説明

汚染を減少させるための方法及び装置

個体に関して産生される粒子の粒子生成の割合及び粒径範囲を判定するための方法及び装置が本明細書に記載される。装置(10)には、マウスピース(12)、フィルター(14)、低抵抗性の一方向弁(16)、粒子計数器(20)及びコンピュータ(30)が含まれる。装置はガス流量計(22)も含んでもよい。装置を用いて得られたデータは、粒子吐出を減少させるための製剤を個体に投与するべきであるかどうかを決定するために用いることができる。この装置は、クリーンルーム基準を確実に維持するために、クリーンルームへの入室前及び/又は入室後に用いると特に有用である。また、この装置を用いてエアロゾルを吐出する傾向の高い動物及びヒト(本明細書において「過剰産生者」、「強力な産生者」又は「スーパースプレッダー」と呼ばれる)を識別することができる。粒子生成を減少させる製剤も本明細書に記載されている。製剤は、身体の粘膜内層中の生物物理的性質を変えるのに十分な量で投与される。粘膜内層液に適用される場合、製剤は粘膜内層における、空気/液体界面でのゲル特性、表面弾性、表面粘度、表面張力及び体積粘弾性などの物理的性質を変える。製剤は、クリーンルームでの適用において特に重要な、呼吸、咳、くしゃみ、又は会話中の粒子形成に起因する周囲の汚染を最小限に抑えるために効果的な量で投与される。一実施形態では、投与用の製剤は非界面活性剤溶液である。一実施形態では、製剤は、塩、イオン性界面活性剤、あるいはイオン化状態であるか又は水性溶媒もしくは有機溶媒環境中で容易にイオン化されるその他の物質などの導電剤を含有する導電性の製剤である。製剤はエアロゾルの形態で投与されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年1月10日出願の米国特許出願番号第60/642,643号、2005年3月3日出願の国際出願PCT/US2005/006903号、及び2005年5月18日出願の米国特許出願番号第60/682,356号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、様々な環境における粒子吐出及び汚染を減少させるための方法、製剤、及び装置の分野にあって、クリーンルームで特に有用である。
【背景技術】
【0003】
クリーンルームは製品が製造される、制御された環境である。クリーンルームは、空気中に浮遊する粒子の濃度が指定された限度まで制御されている部屋である。空気中に浮遊するサブミクロンの汚染を排除することは、実際に制御の過程の一つである。これらの汚染物質は、人、過程、設備及び機器により生じる。汚染物質は絶えず空気から除去されねばならない。これらの粒子が除去される必要のあるレベルは、必要とされる基準に応じて異なる。最も良く用いられる基準は米国連邦規格209Eである。209Eは、クリーンルーム及びクリーンゾーンにおいて空気中に浮遊する粒子レベルに関する空気の清浄度の基準クラスを規定する文書である。製品の汚染を防ぐために厳格なルール及び手順が遵守されている。
以下の表は、最新のクリーンルームの分類を示す。ISOのクラス2は、209のクラス10に相当することに注目されたい。
【0004】
【表1】

【0005】
汚染を制御する唯一の方法は、環境全体を制御することである。空気の流速及び方向、加圧度、温度、湿度、並びに専門化した濾過の全てが、緊密に制御される必要がある。これらの粒子の源も制御されるか、又は可能であればいつでも排除される必要がある。クリーンルームは、厳格なプロトコール及び方法を用いて計画され、製造される。クリーンルームは、電子産業、製薬産業、生物薬剤産業、医療用具産業及びその他の重要な製造環境において、多く見られる。
【0006】
クリーンルームの空気は、典型的な事務所用ビルと比較すると、簡単な測定をするだけでその違いがわかる。典型的な事務所用ビルの空気には、空気1立方フィート当たり500,000〜1,000,000個の粒子(0.5ミクロン以上)が含まれる。クラス100のクリーンルームは、空気1立方フィートあたり100個より多くの粒子(0.5ミクロン以上)は決して許容されないよう設計されている。クラス1000及びクラス10,000のクリーンルームは、粒子をそれぞれ1,000個及び10,000個に制限するよう設計されている。
【0007】
人間の毛は直径約75〜100ミクロンである。クリーンルームでは、人間の毛よりも200倍小さい(0.5ミクロン)粒子が大災害を引き起こし得る。汚染は、費用のかかる休止期間及び製造コストの増加の原因となり得る。一旦クリーンルームが建設すると、それは同じ高い基準に維持され、浄化されなければならない。
【0008】
汚染は、材料又は表面を、汚染物質で汚す過程又は活動である。表面汚染物質の広義のカテゴリーは2つ:膜型と微粒子型である。これらの汚染物質は、小型回路において「致命的な欠陥」を生じ得る。わずか10nm(ナノメートル)の膜型の汚染物質は、ウエハー又はチップ上の塗膜密着性を大幅に減少させ得る。0.5ミクロン以上の粒子を対象とすることが広く受け入れられている。しかし、現在、より小さな粒子を対象にしている業界もある。
【0009】
汚染物質の部分的なリストを下に示す。これらのうちの何れもが、回路を止める原因となり得る。これらの汚染物質がクリーンルーム環境へ入るのを防ぐことが、主要な目的である。これらの汚染物質の多くが5つの基本的な原因:設備、人、道具、流動体及び製造される製品から生じていることが見出されている。
1.設備:壁、床、及び天井;ペンキ及び塗料;建築材料(シートロック、鋸の粉塵など);空調設備の塵埃;部屋の空気及び水蒸気;流出物及び漏出物
2.人:皮膚片及び油分;化粧品及び香水;唾;衣類片(糸くず、繊維など);毛髪
3.道具によって生成されるもの:摩擦及び摩耗での粒子;滑沢剤及び放出;震動;箒、モップ及び雑巾
4.流動体:空気中に浮遊する粒子;細菌、有機物及び水分;床の仕上げ剤又は被覆物;洗浄用化学薬品;可塑剤(アウトガス(outgasses));脱イオン水
5.製品によって生成されるもの:シリコンチップ;石英片;クリーンルームの屑;アルミニウム粒子
【0010】
汚染を減らすために用いられる現在の方法及び装置には、HEPA(高性能微粒子エア)フィルターが含まれる。これらのフィルターは、汚染制御を維持するために極めて重要である。これらのフィルターは、0.3ミクロンほどの粒子を最小粒子捕集効率99.97%で濾過する。クリーンルームは原則的に、密閉された区域内で空気全体が平行な流線に沿って均一な速度で移動する気流を実現し、維持するよう設計されている。この気流を層流と呼ぶ。気流が制約されるほど、乱流となる。乱流は粒子の運動を引き起こす。クリーンルームでよく使用されるHEPAフィルターに加えて、気体及び液体から粒子を除去するために用いられる多数のその他の濾過機構がある。これらのフィルターは効果的な汚染制御を提供するために必須である。洗浄も汚染制御の必須要素である。クリーンルーム用衣類の要件は場所ごとに異なる。手袋、フェイスマスク、及びヘッドカバーが、ほぼすべてのクリーンルーム環境で標準的である。スモックはますます使用されるようになっている。非常にクリーンな環境ではジャンプスーツが必要とされる。クリーンルームで必需品を選択及び使用する際には注意が必要である。クリーンルームに役立つワイパー、クリーンルーム用紙及び鉛筆並びにその他の必需品は注意深く選別し、選択するべきである。これらの品目を承認し、クリーンルーム内に持ち込むための場所ごとのクリーンルーム要件を再検討することが絶対必要である。実際、多くのクリーンルーム管理者はこれらの種類の品目の承認リストを有しているものである。
【0011】
ヒトがクリーンルーム内に存在する場合、物理的及び心理的な懸案事項の両方がある。早い動きや大騒ぎなどの物理的な行動は、汚染を増加させ得る。室温、湿度、閉所恐怖症、におい、及び作業場での態度などの心理的な懸案事項は、重要である。人が汚染を作り出す方法としては、身体の再生過程(結果として皮膚片、油分、汗及び毛髪);行動(運動速度、くしゃみ及びせきが含まれる);作業慣行での態度及び作業者間のコミュニケーションが挙げられる。下の表2に示されるように、人はクリーンルームにおいて主要な汚染源である。表2は、人の典型的な活動と対応する粒子生成の速度(1分あたりに生成される粒子の数)を列挙している。粒子は0.3ミクロン以上のものである。
【0012】
【表2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、クリーンルームなどの環境で汚染を減少させる際に用いる装置及び方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、クリーンルームなどの環境でウイルス及び細菌の空気感染を減少させるか又は制限するための方法を提供することである。
【0014】
また更なる本発明の目的は、粒子吐出を減少させるための製剤が必要であるかどうかを判定するための、吐出される粒子数及び粒径の測定のための装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
個体に関して産生される粒子の粒子生成の速度及び粒径範囲を判定するための方法及び装置が本明細書に記載される。装置(10)には、マウスピース(12)、フィルター(14)、低抵抗性の一方向弁(16)、粒子計数器(20)及びコンピュータ(30)が含まれる。装置はガス流量計(22)を含んでもよい。装置を用いて得られたデータは、粒子吐出を減少させるために製剤が必要であるかどうかを判定するために使用することができる。この装置は、クリーンルーム基準を確実に維持するためにクリーンルームへの入室前及び/又は入室後に特に有用である。また、装置を用いて、エアロゾルを吐出する傾向の高い動物及びヒト(本明細書において「過剰産生者」、「強力な産生者」又は「スーパースプレッダー」と呼ばれる)を識別することができる。
【0016】
粒子生成を減少させる製剤も、本明細書に記載されている。製剤は、身体の粘膜内層で生物物理的性質を変えるのに十分な量で投与される。粘膜内層液に適用される場合、製剤は空気/液体界面でのゲル特性、表面弾性、表面粘度、表面張力及び粘膜内層の体積粘弾性などの物理的性質を変える。製剤は、クリーンルームでの適用において特に重要である呼吸、咳、くしゃみ、又は会話中の粒子形成に起因する周囲の汚染を最小限に抑えるために効果的な量で投与される。一態様では、投与用の製剤は、非界面活性剤溶液である。一態様では、製剤は、水性溶媒又は有機溶媒環境中で、イオン化状態であるか又は容易にイオン化される塩、イオン性界面活性剤又はその他の物質のような、導電剤を含有する導電性の製剤である。抗ウイルス薬、抗菌剤、抗炎症薬、タンパク質又はペプチドのような、1つ又はそれ以上の活性の物質を、製剤に含めてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
肺の粘液線毛クリアランスは、気道を覆う液膜中に存在する粒子から気道を清潔に保つ主要な機構である。誘導気道は、拍動して粘液の層を喉頭に向かって押し出している繊毛上皮で内側を覆われており、最も低い繊毛域から気道を24時間で掃除する。表面を覆う流動体は、水、糖、タンパク質、糖タンパク質、及び脂質からなる。それは気道上皮及び粘膜下腺で産生され、層の厚さは、ヒト、ラット及びモルモットにおいて、気管で数ミクロンから末梢気道で約1ミクロンの範囲である。
【0018】
肺を清潔に保つための次に重要な機構は、肺を通る空気から表面を覆う粘液への運動量移動によるものである。咳はこの運動量移動を増加させるので、身体は咳を使って過剰な粘液の除去を助ける。咳は、多くの疾病状態に関連する粘液の分泌過多に起こるように、繊毛の拍動だけで粘液を適切に除去することができない場合に重要となる。強い咳の時は200m/秒と同じ気流の速度を生じ得る。そのような気流速度で、粘液層での不安定な正弦波乱れの開始が観察されている。この乱れの結果、空気から粘液への運動量移動が増加し、ひいては肺からの粘液クリアランスの速度が加速する。実験により、気流速度が、膜厚、表面張力、及び粘度の関数である何らかの臨界値を超えた時にこの乱れが始まることが示されている(M. Gad-El-Hak, R.F. Blackwelder, J.J. Riley. J. Fluid Mech. (1984) 140:257-280)。理論予測及び粘液様膜での実験から、肺での波動の乱れを開始させる臨界速度は5〜30m/sの範囲であることが示唆される。
【0019】
クリーンルームに関する上記の考察から、(1)個体により産生される粒子生成の速度及び粒径範囲を判定すること、(2)どの人々が最大レベルの汚染を生成するか予測すること、及び(3)呼吸、咳、移動、その他により産生される汚染を最小限にすること、に非常に利点があるであろうということが明らかである。
【0020】
第1及び第2の目標は、個体ベースで産生される粒子の大きさ及び数を測定する本明細書に記載のような装置を用いて達成することができる。粒子生成は静止時に又は様々な活動の間に測定することができる。このことにより、粒子吐出を減少させるための製剤を個体へ投与するべきであるかどうかを判定すること、及び/又はクリーンルーム環境で用いるため、粒子生成が最小限である個体を選択することが可能となる。
【0021】
第3の目標は、粒子生成を減少させるための製剤、例えば本明細書に記載されるように水性溶媒又は有機溶媒環境中で容易にイオン化される物質(本明細書において「導電剤」とも呼ばれる)を含有する製剤を投与することによって達成することができる。一態様では、微細な霧状の製剤の個体の肺及び/又は鼻腔の部位へ噴霧するエアロゾルを供給する装置を用いて製剤を1又はそれ以上の個体に投与し、それにより粒子の産出を減少させる。個体はクリーンルームへの入室前、及び/又は入出後に処置してもよい。
【0022】
I.粒子生成(速度及び粒径範囲)を判定するための診断装置
動物又はヒトの、吐出中に産生される粒子生成の速度及び粒径範囲を判定するための診断。このデータの解析を用いて粒子吐出を減少させるための製剤が必要であるかどうかを判定することができる。この装置は、クリーンルーム基準が確実に維持されるためにクリーンルームへの入室前又は使用者がクリーンルーム内で作業している間に特に有用である。また、この装置を用いて、エアロゾルを吐出する傾向の高い動物及びヒト(本明細書において「過剰生産者」、「強力な産生者」又は「スーパースプレッダー」と呼ばれる)を識別することができる。これは、呼気及び吸気の測定、吐出される粒子数の評価、吐出される粒子径の評価、サンプリング中の1回換気量及び呼吸頻度の評価、並びにウイルス及び細菌の感染力の評価をはじめとする、多数の要因についてのスクリーニングにより達成することができる。吐出される粒子数の評価は、1分当たり約10〜約120リットル(LPM)の呼吸速度でなされる。
【0023】
個人により産生され、吐出される粒子の測定のための診断用機器(10)を図1及び2に図解する。図1に示されるように、装置(10)には、マウスピース(12)が含まれる。マウスピース(12)の出口(13)は、分岐したコネクタ(18)(例えばY字型又はT字型コネクタ)を経てフィルター(14)及び低抵抗性の一方向弁(16)に取り付けられている。一方向弁(16)は一般に、コネクタ(18)の半分をなすチューブ(19)の内部に位置するか、又はコネクタ(18)の一端に直接取り付けられている。マウスピースの出口(13)の末端部で、チューブ(19)は粒子計数器(20)に取り付けられている。粒子計数器(20)は、データがコンピュータ(30)へ供給されることが可能となる形でコンピュータ(30)に接続されている。粒子計数器(20)からのデータは、コンピュータ(30)に送られ、使用者がそのデータを読み取り、解析し、解釈することを可能とする。一態様では、装置は携帯型であって、さらに、電池で動いてもよい。
【0024】
任意の適したマウスピースを用いてよい。図1及び2に図解される一態様では、マウスピース(12)は、使用者がマウスピースの外側の周囲に唇をのせ、その結果唇とマウスピースの間が塞がれるよう設計されている。別な態様では、マウスピースは鼻カニューレの形態であり、使用者の鼻孔と鼻カニューレの間が塞がれる。別な態様では、マウスピースは、使用者の口及び鼻を覆うマスクの形態である。この態様では、使用者の顔とマスクの間が塞がれる。もう1つの態様では、マウスピースは使用者の鼻だけを覆うマスクの形態である。マウスピースは使い捨て型であることが好ましい。
【0025】
フィルター(14)は、一般に、高性能で(0.3μmで>99.97%)、圧力損失が低い(60L/分 HO圧で<2.5cm)フィルターであり、フィルターの細菌/ウイルス除去効率は>99.99%であってもよい。フィルターは、少なくとも粒子計数器(20)で測定される範囲の粒径の粒子を除去するように選択され、フィルターが粒子計数器で測定される範囲よりも小さな粒径の粒子を除去することが好ましい。フィルターは、直径0.1マイクロメータ以上の粒子を除去するように設計されていることが好ましい。一態様では、使用者間の上流システムの汚染を防ぐために、一連の2枚又はそれ以上のフィルター(14)(図示されていない)が、マウスピースと周囲空気との間に含まれていてよい。この態様では、流れ抵抗を最小限にするために、1枚又はそれ以上のフィルターを、並列の一連のフィルターに置き換えてよい。
【0026】
好ましい態様では、マウスピース(12)、フィルター(14)、コネクタ(18)、及び一方向弁(16)は、全て使い捨て型である。マウスピース(12)、フィルター(14)、コネクタ(18)及び/又は一方向弁(16)は、生分解性物質から形成されていてもよい。
【0027】
粒子計数器(20)は、サブミクロンの大きさの粒子を正確に計数するために十分な感受性を有している必要があり、記載されているように設計し、組み立ててよい。粒子数及び粒径の測定は、電気移動度分析、インパクター法(impaction)、静電インパクター法、赤外分光法、レーザー回折、又は光散乱によって行うことができる。粒子数及び粒径の測定に現在利用可能な粒子計数器の例としては、Scanning Mobility Particle Sizer(SMPS)(TSI, Shoreview MN)、Andersen Cascade impactor又はNext generation pharmaceutical impactor(Copley Scientific, Nottingham UK)、Electical low pressure impactor(ELPI)(Dekati, Tampere Finland)及びHelos(Sympatec, Clausthal, Germany)が挙げられる。好ましい態様では、粒子計数器は光学的粒子計数器であり、最も好ましくは、LASER又はレーザーダイオード光源を用いる光散乱により作動する粒子計数器である。この好ましい態様において、光学的粒子計数器の範囲は少なくとも0.3〜5μmであり、好ましくは、0.1〜25μmである。その測定範囲は少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つのチャネルに区別される。光学的粒子計数器は、少なくとも1分当たり0.1立方フィート、好ましくは少なくとも1分当たり1立方フィートの安定したサンプル流速で作動し、その流速は粒子計数器の一部として、又は別個の真空ポンプ及び流量調整弁の部品として(図示されていない)生じ、制御され得る。この好ましい態様に適していると思われる、現在利用可能な光学的粒子計数器としては、Ultimate 100のCI−450、CI−500、CI−550型(Climet Instruments,Redlands CA)及びLasair II、Airnet 310型(Particle Measuring Systems,Boulder CO)が挙げられる。
【0028】
粒子計数器(20)は、粒子計数器(20)からのデータがコンピュータ(30)へ送られることが可能となる形でコンピュータ(30)に接続されている。また、粒子計数器(20)は、コンピュータ(30)から粒子計数器(20)へ制御コマンドを送ることが可能となる形でコンピュータ(30)に接続されていてもよい。コンピュータは、粒子計数器の内部又は外部のマイクロプロセッサであってよい。
【0029】
図2に図解される一態様では、装置(10)には、ガス流量計(22)が含まれる。ガス流量計(22)は、使用者の呼吸数に影響を及ぼさないように低い流れ抵抗を有しているべきである(Fleisch型又はLilly型の呼気流速計又は呼吸気流計など)。あるいは、ガス流量計は、電熱線からの温度変化若しくは熱移動を測定する(例えば、熱線風速計)、小さいタービンの単位時間当たりの回転数を計数する(例えば、タービン流量計)、又は層流素子のような流量が制限される部分のバイパスの差圧若しくはバイパス流速を測定することにより流速を測定してもよい。次に、流速を時間に関して積分することにより移動した体積を計算する。
【0030】
呼気流速計は、呼吸の間の異なる気体の流速を測定するためによく使用される。空気は気流に対して小さい抵抗を示すメッシュを含む短いチューブ(例えばFleisch型チューブ)を通過する(図示されていない)。メッシュを通過する際の圧力損失は、流速に比例する。圧力損失は非常に小さく、通常数mmHO前後である。差圧変換器(24)は、通常、そのような小さな圧力低下の検出を向上させるために、流量計(例えばFleisch型チューブ)を通過する際の圧力損失を測定するために使用される。差圧変換器は、シグナルを増幅し、それをコンピュータ(30)のデータ収集ソフトウェアに送るシグナルコンディショナ(26)に接続されていることが好ましい。好ましい態様では、差圧変換器(24)は、Validyne DP45−14差圧変換器である。好ましい態様では、シグナルコンディショナ(26)は、Validyne CD 15 sine wave carrier demodulatorである。呼気流速計は、肺機能の解析に用いるか、又は肺の人工呼吸の間に用いてよい。
【0031】
好ましい態様では、流量計(22)は、層流素子のような流量が制限される部分のバイパス流を測定する低流速の質量流量計である。この態様では、層流素子(図示されていない)は、チューブを通る流れが呼吸に適した流速、好ましくは流速+130〜−70L/分(プラスの流れが吐出中の流れの方向を表す)の層流型となるようなサイズの一連の平行するチューブからなる。好ましい態様では、低流量計は5Hzを超える周波数でデジタル出力を行う。この種類の流量計の一例は、Sensirion ASF1430型である。
【0032】
もう1つの態様では、装置(10)には、粒径及び粒子数測定と同時に又は連続してさらに呼気分析を行うための接続部が含まれる。例えば、呼気凝縮液をRチューブなどの標準的な装置に回収するか、又はさらなる分析のために、光学的粒子計数器(20)に通じるチューブ(19)に沿って位置する接続部(図示されていない)を経由して、培地のフィルターに呼気を通してもよい。
【0033】
II.粒子生成を減少させるための製剤
バイオエアロゾル粒子は、気道における内在性の界面活性剤層中の不安定性により形成される。本明細書に記載される製剤は、粘膜内層の生物物理的性質を変えるために効果的である。これらの特性としては、例えば、粘液表面でのゲル化、粘膜内層の表面張力、粘膜内層の表面弾性、及び粘膜内層の体積粘弾性の増加が挙げられる。本明細書に記載される製剤は、中咽頭又は鼻腔から吐出される粒子形成を妨げるか又は減少させることにより粒子吐出を減少させるために効果的である。内在性の界面活性剤層は、等張食塩水(対象に喀出させるほど大量ではない)の送達又は高張食塩水(肺の気道を覆っている細胞に、水の産生により内在性の界面活性剤層をさらに希釈させる)の送達により、内在性の界面活性剤プールを単純に希釈することによって変えることができる。
【0034】
肺における内在性の界面活性剤流体の物理的特性は、生理食塩水の投与、更に他の物質(浸透活性物質、導電性物質、及び/又は界面活性剤など)を含有する生理食塩水溶液の投与により変えることができることが見出されている。塩又はその他の浸透活性物質の濃度範囲は、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは、0.9%〜約10%である。粘膜内層の物理的特性を変えるために好ましいエアロゾル溶液は、等張食塩水である。
【0035】
A.導電性製剤
肺の内側を覆う流動体の生物物理的性質を変えるために好ましい製剤は、特定の電荷濃度及び移動度を含む製剤、従って導電性の液体である。好ましい一態様では、製剤には導電性の水溶液又は懸濁液(本明細書において「導電性製剤」とも呼ばれる)が含まれる。適した導電性製剤は、一般に電導度値が5,000μS/cmより大きく、10,000μS/cmより大きいことが好ましく、20,000μS/cmより大きいことがさらにより好ましい。これらの製剤は、粒子吐出を抑制するために患者に投与される場合に特に有用である。溶液の導電性は、イオン強度、濃度及び移動度(後者の2つは、全体として製剤の導電性に寄与する)の積である。イオン成分のいずれの形態(陰イオン性、陽イオン性、又は両性イオン性)を用いてもよい。これらの導電性物質は、例えば、粘液中で架橋剤として作用することにより、粘膜内層の特性を変化させ得る。本明細書に記載される製剤中のイオン成分は、正常な気管及び気管支の粘液中で強く結合した陰イオン性糖タンパク質と相互作用し得る。これらの相互作用は、気道の内側を覆う流動体の空気/液体面の状態に影響を及ぼし、共有結合性相互作用、並びに水素結合、疎水性相互作用及び静電相互作用を含む非共有結合性相互作用によって、一時的に物理的な絡み合い(entanglements)の性質に影響を及ぼし得る(Dawson, M., Wirtz, D., Hanes, J. (2003) The Journal of Biological Chemistry. Vol. 278, No. 50, pp. 50393-50401)。
【0036】
製剤は、粘膜作用薬(mucoactive)又は粘液溶解薬、例えば、MUC5AC及びMUC5Bムチン、DNA、N−アセチルシステイン(NAC)、システイン、ナシステリン(nacystelyn)、ドルナーゼα、ゲルゾリン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、P2Y2アゴニスト(例えばUTP、INS365)並びにネドクロミルナトリウムを含んでも良い。
【0037】
i.導電剤
製剤は、水性溶媒又は有機溶媒環境中で容易にイオン化される物質(本明細書において「導電性物質」とも呼ばれる)、例えば、塩、イオン性界面活性剤、荷電したアミノ酸、荷電したタンパク質若しくはペプチド、又は荷電した物質(陽イオン性、陰イオン性、若しくは双性イオン性)を含む。適した塩としては、元素のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、亜鉛、錫、及び同様の元素の塩形態の何れかが挙げられる。例としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、重炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、ホウ酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、塩化クロム、塩化第一錫、及びメタケイ酸ナトリウム並びに同様の塩が挙げられる。適したイオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)としても知られる)、ラウリル硫酸マグネシウム、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及び類似の界面活性剤が挙げられる。適した荷電アミノ酸としては、L−リシン、L−アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、システイン、チロシンが挙げられる。適した荷電タンパク質又はペプチドとしては、荷電したアミノ酸、カルモジュリン(CaM)、及びトロポニンCを含むタンパク質及びペプチドが挙げられる。荷電リン脂質、例えば1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリントリフラート(EDOPC)及びアルキルホスホコリントリエステルを用いてもよい。
【0038】
好ましい製剤は、塩、例えば生理食塩水(0.15M又は0.9%のNaCl)溶液、CaCl溶液、生理食塩水中CaCl溶液、又はイオン性界面活性剤(SDS若しくはSLSなど)を含む生理食塩水溶液を含む製剤である。好ましい態様では、製剤は生理食塩水溶液及びCaClを含む。塩又はその他の導電性/荷電化合物の適した濃度範囲は、約0.01%〜約20%(導電性化合物又は荷電化合物の重量/製剤の総重量)で変動し、好ましくは0.1%〜約10%(導電性化合物又は荷電化合物の重量/製剤の総重量)、最も好ましくは0.1〜7%(導電性化合物又は荷電化合物の重量/製剤の総重量)で変動してよい。
【0039】
生理食塩水溶液は、少量の治療上活性のある物質、例えばβアゴニスト、コルチコステロイド、又は抗生物質とともに、昔から、慢性的に肺へ送達されてきた。例えば、VENTOLIN(登録商標)吸入液(GSK)は、喘息及び運動誘発性気管支痙攣の症状の長期治療に用いられる硫酸アルブテロール溶液である。噴霧用のVENTOLIN(登録商標)溶液は、1.25〜2.5mgの硫酸アルブテロール(0.25〜0.5mLの水溶液中)を通常の滅菌生理食塩水へ混合して総容積3mLとすることによって(患者により)調製される。たとえ噴霧時間が5〜15分間の間であっても、VENTOLIN(登録商標)噴霧による生理食塩水の肺への送達に関して副作用は考えられない。また、生理食塩水は、喀出を誘導するために一層十分な量で送達される。これらの生理食塩水溶液は高張であることが多く(塩化ナトリウム濃度は0.9%超、しばしば5%程度)、一般的に最大20分送達される。
【0040】
B.浸透活性物質
多くの物質は、浸透活性があり、二成分塩(塩化ナトリウムなど)若しくは任意のその他の種類の塩、又は糖(マンニトールなど)が含まれ得る。浸透活性物質は、通常それらのイオン化及び場合によっては大きさにより、細胞膜を容易に通り抜けず、従って隣接する細胞に浸透圧を及ぼす。そのような浸透圧は細胞物質の物理的環境に不可欠であり、この圧力の調節は細胞がポンプのように水を細胞の内へ又は細胞の外へ汲み出すことによって起こる。肺へ送達される等張性の溶液は、通常、肺液中で浸透圧の不均衡を引き起こさないため、天然の内在性の肺液を単純に水と塩とで希釈する。高い浸透圧を持つ溶液(すなわち高張液)は浸透圧の不均衡を引き起こし、肺液中の圧力が高くなり、細胞に水を肺液中に汲み出させることとなり、従ってさらに肺の界面活性剤組成物を希釈させる。
【0041】
C.有効成分
本明細書に開示される製剤は、様々な有機分子又は無機分子、特に小分子薬(抗生物質、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、鎮咳剤、抗炎症薬、ワクチン、アジュバント及び去痰薬をはじめとする抗ウイルス薬及び抗菌薬など)の任意の送達経路により使用することができる。高分子の例としては、タンパク質及び大型ペプチド、多糖及びオリゴ糖、並びにDNA核酸分子及びRNA核酸分子、並びに治療活性、予防活性又は診断活性を有するそれらの類似体が挙げられる。核酸分子には、遺伝子、相補DNAと結合して転写を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。好ましい薬剤は、抗ウイルス薬、ステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、粘液産生阻害剤及びワクチンである。
【0042】
好ましい態様では、活性剤の濃度は約0.01重量%〜約20重量%の範囲である。より好ましい態様では、活性剤の濃度は0.9%〜約10%の範囲である。
【0043】
D.投与のための担体及びエアロゾル
製剤は、溶液、懸濁液、スプレー、ミスト、泡沫、ゲル、蒸気、液滴、粒子、又は乾燥粉末形態で(例えば、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、HFAでない噴霧剤を含む定量吸入器、噴霧器、加圧缶、又は連続噴霧器を用いて)送達してよい。担体は、溶液又は懸濁液による投与用担体(液体製剤)及び粒子による投与用担体(乾燥粉末製剤)に分けることができる。
【0044】
1.異なる粘膜表面への投与のための投薬形態
気道の粘膜表面への投与のためには、製剤は一般に、溶液、懸濁液又は乾燥粉末の形態である。製剤はエアロゾル化されていることが好ましい。製剤は、乾燥粉末吸入器(DPI)、噴霧器又は加圧式定量吸入器(pMDI)のような、エアロゾル発生器の何れかによって生成することができる。本明細書において「エアロゾル」と言う用語は、粒子の微細な霧からなる調製物の何れかをさし、典型的には粒子の直径は10ミクロン未満である。水性製剤エアロゾル粒子の好ましい平均径は、約5ミクロン、例えば0.1〜30ミクロン、より好ましくは、0.5〜20ミクロン、最も好ましくは、0.5〜10ミクロンである。
【0045】
頬粘膜を含む口腔粘膜への投与のために、製剤は、口への投与後に溶ける及び/若しくは粘膜表面に付着する固体として、又は液体として投与してよい。
【0046】
肺の内側を覆う流動体の物理的特性を変えるために好ましいエアロゾル溶液は、等張食塩水である。エアロゾルは単に、溶液、例えば水溶液からなってもよく、最も好ましくは、生理食塩水溶液からなってもよい。あるいは、エアロゾルは水性懸濁液又は乾燥粒子からなってもよい。
【0047】
2.液体製剤
治療薬を気道へ送達するためのエアロゾルが開発されてきた。例えば、「Adjei, A. and Garren, J. Pharm. Res., 7: 565-569 (1990)」; 及び「Zanen, P. and Lamm, J.-W. J. Int. J. Pharm., 114: 111-115 (1995)」を参照されたい。これらは一般に、加圧下で液体製剤(溶液又は懸濁液など)を噴霧器から霧化するか、又は定量吸入器(「MDI」)を用いて霧化することにより形成される。好ましい態様では、液体製剤は水溶液又は懸濁液である。
【0048】
3.乾燥粉末製剤
気道の形状は、肺の中での薬剤の分散の大きな障壁である。肺は、吸い込んだ異物(塵など)の粒子を捕捉するように設計されている。堆積の基本的な機構は3つ、すなわち固着、沈降、及びブラウン運動(J.M. Padfield. 1987. In: D. Ganderton & T. Jones eds. Drug Delivery to the Respiratory Tract, Ellis Harwood, Chicherster, U.K.)がある。固着は、特に気道の分岐部で粒子が気流中にとどまることができない場合に起こる。それらの粒子は、気管支壁を覆う粘液層上に吸着され、粘膜毛様体の作用により外部へ追い出される。固着は主に直径5μmを超える粒子で起こる。それより小さな粒子(<5μm)は気流内にとどまることができ、肺の奥まで運ばれることができる。沈降は、空気の流れが遅い下部呼吸器系で起こることが多い。非常に小さな粒子(<0.6μm)は、ブラウン運動により堆積する。この型は、堆積が肺胞を目標とすることができないために望ましくない(N. Worakul & J.R. Robinson. 2002. In: Polymeric Biomaterials, 2nd ed. S. Dumitriu ed. Marcel Dekker. New York)。
【0049】
吸入のための空気力学的に軽い粒子の好ましい平均径は、少なくとも約5ミクロン、例えば約5〜30ミクロン、最も好ましくは直径3〜7ミクロンである。粒子は、選択された気道領域(肺深部又は上気道など)への局所送達に適切な物質、表面の粗さ、直径及びタップ密度を用いて作出することができる。例えば、高密度又は大型の粒子を上気道送達に用いてよい。同様に、同一又は異なる治療薬を用いた、異なる大きさの粒子からなる混合物を、一回の投与で肺の異なる領域を標的にして投与してもよい。
【0050】
本明細書において、「空気力学的に軽い粒子」という表現は、平均密度又はタップ密度が約0.4g/cm以下の粒子をさす。乾燥粉末粒子のタップ密度は、基準となるUSPタップ密度測定によって得ることができる。タップ密度は、エンベロープの質量密度の標準測定値である。等方性粒子のエンベロープの質量密度は、粒子の質量を、封入できる最小の球体エンベロープの体積で割ったものとして定義される。タップ密度が低くなる一因となる特性としては、不規則な表面組織及び多孔質構造が挙げられる。
【0051】
大きな粒径の乾燥粉末製剤(「DPF」)は、凝集の減少(Visser, J., Powder Technology 58: 1-10 (1989))、エアロゾル化の容易化、及び潜在的な食作用の減少など、流動性特性が改善されている。「Rudt, S. and R. H. Muller, J. Controlled Release, 22: 263- 272 (1992)」;「Tabata, Y., and Y. Ikada, J. Biomed. Mater. Res., 22: 837-858 (1988)」を参照されたい。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に主として5ミクロン未満の範囲の平均径で製造されるが、1〜10ミクロンの範囲の空気動力学的直径が好ましい。「Ganderton, D., J. Biopharmaceutical Sciences, 3:101-105 (1992)」;「Gonda, I. ″Physico-Chemical Principles in Aerosol Delivery,″ in Topics in Pharmaceutical Sciences 1991, Crommelin, D. J. and K. K. Midha, Eds., Medpharm Scientific Publishers, Stuttgart, pp. 95-115 (1992)」を参照されたい。大型の「担体」粒子(薬剤を含まないもの)は、治療用エアロゾルとともに同時に送達されて、他の可能性のある利点の中でも効率的なエアロゾル化を実現するために役立つ。「French, D. L., Edwards, D. A. and Niven, R. W., J. Aerosol Sci., 27: 769-783 (1996)」を参照されたい。当分野で確立された方法により、分解時間及び放出時間が数秒から数ヶ月の粒子を設計及び作出することができる。
【0052】
粒子には導電剤を単独又は薬剤、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗微生物薬、界面活性剤、タンパク質、ペプチド、ポリマー、若しくはそれらの組合せと組合せて含めることができる。代表的な界面活性剤としては、L−α.−ホスファチジルコリンジパルミトイル(「DPPC」)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、トリオレイン酸ソルビタン(Span 85)、グリココール酸、サーファクチン、ポロキソマー(poloxomer)、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、及びアルキル化糖が挙げられる。粒子の特徴を最適化するようにポリマーを作製してもよく、その特徴には、i)送達される薬剤と送達時の薬剤の安定化及び活性の保持をもたらすためのポリマーとの間の相互作用;ii)ポリマーの分解速度及びそれによる薬剤放出のプロフィール;iii)化学修飾による表面特性及び標的能;並びにiv)粒子の多孔度が含まれる。ポリマー粒子は、シングル及びダブルエマルション、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、相分離、単純及び複合コアセルベーション、界面重合、並びに当業者に周知のその他の方法を用いて調製することができる。粒子は、当分野で公知のミクロスフェア又はマイクロカプセルを作製するための方法を用いて、作製することができる。好ましい製造方法は、噴霧乾燥及び凍結乾燥によるものであって、それは導電性/荷電物質を含有する溶液を使用すること、溶液を基板上に噴霧して所望の大きさの液滴を形成すること、及び溶媒を除去することを伴う。
【0053】
III.製剤の気道への投与
A.吐出される粒子の量を減少させるための導電性製剤の投与
好ましい態様では、呼吸、咳、くしゃみ、及び/又は会話中にバイオエアロゾル粒子の形成を抑制又は減少させるために、導電性製剤は製剤の投与部位で粘膜の粘弾性を高めることに適した導電性を含む。好ましくは、製剤は、1又はそれ以上の個体へ粒子生成を減少させるために効果的な量で投与される。好ましくは、クリーンルーム基準が確実に維持されるように、製剤は、クリーンルームへ入る前に人間に投与されるか、又は人間がクリーンルーム内で作業している間に投与される。動物もしくはヒトがエアロゾルを吐出する傾向が高い(すなわち「過剰生産者」、「強力な産生者」又は「スーパースプレッダー」である)と同定されたならば、製剤を投与して粒子生成を減少させ、感染の拡散を予防若しくは減少させ、又はヒトもしくは動物による病原体の取り込みを予防若しくは減少させることができる。
【0054】
B.気道への投与
気道は、大気と血流との間での気体の交換に関与する構造体である。肺は枝分かれ構造であり、最後には気体の交換が生じる肺胞で終わる。肺胞の表面積は呼吸器系で最大であり、そこで薬剤の吸収が生じる。肺胞は繊毛や粘液ブランケットのない薄い上皮で覆われており、界面活性剤であるリン脂質を分泌する。「J.S. Patton & R.M. Platz. 1992. Adv. Drug Del. Rev. 8:179-196」を参照されたい。
【0055】
気道には、上気道(中咽頭及び喉頭が含まれる)と、それに続く下気道(気管と、それに続いて気管支と細気管支への分岐が含まれる)が包含される。上気道及び下気道は誘導気道と呼ばれる。次に、終端の細気管支は、最終的な呼吸域である肺胞又は肺深部に至る呼吸細気管支に分かれる。肺深部、又は肺胞は、全身薬の送達のために吸入された治療用エアロゾルの主要な標的である。
【0056】
製剤は、一般に、上気道の内在性の流体の表面張力及び粘度などの物理的特性を変えるために効果的な量を送達し、その結果、肺への送達を促進し及び/又は咳を抑制し及び/又は肺からのクリアランスを向上させるために、個体に投与される。有効性は、本明細書に記載の診断装置を用いて測定することができる。例えば、正常な成人に対して1グラムの量の生理食塩水を投与することができる。次に、粒子の吐出を測定する。次に、送達を最適化して用量及び粒子数を最小限にする。
【0057】
製剤は、定量吸入器(「MDI」)、噴霧器、エアロゾル発生器(aerosolizer)、又は乾燥粉末吸入器を用いて投与することができる。適した装置は市販されており、文献に記載されている。
【0058】
エアロゾル投薬量、製剤及び送達系は、例えば、「Gonda, I. ″Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract,″ in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 6:273-313, 1990」;及び「Moren, ″Aerosol dosage forms and formulations,″ in: Aerosols in Medicine, Principles, Diagnosis and Therapy, Moren, et al., Eds. Esevier, Amsterdam, 1985」に記載されるように特定の治療用途に関して選択してよい。
【0059】
送達は、いくつかの方法のうちの1つによって、例えば、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、HFAでない噴霧剤を含む定量吸入器、噴霧器、加圧缶、又は連続噴霧器を用いて達成される。例えば、患者は懸濁させる前の治療薬の乾燥粉末を溶媒と混合した後、それを噴霧することができる。投与される投薬量を管理すること及び懸濁液の損失の可能性を避けるため、噴霧前の溶液を用いることがより適切であろう。霧状にした後、エアロゾルを加圧すること及び定量吸入器(MDI)から投与することが可能である。噴霧器は溶液又は懸濁液から微細な霧を作り出し、それを患者が吸入する。Lloydらの米国特許第5,709,202号に記載の装置を用いてもよい。MDIには、一般に、メーターバルブを有する加圧容器が含まれる(この容器は溶液又は懸濁液、及び噴霧剤で満たされている)。溶媒自体が噴霧剤として機能するか、又は組成物と噴霧剤、例えばFREON(登録商標)(E. I. Du Pont De Nemours and Co. Corp.)とを組み合わせてもよい。組成物は、容器から放出される際には圧力からの開放によって微細な霧状となる。噴霧剤及び溶媒は、圧力の低下によって完全に又は部分的に蒸発する。
【0060】
別の態様では、製剤は、不活性な基材上又は基材中に分散している、塩又は浸透活性物質の粒子の形態であり、鼻及び/又は口の上に置かれて、製剤粒子が吸入される。不活性な基材は、好ましくは生分解性若しくは使い捨て型の織布又は不織布であり、より好ましくは、前記布はセルロースの種類の材質からなる。一例は、現在販売されている、頻繁な使用の後の刺激作用を最小限にするためのローションを含むティッシュペーパーである。これらの製剤は包装して個別に販売するか、又はティッシュペーパーもしくは赤ちゃん用おしり拭きの包装(液体の溶液又は懸濁液と共に使用することに容易に適合している)に類似した包装で販売することができる。
【0061】
一態様では、微細な霧状の製剤を個体の肺の領域及び/又は鼻腔の領域へ噴霧するエアロゾルを供給する装置を用いて、製剤を1又はそれ以上の個体へ投与し、それにより粒子の産出を減少させる。製剤は、ヒト又は動物が移動又は留まる場所に、肺を十分に潤すのに十分な時間、水性の環境を作り出すことにより、ヒト又は動物へ投与することができる。この雰囲気は噴霧器またさらには加湿器を用いて作り出せるであろう。噴霧器又は加湿器が導電性製剤を投与することが好ましい。個体は、クリーンルームへの入室前及び/又は入室後に処置してよい。
【0062】
IV.診断装置を用いる方法
図1及び2に図解される装置を用いる場合、使用者は唇をマウスピース(12)の周囲にのせる。使用者は、好ましくは鼻のクリップ及びマウスピースで唇を塞ぐことにより、周囲の空気から気道を塞ぐ。マスクをマウスピースとして用いる場合、使用者は口及び/又は鼻を覆うようにマスクをのせる。鼻カニューレをマウスピースとして用いるならば、使用者は鼻の中に鼻カニューレを入れる。マウスピースがマスクの形態であるならば、使用者は、マスクを鼻及び/又は口を覆うようにのせ、それにより気道を周囲の空気から塞ぐ。その後、使用者は吸入する。吸い込まれた空気は、フィルター(14)からシステムに入り、フィルターは所定の測定範囲の粒子を除去する。吐き出された空気は、低抵抗性の一方向弁(16)を通過して粒子計数器(20)に入る。一方向弁(16)は、吐出された病原体が使用者から使用者へ伝達されるのを防ぐのに役立つ。
【0063】
吐出された空気は、粒子の数及び粒子の大きさを測定する粒子計数器(20)へと移動する。粒子計数器(20)は、固定された流速、好ましくは最大呼気速度よりも大きな流速で試料採取して、全ての時点でフィルター(14)を経由する平均の流れ方向がシステムに入るようにし、フィルター(14)に入る吐出粒子の損失を防ぐ。粒子計数器は28L/分よりも大きい流速で試料採取することが好ましい。次に、粒子計数器(20)は、粒子計数器(20)からのデータをコンピュータ(30)へ提供する。一態様では、使用者に、自分の呼吸パターンの視覚によるフィードバック、及び所定の呼吸パターン、例えば安静呼吸(tidal breathing)を維持する手がかりを与える。粒子計数器(20)は、PCから遠隔で、又はタッチスクリーンインターフェースからなどでその場で制御することができ、データ測定及び解析は光学的粒子計数器でその場で行うか、又は遠隔でパーソナルコンピュータで行われる。サンプル流速の生成及び制御用の制御装置(図示されていない)は、光学的粒子計数器の内部にあっても外部にあってもよい。吸入、吐出、及び測定段階は複数回繰り返してよい。次に、コンピュータにより平均粒径、平均粒子分布、及び平均粒子生成速度が計算される。使用者が吐出する粒子の数及び大きさを減らす必要があるならば、本明細書に記載される粒子吐出を減少させる製剤を使用者に投与する。
【0064】
診断用機器(10)は、個人が産生し、吐出した粒子を関連する呼吸数とともに測定するよう設計してもよい。図2に図解される本態様では、吸気は、使用者の呼吸パターンと粒子計数器の流速を一緒に特徴付ける、流れ抵抗の低い流量計(22)からシステムに入る。次に、呼気は、測定範囲の粒子を除去するフィルター(14)に入る。呼気は、前述のように、チューブ(18)を経て低抵抗性の一方向弁(16)を通過して粒子計数器(20)に入る。流量計、差圧変換器、及び/又はシグナルコンディショナからのデータは、演算及び分析のためにコンピュータに送られる。
【0065】
診断装置を用いて得られるデータから決定される、粒子生成の速度及び産生される粒子の大きさに応じて、粒子生成を減少させるために効果的な量で製剤を使用者に投与することができる。製剤は、クリーンルームへの入室の前又は入室後に投与してよい。
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに理解されるが、それらに限定されない。
(実施例)
【実施例1】
【0066】
(インビトロのシミュレーション)
「King Am. J. Respir. Crit. Care Med. 156(1): 173-7 (1997)」に記載されているものに類似した模擬咳発生機システムを設計した。デジタル圧力計及び圧力逃しバルブを備えた、気密の6.25リットルプレキシガラス製タンクを構築して、肺の容量機能の代わりとした。タンクを加圧するため、レギュレーター及びエアフィルターを備えた圧縮空気シリンダーを吸気口に接続した。タンクの出口に、十分なCv流量係数の、Asco2方向通常閉のソレノイドバルブ(8210G94)をガス放出のために接続した。ソレノイドバルブを、典型的な120V、60Hzの電灯スイッチを用いて配線した。ソレノイドバルブの流出口にFleisch型4番の呼吸気流計を接続し、呼吸気流計が「咳」のプロフィールを検査するために必要なポアズイユ流を作り出した。Fleisch型チューブの出口に、気管モデルへの1/4”のNPT接続口を接続した。Validyne DP45−14差圧変換器で、Fleisch型チューブの圧力損失を測定した。Validyne CD15sine wave carrier demodulatorを用いてデータ収集ソフトウェアへのシグナルを増幅した。「King et al Nurs Res. 31(6): 324-9 (1982)」に記載されるような気管支粘液に類似したレオロジー特性をもつ弱い高分子ゲルを調製した。ローカストビーンガム(Locust bean gum:LBG)(Fluka BioChemika)溶液を、四ホウ酸ナトリウム(Na)(J.T.Baker)で架橋した。2%(重量/体積)のLBGを、沸騰しているミリQ蒸留水に溶かした。高濃度の四ホウ酸ナトリウム溶液を、ミリQ蒸留水で調製した。
【0067】
LBG溶液を室温まで冷却した後、少量の四ホウ酸ナトリウム溶液を添加し、混合物をゆっくりと1分間回転させた。次に、まだ水っぽい粘液模倣物を、単純なボウルの形状に基づいて模倣した深さを創出している気管モデル上にピペッティングした。「咳」実験の開始前に、粘液模倣物層を30分放置して架橋させた。この時点を、t=0として測定し、その後、t=30分及びt=60分の時点を測定した。四ホウ酸ナトリウムの最終濃度は1〜3mMの範囲であった。アクリル製気管モデルを、長さ30cm、内部の幅及び高さ1.6cmに設計した。気管モデルは、粘液模倣物層への接近が容易になるように、サイズの合う分離した上部を持つ矩形管の形であった。ガスケット及びC型クランプを用いて気密シールを作り出した。粘液模倣物の高さを均一にでき、丸い管及び重力による排水に関連する問題を避けるため、矩形断面を選択した。気管モデルの断面積も生理学的に適切であった。気管モデルの末端は大気に対して開いたままであった。噴霧された溶液を、PARI LC ジェットネブライザー(Jet nebulizer)及びProneb Ultraコンプレッサーによって粘液模倣物へ送達した。製剤には、通常の等張0.9%食塩水(VWR)、及び等張食塩水に懸濁した100mg/mLの合成リン脂質1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン/1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPC/POPG)(Genzyme)7/3重量%が含まれる。3mLの選択された製剤をネブライザーにピペッティングし、ネブライザーが、開口しているがクランプで固定されている気管モデルのトラフを通って、粘液模倣物の層に飛散させるまでエアロゾル化した。次に、t=0分の実験の前に気管モデルをFleisch型チューブの出口に接続した。同様に、t=30分及びt=60分(投与後)の実験を行った。
【0068】
Sympatec HELOS/KF レーザー回折式の粒子サイズ測定器を用いて作成した粘液模倣物のバイオエアロゾルのサイズを測定した。回折した粒子のサイズを決めるためにフラウンホーファー法を用いた。HELOSは0.25〜87.5μmの測定範囲を可能にするR2サブミクロンのウィンドウモジュール(R2 submicron window module)を備えていた。「咳」実験の前に、気管モデルの末端をレーザービームから3cm以下の位置に調節した。さらに、気管モデルの底部をサポートジャッキ及び水準器を用いて2.2mmレーザービームに一列に揃えた。慣性サイクロン(inertial cyclone)に続いてHEPAフィルターに接続されている電気掃除機を用いて回折ビームを通過させた後、分散したバイオエアロゾルを回収した。各々の実行前に、レーザーを5秒間、周囲条件に照らし合わせた。特定のトリガ条件の光学濃度(Copt)≧0.2%の後に測定を開始し、Copt≦0.2%になった2秒後に停止した。Sympatec WINDOX ソフトウェアを用いて、粒径(体積)に対する累積及び密度分布グラフを作成した。
【0069】
空気の二相の爆発からなる、典型的な咳のプロフィールを、粘液模倣物の1.5mmの層上に通した。最初の空気流は30〜50msの間、流速約12L/sを有した。2番目の相は、200〜500ms間続いた後、急速に減衰した。
【0070】
乱されていない粘液模倣物の場合の、3回の咳の後のバイオエアロゾル粒子濃度を、経時的に測定した(図3A、3B及び3C)、更に生理食塩水を送達した場合(図3A、3B及び3C)及び界面活性剤を送達した場合(示さず)も測定した。乱されていない場合、バイオエアロゾルの粒径は、メジアン径約400ナノメートルで時間と共に一定のままであった。生理食塩水の添加後、バイオエアロゾル粒径は1ミクロン(t=0)(図3A)から約60ミクロン(t=30分)(図3B)まで大きくなった後、30ミクロンに減少する(t=60分)(図3C)。
【0071】
インビトロでのこれらの結果は、粘液層へ送達された生理食塩水が、おそらく表面張力の増加により、崩壊時に粒径の大幅な増大をもたらすことを示す。インビボでの結果が示すように、液滴の大きさが大きいほど口から出にくい。従って、溶液の送達は吐出される粒子の数を有意に減らすのに役立つ。
【実施例2】
【0072】
(ヒトでの検討における吐出されるエアロゾル粒子の減少)
吐出されるエアロゾル粒子生成の概念実証の検討を、12名の健康な対象を用いて行った。検討の目的は、(1)吐出されたバイオエアロゾル粒子の性質(粒径分布及び数)を決定すること;(2)吐出された粒子を正確に計数するのに十分な感度のある装置の有用性を確認すること;(3)健康な肺から吐出された粒子のベースライン粒子数を評価すること;及び(4)吐出粒子数の抑制における体外から投与された2種類の治療用エアロゾルの効果を測定すること、であった。異なる粒子検知器で実験を行って健康なヒト対象の1リットルあたりの平均粒子及び平均粒径を測定した。粒子を含まない空気の吸気の後に、健康な対象は1リットルあたり1〜5個程度の粒子(平均サイズは直径200〜400nm)を吐出した。対象ごとに粒子の数に有意な変動が起こり、一部の対象は1リットルあたり30,000個もの粒子(この場合も、主にサブミクロンの粒径の粒子)を吐出する。サブミクロンの大きさの粒子を正確に計数するために十分な感度をもつ装置を設計し、組み立てた。装置のLASER部分を製造業者の手順に従って較正した(Climet Instruments Company, Redlands, CA)。この装置は150〜500nmの範囲の粒子を1粒子/リットルの感度で正確に測定した。一連のフィルターが全てのバックグラウンドの粒子ノイズを除去した。
【0073】
IRB承認のプロトコールに従って、12名の健康な対象を本検討に登録した。対象患者の基準は、良好な健康状態、年齢18〜65歳、正常な肺機能(FEV予測値>80%)、インフォームドコンセント及び測定を受ける能力であった。除外基準は、重大な肺疾患(例えば喘息、COPD、嚢胞性線維症)、心疾患、気道の急性若しくは慢性感染症の存在又は病歴、及び妊娠又は授乳中の女性であった。1名の個体は、投薬計画を完全に終えることができなかったので、データ分析から除外した。
【0074】
完全な健康診察の後、対象を無作為に2群:最初にプロトタイプ製剤1を投与される群及びプロトタイプ製剤2を投与される群に分けた。装置の2分間の「洗い流し」時間の後に、吐出粒子生成のベースラインを測定した。2分間の平均から導かれた1分あたりの数で2分間の評価を行った。ベースライン測定の後、市販の水性ネブライザー(Pari Respiratory Equipment, Starnberg, Germany)を用いて、6分間にわたりプロトタイプ製剤を投与した。製剤1は、等張食塩水溶液で構成された。製剤2は、等張食塩水溶媒中に懸濁したリン脂質の組合せで構成された。投与後、吐出された粒子数を単回投与の5分、30分、1時間、2時間、及び3時間後に評価した。
【0075】
図4Aに示されるように、対象間でかなりの変動性がベースライン粒子数に見出された。示されたデータはテストエアロゾルのうちの1種類の投与の前にとられた測定値である。このベースライン吐出粒子の結果は、吐出されたエアロゾルの「強力な産生者」の存在を指摘する。本検討において、「強力な産生者」とは、ベースライン測定で1,000個の粒子/リットルより多くの粒子を吐出する対象として定義された。図4Bは、製剤1を投与される対象に関する個々の粒子数を示す。データは体外から適用される単一製剤のエアロゾルが吐出される粒子数を抑制できることを示す。
【0076】
図5Aは、この群中のベースラインに見出された2名の「強力な産生者」へのプロトタイプ製剤1の効果を示す。これらのデータは、プロトタイプ製剤が強力な産生者に顕著な効果を及ぼし得ることを示す。
【0077】
類似の結果が製剤2の送達で見出された。図5Bは、2つの治療群で確認された「強力な産生者」の累積吐出粒子数の(ベースラインに対する)変化パーセントをまとめている。
【0078】
この検討の結果は、レーザー検出システムを用いて吐出された粒子を正確に測定することができること、これらの粒子が主に直径1ミクロン未満であること、及びこれらの粒子の数が対象ごとによって大幅に変化することを実証する。「強力に産生する」対象は、肺の内側を覆う流動体の表面の物理的性質を変更するエアロゾルの送達に最も顕著に応答した。このような強力な産生者は、感染した患者の集団における病原体の流出及び伝達に大きな責任を負うことになりかねない。これらのデータも、比較的簡便で安全な、体外から投与されるエアロゾル製剤を用いてエアロゾル吐出を抑制することが実際的であることを実証する。
【実施例3】
【0079】
(大型動物における検討)
7頭のホルスタイン雄子牛を麻酔し、挿管し、さらに光学的レーザー係数によりベースライン粒子吐出について選別した。その後、動物は未処置(偽処置)とするか、又は3つの用量(1.8分、6.0分又は12.0分)のうちの1つで生理食塩水の噴霧されたエアロゾルで処理した。偽の投薬の間、動物は等張食塩水溶液の投薬量が投与される場合と同じように処理した。1日につき1頭の動物に投薬し、曝露時間を通じてネブライザーの用量を無作為化した(投薬スケジュールについては表3を参照されたい)。各動物に検討の期間中に全ての用量を投与するよう計画した。各用量の投与後、吐出された粒子数を180分の間の別々の時点(0、15、30、45、60、90、120)でモニターした。
【0080】
本検討に含めた動物の曝露マトリックスを表3に示す。投薬は57日間にわたって、投薬は少なくとも7日の間を空けて行われた。投薬期間中少なくとも1回、各動物(n=7)に各用量を投与したが、1頭の6.0分用量(動物番号1736を参照されたい)及び1頭の12.0分用量(動物番号1735を参照されたい)の脱落は例外であった。これらの2例はベンチレータ及び/又は麻酔装置の予期せぬ問題のために排除された。
【0081】
【表3】

【0082】
(結果)
図6Aは、偽の投薬を受けた後の各動物に関する経時的な粒子数を示す。各時点は一般に少なくとも3回の粒子数測定の平均を表す。図6Aのデータは、特定の個体の動物が本質的に他者よりも多くの粒子を産生する(「スーパースプレッダー」)ことを示す。さらに、このデータは評価期間を通して、静止状態で呼吸する麻酔動物が比較的安定した吐出粒子産出を維持していることを示す(例えば、動物番号1731、1735、1738、1739及び1741を参照されたい)。
【0083】
図6Bは、各処置の後に吐出された粒子数の経時的な平均変化パーセントを表す。各データポイントは処置群からの6〜7測定値の平均を表す。全ての動物は処置後180分でベースラインに戻った。このデータから、6.0分の処置期間が処置後少なくとも150分間の粒子の吐出を防ぐために適正な用量をもたらすことが示唆される。その他の処置はエアロゾル吐出の効果的で持続的な抑制をもたらすためには短すぎるか長すぎるように思われる。
【実施例4】
【0084】
(ヒト検討における吐出されるエアロゾル粒子の減少)
4名の健康な成人の検討において、吐出される粒子の数を減少させるための製剤での処置の前及び後に、図2に図解されるものに類似の装置を用いて粒子数を測定した。処置には、0.9%のNaCl溶液中に1.29重量%のCaClを含有する製剤の、Pari LC+ジェットネブライザーからの6分間の吸入が含まれた。処置前並びに処置終了後10分、1時間、2時間、4時間及び6時間の時点で吐出される粒子を測定した。肺から周辺にある粒子を2分間洗い出した直後の3分のテスト時間の間、直径0.3μmよりも大きな粒子の全計数率を、図2に図解されるものに類似の装置を用いて測定した。装置には、Climet CI−500B光学的粒子計数器が含まれた。この装置は、300〜2500nmの範囲の粒子を正確に測定した。一連のフィルターにより、全てのバックグラウンド粒子ノイズを除去した。
【0085】
図7は、吸入処置が、生じた0.3μmよりも大きな粒子の粒子計数率に及ぼす効果を示す。平均計数率は、処置後6時間までの全ての時点で、処置前のベースライン計数率から減少していることが見られた。
【実施例5】
【0086】
(ヒト検討における吐出されたエアロゾル粒子の特徴付け)
2つの個別の検討において、安静呼吸の間に生じた粒子の粒度分布及び粒子の数を、図2に図解されるものに類似の測定システムを用いて、580名の成人及び97名の子供において測定した。
【0087】
両方の検討のため、測定システムには、テスト中の患者の流速を測定するためのFleisch型呼気流速計(モデル番号1、Phipps and Bird, Richmond VA)及び0.3〜25μmの範囲の粒子数及び粒度分布を測定するための光学的粒子計数器(Climet Model CI-500B, Climet Instruments Company, Redlands, CA)を含めた。粒子を含まない空気の呼吸での2分間の洗い出し後、3分のテスト間隔の間、粒子計数率を測定した。
【0088】
実施例2の小規模の検討に類似する、大きな対象間の変動性が、双方の検討の吐出された粒子の数に見られた。成人の検討では、母集団の26%が1分当たり10,000個より多くの粒子を産生する「強力な産生者」に分類され、検討で測定された粒子の94%の割合を占めた。1分あたりのカウント数は大体5桁に及んだ。
【0089】
子供における吐出される粒子生成の検討では、母集団の12%が同じ判定基準で「強力な産生者」に分類され、生じた全粒子の86%の割合を占めた。この場合も、1分あたりの粒子数は大体5桁に及んだ。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、個人が産生し、吐出した粒子の測定のための診断用機器の略図である。
【図2】図2は、個人が産生し、吐出した粒子を、関連する呼吸数と共に測定するための診断用機器の略図である。
【図3−1】図3Aは、t=0、30及び60分での経時的に測定した内のt=0分での、単純な粘液類似物及び生理食塩水送達後の、3回の咳の後の粒子濃度を測定したグラフである。
【図3−2】図3Bは、t=0、30及び60分での経時的に測定した内のt=30分での、単純な粘液類似物及び生理食塩水送達後の、3回の咳の後の粒子濃度を測定したグラフである。
【図3−3】図3Cは、t=0、30及び60分での経時的に測定した内のt=60分での、単純な粘液類似物及び生理食塩水送達後の、3回の咳の後の粒子濃度を測定したグラフである。
【図4】図4Aは、粒子を含まない空気を吸入する間に個体(n=11)が吐出したベースライン粒子数(150nmより大きい粒子)の図表である。 図4Bは、生理食塩水(約1g)をエアロゾルの形態で肺へ投与した後、個体(n=11)が吐出した粒子数(150nmより大きい粒子)の経時的(分)なグラフである。
【図5】図5Aは、処置前の(粒子を含まない空気を吸入する間の)ベースライン吐出が1000粒子/リットルを超える個体(n=2)が、等張食塩水(約1g溶液)をエアロゾルの形態で肺に投与した後に吐出した粒子数(150nmより大きい粒子)の経時的(分)なグラフである;図5Bは、処置前の(粒子を含まない空気を吸入する間の)ベースライン吐出が1000粒子/リットルを超える個体(n=2)が、リン脂質を含有する等張食塩水(約1g溶液)をエアロゾルの形態で肺に投与した後に吐出した粒子数(150nmより大きい粒子)の経時的(分)なグラフである。
【図6】図6Aは、吐出された合計粒子数(0.3ミクロンより大きい粒子)の経時的(分)なグラフであり、偽処置された動物から得たデータを示している。図6Bはベースライン粒子数の平均パーセント(%)の経時的(分)なグラフであり、噴霧された生理食塩水で1.8分間(−■−)、6.0分間(−▲−)、12.0分間(−□−)処置された動物、及び偽処置(−◆−)された動物から得たデータを示している。
【図7】粒子生成の減少のための製剤の投与終了の後の時間(時)に関する、ベースラインに対する、産生された0.3μmより大きい粒子の相対平均粒子数(リットル当たりの相対粒子数(%))のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピース、
双方向フィルター、
低抵抗性の一方向弁、
粒子計数器、及び
コンピュータ、
(ここに於いて、マウスピースの出口は、フィルター及び一方向弁に接続されており、
フィルターは、一端が周囲環境に曝されて、もう一端がマウスピースに接続されており、
一方向弁は、チューブの内部に位置し、
チューブは、その末端でマウスピースの出口と粒子計数器に接続されており、更に、
粒子計数器は、粒子計数器からのデータがコンピュータへ送られることが可能となる形でコンピュータに接続されている)
を含んでなる、個体において粒子吐出を測定するための診断装置。
【請求項2】
前記フィルターが、直径0.1ミクロン以上の大きさの粒子を除去することが可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マウスピースが、使用者が唇をマウスピースの周囲にのせるよう設計されているマウスピース、鼻カニューレ、使用者の口と鼻を覆うことのできるマスク、及び使用者の鼻を覆うことのできるマスクからなる群より選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルターが、2つ又はそれ以上のフィルターの組合せである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マウスピース、フィルター、チューブ、及び一方向弁が、使い捨てできる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記粒子計数器が、電気移動度粒子計数器、インパクター法の粒子計数器、静電インパクター法の粒子計数器、赤外分光法粒子計数器、レーザー回折式の粒子計数器、及び光散乱式の粒子計数器からなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記粒子計数器が、光学的粒子計数器である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記粒子計数器が、コンピュータから粒子計数器へ制御コマンドを送ることが可能となる形でコンピュータに接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記コンピュータが、粒子計数器の内部又は外部のマイクロプロセッサである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記フィルターに接続されていて、フィルターと周囲環境の間に位置するガス流量計を更に含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ガス流量計が、Fleisch型呼気流速計又はLilly型呼気流速計である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ガス流量計が、層流素子全域の差圧、又は層流素子の周囲のバイパスを通るバイパス流速を測定することにより作動する、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
流量計全域の圧力低下を測定することができる差圧変換器、及び
差圧変換器に接続されていて、シグナルを増幅し、シグナルをコンピュータへ送ることができるシグナルコンディショナ
を更に含んでなる、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
装置が、
マウスピース、
双方向フィルター、
低抵抗性の一方向弁、
粒子計数器、及び
コンピュータ
(ここにおいて、マウスピースの出口は、フィルター及び一方向弁と接続されており、
フィルターは、一端が周囲環境に曝されて、もう一端がマウスピースに接続されており、
一方向弁は、チューブの内部に位置し、
チューブは、その末端でマウスピースの出口と粒子計数器に接続されており、更に、
粒子計数器は、コンピュータに接続されている)
を包含しており、
(i)個体の口若しくは鼻の中に、又は個体の口若しくは鼻を覆うようにマウスピースを置くこと、
(ii)マウスピースを経由して空気を吸入すること(ここに於ける空気は、吸入前にフィルターを経由して引き込まれる)、
(iii)マウスピースを経由して、一方向弁へ息を吐き出すこと、
(iv)粒子計数器を用いて、粒子の数及び粒子の大きさを測定すること、
(v)粒子計数器からのデータを、コンピュータへ提供すること
の段階を含んでなる、
個体において粒子吐出の速度及び大きさを測定するための診断装置を用いるための方法。
【請求項15】
前記装置が、
フィルターに接続されていて、フィルターと周囲環境の間に位置するガス流量計、
流量計全域の圧力低下を測定することができる差圧変換器、及び
差圧変換器に接続されていて、シグナルを増幅し、シグナルをコンピュータへ送ることができるシグナルコンディショナ
を更に含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
段階(ii)の間に、空気がフィルターから引き込まれる前に、ガス流量計を経由して引き込まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
段階(iii)の前に、シグナルコンディショナからのデータを、コンピュータへ提供する段階を更に含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
段階(ii)〜(v)が、複数回繰り返される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
(vi)平均粒径、平均粒子分布、及び平均粒子生成速度を算出すること
を更に含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(vii)ヒト又はその他の動物の粘膜内層に投与すると、粘膜内層の表面粘弾性特性、粘膜内層の表面張力、又は粘膜内層の体積粘性率を変える製剤を吸入すること、次いで、段階(i)〜(vi)を繰り返すこと、
を更に含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記製剤が、荷電した化合物を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記荷電した化合物が、塩、イオン性界面活性剤、荷電したアミノ酸、荷電したタンパク質又はペプチド、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記製剤が、水性の非界面活性剤製剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記製剤が、エアロゾルの形態である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤が、生理食塩水である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
段階(i)〜(v)が、クリーンルームに入る前に起こる、請求項14〜25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
段階(i)の前に、使用者がクリーンルームに入る、請求項14〜25の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−527353(P2008−527353A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550530(P2007−550530)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/000618
【国際公開番号】WO2006/076265
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507233017)プルマトリックス,インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】