説明

油中水型固型メーキャップ化粧料

【課題】 化粧持ちがよく高SPFが付与でき、肌へのエモリエント効果のある油中水型固形乳化化粧料でありながら、使用性の良好な高内水相比のものであり、且つ乳化安定性が良好である油中水型固型メーキャップ化粧料を提供する。
【解決手段】 下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含み、さらに下記(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
成分:(A)モノオレイン酸グリセリン
(B)アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤
(C)水性成分
(D)固形油分を含む油性成分
(E)粉末
条件:(1)成分(C)の水性成分の質量を成分(C)の水性成分と成分(D)の油性成分の質量の和で除することで得られる内水相比が50%以上である。
(2)モノオレイン酸グリセリン純度が90質量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型固型メーキャップ化粧料に関し、特に油中水型乳化物における高内水相比の実現、およびそれに伴う使用性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より固型状メーキャップ化粧料のタイプとして、一般に用いられているものとして、ワックスで油を固化させた固化油性タイプ、特定の油性固化剤と疎水化処理粉末と水と親油性界面活性剤とからなる固型状油中水型乳化タイプ、特定のワックスエステルと両性界面活性剤、高級脂肪酸を組み合わせて得られる水中油型固型化粧料などがあり、使用目的、使用方法に応じて使いわけられている。これらのうち、油性タイプ、油中水型乳化タイプは「みずみずしさ」「さっぱりさ」の点で劣っているものの、高SPFの付与や化粧持ちなどに優れている。一方、水中油型乳化タイプはみずみずしい使用感を有しているものの、SPF値の限界、化粧持ちの限界などの欠点があった。
従って、「みずみずしさ」「なめらかさ」などの使用感を備えつつ、高SPF付与、化粧持ちのよさなどを併せ持つ固型乳化メーキャップ組成物は得られていないのが実情であった。
【0003】
一般に油相を外相、水相を内相とした油中水型の乳化物は、油溶性の有効成分、例えばエモリエント油、油溶性の薬剤、紫外線吸収剤などを効率的に皮膚上に展開できることから、皮膚外用剤として適した剤型であり、この点において水中油型よりも優れている。また、疎水化粉末の配合により、化粧持ちの高い剤型が得られることも特徴のひとつである。
【0004】
また、内水相成分の量を乳化物全量で除して得られる内水相比は、乳化物の性質、特に乳化物を含む化粧料においては使用感に大きな影響を与える。具体的には、内水相比を高めるとさっぱりとした良好な使用感を与えることができ、内水相比が低いとしっとりとした油っぽい感触となる。よって油中水型の乳化組成物において、内水相比を高めたものが理想的な基剤であると考えられている。
【0005】
しかしながら、通常の油中水型固型メーキャップ組成物では、内水相比を高めていった場合、50%付近で安定性を保持することが困難になってくる。これは、内水相の乳化粒子を構成する水分子がマイグレーションして他の乳化粒子に吸収されること(オストワルドライプニング)による乳化粒子の増大や、内水相比が高いために乳化粒子同士の衝突頻度が著しく増大することに起因する乳化粒子の合一などが起こるためである。加えて、乳化系は熱力学的に非平衡であるため、これを工業的に活用できるように安定化させるためには、乳化剤の量、内水相比、水性成分の種類及びその量、油分の種類及びその量、他の安定剤の種類及びその量などの使用に制限があった。
すなわち、化粧もちのよさや肌へのエモリエント効果のある油中水型固形乳化化粧料に、みずみずしさ、さっぱりさを付与させるために高内水相比のものとしても、その安定性を良好に保つことは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平1−143812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の方法は、内水相比を高くするために使用する界面活性剤に工夫を加えた結果、べたつき感を伴い使用性で問題があったり、高内水相比を保持しながら安定性を保つためには配合する油分の種類に制限があったり、化粧料としたときの品質において必ずしも満足のいくものではなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑み行われたものであり、化粧持ちがよく高SPFが付与でき、肌へのエモリエント効果のある油中水型固形乳化化粧料でありながら、使用性の良好な高内水相比のものであり、且つ乳化安定性が良好である油中水型固型メーキャップ化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、不純物の少ない(A)モノオレイン酸グリセリンと、(B)アルキル基に分岐鎖を含む界面活性剤と、(D)固形油分を含む油性成分と、(E)粉末とを、特定の割合で含有する油中水型固型メーキャップ化粧料が、化粧持ちもよく、使用性の良好な高内水相比であり、且つ乳化安定性も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる油中水型固型メーキャップ化粧料は、下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含み、さらに下記(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とするものである。成分:(A)モノオレイン酸グリセリン,(B)アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤,(C)水性成分,(D)固形油分を含む油性成分,(E)粉末,条件:(1)成分(C)の水性成分の質量を成分(C)の水性成分と成分(D)の油性成分の質量の和で除することで得られる内水相比が50%以上である。(2)モノオレイン酸グリセリン純度が90質量%以上である。
【0010】
また、前記メーキャップ化粧料において、成分(B)のアルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤が、テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカン、イソステアリン酸グリセリンエステル、イソステアリルグリセリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上であることが好適である。
また、前記メーキャップ化粧料において、成分(A)と成分(B)の質量比が1:1〜5:1であることが好適である。
また、前記メーキャップ化粧料において、成分(A)と成分(B)を合わせた質量が全質量に対して0.1〜2.0質量%であることが好適である。
【0011】
また、前記メーキャップ化粧料において、成分(D)に含まれる固形油分が、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックス、キャンデリラロウ、又は米ぬかロウであることが好適である。
また、前記メーキャップ化粧料において、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックスと、キャンデリラロウとを配合比率9:1〜1:1で含有することが好適である。
【0012】
また、前記メーキャップ化粧料において、成分(E)の粉末の質量が、化粧料全量に対して10〜20質量%であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる油中水型固型メーキャップ化粧料は、不純物の少ない(A)モノオレイン酸グリセリンと、(B)アルキル基に分岐鎖を含む界面活性剤と、(D)固形油分を含む油性成分と、(E)粉末とを、特定の割合で混合することで得られる高内水相比のメーキャップ化粧料であり、乳化安定性が良好で、化粧持ちがよく、肌へのエモリエント効果に優れ、さらに高内水相比であるため、使用性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかる油中水型固型メーキャップ化粧料は、(A)モノオレイン酸グリセリン、(B)アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤、(C)水性成分、(D)固形油分を含む油性成分、(E)粉末から構成され、且つ(1)成分(C)の水性成分の質量を成分(C)の水性成分と成分(D)の油性成分の質量の和で除することで得られる内水相比が50%以上であり、(2)モノオレイン酸グリセリン純度が90質量%以上である、という条件を満たすものである。以下、各成分について詳述する。
【0015】
成分(A)のモノオレイン酸グリセリンは、種々の公知の合成法により提供され得るものである。通常の合成法によれば、モノオレイン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、トリオレイン酸グリセリンの混合物として生成される。本発明にかかる油中水型固型メーキャップ化粧料を構成する成分(A)のモノオレイン酸グリセリンは純度が高いことが望ましい。モノオレイン酸グリセリンの精製法として、通常分子蒸留法が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
成分(A)の不純物として含まれるグリセリン脂肪酸ジエステルおよびグリセリン脂肪酸トリエステルは、成分(A)全量に対しての10質量%未満である。モノオレイン酸グリセリンが界面活性剤(乳化剤)としての機能を有するのに対し、ジオレイン酸グリセリン及びトリオレイン酸グリセリンは油分としての挙動を呈する。従って、モノレイン酸グリセリンの純度が低い場合には、乳化物は成分(D)の油性成分に加え、ジオレイン酸グリセリン及びトリオレイン酸グリセリンが油性成分として配合されたような挙動をとる。すなわち、モノオレイン酸グリセリンの純度が低く、成分(D)の油性成分として配合される油分の一種として、また成分(A)の不純物として含まれるグリセリン脂肪酸ジエステルおよび/またはグリセリン脂肪酸トリエステルが、成分(A)の全量に対して10質量%を超えてしまうと、乳化物の安定性が損なわれる。なお。モノオレイン酸グリセリンの純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの一般的な方法で測定することができる。
【0017】
成分(B)の分岐鎖を有する界面活性剤は、テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカン(商品名:フィタントリオール)、イソステアリン酸グリセリンエステル、イソステアリン酸グリセリルエーテルのいずれかから選ばれることが好ましい。テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンは分岐鎖を4個有している。これらの構造がエマルション精製の際にもたらす性質として、低温での結晶化防止が挙げられる。
【0018】
成分(B)のアルキル基に分岐鎖を含む界面活性剤として、一般に化粧品として用いられているものを1種または2種以上を安定性を損なわない範囲で選ぶことができる。成分(A)と成分(B)の質量比は、好ましくは1:1〜5:1である。成分(B)のアルキル基に分岐鎖を含む界面活性剤を本発明のメーキャップ化粧料に混合することは、成分(A)のモノオレイン酸グリセリンが低温で結晶化しやすいという性質を補って改善する効果をもたらす。成分(A)と成分(B)の混合比が1:1の範囲を外れて成分(B)が多く配合されると、高温での乳化安定性が充分でなくなり、逆に5:1の範囲を外れて成分(A)が多く配合されると、低温での結晶化が問題になり安定性が充分でなくなる。さらに、成分(A)と成分(B)の総量は少ないほどさっぱりした使用感を与え、成分(A)に含まれるモノオレイン酸エステルの純分と成分(B)の合計質量が全質量に対して0.1〜2.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.0質量%である。0.1質量%未満であると、乳化剤としての機能が十分発揮されず、安定な乳化状態を得ることができない。また2.0質量%を超えると、メーキャップ化粧料がべたつき感を有するようになる場合がある。
【0019】
成分(C)の水性成分は化粧品、医薬品などに通常使用可能なものを、乳化物の安定性を損なわない範囲で配合することができる。保湿剤としては、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット、等がある。水溶性高分子としては、アラビアゴム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、デンプン、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOLなど)等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト等の無機系水溶性高分子等がある。
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラミル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン等がある。
金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等がある。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等がある。
薬剤としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2−グルコシド、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール2−Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アラントイン、アズレン等の坑炎症剤、アルブチン等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、イオウ、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、γ−オリザノール等がある。
また、上記薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0020】
成分(D)の油性成分としては、固型油分を含むものであり、化粧品、医薬品に通常使用可能なものを、乳化物の安定性を損なわない範囲で使用することができる。液状油分としては、好ましくはシリコーン油であり、さらに好ましくは環状シリコーン油である。シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどに代表される鎖状シリコーン油、およびオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどに代表される環状シリコーン油がある。
なお、極性の油分については、乳化物の安定性を損なわない範囲で少量配合することが望ましい。極性油分としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イロプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチルなどに代表されるエステル油がある。
非極性油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン等に代表される炭化水素油がある。
【0021】
また、成分(D)の油性成分中に含まれる固形油分としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油などの固体油脂、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックスなどの炭化水素類、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどのロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸などの高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコールなどが上げられる。これらの中でも、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックスの組み合わせ、あるいはキャンデリラロウ、米ぬかロウを、それぞれ好適に用いることができる。また、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックスに、さらにキャンデリラロウとを組み合わせて配合することが好ましく、より好ましくはその配合比率(質量比)が、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックス:キャンデリラロウ=9:1〜1:1である。
【0022】
本発明における油中水型固形メーキャップ化粧料の内水相比は50%以上である。内水相比が50%未満であるとさっぱりとした使用感が得られない場合がある。さらに、本発明においては、60%以上の高内水相比である油中水型固形メーキャップ化粧料の調製も可能であり、さっぱりとした使用感をもたせることができる。なお、内水相比は、(C)水性成分の質量を、(C)水性成分と(D)油性成分の合計質量で除することで計算される。
【0023】
成分(E)の粉末としては、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミクスパウダー等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の油中水型固形メーキャップ化粧料は、従来、皮膚や眉毛、まつ毛、口唇等に適用されるメーキャップ化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、ファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ等が挙げられる。
なお、本発明で用いる「固型」または「固型状」の語は、50℃以下の温度において組成物、または成分が流動性を示さず、通常の保管条件下においても著しい変形を示さない状態にあることを示す。また、「固型」とは、より具体的には、かかる硬度が、37℃において、当該技術分野で常用されている硬度計(レオメーター)を使用して測定した場合に、下記式で示される硬度(γ)が2以上であることを要する。
【数1】

式中、G:測定応力(gr)×980dyn
L:サンプルの厚み(mm)
l:圧縮距離(mm)
a:針の断面積(cm2
【実施例】
【0025】
本発明については、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0026】
油中水型固型メーキャップ化粧料(ファンデーション)の調製方法
モノオレイン酸グリセリン、アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤、油性成分およびその他の油溶性成分を混合し、約80℃に加熱して溶解する。油性成分に粉末を分散する。水性成分およびその他の水溶性成分を混合、溶解し、80℃に加熱する。油溶性成分のパーツを比較的強く攪拌しながら水溶性成分のパーツを徐添する。
【0027】
油中水型固型メーキャップ化粧料の評価方法
下記表1〜表5に示す組成物について、以下の評価基準に基づいて、乳化安定性、硬度使用感、相平衡を評価した。
1.高温での乳化安定性
40℃で一ヶ月保存後に目視にて安定性を評価した。
◎:水および/または油の分離が全く認められない。
○:水および/または油の分離が極僅かに認められる。
×:水および/または油の分離が明らかに認められる。
2.低温での乳化安定性
0℃で一ヶ月保存後に光学顕微鏡観察を行い安定性を評価した。
○:結晶の析出が全く認められない。
△:結晶の析出が極僅かに認められる。
×:結晶の析出が明らかに認められる。
【0028】
3.硬度
硬度計(RHEO METER:FUDOH工業社製)を用い、下記測定条件で硬度(γ)を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(測定条件)
負荷重:200g
針の径:5.6φ
針入速度:2cm/min
針入距離:1mm
測定温度:37℃
(評価基準)
◎:硬度が90以上
○:硬度が70以上90未満
△:硬度が50以上70未満
×:硬度が50以下
4.使用感
専門パネル10名により使用感の評価を行った。
◎:10名中9名以上がみずみずしくさっぱりしていると評価。
○:10名中7ないし8名がみずみずしくさっぱりしていると評価。
△:10名中4ないし6名がみずみずしくさっぱりしていると評価。
×:10名中3名以下がみずみずしくさっぱりしていると評価。
【0029】
【表1】

【0030】
前記表1に示す結果より明らかなように、イオン交換水が50%程度の場合(では、HLBの低い界面活性剤(ショ糖オレイン酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン)を選択して用いることにより、ある程度安定なW/O型固型乳化物を調製することができるが、使用感の点で満足のいくものは得られない(試験例1−1および1−2)。一方で、イオン交換水量を増加すると使用感の改善が期待されるものの、従来の高内水相比の乳化物の調製に用いらていれる界面活性剤の選択及びそのHLBの調整では、十分に安定なW/O型乳化物を調製することができない(試験例1−3〜1−5)。
これに対して、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとを併用した試験例1−6においては、高内水相比で優れた安定性のW/O型乳化物が調製することができ、使用感も非常に良好であった。
そこで、本発明者らは、モノオレイン酸グリセリン及びフィタントリオールの組み合わせによる高内水相比W/O型乳化物の向上機構について検討を行った。
【0031】
【表2】

【0032】
前記表2に示すように、試験例2−1〜2−7において、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの合計配合量を1質量%とし、その配合比を適宜変化させてそれぞれの乳化安定性を検討した。
この結果、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの配合比率を9:1〜2:3とした場合(試験例2−2〜2−6)、それぞれ単独の場合(試験例2−1及び2−7)と比較して乳化安定性が優れる傾向にあるが、特に1:1〜5:1の範囲(試験例2−3〜2−5)において優れた安定性が得られることが分かった。
なお、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの合計配合量を4質量%とすると(試験例2−8)、安定性に問題はないが、使用感が低下する傾向にある。また、同様に合計配合量を0.1質量%とすると(試験例2−9)、安定性が低下する傾向がある。
以上のように、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの配合比は1:1〜5:1が好ましく、また、その合計量は組成物中4質量%以下、特に0.1〜2質量%であることが好ましいことが理解される。
つづいて、本発明者らは、高内水相比W/O型乳化物の調製に使用するモノオレイン酸グリセリンの純度と乳化安定性との関係について検討した。
【0033】
【表3】

【0034】
前記表3に示すように、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの合計配合量を3質量%とし、モノオレイン酸グリセリンの純度を90質量%、75質量%、45質量%に調整して、その純度がW/O型乳化組成物の相状態と乳化安定性にもたらす影響について検討した。
この結果、モノオレイン酸グリセリンの純度が90質量%である場合(試験例3−1)、乳化安定性に優れた組成物であるが、その純度が75質量%(試験例3−2)、さらに45質量%(試験例3−3)と、モノオレイン酸グリセリンの純度が低くなるにつれ、乳化安定性もさらに低下する傾向にあった。
次に本発明者らは、高内水相比のW/O型乳化物でありながら、良好な乳化安定性を保持するために使用する界面活性剤について、さらに検討を進めた。
【0035】
【表4】

【0036】
前記表4に示すように界面活性剤の1種をモノオレイン酸グリセリン(90%)に固定し、親水性の界面活性剤を変えた組成に調整して、それぞれの乳化安定性を検討した。
この結果、通常化粧料の乳化剤として汎用されている、アルキル基に分岐構造を有する適度なアルキル鎖長の界面活性剤を使用した場合、乳化安定性に優れた組成物となることが分かった(試験例4−1〜3)。これに対して、同様のアルキル鎖長であっても、アルキル基が分岐していない界面活性剤であると、低温での結晶化が問題となり、乳化安定性が低下した(試験例4−4〜5)。
以上の結果から、モノオレイン酸グリセリンと併用する界面活性剤としては、アルキル基に分岐構造を有するものを使用することが、高内水相比であり良好な安定性を保持したW/O型乳化物の調製ために好ましいことが理解される。また、この点に関して、バイコンティニュアスキュービック液晶と水との共相状態が乳化安定性の良否と相関関係があることが示唆された。
引き続き本発明者らは、高内水相比W/O型乳化物の調製に使用する固形油分の選定について、検討を行った。
【0037】
【表5】

【0038】
前記表5に示すように、パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスを組み合わせた場合(試験例5−1)、キャンデリラロウとマイクロクリスタリンワックスとを組み合わせた場合(試験例5−2)、あるいは米ぬかロウとマイクロクリスタリンワックスとを組み合わせた場合(試験例5−3)に、高い硬度の組成物が得られることがわかった。
さらに、本発明者らは、乳化安定性に優れた高内水相比W/O型乳化物を調製するための固形油分の配合比率について検討を進めた。
【0039】
【表6】

【0040】
前記表6に示すように、パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスの混合物とキャンデリラロウとの配合比率を検討した。なお、このときのパラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスの混合比率は92:8である。
この結果、キャンデリラロウを併用した場合の方が硬度が高くなる傾向にあった(試験例6−2,6−3)。ただし、パラフィンワックス+マイクロクリスタリンワックス:キャンデリラロウの比率が1:1を超え、キャンデリラロウの配合比率の方が高くなると、安定性も悪くなり、硬度も低下した(試験例6−5)。
【0041】
さらに、本発明者らは、乳化安定性に優れた高内水相比W/O型乳化物を調製するにあたって配合する粉末の種類について検討を進めた
【0042】
【表7】

【0043】
前記表7に示すように、本発明の油中水型固型メーキャップ化粧料において、配合可能な粉末の種類は非常に幅広く、ファンデーションのほかにも、アイライナー下地(試験例7−3)、アイシャドー(試験例7−4)など、各種分野への応用も可能であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含み、さらに下記(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
成分:(A)モノオレイン酸グリセリン
(B)アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤
(C)水性成分
(D)固形油分を含む油性成分
(E)粉末
条件:(1)成分(C)の水性成分の質量を成分(C)の水性成分と成分(D)の油性成分の質量の和で除することで得られる内水相比が50%以上である。
(2)モノオレイン酸グリセリン純度が90質量%以上である。
【請求項2】
請求項1に記載のメーキャップ化粧料において、成分(B)のアルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤が、テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカン、イソステアリン酸グリセリンエステル、イソステアリルグリセリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメーキャップ化粧料において、成分(A)と成分(B)の質量比が1:1〜5:1であることを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のメーキャップ化粧料において、成分(A)と成分(B)を合わせた質量が全質量に対して0.1〜2.0質量%であることを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のメーキャップ化粧料において、成分(D)に含まれる固形油分が、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックス、キャンデリラロウ、又は米ぬかロウであることを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
【請求項6】
請求項5に記載のメーキャップ化粧料において、直鎖飽和炭化水素ワックス及び分岐飽和炭化水素ワックスと、キャンデリラロウとを配合比率9:1〜1:1で含有することを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のメーキャップ化粧料において、成分(E)の粉末の質量が、化粧料全量に対して10〜20質量%であることを特徴とする油中水型固型メーキャップ化粧料。

【公開番号】特開2008−303164(P2008−303164A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150804(P2007−150804)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】