説明

水素発生用組成物

【課題】迅速な水素発生の開始および停止、燃料の効率よい使用、および加水分解反応生成物の管理を可能とする、固体組成物から水素を発生させるための方法、および水素発生に有用な固体組成物を提供する。
【解決手段】(a)(i)少なくとも1つの金属水素化合物;(ii)少なくとも1つのホウ化水素化合物;および(iii)(1)遷移金属ハロゲン化物、または(2)遷移金属ホウ化物の少なくとも1つ;を含有する固体組成物(ここで、固体組成物は柔軟性基体物質上に支持されている)を提供する工程;および(b)水源および柔軟性基体物質間の相対運動で水源からの水を柔軟性基体物質に添加する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池における水素発生に有用な固体ホウ化水素含有配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ化水素含有組成物は、通常、水溶液の形態において、水素燃料電池の水素源として公知である。固体ホウ化水素含有組成物も使用されてきた。ホウ化水素含有組成物は、pH変化または触媒との接触により開始される加水分解により水素を発生させるために使用される。例えば、WO1998/30493は固体水素化ホウ素ナトリウム(最大で単純金属水素化物(simple metal hydride)の50%まで)、および遷移金属触媒を含有する組成物を開示している。しかしながら、水素発生において直面するいくつかの典型的な問題、例えば、迅速な開始および停止、燃料の効率よい使用、および加水分解反応生成物の管理などは、この文献では取り扱われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第98/30493パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により取り扱われる課題は、前記問題により良好に解決するホウ化水素の固体配合物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固体組成物を提供する。組成物は:(a)52重量%から80重量%の少なくとも1つの金属水素化合物;(b)15重量%〜42重量%の少なくとも1つのホウ化水素化合物;および(c)1重量%〜15重量%の、(i)遷移金属ハロゲン化物および(ii)遷移金属ホウ化物少なくとも1つ;を含む。
【0006】
本発明はさらに、水素を発生させるための方法を提供する。この方法は:(a)(i)52重量%〜80重量%の少なくとも1つの金属水素化合物;(ii)15重量%〜42重量%の少なくとも1つのホウ化水素化合物;および(iii)1重量%〜15重量%の、(1)遷移金属ハロゲン化物および(2)遷移金属ホウ化物の少なくとも1つ;を含む固体組成物(ここで、固体組成物は柔軟性基体物質上に支持されている)を提供する工程;および(b)水源および柔軟性基体物質間の相対運動で水源からの水を柔軟性基体物質に添加する工程を含む。
【0007】
本発明はさらに別の固体組成物を提供する。その組成物は:(a)15重量%〜70重量%の少なくとも1つのホウ化水素化合物;(b)15重量%〜80重量%の少なくとも1つの金属水素化合物;(c)1重量%〜12重量%の、(i)遷移金属ハロゲン化物および(ii)遷移金属ホウ化物から選択される少なくとも1つの触媒;および(d)3重量%〜25重量%の少なくとも1つの金属水酸化物またはアルコキシドを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
他に明記されていない限り、パーセンテージは重量パーセンテージであり、温度は℃である。「有機酸」は酸性化合物、即ち、炭素および水素を含有する、pKa<6のものである。「ホウ化水素化合物」はホウ化水素アニオン、BHを含有する化合物である。「金属水素化物」は、例えば、アルカリおよびアルカリ土類金属水素化物を包含する1つの金属および水素のみを含有する化合物である。
【0009】
固体組成物のいくつかの実施形態において、金属水素化合物の量は少なくとも53%、あるいは少なくとも54%、あるいは少なくとも55%、あるいは少なくとも58%、あるいは少なくとも60%であり;金属水素化合物の量は、78%以下、あるいは75%以下、あるいは70%以下である。本発明のいくつかの実施形態において、金属水素化合物は、周期律表の1、2、4、5、7、11、12または13族からの金属カチオンを有する金属塩、またはその混合物である。本発明のいくつかの実施形態において、金属水素化合物はアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物またはその組み合わせであるか;あるいはそれは水素化リチウム、水素化ナトリウムまたはその混合物を含む。
【0010】
固体組成物のいくつかの実施形態において、ホウ化水素化合物の量は、少なくとも18%、あるいは少なくとも20%、あるいは少なくとも25%、あるいは少なくとも28%であり;ホウ化水素化合物の量は、40%以下、あるいは38%以下、あるいは35%、あるいは33%以下である。本発明のいくつかの実施形態において、ホウ化水素化合物は、周期律表の1、2、4、5、7、11、12または13族からの金属カチオンを有する金属塩、またはその混合物である。本発明のいくつかの実施形態において、ホウ化水素化合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属ホウ水素化物またはその組み合わせであるか、あるいはそれは水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウムまたはその混合物、あるいは水素化ホウ素ナトリウムを含む。
【0011】
固体組成物のいくつかの実施形態において、遷移金属ハロゲン化物および/またはホウ化物の量は、少なくとも2%、あるいは少なくとも3%、あるいは少なくとも4%、あるいは少なくとも5%であり;遷移金属ハロゲン化物および/または有機酸の量は、12%以下、あるいは10%以下、あるいは9%以下、あるいは7%以下である。本発明のいくつかの実施形態において、遷移金属ハロゲン化物および/またはホウ化物は、遷移金属、例えば、Co、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、またはその混合物のハロゲン化物;および/またはCoおよび/またはNiのホウ化物である。
【0012】
別の固体組成物のいくつかの実施形態において、ホウ化水素化合物の量は、少なくとも20%、あるいは少なくとも25%、あるいは少なくとも30%、あるいは少なくとも35%、あるいは少なくとも40%であり;ホウ化水素化合物の量は、65%以下、あるいは60%以下、あるいは55%以下、あるいは50%以下、あるいは40%以下である。
【0013】
別の固体組成物のいくつかの実施形態において、金属水酸化物および/またはアルコキシドの量は、少なくとも4%、あるいは少なくとも5%、あるいは少なくとも6%、あるいは少なくとも8%、あるいは少なくとも10%であり;金属水酸化物および/またはアルコキシドの量は20%以下、あるいは18%以下、あるいは16%以下である。いくつかの実施形態において、金属水酸化物またはアルコキシドは、アルカリ金属水酸化物またはその組み合わせ、アルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ土類金属アルコキシドあるいはその組み合わせであるか;もしくはそれはアルカリ金属水酸化物あるいはナトリウムまたはカリウムメトキシド、あるいはその混合物;もしくは水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウム、あるいはナトリウムまたはカリウムメトキシド、あるいはその混合物;もしくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム;もしくは水酸化ナトリウムである。1より多いアルカリ金属ホウ水素化物および1より多い金属水酸化物またはアルコキシドが存在し得る。好ましくは、アルコキシドはC−Cアルコキシドである。
【0014】
別の固体組成物のいくつかの実施形態において、金属水素化合物の量は、少なくとも18%、あるいは少なくとも20%、あるいは少なくとも25%、あるいは少なくとも30%、あるいは少なくとも35%、あるいは少なくとも40%であり;金属水素化合物の量は、65%以下、あるいは60%以下、あるいは55%以下、あるいは50%以下、あるいは40%以下である。好ましくは、金属水素化合物は、周期律表の1、2、4、5、7、11、12または13族からの金属カチオンを有する金属塩、またはその混合物である。いくつかの実施形態において、金属水素化合物はアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物またはその組み合わせであるか;あるいはそれは水素化リチウム、水素化ナトリウムまたはその混合物を含む。
【0015】
別の固体組成物のいくつかの実施形態において、遷移金属水素化物および/またはホウ化物の量は、少なくとも2%、あるいは少なくとも3%、あるいは少なくとも4%、あるいは少なくとも5%であり;遷移金属水素化物および/または有機酸の量は、9%以下、あるいは8%以下、あるいは7%以下である。
【0016】
本発明はさらに、水素発生のための方法に関する。固体組成物(燃料)は柔軟性基体の一面上に薄層としてコーティングすることができ、前記柔軟性基体はいくつかの実施形態においては多孔性物質、好ましくは親水性のものである。燃料は、直線的に、あるいは任意の望ましい形状またはパターンで基体上にコーティングすることができる。水は、柔軟性基体の他の面から、好ましくはいかなる燃料コーティングを有さない柔軟性基体の他の面から供給され得る。必要に応じてスイッチをオンまたはオフできる計量装置により水の供給を行うことができる。前述の液体液体促進剤が柔軟性基体と接触するとき、これが計量装置の経路を「湿らせる」。湿気は柔軟性基体の他の面へ直ちに拡散または浸透することができ、加水分解を引き起こす。その結果、必要に応じてコーティングされた面から水素が発生する。開始/停止は、中枢のあらかじめプログラムされたコンピューターチップに接続された計量装置のオン/オフスイッチにより容易に制御することができる。計量装置がオフの場合、水素は発生しない。水源および柔軟性基体間の相対運動は、燃料コーティングの異なる部分が、添加される際に水と反応することを確保する。いくつかの実施形態においては、水源が移動し、かつ柔軟性フィルムは静止しており、いくつかの実施形態においては、フィルムが移動し、かつ水源は静止しており、並びにいくつかの実施形態においては、両方とも移動する。フィルムまたは水源は直線的、または燃料の全てが水と最終的に接触するように設計されたパターンで移動する。例えば、燃料でコーティングされた柔軟性基体はローラー上に巻き取られ、これからゆっくりと巻きを解いて、新鮮なコーティングを水源に暴露する。水源は静止しているか、またはコーティングの全幅を湿らせるようにフィルムの運動方向を横切って移動することができる。新鮮な燃料コーティングが常に使用されるので、この設計における発泡の問題は最小である。いくつかの実施形態において、酸および/または触媒を含む溶液の形態で水が添加される。この方法は、別の固体組成物を燃料として用いて使用することもできる。
【0017】
いくつかの実施形態において、柔軟性基体は、任意の親水性物質、例えば繊維、セルロース、紙製品などを包含する。これらは、丸、三角、長方形などに限定されない、任意の形状であり得る。これらは任意の厚さおよび色であり得る。公知コーティング技術を適用して、好ましくは柔軟性基体の表面上に平坦かつ均一なコーティングを形成することができる。固体燃料に接着性を提供するために親水性接着剤を使用することができる。液体液体促進剤を供給する計量装置は自己生成電気によるか、または特に設計されたスプリングにより機械的に作動し得る。
【0018】
本発明の燃料組成物は単層または多層として柔軟性基体上にコーティングすることができる。コーティングは、任意の所定の燃料組成物を1つの層または多くの層の組み合わせにおいて含むことができ、層のそれぞれは燃料組成物の1つの成分を含有する。燃料混合物または成分が任意の所与の燃料組成物の望ましい性能に影響を及ぼさない限り、これらの柔軟性基体に対する燃料混合物または成分の結合を助けるために任意の種類のバインダーを使用することができる。計量装置中の液体促進剤は、水または水と酸および/または遷移金属ハロゲン化物またはホウ化物触媒であり得る。いくつかの実施形態において、酸は2重量%〜50重量%、あるいは10重量%〜45重量%、あるいは15重量%〜40重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、遷移金属ハロゲン化物またはホウ化物触媒は、1重量%〜30重量%、あるいは2重量%〜25重量%、あるいは2重量%〜20重量%の量で存在する。
【0019】
水が酸を含有する場合、酸は有機酸および/または無機酸である。本発明の一つの実施形態において、酸は有機酸である。好ましくは、有機酸はカルボン酸である。本発明の一つの実施形態において、有機酸はC−Cジカルボン酸、C−Cヒドロキシカルボン酸、C−Cヒドロキシジカルボン酸またはその組み合わせである。1より多い有機酸が水溶液中に存在してもよい。特に好ましい有機酸は、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸およびシュウ酸を包含する。本発明のもう一つ別の実施形態において、酸は無機酸である。好ましくは、無機酸は濃鉱酸、例えば、塩酸、硫酸および/またはリン酸である。好ましくは、無機酸は硝酸または別の強酸化性酸でない。1より多い無機酸が水溶液中に存在してもよい。有機酸および無機酸の両方が水溶液中に存在してもよい。
【0020】
本発明の固体組成物は、任意の通常の形態であってよい。好適な固体形態の例としては粉末および顆粒が挙げられる。好ましくは、粉末は80メッシュ(177μm)未満の平均粒子サイズを有する。好ましくは、顆粒は10メッシュ(2000μm)から40メッシュ(425μm)の平均粒子サイズを有する。
【0021】
好ましくは、固体組成物の水分量は0.5%以下、あるいは0.2%以下、あるいは0.1%以下である。好ましくは、固体組成物は、20%未満、あるいは15%未満、あるいは10%未満、あるいは5%未満のホウ化水素化合物および塩基以外のものを含有する。固体組成物の他の可能な構成成分は、例えば、触媒、酸、消泡剤、崩壊剤および界面活性剤を包含する。好適な崩壊剤は、例えば、シリカ、アルミナ、砂、イオン交換樹脂、多孔性ポリマー、金属粉末、綿、綿繊維、グアーガム、キサンタンガム、バライト、ベントナイト、シリケート、ポリアクリルアミド、鉱油、潤滑剤などを包含する。崩壊剤の量は、0.1%から20%、あるいは0.2%から15%、あるいは0.5%から10%まで変化し得る。消泡剤は0.1%〜20%、あるいは0.3〜15%、あるいは0.5〜10%の量のシリコーン含有または非シリコーン含有消泡剤であり得る。
【実施例】
【0022】
実施例1
(組成物A)(温度サイクル実験による比較例)
燃料(カプレット):商業的な水素化ホウ素ナトリウムカプレット(〜1.0gの重量);
促進剤溶液:25重量%DI水中リンゴ酸。
【0023】
実施例2
(組成物B)(温度サイクル実験による比較例)
燃料(粉末):95重量%水素化ホウ素ナトリウム+5重量%NaOH;
促進剤溶液:25重量%DI水中リンゴ酸。
【0024】
実施例3
(組成物C)(温度サイクル実験による比較例)
燃料(カプレット):商業的な水素化ホウ素ナトリウムカプレット(〜1.0gの重量);
促進剤溶液:10重量%DI水中CoCl
【0025】
実施例4
(組成物D)(温度サイクル実験による比較例)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、20/74/6(全て重量%);促進剤溶液:DI水。
【0026】
実施例5
(組成物E)(60℃安定性試験による比較例)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、50/44/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0027】
実施例6
(組成物F)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、55/39/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0028】
実施例7
(組成物G)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、60/34/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0029】
実施例8
(組成物H)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、74/20/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0030】
実施例9
(組成物I)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、60/37/3(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0031】
実施例10
(組成物J)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/CoCl、60/30/10(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0032】
実施例11
(組成物K)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/KOH/CoCl、20/60/14/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0033】
実施例12
(組成物L)(60℃安定性試験による)
燃料(粉末):LiH/SBH/KOH/CoCl、50/30/14/6(全て重量%);
促進剤溶液:DI水。
【0034】
【表1】

【0035】
温度サイクル実験(5%カートリッジ寿命調査)
これは2つの独立した実験(a)および(b)からなる:
(a)5%促進剤溶液(3g)対1g燃料配合物(周囲温度または22℃);
(b)5%促進剤溶液(3g)対1g燃料配合物(0℃、次いで22℃、次いで40℃、次いで60℃、次いで22℃)。
【0036】
実験(a)について
(1)燃料配合物(重量約1.0グラム)に、促進剤溶液(0.15ml)を周囲温度または22℃で添加する。そのようにして水素が発生し、水置換法により測定する。促進剤溶液の添加後に水素発生が停止する時間を「停止時間」と称し、停止時間で集められた水素の合計体積は「停止体積」と呼ばれる。
(2)最初の5秒間の水素体積、停止時間および22℃での合計水素体積(停止体積)をV22として記録する;
【0037】
実験(b)について
(1)燃料配合物(重量約1.0グラム)に促進剤溶液(0.15ml)を0℃で添加する。そのようにして水素が発生し、水置換法により測定し、1分まで5秒ごとに記録し、次いで10分まで30秒ごとに記録する;
(2)(1)の同じプロセスを、22℃、40℃、60℃、および22℃の同じ燃料に対して、記載されたのと同じ正確な順序で繰り返す;
(3)最後の22℃の最後での最終累積水素体積をVtcと表記する。
潜在水素(%)を:(Vtc−V22)×100/Vtcとして計算する。
【0038】
60℃安定性試験
(1)燃料配合物(重量約1.0グラム)に、促進剤溶液(0.15ml)を周囲温度または22℃で添加する。そのようにして水素が発生し、水置換法により測定する。促進剤溶液の添加後に水素発生が停止する時間を「停止時間」と称し、停止時間で集められた水素の合計体積は「停止体積」と呼ばれる。
(2)停止時間および22℃での合計水素体積(停止体積)をV22として記録する;
(3)部分的に消費された燃料を次に、周囲温度または22℃での水素の発生が停止した後に60℃で加熱する。さらに水素が発生し始め、同じ装置でそれ以上水素がでなくなるまで集める。これを周囲温度に冷却する。
(4)水置換セットアップのH管中の水位を調整するために集められた水を使用する。60℃で集められた水素の最終体積をV60として記録する。
(5)潜在水素(%)=V60×100/(V22+V60
【0039】
(e)完全カートリッジ寿命調査による測定
完全カートリッジ寿命調査
促進剤溶液を全促進剤重量の5%または0.15mlで1gの燃料に周囲温度または22℃で通常の供給法により、燃料が完全に消費されるまで投入する。このSOPは、促進剤溶液の各添加又はサイクルについての停止時間および停止体積、ならびに燃料が完全に消費された時に集められた合計水素体積を決定する。
【0040】
各サイクルの水素収率を水素の重量%で表し、次の式により計算する:
Wt%水素=累積水素重量(g)×100/(F+A)
F:燃料の合計重量(グラム);
A=促進剤溶液重量(グラム);
水素重量(グラム)はPV=nRTから得ることができる。
【0041】
(f)この手順において、液体燃料成分をあらかじめ決められた速度(典型的にはμL/分)で燃料組成物上に特定の期間供給する。時間の関数として発生した水素、全期間にわたって発生した全水素、ならびに時間の関数としての泡高を測定することができる。
【0042】
乾燥または液体燃料配合物のサンプルを、水素発生アセンブリを取り付けるための24/40コネクターを適切に備えた100mlの目盛り付きシリンダー中に正確に量りとる(0.0001gまでの概数)。(水置換法またはウェットテストメーター法)ポンプを始動させ、様々な時間間隔で置換された水の量および泡高を測定するためにストップウォッチを始動させる。定常状態加水分解実験の標準時間は30〜60分である。流速設定、ならびに使用される固体および液体燃料組成物の量に基づいて、これは6時間またはそれ以上まで測定することができる。最大泡高および平均泡高(mm)は実験から測定することができるかまたは計算することができる。
【0043】
実施例13
(同時添加の実証)
燃料:LiH/SBH/CoCl(60/34/6)(組成物G)
促進剤溶液;DI純水
前記で特定された固体燃料を濾紙の一面上に直線に沿ってコーティングした。液体促進剤としての水を前記線に沿って動く計量装置により濾紙の他の面から供給した。水素発生は、計量装置が濾紙と接触している限り継続した。装置が濾紙から離れるとすぐに、水素発生が停止した。発泡は問題ではなく、燃料利用は優れていた。始動および停止特性も優れていた。これらの性能はすべて本発明の燃料組成物および同時供給法により提供される化学反応に起因するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求項1記載の固体組成物から水素を発生させるための方法であって:
(a)(i)52重量%〜80重量%の少なくとも1つの金属水素化合物;(ii)15重量%〜42重量%の少なくとも1つのホウ化水素化合物;並びに(iii)1重量%〜15重量%の、(1)遷移金属ハロゲン化物および(2)遷移金属ホウ化物の少なくとも1つ;を含む固体組成物(ここで、固体組成物は柔軟性基体物質上に支持されている)を提供する工程;
(b)水源および柔軟性基体物質間の相対運動で水源からの水を柔軟性基体物質に添加する工程;を含む方法。
【請求項2】
前記の少なくとも1つのホウ化水素化合物が水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはその組み合わせであり;前記の少なくとも1つの金属水素化合物が少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物であり;前記の少なくとも1つの触媒が、Co、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、またはその混合物のハロゲン化物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
固体組成物が、53重量%〜78重量%の少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物;18重量%〜40重量%の水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはその組み合わせ;2重量%〜12重量%の、Co、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、またはその混合物のハロゲン化物を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
水中に酸をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
(a)15重量%〜70重量%の少なくとも1つのホウ化水素化合物;
(b)15重量%〜80重量%の少なくとも1つの金属水素化合物;
(c)1重量%〜12重量%の、(i)遷移金属ハロゲン化物および(ii)遷移金属ホウ化物から選択される少なくとも1つの触媒;並びに、
(d)3重量%〜25重量%の少なくとも1つの金属水酸化物またはアルコキシド;
を含む固体組成物。
【請求項6】
前記の少なくとも1つのホウ化水素化合物が水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはその組み合わせであり;前記の少なくとも1つの金属水酸化物またはアルコキシドが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムもしくは水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドもしくはカリウムメトキシド、またはその組み合わせであり;前記の少なくとも1つの金属水素化合物が少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物であり;前記の少なくとも1つの触媒が、Co、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、またはその混合物のハロゲン化物であり;及び、該組成物が、25重量%〜65重量%の水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはその組み合わせ;15重量%〜60重量%の少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属水素化物;3重量%〜10重量%のCo、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、またはその混合物のハロゲン化物;および6重量%〜20重量%の水酸化ナトリウム、水酸化リチウムもしくは水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドもしくはカリウムメトキシド、またはその組み合わせを有する、請求項5記載の組成物。

【公開番号】特開2012−20930(P2012−20930A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−193171(P2011−193171)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2008−123393(P2008−123393)の分割
【原出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】