説明

汚泥処理方法及び循環流動層炉を備えた汚泥処理システム

【課題】流動媒体が排ガスに同伴して排出されてしまう場合でも、新たな流動媒体を補充することなく炉内の差圧を適正に維持することができる汚泥処理方法及び循環流動層炉を備えた汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】汚泥3を乾燥機2で乾燥処理した後、乾燥汚泥4を循環流動層炉10に投入して流動媒体と混合しながら燃焼させる汚泥処理方法において、乾燥機2にて、含水率60〜30%の乾燥汚泥4が得られるように乾燥処理を行い、循環流動層炉10に投入された該乾燥汚泥4の少なくとも一部が、塊状の汚泥粒子となり流動媒体とともに炉内を循環するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の汚泥を乾燥機で乾燥処理した後、乾燥汚泥を循環流動層炉にて流動媒体と混合しながら燃焼させる汚泥処理方法及び循環流動層炉を備えた汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場、し尿処理場、廃水処理設備等から排出される汚泥の処理に、循環流動層炉が多く用いられている。循環流動層炉は、ライザ底部から導入する一次空気により汚泥と流動媒体とを混合しながら燃焼して飛散させ、該飛散した流動媒体を二次空気の導入によりフリーボードへ同伴して排ガス中の未燃分を完全燃焼させ、燃焼排ガスからサイクロンにより流動媒体を分離し、ライザに返送して流動媒体を循環利用するものである。このような循環流動層炉は、汚泥を瞬時に乾燥、焼却できるものであり、これにより流動媒体を高温に維持して連続燃焼を可能としている。また、流動媒体が保有する熱容量が非常に大きいため、停止時の放熱が少なく間欠運転にも適しており、さらに流動媒体の熱伝導率が大きいため、下水汚泥のような含水率の高い被処理物にも好適に用いられる。
【0003】
このような循環流動層炉を備えた処理システムでは、含水率が高い汚泥を処理する場合、汚泥を脱水、乾燥処理した後、循環流動層炉に投入して焼却処理していた。例えば特許文献1(特開平11−63458号公報)には、脱水汚泥を乾燥機にて乾燥処理した後、循環流動層炉に投入して焼却処理する方法が開示されている。
また、特許文献2(特許第3790431号公報)には、循環流動層炉の上流側に乾燥機が設けられ、循環流動層炉より排出される排ガス中の灰分を捕集して、該乾燥機に戻すようにした装置が開示されている。この装置は、循環流動層炉の燃焼排ガスの廃熱により蒸気を生成し、この蒸気を乾燥機に導入して乾燥処理を行うようにしており、一般的に80〜90%の含水率を有する脱水汚泥を、70〜75%程度の含水率まで低減するように乾燥処理していた。
【0004】
【特許文献1】特開平11−63458号公報
【特許文献2】特許第3790431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の循環流動層炉では、流動媒体が流動に伴う破砕等により小さくなり、サイクロンから排ガス側に移行していた。その結果、炉内を循環する流動媒体が減少し、炉内の差圧を適正範囲に維持することができなくなる。そこでこれを補充するために新しい流動媒体を供給する必要が生じ、ランニングコストが増大してしまう。一方、排ガス処理で捕集された飛灰から流動媒体を分離回収して炉内に戻す方法も提案されているが、流動媒体と飛灰を分離することは困難であり、また手間がかかった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、流動媒体が排ガスに同伴して排出されてしまう場合でも、新たな流動媒体を補充することなく炉内の差圧を適正に維持することができる汚泥処理方法及び循環流動層炉を備えた汚泥処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
汚泥を乾燥機で乾燥処理した後、乾燥汚泥を循環流動層炉に投入して流動媒体と混合しながら燃焼させる汚泥処理方法において、
前記乾燥機にて、含水率60〜30%の乾燥汚泥が得られるように前記汚泥を乾燥処理することにより、前記循環流動層炉に投入された該乾燥汚泥の少なくとも一部が、塊状の汚泥粒子の状態で流動媒体とともに炉内を循環するようにしたことを特徴とする。
【0007】
汚泥は乾燥すると水分が抜けて固定炭素分と灰分が中心に向けて集まる。含水率が60%〜30%の乾燥汚泥は、集まった固定炭素と灰分により強度が増すため、循環流動層炉内に投入しても小粒径化し難くなり、流動媒体として作用することとなる。
これに対して、含水率60%以上の汚泥は、循環流動層炉に投入すると灰が集合しないまま燃焼を開始するため、灰が崩れて小粒径化して流動媒体とはならず、サイクロンから排ガス側へ移行してしまう。一方、含水率30%以下の汚泥は、循環流動層炉に投入すると直ぐに燃焼してしまい灰化するため流動媒体とはならない。
そこで、本発明のように汚泥を含水率60〜30%まで乾燥処理した後、循環流動層炉に投入することにより、固定炭素分と灰分が塊状となった汚泥が流動媒体として作用するため、排ガスに同伴されて流動媒体が排出されても、新たに流動媒体を供給することなく炉内差圧を一定の適正範囲に維持することが可能である。
【0008】
また、前記汚泥の一部を前記乾燥機で乾燥処理した後、乾燥汚泥を前記循環流動層炉に投入し、残りの汚泥を乾燥処理せずに前記循環流動層炉に直接投入し、これらの汚泥を前記循環流動層炉にて同時に燃焼処理することを特徴とする。
循環流動層炉における乾燥機は、排ガスの廃熱を利用して乾燥処理を行うことが多く、乾燥に使用できる熱量は限られている。従来の乾燥機を備えた循環流動層炉では、汚泥を全量乾燥すると、その含水率は70%前後までしか低減できず、造粒効果が期待できる含水率には至らなかった。そこで本発明のように、汚泥を全量乾燥させずに、一部の汚泥のみを乾燥することで含水率を上記範囲60〜30%まで低減することができ、これにより流動媒体となる灰を製造することが可能となった。
【0009】
さらに、前記循環流動層炉の炉内差圧を検出し、該炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記循環流動層炉から流動媒体を抜き出すことを特徴とする。
これは、含水率60〜30%まで乾燥させた乾燥汚泥の投入により炉内の流動媒体が増加することが考えられるため、これを炉内差圧で監視し、流動媒体が増加し過ぎた場合には炉下部から流動媒体を抜き出すことで炉内差圧を適正範囲まで下げることができ、安定運転が可能となる。
【0010】
さらにまた、前記循環流動層炉の炉内差圧を検出し、該炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記循環流動層炉のライザ下部から流動媒体を抜き出し、
該抜き出した流動媒体を粒径分離し、大径側粒子を前記循環流動層炉に返送することを特徴とする。
ライザ下部より抜き出した流動媒体には、粒子径が大きいものや燃焼が完了していないものも含まれる。そこで、流動媒体を粒径分離し、未燃分を多く含む大径側粒子を循環流動層炉に戻すことにより、未燃分発生量を低下することが可能となる。
【0011】
また、循環流動層炉を備えた汚泥処理システムにおいて、
汚泥を含水率60〜30%となるように乾燥処理する乾燥機と、
前記乾燥機からの乾燥汚泥が投入され、該乾燥汚泥を流動媒体と混合しながら燃焼させるとともに、該乾燥汚泥の少なくとも一部が塊状の汚泥粒子の状態で流動媒体とともに炉内を循環する循環流動層炉と、を備えたことを特徴とする。
さらに、前記乾燥機は、前記循環流動層炉からの燃焼排ガスの廃熱を熱源としており、
前記汚泥の一部を前記乾燥機に投入し、該乾燥機からの乾燥汚泥を前記循環流動層炉に投入する経路と、他の汚泥を前記循環流動層炉に直接投入する経路とを設けたことを特徴とする。
【0012】
また前記循環流動層炉のライザ下部から流動媒体を抜き出す流動媒体抜き出し手段と、前記循環流動層炉のライザ炉頂部と炉底部の差圧を検出する炉内差圧検出手段と備え、
前記炉内差圧検出手段にて検出された炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記流動媒体抜き出し手段によりライザ下部から流動媒体を抜き出すことを特徴とする。
さらに、前記動媒体抜き出し手段によりライザ下部から抜き出した流動媒体を粒径分離する分離器を備え、該分離器により分離された大径側粒子を、前記循環流動層炉に返送する返送経路を設けたことを特徴とする。
さらにまた、前記循環流動層炉のシールポット下部から流動媒体を抜き出す流動媒体抜き出し手段と、前記循環流動層炉のライザ炉頂部と炉底部の差圧を検出する炉内差圧検出手段と備え、
前記炉内差圧検出手段にて検出された炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記流動媒体抜き出し手段によりシールポット下部から流動媒体を抜き出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上記載のごとく本発明によれば、汚泥を含水率60〜30%まで乾燥処理した後、循環流動層炉に投入することにより、固定炭素分と灰分が塊状となった乾燥汚泥が炉内で流動媒体として作用するため、排ガスに同伴されて流動媒体が排出されても、新たに流動媒体を供給することなく炉内差圧を一定の適正範囲に維持することが可能である。
また、汚泥を全量乾燥処理せずに一部のみを乾燥することで、限られた熱源の中で含水率を上記範囲60〜30%まで低減することができ、これにより流動媒体となる灰を製造することが可能となる。
さらに、炉内差圧を監視し、流動媒体が増加し過ぎた場合にはライザ下部から流動媒体を抜き出すことで炉内差圧を適正範囲まで下げることができ、安定運転が可能となる。
さらにまた、ライザ下部より抜き出した流動媒体を粒径分離し、未燃分を多く含む大径側粒子を循環流動層炉に戻すことにより、未燃分発生量を低下することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例1に係る処理システムを示す全体構成図である。本実施例1は、脱水汚泥を定量ずつ給送する圧送ポンプ1と、該圧送ポンプ1により給送された脱水汚泥3を乾燥処理する乾燥機2と、該乾燥機2からの乾燥汚泥4が投入され、これを焼却処理する循環流動層炉10と、該循環流動層炉10から排出される燃焼排ガスを処理する排ガス処理設備とを備える。前記脱水汚泥は、下水処理場、し尿処理場、廃水処理設備等から排出された汚泥を脱水したものであり、その含水率は80〜90%程度である。
【0016】
前記循環流動層炉10は、炉底に充填されたけい砂等の流動媒体が流動化して得られる流動層11aとその上方に位置するフリーボード11bからなるライザ11と、該ライザ11の上部に接続され、フリーボード11bから吹き上げられた流動媒体を捕集するとともに、流動媒体を分離した排ガスを煙道21へ排出するサイクロン14と、ダウンカマー15を介してサイクロン14に接続され、炉内未燃ガスのサイクロン14への吹き抜けを防止するシールポット16と、シールポット16に貯留された流動媒体をライザ11に返送する流動媒体戻し管17と、を主要構成とする。
【0017】
ライザ11の底部には一次空気導入口13が設けられ、該一次空気導入口13から導入される一次空気により流動媒体を流動化し、流動層11aを形成している。該流動層11a上方のライザ炉壁には、二次空気導入口(図示略)が設けられ、ここから導入される二次空気によりフリーボード11bの筒速が維持されるとともに、燃焼排ガス中の未燃分が燃焼される。
前記ライザ11の流動層11a上方には、汚泥投入手段12が設けられる。該汚泥投入手段12は、汚泥投入ホッパより受け入れた脱水汚泥を、供給フィーダにより適宜量ずつ炉内に投入する構成を備える。
【0018】
また循環流動層炉10は、流動媒体を炉内に供給する流動媒体供給手段と、必要に応じて、脱硫材を炉内に投入する脱硫材投入手段とを備えている。該流動媒体供給手段及び脱硫材投入手段は、流動媒体の循環系であればどこに設置してもよいが、好適には、前記脱硫材投入手段は、ライザ11の二次空気導入口より下方側に設置させ、流動媒体供給手段はシールポット15側に位置させる。前記脱硫材投入手段にて炉内に投入する脱硫材は、例えば、石灰石(CaCO)や消石灰(Ca(OH))、ドロマイト(CaCO・MgCO)等が用いられる。
【0019】
前記排ガス処理設備は、空気予熱器22と、廃熱ボイラ23と、ガス冷却塔24と、バグフィルタ25とが直列に配設された構成を有する。
前記空気予熱器22は、押込ファン28により導入される空気とサイクロン14からの燃焼排ガスとを熱交換し、一次空気又は二次空気の予熱を行なう。予熱された一次空気は、前記一次空気導入口13より炉内に導入される。
前記廃熱ボイラ23は、燃焼排ガスにより給水31を加熱して蒸気を生成する。生成された蒸気32は乾燥機2に供給される。該乾燥機2は、汚泥のような粘凋質の物質を、蒸気を使って間接的に乾燥するのに有効で、廃熱ボイラ23で生成された蒸気32を熱媒体として乾燥する。乾燥機2で用いられた蒸気は、水33に凝縮されて給水31とともに廃熱ボイラ23に戻される。尚、前記乾燥機2は、外部熱源を利用して脱水汚泥を乾燥処理する構成としてもよい。
【0020】
前記ガス冷却塔24は、冷却水との熱交換により燃焼排ガスを冷却する。前記バグフィルタ25は、冷却された排ガス中の飛灰を捕集して除去する装置である。燃焼排ガスはバグフィルタ26の後段に設置された誘引ファン26により上記した排ガス処理設備を通過した後、煙突27より系外へ排出される。
尚、排ガス処理設備は、上記した構成に限定されるものではなく、適宜必要とされる装置を選択して構成する。別の構成例として、例えば空気予熱器と、廃熱ボイラと、セラミックフィルタとが直列に配設された構成がある。このように、本実施形態に適用される排ガス処理設備において、その装置構成は特に限定されない。
【0021】
上記構成を備えた処理システムにおいて、本実施例1では、乾燥機2にて脱水汚泥3を60〜30%の含水率となるまで乾燥処理するようにしている。
汚泥は乾燥すると水分が抜けて固定炭素分と灰分が中心に向けて集まる。含水率が60%以下になると、集まった固定炭素と灰分により強度が増すため、循環流動層炉10内に投入しても小粒径化し難くなり、流動媒体として作用することとなる。即ち、上記含水率範囲まで乾燥処理した汚泥は、循環流動層炉10内にて150μm以上の径を有したまま、炉内を循環する。
【0022】
図4に、汚泥の加熱試験結果を示す。これは、図5に示す試験装置にて、汚泥を加熱していった時の汚泥重量、温度等の変化を測定したグラフである。この試験装置にて、容器103に入れた汚泥110を電気炉101内に設置し、ヒータ102により炉内を加熱して汚泥を乾燥させ、重量測定計104により汚泥の重量変化を測定するとともに、温度検出計(図示略)により汚泥温度を検出した。その他、CO濃度等のデータも測定している。
図4において、乾燥領域では、図中写真に見られるように汚泥が黒い塊状となっており、加熱し続けると、次第にこの黒い塊状の汚泥は中心に向けて集まって小さくなっていく。尚、乾燥領域以降は汚泥の燃焼領域である。また、図中写真は、図5の矢印A方向から撮影した写真である。
【0023】
これに対して、含水率60%以上の汚泥は、循環流動層炉10に投入すると、灰が集合しないまま燃焼を開始するため、灰が崩れて小粒径化して流動媒体とならず、サイクロン14から排ガス側へ移行してしまう。汚泥の灰自体は極めて小さく、20μ程度であるため、炉内を循環することはない。一方、含水率30%以下の汚泥は、循環流動層炉10に投入すると直ぐに燃焼してしまい塊状とならず、微細な灰化してしまうため流動媒体にはならない。
【0024】
そこで、本実施例1のように脱水汚泥3を含水率60〜30%まで乾燥処理した後、循環流動層炉10に投入することにより、固定炭素分と灰分が塊状となった汚泥が流動媒体として作用するため、排ガスに同伴されて流動媒体が排出されても、新たに流動媒体を供給することなく炉内差圧を一定の適正範囲に維持することが可能である。
【実施例2】
【0025】
図2に、本実施例2に係る処理システムの全体構成図を示す。以下、実施例2及び実施例3において、上記した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
本実施例2では、脱水汚泥を循環流動層炉10に投入する際、脱水汚泥をそのまま循環流動層炉10に投入する経路(脱水汚泥5)と、脱水汚泥を乾燥機2に給送した後、乾燥機2から循環流動層炉10に投入する経路(脱水汚泥3−乾燥汚泥4)とを設けた構成としている。そして、脱水汚泥の一部3を乾燥機2に導入して乾燥処理し、乾燥汚泥4として循環流動層炉10に投入するとともに、残りの脱水汚泥5は乾燥処理せずにそのまま循環流動層炉10に投入する。このとき、乾燥機2に給送する脱水汚泥の量は、廃熱ボイラ23で回収された熱により、含水率60〜30%まで乾燥可能な量とすることが好ましい。
【0026】
循環流動層炉10における乾燥機2は、排ガスの熱を利用して乾燥処理を行うことが多く、乾燥に使用できる熱量は限られている。従来の乾燥機を備えた循環流動層炉10では、汚泥を全量乾燥すると、その含水率は70%前後までしか低減できず、造粒効果が期待できる含水率には至らなかった。
そこで本実施例2のように、汚泥を全量乾燥処理せずに、一部を乾燥することで含水率を60〜30%まで低減することができ、これにより流動媒体となる灰を製造することが可能となった。
【実施例3】
【0027】
図3に、本実施例3に係る処理システムの全体構成図を示す。本実施例3は、上記した実施例1又は実施例2の構成に組み合わせて用いられる。図3には、一例として実施例1と組み合わせた構成を示す。
本実施例3は、ライザ11の底部に流動媒体抜き出し部18を設けて、この抜き出し部18に、開閉自在なバルブ(図示略)を設けている。さらに、ライザ11の底部と頂部に圧力計35、36を夫々設けている。そして、コントローラ37により、圧力計35、36にて検出された炉内差圧を監視し、該検出された炉内差圧が、予め設定される適正範囲を超えたときに、前記バルブを開放して流動媒体抜き出し部18より流動媒体を抜き出す。
これは、含水率60〜30%まで乾燥させた乾燥汚泥により炉内の流動媒体量が増加することが考えられるため、これを炉内差圧で監視し、流動媒体が増加し過ぎた場合にはライザ下部から流動媒体を抜き出すことで炉内差圧を適正範囲まで下げることができ、安定運転が可能となる。
【0028】
また、ライザ11下部より抜き出した流動媒体(汚泥を含む)を粒径分離する流動媒体分離器19を設ける。この流動媒体分離器19は、篩分けにより分離する構成が好ましく、この場合、篩目を4〜15mmに設定するとよい。そして篩い上に残った流動媒体を循環流動層炉10内に戻すようにする。篩目を通過した流動媒体は、流動媒体ホッパ29に貯留しておく。
ライザ11下部より抜き出した流動媒体には、粒子径が大きいものや燃焼が完了していないものも含まれる。そこで、篩分けによって粒径分離することにより、未燃分を多く含む汚泥粒子が篩上に残る。これを循環流動層炉10に戻すことにより、未燃分発生量を低下することが可能となる。
【0029】
さらに、シールポット16下部に流動媒体抜き出し部37を設けてもよい。シールポット16に存在する粒子は、ライザ11にて吹き上げられた粒子であるため、粒子径は小さい。よって、シールポット16から粒子を抜き出すことで未燃分を抜き出すことがなくなる。未燃分を含む粒子径の大きいものは、ライザ11側で小さくなるまで流動する。これにより、流動媒体が増加したときに、シールポット16下部から流動媒体を抜き出すことにより未燃分の抜き出しを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、流動媒体が排ガスに同伴して排出されてしまう場合でも、新たな流動媒体を補充することなく炉内の差圧を適正に維持し、安定運転が可能であるため、下水汚泥、し尿処理汚泥、廃水処理汚泥等の各種汚泥を処理する循環流動層炉を備えたシステム全般に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る処理システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る処理システムの全体構成図である。
【図3】本発明の実施例3に係る処理システムの全体構成図である。
【図4】汚泥の加熱試験結果を示す図である。
【図5】加熱試験装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0032】
2 乾燥機
3、5 脱水汚泥
4 乾燥汚泥
10 循環流動層炉
11 ライザ
14 サイクロン
15 シールポット
18、37 流動媒体抜き出し部
19 流動媒体分離器
22 空気予熱器
23 廃熱ボイラ
24 ガス冷却塔
25 バグフィルタ
35、36 圧力計
37 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を乾燥機で乾燥処理した後、乾燥汚泥を循環流動層炉に投入して流動媒体と混合しながら燃焼させる汚泥処理方法において、
前記乾燥機にて、含水率60〜30%の乾燥汚泥が得られるように前記汚泥を乾燥処理することにより、前記循環流動層炉に投入された該乾燥汚泥の少なくとも一部が、塊状の汚泥粒子の状態で流動媒体とともに炉内を循環するようにしたことを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
前記汚泥の一部を前記乾燥機で乾燥処理した後、乾燥汚泥を前記循環流動層炉に投入し、残りの汚泥を乾燥処理せずに前記循環流動層炉に直接投入し、これらの汚泥を前記循環流動層炉にて同時に燃焼処理することを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
前記循環流動層炉の炉内差圧を検出し、該炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記循環流動層炉から流動媒体を抜き出すことを特徴とする請求項1若しくは2記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
前記循環流動層炉の炉内差圧を検出し、該炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記循環流動層炉のライザ下部から流動媒体を抜き出し、
該抜き出した流動媒体を粒径分離し、大径側粒子を前記循環流動層炉に返送することを特徴とする請求項1若しくは2記載の汚泥処理方法。
【請求項5】
汚泥を含水率60〜30%となるように乾燥処理する乾燥機と、
前記乾燥機からの乾燥汚泥が投入され、該乾燥汚泥を流動媒体と混合しながら燃焼させるとともに、該乾燥汚泥の少なくとも一部が塊状の汚泥粒子の状態で流動媒体とともに炉内を循環する循環流動層炉と、を備えたことを特徴とする循環流動層炉を備えた汚泥処理システム。
【請求項6】
前記乾燥機は、前記循環流動層炉からの燃焼排ガスの廃熱を熱源としており、
前記汚泥の一部を前記乾燥機に投入し、該乾燥機からの乾燥汚泥を前記循環流動層炉に投入する経路と、他の汚泥を前記循環流動層炉に直接投入する経路とを設けたことを特徴とする請求項5記載の循環流動層炉を備えた汚泥処理システム。
【請求項7】
前記循環流動層炉のライザ下部から流動媒体を抜き出す流動媒体抜き出し手段と、前記循環流動層炉のライザ炉頂部と炉底部の差圧を検出する炉内差圧検出手段と備え、
前記炉内差圧検出手段にて検出された炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記流動媒体抜き出し手段によりライザ下部から流動媒体を抜き出すことを特徴とする請求項5若しくは6記載の循環流動層炉を備えた汚泥処理システム。
【請求項8】
前記動媒体抜き出し手段によりライザ下部から抜き出した流動媒体を粒径分離する分離器を備え、該分離器により分離された大径側粒子を、前記循環流動層炉に返送する返送経路を設けたことを特徴とする請求項7記載の循環流動層炉を備えた汚泥処理システム。
【請求項9】
前記循環流動層炉のシールポット下部から流動媒体を抜き出す流動媒体抜き出し手段と、前記循環流動層炉のライザ炉頂部と炉底部の差圧を検出する炉内差圧検出手段と備え、
前記炉内差圧検出手段にて検出された炉内差圧が、予め設定された適正範囲を超えたときに、前記流動媒体抜き出し手段によりシールポット下部から流動媒体を抜き出すことを特徴とする請求項5若しくは6記載の循環流動層炉を備えた汚泥処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−204282(P2009−204282A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49487(P2008−49487)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】