説明

河川岸又は河川にまたがった駐車場

【課題】河川を汚染することなく安全に自動車が駐車し得る河川にまたがった駐車場の提供。
【解決手段】本発明の駐輪・駐車場は、水際の陸地から突き出て駐車パネル1が設置される駐輪・駐車場であって、支柱6,6間に前記駐車パネル1が固定されて有し、該駐車パネル1は、陸地側が開放されていると共に、他の周囲に外枠21、22、23を有し、かつ該外枠内の床版4には油吸収部材5が施設されている。また支柱は陸地部に固定されると共に、該支柱には、駐車パネルがコの字形固定部材7で固定される。また河川の両側に股いてコの字状の立体構造物を形成し、その床版55上に多段駐車場56や多目的ビルディングを建設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水際、即ち河川岸又は河川にまたがった駐車場等に関し、更に詳しくは、河川の縁に河川に突き出して設けられた駐車場又は河川にまたがった駐車場等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車や車は、個人家屋やビルなどに隣接して設けられている駐輪駐車場に置かれている。特に自転車などでは、駅前に置きっぱなしにした自転車で通行の邪魔になり迷惑することから、定期的に集められ、大量に集められた自転車は、通常保管場所に保管するが、保管コストが高く問題になっていた。また自動車の置いておく場所も広大な面積を必要とし地価の高い場所を使用するのは経済的に問題であった。このような中で、遊水池を兼ねた駐車場が開示されている。即ちこの駐車場は、遊水池、即ち貯水槽に雨天などにより流入した雨水に浮上する浮上盤を設置し、この上に自動車を駐車する。浮上盤は、発泡スチロールを成形して互いに連結した複数個のブロックからなるものである(例えば、特許文献1参照)。また都市部の過密化、地価高、用地不足、環境条件の悪化等から駐車場の増設や新設が困難であるところ、河川等の陸岸に近い河川底の地下に空間を設けて広い駐車場とすることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に近年、中小河川の護岸が開放され、許認可により利用可能になったため、この岸壁などを利用して駐輪施設や駐車場を作る計画が進行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−36638号公報(要約書)
【特許文献2】特開平5−321502号公報(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の駐輪場や駐車場は、貯水槽上に設置されるため、設置が制限され、広い施設を作るには今一つ十分ではなく、また特許文献2に記載の駐車場は、地下に作られるため建設に時間や労力そしてコストが嵩み駐車場用としては問題が多い。
【0005】
そこで、本発明者は、上記の点について種々検討したところ、河川の護岸を利用する駐輪・駐車場等は、技術面やコスト面からいっても問題はなく、大量の自転車の保管場所や駐車場には最適な場所であるが、特に、駐車場としては、河川にオイルが漏れて流れ出ることにより、河川が汚染されるという問題や安全性に問題があった。この点本発明者は、駐車パネルに油分吸収部材を施設することにより油分の吸収と良好な摩擦性により安全性の問題を解決することができ、この知見により本発明はなされた。更に河川岸に設置される駐車場等の場合は、護岸の利用としては好ましいが、更に街の中を流れる河川では、河川面積の更なる有効利用を考慮すると、河川に跨って駐車場等を建設することが経済効率がよく、このような観点から種々検討したところ、河川岸に駐車場を設置することはもちろんのこと、河川にまたがった駐車場、即ち河川上に1階又は多段の駐車場等をブリッジ方式で建設することを見出し、ここに本発明を成すに至った。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、河川を汚染することなく安全に駐車し得る河川岸又は河川にまたがった駐車場等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)水際の陸地から突き出て駐車パネルが設置される駐車場であって、支柱間に前記駐車パネルが固定されて有し、該駐車パネルは、陸地側が開放されていると共に、他の周囲に外枠を有し、かつ該外枠内の床版には油吸収部材が施設されていることを特徴とする駐車場。
(2)上記支柱は陸地部に固定されると共に、該支柱には、駐車パネルがコの字形固定部材で固定されていることを特徴とする前記第1項に記載の駐車場。
(3)上記駐車パネルが折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の駐車場。
(4)河川にまたがった駐車場であって、両岸に河川幅と同じか又はそれより広い河川幅を有する橋脚又は壁を有し、該橋脚又は壁に跨ってけたを有しても良い床版部を有するコの字形状の立体構造物からなり、該床版部を駐車場とするか又は該床版部上に多段駐車場を有していることを特徴とする河川にまたがった駐車場。
(5)河川にまたがった駐車場が多段式駐車場構造物であることを特徴とする前記第4項に記載の河川にまたがった駐車場。
(6)多段式駐車場構造物の一部が多目的建築物であることを特徴とする前記第5項に記載の河川にまたがった駐車場。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記第1項に記載の駐車場は、水際の陸地から突き出て駐車パネルが設置される駐車場であって、支柱間に前記駐車パネルが固定されて有し、該駐車パネルは、陸地側が開放されていると共に、他の周囲に外枠を有し、かつ該外枠内の床版には油吸収部材が施設されていることを特徴とするもので、これにより大量の自転車の保管や河川を汚染することなく安全に駐車し得るという格別優れた効果を奏するのである。
【0009】
本発明の前記第2項に記載の駐車場は、前記第1項に記載の駐車場において、上記支柱は陸地部に固定されると共に、該支柱には、駐車パネルがコの字形固定部材で固定されていることにより、駐車パネルを支柱に確実に固定することができ、したがって、駐車パネルの脱落がなく、安全に使用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
本発明の第3項に記載の駐車場は、前記第1項又は第2項に記載の発明において、上記駐車パネルが折り畳み可能に構成されていることにより、長期使用外には折り畳んで置き不慮の事故防止に役立てるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
本発明の第4項に記載の駐車場は、河川にまたがった駐車場であって、両岸に河川幅と同じか又はそれより広い河川幅を有する橋脚又は壁を有し、該橋脚又は壁に跨ってけたを有しても良い床版部を有するコの字形状の立体構造物からなることにより、該床版部を駐車場とするか又は該床版部上に多段駐車場とすることができ、床版上の面積をいっそう有効に利用しうると共に、立体構造物として、多目的利用と共に、駐車場を兼ねた多目的建築物(又はビルディング)の如く有効に利用することができる。更に堤防は道路や車道となっている場合が多く、この点からいっても河川に跨った駐車場やビルディングは利用し易いという優れた効果を奏するものである。
【0012】
(5)河川にまたがった駐車場が多段式駐車場構造物であることにより、より多くの自動車を収納することができる。
(6)多段式駐車場構造物の一部が多目的建築物であることにより、駐車場として使用するばかりでなく建築物に店舗、事務所、ホテルなど建設環境に合わせて街創りに似合うビルディング形態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の駐車場の単位を示す分解斜視図である。
【図2】図1の駐車場を河川護岸に設置したところを示す側面図である。
【図3】本発明に係る別の実施の形態である駐車場を示す側面図である。
【図4】図3の折り畳み可能な駐車パネルを示す部分平面図である。
【図5】本発明に係る別の実施の形態であるブリッジ式駐車場を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を用いて具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の駐車場の単位を示す分解斜視図である。図2は、図1の駐車場を河川護岸に設置したところを示す側面図である。図1及び図2において、駐車場は、陸地部分に埋め込まれた支柱6、6の間に駐車パネル1を施設する。支柱としては、鉄製やアルミ製が好ましく、またその形状は、丸棒状、角柱状のいずれでもよい。この駐車パネル1は、護岸30から、例えば該パネルの多くとも3分の2が突き出るように設けられる。駐車パネル1は2本の支柱6、6に例えば、ボルトで固定する。この際、コの字形金具7を介して駐車パネル1の両サイドの外枠21、22を挟み固定してもよい。この駐車パネル1の長さ方向(護岸に沿った方向)の長さは、複数台の車を収納できる長さでよく、特に限定されるものではないが、10m前後が好ましい。この駐車パネル1の底板4は、鉄製が好ましいが、他の材質、例えば、木材、コンクリート等で形成してもよい。
【0016】
またこの駐車パネル1は、陸地側が外枠からフリーとなっており、両側及び河川側にはその周囲に外枠21、22、23を有し、これらに囲まれた内面底4には油吸収部材5が施設されている。この油吸収部材5としては、油を吸収し、かつ車の重量に耐える材質であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、発泡性のプラスチックス、ハイブリット複合材などがよく、発泡性のプラスチックスとしては、塩化ビール樹脂、酢酸繊維素、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。ハイブリット複合材としては、発泡プラスチックと繊維とのラミネートなどがよい。このような駐車パネル1には、車止3を有するばかりか、河川側の外枠23の高さをより高くしてもよい。このように油吸収部材5を設けることにより河川40の汚染を防止することができ、また車止3と高い外枠23を設けることにより安全な駐車場が得られる。本発明の駐輪・駐車場は、更に安全のために駐車パネル1の突き出し部分に支持部材12を設けると共に、両端をボルト24、25でワイヤー13で駐車パネル1を吊って支柱6の頭部に設けられた凹部8に通して支持し、該ワイヤー13の両端を固定部材10、11に固定して二重三重の安全性を確保している。ワイヤー13は、細線の練線が好ましい。支持部材12は、鉄製又はアルミ製が好ましく、またその形状は、丸棒状、角柱状、板状などのいずれでもよい。
【0017】
図3は、本発明の別の実施の形態である駐車場を示す側面図である。図4は、図3の折り畳み可能な駐車パネルを示す部分平面図である。図3及び図4において、駐車場は、外枠21、22,23で周囲が囲まれ、かつ油吸収材5及び車止3を有するものであることは、図1及び図2に示される駐車パネルと同じであるが、図3及び図4では、駐車パネル20が折り畳み可能に形成されている点でその形態が異なっている。駐車パネル20は、奥行3分の2のところで折り畳部16を有する。この折り畳部16の構造は、パネル41とパネル42が向かい合い、その端部に有する係合突起41a、41b、41cと係合突起42a、42b、421cとが互いに係合し、これらの係合突起の中心部を貫通して軸芯43が設けられ、かつ両軸芯の端部は、ナット44、44で固定されている。この折り畳み可能な駐車パネル20は、2本の支柱6、6の間に設置され、かつ支柱6、6に固定されると共に、ワイヤー13の河川側の端部を固定し、支柱の頭部に設けられている凹部8を通してモーター14の芯に固定して巻き取るように構成されている。更に折り畳み可能な駐車パネル20の河川側に突き出た部分のパネルを支持部材15で支持し、パネル側のみをボルト24で固定する。他方、護岸30の岸壁には、受け部材26がボルト25で固定することにより設置されており、この上面で前記支持部材15の他端が置かれて支持されている。このように構成されているので、駐車場を長期間使用しないときには、モーター14を稼動してワイヤー13を点線矢印方向に巻き上げると、駐車パネルは、折り畳み部16から折り曲がり点線で示された4aの位置にまで折り畳むことができる。この際、支持部材15は、受け部材26の上面が水平に形成されているので、抵抗なく外れる。支持部材12は、鉄製、アルミ製のいずれでもよく、またその形状は、丸棒状、角柱状、板状などのいずれでもよい。
【0018】
図5は、本発明に係る別の実施の形態であるブリッジ式駐車場を示す断面図である。図5において、幅5から10mの河川40の堤又は護岸51、52に、川幅より広いわずかに広い位置に橋脚又は壁53,54を設け、この上に床版を設ける。このように形成されたブリッジの断面はコの字形状であり、川の水は橋脚又は壁53,54の間を何の抵抗もなく流れることができる。床版55上の広さは使用目的に応じて適宜広げることができる。床版55を有するコの字形状の立体構造物の作り方は特に限定されるものではなく、この技術分野において通常用いられる土木・建築工法で作ることができる。例えば、橋脚又は壁53,54は、コンクリート、鉄骨又は鉄骨組でもよく、またコの字形状は、橋脚又は壁53,54の上に床版55を載せてもよく、また橋脚又は壁53,54と床版55とを一体に形成してもよい。またこの床版55上には多段式駐車場構造物56を建築してもよい。この構造物自体はこの技術分野において周知であるので、どのような構造物とするかは使用目的に応じて適宜決定することができる。多段式駐車場構造物56の場合、自動車が各階へ上がるには、エレベター方式、螺旋状に形成された通路や直線上に上る通路など周知の方法で階上へ行くことができる。更に多段式駐車場構造物56の建設に当たっては、橋脚又は壁53,54と多段式駐車場構造物56とを一体的に建設するのが好ましい。
【0019】
本発明の駐車場は、河川の両岸に設置することができ、自転車の保管場所として、また自動車の置き場、即ち駐車場として好ましいが、特に使用態様には制限されない。しかし、実際には、駅などに放置された自転車の保管場所として使用するのが好ましい。自動車の場合には、住宅地や過密場所などにおいて、河川が通っている地域などには極めて有効に使用される。駐車場が多段式駐車場構造物を建設する場合、多段式駐車場構造物に代えて多目的ビルを建設してもよく、例えば、土台として川に跨った床版をこの上に建設するビル構造物と一体に建設することができ、このビル構造物には、通常の多目的ビルディングのように駐車場、店舗、事務所、ホテルなど建設環境に合わせて街創りに似合うビルディング形態にすることができる(図示していない。)。また川を股いて建設されたビルディングの場合には、ビル内で使用するトイレの洗浄水や浴槽の水を採取してもよく、更には防火用に使用してもよい。前者のトイレの洗浄水や浴槽の水は使用後は下水処理して浄化してから川に戻すこともできる。また再利用することも可能である。更に橋脚を壁にした場合には、堤防の補強にもなり好ましい。河川の両側は堤防があるが、更に堤防は道路や車道となっている場合が多く、この点からいっても河川に跨った駐車場やビルディングは利用し易いという優れた効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の駐車場は、河川の両岸に設置が可能であるので、駅や商店街等の通行量の多い場所に適用する駐輪場や駐車場、特に多段式駐車場構造物や多目的ビルディングとして極めて高い産業上の利用性がある。
【符号の説明】
【0021】
1 駐車パネル
2 外枠
3 車止
4 底板
4a 折り畳んだパネル
5 油吸収材
6 支柱
7 コの字形金具
8 凹部
10、11 固定部
11 枠状長方形部材
12、15 パネル支持部材
13 ワイヤー
14 モーター
16 折り畳み部
20 折り畳み可能なパネル
21、22、23 外枠
24、25 ボルト
30 陸地
40 河川
41、42 駐車パネル
43、44 ナット
41a、41b、41c、42a、42b、42c 係合突起
90〜95 ネジ孔
51,52 岸又は堤
53,54 橋脚又は壁
55 床版
56 多段式駐車場構造物又は駐車場を兼ねた多目的ビルディング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水際の陸地から突き出て駐車パネルが設置される駐車場であって、支柱間に前記駐車パネルが固定されて有し、該駐車パネルは、陸地側が開放されていると共に、他の周囲に外枠を有し、かつ該外枠内の床版には油吸収部材が施設されていることを特徴とする駐車場。
【請求項2】
上記支柱は陸地部に固定されると共に、該支柱には、駐車パネルがコの字形固定部材で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の駐車場。
【請求項3】
上記駐車パネルが折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駐車場。
【請求項4】
河川にまたがった駐車場であって、両岸に河川幅と同じか又はそれより広い河川幅を有する橋脚又は壁を有し、該橋脚又は壁に跨ってけたを有しても良い床版部を有するコの字形状の立体構造物からなり、該床版部を駐車場とするか又は該床版部上に多段駐車場を有していることを特徴とする河川にまたがった駐車場。
【請求項5】
河川にまたがった駐車場が多段式駐車場構造物であることを特徴とする請求項4に記載の河川にまたがった駐車場。
【請求項6】
多段式駐車場構造物の一部が多目的建築物であることを特徴とする請求項5に記載の河川にまたがった駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127341(P2011−127341A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287192(P2009−287192)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(592014001)
【Fターム(参考)】