説明

水素製造方法

【課題】小規模ガス化装置に有利な低温ガス化において、水素を効率良く製造する技術を提供すること。
【解決手段】有機物101と水蒸気103が反応手段102で反応して発生するガス生成物104を高温熱源とする第1の熱交換手段105と、第1の熱交換手段105で熱交換後のガス生成物106を高温熱源とする第2の熱交換手段107と、ガス生成物109から水素を分離する水素分離手段110とを備え、第1の熱交換手段105の低温熱源を、第2の熱交換手段107から水素分離手段110に移動するガス生成物109とするものであり、第2の熱交換手段107でタール等を凝縮除去し、冷却されたガス生成物109を第1の熱交換手段105で再度加熱して水素分離手段110に供給することにより、水素分離手段110の温度低下を抑制し、効率良く水素を分離して高濃度な水素を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭やバイオマス等の有機物を原料として、エネルギー的に効率良く水素を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭やバイオマス等の有機物を利用価値の高いガス、液体および固体に転換できる新利用技術として急速熱分解法が開発されており、石炭を例にとると、873〜1273Kの無酸化雰囲気で前記石炭を熱分解すると、炭化水素、一酸化炭素、水素等からなる可燃性ガス、化学原料となるタールおよびチャーを生成することが知られている。
【0003】
これら熱分解生成物のうちのチャーを、サイクロン等で高温可燃ガスから分離した後に、リサイクルしてガス化炉内で酸素およびスチームによってガス化し、その高温ガス中に石炭を吹き込み、熱分解する方法が特許文献1に記載されている。
【0004】
一方、サイクロン通過後の高温可燃性ガス中には、タール蒸気、残チャーやフライアッシュ等の固形粉が存在するが、これらはベンチュリースクラバーのようなオリフィスおよび水スプレー除塵により、固形粉と一部凝縮されたタールの混合物として回収される。さらに、残ったタール蒸気は、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4等に記されているように、水スプレーによる直接冷却または水冷管や水冷壁による間接冷却により凝縮され、液体混合物として回収される。
【0005】
このように、急速熱分解された生成物のうち、固体成分のチャーをサイクロン等で分離してガス化炉へリサイクルし、ここでガス化して石炭熱分解反応の熱源とする方法は、熱分解生成物を効率的に活用することにより、高い熱効率が得られる。しかし、通常、熱分解石炭の40〜60%はチャーとなるが、ガス化に必要なチャーの量は、生成チャーの一部に過ぎず、残りは別の用途、例えば固体燃料等に活用される。
【0006】
一方、前記チャーを分離した後のガス中には、タール蒸気およびサイクロンで未回収の微細なチャー、フライアッシュ等の固形粉が含まれており、ベンチュリースクラバー等により固形粉と一部凝縮されたタールとの混合物、即ちタールスラッジが回収される。この混合物は、可燃成分が高いために燃料として利用可能であるが、アッシュ成分が高いためにアッシュの処理が必要になること、および重質タールとの混合物であるために固化しやすく、保存やハンドリングが難しいこと等の課題があり、かかることから従来、その利用先は、産廃処理用燃料等の付加価値の低い利用先に限定されていた。
【0007】
また、ベンチュリースクラバー後に回収されたタールは、酸素含有量が多い若い石炭を急速熱分解する場合においては、石炭中の高分子物質の解離が十分に進まないため、複雑な高沸点成分の割合が多く、しかも微細な固形分も混入するものであった。そのため、従来、タール混合物から有効成分を蒸留により分離した残りについては化学原料となり得ず、前述と同様な利用先に限定されていた。
【0008】
このように、従来の方法は、熱分解生成物を必ずしも有効に活用されていないところがあり、何らかの改善策が求められるものであった。
【0009】
そこで、最近では、石炭の急速熱分解において生成したチャー、スラッジおよびタールの蒸留残さを効率的に利用するための方法として、特許文献5に示された技術がある。
【0010】
しかし、廃棄物系のバイオマスを原料とし、前記バイオマスの発生元においてガスを発電用燃料として利用する分散型のガス化発電用のガス化方法としては、精製されたタールやチャーではなく、外部利用可能なガスとして排出することが求められている。
【0011】
ところが、生成ガスを凝縮することによって得られるタールや固形粉のように、一度エネルギーをかけられて低分子化された炭化水素を含んでいる物質を、外部利用可能なガスとするには、一度エネルギーをかけられているので、さらにガスまで低分子化するには低エネルギーでよいが、利用可能な排出ガスを得る場合には、必ずしも効率的ではない。
【0012】
つまり、ガス化に適した物質をガス化し、燃焼用に適した物質を燃焼することで高効率に熱源として利用可能な排出ガスを得ることが求められており、その方法として、石炭のガス化による水素製造を目的として、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)で開発しつつある、微粉炭気流搬送一室二段旋回流方式のHYCOL(噴流層石炭ガス化技術)プロセスがある。
【0013】
しかし、このプロセスは、1773〜2073Kという高温で、10〜30気圧という高圧下で操作されるため、長期間にわたる連続運転での安全性を考えると解決すべき多くの問題点があり、実用化は極めて困難であることが予測される。
【0014】
また、特許文献6には、比較的低温(1023〜1073K)、常圧下で長期間安定に操業できるものとして、石炭を熱分解し、タール等と分離されたチャーをガス化原料とし、かつ熱供給媒体として蓄熱性のセラミック粒子を使用したドラフトチューブ付噴流層型ガス化装置が開示されている。
【0015】
しかしながら、かかるガス化装置においては、ガスの主成分として水素を得ることは可能であるが、この混合ガスには、一酸化炭素も高濃度で含まれているため、燃料電池に用いることは困難であり、一酸化炭素濃度を10ppm程度まで低減することが好ましい。
【0016】
このことに鑑み、石炭に水蒸気および酸素を作用させて水素と一酸化炭素を主成分とする混合ガスを製造し、水素分離透過膜を有する改質装置により、混合ガスから水素を高純度で分離する発明が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0017】
図3は、従来の水素製造システムを示す概略説明図で、上記特許文献7に示されるものである。
【0018】
図3において、石炭のガス化は、ガス化炉1に石炭、スチーム及び酸素を供給して行われるものである。ガス化炉1では、一例として温度1300〜1400℃、圧力50〜60kg/cmの高温高圧状態で石炭にスチーム及び酸素を作用させ、ガス化した可燃性ガスを得る。この可燃性ガスは、温度1350℃、圧力65kg/cm程度に高圧・高温を維持しており、ライン2による改質装置3に移送される。
【0019】
改質装置3において、高温・高圧の可燃性ガスは、天然ガス4の改質のための熱源として用いられる。すなわち、改質装置3において、前記した水素分離透過膜を用いて天然ガスから水素ガスを生成するが、この反応は吸熱反応である。
【0020】
改質装置3の加熱源として使用された可燃性ガスは、450℃程度に冷却された後、ライン5を経て脱硫装置6に移送され、硫化水素、SOX等が除去される。
【0021】
脱硫処理がなされた可燃性ガスは、ライン7によりガスタービン発電装置を構成する燃焼器8に導かれる。
【0022】
なお、改質装置3から水素を分離した残りのオフガス9には、COや未反応天然ガス、水素、CO、スチーム等が含まれるので、このオフガスを改質装置3から直接ライン9を経て燃焼器8に移送し、燃料として使用することも可能であり、かかる場合は、燃料効率の向上にも役立つ。
【0023】
燃焼器8では、可燃性ガスを燃焼させることにより、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスはライン10を経てガスタービン11に導かれ、ガスタービン11を回転する。この回転力は、燃焼器8に圧縮空気を供給する空気コンプレッサ12によって一部使用され、残りは発電機13により電力に変換される。
【0024】
ガスタービン11を回転させた後、ここから排出される燃焼廃ガスは、ガスタービン11を回転させた後もなお温度450〜650℃と高温を維持しており、ライン14を経て廃熱回収ボイラ15に送られる。その後、煙突16より大気に放出される。
【0025】
廃熱回収ボイラ15内には、改質装置17が設置され、高温の燃焼廃ガスにより加熱される。改質装置17では、改質装置3と同様に天然ガス4を改質させ、水素分離透過膜の作用で高純度水素を生成する。
【0026】
なお、天然ガス4は、廃熱回収ボイラ15で予め加温された水18と共に、ライン19及び20を経て改質装置3及び17に移送される。改質装置3及び17で生成された水素は、ライン21、ライン22を経て燃料電池23に供給され、発電に使用される。
【0027】
また、改質装置17から水素を分離した残りのオフガスには、COや未反応天然ガス、水素、CO、スチーム等が含まれるので、ライン24を経て燃焼器8の燃料として使用するものである。
【特許文献1】特開平4−122897号公報
【特許文献2】特開平7−82564号公報
【特許文献3】特開平7−82565号公報
【特許文献4】特開平7−268355号公報
【特許文献5】特開2000−239671号公報
【特許文献6】特開平2−286788号公報
【特許文献7】特許第3453218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、上記システムは、ガス化炉1の運転条件が、温度1300〜1400℃、圧力50〜60kg/cmの高温高圧状態であり、発生する可燃性ガスも温度1350℃、圧力65kg/cm程度に高圧・高温である。
【0029】
このため、ガス化炉1には、十分な耐熱耐圧設計および安全装置が必要である。一日の石炭消費量が数10トン規模の比較的大規模なプラントではこれらの対策を施し、安全確保することは可能であるが、電力消費場所で発電を行う分散型発電システムを想定した小規模ガス化装置にとって、上記の厳しい運転条件に耐え得る設計では、ガス化炉1の内容積に対して大きな外寸法となってしまい、小型化が困難である。
【0030】
このような理由から、小規模ガス化装置では、低温低圧の運転条件が好ましいが、一般に化学反応は温度依存性があり、ガス化炉1を低温化することで反応性が鈍化し、未改質のタールが増加するため、可燃性ガスの回収率が低下することに加えて、改質装置3内の水素分離膜表面等に前記タールが付着して分離性能が悪化するという課題がある。
【0031】
このことから、小規模ガス化装置に有利な低温ガス化においても、水素を効率良く製造する技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記課題を解決するために本発明は、有機物と水蒸気を熱化学的に反応させることによって発生したガス生成物を、第1の熱交換手段の高温熱源とし、また、前記第1の熱交換手段により熱交換した後の前記ガス生成物を、第2の熱交換手段の高温熱源とし、そして、前記第2の熱交換手段により熱交換した後の前記ガス生成物から水素を分離する水素分離手段を設け、前記第1の熱交換手段の低温熱源を、前記第2の熱交換手段から前記水素分離手段に移動する前記ガス生成物としたものである。
【0033】
かかることにより、比較的低温で操作される反応手段から発生したガス生成物に含まれる未分解タールは、第2の熱交換手段で凝縮除去され、そして、低温になったガス生成物を第1の熱交換手段で再度加熱して高温にし、その高温になったガス生成物を、水素分離手段に供給することができるので、水素分離手段の温度低下が抑制でき、分離性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、上記特許文献7に記載される従来技術と比べると、石炭やバイオマス等の有機物の水蒸気ガス化反応を低温で行い、ガス生成物に含まれるタール等が増加しても、このガス流を一旦冷却して凝縮除去するものである。さらに、この冷却操作により温度が低下したガス生成物を、冷却前に自身が有していた熱を利用して再度加熱し、水素分離器に供給することにより、分離性能を低下させることなく、水素に富んだガスを回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
請求項1に記載の発明は、有機物と水蒸気を熱化学的に反応させる反応手段と、前記反応手段から発生するガス生成物を高温熱源とする第1の熱交換手段と、前記第1の熱交換手段で熱交換した後の前記ガス生成物を高温熱源とする第2の熱交換手段と、前記第2の熱交換手段で熱交換した後の前記ガス生成物から水素を分離する水素分離手段を備え、前記第1の熱交換手段の低温熱源を、前記第2の熱交換手段から前記水素分離手段に移動する前記ガス生成物としたものである。
【0036】
かかることにより、比較的低温で操作される前記反応手段から発生するガス生成物に含まれた未分解タールは、前記第2の熱交換手段で凝縮除去される。
【0037】
そして、低温になったガス生成物は、前記第1の熱交換手段で冷却前に自身が有していた熱によって再度加熱され、高温になる。このようにして高温になったガス生成物を、前記水素分離手段に供給することができるので、前記水素分離手段の温度低下が抑制でき、分離性能を維持することができる。このため、ガス生成物から効率良く水素を分離し、高濃度の水素を製造することができる。
【0038】
請求項2に記載の発明は、前記反応手段の温度を、700℃から1000℃の範囲としたものである。
【0039】
かかることにより、比較的低温でありながら、ガス生成物中に含まれるタールを極力抑制できる。このため、ガス生成物の収率が増加し、それに伴い水素発生量も増加するので、高濃度な水素をさらに多く製造することができる。
【0040】
請求項3に記載の発明は、前記第2の熱交換手段の低温熱源温度を、水蒸気の凝縮温度以下としたものである。
【0041】
かかることにより、ガス生成物中に含まれるタールだけでなく、水蒸気も凝縮除去できる。このため、燃料として価値のない水蒸気濃度を低減できるので、ガス生成物中の水素濃度を相対的に向上することができる。その結果、水素分離手段において、さらに効率良く水素を分離し、高濃度な水素を製造することができる。
【0042】
請求項4に記載の発明は、前記第2の熱交換手段の低温熱源を水とし、前記第2の熱交換手段で加熱された前記水から前記反応手段に供給する水蒸気を発生させる蒸気発生手段を備えたものである。
【0043】
かかることにより、前記第2の熱交換手段で高温熱源であるガス生成物および水蒸気が有する熱が低温熱源の水に移動し、これを基にして前記蒸気発生手段で水蒸気を生成し、前記反応手段に供給するので、多くの熱を系内で有効利用できる。このため、外部からの投入エネルギーを低減し、さらに効率良く高濃度な水素を製造することができる。
【0044】
請求項5に記載の発明は、前記水素分離手段により水素が分離されたガス生成物の残留物の可燃成分を燃焼させ、その燃焼熱を前記高温熱源とし、さらに、前記第1の熱交換手段から前記水素分離手段に移動する前記ガス生成物を低温熱源とする第3の熱交換手段を備えたものである。
【0045】
かかることにより、水素分離後のガス生成物に含まれる燃焼熱を有効に利用し、水素分離手段に供給されるガス生成物を高温にすることができる。このようにして高温になったガス生成物を、前記水素分離手段に供給することができるので、水素分離手段の温度低下が抑制でき、分離性能を維持することができる。このため、ガス生成物からさらに効率良く水素を分離し、高濃度な水素を製造することができる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0047】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における水素製造方法の工程を説明するフロー図である。
【0048】
図1に示すように、有機物101は、石炭や厨芥、木屑、汚泥等のいわゆるバイオマスである。反応手段102では、有機物101と水蒸気103とが反応し、その結果、水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、エチレン等を主成分とするガス生成物104が生成される。
【0049】
また、前記反応による副産物として凝縮性のタールも生成される。そこで、このタールも水蒸気103と反応させて、できる限りガス生成物104の収率を上げるべく、反応手段102を、700℃から1000℃の範囲で運転することが好ましい。
【0050】
反応手段102から排出直後のガス生成物104の温度は、反応手段102と同等の温度にあり、第1の熱交換手段105の高温熱源として利用される。
【0051】
そして、第1の熱交換手段105を通過後のガス生成物106は、第2の熱交換手段107に供給される。第2の熱交換手段107では、ガス生成物106とともに流入するタールおよび余剰な水蒸気103が高温熱源であり、この高温熱源を低温熱源と熱交換することにより、凝縮性のタールおよび水蒸気103が凝縮し、これらがガス生成物106から分離、除去される。
【0052】
ここで、水蒸気103の凝縮温度は系内圧力に依存するが、小規模ガス化装置を想定した場合、常圧であることが好ましいので、低温熱源として100℃以下の冷媒(冷却水)108を用いるとよい。
【0053】
ガス生成物106は、第2の熱交換手段107において冷却水108によって冷却され、ここで凝縮性の不純物が低減し、浄化された状態となる。この時点でガス生成物109は水素を含んだ混合ガスとなり、水素分離手段110へ供給される。そして、水素分離手段110で水素のみを分離することにより、燃料ガスとして高純度水素111が製造される。
【0054】
水素分離手段110は、パラジウム等の水素透過性能に秀でた金属膜を用いることが好ましい。また、このような金属膜の水素透過性能は、一般的に温度依存性があるため、第2の熱交換手段107で冷却されたガス生成物109を、そのまま水素分離手段110に供給することは水素分離性能の低下を招く恐れがある。
【0055】
しかしながら、本実施の形態1においては、ガス生成物109を、第2の熱交換手段107から水素分離手段110へ供給する間において、第2の熱交換手段107で冷却水108によって冷却されたものの、第1の熱交換手段105にて加熱され、約500℃の温度となるため、この温度上昇により水素分離手段110の水素分離性能は維持される。その結果、高純度水素111を製造することができ、この高純度水素111を燃料電池112に供給することにより発電が可能となる。
【0056】
このように、700℃から1000℃のような比較的低温の範囲で、石炭やバイオマス等の有機物101を水蒸気103と反応させてガス生成物104を生成し、含有されるタールや水蒸気等の不純物を取り除いて浄化した後、高純度水素111を製造することができる。また、系内圧力はほぼ常圧であるため、小規模ガス化装置でも重厚な構造や安全設計をすることなく、効率良く水素を製造することができる。
【0057】
なお、有機物101として石炭やバイオマス等の固形物だけでなく、都市ガスやプロパンガスおよびアルコール類等を用いても差し支えない。
【0058】
また、ガス生成物104の回収率を向上させるべく、反応手段102にニッケルや活性アルミナ等の炭化水素の分解機能を有する触媒を投入しても良い。
【0059】
(実施の形態2)
図2は、本実施の形態2における水素製造方法の工程を説明するフロー図で、図1と同様の構成要素については、同一の符号を付し、ここでは、先の実施の形態1と相違する内容を中心に説明する。
【0060】
図2において、ガス生成物104の不純物であるタールおよび余剰水蒸気103を凝縮除去するべく、第2の熱交換手段107の低温熱源として水201が供給される。第2の熱交換手段107における熱交換により、エンタルピーが増加した水201は、蒸気発生器202で加熱されて水蒸気103になる。
【0061】
一方、第2の熱交換手段107で冷却されたガス生成物109は、第1の熱交換手段105で加熱された後、第3の熱交換手段203で再加熱される。このときの熱源は、水素分離手段110で水素が分離された後のガス生成物204に含まれるメタン等の可燃成分の燃焼熱であり、空気205と混合されて第3の熱交換手段203で燃焼されたときに発生するものである。
【0062】
このように、一連の水素製造過程において、余剰な水蒸気103が有する凝縮潜熱やガス生成物204が有する熱量の一部を有効に利用することにより、小規模ガス化装置に有利で、低温の反応温度でも効率良く水素を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる水素製造方法は、燃料電池用の燃料である水素を石炭やバイオマスから小規模でも高効率に製造し、発電が可能となる。このため、ホテル、飲食店、住宅等電力消費地で水素製造が可能となり、送電によるロスが少ない分散型電源の普及に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1における水素製造方法の工程を説明するフロー図
【図2】本発明の実施の形態2における水素製造方法の工程を説明するフロー図
【図3】従来技術を示す水素製造システムの概略説明図
【符号の説明】
【0065】
101 有機物
102 反応手段
103 水蒸気
104 ガス生成物
105 第1の熱交換手段
106 ガス生成物
107 第2の熱交換手段
108 冷却水
109 ガス生成物
110 水素分離手段
201 水
202 蒸気発生手段
203 第3の熱交換手段
204 ガス生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物と水蒸気を熱化学的に反応させる反応手段と、前記反応手段から発生するガス生成物を高温熱源とする第1の熱交換手段と、前記第1の熱交換手段で熱交換した後の前記ガス生成物を高温熱源とする第2の熱交換手段と、前記第2の熱交換手段で熱交換した後の前記ガス生成物から水素を分離する水素分離手段を備え、前記第1の熱交換手段の低温熱源を、前記第2の熱交換手段から前記水素分離手段に移動する前記ガス生成物とした水素製造方法。
【請求項2】
前記反応手段の温度を、700℃から1000℃の範囲とした請求項1に記載の水素製造方法。
【請求項3】
前記第2の熱交換手段の低温熱源温度を、水蒸気の凝縮温度以下とした請求項1または2に記載の水素製造方法。
【請求項4】
前記第2の熱交換手段の低温熱源を水とし、前記第2の熱交換手段で加熱された前記水から前記反応手段に供給する水蒸気を発生させる蒸気発生手段を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の水素製造方法。
【請求項5】
前記水素分離手段により水素が分離されたガス生成物の残留物の可燃成分を燃焼させ、その燃焼熱を前記高温熱源とし、さらに、前記第1の熱交換手段から前記水素分離手段に移動する前記ガス生成物を低温熱源とする第3の熱交換手段を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−69017(P2008−69017A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246531(P2006−246531)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】