説明

汚れを減少させたオレフィン重合方法

本発明はオレフィンの重合方法に関し、この方法は、エチレンおよびα−オレフィンから選択した1種以上のモノマーと担持型シングルサイト触媒の接触を1種以上のマグネシウムアルキル化合物を重合の大部分の間存在させて行なうことを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合中の反応槽の汚れを減少させる目的でマグネシウムアルキルを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの製造は一般にオレフィンモノマーの反応を担体とこの担体の表面に位置する触媒金属で構成されている触媒の存在下で起こさせることで行われる。そのような金属として遷移金属、特にチタンおよびジルコニウムが選択されることが知られている。水および他の極性不純物が少量でも存在しているとオレフィン重合が否定的な影響を受ける可能性がある。オレフィン重合では有害な物質、例えば水および他の極性作用剤などを捕捉させる目的でアルミニウムアルキル、例えばトリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどがしばしば用いられる。しかしながら、そのような化合物を用いるとそれらが反応槽の汚れの原因になり得る点で否定的な結果がもたらされる可能性がある。そのような汚れは特に気相およびスラリー相オレフィン重合の場合に顕著であり得る。
【0003】
反応槽の汚れを減少またはなくそうとして広範な研究が成されてきた。そのような汚れを減少させる方策には、(a)重合を開始する前にか或は重合が実質的に完了する前に捕捉剤を除去すること、(b)当該触媒を担体と化学的に結合させること、または(c)共活性化剤および触媒を当該担体の中に追いやる目的で超音波工程を用いることが含まれる。他の技術として、反応槽の汚れを減少させる目的で固体状担体に担持させたメタロセン触媒が用いられた。そのような技術はいくらか効果を有するが、それでも結果としてもたらされる汚れの度合は有意であり得る。従って、反応槽の汚れを費用効果的になくすか或は減少させ得る方法が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
1つの面において、本発明は、オレフィンの重合方法に関し、この方法は、エチレンおよびα−オレフィンから選択した1種以上のモノマーと担持型シングルサイト触媒の接触を式MgR[式中、Rはアルキル、アリール、アリールアルキル、−O−アルキル、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールであり、Rはアルキル、アリール、アリールアルキルである]で表される1種以上の化合物の存在(MgRを重合の大部分の間存在させる)下で行なうことを含んで成る。前記MgRを好適には実質的に重合の全体に渡って存在させる。
【0005】
式MgRで表される適切な化合物にはマグネシウムアルキルが含まれる。マグネシウムアルキルの例は、RおよびRの各々が独立してC−C12アルキルまたはC−C12ヒドロカルビルオキシである化合物であるが、但しRおよびRの中の少なくとも一方がアルキルであることを条件とする。いくつかの態様では、ジアルキルマグネシウム化合物(例えばジ−n−ブチルマグネシウム)が好適である。前記MgR化合物を反応槽の汚れが好ましく減少するいずれかの量で存在させてもよい。いくつかの態様では、そのようなマグネシウムアルキルの量を当該触媒とMgRと反応用媒体を一緒にした重量を基準にして少なくとも100ppmにする。
【0006】
本明細書に記述する重合反応に好適な触媒は、シングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒などである。メタロセン触媒は典型的に少なくとも1種の5員炭素環、ヘテロ置換芳香環または橋状(アンサ)配位子の員と配位状態にある遷移金属を含有して成る。ヘテロ置換5員炭素環がそのような員の一例である。
【0007】
本明細書に記述する方法は一般に例えばポリエチレン(場合によりα−オレフィンコモノマー、例えば1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどの残基を含有していていてもよい)、ポリプロピレンおよびそれらの様々な共重合体などを生じさせる目的でエチレンおよびα−オレフィンの液相、気相およびスラリー相重合に適用可能である。好適な重合および共重合反応には、当該モノマーの少なくとも約50モルパーセントがエチレンである反応および/またはプロピレンモノマーを含める反応が含まれる。本明細書で用いる如き「重合」には、文脈で他であると示さない限り、共重合が含まれる。
【0008】
本明細書で意図する様々な重合反応の中で気相およびまたはスラリー相反応が汚れをより起こし易い。従って、本発明は、また、反応槽の汚れを減少させた気相もしくはスラリー相オレフィン重合方法にも向けたものである。
【0009】
本発明の更に別の面もオレフィン重合方法に関し、この方法は、(a)エチレン、α−オレフィンおよびこれらの混合物から選択したモノマーと担持型シングルサイト触媒と1種以上のマグネシウムアルキル化合物を接触させそして(b)前記モノマーの重合を前記マグネシウムアルキルを実質的な量で積極的に除去することなく行なうことを含んで成る。
【0010】
例示態様の詳細な説明
本発明は、オレフィンの重合方法に関し、この方法は、エチレンおよびα−オレフィンから選択した1種以上のモノマーと担持型シングルサイト触媒の接触を式MgR[式中、Rはアルキル、アリール、アリールアルキル、−O−アルキル、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールであり、Rはアルキル、アリール、アリールアルキルである]で表される1種以上の化合物を重合の大部分の間存在、好適には実質的に重合の全体に渡って存在させて行なうことを含んで成る。そのような方法を用いると有利に重合中の反応槽の汚れの量が減少し得る。
【0011】
本発明では、反応槽の汚れを減少させる如何なるMgR化合物も使用可能である。そのような化合物の例は、RおよびRの各々が独立してC−C12アルキルまたはC−C12ヒドロカルビルオキシである化合物であるが、但しRおよびRの中の少なくとも一方がアルキルであることを条件とする。いくつかの化合物では、RとRが同じアルキル基である。そのアルキル基は置換によって重合反応が否定的な影響を受けない限り置換されていてもよい。ある種のアルキル基は例えばアリール基などで置換されている可能性がある。1つの特に好適なマグネシウムアルキルはジ−n−ブチルマグネシウムであり、これはAldrichから商業的に入手可能である。
【0012】
そのような反応で用いるMgR化合物の量は、用いる触媒の種類および重合方法に応じて多様であり得る。いくつかの態様では、マグネシウムアルキルの量を当該触媒とMgRと反応用媒体を一緒にした重量を基準にして少なくとも約20ppmにする。本発明の特定の態様では、MgR化合物を当該触媒とMgRと反応用媒体を一緒にした重量を基準にして約20から約10,000ppm、好適には約50から約1000ppm、最も好適には約50から約500ppm用いる。
【0013】
本発明では、当該技術分野で公知の如何なるシングルサイトオレフィン重合触媒も使用可能である。初期および後期両方の遷移金属錯体が入手可能である。有用な金属錯体には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、鉄およびニッケルの錯体が含まれる。特定の触媒は、担体の表面に担持されている遷移金属を含有して成る。担体には、無機酸化物、例えばSiO、Al、MgO、AlPO、TiO、ZrO、Crおよびこれらの混合物などが含まれる。他の担体には、カーボンブラック、ポリエチレ
ンおよびポリスチレンが含まれる。いくつかの態様において、好適な担体にはシリカ担体が含まれる。そのような担体には、米国特許第6,313,061号、7,005,400号および6,946,420号(これらの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている担体が含まれる。当該遷移金属1種または2種以上を当該担体に当業者に良く知られた様式で加えてもよい。例えば、触媒前駆体、活性化剤および溶媒を触媒担体と一緒に接触させた後、溶媒を除去することで触媒を生じさせてもよい。
【0014】
好適なシングルサイト触媒にはメタロセン触媒が含まれる。メタロセン触媒は典型的に少なくとも1種の5員炭素環、ヘテロ置換芳香環または橋状(アンサ)配位子の員と配位状態にある遷移金属を含有して成る。ヘテロ置換5員炭素環がそのような員の一例である。
【0015】
以下の用語を本説明および添付請求項で用いる場合、それらに下記の定義を持たせる。
【0016】
「シングルサイト触媒」は、二次的重合種の生成を妨げるように重合部位の立体および/または電子的特徴に影響を与える1種以上の補助的配位子を含有する触媒を指す。本発明で使用可能なシングルサイト触媒には、Chem.Rev.2000、100、1167−1682の中に見られるそれらが含まれる。典型的なシングルサイト触媒は、遷移金属と結合していて重合に安定な少なくとも1種の配位子を含有する担持型遷移金属錯体と活性化剤を有する複合体を含有して成る。メタロセン触媒が1つの好適なシングルサイト触媒である。
【0017】
「メタロセン」触媒は一般に少なくとも1種の5員炭素環、ヘテロ置換アリール(例えばヘテロ置換5員炭素環)または橋状(アンサ)配位子[遷移もしくは希土類金属に配位する能力を有する2個の環式部分であると定義されかつアンサブリッジBは炭素、ホウ素、ケイ素、燐、硫黄、酸素、窒素、ゲルマニウム種、例えばCHCH(エチレン)、MeSi(ジメチルシリル)、PhSi(ジフェニルシリル)、MeC(イソプロピリデン)、PhP(ジフェニルホスホリル)、MeSiSiMe(テトラメチルジシラン)などであり得る]の員と配位状態にある遷移金属(希土類金属を包含)を有する有機金属化合物を意味すると理解する。特に好適なメタロセンは、シクロペンタジエン(Cp)の誘導体であり、それには、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、テトラヒドロインデニル、ホスホシクロペンタジエン、1−メタロシクロペンタ−2,4−ジエン、ビス(インデニル)エタンおよびこれらの混合物が含まれる。メタロセン触媒に活性化を典型的には活性金属種と当該技術分野で良く知られているボラン、ボレートまたはアルミノキサン化合物を一緒にすることで受けさせる。
【0018】
そのようなメタロセンの遷移金属成分は、周期律表のIIIB族からVIII族およびこれらの混合物、好適にはIIIB、IVB、VB、VIB族および希土類(即ちランタニドおよびアクチニド)金属、最も好適にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、バナジウム、サマリウムおよびネオジムから選択可能である。これらの中でTi、ZrおよびHfが最も好適である。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「遷移金属」は一般に周期律表(IUPAC)のIIIA族からVIII族を指す。適切な遷移金属には、Ni、Fe、Ti、Mn、Zr、Cr、Hf、Pdおよびこれらの混合物が含まれる。遷移金属は様々な酸化状態で存在し得る。
【0020】
本明細書では用語「アルキル」を直鎖および分枝両方の炭化水素基を指す目的で用いる。そのような炭化水素基は飽和および不飽和であり得る。アルキル基は炭素原子を少なく
とも1個、いくつかの態様では炭素原子を1から12または1から6個有する。アルキル基は場合によりオレフィン重合反応に否定的な影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0021】
本明細書で用いる如き用語「アリール」は、炭素原子数が20以下(例えば炭素原子数が6−20)の芳香炭素環式部分であり、それは単環(単環式)であってもよいか或は一緒に融合または共有結合している多環(例えば二環式)であってもよい。そのようなアリール部分の適切な環部分のいずれかが定義する化学構造物と共有結合している可能性がある。アリール部分の例には、これらに限定するものでないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニルなどの如き化学基が含まれる。そのようなアリール部分が含有する炭素原子の数が6−14であるのが好適である。
【0022】
本明細書で用いる如き用語「アリールアルキル」は、いずれかの開放環位がアルキル部分で適切に置換されているC−C20アリールであり、前記アルキル鎖は(C1−7)直鎖もしくは(C−C)分枝鎖飽和炭化水素部分である。アリール(C−C)アルキル部分の例には、これらに限定するものでないが、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、ジフェニルメチル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、フルオレニルメチルおよび同族体、異性体などの如き化学基が含まれる。ベンジル基などの如き基はメチレン基を通して化学構造物と結合している可能性がある。
【0023】
用語「ヒドロカルビルオキシ」は、−O−R基(ここで、Rはアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)を指す。好適なヒドロカルビルオキシ基には、RがC−C12アルキルであるアルコキシが含まれる。
【0024】
「反応槽の汚れ」は、反応槽の中に存在していて重合性能に否定的な影響を与える膜または他の望まれない凝集物の蓄積および/または反応槽の内側表面に付着した重合体付着物の蓄積を指す。
【0025】
「大部分」は、半分以上(例えばモノマー量、重合パーセントなどの半分以上)を指す。
【0026】
重合を言及する時の用語「実質的に全部」は、総量(例えば重合度)の少なくとも90%、好適には少なくとも95%を指す。
【0027】
本明細書で用いる如き用語「マグネシウムアルキル」には、マグネシウムに配位しているアルキル基を2個有する化合物ばかりでなくマグネシウムに配位しているヒドロカルビルオキシ基を1個およびアルキル基を1個有する化合物が含まれる。
【0028】
本発明の触媒系は、本明細書に記述する触媒の存在下で1種以上のモノマーを重合させる目的で使用可能である。好適なモノマーにはエチレンおよびα−オレフィンが含まれる。そのようなモノマーの例には、炭素原子を1分子当たり2から8個含有するモノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどが含まれる。好適な重合体には、ポリエチレンホモ重合体およびエチレンと炭素原子を1分子当たり3から8個含有するモノオレフィンの共重合体が含まれる。
【0029】
本明細書に記述する触媒系の成分は、溶液重合、スラリー重合または気相重合技術を用いて重合体を製造しようとする時に有用である。本明細書で用いる如き用語「重合」には、共重合および三元重合が含まれ、用語「オレフィンおよびオレフィンモノマー」には、
オレフィン、アルファ−オレフィン、ジオレフィン、スチレン系モノマー、アセチレン系不飽和モノマー、環式オレフィンおよびこれらの混合物が含まれる。本明細書に記述する触媒はまた米国特許第3,624,063号、5,565,175号および6,239,235号(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に開示されている如き粒子形態工程でエチレン重合体を製造しようとする時にも使用可能である。本触媒は特に気相およびスラリー相重合で用いるに有用である。
【0030】
そのような重合反応を実施するに適した方法および装置は良く知られている。本発明で用いる触媒は、オレフィン重合技術分野の技術者に公知の同様な量かつ同様な条件下で使用可能である。スラリー方法では、典型的に、温度を約0℃から重合体が重合用媒体に溶解してくる温度より少し低い温度にする。気相方法では、温度を約0℃から重合体の融点より少し低い温度にする。溶液方法では、温度を典型的には重合体が反応用媒体に溶解する温度から約275℃にする。
【0031】
そのような重合反応で用いる圧力は決定的ではなく、大気圧以下から約20,000psiであってもよい。1つの好適な圧力範囲は大気圧から約1000psiであり、50から550psiが最も好適である。スラリーもしくは粒子形態の方法では、工程を適切には液状の不活性な希釈剤、例えば飽和脂肪族炭化水素などを用いて実施する。そのような炭化水素は典型的にCからC10の炭化水素、例えばイソブタン、ヘキサンおよびヘプタンなどである。重合体回収方法もまた良く知られていて、重合反応の種類に依存する。重合体の回収を気相方法では直接行い、スラリー方法では希釈剤の除去、濾過または蒸発で行い、或は溶液方法では溶媒の蒸発で行う。
【0032】
スラリー反応槽は垂直ループまたは水平ループを含有して成り得る。気相反応槽は流動床反応槽または管状反応槽を含有して成り得る。溶液反応槽は撹拌型タンクまたはオートクレーブ反応槽を含有して成り得る。いくつかの態様では、そのような反応槽を一緒にして複数反応槽系にすることも可能であり、それらを並列または直列で操作してもよい。粒子形態方法に適した装置が米国特許第3,624,063号、5,565,175号および6,239,235号に開示されている。
【0033】
反応ゾーンの中に存在させる触媒の量は、用いる方法に応じて、反応ゾーンの中の全物質の約0.001から約1重量%の範囲であってもよい。
【0034】
1つの態様ではスラリー重合方法を用いるが、そのような方法では当該触媒を不活性な有機媒体に入れて懸濁させそしてそれを重合工程全体に渡って懸濁状態に維持する目的で撹拌を行う。そのような有機媒体は例えばパラフィン、シクロパラフィンまたは芳香族であってもよい。エチレン重合体を製造しようとする場合には、スラリー重合工程を温度が約50℃から約110℃で圧力が約100psiから約700psiまたはそれ以上の範囲の反応ゾーン内で実施してもよい。少なくとも1種のモノマーを当該触媒が中に懸濁しているスラリーの液相中に入れることで、そのモノマーと触媒を接触させる。そのような触媒が示す活性および生産性は相対的に高い。本明細書で用いる如き「活性」は、1時間当たりに仕込んだ固体状触媒1グラム当たりに生じる重合体のグラムを指し、そして「生産性」は、仕込んだ固体状触媒1グラム当たりに生じた重合体のグラムを指す。
【0035】
本明細書に記述する方法では、生じる重合体の分子量を低くする必要がある場合、水素ガスを反応ゾーンの中に導入してもよい。
【0036】
以下の実施例は、請求する発明の具体的例示として示すものである。しかしながら、本発明を本実施例に示す具体的詳細に限定するものでないと理解されるべきである。本実施例および本明細書の残りの部分の中に示す部およびパーセントは全部特に明記しない限り
重量部および重量パーセントである。
【0037】
その上、数値の範囲、例えば個々の組の特性、測定の単位、条件、物理的状態またはパーセントなどを表す数値の範囲を本明細書または請求項に示す場合にはいずれも、そのような範囲内に入る如何なる数値(そのように示したいずれかの範囲内に入る如何なるサブセットの数値も包含)も言及または他の様式で文字通り明らかにその中に含まれることを意図する。
【実施例】
【0038】
一般的実験
特に明記しない限り、あらゆる操作を不活性な雰囲気下、例えばグローブボックスなどの中で実施した。
【0039】
ベンチ規模反応槽を用いた重合(BSR)をAutoclave Engineerの2LのZipperclave反応槽内で実施した。その反応槽をデスクトップコンピューター(これはWonderwareのバージョン7.1ソフトウエアプログラムで作動)で遠隔制御する。材料の取り扱いおよび予備充填を真空雰囲気のグローブボックス内で実施した。反応槽本体を所望の内部温度になるように予熱することでその装置の準備を行う。反応槽の温度制御をNeslab RTE−111加熱/冷却用浴で維持する。その装置の雰囲気を不活性にしかつ内側部分の乾燥の補助として前記装置を真空下に置く。EdwardのE2M8真空ポンプを用いて真空にする。重合試験を開始する目的で、ヘプタン、ヘキセンおよび共触媒(即ち捕捉剤)をグローブボックスの圧力/真空等級付きガラス「Pop」ボトルの内部に空気も水分も反応槽の中に入らないように充填する。その混合物をドライボックスから取り出した後、反応槽内部の真空を利用して溶液を反応槽の中に吸い込ませることでそれを試験装置の中に移す。反応槽の二重螺旋撹拌機を開始させそして所望の内部温度が維持されるように水浴の制御を開始するコンピュータープログラムを始動させる。温度を再び安定にしながら75mlの金属製Hokeボンベを前記グローブボックスの中に触媒が所望量で入っているスラリーおよび20mlのヘプタンと一緒に充填する。その容器を前記グローブボックスから取り出した後、注入部分と連結するが、あらゆる配管連結具を前以てパージしておく目的でアルゴンを外部から供給する。次に、前記装置に圧力を加えかつ監視する目的でコンピューターを用いて前記反応槽にエチレンおよび水素ガスを所望レベルになるように導入する。高圧のアルゴンガスを供給することを利用して前記触媒/ヘプタンスラリーを前記反応槽の中に吹き込む。次に、内部圧力を一定に維持する目的で更にエチレンガスを遠隔添加して最終的反応圧力を制御するようにソフトウエアプログラムを設定する。典型的な試験持続期間はその時点から1時間である。重合試験が完了した時点でガスの供給を止め、前記Neslab浴を外した後、冷却用水を反応槽のジャケットの中に導入する。内部の温度が50℃以下に降下した後、撹拌機を停止させ、全てのガスを前記装置から排出させた後、冷却用水を止める。次に、反応槽の本体を開けてポリエチレン生成物を取り出す。次に、反応槽の内壁および撹拌機を洗浄する。その装置を再び密封した後、その装置に漏れがないことを確かめる目的でアルゴンガスで加圧する。その装置が前記圧力試験に合格した時点でアルゴンを排出させ、反応槽を真空下に戻した後、次の試験サイクルを準備する目的でそれをNeslab浴で再加熱する。
【0040】
反応槽の汚れを報告する目的で用いた汚れ測定基準を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
メルトインデックス(MI)および高負荷メルトインデックス(HLMI)の測定をASTM方法D1238−04に従って実施する。メルトフロー率(MFR)はHLMI/MIであると定義する。見かけかさ密度(ABD)の測定をASTM方法D1895に従って実施する。
【0043】
(i)生成物の収量(グラム)を(ii)反応中に用いた触媒の量(グラム)と反応時間(時)を掛けた値で割ることで活性を決定する、即ち活性=収量/(触媒x時間)。
【0044】
本明細書では用語「捕捉剤」と「共触媒」を互換的に用いる。そのような使用は当該添加剤が二重の役割を果たす可能性があることと一致する。
【実施例1】
【0045】
Hfが基になった触媒の調製を一般にEP1462464A1に開示されている方法に従って実施した。この上に記述した如きBSR条件は、エチレンが224psiであり、ヘプタンが350mLであり、1−ヘキセンが15mLであり、捕捉剤(または共触媒)が1ミリモルであり、80℃で1時間であった。重合の結果を表2に示す。NMは、値を測定しなかったことを示す。
【0046】
【表2】

【実施例2】
【0047】
Tiが基になった触媒の調製を一般にUS20050255988A1に開示されている方法を用いて実施した。この上に記述した如きBSR条件は、エチレンが224psiであり、ヘプタンが350mLであり、M−R捕捉剤が2.0ミリモルであり、70℃で1時間であった。重合の結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【実施例3】
【0049】
用いた触媒は、シリカに担持されている(nBu−Cp)ZrClとメチルアルミノキサンであった。PCT特許出願番号2006/130953を参照のこと。BSR条件は、エチレンが224psiであり、1−ヘキセンが10mLであり、ヘプタンが350mLであり、80℃で1時間であった。いずれの反応も目に見える反応槽汚れを全くもたらさなかった。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの重合方法であって、エチレン、α−オレフィンおよびこれらの混合物から選択したモノマーと担持型シングルサイト触媒の接触を式MgR
[式中、
は、アルキル、アリール、アリールアルキル、−O−アルキル、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールであり、
は、アルキル、アリール、アリールアルキルである]
で表される1種以上の化合物を重合の大部分の間存在させて行なうことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記MgRを実質的に前記重合全体に渡って存在させる請求項1記載の方法。
【請求項3】
およびRが各々独立してC−C12アルキルである請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1個のC−C12アルキル基がアリール基で置換されている請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記MgRがジ−n−ブチルマグネシウムである請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記シングルサイト触媒がメタロセン触媒である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記メタロセン触媒が少なくとも1種の5員炭素環、ヘテロ置換芳香環または橋状(アンサ)配位子の員と配位状態にある遷移金属を含有して成る請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記重合を気相中で実施する請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記重合がスラリー相重合である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記モノマーの少なくとも約50モルパーセントがエチレンである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーがプロピレンを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項12】
気相もしくはスラリー相オレフィン重合反応槽内の反応槽汚れを減少させる方法であって、エチレン、α−オレフィンおよびこれらの混合物から選択したモノマーと担持型シングルサイト触媒の接触を式MgR
[式中、
は、アルキル、アリール、アリールアルキル、−O−アルキル、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールであり、
は、アルキル、アリール、アリールアルキルである]
で表される1種以上の化合物を重合の大部分の間存在させて行なうことを含んで成る方法。
【請求項13】
前記MgRを実質的に前記重合全体に渡って存在させる請求項12記載の方法。
【請求項14】
およびRが各々独立してC−C12アルキルである請求項12記載の方法。
【請求項15】
MgRがジ−n−ブチルマグネシウムである請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記シングルサイト触媒がメタロセン触媒である請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記モノマーの少なくとも約50モルパーセントがエチレンである請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記モノマーがプロピレンを含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記マグネシウムアルキルの実質的部分を前記重合の前もしくは重合中に除去した場合よりも反応槽の汚れが少ない請求項12記載の方法。
【請求項20】
オレフィンの重合方法であって、
(a)エチレン、α−オレフィンおよびこれらの混合物から選択したモノマーと担持型シングルサイト触媒と式MgR
[式中、
は、アルキル、アリール、アリールアルキル、−O−アルキル、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールであり、
は、アルキル、アリール、アリールアルキルである]
で表される1種以上の化合物を接触させ、
(b)前記モノマーの重合を前記重合の前もしくは重合中に前記マグネシウムアルキルを実質的な量で積極的に除去することなく行なう、
ことを含んで成る方法。
【請求項21】
およびRが各々独立してC−C12アルキルである請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記MgRがジ−n−ブチルマグネシウムである請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記シングルサイト触媒がメタロセン触媒である請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記重合を気相中で実施する請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記重合をスラリー相中で実施する請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2012−526895(P2012−526895A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510825(P2012−510825)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/032481
【国際公開番号】WO2010/132197
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】