説明

汚泥処理方法、汚泥処理システムおよび汚泥用凝集剤添加装置

【課題】 杭工事現場内に設置可能なコンパクトな設備の組合せにより、現場内で発生する建設汚泥を効率よく処理する汚泥処理方法と、該処理方法に適した汚泥処理システムおよび汚泥用凝集剤添加装置を提供する。
【解決手段】 発生した建設汚泥を貯留部11に貯留する。貯留部11で粗大含有固形分を沈降分離させた汚泥を、現場内に設置したトロンメルなどの汚泥分別装置31に送り、さらに含有固形分を分別する。細粒固形分のみを含む汚泥に凝集剤添加装置51で凝集剤を混合し、フロック化した汚泥を脱水処理装置71で搾り、脱水ケーキと水に分離させる。凝集剤添加装置51は、上部の投入口53から下部の排出口54にかけて螺旋状に配置したホース52による管路を有し、管路の途中に設けた添加ノズル55a,55bから凝集剤を添加し、流下時に汚泥に加わる遠心力および管路の抵抗を利用して、汚泥と凝集剤を攪拌混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭工事で発生する建設汚泥を、該杭工事現場内において処理するための汚泥処理方法、該処理方法に適した汚泥処理システムおよび汚泥用凝集剤添加装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレボーリング工法、中掘工法、回転圧入工法のような既製杭の埋込み杭工法は、振動や騒音などの公害を軽減できることから、既製杭の施工方法として広く用いられている。
【0003】
これらの施工方法から排出される汚泥は、ベントナイトあるいはセメント等を含む掘削液、杭周固定液、地下水等が混ざっているため、一般的には、廃棄物処理法に規定する産業廃棄物である建設汚泥として取り扱わなければならない。そのため、膨大な廃棄処理費用がかかるだけでなく、近年、これらの産業廃棄物を処分する最終処分場の受入能力が限界に近づいている。
【0004】
建設汚泥の処理に関し、特許文献1には、建設汚泥にセメント系安定材を混入して加圧した後、5〜100mm程度の大きさに造粒し、それを盛土、人工地盤、管渠の埋戻し材、サンドドレーン工法のドレーン材またはマット材などに有効利用する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、建設汚泥クローズド型リサイクル処理システムとして、搬入されてきた建設汚泥から、まず砂・砂利を分級分別し、泥水を凝集沈殿にて濃縮スラリーとし、その濃縮スラリーをフィルタープレスあるいは遠心分離機等の脱水機で脱水し、脱水ケーキは固化材を添加して再利用し、分離水は砂・砂利の洗浄、汚泥の圧送・固化時の補給水として再利用することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、作業現場で泥水処理を行うための泥水処理システムとして、泥水から脱水ケーキを製造するための脱水機を搭載した自走式脱水機と、脱水ケーキに固化材を加えて改良土を製造する土質改良機を搭載した自走式土質改良機を用いるシステムが記載されている。
【0007】
この他、特許文献4には、水を多量に含む泥水等の脱水処理を行う装置として、円筒状の濾過筒の内側にスクリューコンベアを設け、泥水を上方へ圧送しながら脱水し、上部から脱水ケーキを取り出す縦型の脱水処理装置が記載されている。
【特許文献1】特開平04−049315号公報
【特許文献2】特開平11−347593号公報
【特許文献3】特開2001−87796号公報
【特許文献4】特開平06−277413号公報
【特許文献5】特開2002−192200号公報
【特許文献6】特開昭52−074166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1記載の建設汚泥にセメント系安定材を混入して改良土を造粒する方法は、産業廃棄物である建設汚泥を廃棄せずに有効利用できるというメリットを有するが、造粒の工程において、セメント類の混入の他、加圧、脱水処理、その解砕、分級、さらに改良土の表面処理や破砕粉の処理が必要であり、それなりの処理設備と費用を要する。
【0009】
また、大量処理のためには処理設備も大型化し、建設汚泥が発生する限られた面積の工事現場に設置することができず、建設汚泥の運搬や造粒化した改良土についても新たな施工現場への搬送が必要となり、コスト的には必ずしも経済的であるとは言えない。
【0010】
特に、杭工事現場では、杭孔の掘削、あるいは既製杭の沈設の際に掘削液などが混入した液状の建設汚泥が杭孔から大量に溢れ出て、工事現場全体がぬかるみ状態になるなど、杭工事のための重機の搬入、移動の障害になるため、溢れ出た建設汚泥を一時的に貯留するための釜場としての穴を掘削し、さらに工事現場の片隅に搬出まで建設汚泥を貯留しておくためのスペースを確保するなどして対処している。
【0011】
しかし、多量の水分を含む建設汚泥の扱いが困難であり、汚泥が工事現場を汚す他、外部へ搬出する際もハンドリング改善のためにセメントなどの固化材を添加してからダンプトラックに積み込むなど、多くの手間とコストを要している。
【0012】
特許文献2記載の発明も、専用の施設による大量処理を図ったものであるが、特許文献1記載の発明と同様、搬送前の工事現場内での建設汚泥の扱いに関する問題の解決にはつながらない。
【0013】
これに対し、特許文献3記載の発明は、自走式脱水機と自走式土質改良機の組合せにより、工事現場内での泥水処理を図ったものであるが、杭工事現場で発生する建設汚泥は、掘削液や夾雑物が混入した液状の建設汚泥であり、現場を汚すことでこれら自走式脱水機と自走式土質改良機の走行が困難となる他、自ずと処理能力が限られる自走式脱水機に大きな固形分や夾雑物が混入したままの建設汚泥を投入することは、脱水機能に支障を生じさせるなど装置の故障につながる恐れがある。
【0014】
本発明は、このような従来技術における課題の解決を図ったものであり、杭工事現場内に設置可能なコンパクトな設備の組合せにより、杭工事現場内で発生する建設汚泥を効率よく処理することができる汚泥処理方法と、該処理方法に適した汚泥処理システムおよび汚泥用凝集剤添加装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の請求項1に係る建設汚泥処理方法は、杭工事で発生する建設汚泥を該杭工事現場内で処理する方法であって、杭が施工される杭孔近傍に杭孔からオーバーフローする液状の建設汚泥を貯留するための貯留部を設け、該杭工事現場内に汚泥分別装置と凝集剤添加装置および汚泥脱水処理装置を設置し、前記貯留部で汚泥中の粗大含有固形分を沈降分離させ、該粗大含有固形分を分離した汚泥を前記汚泥分別装置に送り込み、汚泥分別装置で該汚泥からさらに所定の径以上の含有固形分を分別し、該所定の径以上の含有固形分を取り除いた細粒固形分のみを含む汚泥を前記凝集剤添加装置の上部に設けた投入口に投入し、該汚泥に凝集剤を添加しながら該凝集剤添加装置の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホース内を流下させ、前記ホース内を流下させることで該汚泥に凝集剤を混合してフロックを生成させ、前記排出口から排出されるフロック化した汚泥を前記汚泥脱水処理装置に送って脱水処理し、脱水ケーキと水に分離させることを特徴とするものである。
【0016】
従来の杭工事においても、例えば既製杭の杭孔への建て込みの際、あるいは現場打ち杭用の杭孔掘削の際などに、杭孔から溢れてくる建設汚泥を一時的に溜めておくために、釜場としての穴を杭孔近傍に掘削することが行われている。
【0017】
しかし、従来は、このような釜場に溜めた建設汚泥は、釜場からバックホーなどを使ってすくいあげ、外部への搬出を前提として杭工事現場の片隅に設けた建設汚泥貯留用のスペースに運んでいるが、建設汚泥が大量の水を含んでいるため、こぼれた建設汚泥が現場を汚し、作業者にとっても建設機械にとっても作業環境を悪化させている。
【0018】
これに対し、本発明では、この釜場等の貯留部を、建設汚泥を汚泥分別装置に投入する前段階において粗大含有固形分を沈降分離するための設備として利用し、粗大含有固形分が取り除かれた汚泥をそのままサンドポンプあるいはバックホーなどで汚泥分別装置に送り、一連の処理を行う構成としているため、建設汚泥による現場の汚染が解消される。なお、貯留部としては、従来の掘削による釜場に限らず、比較的簡易な貯留槽等を設置してもよい。
【0019】
貯留部の径や深さは、例えば杭工事の種類に応じて予想される建設汚泥の発生量や、その貯留部で沈降分離により除去すべき粗大含有固形分の大きさ、量等に応じて、適宜設計するものとする。
【0020】
なお、ここでいう粗大含有固形分は、厳密にその大きさが限定されるものではなく、主として貯留部から建設汚泥をサンドポンプ等の移送手段で汚泥分別装置に送る際、サンドポンプ等の移送手段で送れないような大きさの石や夾雑物、あるいはサンドポンプ等に負担をかける重量物などを指すが、移送手段の能力に加え、次工程の装置である汚泥分別装置の能力も考慮される。
【0021】
汚泥分別装置の代表的なものとしては、振動ふるいやロータリー式のスクリーンセルを用いたトロンメルが挙げられるが、本発明では汚泥分別装置で分別される砂利等よりも、むしろ細粒固形分のみを含む建設汚泥を取り出すことが重要となるため、連続分級過程において、最初に細粒固形分と泥水成分を通過させて取り出すことができるトロンメル方式の汚泥分別装置が効率的である。
【0022】
ここでいう細粒固形分の最大径は、汚泥分別装置の性能や次工程の装置である汚泥脱水処理装置の性能との関係で決まり、通常は0.5mm以上、5mm以内となる。
【0023】
0.5mmより小さい径とすると、汚泥分別装置の設計が難しくなり、汚泥分別装置が高価となり、メッシュが目詰まりしやすくなるなどして、効率のよい分別が困難となることが予想される。また、5mmより大きい径になると、均一で処理しやすい脱水ケーキを得ようとすると、次工程の凝集剤添加装置や汚泥脱水処理装置の設計が難しくなり、またこれらの装置の故障につながる恐れがある。
【0024】
凝集剤添加装置は、システム全体のコンパクト化と効率を考慮して開発したものであり、上部の投入口から下部の排出口にかけてホースを螺旋状に配置し、凝集剤を添加しながら汚泥を流下させることで、汚泥内に凝集剤が均等に混合されるようにしたものである。混合の原理は、螺旋状の管路を流下する汚泥に遠心力が作用するとともに管路としてのホース内面の抵抗を利用して、汚泥と凝集剤の攪拌混合効果を与えるものであり、ホースの内面に凹凸を設けたり、あるいは凹凸を有するホースを用いることは効果的である。ただし、流下の際に、汚泥の流下を極端に阻害したり、固形分が凹凸の凹部内に残ったりしない程度の凹凸にする必要がある。
【0025】
この凝集剤添加装置で添加される凝集剤により、汚泥がフロック化し、フロック化の進んだ汚泥は固液分離が容易な状態となり、次工程の脱水処理に進む際に既に分離して排出される水や、脱水処理装置で搾り出された水は、杭工事や汚泥の希釈等に再利用することが可能である。
【0026】
凝集剤は、種類によっても異なるが、例えば、固形分換算で0.01〜0.1%程度の量を添加することが好ましい。本発明で用いられる凝集剤としては、アニオン系(例えば、ポリアクリルアミド・アクリル酸ソーダ系、ポリアクリルアミド炭化水素系等)、カチオン系(例えば、ポリジメチルジアリルアンモニウム系、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等)、ノニオン系(例えば、ポリアクリルアミド・スルホメチル化アクリルアミド系等)などが挙げられる。
【0027】
従来、汚泥脱水処理装置としては、ベルトプレス、フィルタープレス、遠心分離機、真空脱水機等が知られており、特に限定されるものではないが、本発明では凝集剤添加装置で凝集剤を添加・混合してフロック化した汚泥を処理するため、必ずしも大きなプレス力等を必要とせず、ベルトスクリーン、ローラープレスあるはベルトプレス程度の比較的簡易な装置により連続的な脱水が可能である。
【0028】
本願の請求項2は、請求項1に係る汚泥処理方法において、前記汚泥脱水処理装置により脱水処理された汚泥の脱水ケーキに固化材を混合し、該混合物を該杭工事現場の地盤改良材として用いることを特徴とするものである。
【0029】
脱水ケーキにセメント等の固化材を混合して、ソイルセメントなどの形で、杭工事現場の地盤改良に用いれば、地盤耐力を増大させるだけでなく、杭工事現場における建設汚泥の処理をクローズドシステムとし、脱水ケーキの外部処理が不要となる。
【0030】
建設汚泥へのセメント等の固化材の混合は、従来の方法で行えばよい。また、上記脱水処理により発生する余剰水も、杭工事の掘削液として利用したり、汚泥の希釈、砂や砂利の洗浄、その他、工事現場内における各種洗浄に利用するなど、該杭工事現場で再利用すれば、完全なクローズドシステムとすることができる。
【0031】
本願の請求項3に係る建設汚泥処理システムは、杭工事で発生する建設汚泥を該杭工事現場内で処理するための汚泥処理システムであって、汚泥から所定の径以上の含有固形分を分別するための汚泥分別装置と、該汚泥分別装置で分別された細粒固形分のみを含む汚泥に凝集剤を添加してフロックを生成させるための凝集剤添加装置と、凝集剤添加装置から送られてくるフロック化した汚泥を脱水ケーキと水に分離させるための脱水処理装置とを備えてなり、前記凝集剤添加装置は、上部の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホースと、1または2種以上の凝集剤を添加するための1または2以上の凝集剤添加部を有し、上部の投入口から投入された汚泥に前記凝集剤添加部から凝集剤を添加しながら前記ホース内を流下させることで、汚泥と凝集剤が混合されるようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
このシステムは、請求項1または2に係る汚泥処理方法に用いることができる設備システムであり、汚泥分別装置、凝集剤添加装置および脱水処理装置の基本的な構成や原理は既述した通りである。
【0033】
凝集剤添加装置については、上部の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置した管路としてのホースの途中に、1または2以上の凝集剤添加部を設け、そこから1または2種以上の凝集剤を添加する構成としている。
【0034】
凝集剤添加部を2箇所に設ける場合、通常は上部の投入口近傍に第1の凝集剤添加部を設け、所定距離をおいた下流に第2の凝集剤添加部を設ける。その場合、凝集剤として同種の凝集剤を添加することも可能ではあるが、2以上の凝集剤添加部を設けるメリットとしては、各種成分が含まれる汚泥に対し、第1薬、第2薬という形で異なる種類の凝集剤を添加し、できるだけ多くの固形成分をフロック化し、固液分離の割合を高めることができる。具体的には、例えば第1の凝集剤添加部でカチオン系の凝集剤を添加し、第2の凝集剤添加部でアニオン系の凝集剤を添加するといった形で、凝集効果を高めることができる。その他、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの凝集剤を任意の組合せ・順序で添加することができる。
【0035】
請求項4は、そのうち、凝集剤添加部として、前記ホースの上部に位置する第1の凝集剤添加部と、その下流に位置する第2の凝集剤添加部を設け、第1の凝集剤添加部からカチオン系の凝集剤を添加し、第2の凝集剤添加部からアニオン系の凝集剤を添加する場合を限定したものである。
【0036】
本願の請求項5に係る汚泥処理用凝集剤添加装置は、上部の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホースと、1または2種以上の凝集剤を添加するための1または2以上の凝集剤添加部を有し、上部の投入口から投入された汚泥に前記凝集剤添加部から凝集剤を添加しながら、螺旋状のホース内を流下させることで、汚泥と凝集剤が混合されるようにしたことを特徴とするものである。
【0037】
この装置は、請求項1または2に係る汚泥処理方法、請求項3または4に係る汚泥処理システムに用いることができる装置であり、基本的な構成や原理はこれらの請求項に関して既述した通りである。
【0038】
本発明でいうホースは、例えば合成樹脂製の軽量でフレキシブルなものが好ましいが、それに限定されず汚泥の流下のための管路を構成できるものであればよく、金属製の管でもよい。
【0039】
本発明は、既述のように、螺旋状に配置したホースの下り勾配を利用して汚泥を流下させ、その際、汚泥に働く遠心力と管路としてのホース内面の抵抗を利用して汚泥と添加された凝集剤を混合するものであり、ホース径、螺旋半径(平面的にみて長円のものや一部に直線部を有するものであってもよい)、傾斜角、長さ等は、ホースの材質、形態(内面の凹凸形状その他の流下に対する抵抗等)、設計流下量等、種々の要因について、他のパラメータとの関係で種々の設計が考えられる。比較的一般的な形態について一例を挙げると、ホース径が100〜200mm、螺旋半径が250〜1000mm、傾斜角(下り勾配)が10〜20度程度となる。
【0040】
なお、汚泥と凝集剤に攪拌混合効果を与える手段としては、遠心力やホース内面の抵抗だけでなく、ホース内に別途、汚泥の流下を大きく阻害しない程度の抵抗となるものを配置してもよい。
【0041】
請求項6は、請求項5に係る汚泥処理用凝集剤添加装置において、前記ホースの内部に凹凸を設けてある場合を限定したものである。
【0042】
凹凸は汚泥の固形成分が溜まらない程度の凹凸とし、汚泥の流下に抵抗を与えることで、
汚泥と凝集剤の混合攪拌効果を高めることができる。このようなホースとしては、市販の蛇腹状の凹凸を有するいわゆる波付合成樹脂製のフレキシブルなホースを安価に利用することができる。
【0043】
請求項7は、請求項6に係る汚泥処理用凝集剤添加装置において、さらに前記ホースが蛇腹状の凹凸を有する合成樹脂製の透明または半透明のホースである場合を限定したものである。
【0044】
この場合も、市販の波付合成樹脂製のホースを利用することができ、透明または半透明のものを用いた場合、仮に汚泥の流下が特定の箇所で滞った場合にも、目視でその部位を知ることができ、ホースのフレシキブル性を利用して、容易に対処することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の汚泥処理方法、汚泥処理システムは、杭工事現場内に設置される比較的軽微な設備によって、建設汚泥を杭工事現場内で処理するものであり、外部に産業廃棄物を出さないか、あるいは外部での処理を必要とする産業廃棄物の発生を最小限に抑えることができる。
【0046】
特に、杭工事現場のように、建設汚泥の発生が問題となる現場内で、当該現場で発生する限られた量の汚泥を、コンパクトな装置で効率良く処理することができるという点でメリットが大きい。
【0047】
また、産業廃棄物を発生させないかまたは最小限に抑えることで、建設汚泥の処理費用を大幅に低減でき、全体の工事費の低減にもつながる。
【0048】
処理済みの建設汚泥は、例えばセメント等の固化材を混合するなどして、杭工事現場内の地盤改良に利用したり、あるいは有価物として外部に搬出して有効利用することもできる。また、汚泥の脱水により生じた水は、杭工事の掘削液として利用したり、砂や砂利の洗浄、その他、工事現場内における各種洗浄、あるいは本発明の処理システム内での汚泥の希釈に利用するなどして有効利用することができる。
【0049】
また、脱水処理に先立ち、汚泥分別装置で分別された径の大きい砂や砂利などを、杭工事現場内外で有効利用することも可能である。
【0050】
本発明の汚泥処理用凝集剤添加装置は、螺旋状に配置したホースの下り勾配を利用して汚泥を流下させ、その際、汚泥に働く遠心力と管路としてのホース内面の抵抗を利用して汚泥と添加された凝集剤を混合攪拌し、汚泥の固液分離を促進するものであり、安価な材料により工事現場等でも簡単に組み立てることができ、特に動力を必要とせず、軽量、コンパクトで、取扱いも容易であるため、建設工事現場等での使用に適した装置と言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の最良の実施形態におけるシステムの構成および施工手順を、添付図面に基づいて説明する。
【0052】
なお、図示を省略しているが、本実施形態は、プレボーリング工法による既製コンクリート杭の施工現場において、プレボーリングした杭孔へ既製コンクリート杭を建て込むことにより杭孔からオーバーフローしてくる建設汚泥を、一旦、貯留部としての釜場へ送り込み、その汚泥を処理する場合を想定している。
【0053】
その場合、オーバーフローしてくる建設汚泥は、杭工事における掘削液などの使用により、含水比の高い、非常に流動性が高く、流体に近いものとなっており、また、通常は掘削孔にセメントミルク等を充填して杭を沈設するので、セメント成分等を含むものである場合が多い。
【0054】
なお、杭工事における建設汚泥は、埋込み杭に限らず、場所打ち杭の施工における杭孔の削孔などによっても発生する。
【0055】
図1および図2に示した実施形態における施工手順は次の通りである。
【0056】
(1) 建設汚泥の貯留部11への貯留
上述のような杭工事によって発生する汚泥は、まず、杭孔近傍に設けた貯留部11としての釜場に送り込まれる。貯留部11への建設汚泥の移送はバックホーなどを利用しても良いが、杭孔から貯留部11へ向けて誘導溝を設け、杭孔からオーバーフローさせた建設汚泥をそのまま貯留部11へ流下させるようにすれば、効率的であり、かつ現場の汚染を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、その場合、貯留部11を第1の釜場と第2の釜場というように2段に設け、主として第1の釜場で粗大含有固形分を沈降分離させ、第1の釜場から第2の釜場に向けてオーバーフローする建設汚泥の上澄み液を第2の釜場に貯留するというようにすれば、粗大含有固形分を第1の釜場に集め、第2の釜場からのサンドポンプ21等の移送手段による汚泥分別装置31への汚泥の送り出しをよりスムーズにすることもできる。
【0058】
(2) 汚泥の汚泥分別装置への移送
貯留部11で一時的に貯留された建設汚泥は、サンドポンプ21により、ホース22を通じて汚泥分別装置31に送られる。
【0059】
サンドポンプ21は、建設汚泥の特性や量に応じて、それに見合った汎用品のサンドポンプを使用することができる。なお、サンドポンプ21を利用せず、現場のバックホーなどを利用して、汚泥を貯留部11からホッパー32へ投入してもよい。
【0060】
(3) 汚泥分別装置による建設汚泥の分別
本実施形態では、汚泥分別装置31として、図1に示すようなトロンメルを用いている。この汚泥分別装置31では、ホッパー32に投入された汚泥について、細粒分固形分(例えば、粒径5mm以下)のみを含む建設汚泥と、それ以外の砂利、不純物などを分別する。
【0061】
汚泥分別装置31として図示したトロンメルは、モーター35によって筒状スクリーン34が軸回りに旋回するように駆動される構造となっている。
【0062】
ホッパー32から筒状スクリーン34の内側に投入された汚泥成分のうち、メッシュ34aの目が細かい部分(例えば、目の寸法が約5mm)で、建設汚泥中の泥水成分と細粒固形分が筒状スクリーン34のメッシュ34aを通過して分離され、排出シュート36aより貯留槽37に投入される。
【0063】
続く、メッシュ34bの目が粗い部分(例えば、目の寸法が約10mm)で、比較的細かい砂利等が分別されて排出シュート36bより排出され、残りの粗い砂利や夾雑物等が排出シュート36cより排出される。
【0064】
なお、これらのメッシュの目詰まりは、振動やウォータージェット、ブラシなどによる洗浄等、従来の方法により適宜除去される。
【0065】
(4) 汚泥タンクへの移送
排出シュート36aより貯留槽37に投入された細粒固形分のみを含む汚泥は、細粒固形分の沈降により濃度が不均一にならないように、貯留槽37に設けた攪拌機38で攪拌しながら、配管またはホース43を通じて凝集剤添加装置51の手前の高所に設置した汚泥タンク41に送られる。
【0066】
(5) 凝集剤添加装置による凝集剤の混合
汚泥タンク41に上げられた汚泥は、そこから凝集剤添加装置51の上部の投入口53に送り込まれる。汚泥には、螺旋状に配置したホース52を通過する間に、投入口53の近傍に設けた凝集剤添加部としての第1の添加ノズル55aから例えばカチオン系の凝集剤が添加され、さらにその下流に設けた第2の添加ノズル55bから例えばアニオン系の凝集剤が添加される。
【0067】
流下の際の遠心力やホース内面あるいは内部で受ける抵抗により、汚泥と凝集剤がほぼ均等に混合され、ホース52の下部に位置する排出口54から排出される。その間、凝集剤が混合された汚泥は、固形成分のフロック化が進み、固液分離しやすい状態で排出されてくる。
【0068】
図1(a)および図1(c)に符号56a,56bで指示した装置は、凝集剤攪拌タンクであり、攪拌機57で凝集剤を攪拌しながら、それぞれ添加ノズル55a,添加ノズル55bに向けて凝集剤を供給する。
【0069】
また、図1に示したように、本実施形態においては、1つの汚泥タンク41に対し、2つの凝集剤添加装置51を並列に配置し、後述する次工程のベルトコンベヤー61には2つの凝集剤添加装置51から1つのベルトコンベヤー61へ積み出す配置としているが、これらの配置や数は、必要とする処理能力や設置スペースとの関係で任意である。
【0070】
図2は、図1(b)の凝集剤添加装置51および次工程のベルトコンベヤー61および汚泥脱水処理装置71としてのベルトプレス部分を拡大して示したものである。凝集剤添加装置51の螺旋状に配置されるホース52は台車58aの上に組んだ支持フレーム58で支持されている。
【0071】
ホース52としては、課題を解決するための手段の項で述べたように、市販の波付合成樹脂製のフレキシブルなホースを利用することで、汚泥と凝集剤の混合攪拌効果が高められ、さらに透明または半透明のものを使用すれば汚泥の流下に関する管理も容易となる。
【0072】
(6) 汚泥脱水処理装置による脱水
凝集剤添加装置51で凝集剤を添加した汚泥は固形成分のフロック化が進み、この例では、凝集剤添加装置51の排出口54からホッパー62を介してベルトコンベア61に載せられる。
【0073】
その際、分離水はフィルター等を介して排水部63に回収され、この例では図1の戻しホース39により、貯留槽37に送られ、汚泥タンク41に送られる前の汚泥の希釈に利用している。
【0074】
ベルトコンベア61からは、汚泥脱水処理装置71としてのベルトプレスに送られ、ベルトプレスで残りの水分が搾り出され、水分は排水部72から回収される。また、残った脱水ケーキは脱水ケーキ貯留槽73に回収される。
【0075】
(7) 再利用
脱水ケーキ貯留槽73に回収された脱水ケーキは、セメント系固化材などを添加し、ソイルセメントなどとして現場の地盤改良等に再利用することができる。
【0076】
また、脱水された水分は、上述のように処理過程での汚泥の希釈などに利用できる他、杭施工のための掘削液として、あるいは各種洗浄作業における洗浄液として利用することもできる。
【0077】
図3は、本発明の他の実施形態における凝集剤添加工程以降の装置配置例を示したものである。その前の工程に関しては、図1,図2の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
本実施形態においては、凝集剤添加装置51の排出口54から排出されるフロック化した汚泥を、直接、凝集剤添加装置51の下方に設置したローラープレスの汚泥脱水処理装置81のホッパー82に投入し、2つのローラーの間をフロックが通過することで加圧され、汚泥から水分を搾り出し、搾り出された水分は排水部83から排出される。
【0079】
一方、脱水ケーキはベルトコンベア91に積まれ、脱水ケーキ貯留槽73に回収される。
【0080】
これらの排出された水分および脱水ケーキは、図1,図2の実施形態の場合と同様に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の汚泥処理システムおよび処理方法の概要を示したもので、(a)は平面図、(b) は鉛直断面図、(c) は凝集剤攪拌タンクの側面図である。
【図2】図1(b)における汚泥用凝集剤添加装置と汚泥脱水処理装置部分の拡大図である。
【図3】本発明の他の実施形態における凝集剤添加工程以降の装置配置例を示したものであり、(a)は平面図、(b) は鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0082】
11…貯留部(釜場)、
21…サンドポンプ、22…ホース、
31…汚泥分別装置(トロンメル)、32…ホッパー、33…架台、34…筒状スクリーン、34a,34b…メッシュ、35…モーター、36a,36b,36c…排出シュート、37…貯留槽、38…攪拌機、39…戻しホース、
41…汚泥タンク、42…架台、43…ホース、
51…凝集剤添加装置、52…ホース、53…投入口、54…排出口、55a,55b…添加ノズル、56a,56b…凝集剤攪拌タンク、57…攪拌機、58…支持フレーム、58a…台車、
61…コンベヤー、62…ホッパー、63…排水部、
71…汚泥脱水処理装置(ベルトプレス)、72…排水部、73…脱水ケーキ貯留槽、
81…汚泥脱水処理装置(ローラープレス)、82…ホッパー、83…排水部、
91…コンベヤー、92…脱水ケーキ貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭工事で発生する建設汚泥を該杭工事現場内で処理する方法であって、杭が施工される杭孔近傍に杭孔からオーバーフローする液状の建設汚泥を貯留するための貯留部を設け、該杭工事現場内に汚泥分別装置と凝集剤添加装置および汚泥脱水処理装置を設置し、前記貯留部で汚泥中の粗大含有固形分を沈降分離させ、該粗大含有固形分を分離した汚泥を前記汚泥分別装置に送り込み、汚泥分別装置で該汚泥からさらに所定の径以上の含有固形分を分別し、該所定の径以上の含有固形分を取り除いた細粒固形分のみを含む汚泥を前記凝集剤添加装置の上部に設けた投入口に投入し、該汚泥に凝集剤を添加しながら該凝集剤添加装置の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホース内を流下させ、前記ホース内を流下させることで該汚泥に凝集剤を混合してフロックを生成させ、前記排出口から排出されるフロック化した汚泥を前記汚泥脱水処理装置に送って脱水処理し、脱水ケーキと水に分離させることを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
前記汚泥脱水処理装置により脱水処理された汚泥の脱水ケーキに固化材を混合し、該混合物を該杭工事現場の地盤改良材として用いることを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
杭工事で発生する建設汚泥を該杭工事現場内で処理するための汚泥処理システムであって、汚泥から所定の径以上の含有固形分を分別するための汚泥分別装置と、該汚泥分別装置で分別された細粒固形分のみを含む汚泥に凝集剤を添加してフロックを生成させるための凝集剤添加装置と、凝集剤添加装置から送られてくるフロック化した汚泥を脱水ケーキと水に分離させるための脱水処理装置とを備えてなり、前記凝集剤添加装置は、上部の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホースと、1または2種以上の凝集剤を添加するための1または2以上の凝集剤添加部を有し、上部の投入口から投入された汚泥に前記凝集剤添加部から凝集剤を添加しながら前記ホース内を流下させることで、汚泥と凝集剤が混合されるようにしたことを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項4】
前記凝集剤添加部として、前記ホースの上部に位置する第1の凝集剤添加部と、その下流に位置する第2の凝集剤添加部を設け、第1の凝集剤添加部からカチオン系の凝集剤を添加し、第2の凝集剤添加部からアニオン系の凝集剤を添加することを特徴とする請求項3記載の汚泥処理システム。
【請求項5】
上部の投入口から下部の排出口にかけて螺旋状に配置したホースと、1または2種以上の凝集剤を添加するための1または2以上の凝集剤添加部を有し、上部の投入口から投入された汚泥に前記凝集剤添加部から凝集剤を添加しながら、螺旋状のホース内を流下させることで、汚泥と凝集剤が混合されるようにしたことを特徴とする汚泥処理用凝集剤添加装置。
【請求項6】
前記ホースの内部に凹凸を設けてあることを特徴とする請求項5記載の汚泥処理用凝集剤添加装置。
【請求項7】
前記ホースは蛇腹状の凹凸を有する合成樹脂製の透明または半透明のホースであることを特徴とする請求項6記載の汚泥処理用凝集剤添加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−167583(P2006−167583A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363127(P2004−363127)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【出願人】(591197699)日本高圧コンクリート株式会社 (20)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【Fターム(参考)】