説明

水素製造装置およびその停止方法

【課題】不活性ガスを用いることなく、凝縮水の発生を防止し、装置内部が負圧になることを防止することのできる水素製造装置およびその停止方法を提供する。
【解決手段】改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置の停止方法において、水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、a)水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する工程、および、b)プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段を用いて、プロセス流体流通領域の温度を、プロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、プロセス流体流通領域に水を供給することによりプロセス流体流通領域の圧力が負圧になることを防止する工程を有する。この方法を行うための水素製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は都市ガスや灯油等を改質原料とし、改質原料を改質して水素を製造する水素製造装置およびその停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しいエネルギー変換技術として燃料電池が注目されている。固体高分子形など、多くのタイプの燃料電池において、燃料電池の燃料極で実際に電極反応するのは水素である。しかし、水素よりも都市ガスや灯油等の炭化水素系燃料の方が供給体制や取り扱いにおいて優れる面があるため、これらを改質して水素を含む改質ガスを製造する水素製造装置を備え、水素製造装置で得られた水素含有ガスを燃料電池の燃料極に供給する燃料電池システムが開発されている。水蒸気改質反応を利用して灯油等の改質原料を改質する改質器を備える水素製造装置が知られている。
【0003】
この改質器は例えば700℃程度の高温で運転される。一方、水蒸気改質触媒は空気に触れると劣化することがある。このため、停止に際して水素製造装置内を窒素ガス等の不活性ガスによってパージしながら降温することが行われている。しかしこの場合は、不活性ガスの供給、貯蔵、管理が必要となってしまう。
【0004】
燃料電池システムのパージ用に用いる不活性ガスを簡単に供給でき、かつ部材の交換などの不要なメンテナンス性の高い燃料電池発電システムのパージ手段を提供することを目的として、特許文献1には、空気中に含まれる酸素を除去する再生可能な酸素除去手段を利用した燃料電池発電システムが開示される。
【特許文献1】特開2002−280038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の技術では、不活性ガスのボンベなどを不要としているものの、空気供給ブロアから空気を脱酸素カラム(酸素除去手段)に送って酸素濃度を低減し、これを用いてパージを行っている。すなわち、依然として不活性ガスを用いており、酸素除去手段およびそのメンテナンスが必要となる。
【0006】
一方、水素製造装置を停止する際に、水素製造装置内部を外界から遮断することにより、空気が装置内部に入ることを防止することが考えられる。しかし、この場合、温度低下に伴って装置内部の圧力が低下し、装置内部が負圧になることがある。負圧になると、装置を構成する部材が損傷したり、場合によっては空気が外界から混入したりすることがあり得る。また、水蒸気改質には水蒸気が必要なため装置内には水蒸気が存在するが、温度低下に伴って水蒸気が凝縮することもある。改質触媒上で水の凝縮が起こると、触媒性能に悪影響が及ぶことがある。水素製造装置がシフト反応器や選択酸化反応器を有する場合、これらが備えるシフト反応触媒や選択酸化反応触媒に、凝縮水が悪影響を及ぼすこともある。
【0007】
従って、水素製造装置の停止の際には、凝縮水の発生を防止することと、負圧を防止することが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、不活性ガスを用いることなく、凝縮水の発生を防止し、装置内部、特にはプロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域が負圧になることを防止することのできる水素製造装置およびその停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置において、
水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する遮断手段;
該プロセス流体流通領域の温度を検知する温度検知手段;
該プロセス流体流通領域の圧力を検知する圧力検知手段;
該プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段;
プロセス流体流通領域に水を供給する水供給手段;および、
水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、該遮断手段を作動させて該プロセス流体流通領域を外界から遮断し、該加熱手段を作動させて該温度検知手段により検知した該プロセス流体流通領域の温度を該圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、該水供給手段を作動させてプロセス流体流通領域に水を供給する制御手段
を有する水素製造装置が提供される。
【0010】
前記制御手段が、前記圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力に応じて前記水供給手段によるプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行うことが好ましい。
【0011】
前記制御手段が、前記温度検知手段により検知したプロセス流体流通領域の温度に応じて前記水供給手段による前記水の供給の可否を判断することが好ましい。
【0012】
上記装置において、前記改質原料が液体燃料であることが好ましい。
【0013】
上記装置において、前記改質原料が灯油であることが特に好ましい。
上記装置において、前記加熱手段が、電気ヒータおよびバーナから選ばれる少なくとも一つであることができる。
【0014】
本発明により、改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置の停止方法において、
水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、
a)水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する工程、および、
b)該プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段を用いて、該プロセス流体流通領域の温度を、プロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、プロセス流体流通領域に水を供給することによりプロセス流体流通領域の圧力が負圧になることを防止する工程
を有する水素製造装置の停止方法が提供される。
【0015】
前記工程bにおいて、前記プロセス流体流通領域の圧力を検知し、該検知した圧力に応じてプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行うことが好ましい。
【0016】
前記工程bにおいて、前記プロセス流体流通領域の温度を検知し、該検知した温度に応じて前記水の供給の可否を判断することが好ましい。
【0017】
上記方法において、前記改質原料が液体燃料であることが好ましい。
【0018】
上記方法において、前記改質原料が灯油であることが特に好ましい。
上記方法において、前記加熱手段として、電気ヒータおよびバーナから選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、不活性ガスを用いることなく、凝縮水の発生を防止し、水素製造装置内部、特にはプロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域が負圧になることを防止することのできる水素製造装置およびその停止方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、水素製造装置は、改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する。水素製造装置は、改質ガス中のCO濃度を低減するCO除去器を備えてもよい。CO除去器は、シフト反応(CO+H2O→CO2+H2)によりCO濃度を低
減するシフト反応器と、COの選択酸化反応(2CO+O2→2CO2)によりCO濃度を低減する選択酸化反応器との何れか一方を有することができる。例えば、固体高分子形燃料電池に供給する水素含有ガスを製造するためには、CO濃度低減の観点から、改質器、シフト反応器および選択酸化反応器をこの順(改質ガスの流れについて)に備える水素製造装置が好適である。
【0021】
本発明においては、水素製造装置の停止に際して、水素製造装置への改質原料の供給を停止した後、次の工程aおよびbを行う。これにより、不活性ガスを用いることなく、凝縮水の発生を防止しつつ、水蒸気によってプロセス流体流通領域を保圧することができる。
a)プロセス流体流通領域を外界から遮断する工程。
b)プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段を用いて、プロセス流体流通領域の温度を、プロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、プロセス流体流通領域に水を供給することによりプロセス流体流通領域の圧力が負圧になることを防止する工程。
【0022】
プロセス流体流通領域とは、水素製造時にプロセス流体が流通する領域であり、改質原料、水、あるいは改質ガス(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなど。改質ガスがシフト反応および/または選択酸化反応を経ていてもよい)が流通可能な領域を意味する。本発明において、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域は、少なくとも改質器に備わる改質触媒層を収容する空間を含む。水素製造装置がシフト反応器や選択酸化反応器を有する場合、プロセス流体流通領域は、シフト反応器に備わるシフト反応触媒層を収容する空間や、選択酸化反応器に備わる選択酸化反応触媒層を収容する空間も含むことができる。後述するように改質器がバーナを有することもあるが、バーナ燃焼ガス流路は、プロセス流体流通領域には該当しない。バーナ燃料ガス流路は空気と接触しても構わないので、水素製造装置の停止時に大気開放してよい。
【0023】
工程aにおいて、プロセス流体流通領域を外界から遮断するためには、水素製造装置への流体供給ラインおよび流体排出ラインを閉じればよい。
【0024】
水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、水素製造時には改質器を加熱する。このために、改質器には改質触媒層を加熱する加熱手段が備わる。例えば、水素製造装置で高温ガスを発生させるか、水素製造装置外から高温ガスを供給し、この高温ガスとの熱交換によって改質触媒層を加熱する。高温ガスとしては何らかの燃料を燃焼させた燃焼ガスが通常用いられる。代表的には、改質器が加熱手段としてバーナを備える。
【0025】
水素製造装置停止時には、水素製造装置への改質原料の供給を停止する。このとき、改質反応に必要な熱を供給する必要が無くなるので、上記加熱手段による加熱を停止する。この加熱停止は、改質原料の供給停止とあわせて適宜行えばよい。
【0026】
工程bにおいて、プロセス流体流通領域の温度を、プロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上にすることにより、水素製造装置の内部において水が凝縮することを防止する。
【0027】
このために、プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段を用いる。このプロセス流体流通領域加熱手段として、電気ヒータおよびバーナの一方もしくは両方を用いることができる。つまり、プロセス流体流通領域加熱手段は一つでも複数でもよく、また一種類の加熱手段のみ用いることもできるし、複数種の加熱手段を用いることもできる。
プロセス流体流通領域加熱用の電気ヒータとしては、シースヒータなど公知の電気ヒータを適宜用いることができる。
また、プロセス流体流通領域加熱用のバーナには、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給するために使用しているもの、つまり改質器に備わる改質触媒層加熱用のバーナを流用することができる。あるいは、改質触媒層加熱用のバーナとは別に、適宜のバーナを用いることもできる。
【0028】
プロセス流体流通領域の温度に分布があることもある。その場合、触媒に凝縮水が接触しないようにプロセス流体流通領域の温度を調節すればよいが、好ましくはプロセス流体流通領域の全部において凝縮水が発生しないように、プロセス流体流通領域の全部をプロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上にする。ここでいう触媒は、改質触媒、シフト反応触媒および選択酸化反応触媒のうちの、存在する全ての触媒を意味する。具体的には、予備実験等により装置停止時に最も低温となる部分を知っておき、その部分の温度がプロセス流体流通領域の圧力における沸点以上となるようにプロセス流体流通領域加熱手段で温度調節することができる。
【0029】
凝縮水が発生するか否かは、プロセス流体流通領域の圧力に依存する。しかし、プロセス流体流通領域の温度を厳密に圧力に連動させて制御する必要はない。見込まれる圧力に対して凝縮水の発生を防止することのできる温度に適宜制御すればよい。例えば環境圧力が大気圧であり、水素製造装置が常圧型である(ほとんど大気圧に近い圧力で運転される)場合には、100℃よりやや高い温度、例えば110℃程度に制御すれば、停止時に凝縮水の発生を防止することができる。
【0030】
このように、プロセス流体流通領域が外界から遮断され、温度調節された状態で、水素製造装置の温度低下とともに装置内部の圧力が下がる。このとき、プロセス流体流通領域に存在する水の量が、プロセス流体流通領域が負圧になることを防止できる量、すなわちプロセス流体流通領域が環境圧力未満になることを防止するに足る量より少なくなる。このため、プロセス流体流通領域に水を供給する。これによってプロセス流体流通領域の圧力を水蒸気によって環境圧力以上にすることができる。
【0031】
具体的には、工程bにおいて、プロセス流体流通領域の圧力を検知し、検知した圧力に応じてプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行うことができる。
【0032】
圧力を検知する個所としては、プロセス流体流通領域の圧力が最も低くなる個所を採用すればよい。ただし、実質的に圧力が均一となっていると考えることができるため、任意の個所の圧力を検知することができる。
【0033】
保圧のためにプロセス流体流通領域に供給する水は、液体であっても気体であっても気液混合相であってもよい。プロセス流体流通領域に供給された液体(水)は、プロセス流体流通領域が水の沸点以上に調節されているため気化する。
【0034】
なお、工程bは、プロセス流体流通領域に空気が流入することを防止するためにプロセス流体流通領域を外界から遮断した状態で行うが、上述のように水の供給は行う。
【0035】
また、工程bにおいて、プロセス流体流通領域の温度を検知し、検知した温度に応じて水の供給の可否を判断することができる。これにより、水供給による当該領域の温度低下を抑え、負圧および水凝縮をより確実に回避することができる。
【0036】
また、工程bにおいて、プロセス流体流通領域の温度を検知して、当該領域が水の沸点以上となるようにプロセス流体流通領域加熱手段で制御することにより、水供給による当該領域の温度低下を抑えることで負圧を回避することができる。また、当該領域の温度低下が大きく当該領域を水の沸点以上に保持することができなくなった場合にも、水の供給を停止する安全回路を設けることにより、水凝縮を回避することができる。
【0037】
前記改質原料が液体燃料である場合、中でも灯油である場合、本発明は特に有効である。なぜなら、改質原料が都市ガス等の気体である場合、その気体をプロセス流体流通領域に封入することも考えられるが、改質原料が液体である場合はこのような処置は難しいからである。特に、灯油は入手容易性や取り扱い性に優れている点で改質原料として好ましい。しかし、気化温度が比較的高いため、灯油を気化してプロセス流体流通領域に封入する場合、灯油の凝縮を防ぐためにプロセス流体流通領域を比較的高温にしなければならない。一方、水蒸気による保圧は、プロセス流体流通領域を例えば100℃程度にすればよく、水素製造装置を適宜断熱材で覆うことにより、保温のための電気ヒータやバーナなどのプロセス流体流通領域加熱手段の所用エネルギーは小さくて済む。
【0038】
上記のように水蒸気による保圧を行うために、改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置であって、水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する遮断手段;
プロセス流体流通領域の温度を検知する温度検知手段;
プロセス流体流通領域の圧力を検知する圧力検知手段;
プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段;
プロセス流体流通領域に水を供給する水供給手段;および、
水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、遮断手段を作動させてプロセス流体流通領域を外界から遮断し、電気ヒータを作動させて温度検知手段により検知したプロセス流体流通領域の温度を圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、水供給手段を作動させてプロセス流体流通領域に水を供給する制御手段
を有する水素製造装置を用いることができる。
【0039】
遮断手段としては、流路を遮断可能な公知の遮断手段、例えばバルブを用いることができる。温度検知手段としては、使用する環境において温度を検知可能な公知の温度検知手段、例えば熱電対を用いることができる。圧力検知手段としては、使用する環境において圧力を検知可能な公知の圧力検知手段、例えば圧力計を用いることができる。プロセス流体流通領域を加熱する加熱手段としては、電気ヒータやバーナを用いることができる。プロセス流体流通領域加熱用の電気ヒータとしては、前述のように、シースヒータなど公知の電気ヒータを用いることができる。プロセス流体流通領域加熱用のバーナとしては、改質器に備わるバーナを用いることができる。水供給手段としては、水タンクや水道などに接続された配管にポンプや流量調節バルブを設けて適宜形成することができる。また、プロセス流体流通領域に供給される水は、供給前に、イオン交換樹脂やフィルターを通じたものが好ましい。制御手段としては、温度調節や圧力調節に利用される公知の制御手段、例えば制御用コンピュータやシーケンサを適宜用いることができる。
【0040】
前記制御手段が、前記圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力に応じて前記水供給手段によるプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行うことができる。また、前記制御手段が、前記温度検知手段により検知したプロセス流体流通領域の温度に応じて前記水供給手段による前記水の供給の可否を判断することができる。これらのために、制御手段は適宜プログラミングされる。
【0041】
以下図面を参照しつつ本発明の一形態につき説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、図面の紙面上方は、鉛直上方に一致する。
【0042】
〔水素製造装置の構造と水素製造時の運転〕
図1に本発明を好適に実施しうる水素製造装置の一形態を示す。この水素製造装置では、CO除去器100と改質器200とが接続部材300を介して一体化されている。水素製造装置は断熱材(不図示)によって覆われている。
【0043】
CO除去器は、円筒状のシフト反応器1を有し、円環柱状の選択酸化反応器11を有する。選択酸化反応器は、シフト反応器の外周側に、シフト反応器と同心に設けられる。
【0044】
シフト反応器と選択酸化反応器とは一体化され、かつ、両者の間には断熱手段が設けられる。断熱手段として、珪酸カルシウム、セラミックファイバーやグラスウール等の公知の断熱材を利用できる。あるいは、内部に空気等の気体が封入された、もしくは内部が真空とされた二重壁構造を利用することもできる。ここでは断熱材21を介してシフト反応器と選択酸化反応器とが一体化されている。
【0045】
改質器200は、円筒状であり、その中心部に、水蒸気改質反応(吸熱反応)に必要な熱を供給するためのバーナ201が配される。バーナには燃焼筒202が付設される。バーナにはバーナ燃料とバーナ用空気が供給され、バーナ燃料が燃焼される。
【0046】
バーナ燃料としては可燃物を適宜使用することができるが、改質原料と同じ物をバーナ燃料として用いることが、簡易な構成となることから、好ましい。また、燃料電池システムにおいては、燃料電池のアノードオフガスをバーナ燃料として用いることもできる。
【0047】
改質器200は、円環柱状の改質反応部203を有する。改質反応部は、改質触媒層204を有する。
【0048】
バーナ201の燃焼ガスが燃焼筒202の内部を下降し、燃焼室の底板205にて方向転換し、燃焼筒と改質部との間を上昇し、改質器から排出される。改質反応部が燃焼ガスによって加熱される。一方、改質反応部203には改質原料と水蒸気とが供給され、改質触媒層において改質原料が水蒸気改質され、改質触媒層から改質ガスが排出される。
【0049】
改質ガスは、改質器底部の空隙206において集合し、接続部材300を経てCO除去器100に供給される。
【0050】
CO除去器においては、シフト反応器にてシフト反応により改質ガス中のCO濃度が低減される。そして、シフト反応器から得られるガス中のCO濃度が、選択酸化反応器にてCOの選択酸化反応によりさらに低減され、CO濃度が低減された改質ガスが、水素製造装置から得られる。
【0051】
改質器で得られる改質ガスが、シフト反応器1の上底に設けられた接続口から、シフト反応器に供給される。改質ガスはシフト触媒層2を通過する。この際、シフト反応によりCO濃度が低減される。
【0052】
シフト触媒層を加熱する電気ヒータ3が設けられる。電気ヒータにより、水素製造装置の停止時にプロセス流体流通領域を加熱する。またこの電気ヒータは、停止時に限らず、負荷変動時など、必要に応じてシフト触媒層を加熱することができる。ここでは、後述する貫通管5の内部に電気ヒータ3を設けている。
【0053】
シフト触媒層から排出されるガスは、シフト触媒層出口ガス集合用部材4により集合され、シフト反応器内部を貫通する貫通管5に導入される。また、貫通管5には、シフト触媒層出口ガスに加えて、外部から供給される選択酸化反応用空気も導入される。
【0054】
貫通管5は必ずしも設けなくてよい。例えば、シフト触媒層出口ガスも選択酸化反応用空気も、直接選択酸化反応器に導くことができる。
【0055】
貫通管を設ける場合には、シフト触媒層の少なくとも一部を貫通していることが好ましい。貫通管に選択酸化反応用空気を通すことにより、シフト反応器の冷却を行うことができる。この場合、貫通管はシフト反応器冷却手段(シフト反応器との熱交換によってシフト反応器を冷却する冷却手段)として機能する。
【0056】
また、貫通管にシフト触媒層出口ガスを通すことにより、シフト触媒層出口ガスと選択酸化反応用空気との混合を促進させることが可能となる。
【0057】
シフト触媒層出口ガスと選択酸化反応用空気との混合をより促進させるために、貫通管にガス混合器を設けることができる。ここでは貫通管5の途中にガス混合器6が設けられている。
【0058】
シフト触媒層出口ガスと選択酸化反応用空気との混合ガスが、貫通管から、選択酸化反応器11に導入される。貫通管を途中から分岐して、円環柱状の選択酸化反応器の相異なる複数の個所から混合ガスを導入することができる。このために、例えば、ガス混合器6と選択酸化反応器とを複数の管によって接続することができる。
【0059】
選択酸化反応器11には、選択酸化反応触媒層12が設けられている。この触媒層で、選択酸化反応用空気に含まれている酸素により、シフト触媒層出口ガスに含まれているCOが選択的に酸化され、CO濃度がさらに低減された水素含有ガスが得られる。このガスは例えば燃料電池のアノードガスとして利用される。
【0060】
選択酸化反応器11の外周側に、選択酸化反応器冷却手段(選択酸化反応器との熱交換によって選択酸化反応器を冷却する手段)として、円環柱状の冷却水流路22が設けられる。この冷却水流路は、シフト反応器および選択酸化反応器と同心である。冷却水流路には冷却水が供給され、冷却水は加熱されて水蒸気として改質器に供給される。
【0061】
冷却水流路に供給する冷却水は、適宜バーナ排ガス等の排熱を利用して予熱しておくことができる。冷却水は一部が蒸発した二相流となっていてもよい。冷却水は、選択酸化反応器を冷却する際に蒸発(沸騰)し、冷却水流路22から水蒸気が得られる。
【0062】
なお前記シフト反応器冷却手段は、シフト反応器との熱交換によってシフト反応器を冷却し、従って冷却に際してシフト反応器との間の物質移動は伴わない。シフト反応器冷却手段は、断熱手段よりシフト反応器側に配される。選択酸化反応器冷却手段は、選択酸化反応器との熱交換によって選択酸化反応器を冷却し、従って冷却に際して選択酸化反応器との間の物質移動は伴わない。選択酸化反応器冷却手段は、断熱手段より選択酸化反応器側に配される。いずれの冷却手段にも、適宜の冷却媒体を内部に流通させる熱交換構造を採用することができる。また、シフト反応器冷却手段は、シフト反応温度を管理することを目的として設けられるので、シフト反応触媒層を冷却可能な位置に配される。選択酸化反応器冷却手段は、選択酸化反応温度を管理することを目的として設けられるので、選択酸化反応触媒層を冷却可能な位置に配される。
【0063】
例えば、選択酸化反応器冷却手段による冷却によって選択酸化反応器の温度が低下し、その影響によって間接的にシフト反応器の温度が低下することが考えられるが、本発明では断熱手段によってその影響を抑制することができる。なお、この場合も選択酸化反応器冷却手段は選択酸化反応器と熱交換しており、選択酸化反応器とシフト反応器とが(断熱手段を介して)熱交換するのであって、選択酸化反応器冷却手段とシフト反応器とが熱交換しているのではない。
【0064】
なお、改質原料として液体燃料を用いる場合、液体燃料を予め気化したうえで水素製造装置に供給することもできるし、水素製造装置内に設けた気化器で液体燃料を気化して使用してもよい。
【0065】
〔水素製造装置の停止方法〕
さて図1に示した水素製造装置を停止する方法について述べる。
【0066】
停止時には、まず改質器、特にはその改質部203への改質原料の供給を停止する。そして、バーナ201へのバーナ燃料およびバーナ用空気の供給も停止する。
【0067】
このとき、バルブ401が閉じられ、改質原料供給ラインが閉止される。また、バルブ402を閉じ、選択酸化用空気の供給を停止するとともに、選択酸化用空気供給ラインを閉止する。さらに、バルブ403を閉じることにより水素含有ガス排出ラインを閉止する。これらバルブ操作により、プロセス流体流通領域が外界から遮断される。この段階では自動バルブ42も閉じてよい。なお、プロセス流体流通領域を外界から遮断する場合も、保圧のための水供給は許容されるので、自動バルブ42は必ずしも閉じる必要はない。
【0068】
この装置において、プロセス流体流通領域は、改質部203、改質器底部の空隙206、接続部材300、シフト反応器1、シフト触媒層出口ガス集合用部材4、貫通管5、ガス混合器6および選択酸化反応器11で構成される、連通した領域である。
【0069】
バルブ401、402および403を自動バルブとしてもよい。
【0070】
次に、温度計31によって、冷却水流路の温度を監視し、この温度が設定温度(例えば110℃とする)となるように電気ヒータの電源32を操作する。この水素製造装置の中で、保圧のための水(液体でよい)が供給される個所が最も低温になるため、冷却水流路の下部に温度計を設置する。また、温度を監視する点としては、冷却水流路下部の温度に加えて、温度が低下しやすい部位、例えば、改質部の上層部などを、採用することもできる。
複数個所の温度を監視する場合、それぞれの個所の温度に相異なる設定温度を設定してもよいし、全ての個所の温度に、一つの設定温度を設定してもよい。いずれの個所の温度も設定温度となるように、電気ヒータの電源を操作することができる。
ただし、この加熱はプロセス流体流通領域で水の凝縮を防ぐためのものなので、監視した温度が厳密に設定温度になるような制御は不要である。したがって電気ヒータが一つであって複数個所の温度を監視する場合でも、複数個所の全ての温度が設定温度を下回らないように電気ヒータを制御することができる。つまり複数の監視温度のうちのいずれの温度でも一つの温度が設定温度を下回ったら、電気ヒータを作動させその温度が設定温度以上となるように制御することができる。
また、プロセス流体流通領域加熱手段として、電気ヒータではなくバーナを用いる場合も、上記と同様である。この場合は、電源を操作する替わりにバーナの作動(燃焼開始および燃焼停止)を操作すればよい。例えば複数個所の温度を監視し、そのうちのいずれの温度でも一つの温度が設定温度を下回ったら、一定時間バーナを燃焼させるような制御を行なうことができる。この場合、予め予備実験などで妥当なバーナ燃焼時間を求めておき、その時間だけバーナを燃焼させるようにタイマーで制御することができる。電気ヒータについてもタイマーで一定時間作動させてもよい。
電気ヒータとバーナとを併用する場合、例えば、或る個所(一個所でも複数個所でもよい)の温度を電気ヒータで制御し、別の個所(一個所でも複数個所でもよい)の温度をバーナで制御することができる。
電気ヒータとバーナを併用する場合、電気ヒータおよびバーナによる温度調節は、例えば、
i)電気ヒータによる温度調節は、温度監視点を選択酸化触媒下部温度のみとする、
ii)バーナによる温度調節は、温度監視点を改質部上層部温度のみとする、
などというように、電気ヒータとバーナのそれぞれについて任意の監視温度点を設けて行うことができる。
【0071】
上記のように温度調節を行うとともに、圧力計41によってプロセス流体流通領域の圧力を監視する。冷却水流路22は、配管によって改質触媒層と連通している。圧力計41で測定された圧力が、所定の下限値以下となった場合、自動弁42を開き冷却水流路に水を供給する。冷却水流路は水の沸点以上になっているので、水はここで沸騰し、発生した水蒸気によってプロセス流体流通領域の圧力が上昇する。測定された圧力が、所定の上限値以上となった場合には、水の供給を停止する。
【0072】
上記所定の下限値として、環境圧力を採用することができる。あるいは、余裕をもって環境圧力より高めに設定することができ、例えば5kPaG(圧力単位におけるGはゲージ圧を意味する)とすることができる。上記所定の上限値は、圧力調節の容易性を考慮して適宜決めることができ、例えば10kPaGとすることができる。
【0073】
このように温度調節と圧力調節を行うことによって水素製造装置内が水蒸気により保圧される。
【0074】
温度調節と圧力調節のために、制御手段51を用いることができる。温度計31で測定した温度に対応する信号が制御手段に送られ、電気ヒータに供給する電力に対応する信号が制御手段から電源32に送られる。また、圧力計41で測定した圧力に対応する信号が制御手段に送られ、自動バルブ42を開閉する信号が制御手段から自動バルブへ送られる。制御手段としては、温度調節や圧力調節に利用される公知の制御手段、例えば制御用コンピュータやシーケンサを適宜用いることができる。
【0075】
〔改質原料〕
改質原料としては、水蒸気改質反応により水素含有ガスを得ることのできる公知の物質を用いることができる。例えば、天然ガスもしくは都市ガス、LPG(液化石油ガス)、ナフサ、灯油等の炭化水素系燃料を用いることができる。ナフサ、灯油などの液体燃料を用いる場合には、適宜気化して用いることができる。前述のように、改質原料として、常温常圧(25℃、0.101MPa)で液体である可燃性物質を使用する場合、なかでも灯油を使用する場合に本発明は特に効果的であり、好ましい。
【0076】
硫黄は水蒸気改質触媒を不活性化させる作用があるため、改質器に供給される改質原料中の硫黄濃度はなるべく低いことが好ましい。好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下である。このため、必要であれば、予め脱硫した改質原料を改質器に供給することができる。このために水素製造装置の改質器上流に脱硫器を設け、脱硫器で脱硫した改質原料を水素製造装置に供給することができる。水素製造装置が脱硫器を含む場合、脱硫前改質原料と脱硫後改質原料との混合を防ぐために、停止時には水素製造装置の脱硫器と改質器との間を遮断しておくことが望ましい。
【0077】
〔シフト反応器〕
シフト反応器では、供給されるガス中の一酸化炭素含有量(ドライベースのモル%)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下までに落とす。
【0078】
シフト反応触媒としては、例えば、Fe−Crの混合酸化物やZn−Cuの混合酸化物を用いることができ、また白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用いることができる。
【0079】
シフト反応は、CO除去性能の観点から、100℃以上500℃以下で行うことが好ましい。また、高温シフト反応器と低温シフト反応器の二段階に分けることで、各々の反応器に充填された触媒の温度を適正にすることが可能である。その場合は、改質ガスの流れに対し、上流から、高温シフト反応器、低温シフト反応器の順に設置する。
【0080】
シフト反応はガス空間速度GHSV(15℃、0.10MPa換算。以下GHSVについて同じ)800〜3000h-1で行うことが好ましい。
【0081】
高温シフト反応触媒としては、300〜500℃におけるシフト反応活性の観点から、硫黄の他に、鉄、クロムおよび銅から選ばれる少なくとも一種の金属を含むものが好ましい。例えば、高温シフト反応触媒の酸化物基準での質量組成としては、硫黄を含み、かつ鉄を60〜95%、クロムを1〜30%、銅を0.1〜10%含むものが好ましい。
【0082】
高温シフト反応工程において、GHSVが200〜10000hr-1であることが好ましい。200hr-1以上とすることでガス処理能力および経済性を良好にすることができ、10000hr-1以下であればCO濃度低減能に優れる。
【0083】
低温シフト反応触媒としては、シフト反応活性の観点から、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、マンガン、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムから選ばれる少なくとも一種の金属を含むものが好ましい。含有する総金属量は酸化物基準で5〜90質量%が好ましい。
【0084】
〔選択酸化反応器〕
選択酸化反応器では、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換することにより一酸化炭素濃度を好ましくは10ppm以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。酸素源としては例えば空気を用いることができる。
【0085】
選択酸化は、100〜200℃を好適な使用温度とする選択酸化触媒を用いて行うことができる。供給する酸素とCOのモル比(O2/CO比)は1.0〜2.0が好ましく、
またGHSVで7000〜10000h-1が好ましい。
【0086】
〔改質器〕
水蒸気改質反応を行う改質器では、改質原料と水が反応して一酸化炭素と水素が得られる。メタンを例にすれば、CH4+H2O→3H2+COの反応が進む。この反応は大きな
吸熱を伴う。この熱を供給するために、バーナ等の加熱手段を用いることができる。
【0087】
水蒸気改質反応は、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応を行うことができる。
【0088】
反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。
【0089】
改質反応の圧力は、適宜設定できるが、好ましくは大気圧〜20MPaG(圧力単位におけるGはゲージ圧を意味する)、より好ましくは大気圧〜5MPaG、さらに好ましくは大気圧〜1MPaGの範囲である。
【0090】
反応系に導入するスチームの量は、炭化水素油に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。この時の液空間速度(LHSV)は炭化水素燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0091】
〔水/蒸気系〕
水蒸気改質に必要な水蒸気を供給するために、水素製造装置は水蒸発器を備えることができる。また、安定運転の観点から、水蒸発器から発生した水蒸気を過熱するスーパーヒーターを有することもできる。
【0092】
〔他の機器〕
上記以外にも、水素製造装置の公知の構成要素は、必要に応じて適宜水素製造装置に設けることができる。具体例を挙げれば、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワなどの加圧手段、流体の流量を調節するため、あるいは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、液体を気化する気化器、気体を凝縮する凝縮器、スチームなどで各種機器を外熱する加熱/保温手段、各種流体の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、動力用の電気系統などである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の水素製造装置およびその停止方法は、固体高分子形燃料電池などに供給する水素含有ガスを製造するための水素製造装置を停止するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を実施するために使用することのできる水素製造装置の一形態の側断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0095】
1 シフト反応器
2 シフト反応触媒層
3 電気ヒータ
4 シフト触媒層出口ガス集合用部材
5 貫通管
6 ガス混合器
11 選択酸化反応器
12 選択酸化反応触媒層
21 断熱材
22 冷却水流路
31 温度計
32 電気ヒータ電源
41 圧力計
42 自動弁
51 制御手段
100 CO除去器
200 改質器
201 バーナ
202 燃焼筒
203 改質部
204 改質触媒層
205 底板
206 改質器底部の空隙
300 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置において、
水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する遮断手段;
該プロセス流体流通領域の温度を検知する温度検知手段;
該プロセス流体流通領域の圧力を検知する圧力検知手段;
該プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段;
プロセス流体流通領域に水を供給する水供給手段;および、
水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、該遮断手段を作動させて該プロセス流体流通領域を外界から遮断し、該加熱手段を作動させて該温度検知手段により検知した該プロセス流体流通領域の温度を該圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、該水供給手段を作動させてプロセス流体流通領域に水を供給する制御手段
を有する水素製造装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記圧力検知手段により検知したプロセス流体流通領域の圧力に応じて前記水供給手段によるプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行う請求項1記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記温度検知手段により検知したプロセス流体流通領域の温度に応じて前記水供給手段による前記水の供給の可否を判断する請求項1または2記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記改質原料が液体燃料である請求項1〜3のいずれか一項記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記改質原料が灯油である請求項4記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記加熱手段が、電気ヒータおよびバーナから選ばれる少なくとも一つである請求項1〜5の何れか一項記載の水素製造装置。
【請求項7】
改質原料を水蒸気改質して水素を含む改質ガスを得る改質器を有する水素製造装置の停止方法において、
水素製造装置への改質原料の供給を停止した後に、
a)水素製造装置の、プロセス流体が流通可能な領域であるプロセス流体流通領域を外界から遮断する工程、および、
b)該プロセス流体流通領域を加熱するための加熱手段を用いて、該プロセス流体流通領域の温度を、プロセス流体流通領域の圧力における水の沸点以上に調節しつつ、プロセス流体流通領域に水を供給することによりプロセス流体流通領域の圧力が負圧になることを防止する工程
を有する水素製造装置の停止方法。
【請求項8】
前記工程bにおいて、前記プロセス流体流通領域の圧力を検知し、該検知した圧力に応じてプロセス流体流通領域への水供給の開始および停止を行う請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記工程bにおいて、前記プロセス流体流通領域の温度を検知し、該検知した温度に応じて前記水の供給の可否を判断する請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記改質原料が液体燃料である請求項7〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記改質原料が灯油である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記加熱手段として、電気ヒータおよびバーナから選ばれる少なくとも一つを用いる請求項7〜11の何れか一項記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−303134(P2008−303134A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80628(P2008−80628)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】