説明

水質測定装置

【課題】 小型で機械的稼動部のない水質測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 セル内の被測定液の吸光度に基づいて被測定液の特性を測定する水質測定装置において、光源1からの光がセル3に入射され、セル3を透過した光が集光光学手段4に入射され、集光光学手段4で反射集光された光が第1の検出器5に入射され、集光光学手段4から反射集光された光が前記セル3を透過した光が第2の検出器6に入射され、第1の検出器5の出力と第2の検出器6の出力との比に基づいて前記吸光度を測定する。被測定液の濁度及び色度を測定する場合を実施例に示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸光度測定により色度及び濁度などの被測定液の特性を測定する水質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の水質測定装置の構成例を示す図である。11は光源、12a,12bは光源11から出た光を平行な光束とするための凹面鏡などからなる光学的手段(以下「ミラー」という)である。13は基準液や測定液を内部に満たすことができる、所定の長さからなる測定セルで、ミラー12aからの平行光が入射される。14は測定セル13における測定値との比較用に設けられた、基準液や測定液を内部に満たすことができる所定の長さ(ここでは測定セル13のセル長より短い)から成る比較セルで、ミラー12bからの平行光が入射される。測定セル13と比較セル14は図示しない流路により連結され、同一サンプル液が通るようになっている。15は円板状のフィルタホイールで、その上に390nm及び660nmのフィルタ16が1個ずつ90度の角度をおいて取り付けられており、一定速度で回転している。測定セル13を出た測定光と比較セル14を出た比較光は間欠的に2個のフィルタ16を通過した後それぞれ凹面鏡17a,17bにより反射・収束されて検出器18の位置で焦点を結ぶ。そして測定光及び比較光各々2種の波長光、合わせて4種の透過光の強さが検出器18により検出される。色度光(390nm)及び濁度光(660nm)の有効セル長における吸光度Ac,Atは次式で示される。
色度光での吸光度:Ac=-log[(ICMM/ICM0)/( ICRM/ICR0)]=k1・C(lM-lR) ・・・(1)
濁度光での吸光度:At=-log[(ITMM/ITM0)/( ITRM/ITR0)]=k2・T(lM-lR) ・・・(2)
【0003】
この2個の吸光度から色度C及び濁度Tの濃度は次式により演算される。
色度:C=β1(Ac−αAt) ・・・(3)
濁度:T=γ1At ・・・(4)
【0004】
ただし、
α : 濁度補償係数
β1 : 色度係数
γ1 : 濁度係数
ICR0 : ゼロ液(基準液)を入れた時の比較セル透過光量(色度光)
ICRM : 測定液を入れた時の比較セル透過光量(色度光)
ICM0 : ゼロ液を入れた時の測定セル透過光量(色度光)
ICMM : 測定液を入れた時の測定セル透過光量(色度光)
ITR0 : ゼロ液(基準液)を入れた時の比較セル透過光量(濁度光)
ITRM : 測定液を入れた時の比較セル透過光量(濁度光)
ITM0 : ゼロ液を入れた時の測定セル透過光量(濁度光)
ITMM : 測定液を入れた時の測定セル透過光量(濁度光)
lM : 測定セル長
lR : 比較セル長
C : 色度
T : 濁度
である。
【0005】
上記のような水質測定装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0006】
【特許文献1】実公平8−9633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような構成の水質測定装置では吸光度の演算において測定セル13と比較セル14の透過光量の比をとっているので、ランプ輝度の変動等の影響を相殺することができる。
【0008】
また、2波長を用いているので一台の装置で色度と濁度を同時に測定することができる。
【0009】
また、2波長を用いているので、サンプル液に混じる濁度分を補償した色度を測定することができる。
【0010】
しかし、測定セル13と比較セル14の2つのセルを用いるので、装置が大型になるという問題があった。
【0011】
また、フィルタホイール15を回転させるためにモータを用いており、機械的稼動部があるため定期的交換が必要になり、保守が面倒という問題があった。
【0012】
本発明はこのような課題を解決しようとするもので、小型化でき、機械的稼動部のない水質測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
セル内の被測定液の吸光度に基づいて前記被測定液の特性を測定する水質測定装置において、
光源と、
該光源から出射され前記セルを透過した光が集光される集光光学手段と、
該集光光学手段で集光された光が検出される第1の検出器と、
前記集光光学手段で集光された光が再び前記セルを透過した後検出される第2の検出器とを備え、
前記第1の検出器の出力と前記第2の検出器の出力との比に基づいて前記吸光度を測定する
ことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の発明である水質測定装置において、
前記検出器が濁度検出器及び色度検出器で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、単一セルの往路光と往復路光の透過光を検出し、両検出出力の比から求めた吸光度に基づいて色度及び濁度を測定することにより、小型化が可能で、機械的稼動部が不要な水質測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明につき図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る水質測定装置の一実施例を示す説明図である。
【0017】
図1において、光源1から出射された光は光学手段を構成するレンズ2で平行光にされる。測定セル3において、セル前面に設けられた例えばガラス(窓ガラス)等で構成された入射窓3aにはレンズ2からの平行光が入射される。入射窓3aを通過した光はセル3bに入射される。セル3bは所定の光路長を有し、基準液や測定液を内部に満たすことができる。出射窓3cはセル3b後面に設けられ、セル3b内部を通過した光が入射される。球面鏡4は集光光学手段を構成し、出射窓3cを通過した光が入射される。第1の検出器5には球面鏡4で反射・集光された光の一部が入射されて検出される。第2の検出器6には球面鏡4で集光された光の他の一部が測定セル3の出射窓3c、セル3b、入射窓3aを経由して入射され、検出される。ここで、光源1、レンズ2、入射窓3a、セル3b、出射窓3c、球面鏡4、第1の検出器5、第2の検出器6は同一光軸上に配置される。
【0018】
なお、図1では検出器を2つ示しているが、実際には色度と濁度についてそれぞれ2つづつ計4個の検出器を用いる。すなわち、図1において、第1の検出器5は濁度検出器5aと色度検出器5bが紙面に垂直方向に並んで配置され、第2の検出器6は濁度検出器6aと色度検出器6bが紙面に垂直方向に並んで配置される。この場合、濁度検出器5a,6aの前面には濁度光(660nm)用フィルタが貼付され、色度検出器5b,6bの前面には色度光(390nm)用フィルタが貼付される。
【0019】
上記の水質測定装置の動作を以下に説明する。レンズ2から出た平行光はその往路においてセル3b内の所定光路長を伝播中にセル3b内の液(基準液又は測定液)による吸収を受ける。第1の検出器5はこの往路において吸収を受けた透過光を検出する。第2の検出器6に入射する透過光は、球面鏡4で収束された光がその復路(往路と逆方向)においてセル3b内の液による吸収を再度受けているので、通過したセル3b内の光路長は第1の検出器5の入射光の場合の2倍となる。このとき吸光度、濁度及び色度は次式で演算される。
【0020】
濁度の場合、
IT1/IT10=10-kT*l*T
IT2/IT20=10-kT*2*l*T
Abs(T)=−log{(IT2/IT20)/(IT1/IT10)}
=kT*T*(2*l−l)
=kT*l*T ・・・(5)
T=γ2*Abs(T) ・・・(6)
となる。ただし、
IT10 : ゼロ液(基準液)を入れた時の濁度検出器5aの透過光信号
IT1 : 測定液を入れた時の濁度検出器5aの透過光信号
IT20 : ゼロ液を入れた時の濁度検出器6aの透過光信号
IT2 : 測定液を入れた時の濁度検出器6aの透過光信号
kT : 濁度の吸光係数
l : 測定セル3の単光路の光路長
T : 濁度
Abs(T) : 濁度の吸光度
γ2 : 濁度係数(実際には(6)式で濁度標準液の吸光度Abs(T)を測定して求める)
である。
【0021】
色度の場合、
IC1/IC10=10-kC*l*C
IC2/IC20=10-kC*2*l*C
Abs(C)=−log{(IC2/IC20)/(IC1/IC10)}
=kC*C*(2*l−l)
=kC*l*C ・・・(5)
C=β2*Abs(C) ・・・(6)
となる。ただし、
IC10 : ゼロ液(基準液)を入れた時の色度検出器5bの透過光信号
IC1 : 測定液を入れた時の色度検出器5bの透過光信号
IC20 : ゼロ液を入れた時の色度検出器6bの透過光信号
IC2 : 測定液を入れた時の色度検出器6bの透過光信号
kC : 色度の吸光係数
l : 測定セル3の単光路の光路長
C : 色度
Abs(C) : 色度の吸光度
β2 : 色度係数(実際には(6)式で色度標準液の吸光度Abs(C)を測定して求める)
である。
【0022】
上記のような構成の水質測定装置によれば、従来のように比較セルと測定セルの2種類のセルを必要とせず、単一の測定セルを使用しているので、小型化することができる。
【0023】
また、往復路光と往路光の検出出力に基づいて吸光度を測定しているので、機械的稼動部が不要で、定期的交換が不要となる。
【0024】
また、(5)式に示すように、吸光度の演算の際に往復路と往路の透過光信号の比をとっているので、光源1のランプ輝度の変動の影響を相殺することができる。
【0025】
また、2波長を用いているので一台の装置で色度と濁度を同時に測定できる。
【0026】
また、2波長を用いているので、(3)式と同様にしてサンプル液に混じる濁度分を補償した色度を測定することができる。
【0027】
なお、上記の実施例では被測定液の特性が色度及び濁度である場合を示したが、色度検出器又は濁度検出器を用いて色度又は濁度の一方を検出してもよい。
【0028】
また、色度及び濁度に限らず、吸光度に基づいて測定される被測定液の様々な特性の測定に適用することができる。
また、上記の実施例では集光光学手段として球面鏡を用いているが、干渉膜等測定セル3に再入射させることのできる、各種の集光光学手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る水質測定装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】従来の水質測定装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 光源
3 セル
4 集光光学手段
5 第1の検出器
6 第2の検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル内の被測定液の吸光度に基づいて前記被測定液の特性を測定する水質測定装置において、
光源と、
該光源から出射され前記セルを透過した光が集光される集光光学手段と、
該集光光学手段で集光された光が検出される第1の検出器と、
前記集光光学手段で集光された光が再び前記セルを透過した後検出される第2の検出器とを備え、
前記第1の検出器の出力と前記第2の検出器の出力との比に基づいて前記吸光度を測定する
ことを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
前記検出器が濁度検出器及び色度検出器で構成されることを特徴とする請求項1記載の水質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−70293(P2008−70293A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250586(P2006−250586)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】