説明

水系プライマー−サーフェーサー層とそれに適用されたトップコートとを含む多層コーティングの製造方法

水系プライマー−サーフェーサー層と、それに適用されたトップコートとを含む多層コーティングを基材上に製造するための方法であり、水系プライマー−サーフェーサー層が水系プライマー−サーフェーサーから基材に適用され、焼成され、次いでトップコートが適用され、前記水系プライマー−サーフェーサーが、100〜250mg KOH/gのヒドロキシル数を有するバインダー固形分を有し、ヒドロキシ官能性バインダーのための硬化剤(架橋剤)として遊離またはブロック化ポリイソシアネートを2:1超〜5:1のOH/NCOのモル比において含有し、前記水系プライマー−サーフェーサー層が、適用された後かつ焼成前に、30〜300秒間15〜40℃において蒸発させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系プライマー−サーフェーサー層と、それに適用されたトップコートとを含む多層コーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車のコーティングは概して、耐腐蝕性電着プライマーと、それに適用されるプライマー−サーフェーサー層(チッピング防止およびレベリング機能を有する中間コーティング層)と、1層トップコートまたは2層コートベースコートとクリアコートとを含む2層コートの形の最終色彩および/または特殊効果トップコートとを含む。
【0003】
この種類の多層コーティングの適用のための多くのコーティングプラントにおいて、溶剤系プライマー−サーフェーサーが噴霧によって適用される。環境保護の理由から、これらを水系プライマー−サーフェーサーと取り替えることが考えられている。しかしながら、有機溶剤ベースのプライマー−サーフェーサー(非水性プライマー−サーフェーサー)を適用するためのコーティングプラントにおいてプライマー−サーフェーサー層のための予備乾燥条件は水系プライマー−サーフェーサーを適用するように特別に設計されたコーティングプラントにおいての予備乾燥条件と異なっているので、これは、今までに公知の水系プライマー−サーフェーサーを用いて容易に可能ではない。有機溶剤ベースのプライマー−サーフェーサーを適用するように設計されたコーティングプラントにおいて、プライマー−サーフェーサー層は先ず、適用された後かつ焼成される前に30〜300秒間、例えば、15〜40℃の空気温度において蒸発(蒸発分離)させられる。
【0004】
他方、水系プライマー−サーフェーサーは、蒸発の他に、ふくれを生じずに後続の焼成を可能にする予備乾燥された水系プライマー−サーフェーサー層を製造するために高温の空気温度においての予備乾燥工程を必要とする(米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)の実施例の節および辞書Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben,New York,Thieme,1998年、見出し語「Hydrofueller」を参照のこと)。水系プライマー−サーフェーサーを適用するためのコーティングプラントにおいて、蒸発および予備乾燥の役割を果たす段階は、例えば合計11〜19分持続し、使用される空気温度は、例えば、20〜100℃の範囲である。例えば、水系プライマー−サーフェーサーから適用されたコーティング層は、最初に、十分な予備乾燥のために1〜5分間20〜26℃において蒸発させられ、次いで10〜14分間、60〜100℃の温風で予備乾燥される。
【0005】
有機溶剤ベースのプライマー−サーフェーサーを適用するように設計されたコーティングプラントにおいての蒸発時間は、車体生産コーティング方法の生産目標(単位時間当たりのコーティングされる車体の数)によって予め決められた蒸発領域の構造長さおよびベルト速度から得られる。有機溶剤ベースのプライマー−サーフェーサーコーティング剤の場合、この蒸発は十分であるが、水系プライマー−サーフェーサーについては、これは十分ではない。これは、蒸発を行なうことができるだけで高温においての予備乾燥をできないコーティングプラント内で水系プライマー−サーフェーサーに対して使用する可能性を除くことを意味する。
【0006】
米国特許公報(特許文献3)には、自動車生産コーティングプラントにおいて車体上に2層色彩および/または特殊効果トップコートを製造する方法が開示されている。この方法において、クリアコートを適用する前に蒸発させられた、水系色彩および/または特殊効果ベースコートから適用されたベースコート層に透明なトップコート層がクリアコーティング剤から適用され、2つのコーティングが一緒に焼成される。有機溶剤を含有すると共に40〜70%の高固形分値を有する水系ベースコートペイントがこの方法において用いられる。水系ベースコートの層が適用された後かつ透明なトップコート層が適用される前に、ベースコート層が、30〜180秒間、25〜45℃の循環空気によって、水系ベースコート層を備えた表面積に対して0.10〜0.70m/sの空気流量によって、蒸発させられる。
【0007】
非水性プライマー−サーフェーサーに代表的な種類の蒸発段階だけしかないまま、コーティングされないまたはプレコーティングされた基材上に水系プライマー−サーフェーサー層とトップコート層とを含む多層コーティングを製造するための方法を提供することが望ましい。特に、前記方法は、非水性プライマー−サーフェーサーに対して使用するように設計され、プライマー−サーフェーサーコーティング層の蒸発だけができ後続の予備乾燥ができない自動化生産コーティングプラント内で水系プライマー−サーフェーサーに対して使用することを可能にするはずである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,047,294号明細書
【特許文献2】米国特許第5,210,154号明細書
【特許文献3】米国特許第6,548,119B1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、水系プライマー−サーフェーサーコーティング剤を調合する時に以下の条件に従うことによって、およびそこから適用されたコーティングを蒸発する間に以下の作業条件に従うことによって達成可能である。
【0010】
従って、本発明は、水系プライマー−サーフェーサー層とそれに適用されたトップコートとを含む多層コーティングを基材上に製造するための方法に関するものであり、そこにおいて、水系プライマー−サーフェーサー層が水系プライマー−サーフェーサーから基材に適用され、焼成され、次いでトップコートが適用され、前記水系プライマー−サーフェーサーが、100〜250mgKOH/gのヒドロキシル数を有するバインダー固形分を有し、前記ヒドロキシ官能性バインダーのための硬化剤(架橋剤)として遊離またはブロック化ポリイソシアネートを2:1超〜5:1、好ましくは2:1超〜3:1のOH/NCOのモル比において含有することを特徴とし、前記水系プライマー−サーフェーサー層は、適用された後かつ焼成前に、30〜300秒間15〜40℃において蒸発させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ポリイソシアネート硬化剤のバインダー成分/NCOのOHのモル比は2:1〜5:1より大きく、本発明に本質的な特徴である。OH/NCOのモル比がこの値よりも小さくなると、本発明の方法において用いられる水系プライマー−サーフェーサーが噴霧によって適用できないレオロジー性質を有する恐れがある。例えば、顕著なチキソトロピー効果が引き起こされる場合があり、それはコーティングプラントにおいて利用可能な通常の噴霧装置を用いて微粒化することを不可能にする。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語「OH/NCOのモル比」は、水系プライマー−サーフェーサー中の樹脂固体(バインダー固形分と硬化剤によって寄与された固形分との合計)の架橋化学量論を定義する。ここで、ブロック化イソシアネート基と遊離イソシアネート基との両方がNCO基として計算される。これは、OH/NCOのモル比がバインダー固形分中のOH基の、樹脂固形分中のポリイソシアネート硬化剤の遊離NCO基に対する比、または樹脂固形分中のブロック化ポリイソシアネート硬化剤のブロック化NCO基に対する比を意味する場合があり、または水系プライマー−サーフェーサーが遊離およびブロック化ポリイソシアネートの両方を含有することを意味する。この後者の場合、OH/NCOのモル比は、バインダー固形分中のOH基の、樹脂固形分中の遊離およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤の全遊離およびブロック化NCO基に対する比を意味する。
【0013】
本発明によって、水系プライマー−サーフェーサーが用いられる。水、少なくとも1つのヒドロキシ官能性バインダー、少なくとも1つの遊離またはブロック化ポリイソシアネート硬化剤、少なくとも1つのエキステンダー(充填剤)および、任意選択的に、他のバインダーまたは硬化剤の他に、それらはまた、例えば、コーティングにおいて一般的である有機溶剤、顔料および/または添加剤を含有してもよい。本発明の方法において用いられる水系プライマー−サーフェーサーは、例えば、45〜65重量%の固形分を有する。水系プライマー−サーフェーサー中の重量による固形分は、コーティングにおいて一般的である樹脂固形分、顔料、エキステンダーおよび非揮発性添加剤によって形成される。顔料+エキステンダーの、樹脂固形分に対する重量比は、例えば、0.5:1〜1.6:1である。
【0014】
以下に説明される、水系プライマー−サーフェーサー層のために本発明によって従わなければならない蒸発条件の他に、水系プライマー−サーフェーサーは、100〜250mg KOH/g、好ましくは150〜220mg KOH/gのヒドロキシル数を有するバインダー固形分を有し、遊離および/またはブロック化ポリイソシアネートをヒドロキシ官能性バインダーのための硬化剤として2:1超〜5:1、好ましくは、2:1超〜3:1のOH/NCOのモル比において含有することが本発明の本質的な特徴である。前記範囲の低い方のヒドロキシル数によって、OH/NCOのモル比は好ましくは下限である。
【0015】
水系プライマー−サーフェーサーは、1パックシステムであってもよく、遊離ポリイソシアネート硬化剤を含有する場合、2パックシステムであってもよい。いずれの場合も、それらは、硬化してウレタン基を形成することができるコーティング剤である。
【0016】
水系プライマー−サーフェーサーに含有されるバインダーは、通常のイオン性、好ましくはアニオン性、および/または非イオン性安定化バインダーである。アニオン安定化は好ましくは、バインダー中の少なくとも部分中和されたカルボキシル基によって達成されるのに対し、非イオン性安定化は好ましくは、バインダー中の側鎖または末端ポリエチレンオキシド単位によって達成される。
【0017】
バインダー自体は、当業者に公知の通常のバインダー、例えば、通常のポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル酸コポリマー樹脂またはこれらのクラスのバインダーから誘導されたハイブリッドポリマーである。
【0018】
硬化剤として遊離またはブロック化された形で水系プライマー−サーフェーサーにおいて用いられてもよいポリイソシアネートの例は、ノナントリイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび(シクロ)脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビ−シクロヘキシルメタンジイソシアネートまたはそれらの混合物およびこれらのジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート、例えば、イソシアネート基に結合する残基にヘテロ原子を含有するポリイソシアネートである。これらの例は、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレチジオン(uretdione)基、ウレタン基および/またはビウレット基を有するポリイソシアネートである。
【0019】
上述のポリイソシアネート硬化剤のための適したブロッキング剤は通常のブロッキング剤、例えばCH−酸性、NH−、SH−またはOH−官能性ブロッキング剤である。例は、アセチルアセトン、アルキルアセト酢酸、ジアルキルマロネート、脂肪族または脂環式アルコール、オキシム、ラクタム、イミダゾール、ピラゾールおよびトリアゾールである。
【0020】
水系プライマー−サーフェーサーの製造において、遊離またはブロック化ポリイソシアネートはそのままでまたは水および/または有機溶剤を含有する調製試料として添加されてもよい。
【0021】
遊離またはブロック化ポリイソシアネート硬化剤の他に、水系プライマー−サーフェーサーはまた、付加的な硬化剤を、例えば、樹脂固形分の20重量%まで、好ましくは、10重量%以下の量において含有してもよい。付加的な硬化剤の例は、ベンゾグアナミン樹脂またはメラミン樹脂などのアミノ樹脂である。
【0022】
本発明の方法において用いられる水系プライマー−サーフェーサーは、通常のエキステンダーと、任意選択的に、色彩および/または特殊効果顔料とを含有する。エキステンダーの例は、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、タルカムおよびカオリンである。無機または有機色彩顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料およびペリレン顔料である。特殊効果顔料の例は、例えばアルミニウム、銅または他の金属の金属顔料、金属酸化物でコーティングされた金属顔料などの干渉顔料、例えば二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム、二酸化チタンでコーティングされたマイカなどのコーティングされたマイカ、黒鉛効果を有する顔料、プレートリット状酸化鉄およびプレートリット状銅フタロシアニン顔料である。
【0023】
水系プライマー−サーフェーサーは、コーティングにおいて一般的である量において、例えば、それらの樹脂固形分に対して0.1〜10重量%の総量において、コーティングにおいて一般的である添加剤を含有してもよい。添加剤の例は、湿潤剤、接着力促進物質、触媒、レベリング剤、クレーター防止剤および増粘剤である。
【0024】
特に、水系プライマー−サーフェーサーが、鉱油ベースの消泡剤および/または脂肪酸(エステル)ベースの消泡剤を樹脂固形分に対して0.1〜7.5重量%含有する場合、有利であることがわかった。例は、アジタン(登録商標)281(ハイブロン(Heilbronn)のミュンツィンク・ヒェミー(Muenzing Chemie)製)、アディトール(Additol)(登録商標)VXW4909、アディトール(登録商標)VXW4926およびアディトール(登録商標)VXW4973(全てサーフェス・スペシャルティズ(Surface Specialties)製)である。
【0025】
また、水系プライマー−サーフェーサーは概して、1つまたは複数の有機溶剤を合計、例えば、2〜15重量%の量において含有する。
【0026】
水系プライマー−サーフェーサー中の有機溶剤の組成は、ここでは好ましくは、コーティングにおいて一般的である、例えば、150℃においてまたはそれ以上から、例えば、280℃未満までで沸騰する高沸点溶剤を70〜100重量%で含む。例は、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、イソデカノール、イソトリデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、ブトキシプロパノール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ヘキシルグリコール、メトキシブタノール、メチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシプロピルアセテート、エチルグリコールアセテート、エチルエトキシプロピオネート、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネートおよび脂肪族、芳香族またはテルペン炭化水素であり、各々の温度範囲において沸騰する。
【0027】
水系プライマー−サーフェーサーに含有されてもよく水系プライマー−サーフェーサー中の有機溶剤組成物の好ましくは30重量%以下を占めてもよい、例えば、150℃未満で沸騰する低沸点有機溶剤の例は、C1−C4−アルコール、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルグリコール、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよび脂肪族、芳香族またはテルペン炭化水素であり、各々の温度範囲において沸騰する。
【0028】
水系プライマー−サーフェーサーの適用、蒸発段階および焼成を含む本発明の方法は概して、生産コーティングプラント、特に、自動化生産コーティングプラントにおいて行なわれる。
【0029】
本発明の方法において、水系プライマー−サーフェーサーは、単一材料または混合構造物において互いに組み合わされた複数の材料から作製されてもよい基材に適用される。概して、それらは金属またはプラスチック基材である。透明なままであることを意図する、ガラス基材、例えば風防およびウインドウ、および透明なプラスチック基材および被覆材はここに含まれない。これらは典型的に予備処理され、すなわちプラスチック基材は、例えば、プラスチックプライマーを備えてもよく、金属基材は概して、電着プライマー、特に、カソード電着コーティングを有する。基材は好ましくは自動車の車体または車体部品である。
【0030】
水系プライマー−サーフェーサーは、例えば、15〜50μm、好ましくは20〜40μmの乾燥膜厚において1つまたは複数の吹付け適用工程において噴霧によって適用される。
【0031】
上述の従わなければならない条件の他に、本発明の方法において用いられる水系プライマー−サーフェーサーを調合する時に、水系プライマー−サーフェーサーから適用されるコーティングは、適用された後かつ焼成前に30〜300秒間、好ましくは、60〜240秒間、15〜40℃(空気温度)において、好ましくは、循環空気条件下でおよびこの場合、特に、水系プライマー−サーフェーサー層を備えた表面に対して例えば、0.10〜0.70m/s、好ましくは0.15〜0.60m/sの空気流量で(水および任意選択の有機溶剤を除去するために)蒸発させられるのが本発明の本質的な特徴である。(蒸発の間に一般的である温度に比べて)高温においての付加的な予備乾燥工程、例えば、60〜100℃の温風による10〜14分の予備乾燥を必要とせず、したがって、このような予備乾燥は好ましくは行なわれず、換言すれば、蒸発工程だけがあり、予備乾燥工程はないのが好ましい。
【0032】
適用された水系プライマー−サーフェーサー層を蒸発させる段階は概して、生産コーティングプラントのプライマー−サーフェーサー蒸発領域、特に、自動車生産コーティングプラント内のプライマー−サーフェーサー蒸発領域において行なわれる。これは、自動車生産コーティングの実施例に関して説明される。この間、蒸発手順のための30〜300秒の時間は、例えば、5〜30mの自動車生産コーティングプラントのプライマー−サーフェーサー蒸発領域の構造長さおよびそこで一般的な、例えば、3〜10m/分のベルト速度から得られる。
【0033】
好ましい循環空気運転の場合、水系プライマー−サーフェーサーでコーティングされた表面積に対して空気流量は、例えば、0.10〜0.70m/sである。これは、立方メートル単位で毎秒、蒸発領域を通過する空気の容積と水系プライマー−サーフェーサーでコーティングされた蒸発領域の表面積の商として計算され、例えば、20〜200平方メートルのオーダーで蒸発させられなければならない。本発明の方法において蒸発領域を通過する空気の容積は、例えば、毎秒、蒸発領域のリニアメートル当たり1〜2立方メートルである。水系プライマー−サーフェーサーでコーティングされた、蒸発させられなければならない蒸発領域の表面積は、一度にプライマー−サーフェーサー蒸発領域にあるコーティングされた車体の数、例えば、1〜5の車体から計算される。典型的に、プライマー−サーフェーサーコーティングを受容する個人専用の車体の表面積は、例えば、15〜35平方メートルのオーダーであり、商用車の場合、20〜65平方メートルのオーダーである。
【0034】
プライマー−サーフェーサーコーティングを受ける表面積はここでは、後でトップコートを備える単一車体の表面積を意味するだけでなく、例えば、車体の内部のトップコーティングされない水系プライマー−サーフェーサーを備えた表面積の一切の部分を含める。
【0035】
好ましいように、循環空気条件下で蒸発が行なわれる場合、例えば、循環空気が1立方メートル当たり5〜15gの水を含有するように処置がなされてもよい。この場合、毎秒、蒸発領域を通過する空気の容積の一部、例えば、5〜20%、好ましくは5〜10%が廃空気として蒸発領域を出て、相応する量の新鮮な空気が添加され、循環空気に混合されることもまた、可能である。新鮮な空気は好ましくは、1立方メートル当たり水15g未満、特に好ましくは5〜12gを含有する。混合された新鮮な空気の水含有量は、空気の圧縮および/または空気からの水の濃縮または吸収などの通常の空気脱湿方法によって調節されてもよい。
【0036】
循環空気は有利には、基材において測定されたとき、4〜8m/sの流量で移動される。好ましくは、それは、蒸発させられるプライマー−サーフェーサー層を備えた基材上に、例えば、自動車の車体上に下方におよび側面から誘導される乱空気流である。前記空気は有利には、蒸発させられるプライマー−サーフェーサー層に均一かつ垂直に供給される。空気は有利には下方に出される。
【0037】
蒸発領域は、一定運転条件下でまたは単一または複数の運転パラメータを変化させて運転されてもよい。運転パラメータの変化は、全構造長さにわたってまたは蒸発領域の構造長さの1つまたは複数の部分にわたって連続的または急な変化によって行なわれてもよい。この場合、蒸発領域は、1つまたは複数の、好ましくは1〜3のエアロックによって互いに分離されてもよい領域に分けられてもよい。しかしながら、蒸発の間の運転パラメータの変化は常に、全体として見られるとき蒸発工程のために本発明によって予め決められた範囲内である。例えば、蒸発領域を2領域に分けることが可能であり、水系プライマー−サーフェーサーでコーティングされた車体は、最初に、低い空気温度、例えば、15〜30℃の第1の領域において蒸発させられ、次いでより高い空気温度、例えば、30〜40℃の第2の領域において蒸発させられる。
【0038】
空気循環によって、空気流量は、例えば、両方の領域において同じレベルであるかまたは異なるように、例えば、第2の領域においてよりも第1の領域において低いように選択される。例えば、基材において測定されるとき、循環空気の流量は、第2の領域において8m/sより多くてもよい。しかしながら、蒸発領域または蒸発手順が全体として見られる場合、平均空気流量は予め決められた範囲内である。
【0039】
蒸発した水系プライマー−サーフェーサー層は、例えば、80〜170℃の目標温度においてそれらを焼成することによって通常の方法によって熱硬化される。焼成された水系プライマー−サーフェーサー層はふくれを生ぜず、水系プライマー−サーフェーサーについて本質的に一般的であるように、焼成する前に高温においての予備乾燥を全く行なわれない。
【0040】
水系プライマー−サーフェーサー層が焼成されると、通常の色彩および/または特殊効果トップコートは、1層トップコートとしてかまたは色彩および/または特殊効果ベースコート層と保護光沢付与クリアコート層とを含む2層トップコートとしてのどちらかで、当業者に公知の通常の方法で適用されてもよい。本発明の方法は、水系プライマー−サーフェーサーとトップコートとを含む多層コーティングを製造することを可能にし、そこにおいて水系プライマー−サーフェーサーは焼成する前に蒸発させられる必要があるだけであり、高温においての予備乾燥を全く必要としない。本発明の方法を用いて、非水性プライマー−サーフェーサーに対して使用するように本質的に設計され、プライマー−サーフェーサー層について蒸発段階だけを可能にし、付加的な予備乾燥をできない自動化生産コーティングプラント内で、水系プライマー−サーフェーサーに対して使用することが可能である。水系プライマー−サーフェーサーに対して使用するために本質的に不適当である、コーティングプラントの複雑な改造を避けることができる。本発明の本質的な特徴である条件が水系プライマー−サーフェーサーの調合において遵守され、かつ本発明に本質的である蒸発条件が水系プライマー−サーフェーサー層について遵守される限り、1つの生産コーティングプラント内で水系プライマー−サーフェーサーと非水性プライマー−サーフェーサーとの両方が適用されるように本発明の方法を実施することもできる。
【0041】
以下の実施例は本発明を説明する。全ての部およびパーセンテージは、特に記載しない限り、重量に基づいている。
【実施例】
【0042】
(実際の条件下での自動車の車体のコーティングのシミュレーション)
a)以下の組成の水系プライマー−サーフェーサーを通常の方法で製造した(顔料およびエキステンダーをバインダーの一部の中で粉砕し、一切の欠けているバインダーおよび一切の欠けている成分に混合する):
43.2重量部のレシドロール(Resydrol)(登録商標)AM224w/40WA(サーフェス・スペシャルティズ(Surface Specialties)製の、樹脂固形分の217mgKOH/gのヒドロキシル数を有する脂肪酸改質アルキド樹脂の40重量%水性分散液)、
0.5重量部 エチルグリコールに溶かしたサーフィノル(Surfynol)(登録商標)104H(エア・プロダクツ(Air Products)製)の75重量%溶液
17重量部の二酸化チタン、
0.2重量部のカーボンブラック、
11.5重量部の硫酸バリウム、
1重量部のタルカム、
11重量部のロドコート(Rhodocoat)(登録商標)WT1000(メチルエチルケトキシムでブロック化され、樹脂固形分に対して14.9重量%の潜NCO含有量を有する脂肪族ポリイソシアネートの63重量%水性分散液、ローディア・ジンテク・GmbH(Rhodia Syntech GmbH)製)、
1重量部の、184〜217℃の範囲で沸騰する脂肪族炭化水素混合物、
2重量部のN−メチルピロリドン、
2重量部のブチルジグリコール、
1重量部のアジタン(Agitan)(登録商標)281(ミュンツィンク・ヒェミー(Muenzing Chemie)製の鉱油ベースの消泡剤)、
0.1重量部のジメチルエタノールアミン、
9.5重量部の脱イオン水。
【0043】
水系プライマー−サーフェーサーの樹脂固形分のOH/NCOのモル比は2.7:1であった。
【0044】
b)試験目的のコーティングブースにおいて、自動車の車体をコーティングした。電着プライマー層をコーティングされた長さ4.3mの自動車の車体を、実施例a)からの水系プライマー−サーフェーサーを用いて30μmの乾燥膜厚に吹付コーティングした。コーティングされた表面積は、約20平方メートルであった。次いで、それを20℃の空気循環(1立方メートル当たり水含有量12g)を有する長さ5mの蒸発領域内で2分間、蒸発させた。循環空気流量は、毎秒および蒸発領域の1リニアメートル当たり1.5立方メートルであった。次いで、焼成を18分間、150℃(目標温度)において行なった。得られたプライマー−サーフェーサー層は、ふくれを生じず、ベースコート/クリアコート2層コーティングを通常の方法でコーティングされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水系プライマー−サーフェーサー層を基材に適用する工程と、
(2)水および任意選択の有機溶剤を前記水系プライマー−サーフェーサー層から30〜300秒間にわたって15〜40℃において蒸発させる工程と、
(3)前記水系プライマー−サーフェーサー層を焼成し、トップコート層を前記水系プライマー−サーフェーサー層に適用して多層コーティングを前記基材上に形成する工程と
を含み、
前記水系プライマー−サーフェーサーが、100〜250mg KOH/gのヒドロキシル数を有するバインダー固形分を有し、ヒドロキシ官能性バインダーのための硬化剤(架橋剤)として遊離またはブロック化ポリイソシアネートを2:1超〜5:1のOH/NCOのモル比において含有することを特徴とする、基材上の多層コーティングの製造方法。
【請求項2】
前記水系プライマー−サーフェーサーが、鉱油ベースの消泡剤、脂肪酸ベースの消泡剤および脂肪酸エステルベースの消泡剤およびそれらの組合せからなる群から選択される消泡剤を樹脂固形分に対して0.1〜7.5重量%で含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水系プライマー−サーフェーサーが、少なくとも1つの有機溶剤を合計2〜15重量%の量において含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶剤が、150〜280℃未満の沸点を有する溶剤を70〜100重量%で含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が自動車の車体および車体部品から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発が、前記水系プライマー−サーフェーサー層を備えた表面区域に対して0.10〜0.70m/sの空気流量を有する循環空気条件下で行なわれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記トップコートが、1層トップコート、およびベースコート層とクリアコート層とを含む2層トップコートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−536085(P2007−536085A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513198(P2007−513198)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/015273
【国際公開番号】WO2005/110622
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】