説明

水素付加装置

【課題】
水素付加の高速応答性と水素付加反応率(転化率)をともに高める。
【解決手段】
水素付加反応を行う第一の反応器31と、第一の反応器31に接続され、第一の反応器31から液体の状態で供給される未反応物および反応生成物を含む液体供給物の水素付加反応をさらに行う第二の反応器32と、第一の反応器31および第二の反応器32の内の少なくともいずれか一方に水素を供給する水素供給口5aとを備え、第一の反応器31に、水素付加用の第一の触媒43と、第一の触媒43を担持する第一の触媒担体42と、第一の触媒43を加熱するための第一の加熱手段41と、第一の触媒43に向けて不飽和炭化水素を間欠噴霧供給する噴霧手段3,20とを備え、第二の反応器32に、水素付加用の第二の触媒53と、第二の触媒53を担持する第二の触媒担体52と、第二の触媒53を加熱するための第二の加熱手段51とを備える水素付加装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和炭化水素に水素を付加させる水素付加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料あるいは原子力を利用したエネルギー消費は、地球環境への影響、安全面などに種々の問題を抱えている。かかる状況下、最近では、発電用の燃料として水素が注目されてきている。水素は、水の電気分解により生成できる他、ほぼ無尽蔵に存在する。しかも、水素は、燃焼後に二酸化炭素を発生させないクリーンなエネルギー源である。
【0003】
水素をエネルギー源として利用する場合、最も問題になるのは、水素をいかに安全に貯蔵および運搬するかである。水素を高圧容器あるいは水素吸蔵合金内に貯蔵する方法は、水素の貯蔵能力が低く、かつ水素の爆発リスクがあるため、採用が難しい。
【0004】
一方、不飽和炭化水素に水素を付加させると、飽和炭化水素が生成し、飽和炭化水素から脱水素すると、不飽和炭化水素に戻ることが知られている。常温で固体あるいは液体の状態である炭化水素との反応を介して、水素を分子レベルで着脱すれば、常温で気体である水素を貯蔵するよりも安全に貯蔵・運搬可能である。
【0005】
このような発想の下、現在まで、炭化水素を利用した水素の貯蔵あるいは放出の開発が積極的に進められてきている。一例として、飽和炭化水素あるいは不飽和炭化水素をスプレーノズルを利用して触媒表面に噴霧し、水素貯蔵能あるいは水素放出能を高める方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2005−199189号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素の貯蔵を例にとると、水素付加の高速応答性と水素付加反応率(転化率)を共に高める必要がある。上述のスプレーノズルを利用して不飽和炭化水素を触媒表面に噴霧供給する場合、高速応答性は極めて高い。その一方で、転化率については、さらに高める必要がある。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、水素付加の高速応答性と水素付加反応率(転化率)を共に高めることができる水素付加装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、不飽和炭化水素に水素を付加させる水素付加装置において、水素付加反応を行う第一の反応器と、当該第一の反応器に接続され、第一の反応器から液体の状態で供給される未反応物および反応生成物を含む液体供給物の水素付加反応をさらに行う第二の反応器と、第一の反応器および第二の反応器の内の少なくともいずれか一方に水素を供給する水素供給口とを備え、第一の反応器に、水素付加用の第一の触媒と、その第一の触媒を担持する第一の触媒担体と、その第一の触媒を加熱するための第一の加熱手段と、その第一の触媒に向けて不飽和炭化水素を間欠噴霧供給する噴霧手段とを備え、上記第二の反応器に、水素付加用の第二の触媒と、その第二の触媒を担持する第二の触媒担体と、その第二の触媒を加熱するための第二の加熱手段とを備えた水素付加装置としている。このような構成の水素付加装置を用いると、噴霧手段により不飽和炭化水素を第一の触媒に供給した際に、不飽和炭化水素への水素付加反応を高速化でき、第一の反応器から供給される未反応物および反応生成物を含む液体供給物を第二の触媒に供給した際に、さらなる水素付加反応を行わせることができる。このため、高速応答性と高転化率の両方を実現できる。ここで、未反応物とは、水素が付加しなかった噴霧原料をいい、反応生成物とは、噴霧原料に水素が付加したものをいう。
【0009】
また、別の本発明は、上述の発明において、第一の反応器の底部に第一の開口部を設け、第二の反応器の上部に第二の開口部を設け、第一の開口部と第二の開口部とを対向させて、第一の反応器と第二の反応器とを上下2段につないだ構造を有し、第一の触媒から供給する液体供給物を第二の触媒の表面に接触させて、その表面にて水素付加反応を起こさせる水素付加装置としている。
【0010】
また、別の本発明は、上述の各発明において、さらに、噴霧手段を複数備えると共に、それら複数の噴霧手段の噴霧量および/または噴霧時間を制御するための制御手段を備える水素付加装置としている。このため、不飽和炭化水素の種類、第一の触媒および第二の触媒の温度、水素供給量等の条件の変化に応じて、水素付加反応が最適になるように制御できる。
【0011】
また、別の本発明は、上述の各発明における第一の触媒担体の形態を、布状、ハニカム状、フィン状、リング状、スパイラル状の内、少なくともいずれか1つとする水素付加装置としている。このように、水素付加装置の反応器あるいは第一の加熱手段の形態に応じて、第一の触媒担体の形態を、適宜選択できる。
【0012】
また、別の本発明は、上述の各発明における第二の触媒担体の形態を、粒状、粉末状、布状、ペレット状の内、少なくともいずれか1つとする水素付加装置としている。このように、水素付加装置の反応器あるいは第二の加熱手段の形態に応じて、第二の触媒担体の形態を、適宜選択できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素付加の高速応答性と水素付加反応率(転化率)を共に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る水素付加装置の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明で採用している水素付加反応について簡単に説明する。次に示す3種類の反応式は、不飽和炭化水素の水素付加反応を示す式である。これらの反応式に示すように、不飽和炭化水素への水素付加によって、飽和炭化水素が生成する。
【0016】
10+5H→C1018(ナフタレンの水素付加反応)
+3H →C12 (ベンゼンの水素付加反応)
+3H→C14(トルエンの水素付加反応)
【0017】
不飽和炭化水素のように炭素同士の結合に二重結合あるいは三重結合を含む炭化水素系の原料の水素付加反応を利用することによって、外部からの水素を貯蔵することができる。以後、デカリン、シクロヘキサンあるいはメチルシクロヘキサンのように、それ自体に存在する水素を外部に放出できる炭化水素系の原料を総称して飽和炭化水素と称し、ナフタレン、ベンゼンあるいはトルエンのように、外部からの水素と結合して水素を貯蔵できる炭化水素系の原料を不飽和炭化水素と称する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る水素付加装置1の概略構成図である。以下、不飽和炭化水素としてトルエンを原料に用いて、その水素付加反応によりメチルシクロヘキサンを生成する例にて、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
水素付加装置1は、水素付加反応を起こす場である反応器2と、不飽和炭化水素の一例であるトルエンを反応器2内に噴霧する噴霧手段の一例であるスプレーノズル3と、反応器2に供給する水素の量を制御するマスフローメータ4とを備えている。マスフローメータ4は、水素配管5を介して反応器2の上部の水素供給口5aに接続されている。反応器2の下部には、飽和炭化水素の一例であるメチルシクロヘキサン等の液体生成物と水素等の気体生成物を排出するための排出用配管6を介して気液分離器7が接続されている。気液分離器7には、さらに、液体生成物を送る送液用配管8を介して生成物用タンク9が接続されている。また、水素パージあるいは水素ブリードするための配管を、必要に応じて設けても良い。
【0020】
水素付加反応に供するトルエンは、原料タンク10に貯蔵されている。原料タンク10は、原料輸送配管11を介して送液ポンプ12に接続されている。送液ポンプ12は、原料輸送配管13を介してバルブ14に接続されている。バルブ14は、原料輸送配管15を介して原料リザーバータンク16に接続されている。原料リザーバータンク16は、トルエンを所定量貯蔵するためのタンクである。原料リザーバータンク16内のトルエンが少なくなると、原料タンク10からトルエンを供給する。原料リザーバータンク16は、原料輸送配管17を介して送液ポンプ18に接続されている。送液ポンプ18は、原料輸送配管19を介して噴射バルブ20に接続されている。噴射バルブ20は、原料輸送配管21を介してスプレーノズル3に接続されている。噴射バルブ20は、スプレーノズル3と同様、トルエンを反応器2内に向けて噴霧する噴霧手段の一部である。
【0021】
原料輸送配管21の途中からは、トルエンを原料リザーバータンク16に向けて戻すための原料逆輸送配管22が接続されている。原料逆輸送配管22は、バルブ23を経由して、原料逆輸送配管24に接続されている。原料逆輸送配管24は、原料リザーバータンク16に接続されている。原料輸送配管19の途中からは、原料輸送配管19内の圧を抜くための配管25が接続されている。配管25は、バルブ(背圧弁ともいう。)26を経由して、配管27に接続されている。配管27は、原料逆輸送配管24に接続されている。噴射バルブ20は、トルエンの噴霧量および/または噴霧時間を制御するための制御手段である制御装置28に接続されている。
【0022】
反応器2は、上下二段に分かれた構造を有している。反応器2の上部には、第一の反応器31が配置されている。反応器2の下部には、第二の反応器33が配置されている。第一の反応器31と第二の反応器32とは、それぞれの第一の開口部39および第二の開口部40を通じて、液体生成物が通過可能なように連接されている。第一の反応器31の内部には、第一の加熱手段であるヒータ41が配置されている。第一の触媒担体42は、布状の形状を有しており、その表面に第一の触媒43を担持したものである。ヒータ41は、第一の触媒担体42によって被覆されている。トルエンは、第一の触媒43に接触するように、スプレーノズル3から噴霧供給される。
【0023】
第二の反応器32の内部には、第二の加熱手段であるヒータ51が配置されている。第二の触媒担体52は、粒状の形状を有しており、その表面に第二の触媒53を担持したものである。第二の触媒担体52は、ヒータ51の周囲を埋めるように、第二の反応器32内に入れられている。
【0024】
上記の構成を有する水素付加装置1を用いて、トルエンの水素付加反応によりメチルシクロヘキサンを生成する方法について説明する。
【0025】
反応器2内を加圧して(好適な圧力は、0.3MPa)、ヒータ41,51を約200℃に加熱する。送液ポンプ12を駆動すると共にバルブ14を開いて、原料タンク10から原料リザーバータンク16に、トルエンを供給する。水素は、マスフローメータ4を通して水素供給口5aから反応器2内に供給される。続いて、送液ポンプ18を駆動して、原料リザーバータンク16からトルエンを原料輸送配管19内に供給し、制御装置28による制御の下、噴射バルブ20からトルエンを第一の触媒43に向けて噴霧する。原料輸送配管21内のトルエンは、バルブ23を開いて、原料リザーバータンク16内に戻される。また、バルブ26を開いて、原料輸送配管19内のトルエンを原料リザーバータンク16内に戻すと共に、原料輸送配管19内の圧力を下げる。
【0026】
第一の触媒43の表面では、トルエンの水素付加反応が進む。この反応により生成したメチルシクロヘキサン(反応生成物)の他、未反応のトルエン(未反応物)を含む液体供給物は、第一の触媒担体42から第二の反応器32内に向けて液体の状態で滴下する。滴下した液体は、ヒータ51にて加熱されている第二の触媒担体52の表面に接触する。第二の触媒担体52の表面に担持されている第二の触媒53では、滴下した液体状態の未反応トルエン(中間生成物が存在するが、中間生成物も含む)の水素付加反応が進む。第二の反応器32における各生成物および原料(水素等)は、気液分離器7によって、液体生成物と気体とに分離される。続いて、液体生成物のみが、生成物用タンク9内に入る。
【0027】
図2は、図1に示す制御装置28の内部構成を示す図である。
【0028】
制御装置28は、中央演算処理ユニット(CPU)45と、読み出し専用のメモリ(ROM)46と、読み書き可能なメモリ(RAM)47と、データインターフェイス(I/F)48,49とを備えている。CPU45、ROM46、RAM47、I/F48、I/F49は、それぞれ信号線(バス)50にて接続されている。
【0029】
I/F48およびI/F49は、それぞれ、噴射バルブ20およびマスフローメータ4に電気的に接続されている。ROM46は、CPU45用の制御プログラムを格納するメモリである。RAM47は、各種データを読み出し可能に記憶するメモリである。CPU45は、マスフローメータ4から送られる水素量に応じて、RAM47に記憶されているテーブル内のデータを参照し、噴射バルブ20の開時間および/または開口の大きさを制御する。なお、テーブルは、水素量と噴射バルブ20の開時間および/または開口の大きさとの関係のみならず、原料の特性、ヒータ41,51の温度、反応器2内の圧力等の諸条件と噴射バルブ20の開時間および/または開口の大きさとの関係を有するテーブルでも良い。さらに、CPU45は、制御装置28に手動入力した条件に基づいて、噴射バルブ20の開時間を決定するようにしても良い。ただし、制御装置28は、噴射バルブ20の開時間のみ、あるいは開口の大きさのみを制御するものでも良い。
【0030】
次に、図1に示す反応器2の構造の一例につき詳細に説明する。
【0031】
図3は、図1に示す反応器2を上方から見た図である。図4は、図1に示す反応器2の内部を側面から一部透過的に示す側面図である。
【0032】
図4に示すように、第一の反応器31は、上下両面に、それぞれ円板形状のフランジ33および円板形状のフランジ36を備えると共に、当該フランジ33,36よりも小さな径を有する円筒形の側壁34を有する、いわゆる堤型の形態を有している。第二の反応器32も、同様に、上下両面に、それぞれ円板形状のフランジ37および円板形状のフランジ38を備えると共に、当該フランジ37,38よりも小さな径を有する円筒形の側壁35を有する堤型の形態を有している。第一の反応器31と第二の反応器32は、フランジ36およびフランジ37とを接触させた状態にて、上下方向2段に積載されている。フランジ36とフランジ37には、それぞれ、第一の開口部39および第二の開口部40が形成されている。したがって、第一の反応器31と第二の反応器32は、第一の開口部39および第二の開口部40によって連通している。
【0033】
図3および図4に示すように、ヒータ41は、中心軸から等角で6方向に突出する矩形の壁面を備えた形態を有している。スプレーノズル3は、2枚の当該矩形の壁面で挟まれる空間に、その先端を向けるように、第一の反応器31の外壁34を貫通して上下方向に2つずつ配置されている。このような構成を採用することにより、スプレーノズル3からトルエンを噴霧すると、当該スプレーノズル3の先端に対向する2枚の当該矩形の壁面にトルエンが供給される。図4中の「A」部分の拡大図に示すように、ヒータ41の表面には、布状の第一の触媒担体42が被覆され、当該第一の触媒担体42の表面に第一の触媒43が担持されている。第一の触媒43は、白金、ロジウム等が好ましいが、他の種類の触媒を用いることもできる。また、第一の触媒担体42は、炭素繊維製のものが好ましいが、金属あるいはセラミックス製のものでも良い。
【0034】
図4に示すように、第二の反応器32の内部には、2枚の板状のヒータ51,51が立設されている。第二の反応器32の内部には、これらのヒータ51,51を埋めるように、球状の粒子形態を有する第二の触媒担体52が、複数個、入れられている。前述のように、第二の触媒担体52の表面には、第二の触媒53が担持されている。第二の触媒53は、白金、ロジウム等が好ましいが、他の種類の触媒を用いることもできる。また、第二の触媒担体52は、炭素製、金属製あるいはセラミックス製のものにするのが好ましい。第一の触媒担体42から第二の反応器32に滴下してきたメチルシクロヘキサン、未反応トルエン等(図4中の「Lq」で示す黒色の部分)は、ヒータ51,51にて加熱されている第二の触媒担体52の表面に接触する。第二の触媒担体52に担持されている第二の触媒53では、未反応トルエン(存在すれば、中間生成物も含む)のさらなる水素付加反応が起きる。
【0035】
このように、トルエンの水素付加反応は、第一の反応器31および第二の反応器32において生じる。第一の反応器31では、トルエンをスプレーノズル3で間欠噴霧の制御を行うため、トルエンの供給の応答性が良い。その結果、追従性の良い反応が可能となる。一方、第二の反応器32では、スプレーパルスを用いた間欠噴霧での1回の反応より、高い転化率が可能な固定床式の反応が起きる。第二の反応器32では、第一の反応器31で未反応だった供給物および反応後の供給物が混合したものが、第二の反応器32の触媒に接触する。未反応のものは、ここで再び反応をする。また、一般的な固定床の反応では、高い転化率を実現されるために、反応器の圧力を2〜3MPa程度に加圧する必要がある。しかし、本発明では、2段反応をさせることにより転化率を向上させているため、反応器の圧力は0.3MPa程度で良い。このように、第一の反応器31のスプレーパルスでの間欠噴霧での反応、および第二の反応器32の固定床による反応のそれぞれの長所をいかすことから、低圧力で、追従性が良く、転化率の高い水素付加反応を実現できる。
【0036】
また、第二の触媒53を用いた固定床式の方法のみで水素付加反応を起こすと、比較的高い転化率を実現できるものの、除熱機構を組み入れて十分に除熱できるようにするためには、装置が複雑化しコストアップを招く。一方、本発明のような2段反応方式の場合には、スプレーパルスによる間欠噴霧と固定床を組み合わせたことにより、除熱のために顕熱や蒸発潜熱などを容易に利用できるなど、除熱機構を組み入れることが容易になり、装置の簡素化、低コスト化も実現できる。
【0037】
また、先にも述べたように、制御装置28によってスプレーノズル3からのトルエンの噴霧量および噴霧時間を制御しているので、水素の供給量に変動が生じても、反応効率の高い水素付加を実現できる。特に、スプレーノズル3と噴射バルブ20のセットを合計12個備えているので、制御装置28により各セットを個別に制御することにより、ヒータ41の場所に応じた条件の差異を考慮して、水素付加反応率のより高精度な制御が可能である。ただし、12個のセットを、全て同じ噴霧条件あるいは一部のみ同じ噴霧条件で制御する制御装置28を採用しても良い。
【0038】
以上、本発明に係る水素付加装置の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、種々変形を施した形態にて実施可能である。
【0039】
例えば、水素供給口5aを、第一の反応器31側ではなく、第二の反応器32側に設けても良い。さらには、水素供給口5aを、第一の反応器31と第二の反応器32の両方に設けても良い。第一の開口部39および第二の開口部40としては、一つの穴、あるいは多数の穴から構成されるメッシュ等の各種の開口形態を有するものを採用できる。第一の反応器31と第二の反応器32は、垂直方向に積載しなくても良い。第一の反応器31と第二の反応器32とを斜め方向でつなげるようにしても良い。
【0040】
ヒータ41の形態は、図3および図4に示す形態に限定されず、例えば、薄い板状ヒータを複数重ねた形態あるいは一枚の板状体としても良い。ヒータ51の形態は、板状体に限定されず、棒状、スパイラル状等の任意の形態とすることができる。ヒータ41,51は、それぞれ電熱型の第一の加熱手段および第二の加熱手段であるが、電熱型以外の加熱手段として、例えば、火炎式の加熱手段を採用しても良い。
【0041】
第一の触媒担体42の形態を、ハニカム状、フィン状、リング状あるいはスパイラル状としたり、布状も含めてこれらの任意の組み合わせとすることもできる。また、第二の触媒担体52の形態を、粉末状、布状あるいはペレット状としたり、粒状も含めてこれらの任意の組み合わせとすることもできる。第一の触媒担体42および第二の触媒担体52は、それぞれ、ヒータ41およびヒータ51に非接触の状態に配置されても良い。また、第一の触媒担体42の表面または内部に、メチルシクロヘキサン、未反応トルエン等の液滴を第二の反応器32にスムーズに送るための液路(例えば、凹部)を形成しても良い。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例につき、比較例と比較しながら説明する。
【0043】
上述の実施の形態において、図3および図4に示す反応器2を有する水素付加装置1を用いて、噴霧時間と転化率との関係を調べた(実施例)。なお、比較例として、第一の反応器31のみを用いた場合の噴霧時間と転化率との関係を調べた。不飽和炭化水素には、トルエンを用いた。図5および図6に、それぞれ、実施例および比較例の各条件下における実験結果を示す。
【0044】
その結果、第一の反応器31と第二の反応器32を用いた場合には、トルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率が95%であった。一方、第一の反応器31のみを用いた場合には、トルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率が50〜55%であった。この結果から、トルエンの噴霧供給と滴下供給の両方式を連続式に採用することによって、転化率が著しく高まることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、水素を貯蔵する技術を用いる産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る水素付加装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示す制御装置の内部構成を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す反応器を上方から見た図である。
【図4】図4は、図1に示す反応器の内部を一部透過的に示す側面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例の条件で得られた実験結果を示すグラフである。
【図6】図6は、比較例の条件で得られた実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 水素付加装置
2 反応器
3 スプレーノズル(噴霧手段)
5a 水素供給口
20 噴射バルブ(噴霧手段)
28 制御装置(制御手段)
31 第一の反応器
32 第二の反応器
39 第一の開口部
40 第二の開口部
41 ヒータ(第一の加熱手段)
42 第一の触媒担体
43 第一の触媒
51 ヒータ(第二の加熱手段)
52 第二の触媒担体
53 第二の触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和炭化水素に水素を付加させる水素付加装置において、
水素付加反応を行う第一の反応器と、
当該第一の反応器に接続され、第一の反応器から液体の状態で供給される未反応物および反応生成物を含む液体供給物の水素付加反応をさらに行う第二の反応器と、
上記第一の反応器および上記第二の反応器の内の少なくともいずれか一方に水素を供給する水素供給口と、
を備え、
上記第一の反応器は、
水素付加用の第一の触媒と、
その第一の触媒を担持する第一の触媒担体と、
その第一の触媒を加熱するための第一の加熱手段と、
その第一の触媒に向けて不飽和炭化水素を間欠噴霧供給する噴霧手段と、
を備え、
上記第二の反応器は、
水素付加用の第二の触媒と、
その第二の触媒を担持する第二の触媒担体と、
その第二の触媒を加熱するための第二の加熱手段と、
を備えることを特徴とする水素付加装置。
【請求項2】
前記第一の反応器の底部に第一の開口部を設け、
前記第二の反応器の上部に第二の開口部を設け、
上記第一の開口部と上記第二の開口部とを対向させて、前記第一の反応器と前記第二の反応器とを上下2段につないだ構造を有し、
前記第一の触媒から供給する前記液体供給物を、前記第二の触媒の表面に接触させて、その表面にて水素付加反応を起こすことを特徴とする請求項1に記載の水素付加装置。
【請求項3】
さらに、前記噴霧手段を複数備えると共に、それら複数の前記噴霧手段の噴霧量および/または噴霧時間を制御するための制御手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の水素付加装置。
【請求項4】
前記第一の触媒担体の形態を、布状、ハニカム状、フィン状、リング状、スパイラル状の内、少なくともいずれか1つとした請求項1から3のいずれか1項に記載の水素付加装置。
【請求項5】
前記第二の触媒担体の形態を、粒状、粉末状、布状、ペレット状の内、少なくともいずれか1つとした請求項1から4のいずれか1項に記載の水素付加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44851(P2008−44851A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218857(P2006−218857)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(391026106)株式会社電制 (12)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(597039939)
【Fターム(参考)】