説明

油圧ショベル及び三点支持取付装置

【課題】農機用アタッチメントを下部走行体に取り付けることができ、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを提供する。
【解決手段】無限軌道履帯1Lを備えた下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に設けた上部旋回体3と、この上部旋回体3に俯仰可能に設けた多関節型の作業機5とを備えた油圧ショベルにおいて、下部走行体2に配置され、農機用アタッチメント(例えば耕耘機18、草刈機48、除雪機50等)を三点支持で取付けるための三点支持取付手段(例えばアッパリンク29及びロアリンク30L)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルに係わり、特に、農機用アタッチメントを下部走行体に取付可能とする油圧ショベル及び三点支持取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に油圧ショベルは、左右の無限軌道履帯(クローラ)を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けられブーム、アーム、及びバケットからなる多関節型の作業機(作業装置)と、下部走行体の前方側に回動可能に設けた排土板とを備えている(例えば、特許文献1参照)。下部走行体を構成するトラックフレームの前方側には、左右方向中央に配置された第1ブラケットと、この第1ブラケットを中心に対称配置された左右の第2ブラケットとが設けられている。そして、第2ブラケットには、排土板の支持アーム(ステー)が回動可能にそれぞれ結合され、第1ブラケットと排土板との間には、排土板を駆動するための油圧シリンダ(昇降シリンダ)が接続されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−339387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記油圧ショベルにおいては、多機能化を図るため、バケットに代えて作業機に取り付けるものとして、例えばブレーカ、グラップル、及び圧砕機等といった様々な作業アタッチメントが知られている。ところで、トラクター等の農業機械においても、例えば耕耘機、草刈機、除雪機といった様々な農機用アタッチメントが知られている。そこで、更なる多機能化を図るため、油圧ショベルの下部走行体に農機用アタッチメントを取り付けたいという要望があった。しかしながら、農機用アタッチメントは、三点支持で取り付ける構造となっており、その取付位置寸法が規格化されている。そのため、上記トラックフレームのブラケットから排土板を取り外し、農機用アタッチメントを取り付けることは容易でなかった。
【0005】
本発明の目的は、農機用アタッチメントを下部走行体に取り付けることができ、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、無限軌道履帯を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機とを備えた油圧ショベルにおいて、前記下部走行体に配置され、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるための三点支持取付手段を備える。
【0007】
本発明の油圧ショベルにおいては、下部走行体に配置され農機アタッチメントを三点支持で取付るための三点支持取付手段(例えばアッパリンク及び左右のロアリンク)を備えており、この三点支持取付手段で農機用アタッチメント(言い換えれば、トラクター等の農業機械に三点支持で取付け可能なアタッチメント)を取付ける。これにより、上部旋回体の旋回範囲における作業機による作業と下部走行体の走行範囲における農機用アタッチメントによる作業とを行うことができる。すなわち、例えば農機用アタッチメントとして耕耘機を取付けて耕耘作業を行う場合、上部旋回体の旋回範囲にある圃場の領域を作業機によって粗起こしし、下部走行体の走行範囲にある圃場の領域を耕耘機によって耕すことができる。また、例えば農機用アタッチメントとして草刈機を取付けて草刈作業を行う場合は、上部旋回体の旋回範囲にある背の高い草木を作業機によってなぎ倒しつつ、下部走行体の走行範囲にある背の低い草木を草刈機によって切断することができる。また、例えば農機用アタッチメントとして除雪機を取付けて除雪作業を行う場合、上部旋回体の旋回範囲にある積雪を作業機によって掻き寄せつつ、下部走行体の走行範囲にある積雪を除雪機によって除雪することができる。したがって、本発明においては、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを実現することができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するために、また本発明は、無限軌道履帯を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機とを備えた油圧ショベルにおいて、前記下部走行体にそれぞれ回動可能に設けられ、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、前記左右のロアリンクをそれぞれ支持する左右のリフト機構と、前記左右のロアリンクを回動させる油圧シリンダと、前記下部走行体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備える。
【0009】
(3)上記目的を達成するために、また本発明は、無限軌道履帯を備えた下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機と、前記下部走行体のブラケットに着脱可能な排土板とを備えた油圧ショベルにおいて、前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに取付けられ、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるための三点支持取付装置とを備える。
【0010】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記三点支持取付装置は、前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに回動可能に取付け可能な左右のフレームアームと、前記左右のフレームアームと一体構成されるとともに、前記下部走行体に回動可能に設けた油圧シリンダの先端部に接続可能なフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられ前記農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、前記フレーム本体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備える。
【0011】
(5)上記目的を達成するために、また本発明は、無限軌道履帯を備えた下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機と、前記下部走行体のブラケットに着脱可能な排土板とを備えた油圧ショベルに備えられる三点支持取付装置であって、前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに回動可能に取付可能な左右のフレームアームと、前記左右のフレームアームと一体構成されるとともに、前記下部走行体に回動可能に設けた油圧シリンダの先端部に接続可能なフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられ農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、前記フレーム本体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、農機用アタッチメントを下部走行体に取り付けることができ、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の油圧ショベルの一実施形態の全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして耕耘機を取付けた状態を表す。なお、以降、油圧ショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0014】
この図1において、油圧ショベルは、左右の無限軌道履帯(クローラ)1L,1R(但し図1中1Lのみ図示)を備えた下部走行体2と、この下部走行体2の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3の基礎下部構造をなす旋回フレーム4に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)取り付けられた多関節型の作業機(フロント装置)5と、旋回フレーム4上に設けられた例えばキャブタイプの運転室6と、旋回フレーム4上の運転室6以外の大部分を覆う上部カバー7とを備えている。
【0015】
作業機5は、旋回フレーム4に上下方向に回動可能に結合されたロアブーム8と、このロアブーム8の先端部に左右方向に回動可能に結合されたアッパブーム9と、このアッパブーム9の先端部に左右方向に回動可能に接続されたアームシリンダブラケット10と、このアームシリンダブラケット10の先端部に上下方向に回動可能に結合されたアーム11と、このアーム11の先端部に上下方向に回動可能に結合されたバケット12と、ロアブーム8及びアームシリンダブラケット10を連結するステー13と、ロアブーム8を駆動するブーム用油圧シリンダ14と、アッパブーム9とともにロアブーム8に左右方向に回動可能に接続されアッパブーム9を駆動するオフセット用油圧シリンダ15と、アーム11を駆動するアーム用油圧シリンダ16と、バケット12を駆動するバケット用油圧シリンダ17とを備えている。
【0016】
このように構成された作業機5は、オフセット用油圧シリンダ15が伸張すると、ステー13によりアームシリンダブラケット10が常に油圧ショベルの前方を向いたままの状態でアッパブーム9が旋回するようになっている。つまり、アームシリンダブラケット10、アーム11、及びバケット12を前方に向けた状態でアッパブーム13を左右方向に旋回するようになっている。
【0017】
そして、本実施形態の大きな特徴として、下部走行体2は、耕耘機18の農機用アタッチメント(言い換えれば、トラクター等の農業機械に三点支持で取付け可能なアタッチメント)を三点支持で取付可能な構造となっている。このような下部走行体2の構造の詳細について以下に説明する。
【0018】
図2は、上記下部走行体2を構成するトラックフレームの構造を表す側面図である。また、図3は、上記耕耘機18の取付構造を表す部分拡大斜視図である(なお、便宜上、作業機5が下部走行体2の後方側に配置されるように上部旋回体3が旋回した状態を示す)。
【0019】
これら図2及び図3、前述の図1において、略H字形状のトラックフレーム19は、大別して、センターフレーム20と、このセンターフレーム20の左右両側に設けられ、前後方向に延びた左右のサイドフレーム21L,21R(但し図2中21Lのみ図示)とで構成されている。左右のサイドフレーム21L,21Rの後端には回転可能に支持された左右の駆動輪22L,22R(但し図1中22Lのみ図示)が設けられ、これら駆動輪22L,22Rをそれぞれ駆動する左右の走行用油圧モータ23L,23R(但し図1中23Lのみ図示)が設けられている。また、左右のサイドフレーム21L,21Rの前端には回転可能に支持され、履帯1L,1Rを介し駆動輪22L,22Rの駆動力でそれぞれ回転される左右の従動輪(アイドラ)24L,24R(但し図1中24Lのみ図示)が設けられている。
【0020】
センタフレーム20の中央部には、略円筒状の丸胴25が立設され、この丸胴25と旋回フレーム4との間には、旋回用油圧モータ(図示せず)を内蔵した旋回装置(図示せず)が設けられ、この旋回装置によって旋回フレーム4がセンタフレーム20に対し旋回されるようになっている。
【0021】
センタフレーム20の丸胴25の中心部には、センタジョイント(図示せず)が設けられている。このセンタジョイントは、詳細は図示しないが、上部旋回体3側の油圧ポンプやコントロールバルブ、また下部走行体2側の油圧アクチュエータ(詳細には、上記走行用油圧モータ23L,23R、後述するリフト用油圧シリンダ33L,33R及びアタッチメント用油圧モータ36等)が油圧ホース等を介しそれぞれ接続されている。そして、上記運転室6内に設けられた操作手段(例えば操作レバーや操作ペダル等、図示せず)の操作に応じて、コントロールバルブが油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御し、油圧アクチュエータが駆動するようになっている。
【0022】
センターフレーム20の前方側には、左右方向中央に配置された第1ブラケット26と、この第1ブラケット26を中心に対称配置された左右の第2ブラケット27L,27R(但し図2及び図3中27Lのみ図示)及び第3ブラケット28L,28Rとが設けられている。第1ブラケット26にはアッパリンク29が回動可能に結合され、第2ブラケット27L,27Rには左右のロアリンク30L,30Rが回動可能にそれぞれ結合されている。第3のブラケット28L,28Rには左右のリフトアーム31L,31Rが回動可能に結合され、これらリフトアーム31L,31Rの先端部には左右のリフトロッド32L,32R(但し図2及び図3中32Lのみ図示)が回動可能にそれぞれ接続され、これらリフトロッド32L,32Rの先端部はロアリンク28L,28Rに回動可能にそれぞれ連結されており、それらリフトアーム31L,31R及びリフトロッド32L,32Rによって左右のリフト機構がそれぞれ構成されている。
【0023】
アッパリンク29及びロアリンク30L,30Rの先端部には、それぞれ取付穴29a,30La,30Ra(但し図2中30Raは図示せず)が形成されており、これら取付穴29a,30La,30Raにピン等(図示せず)を介し耕耘機18が取り付けられる。なお、アッパリンク26及びリフトロッド32L,32Rは、それぞれ長さ調整可能なターンバックルで構成されており、これによって耕耘機18の取付位置を調整可能としている。
【0024】
また、リフトアーム31L,31Rは、例えば左右方向に延びた連結軸(図示せず)を介し互いに連結されており、第2ブラケット27L,27Rとの間にそれぞれ設けた左右のリフト用油圧シリンダ33L,33Rの伸縮駆動によって回動するようになっている。その結果、ロアリンク30L,30R(及びそれに伴ってアッパリンク29)が回動し、耕耘機18の姿勢を変更するようになっている。
【0025】
また、センターフレーム20の第1ブラケット26の下方側(図2中下側)には、耕耘機18のロータリ回転駆動機構34(図3参照)をドライブシャフト(ユニバーサルドライブシャフト)35を介し接続可能な出力軸(動力取出軸)36aを有するアタッチメント用油圧モータ36が設けられている。
【0026】
以上のように構成された本実施形態においては、耕耘機18等の農機用アタッチメント(例えば後述する草刈機や除雪機等)を下部走行体2に取り付けることができ、農機用アタッチメントによる作業を行うことができる。このような本実施形態の動作及び作用効果を以下に説明する。
【0027】
(1)耕耘機
前述の図1に示す耕耘機18は、耕耘爪(図示せず)を備えたロータリ37を回転駆動させて耕耘するものである。この耕耘機18をアッパリンク26及び左右のロアリンク28L,28Rを介し三点支持で取り付け、耕耘機18のロータリ回転駆動機構34をアタッチメント用油圧モータ36の出力軸36aに接続する。そして、例えば運転者が運転室6内の操作手段を操作して油圧ショベルを後進させつつアタッチメント用油圧モータ36を駆動させると、耕耘機18のロータリ37がロータリ回転駆動機構34を介し駆動し、下部走行体2の走行範囲にある圃場の領域を耕耘機18によって耕すことができる。また、例えば運転者が運転室6内の操作手段を操作して上部旋回体3を旋回させ作業機5を駆動することにより、旋回範囲にある圃場の領域を作業機5のバケットによって粗起こしすることができる。特に、圃場の形状によっては油圧ショベルを切り返して位置合わせしないと耕耘機18による作業を行えない領域が生じる場合があり、このような領域を作業機5によって作業することができるので、作業性が向上する。
【0028】
(2)草刈機(モア)
図4に示す草刈機38は、刈り刃を備えたロータリ39を回転駆動させて草木を破砕するものである。この草刈機38をアッパリンク26及び左右のロアリンク28L,28Rを介し三点支持で取付け、草刈機38のロータリ回転駆動機構(図示せず)をアタッチメント用油圧モータ36の出力軸36aに接続する。そして、例えば運転者が運転室6内の操作手段を操作して油圧ショベルを前進させつつアタッチメント用油圧モータ36を駆動させると、草刈機38のロータリ39がロータリ回転駆動機構を介し駆動し、走行範囲にある草木を破砕することができる。ところで、草刈機38の切断対象である草木の高さにはいくらか制限がある。そこで、例えば運転者は運転室6内の操作手段を操作して旋回体3を旋回させ作業機5を駆動し、旋回範囲内にある草木をなぎ倒してから、草刈機38による切断作業を行うことができる。したがって、作業性が向上する。
【0029】
(3)除雪機
図5に示す除雪機(スノーブロア)40は、オーガ(かきこみ刃)41を回転させて雪を破砕し、その破砕した雪をブロワ(図示せず)によってシュータ42から吹き飛ばすものである。この除雪機40をアッパリンク26及びロアリンク28L,28Rを介し三点支持で取り付け、除雪機18の回転駆動機構(詳細には、オーガ41及びブロアに回転動力を分配する回転駆動機構)をアタッチメント用油圧モータ36の出力軸36aに接続する。そして、例えば運転者が運転室6内の操作手段を操作して油圧ショベルを前進させつつアタッチメント用油圧モータ36を駆動させると、除雪機40のオーガ41及びブロアが回転駆動機構を介し駆動し、走行範囲にある積雪を除雪することができる。また、例えば運転者が運転室5内の操作手段を操作して上部旋回体3を旋回させ作業機5を駆動し、作業機5のバケットによって旋回範囲にある積雪を除雪機の近傍まで掻き寄せてから、除雪機による除雪作業を行うことができる。したがって、作業性が向上する。
【0030】
以上のように本実施形態においては、下部走行体2にアッパリンク26及び、ロアリンク28L,28Rを介し三点支持で農機用アタッチメント(例えば耕耘機、草刈機、除雪機等)を取付けることができる。これにより、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを実現することができる。
【0031】
なお、農機用アタッチメントとしては、上記した耕耘機18、草刈機38、及び除雪機40に限られない。すなわち、例えば回転駆動機構を有しない農機用アタッチメントとして排土板等を取り付けてもよく、この場合も上記同様の効果を得ることができる。
【0032】
なお、上記第1の実施形態においては、トラックフレーム19の前方側にアッパリンク29及びロアリンク30L,30Rを回動可能に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばトラックフレーム19の後方側にアッパリンク29及びロアリンク30L,30Rを回動可能に設けてもよいし、その場合にはトラックフレーム19の前方側に排土板を設けてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0033】
本発明の第2の実施形態を図6〜図11により説明する。本実施形態は、下部走行体に着脱可能な排土板を備えた油圧ショベルにおいて、排土板に代えて農機用アタッチメントを取付可能とした実施形態である。なお、上記第1の実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0034】
図6は、本発明の適用対象である下部走行体に着脱可能な排土板を備えた油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、図7は、排土板が取り付けられたトラックフレームの構造を表す側面図である。
【0035】
これら図6及び図7において、略H字形状のトラックフレーム19’は、上記一実施形態同様、大別して、センターフレーム20’と、このセンターフレーム20の左右両側に設けられ、前後方向に延びた左右のサイドフレーム21L,21R(但し図7中21Lのみ図示)とで構成されている。
【0036】
センターフレーム20’の前方側には、左右方向中央に配置された第1ブラケット43と、この第1ブラケット43を中心に対称配置された左右の第2ブラケット44L,44R(但し図7中44Lのみ図示)とが設けられている。第2ブラケット44L,44Rには、排土板45の支持アーム46L,46R(但し図6及び図7中46Lのみ図示)が回動可能にそれぞれ結合され、第1ブラケット26と排土板45との間には、排土板を駆動するための油圧シリンダ47が接続されている。
【0037】
そして、本実施形態では、排土板45の支持アーム46L,46Rを取り外した状態で、トラックフレーム19’の第2ブラケット44L,44Rに三点支持取付装置48(後述の図8〜図11参照)を取り付け、この三点支持取付装置48に農機用アタッチメント(例えば、上記耕耘機18、草刈機38、及び除雪機40等)を三点支持で取り付けている。その詳細を以下に説明する。
【0038】
図8は、本実施形態による油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして耕耘機18を取付けた状態を表す。また、図9は、三点支持取付装置48が取り付けられたトラックフレーム19’の構造を表す側面図である。図10は、三点支持取付装置48の詳細構造を表す側面図であり、図11は、図10中矢印XI方向から見た三点支持取付装置48の上面図である。
【0039】
これら図8〜図11において、三点支持取付装置48は、排土板45の支持アーム46L,46Rを取り外した状態で、トラックフレーム19’の第2ブラケット46L,46Rに回動可能に取付可能な左右のフレームアーム49L,49Rと、これらフレームアーム49L,49Rと一体構成され、上記油圧シリンダ47の先端部に接続可能なフレーム本体50とを備えている。そして、油圧シリンダ47の伸縮駆動により三点支持取付装置48が回動するようになっている。なお、フレームアーム49L,49Rは、フレームアーム49L,49R間の寸法が後方側から前方側に向けて縮小するように、湾曲形成されている。
【0040】
フレーム本体50の前方側には、左右方向中央に配置されたアッパリンク51と、このアッパリンクを中心として対称配置された左右のロアリンク52L,52R及びリフトロッド53L,53Rとがそれぞれ回動可能に設けられている。アッパリンク51及びロアリンク52L,52Rの先端部には、それぞれ取付穴51a,52La,52Ra(但し図9〜11中52Raは図示せず)が形成されており、これら取付穴51a,52La,52Raにピン等(図示せず)を介し耕耘機18が取り付けられる。
【0041】
アッパリンク51は、長さ調整可能なターンバックルで構成されている。リフトロッド53L,53Rは、長さ調整可能なターンバックルで構成されており、それら先端部がロアリンク52L,52Rにそれぞれ連結されている。また、フレームアーム49L,49Rの両外側にはサイドフレーム54L,54Rがそれぞれ設けられ、これらサイドフレーム54L,54Rとロアリンク52L,52Rとの間には、長さ調整可能なテンションリンク55L,55Rがそれぞれ設けられている。なお、リフトロッド53L,53R及びテンションリンク55L,55Rは、ロアリンク52L,52Rをそれぞれ支持する左右のリフト機構を構成されている。そして、アッパリンク51、リフトロッド53L,53R、及びテンションリンク55L,55Rの長さを調整することにより、耕耘機18の取り付け位置を調整可能としている。
【0042】
また、フレーム本体50には、アッパリンク51の下方側(図2中下側)に配置され、耕耘機18のロータリ回転駆動機構34(前述の図3参照)をドライブシャフト35を介し接続可能な出力軸(図示せず)を有するアタッチメント用油圧モータ56が設けられている。なお、アタッチメント用油圧モータ56及び油圧シリンダ47は、詳細を図示しないが、油圧ホース及びセンタジョイント等を介し上部旋回体3側のコントロールバルブ及びポンプに接続されており、運転室6内に設けられた操作手段の操作に応じてコントロールバルブが制御されて駆動するようになっている。
【0043】
以上のように構成された本実施形態においては、下部走行体2から排土板を取り外し、これに代えて三点支持取付装置48を取り付け、この三点支持取付装置48に農機用アタッチメント(例えば、上記耕耘機18、草刈機38、及び除雪機40等)を取り付けることができる。したがって、上記第1の実施形態同様、作業性が向上する多機能な油圧ショベルを実現することができる。また、本実施形態においては、下部走行体2に着脱可能な排土板45を備えた油圧ショベルに適用することができるため、使い勝手がよく、コスト低減を図ることができる。
【0044】
なお、上記第2の実施形態においては、左右のリフトロッド53L,53Rは、長さ調整可能なターンバックルで構成する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば左右のリフトロッド53L,53Rの一方若しくは両方を、油圧シリンダで構成してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上記第2の実施形態においては、排土板45を取り外した状態で、排土板45に接続されていた油圧シリンダ47と三点支持取付装置48とを接続する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば油圧シリンダ47を三点支持取付装置48用の油圧シリンダに交換し、その油圧シリンダと三点支持取付装置48とを接続してもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の油圧ショベルの第1の実施形態の全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして耕耘機を取付けた状態を表す。
【図2】本発明の油圧ショベルの第1の実施形態を構成するトラックフレームの詳細構造を表す側面図である。
【図3】本発明の油圧ショベルの第1の実施形態における耕耘機の取付構造を表す部分拡大斜視図である。
【図4】本発明の油圧ショベルの第1の実施形態の全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして草刈機を取付状けた態を表す。
【図5】本発明の油圧ショベルの第1の実施形態の全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして除雪機を取付けた状態を表す。
【図6】本発明の適用対象である油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、排土板を取付けた状態を表す
【図7】本発明の適用対称である油圧ショベルを構成するトラックフレームの詳細構造を表す側面図であり、排土板を取付けた状態を表す。
【図8】本発明の油圧ショベルの第2の実施形態の全体構造を表す側面図であり、農機用アタッチメントとして耕耘機を取り付けた状態を表す。
【図9】本発明の油圧ショベルの第2の実施形態を構成するトラックフレームの詳細構造を表す側面図であり、農機用アタッチメント取付装置を取付けた状態を表す。
【図10】本発明の油圧ショベルの第2の実施形態を構成する農機用アタッチメント取付装置の詳細構造を表す側面図である。
【図11】本発明の油圧ショベルの第2の実施形態を構成する農機用アタッチメント取付装置の詳細構造を表す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1L,1R 無限軌道履帯
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 作業機
18 耕耘機(農機用アタッチメント)
29 アッパリンク
30L,30R ロアリンク
31L,31R リフトアーム(リフト機構)
32L.32R リフトロッド(リフト機構)
33L,33R リフト用油圧シリンダ
34 ロータリ回転駆動機構
36 アタッチメント用油圧モータ
36a 出力軸
38 草刈機(農機用アタッチメント)
40 除雪機(農機用アタッチメント)
44L,44R 第2ブラケット
45 排土板
47 油圧シリンダ
48 三点支持取付装置
51 アッパリンク
52L,52R ロアリンク
56 アタッチメント用油圧モータ
56a 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限軌道履帯を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機とを備えた油圧ショベルにおいて、
前記下部走行体に配置され、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるための三点支持取付手段を備えたことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
無限軌道履帯を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機とを備えた油圧ショベルにおいて、
前記下部走行体にそれぞれ回動可能に設けられ、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、
前記左右のロアリンクをそれぞれ支持する左右のリフト機構と、
前記左右のロアリンクを回動させる油圧シリンダと、
前記下部走行体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備えたことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項3】
無限軌道履帯を備えた下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機と、前記下部走行体のブラケットに着脱可能な排土板とを備えた油圧ショベルにおいて、
前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに取付けられ、農機用アタッチメントを三点支持で取付けるための三点支持取付装置とを備えたことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項4】
請求項3記載の油圧ショベルにおいて、前記三点支持取付装置は、前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに回動可能に取付け可能な左右のフレームアームと、前記左右のフレームアームと一体構成されるとともに、前記下部走行体に回動可能に設けた油圧シリンダの先端部に接続可能なフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられ前記農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、前記フレーム本体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備えたことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項5】
無限軌道履帯を備えた下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた多関節型の作業機と、前記下部走行体のブラケットに着脱可能な排土板とを備えた油圧ショベルに備えられる三点支持取付装置であって、
前記排土板を取り外した状態で前記下部走行体のブラケットに回動可能に取付可能な左右のフレームアームと、前記左右のフレームアームと一体構成されるとともに、前記下部走行体に回動可能に設けた油圧シリンダの先端部に接続可能なフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられ農機用アタッチメントを三点支持で取付けるためのアッパリンク及び左右のロアリンクと、前記フレーム本体に設けられ、前記農機用アタッチメントの回転駆動機構に接続するための出力軸を有する油圧モータとを備えたことを特徴とする三点支持取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−278044(P2007−278044A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109570(P2006−109570)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】