説明

汚泥乾燥方法及びこれに用いる汚泥乾燥装置

【課題】1回に処理すべき汚泥を従来方法よりも短期間で乾燥させる。
【解決手段】濾過砂4の上に投入した汚泥M中に含まれる水を、該濾過砂4及び砂パイプ5を通して乾燥槽本体2の底部2aの排水口3から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽1と、前記第一次汚泥乾燥槽1の側部に連設した第二次汚泥乾燥床8とを用い、第一次汚泥乾燥槽1における汚泥Mの含水率が約75%以下になったときに、該汚泥の上層略2/3を第二次汚泥乾燥床8に移して広げ、該汚泥Mの含水率が略40%以下になったときに該第二次汚泥乾燥床8からこれを排出する。次に該第二次汚泥乾燥床8に、前記第一次汚泥乾燥槽1に残った汚泥を移し、その後第一次汚泥乾燥槽1に新たな処理汚泥を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場における排水処理過程において発生する汚泥を天日乾燥するための汚泥乾燥方法及びこれに用いる汚泥乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水場等で発生する汚泥を天日乾燥するための汚泥乾燥方法として、従来図5及び図6に示す如き方法がある。該方法は、一部に排水口101を設けた乾燥槽本体102の底部102aに、所定の厚味に濾過砂103を敷き、該濾過砂103に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒104に濾過砂105を充填してなる砂パイプ106を立設した汚泥乾燥槽100を用い、前記濾過砂103の上に投入した汚泥107中に含まれる水を、前記濾過砂130及び砂パイプ106を通して前記排水口101から排出しつつ陽光と風を当てることによって乾燥させるものである。
【0003】
斯かる従来方法によると、乾燥槽本体102に投入した汚泥107から効率よく水分を抜くことができるが、汚泥の含水率が約75%以下になり、表層側の汚泥の乾燥がかなり進んでいるにもかかわらず、下層側の汚泥は陽光や風の影響を殆ど受けないために、乾燥度合いは表層側のものに比べてはるかに遅れている。このため表層にあるものから下層にあるものまで全体的に満遍なく乾燥させるまでには相当な期間を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、1回に処理すべき汚泥を従来に比してはるかに短期間で乾燥させることができるようになした汚泥乾燥方法及び該方法に用いる汚泥乾燥装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
而して、本発明の要旨とするところは、大量の水を含む汚泥を天日によって乾燥させる方法であって、一部に排水口を設けた乾燥槽本体の底部に、所定の厚味に濾過砂を敷き、該濾過砂に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒に濾過砂を充填してなる砂パイプを立設し、前記濾過砂の上に投入した汚泥中に含まれる水を、前記濾過砂及び砂パイプを通して前記排水口から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽と、前記第一次汚泥乾燥槽の側部に連設した第二次汚泥乾燥床とを用い、第一次汚泥乾燥槽における汚泥の含水率が約75%以下になったときに、該汚泥の上層略2/3を第二次汚泥乾燥床に移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、該汚泥の含水率が略40%以下になったときに該第二次汚泥乾燥床からこれを排出し、次に該第二次汚泥乾燥床に、前記第一次汚泥乾燥槽に残った汚泥を移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、その後第一次汚泥乾燥槽に新たな処理汚泥を投入するようになしたことを特徴とする汚泥乾燥方法にある。
【0006】
また、上記方法に用いる汚泥乾燥装置は、一部に排水口を設けた乾燥槽本体の底部に、所定の厚味に濾過砂を敷き、該濾過砂に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒に濾過砂を充填してなる砂パイプを立設し、前記濾過砂の上に投入した汚泥中に含まれる水を、前記濾過砂及び砂パイプを通して前記排水口から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽と、前記第一次汚泥乾燥槽の側部に連設した第二次汚泥乾燥床とからなるものである。
【0007】
該第二次汚泥乾燥床は床面を南向きに向け且つ僅かに傾斜することにより、太陽の平均受光量が多くなり、また雨水が水抜き孔に向かって流れるようにすることができる。更に該第二次汚泥乾燥床をコンクリートにより形成することにより、夜間等における結露を防ぎ、乾燥を早めることができる。
【0008】
また、上記構成において、濾筒をポリエチレン又はポリエステルからなる濾過布材で形成し、該濾筒の切欠き部分を含む両端部の縁を加熱溶融した後冷却して硬化させ、もって切欠き部分を含む両端部の縁に剛性を持たせてなるものを使用することができる。
【0009】
また、上記構成において、濾筒に充填する濾過砂を、両端部の砂を粒径の微細な砂とし、中央部の砂を両端部の砂より粒径の大きな砂としてもよい。この場合には、砂パイプを濾過砂中に埋め込むときに、埋め込む側、つまり下端側に充填された粒径の微細な砂によって汚れた成分が付着した濾過砂の砂パイプ内への侵入を阻止することができるものである。
【0010】
また、上記構成において、濾過砂として乾燥した汚泥を破砕したものを使用するときには、汚泥の馴染みがよく、一層効率よく濾過することができるものである。また、濾過砂として活性炭を使用することもでき、その場合には、更に前記効果に加え臭気の吸着効果等も期待できるものである。また、汚泥を破砕したものと活性炭を併用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、第一次汚泥乾燥槽において汚泥の含水率が約75%以下になり、表層側の部分の汚泥の乾燥がかなり進んだら、この部分の汚泥を第二次汚泥乾燥床に移して全体的に均一な厚味になるように広げ、またこのように表層側の部分の汚泥を削り取ることによって、乾燥が余り進んでおらず含水率の高い下層側の部分の汚泥が露出し、これを陽光と風に当てるようになすことにより、第二次汚泥乾燥床に移した上層側の部分の汚泥の乾燥効率も上昇し、また一方上層側の部分の汚泥を削り取ることによって露出した第一次汚泥乾燥槽に残った汚泥の乾燥効率も向上するものである。したがって、1回に処理すべき汚泥を従来に比してはるかに短期間で乾燥させることができるものである。
【0012】
該第二次汚泥乾燥床は床面を南向きに向け且つ僅かに傾斜することにより、太陽の平均受光量を多くして乾燥を早め、また雨水が水抜き孔に向かって流れるようにすることができる。更に該第二次汚泥乾燥床をコンクリートにより形成することにより、夜間等における結露を防ぎ、乾燥を早めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態は、一部に排水口を設けた乾燥槽本体の底部に、所定の厚味に濾過砂を敷き、該濾過砂に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒に濾過砂を充填してなる砂パイプを立設し、前記濾過砂の上に投入した汚泥中に含まれる水を、前記濾過砂及び砂パイプを通して前記排水口から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽と、前記第一次汚泥乾燥槽の側部に連設した第二次汚泥乾燥床とを用い、第一次汚泥乾燥槽において汚泥の含水率が約75%以下になり、表層側の部分の汚泥の乾燥がかなり進んだら、この部分の汚泥を第二次汚泥乾燥床に移して全体的に均一な厚味になるように広げ、またこのように表層側の部分の汚泥を削り取ることによって、下層側の部分の乾燥が余り進んでいない含水率の高い第一次汚泥乾燥槽に残った汚泥を露出させ、これを陽光と風に当てるようになすことにある。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明方法に用いる汚泥乾燥装置の斜視図、図2は図1中A−A線断面図、図3及び図4は本発明方法の工程説明図である。
【0015】
図中、1は第一次汚泥乾燥槽である。また、該第一次汚泥乾燥槽1は、一部に排水口3を設けたコンクリート製乾燥槽本体2の底部2aに、所定の厚味に濾過砂4を敷き、該濾過砂4に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒6に濾過砂7を充填してなる砂パイプ5を立設し、前記濾過砂4の上に投入した汚泥M中に含まれる水を、前記濾過砂4及び砂パイプ5を通して前記排水口3から排出するようになしたものである。尚、乾燥槽本体2の大きさは、縦6m程度、横方向20m程度、高さ120cm程度とする。また、濾過砂4は20cm程度の厚さとし、また、砂パイプ5はその直径を10cm程度、高さを70cm程度とする。
【0016】
8はコンクリート製の第二次汚泥乾燥床である。このようにコンクリート製とすることにより、夜間等における結露を防ぎ、乾燥を早めることができる。また、該第二次汚泥乾燥床8は、前記第一次汚泥乾燥槽1の側部に連設しており、平なべ形をなしている。また、該第二次汚泥乾燥床8は、その面積を前記第一次汚泥乾燥槽1の1/2程度とする。更に第二次汚泥乾燥床8の床面を南向きに形成すると共にこれを僅かに傾斜させることにより、太陽の平均受光量が多くなり、また雨水を水抜き孔11に向けて流れるようにすることができ、一層乾燥を早めることができる。その他図中12は地面である。
【0017】
そして、本発明に係る汚泥乾燥方法は、前記第一次汚泥乾燥槽1と第二次汚泥乾燥床8とを用い、第一次汚泥乾燥槽1における汚泥Mの含水率が約75%以下になったときに、図3に示す如く、該汚泥Mの上層略2/3を第二次汚泥乾燥床8に移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、該汚泥Mの含水率が略40%以下になったときに該第二次汚泥乾燥床8からこれを排出し、次に、図4に示す如く、該第二次汚泥乾燥床8に、前記第一次汚泥乾燥槽1に残った汚泥Mを移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、その後第一次汚泥乾燥槽1に新たな処理汚泥を投入するものである。そして、以降は前記工程を繰り返すものである。
【0018】
尚、本実施例で使用する濾筒6としては、図7に示す如く、ポリエチレン又はポリエステルからなる濾過布材でこれを形成し、該濾筒6の切欠き部分9を含む両端部の縁を加熱溶融した後冷却して硬化させ、もって切欠き部分9を含む両端部の縁に剛性を持たせてなるものを使用することができる。この場合には、濾過砂4に砂パイプ5を回転しながら埋め立てるとき、濾過砂4をほぐすように容易に深く立てることができるものである。
【0019】
また、濾筒6に充填する濾過砂7を、両端部の砂7aを粒径の微細な砂とし、中央部の砂7bを両端部の砂7aより粒径の大きな砂としてもよい。この場合には、砂パイプ5を濾過砂4中に埋め込むときに、埋め込む側、つまり下端側に充填された粒径の微細な砂7aによって汚れた成分が付着した濾過砂4の砂パイプ5内への侵入を阻止することができるものである。
【0020】
また、濾過砂7として乾燥した汚泥を破砕したものを使用するときには、汚泥の馴染みがよく、一層効率よく濾過することができるものである。また、濾過砂7として粒状の活性炭を使用することもでき、その場合には、更に前記効果に加え臭気の吸着効果等も期待できるものである。また、汚泥を破砕したものと活性炭を併用することもできる。
【0021】
その他、図中10は濾筒6の縁から上げ底式に奥側に入った位置に設けた底板であり、濾筒6と同一素材の濾過布材で構成されている。これにより、砂7aを通過する水の濾過と共に、汚れた濾過砂4の砂パイプ5内への侵入を阻止している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明方法に用いる汚泥乾燥装置の斜視図である。
【図2】図1中A−A線断面図である。
【図3】本発明方法の工程説明図であり、第一次汚泥乾燥槽における汚泥の表層側部分を第二次汚泥乾燥床に移した状態を示すものである。
【図4】本発明方法の工程説明図であり、第一次汚泥乾燥槽に残った汚泥を第二次汚泥乾燥床に移した状態を示すものである。
【図5】従来方法で用いる汚泥乾燥槽の斜視図である。
【図6】図5中B−B線断面図である。
【図7】本発明方法において用いる砂パイプ5の中央縦断正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 第一次汚泥乾燥槽
2 乾燥槽本体
3 排水口
4 濾過砂
5 砂パイプ
6 濾筒
7 濾過砂
8 第二次汚泥乾燥床


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大量の水を含む汚泥を天日によって乾燥させる方法であって、一部に排水口を設けた乾燥槽本体の底部に、所定の厚味に濾過砂を敷き、該濾過砂に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒に濾過砂を充填してなる砂パイプを立設し、前記濾過砂の上に投入した汚泥中に含まれる水を、前記濾過砂及び砂パイプを通して前記排水口から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽と、前記第一次汚泥乾燥槽の側部に連設した第二次汚泥乾燥床とを用い、第一次汚泥乾燥槽における汚泥の含水率が約75%以下になったときに、該汚泥の上層略2/3を第二次汚泥乾燥床に移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、該汚泥の含水率が略40%以下になったときに該第二次汚泥乾燥床からこれを排出し、次に該第二次汚泥乾燥床に、前記第一次汚泥乾燥槽に残った汚泥を移して全体的に略均一な厚味になるように広げ、その後第一次汚泥乾燥槽に新たな処理汚泥を投入するようになしたことを特徴とする汚泥乾燥方法。
【請求項2】
第二次汚泥乾燥床を僅かに傾斜させて南向きに形成してなる請求項1記載の汚泥乾燥方法。
【請求項3】
第二次汚泥乾燥床をコンクリートにより形成してなる請求項1又は2記載の汚泥乾燥方法。
【請求項4】
一部に排水口を設けた乾燥槽本体の底部に、所定の厚味に濾過砂を敷き、該濾過砂に、水透過性の濾過布材で形成した筒状の濾筒に濾過砂を充填してなる砂パイプを立設し、前記濾過砂の上に投入した汚泥中に含まれる水を、前記濾過砂及び砂パイプを通して前記排水口から排出するようになした第一次汚泥乾燥槽と、前記第一次汚泥乾燥槽の側部に連設した第二次汚泥乾燥床とからなる汚泥乾燥装置。
【請求項5】
第二次汚泥乾燥床を僅かに傾斜させて南向きに形成してなる請求項4記載の汚泥乾燥装置。
【請求項6】
第二次汚泥乾燥床をコンクリートにより形成してなる請求項4又は5記載の汚泥乾燥装置。
【請求項7】
濾筒をポリエチレン又はポリエステルからなる濾過布材で形成し、該濾筒の切欠き部分を含む両端部の縁を加熱溶融した後冷却して硬化させ、もって切欠き部分を含む両端部の縁に剛性を持たせてなる請求項4、5又は6記載の汚泥乾燥装置。
【請求項8】
濾筒に充填する濾過砂を、両端部の砂を粒径を微細な砂とし、中央部の砂を両端部の砂より粒径の大きな砂としてなる請求項4、5、6又は7記載の汚泥乾燥装置。
【請求項9】
濾筒に充填する濾過砂として、乾燥した汚泥を破砕して形成したものを使用することからなる請求項4、5、6、7又は8記載の汚泥乾燥装置。
【請求項10】
濾筒に充填する濾過砂として、活性炭を使用することからなる請求項4、5、6、7又は8記載の汚泥乾燥装置。
【請求項11】
濾筒に充填する濾過砂として、乾燥した汚泥を破砕して形成したものと粒状の活性炭を併用することからなる請求項4、5、6、7又は8記載の汚泥乾燥装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−136901(P2008−136901A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323463(P2006−323463)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(500375800)株式会社ジャパンウォーター (1)
【Fターム(参考)】