、粗粒率FM=6.92)
G2:鳥形山産 石灰砕石1005(粗骨材、密度=2.72g/cm3、粗粒率FM=5.87)
W/P=W/C
なお、粗骨材の含有量は、配合2が(729+182)=911kg/m3、(729/2.72+182/2.72)=335L/m3、配合3も同様に、911kg/m3、335L/m3である。
【0061】
(2)コンクリートの調製
実施例2及び比較例2では、配合2に従い、30リットルの強制2軸ミキサに、セメント、細骨材及び砂利を投入し10秒空練りを行った。そこへ表1の共重合体(セメント分散剤)A−2又はB−1を含む水を投入し、120秒(3分)混練することでコンクリートを得た。
【0062】
また、参考例では、配合3に従い、30リットルの強制2軸ミキサに、セメント、細骨材及び砂利を投入し10秒空練りを行った。そこへ表1の共重合体(セメント分散剤)A−2又はB−1を含む水を投入し、90秒(1.5分)混練することでコンクリートを得た。
【0063】
(3)評価方法
調製した各コンクリートについて、スランプフロー、材齢1日後の圧縮強度を、それぞれJIS A1101、JIS A1108にしたがって測定した。コンクリートの練り上がり速度に関しては、性状変化より判断し、また配合2はコンクリートの粘性を評価するため、スランプフローの50cm到達時間を測定した。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
1)重量%は、セメントに対する分散剤有効分の重量%である。セメント分散剤は、23重量%濃度の水溶液として使用し、水溶液の水の量は、練り水の量に含む。
【0066】
配合2(W/P=0.30)では、セメント分散剤としてA−2を用いた実施例2−1の方が、B−1を用いた添加量が同じ比較例2−1及び流動性が近い添加量のより多い比較例2−2よりもコンクリート粘性、練り上がり性、硬化物性の全てで優れている。一方、配合3(W/P=0.45)では、硬化物性はA−2が優れていたが、セメント分散剤による練り上がり時間に差がなかった。
【0067】
実施例3
表1の共重合体A−2を用いて、表6の配合4によりコンクリートを製造し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0068】
(1)コンクリート配合4
【0069】
【表6】

【0070】
W:上水道水
C:シリカフュームプレミックスセメント(太平洋セメント製;密度=3.07g/cm3
S:硬質砂岩砕砂(細骨材、密度=2.57g/cm3
G1:関西 シンワ砕石(粗骨材、密度=2.61g/cm3、粗粒率FM=7.12)
G2:関西 シンワ砕石(粗骨材、密度=2.61g/cm3、粗粒率FM=6.74)
W/P=W/C
s/a=(S/2.57)/(S/2.57+G1/2.61+G2/2.61)
なお、粗骨材の含有量は、(186+186)=372kg/m3、(186/2.61+186/2.61)=143L/m3である。
【0071】
(2)コンクリートの調製
配合4に従い、30リットルの強制2軸ミキサに、セメント及び細骨材を投入し30秒空練りを行った。そこへ表1の共重合体(セメント分散剤)A−2を含む水を投入し、1500秒(25分)混練することでモルタルペーストを調整した。さらにここへ砂利を投入し180秒(3分)混練することでコンクリートを得た。
【0072】
(3)評価方法
調製したコンクリートについて、スランプフローを、JIS A1101にしたがって測定した。結果を表7に示すが、W/P=0.08の水の少ない系であっても均一に混合でき、良好なスランプフローを有する水硬性組成物が得られた。
【0073】
【表7】

【0074】
1)重量%は、セメントに対する分散剤有効分の重量%である。セメント分散剤は、30重量%濃度の水溶液として使用し、水溶液の水の量は、練り水の量に含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸からなる構成単位と下記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体と、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下であり、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物。
【化1】


〔式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、qは0〜2の整数を表し、rは0〜1の整数を表す。〕
【請求項2】
さらに、シリカフュームを含有する請求項1記載の水硬性組成物。
【請求項3】
さらに、合成繊維を含有する請求項1又は2記載の水硬性組成物。
【請求項4】
さらに、膨張材を含有する請求項1〜3の何れか1項記載の水硬性組成物。
【請求項5】
前記共重合体の構成単位中、アクリル酸からなる構成単位と一般式(A)で表される構成単位の合計の割合が92モル%以上である請求項1〜4の何れか1項記載の水硬性組成物。
【請求項6】
アクリル酸からなる構成単位と下記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体を含有する水硬性組成物用の分散剤であって、水硬性粉体と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物に用いられる分散剤。
【化2】


〔式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、qは0〜2の整数を表し、rは0〜1の整数を表す。〕
【請求項7】
水、水硬性粉体、及び粗骨材を含有し、水/水硬性粉体重量比が0.33以下で、前記粗骨材の含有量が300〜1100kg/m3である水硬性組成物を製造する、水硬性組成物の製造方法であって、
アクリル酸からなる構成単位と下記一般式(A)で表される構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体、水及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程と、
前記モルタルと粗骨材とを混練する工程と、
を有する水硬性組成物の製造方法。
【化3】


〔式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、qは0〜2の整数を表し、rは0〜1の整数を表す。〕

【公開番号】特開2009−298645(P2009−298645A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154594(P2008−154594)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】