説明

油化システム

【課題】 溶解炉の熱の影響を抑制して効率的に合成樹脂を投入可能な油化システムを提供すること。
【解決手段】 合成樹脂を加熱して溶解させる溶解炉1と、合成樹脂を溶解炉内に投入する合成樹脂投入機構2と、該溶解炉で溶解された合成樹脂を加熱して気化ガスを発生させる気化炉3と、気化ガスを冷却して液状の油を生成する油化器5とを備え、合成樹脂投入機構が、合成樹脂を貯留すると共に溶解炉よりも上方に設置されたホッパー部8と、ホッパー部と溶解炉との間に設けられ内部が合成樹脂の供給路となる供給筒部9と、供給筒部内の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ前記供給路を開閉可能な複数の開閉弁10A,10B,10Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄プラスチック等の合成樹脂(プラスチック)を油化させる油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PP(ポリプロピレン)等の廃棄プラスチックを油化する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、プラスチックを加熱して溶融させる溶融部と、溶融部で溶融されたプラスチックをさらに加熱して解重合させ分解ガスを生成する分解部と、分解部で生成した分解ガスを冷却して油を生成する油化部と、を備えた油化プラントが記載されている。
【0003】
この油化プラントでは、ブラスチックの供給部として、プラスチックを貯留するホッパーと、ホッパー内のプラスチックを溶融部に供給する供給配管と、供給配管内のプラスチックを溶融部に向けて搬送するリードスクリューと、リードスクリューを回転させるモーターとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−269755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の油化技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の特許文献1に記載の油化プラントでは、合成樹脂をリードスクリューで供給配管内を移動させ供給筒出口から溶解炉(溶融部)へ落下させて供給しているが、高熱の溶解炉からの熱が供給筒出口を介して供給配管内に伝熱し、供給配管内の合成樹脂が溶融してしまう問題があった。このため、溶融した合成樹脂が供給配管の内壁やリードスクリューに付着し、スムーズに合成樹脂の搬送ができないばかりか、リードスクリューの回転を阻害し、連続供給ができなくなって供給部自体が故障してしまう問題があった。このため、リードスクリューによる連続供給ではなく、ホッパーを溶解炉に直接、接続することで、ホッパー内のプラスチックを直接、溶解炉へ一度に投入するバッチ式で供給する方法もあるが、この場合、ホッパーが冷えるまで次の合成樹脂を投入することができず、効率的な油化処理ができないという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、溶解炉の熱の影響を抑制して効率的に合成樹脂を投入可能な油化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる油化システムは、合成樹脂を加熱して溶解させる溶解炉と、前記合成樹脂を前記溶解炉内に投入する合成樹脂投入機構と、該溶解炉で溶解された合成樹脂を加熱して気化ガスを発生させる気化炉と、前記気化ガスを冷却して液状の油を生成する油化器とを備え、前記合成樹脂投入機構が、前記合成樹脂を貯留すると共に前記溶解炉よりも上方に設置されたホッパー部と、前記ホッパー部と前記溶解炉との間に設けられ内部が前記合成樹脂の供給路となる供給筒部と、前記供給筒部の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ前記供給路を開閉可能な複数の開閉弁とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この油化システムでは、供給筒部内の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ供給路を開閉可能な複数の開閉弁を備えているので、複数の開閉弁によってホッパー部から溶解炉までの供給路が複数段に区画、分断されてホッパー部や上方の開閉弁への熱を遮断し、投入前の合成樹脂が溶融してしまうことを防止できる。また、上方の開閉弁と下方の開閉弁とを個別に開閉することで、開閉弁を仕切りにして区画された供給路内に合成樹脂を分け、少なくとも2段階で投入可能になるので、下方の開閉弁を開いて溶解炉へ合成樹脂を投入する際に上方の開閉弁を閉じた状態にでき、溶解炉と分断され熱を遮蔽した状態でホッパー部へ合成樹脂を追加投入することができる。したがって、合成樹脂を追加しながら小分けして繰り返し溶解炉へ投入することが可能になる。
【0009】
また、本発明の油化システムは、前記供給筒部を冷却する筒部冷却機構を備えていることを特徴とする。
すなわち、この油化システムでは、供給筒部を冷却する筒部冷却機構を備えているので、溶解炉に接続された供給筒部を筒部冷却機構で強制的に冷やすことができ、開閉弁によって供給筒部内に一時的に貯留される合成樹脂が投入前に溶解してしまうことを抑制することができる。また、ホッパー部や各開閉弁への熱の影響を抑制することもできる。
【0010】
さらに、本発明の油化システムは、前記ホッパー部と前記供給筒部との接続部に設けられた第1の開閉弁と、前記供給筒部の中間部に設けられた第2の開閉弁と、前記供給筒部と前記溶解炉との接続部に設けられた第3の開閉弁と、前記第2の開閉弁と前記第3の開閉弁とを連動させて開閉させるリンク部材とを備えていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、この油化システムでは、第1の開閉弁を開くことでホッパー部から供給筒部内への合成樹脂の導入を行うと共に第1の開閉弁を閉じることで供給筒部からホッパー部への熱を遮蔽し、次に第1の開閉弁を閉じ、リンク部材で連動する第2の開閉弁および第3の開閉弁を開くことで供給筒部内に導入された合成樹脂を溶解炉へ投入することができる。また、このとき、第2の開閉弁と第3の開閉弁とが同時に開閉するため、これら両者が閉じた状態で第1の開閉弁を開けてホッパー部の合成樹脂を導入すると、第1の開閉弁と第2の開閉弁とで区画された供給路上部内に合成樹脂が導入されると共に、第2の開閉弁と第3の開閉弁とで区画された供給路下部内に合成樹脂がない熱遮蔽室として機能する空気室が形成される。したがって、溶解炉からの熱を、第2の開閉弁および第3の開閉弁の2つの弁と断熱性の高い空気室とで遮断して、供給路上部への熱を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の油化システムは、前記筒部冷却機構が、空気を冷却して冷気を発生させる空冷用冷却装置と、前記供給筒部の外周を覆うと共に該外周との間に前記冷気の流通空間を設けた外筒部と、該外筒部に接続され前記流通空間に前記空冷用冷却装置からの前記冷気を供給する供給筒部用冷気配管とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この油化システムでは、空冷用冷却装置からの冷気が供給筒部用冷気配管を介して外筒部内の流通空間に供給されるので、冷気によって供給筒部の高い冷却効果が得られる。なお、空冷式を採用することで、水冷式熱交換器など液体を冷媒とする場合に比べてメンテナンス性が向上すると共に電気的ショート等を低減させることができる。
【0013】
また、本発明の油化システムは、前記気化炉が、溶解された合成樹脂を加熱するカンタル合金材で形成された気化炉電熱ヒータ部を備えていることを特徴とする。
すなわち、この油化システムでは、気化炉が、フェライト系抵抗合金であるカンタル合金材で形成された気化炉電熱ヒータ部を備えているので、600℃程度が限界の従来のニクロムヒータに比べて1400℃程度までの高温使用が可能であり、高い耐久性を有している。すなわち、本発明の油化システムでは、カンタル合金ヒータによって700℃程度の高温で連続運転を行ってもヒータの劣化がなく、加熱温度を安定して保持できることから、炉内温度を3P(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン)のガス化に適した450℃程度に長期にわたって維持することができる。
特に、本発明の油化システムは、溶解炉の熱の影響を抑制可能な合成樹脂投入機構を備えているので、カンタル合金材の気化炉電熱ヒータ部による従来よりも高温の加熱処理に対しても安定した連続稼働が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の油化システムによれば、供給筒部内の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ供給路を開閉可能な複数の開閉弁を備えているので、溶解炉の熱の影響を抑制して効率的に合成樹脂を投入することができる。したがって、ガス化に適した450℃程度の高温の溶解炉を採用しても、合成樹脂の安定供給によって連続稼働が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る油化システムの一実施形態を示す全体の概略構成図である。
【図2】本実施形態において、合成樹脂投入機構を示す断面図である。
【図3】本発明に係る油化システムの一実施形態において、供給筒部の他の例を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における油化システムの一実施形態を、図1および図2に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0017】
本実施形態における油化システムは、廃棄プラスチック等の合成樹脂(プラスチック)を油化させる電気式の油化装置又は油化プラントであって、材料の合成樹脂を加熱して溶解させる溶解炉1と、合成樹脂を溶解炉1内に投入する合成樹脂投入機構2と、該溶解炉1で溶解された合成樹脂を加熱して気化ガスを発生させる気化炉3と、該気化炉3で発生した気化ガスを液化可能なガスへ変質させる触媒材に接触させる触媒炉4と、変質させた気化ガスを冷却して液状の油(ナフサ)を生成する油化器5と、空気を冷却して油化器5用の冷媒として冷気を発生させる空冷用冷却装置6と、油化器5の下部に接続され発生した液状の油を回収するオイルタンク7とを備えている。
【0018】
材料となる上記合成樹脂は、例えば1〜2cmほどに粉砕されたポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等のプラスチック材料である。
上記合成樹脂投入機構2は、材料の合成樹脂を貯留すると共に溶解炉1よりも上方に設置されたホッパー部8と、ホッパー部8と溶解炉1との間に設けられ内部が合成樹脂の供給路となる供給筒部9と、供給筒部9の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ供給路を開閉可能な複数の開閉弁10A,10B,10Cと、供給筒部9を冷却する筒部冷却機構11とを備えている。
【0019】
この油化システムは、上記複数の開閉弁10A,10B,10Cとして、ホッパー部8と供給筒部9との接続部に設けられた第1の開閉弁10Aと、供給筒部9の中間部に設けられた第2の開閉弁10Bと、供給筒部9と溶解炉1との接続部に設けられた第3の開閉弁10Cと、第2の開閉弁10Bと第3の開閉弁10Cとを連動させて開閉させるリンク部材20とを備えている。
【0020】
上記筒部冷却機構11は、空気を冷却して冷気を発生させる空冷用冷却装置6と、供給筒部9の外周を覆うと共に該外周との間に冷気の流通空間を設けた外筒部12と、該外筒部12に接続され流通空間に空冷用冷却装置6からの冷気を供給する供給筒部用冷気配管13とを備えている。なお、外筒部12には、流通空間に導入された冷気を排出するための排気口12aが設けられている。
【0021】
上記第1の開閉弁10Aは、図2に示すように、供給筒部9上端部に設置されたボール弁であり、内部に回動可能に設けられてボール状弁体14と、該ボール状弁体14に基端が取り付けられ外部に突出して設けられた第1のレバー15と、を備えている。すなわち、第1の開閉弁10Aは、第1のレバー15を回動させることにより、該第1のレバー15に接続されたボール状弁体14を回動させて供給路を開閉可能になっている。
【0022】
また、上記第2の開閉弁10Bは、供給筒部9の中間部に設けられ、内部に回動可能に設けられた上部円盤状弁体16と、該上部円盤状弁体16に基端が取り付けられ外部に突出して設けられた第2のレバー17とを備えている。該第2のレバー17は、上部円盤状弁体16の中心を通って上下面に沿って固定されている。すなわち、第2の開閉弁10Bは、第2のレバー17を軸回りに回動させることにより、該第2のレバー17に接続された上部円盤状弁体16を回動させて供給路を開閉可能になっている。なお、上部円盤状弁体16は、ステンレス製であり、閉塞時に合成樹脂が下方に落ちないように供給筒部9の内径とほぼ同じ外径に設定されている。
【0023】
さらに、上記第3の開閉弁10Cは、供給筒部9の下端外周面に設けられたヒンジ部18と、供給筒部9の下端開口部にヒンジ部18を介して回動可能に設けられた下部円盤状弁体19とを備えている。下部円盤状弁体19は、ステンレス製であり、供給筒部9の内径より若干大きな外径に設定され、その上面にパッキン19aが取り付けられて供給筒部9の下端開口部の閉塞時に密封状態が得られるようになっている。なお、下部円盤状弁体19の下方近傍は、430℃程度の高温状態になることがあり、上記パッキン19aは450〜500℃の耐熱性を有したものが採用される。
【0024】
また、下部円盤状弁体19と上部円盤状弁体16とは、金属棒のリンク部材20で連結されている。
上記リンク部材20は、上端が閉塞時における上部円盤状弁体16の下面の外縁近傍に回動可能に取り付けられていると共に、下端が閉塞時における下部円盤状弁体19の上面のヒンジ部18側近傍に回動可能に取り付けられている。すなわち、上部円盤状弁体16が回動されて開くと、リンク部材20で連結された下部円盤状弁体19が連動してヒンジ部18を中心に回動して下方に開くように設定されている。
【0025】
なお、供給筒部9内に炭酸ガスや窒素ガスを供給可能にしても構わない。この場合、供給筒部9内に炭酸ガスや窒素ガスを入れた後に、第1の開閉弁10A〜第3の開閉弁10Cを開閉するようにすれば、より安全に合成樹脂の投入を行うことができる。
【0026】
上記溶解炉1は、供給筒部9の下端に上端が接続された垂直鋼管部21と、該垂直鋼管部21の下端に接続され内部の供給路が傾斜している湾曲鋼管部22と、湾曲鋼管部22内の合成樹脂を加熱して溶解する2つの溶解炉電熱ヒータ部23と、を備えている。
【0027】
上記溶解炉電熱ヒータ部23は、湾曲鋼管部22の外周に設置されたセラミックス製のヒータホルダー中に組み込んだカンタル合金材で形成された電熱ヒータである。この溶解炉電熱ヒータ部23によって湾曲鋼管部22内の合成樹脂は加熱され、最終的にペースト状とされる。例えば、溶解炉1内は、溶解炉電熱ヒータ部23により200℃〜350℃に加熱される。なお、2つに分けて取り付けられた溶解炉電熱ヒータ部23は、湾曲鋼管部22内の合成樹脂の搬送方向に応じて、すなわち合成樹脂の溶解状態に応じて段階的に温度が高く設定されている。
【0028】
上記気化炉3は、湾曲鋼管部22の下端に接続された筒状炉体24と、該筒状炉体20内のペースト状の合成樹脂を加熱して液状化すると共にさらに気化させる気化炉電熱ヒータ部25と、を備えている。
なお、気化炉3に、筒状炉体24内に回転可能にベアリング部で水平軸支され合成樹脂を攪拌しながら搬送する気化炉リードスクリューと、該気化炉リードスクリューに接続されこれを回転駆動する気化炉用モータと、を設けても構わない。
また、上記筒状炉体24は、溶解炉1でペースト状に溶解された合成樹脂が投入される炉体前段部と、該炉体前段部の後段に設けられ加熱によりペースト状から液状に加熱された合成樹脂からの気化を促進する気化促進部と、を備えた構造にしても構わない。
【0029】
上記気化炉電熱ヒータ部25は、溶解炉電熱ヒータ部23と同様に、筒状炉体24の外周に設置されたセラミックス製のヒータホルダー中に組み込んだカンタル合金材で形成された電熱ヒータである。この気化炉電熱ヒータ部25は、筒状炉体24の延在方向に複数に分割されて設置しても構わない。この気化炉電熱ヒータ部25によって筒状炉体24内の合成樹脂が液状化され気化される温度まで加熱される。
【0030】
例えば、気化炉電熱ヒータ部25のカンタル合金材によるヒータ線は、700℃〜800℃の範囲で加熱され、気化炉3内は、気化炉電熱ヒータ部25により390℃〜460℃の範囲内に加熱される。好ましくは、3P(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン)の全てにおいて十分なガス化を行うために炉内を450℃以上に保持するように加熱を行う。なお、炉内温度の上限を460℃としているのは、上述したように炉内温度が450℃以上であれば3P全てをガス化させることができるため、必要以上に加熱電力を消費させないように、10℃の余裕を持たせて上限を460℃に設定している。また、気化炉電熱ヒータ部25を複数に分割して設置した場合、炉内の合成樹脂の搬送方向に応じて、すなわち炉内の合成樹脂の液化状態に応じて段階的に温度が高くなるように設定される。
【0031】
なお、気化炉電熱ヒータ部25を起動してから合成樹脂が気化するまでの温度に到達する時間を短くすることで、効率アップを図ることができる。したがって、気化炉電熱ヒータ部25では、気化炉3内の温度検出を行い、気化温度に達するまでは高いヒータ温度に設定されるが、炉内が気化温度に到達したらヒータ温度の制御設定温度を下げて炉内温度がオーバーシュートしないように制御されている。
【0032】
また、溶解炉電熱ヒータ部23及び気化炉電熱ヒータ部25は、電気絶縁カバーがないとカンタル合金材のヒータ線と湾曲鋼管部22又は筒状炉体24とが接触して漏電するおそれがあるため、48V以下の電圧が加えられるように設定されている。なお、カンタル合金材のヒータ線は、空気中で加熱すると電気絶縁性の保護酸化被膜が形成され、寿命の向上を図ることができる。
上記カンタル合金材としては、APM線、Al線、AF線、D線又はLT線等が採用可能である。
【0033】
上記触媒炉4は、気化炉3の上部に接続されており、鋼管内に触媒材(図示略)が収納されて気化炉3から導入された気化ガス(合成樹脂の分解ガス)が触媒材間を流通可能になっている。なお、触媒材の負担を低減するために触媒炉を複数に分けて接続しても構わない。
上記触媒材としては、例えば人工ゼオライトや活性アルミ等が採用されている。
【0034】
また、触媒炉4は、触媒材を加熱する触媒炉電熱ヒータ部26を備えている。この触媒炉電熱ヒータ部26は、触媒炉4の鋼管外周に設置されたセラミックス製のヒータホルダー中に組み込んだカンタル合金材で形成された電熱ヒータである。この触媒炉電熱ヒータ部26により、高い触媒作用が得られる所定の温度まで触媒材が加熱される。
【0035】
上記油化器5は、触媒炉4に接続され、触媒炉4を介して送られた気化ガスを空冷用冷却装置6からの冷気と熱交換させて冷却する空冷式熱交換器である。
上記空冷用冷却装置6には、油化器5への冷気を送る油化器用冷気配管27と、供給筒部9に冷気を送る供給筒部用冷気配管13とが接続されている。
【0036】
上記オイルタンク7は、油化器5に接続され、油化器5で冷却され液状化された油を回収可能とされている。
また、オイルタンク7の上部には、オフガス配管28が接続され、該オフガス配管28には、逆止弁29を介して、水を貯留した水封槽30が接続されている。なお、オフガス配管28の先端は、水封槽30内の水中に配されている。また、この水封槽30の上部には、回収したオフガスを燃焼させるオフガス燃焼器31が接続されている。すなわち、オイルタンク7からのオフガスは、水封槽30で一旦水中を通した後にオフガス燃焼器31で燃焼される。
【0037】
上述したように、本実施形態の油化システムは、供給筒部9内の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ供給路を開閉可能な複数の開閉弁10A,10B,10Cを備えているので、複数の開閉弁10A,10B,10Cによってホッパー部8から溶解炉1までの供給路が複数段に区画、分断されてホッパー部8や上方の開閉弁への熱を遮断し、投入前の合成樹脂が溶融してしまうことを防止できる。
【0038】
また、上方の開閉弁10Aと下方の開閉弁10B,10Cとを個別に開閉することで、開閉弁を仕切りにして区画された供給路内に合成樹脂を分け、少なくとも2段階で投入可能になるので、下方の開閉弁10B,10Cを開いて溶解炉1へ合成樹脂を投入する際に上方の開閉弁10Aを閉じた状態にでき、溶解炉1と分断され熱を遮蔽した状態でホッパー部8へ合成樹脂を追加投入することができる。したがって、合成樹脂を追加しながら小分けして繰り返し溶解炉1へ投入することが可能になる。
【0039】
さらに、供給筒部9を冷却する筒部冷却機構11を備えているので、溶解炉1に接続された供給筒部9を筒部冷却機構11で強制的に冷やすことができ、開閉弁10A,10B,10Cによって供給筒部9内に一時的に貯留される合成樹脂が投入前に溶解してしまうことを抑制することができる。また、ホッパー部8や各開閉弁10A,10B,10Cへの熱の影響を抑制することもできる。
【0040】
特に、空冷用冷却装置6からの冷気が供給筒部用冷気配管13を介して外筒部12内の流通空間に供給されるので、冷気によって供給筒部9の高い冷却効果が得られる。なお、空冷式を採用することで、水冷式熱交換器など液体を冷媒とする場合に比べてメンテナンス性が向上すると共に電気的ショート等を低減させることができる。
【0041】
また、第1の開閉弁10Aを開くことでホッパー部8から供給筒部9内への合成樹脂の導入を行うと共に第1の開閉弁10Aを閉じることで供給筒部9からホッパー部8への熱を遮蔽し、次に第1の開閉弁10Aを閉じ、リンク部材20で連動する第2の開閉弁10Bおよび第3の開閉弁10Cを開くことで供給筒部9内に導入された合成樹脂を溶解炉1へ投入することができる。
【0042】
また、このとき、第2の開閉弁10Bと第3の開閉弁10Cとが同時に開閉するため、これら両者が閉じた状態で第1の開閉弁10Aを開けてホッパー部8の合成樹脂を導入すると、第1の開閉弁10Aと第2の開閉弁10Bとで区画された供給路上部内に合成樹脂が導入されると共に、第2の開閉弁10Bと第3の開閉弁10Cとで区画された供給路下部内に合成樹脂がない熱遮蔽室として機能する空気室が形成される。したがって、溶解炉1からの熱を、第2の開閉弁10Bおよび第3の開閉弁10Cの2つの弁と断熱性の高い空気室とで遮断して、供給路上部への熱を抑制することができる。
【0043】
さらに、気化炉3が、フェライト系抵抗合金であるカンタル合金材で形成された気化炉電熱ヒータ部25を備えているので、600℃程度が限界の従来のニクロムヒータに比べて1400℃程度までの高温使用が可能であり、高い耐久性を有している。すなわち、本油化システムでは、カンタル合金ヒータによって700℃程度の高温で連続運転を行ってもヒータの劣化がなく、加熱温度を安定して保持できることから、炉内温度を3P(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン)のガス化に適した450℃程度に長期にわたって維持することができる。
【0044】
特に、本油化システムは、溶解炉1の熱の影響を抑制可能な合成樹脂投入機構2を備えているので、カンタル合金材の気化炉電熱ヒータ部25による従来よりも高温の加熱処理に対しても安定した連続稼働が可能である。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0046】
上記実施形態では、気化炉、油化器および触媒炉を各1つ備えているが、複数の気化炉、油化器および触媒炉を備えても構わない。
例えば、第1の油化器で得た第1の油を、さらに第2の気化炉で加熱して第2の気化ガスを発生させ、この第2の気化ガスを第2の油化器で冷却して液状の第2の油を生成しても構わない。このように第2の気化炉において発生させた第2の気化ガスを第2の油化器で冷却してさらに第2の油にすれば、例えばロウ状物質が含まれるA重油相当であった最初の油をロウ状物質のほとんど無い軽油相当の第2の油に精製することができる。
【0047】
また、上記供給筒部9は、円筒形状であるが、四角筒形状や六角筒形状などの他の筒形状でも構わない。さらに、図3に示すように、四角筒形状の供給筒部49の場合、第2の開閉弁40Bおよび第3の開閉弁40Cにおいて供給筒部49の内部形状に対応して上部円盤状弁体16および下部円盤状弁体19の代わりに上部四角平板状弁体41および下部四角平板状弁体42を採用する。
【0048】
このとき、第2の開閉弁40Bでは、上部四角平板状弁体41の一辺に第2のレバー43を接続することで、一辺を回動軸として大きく上部四角平板状弁体41を回動させることができ、弁体の中心に回動軸が設定されている場合よりも広い開口部を得ることができる。これにより、例えば粒状の合成樹脂などをビニール等の袋で袋詰めしたもの等の比較的大きなものも、そのまま投入可能になる。
【符号の説明】
【0049】
1…溶解炉、2…合成樹脂投入機構、3…気化炉、5…油化器、6…空冷用冷却装置、8…ホッパー部、9,49…供給筒部、10A…第1の開閉弁、10B,40B…第2の開閉弁、10C,40C…第3の開閉弁、11…筒部冷却機構、12…外筒部、13…供給筒部用冷気配管、20…リンク部材、23…溶解炉電熱ヒータ部、25…気化炉電熱ヒータ部、26…触媒炉電熱ヒータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂を加熱して溶解させる溶解炉と、
前記合成樹脂を前記溶解炉内に投入する合成樹脂投入機構と、
該溶解炉で溶解された合成樹脂を加熱して気化ガスを発生させる気化炉と、
前記気化ガスを冷却して液状の油を生成する油化器とを備え、
前記合成樹脂投入機構が、前記合成樹脂を貯留すると共に前記溶解炉よりも上方に設置されたホッパー部と、
前記ホッパー部と前記溶解炉との間に設けられ内部が前記合成樹脂の供給路となる供給筒部と、
前記供給筒部の軸方向に互いに間隔を空けて設けられ前記供給路を開閉可能な複数の開閉弁とを備えていることを特徴とする油化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の油化システムであって、
前記供給筒部を冷却する筒部冷却機構を備えていることを特徴とする油化システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油化システムであって、
前記ホッパー部と前記供給筒部との接続部に設けられた第1の開閉弁と、
前記供給筒部の中間部に設けられた第2の開閉弁と、
前記供給筒部と前記溶解炉との接続部に設けられた第3の開閉弁と、
前記第2の開閉弁と前記第3の開閉弁とを連動させて開閉させるリンク部材とを備えていることを特徴とする油化システム。
【請求項4】
請求項2に記載の油化システムであって、
前記筒部冷却機構が、空気を冷却して冷気を発生させる空冷用冷却装置と、
前記供給筒部の外周を覆うと共に該外周との間に前記冷気の流通空間を設けた外筒部と、
該外筒部に接続され前記流通空間に前記空冷用冷却装置からの前記冷気を供給する供給筒部用冷気配管とを備えていることを特徴とする油化システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の油化システムであって、
前記気化炉が、溶解された合成樹脂を加熱するカンタル合金材で形成された気化炉電熱ヒータ部を備えていることを特徴とする油化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−246607(P2011−246607A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121220(P2010−121220)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(505216265)株式会社キムテック (6)
【Fターム(参考)】