説明

油圧サスペンションシステム

車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムであり、少なくとも2つの前方ホイール組立体と2つの後方ホイール組立体を含み、それぞれが車体とホイール組立体の間の車両弾性支持手段(27〜30)と関連している。減衰/剛性システムは、各ホイール組立体と車体の間に少なくとも圧縮チャンバ(45〜48)を備えたホイールラム(11〜14)と荷重配分装置(76)を含む。荷重配分装置(76)は2対のチャンバ(77〜80)を含み、各チャンバ(77〜80)は前方(89、90)及び後方(91、92)のシステムチャンバ(これらはピストン動作と共に比例的且つ反対の意味で容積が変化する)及び、相互連結ピストン(81〜84)が内部に支持された残りのピッチチャンバ(93〜96)へと分離されている。各ホイールラム(11〜14)の圧縮チャンバ(45〜48)はそれぞれのシステムチャンバ(89〜92)と流体連通しており、ここで車両は車両弾性支持手段(27〜30)によって主に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用のサスペンションシステムに関するものであり、このサスペンションシステムは少なくともロール剛性を与え、ヒーブ、ロール、ピッチの減衰を独立制御できるものである。
【背景技術】
【0002】
車体に対するホイールの動きの種々のモードを受動的に識別する能力を有し、よって機能性に様々な選択肢をもたらす、既存のものとは異なる連動型サスペンションシステムが多く知られている。例えば、参照することによってその詳細を本書に含むところの、出願人の米国特許第6,010,139号及び第6,270,098号は、2対の対角連動型複動式ホイールラム間の圧力平衡“荷重配分”装置の、既存のものとは異なるレイアウトをいくつか提示している。このシステムは、ゼロのワープ剛性に対してそれぞれ異なるヒーブ、ロール、ピッチ剛性率を示し、また4つのベースサスペンションモード(ヒーブ、ロール、ピッチ、ワープ)すべてにおいてそれぞれ異なる減衰率を示す。このシステムは車両の重量を支えるものであり、車両にかかる荷重が変化するにつれ、あるいは流体温度が変化するにつれ、システムの6つの容量(volume)のそれぞれにおける流体量が調整されなくてはならない。また荷重状況によっては、システムの6つの容量がすべてそれぞれ異なる圧力となるため、流体がシールから洩れ出る可能性があり、これもまた正しい車両姿勢を維持するような流体量調整を必要とする。これは高圧流体源、センサ、制御電子回路、バルブを必要とし、システムの価格を受動的システムにしては比較的高いものとしてしまう。
【0003】
ロール剛性は高いがワープ剛性は低くヒーブ剛性はごくわずかであり、ロール減衰は高いがヒーブ減衰はより低く、より快適であり、独立したものである受動的システムの例が、出願人のPCT/AU00/00312に見られる。このシステムは十分なヒーブ剛性を発揮しないため、別個の支持スプリングが必要とされる。
【0004】
ロール及び/又はピッチ減衰のみを行うシステムの例がヤマハの米国特許第5,486,018号及びカヤバの米国特許第6,024,366号に見られる。これらの文献のシステムは、一対のホイール減衰ラム間に装置を用いたものであり、各ホイール減衰ラムにはピストン内にダンパーバルプがあり、複動減衰を行うが、ラムは単動する(すなわち、流体ポートのみが存在する)。この装置は同相(すなわち、ヒーブ)及び逆相(すなわち、ロール及び/又はピッチ)運動に対するそれぞれ異なるレベルの減衰に備えたものである。しかしながらこのシステムはどのモードにおいても十分な剛性を発揮することができず、よって支持スプリングが必要となるだけでなく、跳ね返りとロール剛性のバランスをうまくとるためには大抵、アンチロールバーが必要となる。さらにホイールラム(流体ポートは1つのみ)が効果的に単動するものであるため、装置のもたらす減衰量は限られている。この問題に対処するために本システムに対して改良がなされ、これは日本特許庁公報第11291737号に見出すことができるが、これらは配管及びスプールバルブを増やすことになる。
【発明の開示】
【0005】
よって本発明の目的は、車両サスペンション用の油圧システムを供するものであり、この油圧システムはロール剛性を与え、ロール減衰、ピッチ減衰を行い、更に要すればピッチ剛性を与えるものであり、好ましくは、これらのすべてが互いに独立して設計され調整されて各条件の最適化を可能とするものである。
【0006】
これを念頭におき、本発明の1つの側面によれば、車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムが提供され、この車両は、車体と、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアと第2のペアとからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアは、少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの右側後方ホイール組立体とからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第2のペアは、少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの左側後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
各ホイール組立体と車体の間に少なくとも1つのホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
左側前方、右側前方、左側後方、右側後方のホイールラムの圧縮チャンバ間に相互連結された荷重配分装置を有し、この荷重配分装置は、第1及び第2のピストンロッド組立体、第1、第2、第3及び第4のシステム容量、そして第1及び第2のモード弾性容量を有し、
第1のピストンロッド組立体は、少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンを有し、この少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンの直径が第1、第2、第3及び第4の有効断面積を規定し、第2のピストンロッド組立体は、少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンを有し、この少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンの直径が第5、第6、第7及び第8の有効断面積を規定し、第1及び第2のピストンロッド組立体は荷重配分装置内に配置され、各ピストンロッド組立体は、ピストンロッド組立体の長軸を中心に回転し、長軸に沿って摺動できるものであり、
第1の有効断面積は、第1のシステム容量の可動壁を規定し、第1のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第1のシステム容量の容積が変化し、第2の有効断面積は、第2のシステム容量の可動壁を規定し、第3の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第4の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、第5の有効断面積は、第3のシステム容量の可動壁を規定し、第2のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第3のシステム容量の容積が変化し、第6の有効断面積は、第4のシステム容量の可動壁を規定し、第7の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第8の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、
第1のシステム容量は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴う第2のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、第3のシステム容量は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第4のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、
第1のモード弾性容量の容積は、第1及び第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第1及び第3のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、第2のモード弾性容量の容積は、第2及び第4のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、
第1及び第4のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の一方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、第2及び第3のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の他方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、減衰/剛性システムはこれにより実質的にゼロのワープ剛性を与え、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【0007】
本発明の他の側面によれば、車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムが提供され、この車両は、車体と、少なくとも2つの前方ホイール組立体と2つの後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方弾性車両支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
ホイール組立体と車体の間に少なくとも2つの前方ホイールラムと2つの後方ホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
荷重配分装置を有し、これは軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1の前方システムチャンバであり、車両の第1の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第1の後方システムチャンバであり、車両の第1の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の前方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2の前方システムチャンバであり、車両の第2の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第2の後方システムチャンバであり、車両の第2の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の前方ピッチチャンバであり、
第1及び第2の前方ピッチチャンバは相互連結されて前方ピッチ容量を形成し、第1及び第2の後方ピッチチャンバは相互連結されて後方ピッチ容量を形成し、
ここで車両は主として弾性車両支持手段によって支持されているものである。
【0008】
本発明の他のさらなる側面によれば、車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムが提供され、この車両は、車体と、少なくとも2つの前方ホイール組立体と2つの後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
ホイール組立体と車体の間に少なくとも2つの前方ホイールラムと2つの後方ホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
荷重配分装置を有し、これは軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、左側前方システムチャンバであり、車両の左側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い左側前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側前方システムチャンバであり、車両の右側にある他方の前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い右側前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の左側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、左側後方システムチャンバであり、車両の左側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い左側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側後方システムチャンバであり、車両の右側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い右側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の左側ロールチャンバであり、
第1及び第2の左側ロールチャンバは相互連結されて左側ロール容量を形成し、第1及び第2の右側ロールチャンバは相互連結されて右側ロール容量を形成し、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【0009】
ホイールラムはすべて単動式とできる。理想的には、どの単動式ラムも2つのチャンバを使用し、ラムのピストン内で減衰を行ってリバウンド減衰力を上手く制御するものである。ロールモーメント配分の極端な車両では、高いロール剛性を必要とする車両の端部で複動式ラムを採用し、車両の他方の端部で単動式ラムを採用することが好ましい。よって車両の一方の端部におけるホイールラムはリバウンドチャンバを有し、車両の一方の端部における各ホイールラムのリバウンドチャンバは、対角方向に対向する(車両の対向端部にあり且つ対向側部にある)ホイールラムの圧縮チャンバへと連結されているものとできる。
【0010】
しかしながら、ロールモーメント配分がより均一な車両では、すべてのホイールに複動式ホイールラムを採用することにより広範囲なパフォーマンスが可能となる。よって各ホイールラムはリバウンドチャンバを有するものであり、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている。
【0011】
車両をヒーブ方向に動作可能とするためには、剛性/減衰システムに弾性が必要である。この弾性は部分的あるいはそのすべてが、使用する流体に由来するものとできる。ただし好ましくは付加的な弾性を与えるものであり、なぜならこの付加的弾性の減衰がある程度のモード減衰を可能とするためである。よって各ホイールラムの圧縮チャンバはそれぞれアキュムレータと流体連通するものとできる。
【0012】
前方ピッチ容量はピッチバルブ構成を介して後方ピッチ容量へと連結できる。流体がピッチバルブを通過するとき、剛性/減衰システムによってピッチ剛性が与えられることはなく、ピッチバルブ構成中のダンパーバルプにより部分的に制御されるある程度のピッチ減衰のみが行われる。快適さを最高とするためには、ある状況ではピッチバルブ構成で減衰を行わない方がよいこともある。
【0013】
前方ピッチ容量は、前方ピッチダンパーバルブを介して前方ピッチアキュムレータに連結することができ、後方ピッチ容量は、後方ピッチダンパーバルブを介して後方ピッチアキュムレータに連結することができる。ピッチバルブが使用されていない場合、あるいは閉じられている場合、前方及び後方ピッチアキュムレータは剛性/減衰システムにおいてさらなるピッチ弾性を付与する。
【0014】
ピッチバルブ構成は被制御可変ダンパーバルプを含むものであってもよい。あるいは、ピッチバルブ構成は受動的ダンパーバルブを含むものであってもよい。あるいは、又はさらに、ピッチバルブ構成はロックアウトバルブを含み、前方ピッチ容量を後方ピッチ容量から隔てるものであってもよい。ピッチバルブ構成は、縦加速度、スロットル位置センサ又はスイッチ、ブレーキ位置センサ又はスイッチ、車両速度、ピッチ速度及び/又は加速度信号、前後垂直加速度計、ホイール位置センサのいずれか又はすべてに応じて作動するバルブを含むものとできる。
【0015】
ロールバルブを設けて2つの前方圧縮チャンバを相互連結してもよく、及び又はロールバルブを設けて2つの後方圧縮チャンバを相互連結してもよい。これらのロールバルブは剛性/減衰システムのロール剛性及び減衰をいくらかあるいはすべて取り除き、よって車両が直進する際の心地良さを高める。したがってバルブは、直進中には開放状態に、コーナリング中あるいは表面がサスペンションシステムにさらなるロール安定性を求める時には閉鎖状態に制御することができる。バルブは、ステアリング角、ステアリング速度、車両速度、横加速度、ロール速度又は加速度信号、左右垂直加速度計、ホイール位置のいずれか又はすべてに関して独立して作動することができる。
【0016】
支持手段は車体の主要な支持体であるため、4つのシステムチャンバ(左側前方、右側前方、左側後方、右側後方)はすべて、同じ作動/プリチャージ静圧を有するものとできる。またシステムには作動油及びガスが含まれ、これらは両方とも温度上昇と共に膨張するため、システムの静圧及びロール剛性を設計温度にわたって設計範囲に収めるためには圧力補正装置が必要となる。この圧力補正装置はまた、経時的な流体損失を埋め合わせるのに使用可能である。よって各バルブによって4つのシステムチャンバのそれぞれへと圧力維持装置を連結することが可能である。さらに、ピッチチャンバは互いに同じ作動/プリチャージ圧力を有し、さらに要すれば、システムチャンバと同じ圧力を有するものとできる。よって少なくとも1つのピッチチャンバはバルブを介して圧力維持装置へと連結可能である。圧力維持装置とピッチチャンバの間のバルブは単純な規制体(restriction)であってよく、各規制体の両側にはフィルタがあることが好ましい。あるいはこれらはソレノイド駆動バルブなどの他の種類のバルブであってもよいが、ただしこうしたバルブの開放時に車両が不意に動くことを防止するためには、規制体が含まれることが理想的である。
【0017】
圧力維持装置は単純なアキュムレータであってもよい。あるいは流体圧力源を含み、設定圧力になるように調節するものであってもよい。流体圧力源がポンプであり、タンクとアキュムレータを含むものであってもよい。あるいは流体圧力源がパワーステアリング、ブレーキなどの車両上の他の流体圧力源からの導管であってもよい。
【0018】
圧力維持装置が調節する設定圧力は固定圧力とすることができる(すなわち回路流体を冷却する圧力逃しバルブ又は圧力スイッチを使用する)。あるいは圧力維持装置が調節する設定圧力は、(剛性を切り替える又は制御する)オペレータ入力の結果として、車両荷重に応じて、システム温度に応じて、あるいは上述のいずれか又はすべての組み合せにより変化するものであってもよい。
【0019】
圧力維持装置は第1及び第2の出力圧力導管を含み、システムチャンバは第1の出力圧力導管に連結され、前記少なくとも1つのピッチチャンバは第2の出力圧力導管に連結されているものとできる。よってシステムチャンバの圧力はピッチチャンバ圧とは別に調節可能である。第1及び第2の出力圧力導管のいずれか又は両方の圧力が個々の単純なアキュムレータによって決定され、あるいは固定又は可変圧力へと調節される。このように剛性/減衰システムのロール及びピッチ剛性は別々に調節可能である。
【0020】
荷重配分装置のピストン/ロッド組立体にセンタリング力を与えるために、システムチャンバ又はピッチチャンバのいずれかに弾性センタリング装置を採用することができる。
【0021】
車両支持手段は、コイルスプリング、エアスプリング、トーションバー、リーフスプリング、ラバーコーンなど、どのような公知の支持手段であってもよい。コイルスプリング、エアスプリングの場合、車両支持手段はホイールラムの周囲に又は切り離された状態で設置可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付の図面は本発明の好適な実施の形態を描いたものである。他の実施の形態も可能であり、よって添付の図面の詳細さが先行する発明の説明の一般性に取って代わるものと理解されるべきではない。
【0023】
先ず図1を参照すると、車両用のサスペンションシステムが示されている。4つのホイールラム(11、12、13、14)は、車両の車体(図示せず)と直角配置された4つのホイール(図示せず)の間に配置されている。各ホイールラムには、ホイールハブ又はホイールとともに動く他のサスペンションジオメトリに連結されたシリンダ(15、16、17、18)と、シリンダ内に摺動可能に内蔵されたピストン(19、20、21、22)、及びピストンと車両の本体の間に固定されたロッド(23、24、25、26)を含む。ロッドの車体に対する連結は公知のいかなる手段によって行われてもよく、通常はラバーブッシュを介してであり、これはマクファーソンストラットジオメトリの場合には通常ベアリングを有する。
【0024】
説明を簡単にするために、車両弾性支持手段は「コイルオーバー」として、すなわちコイルスプリング(27、28、29、30)として示され、ホイールラムの周囲に位置決めされ、シリンダに固定された下側スプリングプレート(31、32、33、34)と、車体又はロッドに(直接又はベアリングやブッシュを介するなどして間接的に)連結可能な上側スプリングプレート(35、36、37、38)の間に配置されている。なお弾性支持手段は例えばエアスプリングのような、他のいかなる公知のタイプであってもよく、コイルスプリングで示したようにシリンダの周囲に配置され、あるいはラムとは別個に配置され、このことは選択肢を、例えばホイール位置を決めるジオメトリに連結されたトーションバーへと広げる。
【0025】
ホイールラムは基本的には従来型の複動式ラムである。左側前方ホイールラム11を例にとると、ピストン19(これはロッド23と一体を成すものとして形成可能である)にはベアリング39とシール40を収容する2つの溝がある。場合によっては個々のベアリング及びシール部品を単品(図示せず)で置き換えることもでき、これは組み立てを容易としコストを下げるためにピストンに接合、又はその周囲に形成されるものとできる。シリンダ端部41にはロッドシール42、ベアリング43、ロッドワイパ44又はエクスクルーダ(excluder)などの他の形式の二次的シールを収容する3つの溝がある。よって各ラムは、各シリンダ(15、16、17、18)内にピストン(19、20、21、22)によって形成された圧縮チャンバ(45、46、47、48)とリバウンドチャンバ(49、50、51、52)を有する。
【0026】
4つの複動式ホイールラムは、ホイールラムの対角ペア2つからなる。ホイールラムの各対角ペアは対角回路によって連結され、一対の対角回路を形成し、ヒーブ剛性からのロール及びピッチ剛性の受動的分離をもたらす。第1の対角回路は、二つの流体容量、左側前方圧縮容量、及び右側後方圧縮容量からなる。
【0027】
左側前方圧縮容量は、左側前方圧縮チャンバ45、左側前方圧縮導管61、左側前方圧縮アキュムレータ69、右側後方リバウンド導管67、右側後方リバウンドチャンバ51を含む。右側後方圧縮容量は同様に、右側後方圧縮チャンバ47、右側後方圧縮導管63、右側後方圧縮アキュムレータ71、左側前方リバウンド導管65、左側前方リバウンドチャンバ49を含む。
【0028】
第2の対角回路は同様に、二つの流体容量、右側前方圧縮容量、及び左側後方圧縮容量からなる。右側前方圧縮容量は、右側前方圧縮チャンバ46、右側前方圧縮導管62、右側前方圧縮アキュムレータ70、左側後方リバウンド導管68、左側後方リバウンドチャンバ52を含む。左側後方圧縮容量は同様に、左側後方圧縮チャンバ44、左側後方圧縮導管64、左側後方圧縮アキュムレータ72、右側前方リバウンド導管66、右側前方リバウンドチャンバ50を含む。
【0029】
この単純な対角連結構成は、ロール及びピッチ時には圧縮チャンバ及びその対角方向に対向するホイールラムの環状リバウンドチャンバを変位させ各アキュムレータへと与え、一方ヒーブ時には、ロッド容積(圧縮チャンバ・マイナス・環状リバウンドチャンバ)のみが変位してアキュムレータへと与えられ、ヒーブ剛性よりも高いロール及びピッチ剛性を与える。
【0030】
第1及び第2の対角回路間には荷重配分装置76があり、これは4つの一次チャンバ(77、78、79、80)を含み、それぞれがピストンシール(85、86、87、88)を有するピストン(81、82、83、84)によってシステムチャンバ(89、90、91、92)とピッチチャンバ(93、94、95、96)に隔てられている。ピストンはロッド(97、98)によってペアとなるように連結されており、これはピッチチャンバ93を96から、94を95からシールするためにその周囲を巡るシール(99、100)を有しており、各ピストンペアは付随のロッドと共にピストンロッド組立体を形成する。各システムチャンバに作用するピストンロッド組立体の有効面積は、一次チャンバの内径によって決まる面積である。各ピッチチャンバに作用するピストンロッド組立体の有効面積は、一次チャンバの内径によって決まる面積とピストンロッド組立体のロッド径によって決まる面積との差によって決まる環状面積である。
【0031】
左側前方システムチャンバ89は右側前方圧縮導管61へと連結され、ここで先に規定した左側前方圧縮容量の一部を形成する。同様に、右側前方システムチャンバ90は右側前方圧縮導管62へと連結され、ここで右側前方圧縮容量の一部を形成し、右側後方システムチャンバ91は右側後方圧縮導管63へと連結され、ここで右側後方圧縮容量の一部を形成し、最後に、左側後方システムチャンバ92は左側後方圧縮導管64へと連結され、ここで左側後方圧縮容量の一部を形成する。
【0032】
ロール時には、ロッド(97、98)が第1及び第2の対角回路における圧力変化に反応し、油圧システムのロール剛性を維持する。油圧システムのワープ剛性をなくすために、左側前方ピッチチャンバ93は通路101によって右側前方ピッチチャンバ94へと連結され(2つの前方ピッチチャンバは93、94及び通路101は共に前方ピッチ容積を形成する)、右側後方ピッチチャンバ95は同様の通路102によって左側後方ピッチチャンバ96へと連結される(2つの後方ピッチチャンバは95、96及び通路102は共に後方ピッチ容積を形成する)。
【0033】
油圧システムのピッチ剛性をなくすために、前方ピッチチャンバ93、94は通路(103)によって後方ピッチチャンバへと連結されている。油圧システムでピッチ減衰を行うために、ダンパーバルプ104が通路103に配置されている。ダンパーバルブ104は公知のいかなるタイプ(シム・ツリー・スタック(shim tree stack)、コイル・ブローオフ(coil blow-off)、等)の受動的バルブであってもよく、あるいは実際に被制御可変規制体(その制御は、縦加速度、及び/又はスロットル及びブレーキ位置に関するセンサからの入力に基づく)であるか被制御可変規制体を組み込んだものであってもよい。このピッチ減衰バルブ104によりホイールで得られる最大の力は、第1及び第2の対角回路のピッチ剛性によって制限されている(これはロール剛性と関連し、よってこれまで望ましいとされていたものよりもずっと高い)。この構成はサスペンションのピッチ減衰を他のすべての条件から比較的独立した状態で設定可能とし、車両に対して最適な減衰設定を行える大きな自由を与えるものである。
【0034】
ピッチ減衰バルブ104の好ましい配置の1つは、車両の一般的な定常状態での走行中には開放、車両が加速中もしくはブレーキング中には閉鎖となるように制御される高流量の切替可能なバイパスバルブと平行な受動的ダンパーバルブである。ピッチ加速度又はホイール位置を検出することで車体にピッチを引き起こす振動数の波入力に対してもバルブを閉鎖可能ならしめる場合には、より複雑な制御を行うことも可能である。バイパスバルブが開放位置にあるとき、単一のホイール減衰が減少し(なぜならこれはピッチ減衰に関連するものである)、さらに快適さを得ることができ、必要とあれば、バイパスバルブの閉鎖時にピッチを制御するより積極的なタイプのピッチダンパーバルブの使用を許容する。
【0035】
車体に対する各ホイールのすべての動きの減衰は、シリンダでダンパーを用い、各ホイールラムのチャンバの少なくとも1つから最初に流出する(またそこへ流入する)流体の通過を鈍らせることで行われる。規制体(105、106、107、108)が減衰用として前方圧縮導管上に示されている。これらの規制体は流体の両方向の流れに作用し、圧縮及びリバウンド減衰を行う。しかしながら通常のシステムデザイン条件では、規制体105、106、107、108が圧縮ダンパーのみであって、圧縮方向のみで流体の流れを規制するように作用し、吸入(逆止め)バルブを並列に用いてリバウンド動作時にはキャビテーション防止のために圧縮チャンバへと流体が自由に流れるものとすることが好ましい。このときリバウンドダンパー(109、110、111、112)が必要とされ、これらは同様に単動式であるが今度はリバウンド方向の流体の流れに対してのものであり、吸入バルブを並列に用いて圧縮動作時にはリバウンドチャンバへと流体が自由に進入するものとする。
【0036】
これらのホイールダンパーバルブ(105〜112)はラムデザインに一体化してもよいし、あるいは図示のように導管に嵌めてもよい。これらは公知のどのような形態のものであってもよく、速度曲線に対して可変もしくは切替可能な力を与えるように制御可能とすることができる。
【0037】
システム導管とアキュムレータの間にさらなるダンパーバルブを使用し、主に車両のロール及びピッチ動作に対してさらなる減衰を行うことも可能である。ここでもまたこれらバルブは単純な規制体として示されているが、可変ダンパーバルブを含むいかなる公知のダンパーバルプの形態をとってもよく、快適さとハンドリングセッティングの間を切替可能とできる(あるいは切替可能なバイパスを使用し、その効果を減少もしくはなくすことが可能である)。
【0038】
圧縮ダンパーバルブ(105〜109)をホイールラム(11〜14)に一体化する場合、アキュムレータ(69〜72)及び随意のアキュムレータダンパーバルブ(113〜116)もまたホイールラムに一体化できる。
【0039】
油圧システムは一次的な支持手段ではない(すなわち、前記コイルスプリング−あるいはエア等のスプリングが車両支持の主要部である)ため、本システムの容量のすべて(先に規定した左側及び右側の前方及び後方圧縮容量、及び前方及び後方ピッチ容量)を共通のプリチャージ静圧で動作させることが可能である。すべてのシステムを同じプリチャージ静圧で動作させる利点は、システム全体においてピストンシールを挟んでの圧力差がなくなり、よってシステム間での流体漏れに起因する姿勢変化及び容量間で流体を汲み出す電動制御システムの必要もなくなる。
【0040】
必要とあらばポンプ、バルブ、位置センサを用いた電動制御システムも採用可能だが、図2は荷重配分装置ピストンの平均位置及び流体容量でのプリチャージ静圧を維持する好適な方法を示している。
【0041】
システム容量がすべて共通の圧力で動作させられ且つ(非常に制限された状態でではあるものの)相互連結されている場合、ピストンを中心位置へ偏倚する弾性装置を用いて、センサや電動調整の必要なしに、荷重配分装置でピストンの中心位置を維持することも可能である。この弾性装置は油圧システムのピッチ、ワープ、及び単一ホイールの剛性を高めるもので、よってこのことは、これらスプリングの剛性を選択する際に心に留め置かねばならない。図2にはコイルスプリングが示されているが、どのような弾性装置を用いてもよい。
【0042】
システムチャンバは規制体(145、146、147、148)を介して共通の導管又は通路151へと連結され、これはさらに圧力維持装置152へと連結されている。相互連結された前方及び後方ピッチ容量は圧力維持装置152への単一の急減衰の連結のみを必要とし、これは同じく共通の導管又は通路151へと連結された規制体149として示されている。各規制体は典型的には遮断防止のためにフィルタを両側に設けた微小なオリフィスであるが、公知のいかなる規制手段を用いてもよい。オリフィスはシステム容量内の圧力を許容範囲内に維持するのに必要な特徴をもたらす大きさに作られ、その一方で、直線走行に復帰するときに静止ロール姿勢を許容範囲内に維持するためにコーナリング中の大きな流体損失を防止する。
【0043】
圧力維持装置152は省略可能ではあるが、車両の使用温度範囲を通しての油圧システム及びそのアキュムレータにおける流体及びガスの容積変化は、一般的には何らかの補整装置を必要とするほど大きいものである。この装置の複雑さはデザイン条件及び必要とされる機能性に応じて大きく変わり得るものである。
【0044】
最も単純な形態では、圧力維持装置(152)を単純なアキュムレータとでき、これは公知のいかなる構造を有するものであってもよい(例えば、ガススプリングを有する袋タイプ(bladder-type)、ガススプリング又は機械的スプリングを有するピストンタイプ)。
【0045】
あるいは圧力維持装置(152)が流体圧力源(ポンプを備えたタンク、あるいはパワーステアリングなどの他の車両システムなど)を用いて油圧サスペンション容量の圧力を固定圧力又は可変圧力のいずれかに維持することも可能である。固定圧力を選択した場合、必要なコンポーネントは単純且つ安価で、受動的、そして機械的な部品となるが、システム温度が変化するにつれシステム剛性がわずかに変化してしまう。温度変化に対してもシステム剛性特性を一定に保つためには、システム内の圧力が温度に基づいて調節されなくてはならない。
【0046】
また油圧サスペンションシステムのロール剛性はシステム内の圧力を変化させることで調節可能であり、よって可変の圧力定値を有する圧力維持装置(152)を使用すると、圧力は車両での荷重に基づいて及び/又はドライバが操作するモード選択器又は可変選択器によって圧力を変化させることができる。
【0047】
図3は油圧サスペンションシステムの他の構成を示す。ピッチ容量を連結する通路103は除去され、各ピッチ容量は今度は通路又は導管(181、182)を介してそれぞれのアキュムレータ(183、184)へと連結される。この構成はピッチ剛性を与えるが、これはシリンダサイズと各アキュムレータにおけるガス容積によって決まる。よってピッチ剛性は非常に低く設定可能である。図1、2のものと比べてのこの構成の利点の一つは、ロールモーメント配分を設定するのに(あるいはそれに貢献するように)荷重配分装置における一次チャンバ(77、78、79、80)の直径を使用可能という点である。図1、2ではホイールラムのシリンダ(15、16、17、18)の直径が、システムのロールモーメント配分を設定可能とするのに(ホイールラムの機械的利点とともに)利用可能な主要な調節条件である。ピッチチャンバで使用される流体はほぼ圧縮できないものであるため、荷重配分装置におけるピストン(81、82、83、84)はすべて同じ直径であり、よって前後の容積は一致するものでなくてはならない(ただし以下の補注を参照のこと)。荷重配分装置におけるピストンがすべて同じ直径を有している場合、ロール中における前後ホイールラム間での50%超の典型的配分において力の変化を調和させるためには、前方シリンダ(15、16)の直径は後方シリンダ(17、18)の直径よりも大きくなくてはならない。このとき、荷重配分装置のロッドとピストンを介して圧力が調和すると、より大きい前方シリンダの直径はより大きな前方シリンダ力を生じる。しかしながら車両のロールモーメント配分が極端(80%超など)であると、前方シリンダ(15、16)の直径が後方シリンダ(17、18)の直径と比べて極端なものになる。これは前方ホイールの動きと共に大量の流体を動かして前方ホイールラムから出し入れさせ、このことが液体加速度効果による望ましからざるラム力へとつながる。これは、前方及び後方シリンダ(15、16、及び17、18)をより近似の直径となるように作ること、ならびに油圧システムのロールモーメント配分を荷重配分装置を用いて変化させることによって克服できる。図3では前方の一次チャンバ(77、78)が後方の一次チャンバ(79、80)よりも小さい直径を有するものである。これは、ロール中、調和すべき荷重配分装置のロッドとピストンに関して、前方圧縮容量の圧力は後方圧縮容量の圧力より高くなくてはならず、ロールモーメント配分において必要とされる向きを与えることを意味するものである。荷重配分装置は、油圧システムの設計ロールモーメント配分に必要とされるすべてのバイアスを与える大きさとすることが可能であり、あるいはバイアスの一部を与える大きさとし、ホイールシリンダ直径を利用して必要とされるバイアスの残りを与え、あるいはホイールシリンダを利用して必要とされるすべてのバイアスを与え、荷重配分装置は全般に同様な直径のチャンバを有するものとすることができる。
【0048】
なお図1、2の通路103にアキュムレータを使用し、2つの単動式ダンパーバルブを備え、1つをアキュムレータと前方ピッチ容量の間に配置して前方ピッチ容量から流れ出る流体を減衰し、1つをアキュムレータと後方ピッチ容量の間に配置して後方ピッチ容量から流れ出る流体を減衰することも可能である。このとき、前方一次チャンバ(77、78)と後方一次チャンバ(79、80)の間で差動穴を用いて上述のようにロールモーメント配分を調節することが可能である。
【0049】
図3に示す構成に戻れば、2つのピッチ容量とこれらの各々のアキュムレータ(183、184)の間の導管(181、182)におけるダンパーバルブによってピッチ減衰が行われる。同様にこれらのダンパーバルプも好ましくは単動式であり、各アキュムレータに関して圧縮方向に規制を加える(すなわち、これらはピッチ容量から流れ出てアキュムレータに入る流体を規制するように作用し、且つ比較的自由な流れの「吸入バルブ」を有して流体がアキュムレータから自由に流れ出てピッチ容量に戻ることを許容する。これらのバルブは公知のいかなる構造を有するものであってもよく、切替可能、もしくは可変減衰曲線をもたらすものとできる。
【0050】
図2に示す圧力維持構成は、もはや前方ピッチ容量に連通するものではないため、後方ピッチ容量へと制限された状態で連結するものへと容易且つ自明に変更可能である。あるいはピッチ容量を、右側及び左側の前方及び後方システム容量とは異なる圧力に維持することができる。このときロール剛性は4つのシステム容量における圧力を制御することで制御でき、ピッチ剛性は2つのピッチ容量における圧力を制御することで別々に制御可能である。
【0051】
ロール及び/又はピッチ剛性を変える別の方法はさらなるアキュムレータを使用することである。ロールに対しては、アキュムレータを前方2つ、後方2つ、すなわち圧縮容量4つすべてに設けることができる。ピッチに対しては、前方及び後方ピッチ容量のいずれか又は両方にさらなるアキュムレータを追加することができる。すべての場合において、アキュムレータは切替可能なロックアウトバルブを介して油圧システムに連結可能である。これはロール及び/又はピッチ剛性が高低のセッティング間を切り換わることを許容する。これらのセッティングは一般的に多目的単一セッティングの両側にあり、よってシステムは公知の手段(加速度センサ、スロットル及びブレーキセンサ、位置センサ、など)によって選択又は制御されたときに、剛性が高くなるとハンドリングと制御が良くなり、剛性が低くなると快適さが高まるものとできる。アキュムレータ全体を油圧切り替えしてシステムに含めたり外したりする代わりとしては、2つのガス容量を備えたアキュムレータ設計を採用することがあり、ここではより単純でより安価なガス切り替えバルブを使用して、2つのガス容量の間へとロックアウトバルブを切り替えて容量の1つを孤立させることによってシステムに利用可能なガス容量を変化させることができる。
【0052】
ロール及び/又はピッチ剛性を切り替えるさらに別の方法は「架橋バルブ(bridging valve)」の使用であり、これは図4に示すように、システム又はピッチ容量のうち少なくとも2つを連結するものである。
【0053】
ピッチ相互連結バルブ191は前方及び後方ピッチ容量を相互連結し、図1、2に示すようにピッチ剛性をなくすものである。このピッチ相互連結バルブ191は、最高の快適さレベルとするためにピッチ剛性及び減衰をなくす単純なロックアウトバルブであってもよく、あるいは相互連結を減衰するロックアウトバルブと直列にダンパーバルブを有するものであってもよい。あるいは被制御可変ダンパーバルプであってもよいし、受動的ダンパーバルブであってもよい。加速、ブレーキング、あるは波誘導ピッチ動作時のピッチで油圧システムが硬く且つ車両通常走行時のピッチでシステムがやわらかいこと(よって単一ホイールでの快適さを向上する)を確実にするため、ロックアウトバルブ又は可変ダンパーバルプの制御には車両条件の探知が必要である。それは縦加速度、ブレーキ又はスロットル位置に敏感な機械的又は電気的装置とすることができる。あるいは電子制御であり、縦加速度、ブレーキ又はスロットル位置を探知することの代わりに、あるいはそれに加え、あるいは選択的に、加速度計及び/又はホイール位置を利用してピッチ動作を探知するものであってもよい。
【0054】
ロール相互連結バルブ192が示され、油圧システムの2つの前方圧縮導管(61、62)を相互連結している。これは、前方圧縮容量が流体を自由に交換し(通常アキュムレータ69、70及びそのダンパーバルブ113、114に起因する)ロール剛性及び減衰をなくすのみならず、後方圧縮容量も、(あたかもワープ動作に反応するかのように)動き且つ前方圧縮導管及びロール相互連結バルブ192を介して流体を伝達する荷重配分装置のピストン及びロッド組立体(81、97、84及び82、98、83)を介して液体を交換できるため、油圧システムのロール剛性及びロール減衰を大きく減らす。後方圧縮容量からの流体に必要な流路を小さくするためには、後方圧縮導管間に同様なロール相互連結バルブを設けることができる。どちらにしろ、後方圧縮アキュムレータ71、72及びそれらのダンパーバルブ115、116に起因するロール剛性及び減衰もまた部分的又は実質的になくなる。
【0055】
ロール相互連結バルブは前方(及び/又は後方)圧縮容量間のどこに配置してもよい。例えばバルブ192が荷重配分装置(76)に組み込まれるものとされ、前方圧縮システムチャンバ89、90を相互連結するものであってもよい。
【0056】
ピッチ相互連結バルブと同様に、ロール相互結合バルブもロックアウトバルブ又は可変規制体とすることができる。制御は機械的あるいは電気的であって、横加速度又はステアリングホイール位置に敏感なものとできる。理想的には電子制御であって、ステアリング角及び/又はステアリング速度、車両速度、横加速度を探知するものである。
【0057】
図4は荷重配分装置に差異のある穴を示しているが、必要とあれば前方及び後方で同一直径の穴を使用することも可能である。
【0058】
単動式ラムは4つのホイールすべてで採用可能であるが、利用可能なロール剛性及び減衰は非常に限られたものである。ただし極端なロールモーメント配分(70%以上又はさらに広い範囲であり、車両の剛性及びジオメトリ条件次第)の場合、車両の一方の端で単動式ラムを使用することが有益である。複動式ラムはロール荷重に大きな変化を不可欠とする車両の端に保持される。単動式ラムを用いることでリバウンド導管がなくなる。理想的にはピストンをダンパーバルブとして使用して制御のために十分なリバウンド減衰を行う。
【0059】
荷重配分装置に対する油圧ラムの連結順序は図1〜4のすべてで同一である。ただし当業者にとっては自明であるが、連結順序を変えて同様な機能性を生じせしめることが可能である。連結通路101、102は合わせて移動させる必要があるであろう。例えば、システムチャンバをすべて2つの前方一次チャンバ(77、78)内の2つのピストン81、82の両側とし、ピッチチャンバを残りの2つの一次チャンバ(79、80)内のピストン83、84の両側とすることができる。あるいはシステム及びピッチチャンバの場所を図1〜4に示すレイアウトと逆にすることも可能である。
【0060】
図5は荷重配分装置に対する油圧ラムの別の連結順序を示す。図3、4において仮にピッチアキュムレータ(183、184)がきわめて硬いものとすると、油圧システムのピッチ剛性はロール剛性によって決まることになる。しかしながら通常の路上走行車のサスペンションセットアップではピッチ剛性はロール剛性よりも低く、よってピッチアキュムレータ(183、184)によってもたらされるコンプライアンスはロール剛性より低い又は最大でもロール剛性までのピッチ剛性を許容するものである。ただし空力の助けを得るレースカーなどの車両ではピッチ姿勢制御が非常に重要となり得る。この場合図5に示すように油圧システムを効果的に90度回転させることが可能である。この配置は、ヒーブ剛性が低く、ワープ剛性がゼロであり、ロール剛性がヒーブ剛性とワープ剛性の間にある状態で、高いピッチ剛性をもたらすことを油圧システムに許容するものである。
【0061】
LDUの構造は先行する図面のものと同様である。すべてのシステムチャンバ201〜204は等しい直径を有するものとして示されているが、前方(201、202)と後方(203、204)で異なる直径のシステムチャンバを用いることで油圧システムのロールモーメント配分を変化させることが可能である。左側前方システムチャンバ201は左側前方圧縮導管61に連結され、右側前方圧縮チャンバは右側前方圧縮導管に連結され、右側後方システムチャンバは右側後方圧縮導管に連結され、左側後方システムチャンバは右側後方圧縮導管に連結されている。この90度のLDUの回転は先の配置のピッチチャンバを有効に回してロールチャンバ205〜208とする。2つの左側ロールチャンバ(205、208)は通路209で相互連結され、2つの右側ロールチャンバ(206、207)は通路210で相互連結されている。2つの左側ロールチャンバはまた通路211によって左側ロールダンパーバルブ215を介して左側ロールアキュムレータ213に連結されている。同様に2つの右側ロールチャンバは通路212によって右側ロールダンパーバルブ216を介して右側ロールアキュムレータ213に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による、ロール剛性を与えロール及びピッチ減衰を行う油圧システムの第1の好適な実施の形態の概略図である、
【図2】本発明による油圧システムの第2の好適な実施の形態の配置の概略図であり、第1の配置と類似しているものの、圧力維持装置が追加されている、
【図3】本発明による油圧システムの第3の好適な実施の形態の概略図であり、ロール及びピッチモードの両方で剛性を与え減衰を行う、
【図4】本発明による油圧システムの第4の好適な実施の形態の概略図であり、ロール及びピッチ剛性及び減衰を減少させる又はなくすバルブを含んでいる、
【図5】本発明による油圧システムの第5の好適な実施の形態の概略図である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用のサスペンションシステムに関するものであり、このサスペンションシステムは少なくともロール剛性を与え、ヒーブ、ロール、ピッチの減衰を独立制御できるものである。
【背景技術】
【0002】
車体に対するホイールの動きの種々のモードを受動的に識別する能力を有し、よって機能性に様々な選択肢をもたらす、既存のものとは異なる連動型サスペンションシステムが多く知られている。例えば、参照することによってその詳細を本書に含むところの、出願人の米国特許第6,010,139号及び第6,270,098号は、2対の対角連動型複動式ホイールラム間の圧力平衡“荷重配分”装置提示している。このシステムは、ゼロのワープ剛性に対してそれぞれ異なるヒーブ、ロール、ピッチ剛性率を示し、また4つのベースサスペンションモード(ヒーブ、ロール、ピッチ、ワープ)すべてにおいてそれぞれ異なる減衰率を示す。このシステムは車両の重量を支えるものであり、車両にかかる荷重が変化するにつれ、あるいは流体温度が変化するにつれ、システムの6つの容量(volume)のそれぞれにおける流体量が調整されなくてはならない。また荷重状況によっては、システムの6つの容量がすべてそれぞれ異なる圧力となるため、流体がシールから洩れ出る可能性があり、これもまた正しい車両姿勢を維持するような流体量調整を必要とする。これは高圧流体源、センサ、制御電子回路、バルブを必要とし、システムの価格を受動的システムにしては比較的高いものとしてしまう。さらにこれらのシステムで使用される高圧は静止摩擦すなわち「スティクション(stiction)」が荷重配分装置及びホイールラム内に生じるとの問題を生じる。
【0003】
ロール剛性は高いがワープ剛性は低くヒーブ剛性はごくわずかであり、ロール減衰は高いがヒーブ減衰はより低く、より快適であり、独立したものである受動的システムの例が、出願人のPCT/AU00/00312に見られる。このシステムは十分なヒーブ剛性を発揮しないため、別個の支持スプリングが必要とされる。
【0004】
ロール及び/又はピッチ減衰のみを行うシステムの例がヤマハの米国特許第5,486,018号及びカヤバの米国特許第6,024,366号に見られる。これらの文献のシステムは、一対のホイール減衰ラム間に装置を用いたものであり、各ホイール減衰ラムにはピストン内にダンパーバルプがあり、複動減衰を行うが、ラムは単動する(すなわち、流体ポートのみが存在する)。この装置は同相(すなわち、ヒーブ)及び逆相(すなわち、ロール及び/又はピッチ)運動に対するそれぞれ異なるレベルの減衰に備えたものである。しかしながらこのシステムはどのモードにおいても十分な剛性を発揮することができず、よって支持スプリングが必要となるだけでなく、跳ね返りとロール剛性のバランスをうまくとるためには大抵、アンチロールバーが必要となる。さらにホイールラム(流体ポートは1つのみ)が効果的に単動するものであるため、装置のもたらす減衰量は限られている。この問題に対処するために本システムに対して改良がなされ、これは日本特許庁公報第11291737号に見出すことができるが、これらは配管及びスプールバルブを増やすことになる。
【発明の開示】
【0005】
よって本発明の目的は、上述のシステムの問題のうち少なくとも1つを克服する車両サスペンション用の油圧システムを供するものであり、この油圧システムはロール剛性を与え、ロール減衰、ピッチ減衰を行い、更に要すればピッチ剛性を与えるものであり、好ましくは、これらのすべてが互いに独立して設計され調整されて各条件の最適化を可能とするものである。
【0006】
これを念頭におき、本発明によれば、車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムが提供され、この車両は、車体と、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアと第2のペアとからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアは、少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの右側後方ホイール組立体とからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第2のペアは、少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの左側後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
各ホイール組立体と車体の間に少なくとも1つのホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
左側前方、右側前方、左側後方、右側後方のホイールラムの圧縮チャンバ間に相互連結された荷重配分装置を有し、この荷重配分装置は、第1及び第2のピストンロッド組立体、第1、第2、第3及び第4のシステム容量、そして第1及び第2のモード弾性容量を有し、
第1のピストンロッド組立体は第1、第2、第3及び第4の有効断面積を規定し、第2のピストンロッド組立体は第5、第6、第7及び第8の有効断面積を規定し、第1及び第2のピストンロッド組立体は荷重配分装置内に配置され、各ピストンロッド組立体は、ピストンロッド組立体の長軸を中心に回転し、長軸に沿って摺動できるものであり、
第1の有効断面積は、第1のシステム容量の可動壁を規定し、第1のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第1のシステム容量の容積が変化し、第2の有効断面積は、第2のシステム容量の可動壁を規定し、第3の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第4の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、第5の有効断面積は、第3のシステム容量の可動壁を規定し、第2のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第3のシステム容量の容積が変化し、第6の有効断面積は、第4のシステム容量の可動壁を規定し、第7の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第8の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、
第1のシステム容量は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴う第2のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、第3のシステム容量は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第4のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、
第1のモード弾性容量の容積は、第1及び第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第1及び第3のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、第2のモード弾性容量の容積は、第2及び第4のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、
第1及び第4のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の一方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、第2及び第3のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の他方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、減衰/剛性システムはこれにより実質的にゼロのワープ剛性を与え、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
減衰/剛性システムは車両の主要支持体であることを要求されないため、システムでは比較的低圧の流体を使用可能である。これはスティクションに関連する問題を減少もしくは排除できる。さらに減衰/剛性システムとは別体の車両弾性支持手段の使用はある程度のワープ剛性を付与し、これはある状況下での車両安定性の改善に役立つことができる。
【0007】
荷重配分装置は、軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1の前方システムチャンバであり、車両の第1の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第1の後方システムチャンバであり、車両の第1の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の前方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2の前方システムチャンバであり、車両の第2の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第2の後方システムチャンバであり、車両の第2の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の前方ピッチチャンバであり、
第1及び第2の前方ピッチチャンバは相互連結されて前方ピッチ容量を形成し、第1及び第2の後方ピッチチャンバは相互連結されて後方ピッチ容量を形成するものとできる。
【0008】
あるいは荷重配分装置は、軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、左側前方システムチャンバであり、車両の左側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い左側前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側前方システムチャンバであり、車両の右側にある他方の前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い右側前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の左側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、左側後方システムチャンバであり、車両の左側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い左側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側後方システムチャンバであり、車両の右側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い右側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の左側ロールチャンバであり、
第1及び第2の左側ロールチャンバは相互連結されて左側ロール容量を形成し、第1及び第2の右側ロールチャンバは相互連結されて右側ロール容量を形成するものとできる。
【0009】
ホイールラムはすべて単動式とできる。理想的には、どの単動式ラムも2つのチャンバを使用し、ラムのピストン内で減衰を行ってリバウンド減衰力を上手く制御するものである。ロールモーメント配分の極端な車両では、高いロール剛性を必要とする車両の端部で複動式ラムを採用し、車両の他方の端部で単動式ラムを採用することが好ましい。よって車両の一方の端部におけるホイールラムはリバウンドチャンバを有し、車両の一方の端部における各ホイールラムのリバウンドチャンバは、対角方向に対向する(車両の対向端部にあり且つ対向側部にある)ホイールラムの圧縮チャンバへと連結されているものとできる。
【0010】
しかしながら、ロールモーメント配分がより均一な車両では、すべてのホイールに複動式ホイールラムを採用することにより広範囲なパフォーマンスが可能となる。よって各ホイールラムはリバウンドチャンバを有するものであり、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている。
【0011】
車両をヒーブ方向に動作可能とするためには、剛性/減衰システムに弾性が必要である。この弾性は部分的あるいはそのすべてが、使用する流体に由来するものとできる。ただし好ましくは付加的な弾性を与えるものであり、なぜならこの付加的弾性の減衰がある程度のモード減衰を可能とするためである。よって各ホイールラムの圧縮チャンバはそれぞれアキュムレータと流体連通するものとできる。
【0012】
前方ピッチ容量はピッチバルブ構成を介して後方ピッチ容量へと連結できる。流体がピッチバルブを通過するとき、剛性/減衰システムによってピッチ剛性が与えられることはなく、ピッチバルブ構成中のダンパーバルプにより部分的に制御されるある程度のピッチ減衰のみが行われる。快適さを最高とするためには、ある状況ではピッチバルブ構成で減衰を行わない方がよいこともある。
【0013】
前方ピッチ容量は、前方ピッチダンパーバルブを介して前方ピッチアキュムレータに連結することができ、後方ピッチ容量は、後方ピッチダンパーバルブを介して後方ピッチアキュムレータに連結することができる。ピッチバルブが使用されていない場合、あるいは閉じられている場合、前方及び後方ピッチアキュムレータは剛性/減衰システムにおいてさらなるピッチ弾性を付与する。
【0014】
ピッチバルブ構成は被制御可変ダンパーバルプを含むものであってもよい。あるいは、ピッチバルブ構成は受動的ダンパーバルブを含むものであってもよい。あるいは、又はさらに、ピッチバルブ構成はロックアウトバルブを含み、前方ピッチ容量を後方ピッチ容量から隔てるものであってもよい。ピッチバルブ構成は、縦加速度、スロットル位置センサ又はスイッチ、ブレーキ位置センサ又はスイッチ、車両速度、ピッチ速度及び/又は加速度信号、前後垂直加速度計、ホイール位置センサのいずれか又はすべてに応じて作動するバルブを含むものとできる。
【0015】
ロールバルブを設けて2つの前方圧縮チャンバを相互連結してもよく、及び又はロールバルブを設けて2つの後方圧縮チャンバを相互連結してもよい。これらのロールバルブは剛性/減衰システムのロール剛性及び減衰をいくらかあるいはすべて取り除き、よって車両が直進する際の心地良さを高める。したがってバルブは、直進中には開放状態に、コーナリング中あるいは表面がサスペンションシステムにさらなるロール安定性を求める時には閉鎖状態に制御することができる。バルブは、ステアリング角、ステアリング速度、車両速度、横加速度、ロール速度又は加速度信号、左右垂直加速度計、ホイール位置のいずれか又はすべてに関して独立して作動することができる。
【0016】
支持手段は車体の主要な支持体であるため、4つのシステムチャンバ(左側前方、右側前方、左側後方、右側後方)はすべて、同じ作動/プリチャージ静圧を有するものとできる。またシステムには作動油及びガスが含まれ、これらは両方とも温度上昇と共に膨張するため、システムの静圧及びロール剛性を設計温度にわたって設計範囲に収めるためには圧力補正装置が必要となる。この圧力補正装置はまた、経時的な流体損失を埋め合わせるのに使用可能である。よって各バルブによって4つのシステムチャンバのそれぞれへと圧力維持装置を連結することが可能である。さらに、ピッチチャンバは互いに同じ作動/プリチャージ圧力を有し、さらに要すれば、システムチャンバと同じ圧力を有するものとできる。よって少なくとも1つのピッチチャンバはバルブを介して圧力維持装置へと連結可能である。圧力維持装置とピッチチャンバの間のバルブは単純な規制体(restriction)であってよく、各規制体の両側にはフィルタがあることが好ましい。あるいはこれらはソレノイド駆動バルブなどの他の種類のバルブであってもよいが、ただしこうしたバルブの開放時に車両が不意に動くことを防止するためには、規制体が含まれることが理想的である。
【0017】
圧力維持装置は単純なアキュムレータであってもよい。あるいは流体圧力源を含み、設定圧力になるように調節するものであってもよい。流体圧力源がポンプであり、タンクとアキュムレータを含むものであってもよい。あるいは流体圧力源がパワーステアリング、ブレーキなどの車両上の他の流体圧力源からの導管であってもよい。
【0018】
圧力維持装置が調節する設定圧力は固定圧力とすることができる(すなわち回路流体を冷却する圧力逃しバルブ又は圧力スイッチを使用する)。あるいは圧力維持装置が調節する設定圧力は、(剛性を切り替える又は制御する)オペレータ入力の結果として、車両荷重に応じて、システム温度に応じて、あるいは上述のいずれか又はすべての組み合せにより変化するものであってもよい。
【0019】
圧力維持装置は第1及び第2の出力圧力導管を含み、システムチャンバは第1の出力圧力導管に連結され、前記少なくとも1つのピッチチャンバは第2の出力圧力導管に連結されているものとできる。よってシステムチャンバの圧力はピッチチャンバ圧とは別に調節可能である。第1及び第2の出力圧力導管のいずれか又は両方の圧力が個々の単純なアキュムレータによって決定され、あるいは固定又は可変圧力へと調節される。このように剛性/減衰システムのロール及びピッチ剛性は別々に調節可能である。
【0020】
荷重配分装置のピストン/ロッド組立体にセンタリング力を与えるために、システムチャンバ又はピッチチャンバのいずれかに弾性センタリング装置を採用することができる。
【0021】
車両支持手段は、コイルスプリング、エアスプリング、トーションバー、リーフスプリング、ラバーコーンなど、どのような公知の支持手段であってもよい。コイルスプリング、エアスプリングの場合、車両支持手段はホイールラムの周囲に又は切り離された状態で設置可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付の図面は本発明の好適な実施の形態を描いたものである。他の実施の形態も可能であり、よって添付の図面の詳細さが先行する発明の説明の一般性に取って代わるものと理解されるべきではない。
【0023】
先ず図1を参照すると、車両用のサスペンションシステムが示されている。4つのホイールラム(11、12、13、14)は、車両の車体(図示せず)と直角配置された4つのホイール(図示せず)の間に配置されている。各ホイールラムには、ホイールハブ又はホイールとともに動く他のサスペンションジオメトリに連結されたシリンダ(15、16、17、18)と、シリンダ内に摺動可能に内蔵されたピストン(19、20、21、22)、及びピストンと車両の本体の間に固定されたロッド(23、24、25、26)を含む。ロッドの車体に対する連結は公知のいかなる手段によって行われてもよく、通常はラバーブッシュを介してであり、これはマクファーソンストラットジオメトリの場合には通常ベアリングを有する。
【0024】
説明を簡単にするために、車両弾性支持手段は「コイルオーバー」として、すなわちコイルスプリング(27、28、29、30)として示され、ホイールラムの周囲に位置決めされ、シリンダに固定された下側スプリングプレート(31、32、33、34)と、車体又はロッドに(直接又はベアリングやブッシュを介するなどして間接的に)連結可能な上側スプリングプレート(35、36、37、38)の間に配置されている。なお弾性支持手段は例えばエアスプリングのような、他のいかなる公知のタイプであってもよく、コイルスプリングで示したようにシリンダの周囲に配置され、あるいはラムとは別個に配置され、このことは選択肢を、例えばホイール位置を決めるジオメトリに連結されたトーションバーへと広げる。
【0025】
ホイールラムは基本的には従来型の複動式ラムからなる。左側前方ホイールラム11を例にとると、ピストン19(これはロッド23と一体を成すものとして形成可能である)にはベアリング39とシール40を収容する2つの溝がある。場合によっては個々のベアリング及びシール部品を単品(図示せず)で置き換えることもでき、これは組み立てを容易としコストを下げるためにピストンに接合、又はその周囲に形成されるものとできる。シリンダ端部41にはロッドシール42、ベアリング43、ロッドワイパ44又はエクスクルーダ(excluder)などの他の形式の二次的シールを収容する3つの溝がある。よって各ラムは、各シリンダ(15、16、17、18)内にピストン(19、20、21、22)によって形成された圧縮チャンバ(45、46、47、48)とリバウンドチャンバ(49、50、51、52)を有する。
【0026】
4つの複動式ホイールラムは、一対の対角回路によって連結され、ヒーブ剛性からのロール及びピッチ剛性の受動的分離をもたらす。第1の対角回路は、二つの流体容量、左側前方圧縮容量、及び右側後方圧縮容量からなる。
【0027】
左側前方圧縮容量は、左側前方圧縮チャンバ45、左側前方圧縮導管61、左側前方圧縮アキュムレータ69、右側後方リバウンド導管67、右側後方リバウンドチャンバ51を含む。右側後方圧縮容量は同様に、右側後方圧縮チャンバ47、右側後方圧縮導管63、右側後方圧縮アキュムレータ71、左側前方リバウンド導管65、左側前方リバウンドチャンバ49を含む。
【0028】
第2の対角回路は同様に、二つの流体容量、右側前方圧縮容量、及び左側後方圧縮容量からなる。右側前方圧縮容量は、右側前方圧縮チャンバ46、右側前方圧縮導管62、右側前方圧縮アキュムレータ70、左側後方リバウンド導管68、左側後方リバウンドチャンバ52を含む。左側後方圧縮容量は同様に、左側後方圧縮チャンバ44、左側後方圧縮導管64、左側後方圧縮アキュムレータ72、右側前方リバウンド導管66、右側前方リバウンドチャンバ50を含む。
【0029】
この単純な対角連結構成は、ロール及びピッチ時には圧縮チャンバ及びその対角方向に対向するホイールラムの環状リバウンドチャンバを変位させ各アキュムレータへと与え、一方ヒーブ時には、ロッド容積(圧縮チャンバ・マイナス・環状リバウンドチャンバ)のみが変位してアキュムレータへと与えられ、ヒーブ剛性よりも高いロール及びピッチ剛性を与える。
【0030】
第1及び第2の対角回路間には荷重配分装置76があり、これは4つの一次チャンバ(77、78、79、80)を含み、それぞれがピストンシール(85、86、87、88)を有するピストン(81、82、83、84)によってシステムチャンバ(89、90、91、92)とピッチチャンバ(93、94、95、96)に隔てられている。ピストンはロッド(97、98)によってペアとなるように連結されており、これはピッチチャンバ93を96から、94を95からシールするためにその周囲を巡るシール(99、100)を有している。
【0031】
左側前方システムチャンバ89は右側前方圧縮導管61へと連結され、ここで先に規定した左側前方圧縮容量の一部を形成する。同様に、右側前方システムチャンバ90は右側前方圧縮導管62へと連結され、ここで右側前方圧縮容量の一部を形成し、右側後方システムチャンバ91は右側後方圧縮導管63へと連結され、ここで右側後方圧縮容量の一部を形成し、最後に、左側後方システムチャンバ92は左側後方圧縮導管64へと連結され、ここで左側後方圧縮容量の一部を形成する。
【0032】
ロール時には、ロッド(97、98)が第1及び第2の対角回路における圧力変化に反応し、油圧システムのロール剛性を維持する。油圧システムのワープ剛性をなくすために、左側前方ピッチチャンバ93は通路101によって右側前方ピッチチャンバ94へと連結され(2つの前方ピッチチャンバは93、94及び通路101は共に前方ピッチ容積を形成する)、右側後方ピッチチャンバ95は同様の通路102によって左側後方ピッチチャンバ96へと連結される(2つの後方ピッチチャンバは95、96及び通路102は共に後方ピッチ容積を形成する)。
【0033】
油圧システムのピッチ剛性をなくすために、前方ピッチチャンバ93、94は通路(103)によって後方ピッチチャンバへと連結されている。油圧システムでピッチ減衰を行うために、ダンパーバルプ104が通路103に配置されている。ダンパーバルブ104は公知のいかなるタイプ(シム・ツリー・スタック(shim tree stack)、コイル・ブローオフ(coil blow-off)、等)の受動的バルブであってもよく、あるいは実際に被制御可変規制体(その制御は、縦加速度、及び/又はスロットル及びブレーキ位置に関するセンサからの入力に基づく)であるか被制御可変規制体を組み込んだものであってもよい。このピッチ減衰バルブ104によりホイールで得られる最大の力は、第1及び第2の対角回路のピッチ剛性によって制限されている(これはロール剛性と関連し、よってこれまで望ましいとされていたものよりもずっと高い)。この構成はサスペンションのピッチ減衰を他のすべての条件から比較的独立した状態で設定可能とし、車両に対して最適な減衰設定を行える大きな自由を与えるものである。
【0034】
ピッチ減衰バルブ104の好ましい配置の1つは、車両の一般的な定常状態での走行中には開放、車両が加速中もしくはブレーキング中には閉鎖となるように制御される高流量の切替可能なバイパスバルブと平行な受動的ダンパーバルブである。ピッチ加速度又はホイール位置を検出することで車体にピッチを引き起こす振動数の波入力に対してもバルブを閉鎖可能ならしめる場合には、より複雑な制御を行うことも可能である。バイパスバルブが開放位置にあるとき、単一のホイール減衰が減少し(なぜならこれはピッチ減衰に関連するものである)、さらに快適さを得ることができ、必要とあれば、バイパスバルブの閉鎖時にピッチを制御するより積極的なタイプのピッチダンパーバルブの使用を許容する。
【0035】
車体に対する各ホイールのすべての動きの減衰は、シリンダでダンパーを用い、各ホイールラムのチャンバの少なくとも1つから最初に流出する(またそこへ流入する)流体の通過を鈍らせることで行われる。規制体(105、106、107、108)が減衰用として前方圧縮導管上に示されている。これらの規制体は流体の両方向の流れに作用し、圧縮及びリバウンド減衰を行う。しかしながら通常のシステムデザイン条件では、規制体105、106、107、108が圧縮ダンパーのみであって、圧縮方向のみで流体の流れを規制するように作用し、吸入(逆止め)バルブを並列に用いてリバウンド動作時にはキャビテーション防止のために圧縮チャンバへと流体が自由に流れるものとすることが好ましい。このときリバウンドダンパー(109、110、111、112)が必要とされ、これらは同様に単動式であるが今度はリバウンド方向の流体の流れに対してのものであり、吸入バルブを並列に用いて圧縮動作時にはリバウンドチャンバへと流体が自由に進入するものとする。
【0036】
これらのホイールダンパーバルブ(105〜112)はラムデザインに一体化してもよいし、あるいは図示のように導管に嵌めてもよい。これらは公知のどのような形態のものであってもよく、速度曲線に対して可変もしくは切替可能な力を与えるように制御可能とすることができる。
【0037】
システム導管とアキュムレータの間にさらなるダンパーバルブを使用し、主に車両のロール及びピッチ動作に対してさらなる減衰を行うことも可能である。ここでもまたこれらバルブは単純な規制体として示されているが、可変ダンパーバルブを含むいかなる公知のダンパーバルプの形態をとってもよく、快適さとハンドリングセッティングの間を切替可能とできる(あるいは切替可能なバイパスを使用し、その効果を減少もしくはなくすことが可能である)。
【0038】
圧縮ダンパーバルブ(105〜109)をホイールラム(11〜14)に一体化する場合、アキュムレータ(69〜72)及び随意のアキュムレータダンパーバルブ(113〜116)もまたホイールラムに一体化できる。
【0039】
油圧システムは一次的な支持手段ではない(すなわち、前記コイルスプリング−あるいはエア等のスプリングが車両支持の主要部である)ため、本システムの容量のすべて(先に規定した左側及び右側の前方及び後方圧縮容量、及び前方及び後方ピッチ容量)を共通のプリチャージ静圧で動作させることが可能である。すべてのシステムを同じプリチャージ静圧で動作させる利点は、システム全体においてピストンシールを挟んでの圧力差がなくなり、よってシステム間での流体漏れに起因する姿勢変化及び容量間で流体を汲み出す電動制御システムの必要もなくなる。
【0040】
必要とあらばポンプ、バルブ、位置センサを用いた電動制御システムも採用可能だが、図2は荷重配分装置ピストンの平均位置及び流体容量でのプリチャージ静圧を維持する好適な方法を示している。
【0041】
システム容量がすべて共通の圧力で動作させられ且つ(非常に制限された状態でではあるものの)相互連結されている場合、ピストンを中心位置へ偏倚する弾性装置を用いて、センサや電動調整の必要なしに、荷重配分装置でピストンの中心位置を維持することも可能である。この弾性装置は油圧システムのピッチ、ワープ、及び単一ホイールの剛性を高めるもので、よってこのことは、これらスプリングの剛性を選択する際に心に留め置かねばならない。図2にはコイルスプリングが示されているが、どのような弾性装置を用いてもよい。
【0042】
システムチャンバは規制体(145、146、147、148)を介して共通の導管又は通路151へと連結され、これはさらに圧力維持装置152へと連結されている。相互連結された前方及び後方ピッチ容量は圧力維持装置152への単一の急減衰の連結のみを必要とし、これは同じく共通の導管又は通路151へと連結された規制体149として示されている。各規制体は典型的には遮断防止のためにフィルタを両側に設けた微小なオリフィスであるが、公知のいかなる規制手段を用いてもよい。オリフィスはシステム容量内の圧力を許容範囲内に維持するのに必要な特徴をもたらす大きさに作られ、その一方で、直線走行に復帰するときに静止ロール姿勢を許容範囲内に維持するためにコーナリング中の大きな流体損失を防止する。
【0043】
圧力維持装置152は省略可能ではあるが、車両の使用温度範囲を通しての油圧システム及びそのアキュムレータにおける流体及びガスの容積変化は、一般的には何らかの補整装置を必要とするほど大きいものである。この装置の複雑さはデザイン条件及び必要とされる機能性に応じて大きく変わり得るものである。
【0044】
最も単純な形態では、圧力維持装置(152)を単純なアキュムレータとでき、これは公知のいかなる構造を有するものであってもよい(例えば、ガススプリングを有する袋タイプ(bladder-type)、ガススプリング又は機械的スプリングを有するピストンタイプ)。
【0045】
あるいは圧力維持装置(152)が流体圧力源(ポンプを備えたタンク、あるいはパワーステアリングなどの他の車両システムなど)を用いて油圧サスペンション容量の圧力を固定圧力又は可変圧力のいずれかに維持することも可能である。固定圧力を選択した場合、必要なコンポーネントは単純且つ安価で、受動的、そして機械的な部品となるが、システム温度が変化するにつれシステム剛性がわずかに変化してしまう。温度変化に対してもシステム剛性特性を一定に保つためには、システム内の圧力が温度に基づいて調節されなくてはならない。
【0046】
また油圧サスペンションシステムのロール剛性はシステム内の圧力を変化させることで調節可能であり、よって可変の圧力定値を有する圧力維持装置(152)を使用すると、圧力は車両での荷重に基づいて及び/又はドライバが操作するモード選択器又は可変選択器によって圧力を変化させることができる。
【0047】
図3は油圧サスペンションシステムの他の構成を示す。ピッチ容量を連結する通路103は除去され、各ピッチ容量は今度は通路又は導管(181、182)を介してそれぞれのアキュムレータ(183、184)へと連結される。この構成はピッチ剛性を与えるが、これはシリンダサイズと各アキュムレータにおけるガス容積によって決まる。よってピッチ剛性は非常に低く設定可能である。図1、2のものと比べてのこの構成の利点の一つは、ロールモーメント配分を設定するのに(あるいはそれに貢献するように)荷重配分装置における一次チャンバ(77、78、79、80)の直径を使用可能という点である。図1、2ではホイールラムのシリンダ(15、16、17、18)の直径が、システムのロールモーメント配分を設定可能とするのに(ホイールラムの機械的利点とともに)利用可能な主要な調節条件である。ピッチチャンバで使用される流体はほぼ圧縮できないものであるため、荷重配分装置におけるピストン(81、82、83、84)はすべて同じ直径であり、よって前後の容積は一致するものでなくてはならない(ただし以下の補注を参照のこと)。荷重配分装置におけるピストンがすべて同じ直径を有している場合、ロール中における前後ホイールラム間での50%超の典型的配分において力の変化を調和させるためには、前方シリンダ(15、16)の直径は後方シリンダ(17、18)の直径よりも大きくなくてはならない。このとき、荷重配分装置のロッドとピストンを介して圧力が調和すると、より大きい前方シリンダの直径はより大きな前方シリンダ力を生じる。しかしながら車両のロールモーメント配分が極端(80%超など)であると、前方シリンダ(15、16)の直径が後方シリンダ(17、18)の直径と比べて極端なものになる。これは前方ホイールの動きと共に大量の流体を動かして前方ホイールラムから出し入れさせ、このことが液体加速度効果による望ましからざるラム力へとつながる。これは、前方及び後方シリンダ(15、16、及び17、18)をより近似の直径となるように作ること、ならびに油圧システムのロールモーメント配分を荷重配分装置を用いて変化させることによって克服できる。図3では前方の一次チャンバ(77、78)が後方の一次チャンバ(79、80)よりも小さい直径を有するものである。これは、ロール中、調和すべき荷重配分装置のロッドとピストンに関して、前方圧縮容量の圧力は後方圧縮容量の圧力より高くなくてはならず、ロールモーメント配分において必要とされる向きを与えることを意味するものである。荷重配分装置は、油圧システムの設計ロールモーメント配分に必要とされるすべてのバイアスを与える大きさとすることが可能であり、あるいはバイアスの一部を与える大きさとし、ホイールシリンダ直径を利用して必要とされるバイアスの残りを与え、あるいはホイールシリンダを利用して必要とされるすべてのバイアスを与え、荷重配分装置は全般に同様な直径のチャンバを有するものとすることができる。
【0048】
なお図1、2の通路103にアキュムレータを使用し、2つの単動式ダンパーバルブを備え、1つをアキュムレータと前方ピッチ容量の間に配置して前方ピッチ容量から流れ出る流体を減衰し、1つをアキュムレータと後方ピッチ容量の間に配置して後方ピッチ容量から流れ出る流体を減衰することも可能である。このとき、前方一次チャンバ(77、78)と後方一次チャンバ(79、80)の間で差動穴を用いて上述のようにロールモーメント配分を調節することが可能である。
【0049】
図3に示す構成に戻れば、2つのピッチ容量とこれらの各々のアキュムレータ(183、184)の間の導管(181、182)におけるダンパーバルブによってピッチ減衰が行われる。同様にこれらのダンパーバルプも好ましくは単動式であり、各アキュムレータに関して圧縮方向に規制を加える(すなわち、これらはピッチ容量から流れ出てアキュムレータに入る流体を規制するように作用し、且つ比較的自由な流れの「吸入バルブ」を有して流体がアキュムレータから自由に流れ出てピッチ容量に戻ることを許容する。これらのバルブは公知のいかなる構造を有するものであってもよく、切替可能、もしくは可変減衰曲線をもたらすものとできる。
【0050】
図2に示す圧力維持構成は、もはや前方ピッチ容量に連通するものではないため、後方ピッチ容量へと制限された状態で連結するものへと容易且つ自明に変更可能である。あるいはピッチ容量を、右側及び左側の前方及び後方システム容量とは異なる圧力に維持することができる。このときロール剛性は4つのシステム容量における圧力を制御することで制御でき、ピッチ剛性は2つのピッチ容量における圧力を制御することで別々に制御可能である。
【0051】
ロール及び/又はピッチ剛性を変える別の方法はさらなるアキュムレータを使用することである。ロールに対しては、アキュムレータを前方2つ、後方2つ、すなわち圧縮容量4つすべてに設けることができる。ピッチに対しては、前方及び後方ピッチ容量のいずれか又は両方にさらなるアキュムレータを追加することができる。すべての場合において、アキュムレータは切替可能なロックアウトバルブを介して油圧システムに連結可能である。これはロール及び/又はピッチ剛性が高低のセッティング間を切り換わることを許容する。これらのセッティングは一般的に多目的単一セッティングの両側にあり、よってシステムは公知の手段(加速度センサ、スロットル及びブレーキセンサ、位置センサ、など)によって選択又は制御されたときに、剛性が高くなるとハンドリングと制御が良くなり、剛性が低くなると快適さが高まるものとできる。アキュムレータ全体を油圧切り替えしてシステムに含めたり外したりする代わりとしては、2つのガス容量を備えたアキュムレータ設計を採用することがあり、ここではより単純でより安価なガス切り替えバルブを使用して、2つのガス容量の間へとロックアウトバルブを切り替えて容量の1つを孤立させることによってシステムに利用可能なガス容量を変化させることができる。
【0052】
ロール及び/又はピッチ剛性を切り替えるさらに別の方法は「架橋バルブ(bridging valve)」の使用であり、これは図4に示すように、システム又はピッチ容量のうち少なくとも2つを連結するものである。
【0053】
ピッチ相互連結バルブ191は前方及び後方ピッチ容量を相互連結し、図1、2に示すようにピッチ剛性をなくすものである。このピッチ相互連結バルブ191は、最高の快適さレベルとするためにピッチ剛性及び減衰をなくす単純なロックアウトバルブであってもよく、あるいは相互連結を減衰するロックアウトバルブと直列にダンパーバルブを有するものであってもよい。あるいは被制御可変ダンパーバルプであってもよいし、受動的ダンパーバルブであってもよい。加速、ブレーキング、あるは波誘導ピッチ動作時のピッチで油圧システムが硬く且つ車両通常走行時のピッチでシステムがやわらかいこと(よって単一ホイールでの快適さを向上する)を確実にするため、ロックアウトバルブ又は可変ダンパーバルプの制御には車両条件の探知が必要である。それは縦加速度、ブレーキ又はスロットル位置に敏感な機械的又は電気的装置とすることができる。あるいは電子制御であり、縦加速度、ブレーキ又はスロットル位置を探知することの代わりに、あるいはそれに加え、あるいは選択的に、加速度計及び/又はホイール位置を利用してピッチ動作を探知するものであってもよい。
【0054】
ロール相互連結バルブ192が示され、油圧システムの2つの前方圧縮導管(61、62)を相互連結している。これは、前方圧縮容量が流体を自由に交換し(通常アキュムレータ69、70及びそのダンパーバルブ113、114に起因する)ロール剛性及び減衰をなくすのみならず、後方圧縮容量も、(あたかもワープ動作に反応するかのように)動き且つ前方圧縮導管及びロール相互連結バルブ192を介して流体を伝達する荷重配分装置のピストン及びロッド組立体(81、97、84及び82、98、83)を介して液体を交換できるため、油圧システムのロール剛性及びロール減衰を大きく減らす。後方圧縮容量からの流体に必要な流路を小さくするためには、後方圧縮導管間に同様なロール相互連結バルブを設けることができる。どちらにしろ、後方圧縮アキュムレータ71、72及びそれらのダンパーバルブ115、116に起因するロール剛性及び減衰もまた部分的又は実質的になくなる。
【0055】
ロール相互連結バルブは前方(及び/又は後方)圧縮容量間のどこに配置してもよい。例えばバルブ192が荷重配分装置(76)に組み込まれるものとされ、前方圧縮システムチャンバ89、90を相互連結するものであってもよい。
【0056】
ピッチ相互連結バルブと同様に、ロール相互結合バルブもロックアウトバルブ又は可変規制体とすることができる。制御は機械的あるいは電気的であって、横加速度又はステアリングホイール位置に敏感なものとできる。理想的には電子制御であって、ステアリング角及び/又はステアリング速度、車両速度、横加速度を探知するものである。
【0057】
図4は荷重配分装置に差異のある穴を示しているが、必要とあれば前方及び後方で同一直径の穴を使用することも可能である。
【0058】
単動式ラムは4つのホイールすべてで採用可能であるが、利用可能なロール剛性及び減衰は非常に限られたものである。ただし極端なロールモーメント配分(70%以上又はさらに広い範囲であり、車両の剛性及びジオメトリ条件次第)の場合、車両の一方の端で単動式ラムを使用することが有益である。複動式ラムはロール荷重に大きな変化を不可欠とする車両の端に保持される。単動式ラムを用いることでリバウンド導管がなくなる。理想的にはピストンをダンパーバルブとして使用して制御のために十分なリバウンド減衰を行う。
【0059】
荷重配分装置に対する油圧ラムの連結順序は図1〜4のすべてで同一である。ただし当業者にとっては自明であるが、連結順序を変えて同様な機能性を生じせしめることが可能である。連結通路101、102は合わせて移動させる必要があるであろう。例えば、システムチャンバをすべて2つの前方一次チャンバ(77、78)内の2つのピストン81、82の両側とし、ピッチチャンバを残りの2つの一次チャンバ(79、80)内のピストン83、84の両側とすることができる。あるいはシステム及びピッチチャンバの場所を図1〜4に示すレイアウトと逆にすることも可能である。
【0060】
図5は荷重配分装置に対する油圧ラムの別の連結順序を示す。図3、4において仮にピッチアキュムレータ(183、184)がきわめて硬いものとすると、油圧システムのピッチ剛性はロール剛性によって決まることになる。しかしながら通常の路上走行車のサスペンションセットアップではピッチ剛性はロール剛性よりも低く、よってピッチアキュムレータ(183、184)によってもたらされるコンプライアンスはロール剛性より低い又は最大でもロール剛性までのピッチ剛性を許容するものである。ただし空力の助けを得るレースカーなどの車両ではピッチ姿勢制御が非常に重要となり得る。この場合図5に示すように油圧システムを効果的に90度回転させることが可能である。この配置は、ヒーブ剛性が低く、ワープ剛性がゼロであり、ロール剛性がヒーブ剛性とワープ剛性の間にある状態で、高いピッチ剛性をもたらすことを油圧システムに許容するものである。
【0061】
LDUの構造は先行する図面のものと同様である。すべてのシステムチャンバ201〜204は等しい直径を有するものとして示されているが、前方(201、202)と後方(203、204)で異なる直径のシステムチャンバを用いることで油圧システムのロールモーメント配分を変化させることが可能である。左側前方システムチャンバ201は左側前方圧縮導管61に連結され、右側前方圧縮チャンバは右側前方圧縮導管に連結され、右側後方システムチャンバは右側後方圧縮導管に連結され、左側後方システムチャンバは右側後方圧縮導管に連結されている。この90度のLDUの回転は先の配置のピッチチャンバを有効に回してロールチャンバ205〜208とする。2つの左側ロールチャンバ(205、208)は通路209で相互連結され、2つの右側ロールチャンバ(206、207)は通路210で相互連結されている。2つの左側ロールチャンバはまた通路211によって左側ロールダンパーバルブ215を介して左側ロールアキュムレータ213に連結されている。同様に2つの右側ロールチャンバは通路212によって右側ロールダンパーバルブ216を介して右側ロールアキュムレータ213に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による、ロール剛性を与えロール及びピッチ減衰を行う油圧システムの第1の好適な実施の形態の概略図である、
【図2】本発明による油圧システムの第2の好適な実施の形態の配置の概略図であり、第1の配置と類似しているものの、圧力維持装置が追加されている、
【図3】本発明による油圧システムの第3の好適な実施の形態の概略図であり、ロール及びピッチモードの両方で剛性を与え減衰を行う、
【図4】本発明による油圧システムの第4の好適な実施の形態の概略図であり、ロール及びピッチ剛性及び減衰を減少させる又はなくすバルブを含んでいる、
【図5】本発明による油圧システムの第5の好適な実施の形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムであり、この車両は、車体と、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアと第2のペアとからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアは、少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの右側後方ホイール組立体とからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第2のペアは、少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの左側後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
各ホイール組立体と車体の間に少なくとも1つのホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
左側前方、右側前方、左側後方、右側後方のホイールラムの圧縮チャンバ間に相互連結された荷重配分装置を有し、この荷重配分装置は、第1及び第2のピストンロッド組立体、第1、第2、第3及び第4のシステム容量、そして第1及び第2のモード弾性容量を有し、
第1のピストンロッド組立体は、少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンを有し、この少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンの直径が第1、第2、第3及び第4の有効断面積を規定し、第2のピストンロッド組立体は、少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンを有し、この少なくとも1つのロッドと少なくとも1つのピストンの直径が第5、第6、第7及び第8の有効断面積を規定し、第1及び第2のピストンロッド組立体は荷重配分装置内に配置され、各ピストンロッド組立体は、ピストンロッド組立体の長軸を中心に回転し、長軸に沿って摺動できるものであり、
第1の有効断面積は、第1のシステム容量の可動壁を規定し、第1のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第1のシステム容量の容積が変化し、第2の有効断面積は、第2のシステム容量の可動壁を規定し、第3の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第4の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、第5の有効断面積は、第3のシステム容量の可動壁を規定し、第2のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第3のシステム容量の容積が変化し、第6の有効断面積は、第4のシステム容量の可動壁を規定し、第7の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第8の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、
第1のシステム容量は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴う第2のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、第3のシステム容量は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第4のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、
第1のモード弾性容量の容積は、第1及び第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第1及び第3のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、第2のモード弾性容量の容積は、第2及び第4のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、
第1及び第4のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の一方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、第2及び第3のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の他方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、減衰/剛性システムはこれにより実質的にゼロのワープ剛性を与え、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【請求項2】
第1、第2、第3、第4のシステム容量に連結され前記システム容量の静圧を実質的に共通の圧力に維持する圧力維持装置をさらに含む請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項3】
圧力維持装置はさらに第1及び第2のモード剛性容量に連結されモード剛性容量の静圧を実質的に同じ共通の圧力に維持する請求項2記載の減衰/剛性システム。
【請求項4】
第1のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第2のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第3のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第4のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、
第1のモード弾性容量はここで前方バンプ弾性容量であり、第2のモード弾性容量はここで後方バンプ弾性容量であり、前方及び後方バンプ弾性容量はここで減衰/剛性システムに、減衰/剛性システムのロール及びヒーブ剛性から独立したさらなるピッチ弾性を与えるものである請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項5】
第1のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第2のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第3のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第4のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、
第1のモード弾性容量はここで左側ロール弾性容量であり、第2のモード弾性容量はここで右側ロール弾性容量であり、右側及び左側ロール弾性容量はここで減衰/剛性システムに、減衰/剛性システムのピッチ及びヒーブ剛性から独立したさらなるロール弾性を与えるものである請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項6】
車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムであり、この車両は、車体と、少なくとも2つの前方ホイール組立体と2つの後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
ホイール組立体と車体の間に少なくとも2つの前方ホイールラムと2つの後方ホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
荷重配分装置を有し、これは軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1の前方システムチャンバであり、車両の第1の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第1の後方システムチャンバであり、車両の第1の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の前方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2の前方システムチャンバであり、車両の第2の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第2の後方システムチャンバであり、車両の第2の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の前方ピッチチャンバであり、
第1及び第2の前方ピッチチャンバは相互連結されて前方ピッチ容量を形成し、第1及び第2の後方ピッチチャンバは相互連結されて後方ピッチ容量を形成し、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【請求項7】
車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムであり、この車両は、車体と、少なくとも2つの前方ホイール組立体と2つの後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
ホイール組立体と車体の間に少なくとも2つの前方ホイールラムと2つの後方ホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
荷重配分装置を有し、これは軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、左側前方システムチャンバであり、車両の左側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い左側前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側前方システムチャンバであり、車両の右側にある他方の前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い右側前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の左側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、左側後方システムチャンバであり、車両の左側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い左側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側後方システムチャンバであり、車両の右側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い右側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の左側ロールチャンバであり、
第1及び第2の左側ロールチャンバは相互連結されて左側ロール容量を形成し、第1及び第2の右側ロールチャンバは相互連結されて右側ロール容量を形成し、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【請求項8】
少なくとも前記2つの前方ホイールラム又は前記2つの後方ホイールラムのホイールラムが単動式ラムである請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項9】
各単動式ホイールラムは、ラムを圧縮チャンバとリバウンドチャンバに分けるピストンが含み、減衰がラムのピストンに行われ少なくともリバウンド減衰力を与える請求項8記載の減衰/剛性システム。
【請求項10】
車両の一端のホイールラムは複動式ホイールラムであり、さらにリバウンドチャンバを含み、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている請求項8記載の減衰/剛性システム。
【請求項11】
各ホイールラムは複動式ラムであり、さらにリバウンドチャンバを含み、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項12】
少なくとも2つの前記ホイールラムの各圧縮チャンバが、それぞれアキュムレータと流体連通している先行するクレームのいずれかに記載の減衰/剛性システム。
【請求項13】
前方ピッチ容量はピッチバルブ構成を介して後方ピッチ容量に連結されている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項14】
ピッチバルブ構成は少なくとも1つのピッチダンパーバルブを含み、ピッチ減衰を行う請求項13記載の減衰/剛性システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのピッチダンパーバルブは可変ダンパーバルブである請求項14記載の減衰/剛性システム。
【請求項16】
ピッチバルブ構成はさらにバイパス通路及びバイパスバルブを含み、バイパス通路は前記少なくとも1つのピッチダンパーバルブの両側に連結され、バイパスバルブはパイパス通路内に配置されピッチ減衰が有効/無効となるように切替可能なものである請求項14記載の減衰/剛性システム。
【請求項17】
前方ピッチ容量は前方ピッチダンパーバルブを介して前方ピッチアキュムレータに連結され、後方ピッチ容量は後方ピッチダンパーバルブを介して後方ピッチアキュムレータに連結され、前方及び後方ピッチアキュムレータは減衰/剛性システムにさらなるピッチ弾性をもたらす請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項18】
前方及び後方ピッチダンパーバルブの少なくとも1つが可変ダンパーバルブである請求項17記載の減衰/剛性システム。
【請求項19】
前方ピッチ容量はピッチ剛性バルブによって後方ピッチ容量に連結されている請求項17又は18記載の減衰/剛性システム。
【請求項20】
ピッチ剛性バルブはダンパーバルブである請求項19記載の減衰/剛性システム。
【請求項21】
ピッチ剛性バルブは前方ピッチ容量を後方ピッチ容量から隔てるロックアウトバルブである請求項19記載の減衰/剛性システム。
【請求項22】
前記少なくとも2つの前方ホイールラムの圧縮チャンバを相互連結するロールバルブが設けられている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項23】
前記少なくとも2つの後方ホイールラムの圧縮チャンバを相互連結するロールバルブが設けられている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項24】
それぞれの圧力維持通路によって荷重配分装置内の二次チャンバの少なくとも4つに連結された圧力維持装置をさらに含む請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項25】
さらに各圧力維持通路にバルブを含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項26】
さらに各圧力維持通路に規制体を含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項27】
圧力維持装置は流体圧力源を含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項28】
圧力維持装置はアキュムレータを含む請求項24又は27記載の減衰/剛性システム。
【請求項29】
前記少なくとも4つの二次チャンバ内の静圧を設定圧力に調節するように圧力維持装置が制御されている請求項27記載の減衰/剛性システム。
【請求項30】
設定圧力が変更可能である請求項29記載の減衰/剛性システム。
【請求項31】
さらに圧力維持装置を含み、この圧力維持装置は第1及び第2の出力圧力を有し、第1の出力圧力は荷重配分装置の第1の前方、第2の前方、第1の後方、第2の後方システムチャンバへとそれぞれシステム圧力維持通路によって連結され、第2の出力圧力は前方ピッチ容量及び後方ピッチ容量へとそれぞれピッチ圧力維持通路によって連結されている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項32】
圧力維持装置は流体圧力源を含み、システムチャンバの圧力は第1の設定圧力へと制御され、ピッチ容量の圧力は第2の設定圧力へと制御され、第1の設定圧力は減衰/剛性システムのロール剛性をピッチ剛性とは別に変化させるために変更可能であり、第2の設定圧力は減衰/剛性システムのピッチ剛性を変化させるために変更可能である請求項31記載の減衰/剛性システム。
【請求項33】
さらに弾性センタリング装置を有し、荷重配分装置のピストン/ロッド組立体にセンタリング力を与えてピストン/ロッド組立体をストローク中間位置に向けて偏倚する先行するクレームのいずれかに記載の減衰/剛性システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の車両サスペンションシステム用の減衰/剛性システムであり、この車両は、車体と、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアと第2のペアとからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第1のペアは、少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの右側後方ホイール組立体とからなり、対角方向に離間したホイール組立体の第2のペアは、少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と、少なくとも1つの左側後方ホイール組立体とからなり、車両サスペンションシステムはさらに、ホイール組立体の上方に車両を弾性的に支持するために、車体とホイール組立体の間に前方及び後方車両弾性支持手段を有し、減衰/剛性システムは、
各ホイール組立体と車体の間に少なくとも1つのホイールラムを有し、各ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、
左側前方、右側前方、左側後方、右側後方のホイールラムの圧縮チャンバ間に相互連結された荷重配分装置を有し、この荷重配分装置は、第1及び第2のピストンロッド組立体、第1、第2、第3及び第4のシステム容量、そして第1及び第2のモード弾性容量を有し、
第1のピストンロッド組立体は第1、第2、第3及び第4の有効断面積を規定し、第2のピストンロッド組立体は第5、第6、第7及び第8の有効断面積を規定し、第1及び第2のピストンロッド組立体は荷重配分装置内に配置され、各ピストンロッド組立体は、ピストンロッド組立体の長軸を中心に回転し、長軸に沿って摺動できるものであり、
第1の有効断面積は、第1のシステム容量の可動壁を規定し、第1のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第1のシステム容量の容積が変化し、第2の有効断面積は、第2のシステム容量の可動壁を規定し、第3の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第4の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、第5の有効断面積は、第3のシステム容量の可動壁を規定し、第2のピストンロッド組立体がその長軸に沿って摺動するにつれ第3のシステム容量の容積が変化し、第6の有効断面積は、第4のシステム容量の可動壁を規定し、第7の有効断面積は、第1のモード弾性容量の可動壁を規定し、第8の有効断面積は、第2のモード弾性容量の可動壁を規定し、
第1のシステム容量は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴う第2のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、第3のシステム容量は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第4のシステム容量の容積の減少に比例して容積が増加し、
第1のモード弾性容量の容積は、第1及び第2のピストンロッド組立体の運動に伴う第1及び第3のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、第2のモード弾性容量の容積は、第2及び第4のシステム容量の容積の増加に比例して減少し、
第1及び第4のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の一方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、第2及び第3のシステム容量は、対角方向に離間したホイール組立体の他方のペアと関連したホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、減衰/剛性システムはこれにより実質的にゼロのワープ剛性を与え、
ここで車両は主として車両弾性支持手段によって支持されているものである。
【請求項2】
第1、第2、第3、第4のシステム容量に連結され前記システム容量の静圧を実質的に共通の圧力に維持する圧力維持装置をさらに含む請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項3】
圧力維持装置はさらに第1及び第2のモード剛性容量に連結されモード弾性容量の静圧を実質的に同じ共通の圧力に維持する請求項2記載の減衰/剛性システム。
【請求項4】
第1のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第2のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第3のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第4のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、
第1のモード弾性容量はここで前方バンプ弾性容量であり、第2のモード弾性容量はここで後方バンプ弾性容量であり、前方及び後方バンプ弾性容量はここで減衰/剛性システムに、減衰/剛性システムのロール及びヒーブ剛性から独立したさらなるピッチ弾性を与えるものである請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項5】
第1のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第2のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側前方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第3のシステム容量は、前記少なくとも1つの左側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、第4のシステム容量は、前記少なくとも1つの右側後方ホイール組立体と関連する前記少なくとも1つのホイールラムの圧縮チャンバに連結され、
第1のモード弾性容量はここで左側ロール弾性容量であり、第2のモード弾性容量はここで右側ロール弾性容量であり、右側及び左側ロール弾性容量はここで減衰/剛性システムに、減衰/剛性システムのピッチ及びヒーブ剛性から独立したさらなるロール弾性を与えるものである請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項6】
荷重配分装置が、軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1の前方システムチャンバであり、車両の第1の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第1の後方システムチャンバであり、車両の第1の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い第1の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の前方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2の前方システムチャンバであり、車両の第2の側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の後方ピッチチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する第2の後方システムチャンバであり、車両の第2の側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の前方ピッチチャンバであり、
第1及び第2の前方ピッチチャンバは相互連結されて前方ピッチ容量を形成し、第1及び第2の後方ピッチチャンバは相互連結されて後方ピッチ容量を形成する請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項7】
荷重配分装置が、軸方向に整列された一次チャンバの第1のペア及び軸方向に整列された一次チャンバの第2のペアを有し、各一次チャンバは、各一次チャンバを2つの二次チャンバに分離するピストンと、2つの第1の一次チャンバのピストンどうしを連結し第1のピストンロッド組立体を形成する第1のロッドと、2つの第2の一次チャンバのピストンどうしを連結し第2のピストンロッド組立体を形成する第2のロッドとを有し、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、左側前方システムチャンバであり、車両の左側にある前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの1つは、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い左側前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側前方システムチャンバであり、車両の右側にある他方の前方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第1のペアにおける二次チャンバの他方は、第1のピストンロッド組立体の運動に伴い右側前方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第1の左側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、左側後方システムチャンバであり、車両の左側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い左側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の右側ロールチャンバであり、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの1つは、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い第2の前方システムチャンバと逆方向に容積が変化する右側後方システムチャンバであり、車両の右側にある後方ホイールラムの圧縮チャンバへと連結され、
一次チャンバの第2のペアにおける二次チャンバの他方は、第2のピストンロッド組立体の運動に伴い右側後方システムチャンバと同じ方向に容積が変化する第2の左側ロールチャンバであり、
第1及び第2の左側ロールチャンバは相互連結されて左側ロール容量を形成し、第1及び第2の右側ロールチャンバは相互連結されて右側ロール容量を形成する請求項1記載の減衰/剛性システム。
【請求項8】
少なくとも前記2つの前方ホイールラム又は前記2つの後方ホイールラムのホイールラムが単動式ラムである請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項9】
各単動式ホイールラムは、ラムを圧縮チャンバとリバウンドチャンバに分けるピストンが含み、減衰がラムのピストンに行われ少なくともリバウンド減衰力を与える請求項8記載の減衰/剛性システム。
【請求項10】
車両の一端のホイールラムは複動式ホイールラムであり、さらにリバウンドチャンバを含み、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている請求項8記載の減衰/剛性システム。
【請求項11】
各ホイールラムは複動式ラムであり、さらにリバウンドチャンバを含み、各複動式ホイールラムのリバウンドチャンバは対角方向に対向するホイールラムの圧縮チャンバに連結されている請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項12】
少なくとも2つの前記ホイールラムの各圧縮チャンバが、それぞれアキュムレータと流体連通している先行するクレームのいずれかに記載の減衰/剛性システム。
【請求項13】
前方ピッチ容量はピッチバルブ構成を介して後方ピッチ容量に連結されている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項14】
ピッチバルブ構成は少なくとも1つのピッチダンパーバルブを含み、ピッチ減衰を行う請求項13記載の減衰/剛性システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのピッチダンパーバルブは可変ダンパーバルブである請求項14記載の減衰/剛性システム。
【請求項16】
ピッチバルブ構成はさらにバイパス通路及びバイパスバルブを含み、バイパス通路は前記少なくとも1つのピッチダンパーバルブの両側に連結され、バイパスバルブはパイパス通路内に配置されピッチ減衰が有効/無効となるように切替可能なものである請求項14記載の減衰/剛性システム。
【請求項17】
前方ピッチ容量は前方ピッチダンパーバルブを介して前方ピッチアキュムレータに連結され、後方ピッチ容量は後方ピッチダンパーバルブを介して後方ピッチアキュムレータに連結され、前方及び後方ピッチアキュムレータは減衰/剛性システムにさらなるピッチ弾性をもたらす請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項18】
前方及び後方ピッチダンパーバルブの少なくとも1つが可変ダンパーバルブである請求項17記載の減衰/剛性システム。
【請求項19】
前方ピッチ容量はピッチ剛性バルブによって後方ピッチ容量に連結されている請求項17又は18記載の減衰/剛性システム。
【請求項20】
ピッチ剛性バルブはダンパーバルブである請求項19記載の減衰/剛性システム。
【請求項21】
ピッチ剛性バルブは前方ピッチ容量を後方ピッチ容量から隔てるロックアウトバルブである請求項19記載の減衰/剛性システム。
【請求項22】
前記少なくとも2つの前方ホイールラムの圧縮チャンバを相互連結するロールバルブが設けられている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項23】
前記少なくとも2つの後方ホイールラムの圧縮チャンバを相互連結するロールバルブが設けられている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項24】
それぞれの圧力維持通路によって荷重配分装置内の二次チャンバの少なくとも4つに連結された圧力維持装置をさらに含む請求項6又は7記載の減衰/剛性システム。
【請求項25】
さらに各圧力維持通路にバルブを含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項26】
さらに各圧力維持通路に規制体を含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項27】
圧力維持装置は流体圧力源を含む請求項24記載の減衰/剛性システム。
【請求項28】
圧力維持装置はアキュムレータを含む請求項24又は27記載の減衰/剛性システム。
【請求項29】
前記少なくとも4つの二次チャンバ内の静圧を設定圧力に調節するように圧力維持装置が制御されている請求項27記載の減衰/剛性システム。
【請求項30】
設定圧力が変更可能である請求項29記載の減衰/剛性システム。
【請求項31】
さらに圧力維持装置を含み、この圧力維持装置は第1及び第2の出力圧力を有し、第1の出力圧力は荷重配分装置の第1の前方、第2の前方、第1の後方、第2の後方システムチャンバへとそれぞれシステム圧力維持通路によって連結され、第2の出力圧力は前方ピッチ容量及び後方ピッチ容量へとそれぞれピッチ圧力維持通路によって連結されている請求項6記載の減衰/剛性システム。
【請求項32】
圧力維持装置は流体圧力源を含み、システムチャンバの圧力は第1の設定圧力へと制御され、ピッチ容量の圧力は第2の設定圧力へと制御され、第1の設定圧力は減衰/剛性システムのロール剛性をピッチ剛性とは別に変化させるために変更可能であり、第2の設定圧力は減衰/剛性システムのピッチ剛性を変化させるために変更可能である請求項31記載の減衰/剛性システム。
【請求項33】
さらに弾性センタリング装置を有し、荷重配分装置のピストン/ロッド組立体にセンタリング力を与えてピストン/ロッド組立体をストローク中間位置に向けて偏倚する先行するクレームのいずれかに記載の減衰/剛性システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−508853(P2006−508853A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557658(P2004−557658)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001637
【国際公開番号】WO2004/052667
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505208695)キネティック ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】