説明

水蒸気を優先的に取り出す廃棄物の処理装置および処理方法

【課題】還元溶融炉の炉上部に排ガス孔を設けて、そこから水蒸気を回収することにより、投入する廃棄物の予熱・乾燥時間の短縮と水素ガスの生成量を増加し、ひいては有害物質であるダイオキシンの発生を抑える。
【解決手段】還元溶融炉の炉本体上部に排ガス孔を設け、水蒸気を取り込み、取り込んだ水蒸気は炉下部の羽口より吹き込んで副原料のコークスとの還元反応により水素ガスを生成させ、従来法よりも多量に生成させるとともに炉内の投入物を短期間で乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物及び産業廃棄物を処理する還元溶融炉の炉下部に還元ガスを次工程に送るためのガス上昇管を設けるとともに炉本体上部に排ガス孔を設けて炉内部の水蒸気を回収することで、炉本体上部の乾燥を促進して処理を早めるほか、回収した水蒸気を炉下部の羽口から吹き込むことにより水素ガスの生成に利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市ごみと呼ばれる一般廃棄物や産業廃棄物等(以下、廃棄物と言う)の排出量が増加し、この廃棄物のほとんどが焼却処理により減量化され、残渣として焼却灰が発生し、最終処分場に埋め立てられている。しかし、前記廃棄物の排出量増加により、最終処分場不足の問題が発生している。
【0003】
この問題に有効に対処する手段として、出願人が提案した特許文献1記載の還元溶融炉がある。
【特許文献1】特開2004−132655号公報
【0004】
特許文献1記載の還元溶融炉は廃棄物等の被処理物と副原料としてコークスおよび石灰石が装入口から装入され、装入された被処理物及びコークス等は炉内で堆積して充填層を形成し、上段、中段、下段羽口より空気が供給され、廃棄物中の可燃分及びコークスが還元状態で溶融する。発生したガスは溶融炉内を炉下部から上昇し、廃棄物を予熱、乾燥、熱分解する。このように、投入された廃棄物、コークスおよび石灰石は炉下部に至るまでに水分は水蒸気となり、燃焼成分は熱分解され、固形物は溶融される。溶融物はスラグ排出口より外部に取り出される。また、前記被処理物の溶融時に発生する燃焼ガスや排ガス等の800℃以上のガスはガス回収管を通って後工程に送られ、熱エネルギーやガス資源等として利用することができる。
【0005】
特許文献1記載の還元溶融炉は廃棄物の充填レベルから3m以上低い位置にガス回収管を設け、800℃以上の還元ガスを回収することができる構造となっている。
【0006】
前記方法の場合、廃棄物の溶融により生成しうる水蒸気、水素ガス、一酸化炭素ガス等の生成ガスが混合された状態でガス回収管を通過するため、いずれか一種類のガスを利用する場合は分離装置により混合ガスを分離するしかなかった。
【0007】
また、炉の上部、特に廃棄物の充填レベルの上部では炉頂より投入された廃棄物の予熱・乾燥帯であるため、水蒸気の量が炉下部よりも多く、予熱・乾燥に時間を要することが課題となっていた。また、水蒸気とコークスとの還元反応により水素ガスが生成するが、上部に水蒸気が滞留しているため、その生成量が少ないことも課題となっている。
【0008】
一方、炉頂付近に排ガス孔を設け、その位置から排ガスを取り出す手段もとられている。前記方法の場合、水蒸気は得られやすいものの炉出口の排ガス温度が200〜300℃程度と低いため、有害物質であるダイオキシンが発生する可能性が高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特許文献1のような還元溶融炉の炉上部に排ガス孔を設けて、そこから水蒸気を回収することにより、投入する廃棄物の予熱・乾燥時間の短縮と水素ガスの生成量を増加し、ひいては有害物質であるダイオキシンの発生を抑えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)一般廃棄物及び産業廃棄物を処理する還元溶融炉で廃棄物の充填レベルから3m以上下に還元ガスを次工程に送るガス上昇管を設けるとともに廃棄物充填レベルより下でガス上昇管より上の位置にガスを炉外に出すための排ガス孔を設け、炉上部に滞留している水蒸気を排ガス孔で取り込み、取り込んだ水蒸気は炉下部の羽口より吹き込んで副原料であるコークスとの還元反応により水素ガスを生成させるとともに、炉内の投入物を短期間で乾燥させることを目的とした、水蒸気を優先的に取り出す廃棄物の処理装置および処理方法。
【0011】
(2)一般廃棄物及び産業廃棄物を処理する還元溶融炉で炉上部に滞留している水蒸気を排ガス孔で取り込み、取り込んだ水蒸気は炉下部の羽口より吹き込んで副原料であるコークスとの還元反応により水素ガスを生成させるとともに、炉内の投入物を短期間で乾燥させることを目的とした、(1)記載の水蒸気を優先的に取り出す廃棄物の処理装置および処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炉本体の上部に設けた排ガス孔を設け、前記排ガス孔から水蒸気を回収することにより、回収した水蒸気を炉内に空気を送り込む羽口に送り込み、炉内に充填しているコークスとの還元反応により、水素ガスを得ることができる。また、水蒸気を炉外に排出するため、炉上部の湿度が減少し、炉頂より投入する廃棄物の予熱・乾燥が早まり、廃棄物の溶融処理に要する時間を短縮することができる。さらに、排ガス孔より得られる水蒸気を羽口に吹き込んで高温で還元ガス化することで、水蒸気中に含まれているダイオキシンを分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る還元溶融炉本体の全体図である。図2は図1において回収した水蒸気を炉下部に設けた羽口に吹き込む例である。図3(a)は排ガス孔にフィルターを設けた例、図3(b)は排ガス孔に分離装置を設けた場合の例である。図4は図1において回収した水蒸気を温水などに利用する場合の例である。
【0014】
還元溶融炉1は廃棄物の被処理物および副材料としてコークスや石灰石の投入物2をスキップバケットに投入し、巻揚装置を用いて上昇させ、廃棄物を炉内に投入する。
【0015】
投入物2が炉内部で充填層を形成し、上段、中段、下段羽口から空気を供給して廃棄物がコークスとの還元状態で溶融、熱分解する。熱分解されたガスは炉上部に向かって上昇し、投入した廃棄物は炉上部の予熱・乾燥帯で温められ、内部に含まれる水分を蒸発させて乾燥させた後、コークスによる熱で熱分解及び溶融される。
【0016】
還元溶融炉1内で発生するガスとしては、予熱・乾燥の際に発生する水蒸気4、コークスとの還元反応により発生する水素ガス及び一酸化炭素ガスなどの還元ガス5が挙げられる。
【0017】
発生ガスのうち、水蒸気4については還元溶融炉1上部の廃棄物投入レベル3付近に空間に多く滞留している。これは、炉上部は投入した廃棄物の予熱・乾燥帯であり、この箇所で廃棄物に熱が加えられ内部の水分が水蒸気4となって放出されるためである。
【0018】
この還元溶融炉1内の上部に滞留している水蒸気4を含んだガスを廃棄物充填レベル3以下でガス上昇管の位置以上に設けた排ガス孔6に導き、回収する。ガスは空気よりも軽く下から上へ上昇するため、設置する角度は炉の水平方向に対して上方に傾けることが望ましい。
【0019】
排ガス孔6に図3(a)に示すようにダストを遮断するようなフィルター10を設けると、更に異物のない水蒸気が得られる。
【0020】
さらに図3(b)に示すように水蒸気4のみを選択分離するような分離装置11を設けることにより純度の高い水蒸気が得られる。
【0021】
炉外に排出された水蒸気4は排ガス管8を通過して炉下部に設けてある空気を炉内に送り込むための羽口9に、空気とともに送り込み、水蒸気と炉内に充填されたコークスとの還元反応により、水素ガスを発生させる。
【0022】
前記水蒸気4は温度が200〜300℃程度と低いため、ダイオキシンを含有している恐れがあるが、水蒸気4を羽口に吹き込み水素ガスを生成させることにより、ダイオキシンを分解することができる。
【0023】
また、回収した水蒸気4を加熱装置12を用いてさらに加熱して温水施設など13の熱源として利用しても良い。
【0024】
炉内に投入した廃棄物2とコークスとの還元反応により生成する水素ガスおよび一酸化炭素ガス等の還元ガス4は、ガス上昇管7に送られ、ガス燃焼室または冷却塔などの次工程に送られる。
【0025】
廃棄物充填レベル3から3m以上下で還元ガスである水素ガスの濃度が急激に増加するため、この点以下でガス上昇管を設けることが望ましい。そこで、ガス回収管7は還元溶融炉1の廃棄物充填レベル3から3m以上下に設け、上方に向かって伸びる構造とする。
【0026】
前記のようにガス回収管7を設置することにより、ガス回収管7に入ってくる還元ガス5の温度が800℃以上となり、ダイオキシン等の有害物質の発生のおそれがなくなる。
【実施例】
【0027】
本発明に従う溶融炉と従来法の溶融炉を用いて廃棄物の処理を行った。本発明に従う溶融炉は従来法の溶融炉の廃棄物充填レベルから1.5m下に排ガス孔を設けたものであり、回収された水蒸気は排ガス孔より排ガス管を通って、炉下部の羽口に接続し、空気とともに羽口に送り込まれる。また、処理した廃棄物は一般廃棄物2t/日である。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表1および表2より、炉上部に排ガス孔5を設けて水蒸気3を回収することにより、炉上部の水蒸気量が減少するとともに、廃棄物の乾燥に要する時間が短縮された。さらに、水素ガス生成量も増加し、予熱・乾燥時間の短縮と水素ガス生成量の増加が実証された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う還元溶融炉の概略図
【図2】水蒸気を羽口に吹き込むときの例
【図3】排ガス孔にフィルターおよび分離装置を設けた場合の例
【図4】水蒸気を加熱装置に送って温水などに利用する場合の例
【符号の説明】
1 還元溶融炉
2 廃棄物
3 廃棄物充填レベル
4 水蒸気
5 還元ガス
6 排ガス孔
7 ガス上昇管
8 排ガス管
9 羽口
10 フィルター
11 分離装置
12 加熱装置
13 温水施設など

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般廃棄物及び産業廃棄物を処理する還元溶融炉で廃棄物の充填レベルから3m以上下に還元ガスを次工程に送るガス上昇管を設けるとともに廃棄物充填レベルより下でガス上昇管より上の位置にガスを炉外に出すための排ガス孔を設ける水蒸気を優先的に取り出す廃棄物の処理装置および処理方法。
【請求項2】
一般廃棄物及び産業廃棄物を処理する還元溶融炉で炉上部に滞留しているガス特に水蒸気を排ガス孔で取り込み、取り込んだ水蒸気は炉下部の羽口より吹き込んで副原料であるコークスとの還元反応により水素ガスを生成させるとともに、炉内の投入物を短期間で乾燥させることを目的とした、請求項1記載の水蒸気を優先的に取り出す廃棄物の処理装置および処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−79885(P2009−79885A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276964(P2007−276964)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(598092166)株式会社還元溶融技術研究所 (22)
【Fターム(参考)】