説明

油圧クラッチ装置

【課題】油圧クラッチ装置において、キャンセラープレートを正しく組み付けできるようにする。
【解決手段】制御油圧室の油圧増大に応じて第1及び第2の摩擦板を加圧する側に移動するクラッチピストンと、クラッチピストンとの間に制御油圧室を形成するピストンガイド92と、クラッチピストンの制御油圧室と反対側に油圧キャンセラー室を形成するキャンセラープレート93とを設け、キャンセラープレート93に設けた凸部133と、ピストンガイド92に設けられ凸部133と係合する第1の切り欠き部122Aとを係合して組み付けると共に、ピストンガイド92の切り欠き部122に、キャンセラープレート93の凸部133が係合しない第2の切り欠き部122Bを設けた油圧クラッチ装置において、ピストンガイド92の第2の切り欠き部122Bに、軸方向に突出する複数の突出部125を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧キャンセラー室を形成するキャンセラープレートを備えた油圧クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧クラッチ装置において、クラッチピストンとの間に制御油圧室を形成するクラッチピストンガイドとしての第1端壁部材と、クラッチピストンの制御油圧室とは反対側に油圧キャンセラー室を形成するキャンセラープレートとしての第1隔壁部材と、油圧キャンセラー室に設けられ、クラッチピストンを制御油圧室側に付勢する戻しばねとを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−275070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のような油圧クラッチ装置では、上記キャンセラープレートと上記クラッチピストンガイドとを位置決めするために、キャンセラープレートの内周端に凸部を設け、この凸部をクラッチピストンガイドの端に設けた切り欠き部に係合する構成が考えられる。しかしながら、クラッチピストンガイドの組み付け部分は目視により確認しにくく、キャンセラープレートの凸部とクラッチピストンガイドの切り欠き部とを誤った位置関係で組み付けた場合、所定の特性が得られなくなる。特に、キャンセラープレートで戻しばねを支持する場合において、キャンセラープレートの位置ずれによって戻しばねが誤った状態で組み付けられると、油圧クラッチ装置の所定の特性が得られないおそれがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、キャンセラープレートを備えた油圧クラッチ装置において、キャンセラープレートを正しく組み付けできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、クラッチアウタ(72)と、該クラッチアウタで同軸に囲繞されるクラッチセンター(84、184)と、前記クラッチアウタ(72)に相対回転不能に係合される複数枚の第1の摩擦板(85)と、第1の摩擦板(85)に交互に重なって配置されると共に前記クラッチセンター(84、184)に相対回転不能に係合される複数枚の第2の摩擦板(86)と、相互に重なって配置される第1及び第2の摩擦板(85、86)に対向して前記クラッチセンター(84、184)または前記クラッチアウタ(72)の一方に設けられる受圧板部(84D)と、加圧板部(91D)に連設され制御油圧室(96)の油圧増大に応じて第1及び第2の摩擦板を加圧する側に移動するクラッチピストン(91)と、前記クラッチピストン(91)との間に前記制御油圧室(96)を形成するクラッチピストンガイド(92)と、前記クラッチピストン(91)の前記制御油圧室(96)と反対側に油圧キャンセラー室(97)を形成するキャンセラープレート(93)とを設け、前記キャンセラープレート(93)の内周端に設けた凸部(133)と、前記クラッチピストンガイド(92)の端に設けられ前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)と係合する切り欠き部(122)とを係合して組み付けると共に、前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)に、前記キャンセラープレート(93)の前記凸部(133)が係合しない空所(122B)を設けた油圧クラッチ装置において、前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)の前記空所(122B)に、軸方向に突出する複数の突起部(125)を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、クラッチピストンガイドの切り欠き部の空所に、軸方向に突出する複数の突起部を設けたため、キャンセラープレートの凸部がクラッチピストンガイドの切り欠き部の空所に誤って組み付けられることを突起部によって防止でき、キャンセラープレートを正しく組み付けることができる。また、切り欠き部の空所を油圧キャンセラー室の作動油が通ることができるため、油圧キャンセラー室の作動油を通過させ易い。
【0006】
また、上記構成において、前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)の前記空所(122B)に設けた複数の前記突起部(125)は、前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)の幅(W)よりも狭い間隔(L)で配置されていても良い。
この場合、空所に設けられた突起部が、キャンセラープレートの凸部の幅よりも狭い間隔で配置されており、突起部の間に凸部が入らないため、キャンセラープレートがクラッチピストンガイドに誤組みされることを防止できる。
【0007】
また、前記クラッチピストンガイド(92)と前記キャンセラープレート(93)とが対向する面間に、戻しばね(94)が張設され、前記クラッチピストンガイド(92)と前記キャンセラープレート(93)とが対向する面間に前記戻しばね(94)を保持する保持部(99、100)を設けた構成としても良い。
この場合、キャンセラープレートをクラッチピストンガイドに正しく組み付けできるため、戻しばねを保持部に正しく組み付けできる。
さらに、前記切り欠き部(122)の内周溝(123)に係合して、前記キャンセラープレート(93)の前記クラッチピストンガイド(92)に対する軸方向の移動を規制する係止具(135)を設けた構成としても良い。
この場合、キャンセラープレートの移動を規制する係止具を、クラッチピストンガイドの切り欠き部の内周溝に係合させて設け、係止具が内周溝によって外周側から支持されているため、クラッチピストンガイドが回転した際の遠心力によって係止具が外れることがない。このため、係止具の緊縛力を小さくでき、油圧クラッチ装置の組付けの作業性を向上できる。
【0008】
さらにまた、前記係止具(135)は、線状のスプリングであっても良い。
この構成によれば、係止具が線状のスプリングであるため、係止具を撓ませて容易に組み付けできると共に、軽量化を図ることができる。
また、前記キャンセラープレート(93)の内周面に形成された係合穴(124)に差し込まれる係合フック部(137)を前記係止具(135)に設けても良い。
この場合、係止具の係合フック部をキャンセラープレートの係合穴に差し込むことで、係止具の位置を規制でき、簡単な構造で係止具の回り止めを設けることができる。
【0009】
また、前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)の基底円は、前記クラッチピストンガイド(92)が前記キャンセラープレート(93)に係合する部分の外径(D2)より大きく設定されていても良い。
この場合、キャンセラープレートの凸部の基底円が、クラッチピストンガイドがキャンセラープレートに係合する部分の外径より大きいため、基底円とクラッチピストンガイドとの間に空間ができ、油圧キャンセラー室内の作動油がこの空間を通過することができる。このため、油圧キャンセラー室の作動油を通過させるための油路を特別に設ける必要がなく、構造を簡単にできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る油圧クラッチ装置では、クラッチピストンガイドの切り欠き部の空所に、軸方向に突出する複数の突起部を設けたため、キャンセラープレートの凸部がクラッチピストンガイドの切り欠き部の空所に誤って組み付けられることを突起部によって防止でき、キャンセラープレートを正しく組み付けることができる。
また、空所に設けられた突起部が、キャンセラープレートの凸部の幅よりも狭い間隔で配置されており、突起部の間に凸部が入らないため、キャンセラープレートがクラッチピストンガイドに誤組みされることを防止できる。
また、キャンセラープレートをクラッチピストンガイドに正しく組み付けできるため、戻しばねを保持部に正しく組み付けできる。
【0011】
さらに、キャンセラープレートの移動を規制する係止具を、クラッチピストンガイドの切り欠き部の内周溝に係合させて設け、係止具が内周溝によって外周側から支持されているため、クラッチピストンガイドが回転した際の遠心力によって係止具が外れることがない。このため、係止具の緊縛力を小さくでき、油圧クラッチ装置の組付けの作業性を向上できる。
また、係止具が線状のスプリングであるため、係止具を撓ませて容易に組み付けできると共に、軽量化を図ることができる。
また、係止具の係合フック部をキャンセラープレートの係合穴に差し込むことで、係止具の位置を規制でき、簡単な構造で係止具の回り止めを設けることができる。
【0012】
さらに、キャンセラープレートの凸部の基底円が、クラッチピストンガイドがキャンセラープレートに係合する部分の外径より大きいため、基底円とクラッチピストンガイドとの間に空間ができ、油圧キャンセラー室内の作動油がこの空間を通過することができる。このため、油圧キャンセラー室の作動油を通過させるための油路を特別に設ける必要がなく、構造を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るパワーユニットの一部切欠き背面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】クラッチ機構の断面図である。
【図4】第1油圧クラッチ装置の断面図である。
【図5】ピストンガイドの平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面図である。
【図7】キャンセラープレートの平面図である。
【図8】クリップの平面図である。
【図9】キャンセラープレートとピストンガイドとの係合状態を示す一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る油圧クラッチ装置について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るパワーユニットの一部切欠き背面図である。
【0015】
図1に示すように、例えば自動二輪車に搭載されるパワーユニットPは、4サイクルである多気筒の水平対向型のエンジンEと、該エンジンEの動力を変速する変速機Tとで構成されている。変速機Tは、油圧式のクラッチ機構Cを有している。
エンジンEのエンジン本体11は、自動二輪車の走行方向前方を向いた状態で左側に配置される左エンジンブロック12Lと、走行方向前方を向いた状態で右側に配置される右エンジンブロック12Rと、左及び右エンジンブロック12L,12Rの両外端にそれぞれ結合される左及び右シリンダヘッド13L,13Rと、左及び右エンジンブロック12L,12Rに結合されるリヤケース14とを備える。リヤケース14は自動二輪車の走行方向に沿うクランクケース21の後部に結合される。
【0016】
両エンジンブロック12L,12Rの各ピストン18L,18Rは、自動二輪車の前後方向にその軸線を沿わせたクランクシャフト22に、コンロッド23L,23Rを介して共通に連結されるものであり、該クランクシャフト22は、クランクケース21で回転自在に支持される。
【0017】
リヤケース14の上面には、クラッチ機構Cへの油圧の作用・解放を切り替えるクラッチアクチュエータ132が設けられている。
クランクケース21内の下部にはオイルポンプ144が収容されており、オイルポンプ144は、クランクシャフト22の回転に連動して駆動される。オイルポンプ144から吐出されるオイル(作動油)は,クラッチカバー50に設けられたオイルフィルタ139を経てクラッチアクチュエータ132側に導かれる。クラッチアクチュエータ132は、互いに独立して動作する第1電磁制御弁132A及び第2電磁制御弁132Bを有している。
【0018】
図2は図1のII−II断面図である。
図2に示すように、変速機Tは、歯車変速機構35と、歯車変速機構35及びクランクシャフト22(図1参照)間に設けられるクラッチ機構Cとを備えて構成され、クラッチ機構Cは、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37を有している。第1及び第2油圧クラッチ装置36,37は、クランクシャフト22の回転動力を後輪(図示略)に伝達する動力伝達経路の途中に介設される。
【0019】
歯車変速機構35は、選択的に確立可能な複数変速段の歯車列、例えば、第1〜第6速用歯車列G1,G2,G3,G4,G5,G6を備えてクランクケース21内に収納されている。偶数段の変速用歯車列である第2、第4及び第6速用歯車列G2,G4,G6は、第1メインシャフト38及びカウンタシャフト40間に設けられている。奇数段の変速用歯車列である第1、第3及び第5速用歯車列G1,G3,G5は、第1メインシャフト38内に同軸に設けられる第2メインシャフト39及びカウンタシャフト40間に設けられている。また、第1メインシャフト38、第2メインシャフト39、及び、カウンタシャフト40は、クランクシャフト22と平行に設けられている。
【0020】
クランクケース21は、クランクシャフト22の軸線に沿う方向、すなわち自動二輪車の前後方向に間隔をあけて相互に対向する一対の前部及び後部側壁21a,21bを含んで構成されている。
円筒状に形成された第1メインシャフト38は、その一端が第2メインシャフト39に軸支されるようにして前部側壁21aと後部側壁21bとの中間部に位置し、他端が後部側壁21bを貫通して延び、後部側壁21bにおいてボールベアリング41を介して回転自在に支持されている。
第2メインシャフト39は、第1メインシャフト38よりも小径に形成されて円筒状の第1メインシャフト38を貫通し、第1メインシャフト38に対して相対回転自在であり、第1メインシャフト38に対する軸方向相対位置が一定となるように設けられている。第1メインシャフト38と第2メインシャフト39との間には複数のニードルベアリング42が介装されている。また、第2メインシャフト39の一端部は、クランクケース21の前部側壁21aにボールベアリング43を介して回転自在に支持されている。
【0021】
カウンタシャフト40の一端部はボールベアリング44を介して前部側壁21aに回転自在に支持され、カウンタシャフト40の他端部は、後部側壁21bに設けられたボールベアリング45を介して回転自在に支持されている。また、カウンタシャフト40の他端部は、後部側壁21bを貫通して延び、後部側壁21bからの突出端部にはダンパスプリング46を介して歯車47が装着される。
【0022】
カウンタシャフト40と平行に設けられるドライブシャフト48(図1参照)は、後輪側に動力を伝達すべく、リヤケース14を回転自在に貫通して後方に延出され、歯車47を含む歯車伝動機構がカウンタシャフト40及びドライブシャフト48間に設けられる。
リヤケース14には、クラッチ機構Cを外側から覆うクラッチカバー50が設けられ、クラッチカバー50内に形成されるクラッチ室51には、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37が収容される。
【0023】
第1メインシャフト38とカウンタシャフト40との間には、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37側から順に、第6速用歯車列G6、第4速用歯車列G4、及び、第2速用歯車列G2が並ぶようにして設けられる。第6速用歯車列G6は、第1メインシャフト38に相対回転自在に支持される第6速用駆動歯車52と、カウンタシャフト40に一体に設けられて第6速用駆動歯車52に噛合する第6速用被動歯車53とから成り、第4速用歯車列G4は、第1メインシャフト38に軸方向の移動を可能としつつ相対回転不能に支持される第4速用駆動歯車54と、カウンタシャフト40に相対回転自在に支持されて第4速用駆動歯車54に噛合する第4速用被動歯車55とから成り、第2速用歯車列G2は、第1メインシャフト38に相対回転自在に支持される第2速用駆動歯車56と、カウンタシャフト40に軸方向の移動を可能としつつ相対回転不能に支持されて第2速用駆動歯車56に噛合する第2速用被動歯車57とから成る。
【0024】
第1メインシャフト38の一端からの第2メインシャフト39の突出部とカウンタシャフト40との間には、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37側から順に、第3速用歯車列G3、第5速用歯車列G5、及び、第1速用歯車列G1が並ぶようにして設けられる。第3速用歯車列G3は、第2メインシャフト39に軸方向の移動を可能としつつ相対回転不能に支持される第3速用駆動歯車58と、カウンタシャフト40に相対回転自在に支持されて第3速用駆動歯車58に噛合する第3速用被動歯車59とから成り、第5速用歯車列G5は、第2メインシャフト39に相対回転自在に支持される第5速用駆動歯車60と、カウンタシャフト40に軸方向の移動を可能としつつ相対回転不能に支持されて第5速用駆動歯車60に噛合する第5速用被動歯車61とから成り、第1速用歯車列G1は、第2メインシャフト39に相対回転不能に結合される第1速用駆動歯車62と、カウンタシャフト40に相対回転自在に支持されて第1速用駆動歯車62に噛合する第1速用被動歯車63とから成る。
【0025】
第6速用駆動歯車52と第2速用駆動歯車56との間において第1メインシャフト38には、第6速用駆動歯車52に係合する状態、第2速用駆動歯車56に係合する状態、ならびに第6速用駆動歯車52及び第2速用駆動歯車56のいずれにも係合しない状態を切り替え可能とした第1シフタ64が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第1シフタ64には、第4速用駆動歯車54が一体に設けられる。
また、第2速用駆動歯車56と第5速用駆動歯車60との間において第2メインシャフト39には、第5速用駆動歯車60との係合及び係合解除を切り替え可能とした第2シフタ65が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第2シフタ65には、第3速用駆動歯車58が一体に設けられる。
【0026】
第4速用被動歯車55と第3速用被動歯車59との間においてカウンタシャフト40には、第4速用被動歯車55との係合及び係合解除を切り替え可能とした第3シフタ66が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第3シフタ66には、第2速用被動歯車57が一体に設けられる。
第3速用被動歯車59と第1速用被動歯車63との間においてカウンタシャフト40には、第3速用被動歯車59に係合する状態、第1速用被動歯車63に係合する状態、ならびに第3速用被動歯車59及び第1速用被動歯車63のいずれにも係合しない状態を切り替え可能とした第4シフタ67が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第4シフタ67には、第5速用被動歯車61が一体に設けられる。
【0027】
そして、第4シフタ67を第1速用被動歯車63に係合することによって第1速用歯車列G1が確立し、第3シフタ66を第4速用被動歯車55に係合しない状態で第1シフタ64を第2速用駆動歯車56に係合することによって第2速用歯車列G2が確立し、第2シフタ65を第5速用駆動歯車60に係合しない状態で第4シフタ67を第3速用被動歯車59に係合することによって第3速用歯車列G3が確立する。
また、第1シフタ64を第6及び第2速用駆動歯車56に係合しない状態で第3シフタ66を第4速用被動歯車55に係合することによって第4速用歯車列G4が確立し、第4シフタ67を第1及び第3速用被動歯車59に係合しない状態で第2シフタ65を第5速用駆動歯車60に係合することによって第5速用歯車列G5が確立し、第1シフタ64を第6速用駆動歯車52に係合することによって第6速用歯車列G6が確立する。
【0028】
第1〜第4シフタ67〜67は、第1〜第4シフトフォーク68,69,70,71で回転自在に保持されており、シフトフォーク68〜71が、両メインシャフト38,39及びカウンタシャフト40の軸線方向に駆動されることにより、第1〜第4シフタ67〜67が軸方向に作動することになる。
【0029】
本実施の形態では、変速機Tの変速動作は、自動二輪車に設けられたECUにより制御され、例えば自動二輪車の走行時には、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37は、現在のシフトポジションに対応する一方の油圧クラッチ装置のみが接続状態となり、他方は切断状態とされる。これにより、第1メインシャフト38及び第2メインシャフト39の一方及び第1〜第6速用歯車列G1〜6のいずれかを介しての動力伝達が行われる。シフトチェンジを行う際には、ECUが次のシフトポジションに対応する歯車列を用いての動力伝達が可能な状態を予め作り出すと共に、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37の作動を制御する。
【0030】
具体的には、ECUは、現在のシフトポジション(変速段)が例えば奇数段(又は偶数段)であれば、次のシフトポジションは偶数段(又は奇数段)となるので、偶数段(又は奇数段)の歯車列を用いての動力伝達が可能な状態を予め作り出す。このとき、第2油圧クラッチ装置37は接続状態だが、第1油圧クラッチ装置36(又は第2油圧クラッチ装置37)は切断状態にあり、第1メインシャフト38及び偶数段(又は奇数段)の歯車列にはクランクシャフト22の回転動力が伝達されない。その後、ECUがシフトタイミングに達したと判断した際には、第2油圧クラッチ装置37(又は第1油圧クラッチ装置36)を切断状態にすると共に第1油圧クラッチ装置36(又は第2油圧クラッチ装置37)を接続状態とすることで、予め選定した次のシフトポジションに対応する歯車列を用いた動力伝達に切り替わる。これにより、変速時のタイムラグや途切れを生じさせない迅速かつスムーズな変速が可能となる。
【0031】
図3は、クラッチ機構Cの断面図である。
クラッチ室51内において、第2メインシャフト39の他端は第1メインシャフト38の他端から突出して設けられ、第2油圧クラッチ装置37は第2メインシャフト39の他端側に設けられ、第1油圧クラッチ装置36は第1メインシャフト38の他端側に設けられている。
そして、クランクシャフト22からの動力は、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37に共通に設けられたクラッチアウタ72に、一次減速装置73及びダンパスプリング74を介して入力される。一次減速装置73は、クランクシャフト22に設けられる駆動歯車(図示略)と、この駆動歯車に噛合する被動歯車76とを有し、被動歯車76は、クラッチアウタ72と一体に連結される。
【0032】
第1メインシャフト38の他端側において第1油圧クラッチ装置36の近傍には、第1メインシャフト38の外周面に支持され、第1メインシャフト38に対して相対回転自在な伝動筒軸77が設けられている。クラッチアウタ72及び被動歯車76は、伝動筒軸77に固定され、第1メインシャフト38に対して相対回転可能になっている。
【0033】
図4は、第1油圧クラッチ装置36の断面図である。
以下、第1油圧クラッチ装置36について詳細に説明する。また、第2油圧クラッチ装置37は、第1油圧クラッチ装置36と略同一構造で構成され、第1油圧クラッチ装置36に対して対称な位置関係で第2メインシャフト39に設けられており、第2油圧クラッチ装置37についての詳細な説明は省略する。
【0034】
図3及び図4に示すように、第1油圧クラッチ装置36は、クラッチ作動機構82と、クラッチ作動機構82の断・接を切り替えるクラッチ断・接制御機構83とを有している。
クラッチ作動機構82は、有底円筒状のクラッチアウタ72と、クラッチアウタ72内に収容される第1クラッチセンター84と、クラッチアウタ72に相対回転不能に係合される複数枚の駆動摩擦板85(第1の摩擦板)と、第1クラッチセンター84に相対回転不能に係合される複数枚の被動摩擦板86(第2の摩擦板)と、駆動及び被動摩擦板85,86に対向して第1クラッチセンター84に設けられる受圧板部84Dと、駆動及び被動摩擦板85,86を受圧板部84Dとの間に挟む加圧板部91Dとを備えて構成される。
【0035】
クラッチアウタ72(図3参照)は、第1クラッチセンター84を囲繞する円筒部72Aを有し、円筒部72Aは、第1及び第2メインシャフト38,39と同軸に設けられると共に被動歯車76と一体に回転する。
【0036】
第1クラッチセンター84は、第1メインシャフト38に相対回転不能に結合される円筒状のボス部84Aと、ボス部84Aの一端から半径方向外方に張り出す円板状の支持板部84Bと、支持板部84Bの外周から立設されてボス部84Aを同軸に囲繞する円筒部84Cを有している。第1クラッチセンター84の円筒部84Cは、クラッチアウタ72(図3)の円筒部72Aと同軸に形成されている。また、上記受圧板部84Dは、支持板部84Bの外周をさらに径方向に張り出させて一体に形成されている。
【0037】
駆動摩擦板85及び被動摩擦板86は、クラッチアウタ72の円筒部72Aと第1クラッチセンター84の円筒部84Cとの間に交互に重ねて複数枚配置されている。駆動摩擦板85は、円筒部72Aの内周面にスプライン結合されてクラッチアウタ72と一体に回転し、被動摩擦板86は、円筒部84Cの外周面にスプライン結合されて第1クラッチセンター84と一体に回転する。
【0038】
第1メインシャフト38の他端側には、外周にスプライン溝が形成された結合軸部38Aと、結合軸部38Aの先端に形成されたねじ軸部38bとが設けられている。第1クラッチセンター84は、第1メインシャフト38の上記スプライン溝にボス部84Aがスプライン結合された状態で、ねじ軸部38bに締め込まれるナット90によって固定され、第1メインシャフト38に対して相対回転不能である。また、第1クラッチセンター84は、伝動筒軸77側に押し付けられるようにして軸方向の位置を規制されている。
【0039】
そして、加圧板部91Dが、駆動及び被動摩擦板85,86を受圧板部84Dとの間に挟圧するように作動することで、クラッチ作動機構82は、動力伝達状態となる。すなわち、クランクシャフト22の回転は、被動歯車76を介してクラッチアウタ72に伝達され、クラッチアウタ72の回転が駆動及び被動摩擦板85,86を介して第1クラッチセンター84に伝わり、第1メインシャフト38が第1クラッチセンター84と一体に回転される。
【0040】
クラッチ断・接制御機構83は、第1クラッチセンター84と対向して配置され、第1クラッチセンター84との間に駆動及び被動摩擦板85,86を挟むように設けられるクラッチピストン91と、第1クラッチセンター84とは反対側にクラッチピストン91と対向して配置されるピストンガイド92(クラッチピストンガイド)と、クラッチピストン91と第1クラッチセンター84との間に設けられるキャンセラープレート93と、クラッチピストン91とキャンセラープレート93との間に圧縮された状態で配置される戻しばね94とを備えて構成されている。
【0041】
ピストンガイド92は、第1クラッチセンター84のボス部84Aの外周面に固定される円筒状のピストンガイド部92Aと、ピストンガイド部92Aの端から径方向に円板状に延出された端壁部92Bとを有している。ピストンガイド部92Aの外周面は平滑に形成されてガイド面92Cとして機能する。
ピストンガイド92は、ピストンガイド部92Aの内周面がボス部84Aの外周面に嵌合に嵌合して設けられ、ボス部84Aの外周面に係合する止め輪155によって軸方向の移動を規制されている。
【0042】
クラッチピストン91は、ピストンガイド92のガイド面92Cに沿うように設けられる円筒部91Aと、円筒部91Aの端から径方向に円板状に延出されたピストン部91Bと、ピストン部91Bの外周に円筒部91Aと同軸に設けられる外側円筒部91Cと、加圧板部91Dとを有している。加圧板部91Dは、外側円筒部91Cの外縁部から径方向へ円板状にさらに延出された部分である。
クラッチピストン91は、第1クラッチセンター84とピストンガイド92との間に設けられ、ピストン部91Bと端壁部92Bとで囲われた空間は、クラッチの作動油が供給される制御油圧室96となっている。
【0043】
キャンセラープレート93は円板状に形成され、ピストンガイド92のピストンガイド部92Aに外周側から係合するように設けられている。キャンセラープレート93は、第1クラッチセンター84の支持板部84Bとクラッチピストン91のピストン部91Bとの間に配置されており、ピストン部91Bに対向するプレート部93Aと、プレート部93Aの外縁部からピストンガイド部92Aと同軸にピストン部91Bの側に延びる円筒状の外壁部93Bとを有している。
また、ピストンガイド92のピストンガイド部92Aの先端には、組立て時において、キャンセラープレート93の移動を規制してピストンガイド部92Aとキャンセラープレート93との係合状態を保つクリップ135(係止具)が設けられている。
【0044】
キャンセラープレート93とピストン部91Bとで囲われた空間は、クラッチの作動油が供給される油圧キャンセラー室97となっている。外壁部93Bと外側円筒部91Cとの間、ピストンガイド部92Aと円筒部91Aとの間、及び、外側円筒部91Cと端壁部92Bの外周面との間には、オイルシール98A,98B、98Cがそれぞれ設けられており、クラッチピストン91は、オイルシール98A,98B、98Cを介して液密に支持されると共に、第1メインシャフト38の軸方向に摺動可能に設けられている。
【0045】
ピストンガイド92とキャンセラープレート93とが対向する面間、すなわち、油圧キャンセラー室97には、クラッチピストン91を制御油圧室96の側に付勢する戻しばね94が配置されている。戻しばね94は、円板状のピストン部91Bの面上において互いに略等間隔をあけて円環状に並べて複数配置されている。詳細には、戻しばね94はコイルばねであり、各戻しばね94の一端はピストン部91Bに設けられたばね座99(保持部)に支持され、他端は、キャンセラープレート93に形成されたばね支持穴100(保持部)に支持されている。ばね座99は戻しばね94の内径に嵌合する突起であり、ばね支持穴100は戻しばね94の外周に嵌合する穴である。また、ばね座99及ばね支持穴100は、各戻しばね94が配置される位置に対応して独立して設けられており、戻しばね94は、ばね座99及びばね支持穴100によって位置決めされている。
【0046】
第1油圧クラッチ装置36では、作動油が供給されて制御油圧室96の油圧が増大すると、戻しばね94の付勢力に抗してクラッチピストン91が油圧キャンセラー室97の側に移動し、これに伴い、加圧板部91Dが受圧板部84Dとの間で駆動及び被動摩擦板85,86を狭圧し、クラッチ作動機構82は接続され、動力伝達状態となる。また、制御油圧室96の油圧を低くすると、戻しばね94の付勢力によってクラッチピストン91が制御油圧室96の側に移動し、クラッチ作動機構82は切断され、動力を伝達しない状態となる。
【0047】
また、第1油圧クラッチ装置36は、第1メインシャフト38と一体に回転するため、遠心力を受けた制御油圧室96の作動油は、クラッチピストン91を油圧キャンセラー室97側に移動させるように作用する。一方、遠心力を受けた油圧キャンセラー室97の作動油は、クラッチピストン91を制御油圧室96側に移動させるように作用する。このように、第1油圧クラッチ装置36では、遠心力を受けた制御油圧室96の作動油がクラッチピストン91に作用する力を、同じく遠心力を受けた油圧キャンセラー室97の作動油の力によって相殺できるため、遠心力が第1油圧クラッチ装置36の動作に影響することを防止できる。
【0048】
図3に示すように、第2メインシャフト39には、第1油圧クラッチ装置36に対応する部分を内端とした有底の第1オイル通路101が設けられており、この第1オイル通路101に供給された潤滑油は、第1及び第2メインシャフト38,39間に導かれると共に第1油圧クラッチ装置36におけるクラッチ断・接制御機構83の油圧キャンセラー室97に作動油として導かれる。
【0049】
第1オイル通路101の潤滑油を油圧キャンセラー室97に導くために、第2メインシャフト39には第1オイル通路101の内端に通じる複数の油孔102が設けられ、第1メインシャフト38には油孔102に通じる油孔103が設けられ、第1クラッチセンター84のボス部84Aには、油孔103に通じる油路104が形成され、油路104は油圧キャンセラー室97に連通している。
【0050】
図4に示すように、キャンセラープレート93のプレート部93Aと第1クラッチセンター84の支持板部84Bとの間には、油路104に連通する油導入部105が設けられている。また、支持板部84Bの面においてキャンセラープレート93が当接する面には、外周側に向かって放射状に延びる油溝106が複数形成されている。油路104に供給された潤滑油の一部は、油導入部105を経て油溝106を流れ、第1クラッチセンター84の円筒部84Cとクラッチピストン91の外側円筒部91Cとの間を通って駆動及び被動摩擦板85,86に供給される。
【0051】
第1クラッチセンター84のボス部84Aには、ボス部84Aを径方向に貫通する油路107が複数形成され、油路107は、ボス部84Aの外周面とピストンガイド部92Aの内周面との間に形成された油路108に連通し、油路108は、ピストンガイド部92Aを径方向に貫通する油路109に連通している。油路109は複数設けられ、各油路109は、第1油圧クラッチ装置36の制御油圧室96に連通している。
【0052】
図3に示すように、第2油圧クラッチ装置37は、第2メインシャフト39の端に固定される第2クラッチセンター184を有している。第2油圧クラッチ装置37は、第2クラッチセンター184に、クラッチピストン91、ピストンガイド92、キャンセラープレート93、戻しばね94、クリップ135、及び、駆動及び被動摩擦板85,86を組み付けて設けられ、第1油圧クラッチ装置36と同様に構成されている。第2油圧クラッチ装置37は、第2メインシャフト39の外周面に形成された凸状部189と、第2メインシャフト39の先端に締め込まれるナット190によって軸方向に固定されている。第2メインシャフト39の他端は、第2クラッチセンター184の外周面とクラッチカバー50の内側面との間に設けられたボールベアリング149によって支持されている。
また、第2クラッチセンター184には、第2油圧クラッチ装置37の制御油圧室96に作動油を供給する油路150、及び、油導入部105を経て第2油圧クラッチ装置37の油圧キャンセラー室97に作動油を供給する油路151が形成されている。
【0053】
クラッチカバー50の内面側において第2メインシャフト39の他端近傍には、互いに独立した第1油室201、第2油室202、及び、第3油室203が形成されている。また、第2メインシャフト39には、他端側から第2メインシャフト39内を軸方向に延びる第2オイル通路204が形成されており、第2オイル通路204は、筒状の第1仕切り部材205と、第1仕切り部材205の外側を覆う筒状の第2仕切り部材206によって仕切られている。
第1仕切り部材205内の油路は、第2オイル通路204から径方向外側に貫通する油路211及び、第1メインシャフト38を径方向外側に貫通する油路212を介して第1クラッチセンター84の油路107に繋がっている。また、第2仕切り部材206内の油路は、第2オイル通路204から径方向外側に貫通する油路213を介して第2クラッチセンター184の油路150に繋がっている。
【0054】
第1仕切り部材205は第1油室201に連通しており、第1油圧クラッチ装置36の制御油圧室96に作動油を供給する第1制御油路207を構成している。第2仕切り部材206は第2油室202に連通しており、第2油圧クラッチ装置37の制御油圧室96に作動油を供給する第2制御油路208を構成している。第1制御油路207及び第2制御油路208は、クラッチアクチュエータ132(図1参照)に接続されており、第1電磁制御弁132A及び第2電磁制御弁132Bによって第1制御油路207及び第2制御油路208の油圧をそれぞれ制御することで、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37の断・接が切り替えられる。
また、第3油室203は第2クラッチセンター184の油路151に連通しており、第3油室203を介して第2油圧クラッチ装置37の油圧キャンセラー室97に作動油が供給される。
【0055】
第1仕切り部材205及び第2仕切り部材206は、リヤケース14に組み付けられた状態の第2メインシャフト39の第2オイル通路204に挿入されて組み付けられる。第1仕切り部材205及び第2仕切り部材206には、先端が先細り形状に丸く絞られた先細り部205A、206Aがそれぞれ設けられており、先端が第2オイル通路204の内周部に引っ掛かりにくいため、第1仕切り部材205及び第2仕切り部材206を容易に第2オイル通路204に組み付けることができる。また、第1仕切り部材205及び第2仕切り部材206の外周面には、第2オイル通路204内を第1制御油路207及び第2制御油路208に仕切るオイルシール(図示略)がそれぞれ設けられている。
【0056】
図5は、ピストンガイド92の平面図である。図6は、図5におけるVI−VI断面図である。
図4、図5及び図6に示すように、ピストンガイド92は支持板部84Bの側に延びるピストンガイド部92Aを有し、ピストンガイド部92Aの平坦な先端部120には複数の突起121が立設されている。突起121は、円筒状のピストンガイド部92Aの壁部の一部をさらに軸方向に延出させるようにして形成されている。突起121は、互いに所定の距離をあけて隣接して配置された2つの突起121を一対の突起部121Aとして、3箇所に計6個配置されている。また、突起部121Aの外周面121Bは、ガイド面92Cよりも内周側に窪んで小径に形成されている。
【0057】
先端部120上において突起121が設けられてない部分は、切り欠き部122となっており、切り欠き部122は、キャンセラープレート93を支持する第1の切り欠き部122Aと、第1の切り欠き部122Aに隣接する第2の切り欠き部122B(空所)とを有している。詳細には、3対設けられた突起部121Aは、平面視で円形に形成された先端部120を略3等分するように、互いに等間隔をあけてそれぞれ配置されている。一対で設けられた突起121の間の部分は、2つ並んだ突起121の周方向の中間部を切り欠くようにして設けられ、第1の切り欠き部122Aとなっている。また、各突起部121Aの間で突起121が存在しない空所の部分は第2の切り欠き部122Bとなっている。
【0058】
各突起121の内周面には、突起121を径方向に彫り込むようにして形成された係合溝123が設けられている。各係合溝123はピストンガイド部92Aの軸方向に垂直な面に沿って設けられている。また、6個設けられた内の1つの突起121には、突起121を径方向に貫通する係合穴124が設けられている。係合穴124は、係合溝123内に設けられている。
また、第2の切り欠き部122Bには、先端部120から軸方向に突出した突出部125(突起部)が複数形成されている。突出部125は、各突起部121Aの間に2個が配置され、互いに間隔をあけて計6箇所に形成されている。また、各突出部125の先端は、係合溝123よりも下方、すなわち先端部120と係合溝123との間に位置している。
【0059】
ピストンガイド部92Aの内周面には、シール用溝部126が形成されており、シール用溝部126には、ボス部84Aとピストンガイド部92Aとの間に設けられるオイルシール98Dが収容されている。また、ピストンガイド部92Aの内周面において端壁部92Bの近傍の部分には、内径が一段小径に形成された段部127が形成されており、段部127は、油路108の一部を形成している。端壁部92Bの外周面には、オイルシール98Cを収容するシール用溝部128が形成されている。
【0060】
図7は、キャンセラープレート93の平面図である。
図4及び図7に示すように、キャンセラープレート93は、リング状に形成されたプレート部93Aを有し、プレート部93Aの中央には、ピストンガイド部92Aが挿通される孔131が形成されている。プレート部93Aにおいて孔131の縁部近傍には、油圧キャンセラー室97の側に一段窪んだ段部130が設けられ、段部130は第1クラッチセンター84との間に油導入部105を形成する。また、ばね支持穴100は、プレート部93Aに円環状に並んで複数形成されている。外壁部93Bの外周面には、オイルシール98Aを収容するシール用溝部140が形成されている。キャンセラープレート93は、第1クラッチセンター84に組み付けられた状態では、戻しばね94によって押し付けられて支持板部84Bに支持されている。
【0061】
孔131の内周面131A(内周端)からは、キャンセラープレート93の中心に向かって突出した凸部133が複数形成されている。詳細には、凸部133は平面視において内周面131Aを3等分するように3箇所に形成され、ピストンガイド92の各第1の切り欠き部122に対応した位置に設けられている。
【0062】
図8は、クリップ135の平面図である。
クリップ135は、金属製の断面円形の線材をリング状に成形した線状のスプリングであり、クリップ135の一端135Aと他端135Bとの間には間隔が設定され、合口136が形成されている。合口136が形成された範囲は、平面視においてクリップ135を円形として見た場合、クリップ135が取り付けられていない状態において90°よりも大きな角度範囲に亘っている。
また、他端135Bでは、線材がリング状のクリップ135の径方向の外側に向けて折り曲げられており、フック状の係合フック部137が形成されている。
【0063】
図9は、キャンセラープレート93とピストンガイド92との係合状態を示す一部破断平面図である。
図4及び図9に示すように、キャンセラープレート93は、孔131がピストンガイド部92Aの各突起121に挿通されて組み付けられる。この状態では、キャンセラープレート93の3箇所の凸部133がそれぞれピストンガイド部92Aの第1の切り欠き部122に外周側から係合しており、各凸部133が、対になる各突起121の間、すなわち第1の切り欠き部122Aにそれぞれ位置することで、キャンセラープレート93はピストンガイド92に対して相対回転不能に設けられている。ただし、第1の切り欠き部122と各凸部133との間には、組み付けのためのクリアランスが設けられており、このクリアランスの分だけキャンセラープレート93は相対回転する。
【0064】
クリップ135は、各突起121の係合溝123にピストンガイド部92Aの内周面側からセットされ、係合溝123に係合されている。すなわち、クリップ135は、係合溝123に係合することで、先端部120の面との間に所定の間隔をあけた状態で、先端部120の面と略平行に円環状に設けられている。そして、キャンセラープレート93は、各凸部133が先端部120とクリップ135との間に係合することで、ピストンガイド部92Aの軸方向への移動を規制されている。
また、クリップ135は、係合フック部137が突起121の係合穴124に内周側から係合することで位置決めされており、ピストンガイド92に対して相対回転不能となっている。このため、ピストンガイド92の回転に伴って係合溝123内でクリップ135が回転することを防止できる。さらに、クリップ135は、縮径された状態で径方向外側に広がる付勢力(緊縛力)を伴って係合溝123に確実に嵌め込まれており、合口136の開口範囲は90°以下になっている。
【0065】
本実施の形態では、クリップ135をピストンガイド92の内周面に形成された係合溝123に係合させて設け、クリップ135を外周側から支持するようにしたため、自動二輪車の運転に伴ってピストンガイド92が回転した場合に、クリップ135が遠心力によって外れることがない。これにより、クリップ135の緊縛力を小さくでき、クリップ135を容易に変形させて係合溝123に取り付けできるため、油圧クラッチ装置の組付けの作業性を向上できる。
【0066】
第1の切り欠き部122Aでは、先端部120とクリップ135との間に凸部133が係合されるが、図4に示すように、凸部133の厚さは先端部120とクリップ135との間の間隔よりも薄く形成されており、作動油は第1の切り欠き部122Aを通過して油圧キャンセラー室97に出入りすることができる。また、第2の切り欠き部122Bにおいては、先端部120とクリップ135との間に凸部133が係合されず、第2の切り欠き部122Bは、作動油が通過可能な空所となっている。特に、第2の切り欠き部122Bでは、凸部133が作動油の流れに影響しないため、大量の作動油が第2の切り欠き部122Bを通過して油圧キャンセラー室97に速やかに出入り可能である。
【0067】
また、図9に示すように、凸部133が設けられた部分の基底円の径、すなわち、キャンセラープレート93における孔131の内周面131Aの径D1は、ピストンガイド部92Aがキャンセラープレート93に係合する部分の外径、すなわち、各突起部121Aの外周面121Bの径を含む先端部120の外径D2よりも大きく形成されている。このため、作動油は、孔131の内周面131Aと外周面121B及び先端部120の外周面との間の隙間Sを通過して油圧キャンセラー室97に出入りできる。
【0068】
本実施の形態では、第1の切り欠き部122A、第2の切り欠き部122B、及び、隙間Sを通過して作動油が油圧キャンセラー室97に出入りでき、キャンセラープレート93とピストンガイド92とを係合させる部分を利用して、特別な油路を設けることなく油圧キャンセラー室97に作動油を出入りさせることができる。
【0069】
エンジンEが始動されると、オイルポンプ144によって複数の油路を介して作動油が油圧キャンセラー室97に供給され、エンジンEが運転された状態では、通常、各油圧キャンセラー室97は作動油で満たされている。そして、第1油圧クラッチ装置36(又は第2油圧クラッチ装置37)を接続状態にする際には、制御油圧室96に作動油が供給され、作動油によってクラッチピストン91が油圧キャンセラー室97側に移動させられると、油圧キャンセラー室97の容積が減少し、油圧キャンセラー室97内の作動油の一部は、第1の切り欠き部122A、第2の切り欠き部122B、及び、隙間Sを通過して速やかに油圧キャンセラー室97から排出される。また、第1油圧クラッチ装置36(又は第2油圧クラッチ装置37)を切断状態にする場合にも、第1の切り欠き部122A、第2の切り欠き部122B、及び、隙間Sを介して、作動油が速やかに油圧キャンセラー室97に供給される。このように、第1の切り欠き部122A、第2の切り欠き部122B、及び、隙間Sを介して速やかに油圧キャンセラー室97に作動油を出入りさせることができ、第1油圧クラッチ装置36及び第2油圧クラッチ装置37の切断及び接続を速やかに切り替えできるため、変速操作にかかる時間を短縮できる。
【0070】
ここで、図4を参照し、第1油圧クラッチ装置36において、クラッチピストン91、ピストンガイド92、及び、キャンセラープレート93の組み付け手順について説明する。
まず、単品のクラッチピストン91を用意し、円筒部91Aの内周面にピストンガイド92のピストンガイド部92Aを嵌合させる。次いで、クラッチピストン91の各ばね座99に戻しばね94をセットした後、キャンセラープレート93を、各凸部133を各切り欠き部122Aに係合させるようにして、ピストンガイド部92Aの突起121に係合させ、キャンセラープレート93で戻しばね94を押圧し、戻しばね94がばね支持穴100とばね座99との間で圧縮された状態でクリップ135を係合溝123に係合させる。これにより、クラッチピストン91、ピストンガイド92、キャンセラープレート93、及び、戻しばね94が一体に組み付けられた小組体250が形成される。この際、クリップ135の緊縛力が小さく設定されているため、クリップ135を容易に変形させて係合溝123に係合させることができる。すなわち、クリップ135は係合溝123によって外周側から支持され、遠心力に対抗するために緊縛力を大きくする必要がないため、クリップ135の緊縛力は、例えば、工具を用いずとも組み付け作業者の手指で容易に縮径可能な程度の小さな緊縛力に設定される。
また、ばね支持穴100及びばね座99は、各凸部133が各第1の切り欠き部122Aに係合した状態では、各ばね支持穴100と各ばね座99との軸線が略一致するように配置されている。このため、凸部133を切り欠き部122Aに正しく組み付けることで、戻しばね94も正しい位置に自動的に組み付けできるため、誤組みを防止でき、組み付け性が良い。
【0071】
また、クリップ135は、先端部120に形成された各突出部125(図9参照)によって先端部120の側への移動を規制される。このため、組付け作業時にクリップ135が先端部120の側へ入り込み過ぎることを防止でき、組付けの作業性が良い。
また、突出部125は第2の切り欠き部122B上の3箇所に各一対で設けられており、隣接する2つの突出部125の間の間隔L(図5参照)は、キャンセラープレート93の各凸部133の幅W(図7参照)よりも狭く形成されている。また、突出部125に隣接するピストンガイド92の突起121と突出部125との間の間隔K(図5参照)も、凸部133の幅Wよりも狭く形成されている。これにより、キャンセラープレート93の凸部133が誤って間隔L及び間隔Kの間に組み付けされようとした場合には、凸部133が突出部125に当接し、切り欠き部122Bから浮いた状態となり、この状態ではクリップ135を係合溝123に組み付けることはできない。このように、第2の切り欠き部122Bに突出部125を設けたため、キャンセラープレート93及びクリップ135がピストンガイド92に誤った状態で組み付けられることを防止できる。
【0072】
小組体250の状態では、キャンセラープレート93の3箇所の各凸部133は各第1の切り欠き部122Aに係合されており、凸部133は、戻しばね94の反発力によってクリップ135に押し付けられている。すなわち、クリップ135によってキャンセラープレート93が軸方向へ移動することを規制しているため、小組体250の状態において、キャンセラープレート93で戻しばね94を圧縮させた状態を維持しておくことができる。
その後、ピストンガイド92のピストンガイド部92Aを第1クラッチセンター84のボス部84Aの外周面に嵌合させ、止め輪155をボス部84Aに取り付けることで、小組体250の第1クラッチセンター84への組付けが完了する。このように、戻しばね94が予め圧縮された小組体250を第1クラッチセンター84に取り付けるため、小組体250を第1クラッチセンター84に組付ける際に戻しばね94を圧縮させる必要がなく、組付け作業が容易である。
【0073】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、ピストンガイド92の空所である第2の切り欠き部122Bに、ピストンガイド92の軸方向に突出する複数の突出部125を設けたため、キャンセラープレート93の凸部133がピストンガイド92の第2の切り欠き部122Bに誤って組み付けられることを突出部125によって防止でき、キャンセラープレート93を正しく組み付けることができる。また、第2の切り欠き部122Bは、キャンセラープレート93の凸部133が係合しない空所となっているため、この空所を油圧キャンセラー室97の作動油が通ることができ、油圧キャンセラー室97の作動油を通過させ易い。これにより、第2の切り欠き部122Bを介して速やかに油圧キャンセラー室97に作動油を出入りさせることができ、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37の切断及び接続を速やかに切り替えできるため、変速操作にかかる時間を短縮できる。
また、第2の切り欠き部122Bに設けられた突出部125が、キャンセラープレート93の凸部133の幅Wよりも狭い間隔Lで配置されており、突起部の間に凸部が入らないため、2つの突出部125の間に凸部133が入らないため、キャンセラープレート93がピストンガイド92に誤組みされることを防止できる。
【0074】
また、突出部125によって誤組みが防止され、キャンセラープレート93をピストンガイド92に正しく組み付けできるため、ピストンガイド92とキャンセラープレート93とが対向する面間に張設される戻しばね94を正しく組み付けできる。このため、油圧クラッチ装置の所定の特性を得ることができる。
さらに、キャンセラープレート93の移動を規制するクリップ135を、ピストンガイド92の切り欠き部122における各突起121の係合溝123に係合させて設け、クリップ135が係合溝123によって外周側から支持されるようにしたため、ピストンガイド92が回転した際の遠心力によってクリップ135が外れることがない。このため、クリップ135の緊縛力を小さくでき、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37の組付けの作業性を向上できる。
【0075】
また、クリップ135が線状のスプリングであるため、クリップ135を撓ませて容易にピストンガイド92に組み付けできると共に、軽量化を図ることができる。
また、クリップ135の係合フック部137をキャンセラープレート93の係合穴124に差し込むことで、クリップ135の位置を規制でき、簡単な構造でクリップ135の回り止めを設けることができる。
【0076】
さらに、キャンセラープレート93の凸部133の基底円の径D1が、ピストンガイド92がキャンセラープレート93に係合する部分の外径D2より大きいため、孔131の内周面131Aとピストンガイド92との間に隙間Sができ、油圧キャンセラー室97内の作動油が隙間Sを通過することができる。このため、油圧キャンセラー室97の作動油を通過させるための油路を特別に設ける必要がなく、構造を簡単にできる。また、隙間Sを介して速やかに油圧キャンセラー室97に作動油を出入りさせることができ、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37の切断及び接続を速やかに切り替えできるため、変速操作にかかる時間を短縮できる。
【0077】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されない。
上記実施の形態では、受圧板部84Dは第1クラッチセンター84に設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、受圧板部をクラッチアウタ72側に設けて、この受圧板部と加圧板部91Dとの間で駆動及び被動摩擦板85,86を狭圧しても良い。また、その他の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
36 第1油圧クラッチ装置(油圧クラッチ装置)
37 第2油圧クラッチ装置(油圧クラッチ装置)
72 クラッチアウタ
84 第1クラッチセンター(クラッチセンター)
84D 受圧板部
85 駆動摩擦板(第1の摩擦板)
86 被動摩擦板(第2の摩擦板)
91 クラッチピストン
91D 加圧板部
92 ピストンガイド(クラッチピストンガイド)
93 キャンセラープレート
94 戻しばね
96 制御油圧室
97 油圧キャンセラー室
99 ばね座(保持部)
100 ばね支持穴(保持部)
122 切り欠き部
122B 第2の切り欠き部(空所)
123 係合溝(内周溝)
124 係合穴
125 突出部(突起部)
131A 内周面(内周端)
133 凸部
135 クリップ(係止具)
137 係合フック部
184 第2クラッチセンター(クラッチセンター)
L 間隔
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチアウタ(72)と、該クラッチアウタで同軸に囲繞されるクラッチセンター(84、184)と、前記クラッチアウタ(72)に相対回転不能に係合される複数枚の第1の摩擦板(85)と、第1の摩擦板(85)に交互に重なって配置されると共に前記クラッチセンター(84、184)に相対回転不能に係合される複数枚の第2の摩擦板(86)と、相互に重なって配置される第1及び第2の摩擦板(85、86)に対向して前記クラッチセンター(84、184)または前記クラッチアウタ(72)の一方に設けられる受圧板部(84D)と、加圧板部(91D)に連設され制御油圧室(96)の油圧増大に応じて第1及び第2の摩擦板を加圧する側に移動するクラッチピストン(91)と、前記クラッチピストン(91)との間に前記制御油圧室(96)を形成するクラッチピストンガイド(92)と、前記クラッチピストン(91)の前記制御油圧室(96)と反対側に油圧キャンセラー室(97)を形成するキャンセラープレート(93)とを設け、前記キャンセラープレート(93)の内周端に設けた凸部(133)と、前記クラッチピストンガイド(92)の端に設けられ前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)と係合する切り欠き部(122)とを係合して組み付けると共に、前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)に、前記キャンセラープレート(93)の前記凸部(133)が係合しない空所(122B)を設けた油圧クラッチ装置において、
前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)の前記空所(122B)に、軸方向に突出する複数の突起部(125)を設けたことを特徴とする油圧クラッチ装置。
【請求項2】
前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)の前記空所(122B)に設けた複数の前記突起部(125)は、前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)の幅(W)よりも狭い間隔(L)で配置されていることを特徴とする請求項1記載の油圧クラッチ装置。
【請求項3】
前記クラッチピストンガイド(92)と前記キャンセラープレート(93)とが対向する面間に、戻しばね(94)が張設され、前記クラッチピストンガイド(92)と前記キャンセラープレート(93)とが対向する面間に前記戻しばね(94)を保持する保持部(99、100)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の油圧クラッチ装置。
【請求項4】
前記切り欠き部(122)の内周溝(123)に係合して、前記キャンセラープレート(93)の前記クラッチピストンガイド(92)に対する軸方向の移動を規制する係止具(135)を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに油圧クラッチ装置。
【請求項5】
前記係止具(135)は、線状のスプリングであること、
を特徴とする請求項4記載の油圧クラッチ装置。
【請求項6】
前記キャンセラープレート(93)の内周面に形成された係合穴(124)に差し込まれる係合フック部(137)を前記係止具(135)に設けたことを特徴とする請求項4または5記載の油圧クラッチ装置。
【請求項7】
前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)の基底円は、前記クラッチピストンガイド(92)が前記キャンセラープレート(93)に係合する部分の外径(D2)より大きく設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の油圧クラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202673(P2011−202673A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67658(P2010−67658)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】