説明

油圧ポンプ・モータ

【課題】シリンダブロックの振れ回りに拘わらず、精度よくシリンダブロックの回転数を検出することができる油圧ポンプ・モータを提供すること。
【解決手段】本発明の油圧ポンプ・モータは、シリンダブロック14の外周面に形成された被検出部52と、この被検出部52に対向して配置され、被検出部52を検出する検出部51を備えた回転センサ50とを有する。回転センサ50の検出部51は、回転軸13の軸心13aに直交する斜板17の摺動面S上の線と軸心13aとの両方を含む面内に配置される。上記構成とすることで、シリンダブロック14の振れ回りに拘わらず、検出部51と被検出部52との間の距離はほぼ一定に保たれることになり、シリンダブロックの回転数の検出精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転センサを備えた油圧ポンプ・モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械などでは、エンジンによって駆動される油圧ポンプや、油によって駆動される油圧モータが多用されている。
【0003】
例えば、アキシャル型の斜板式油圧ポンプ・モータは、ケーシング内に回転可能に取付けられた回転軸と、この回転軸とともに回転するシリンダブロックと、シリンダブロックに形成した複数のシリンダ孔内に往復動自在に嵌挿された複数のピストンと、回転軸に対して傾斜するようにケーシング内に設けられピストン先端部を摺接自在に支持する斜板と、シリンダブロック後端面に摺接する弁板とを備えており、弁板に設けたポートを介して、シリンダ孔の内部に油を流通させるように構成したものである。
【0004】
この斜板式油圧ポンプ・モータを油圧ポンプとして用いる場合には、回転軸をエンジン等で回転駆動してシリンダブロックを回転させ、ピストンを往復動させることにより、低圧側のポートからシリンダ孔に吸い込まれた油をピストンによって加圧して高圧側のポートから吐出する。
【0005】
また、斜板式油圧ポンプ・モータを油圧モータとして用いる場合には、高圧側のポートから油をシリンダ孔に供給し、ピストンをシリンダ孔から突出させて斜板を押圧することによって、シリンダブロックとともに回転軸を回転させる。
【0006】
このような斜板式油圧ポンプ・モータにおいて、シリンダブロックの回転数の検出を行う回転センサを備えたものが知られている(特許文献1を参照)。図7は、特許文献1の斜板式油圧ポンプ・モータの概要構成を示す断面図である。この斜板式油圧ポンプ・モータ100は、ケーシング110、蓋体120、回転軸130、シリンダブロック140、ピストン150、弁板160、及び、斜板170とを備えている。シリンダブロック140の外周面には、所定の間隔をあけて被検出凹部520が形成されている。この被検出凹部520に対向する位置には、被検出凹部520を検出する電磁ピックアップ式の回転センサ500が配置され、ケーシング110に固定されている。シリンダブロック140が回転すると、各被検出凹部520が回転センサ500の位置を通過することにより、回転センサ500と被検出凹部520との間の距離(磁界)が周期的に変化する。回転センサ500は、磁界変化に応じた検出信号を図示しないコントローラに送信する。コントローラは、回転センサ500からの検出信号の交流波形を波形整形し、その周波数をシリンダブロック140の回転数として算出する。
【0007】
【特許文献1】特開2002−267679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した斜板式油圧ポンプは、シリンダブロックを回転させることにより、同一円周上に並んだシリンダ孔内を摺動するピストンの位置を変化させる。また、斜板式油圧モータは、同一円周上に並んだシリンダ孔内に高圧の油を供給することにより、シリンダ穴内を摺動するピストンの位置が時間とともに変化させられることによって、シリンダブロックを回転させる。このため、ポンプ・モータいずれの場合においても、シリンダブロックの回転は、図7に示すように斜板170の傾斜角方向(図7中の矢印)の振動を伴う振れ回り回転となる。
【0009】
図7に示す斜板式油圧ポンプ・モータでは、斜板170の傾斜角方向の線と軸心130aとの両方を含む面内に、回転センサ500が配置されている。このため、シリンダブロック140の振れ回りにより、ケーシング110の取付けられた回転センサ500とシリンダブロック140に設けられた被検出凹部520との間の距離が変化してしまうため、シリンダブロックの回転数の検出に誤差が生じるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シリンダブロックの振れ回りに拘わらず、精度よくシリンダブロックの回転数を検出することができる油圧ポンプ・モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る油圧ポンプ・モータは、ケーシング内に回転可能に取付けられた回転軸と、前記回転軸とともに回転するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに形成した複数のシリンダ孔内に往復動自在に嵌挿された複数のピストンと、前記回転軸に対して傾斜するように前記ケーシング内に設けられ前記複数のピストンの先端部を摺接自在に摺動させる斜板とを有する油圧ポンプ・モータにおいて、前記シリンダブロックの外周面に形成された被検出部と、前記被検出部に対向する状態で前記ケーシングに配置され、該被検出部を検出する検出部を備えた回転センサとを有し、前記回転センサの検出部が、前記回転軸の軸心に直交する斜板上の線と前記軸心との両方を含む面内に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る油圧ポンプ・モータは、上記請求項1において、前記回転センサが、前記シリンダブロックの軸方向において、前記シリンダ孔の最深部から前記シリンダブロックの後端面までの間に対応する位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油圧ポンプ・モータは、シリンダブロックの外周面に被検出部を形成するとともに、この被検出部を検出する検出部を備えた回転センサを、回転軸の軸心に直交する斜板の摺動面上の線と軸心との両方を含む面内に配置した構成としている。この回転センサの配置位置は、シリンダブロックの振れ回りの影響を受けにくい位置である。従って、シリンダブロックの振れ回りに拘わらず、検出部と被検出部との間の距離はほぼ一定に保たれることになる。その結果、従来と比べてシリンダブロックの回転数の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の油圧ポンプ・モータにおける好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明の油圧ポンプ・モータを、ファン駆動装置のファンを駆動する斜板式油圧モータに適用した例について説明する。
【0015】
図1は、斜板式油圧モータ10の概要構成を示す断面図(X−Z平面における断面図)、図2は、図1に示した斜板式油圧モータのA−A線断面図(X−Y平面における断面図)、図3は、図1に示した斜板式油圧モータ10のB−B断面図である。また、図4は、図1に示した斜板式油圧モータを適用したファン駆動装置の背面図、図5は、図4のC−C線断面図、図6は、図4のD−D線断面図である。
【0016】
図4〜図6に示すファン駆動装置60は、建設機械等のエンジンのラジエータ80を冷却するためのファンを駆動する装置である。このファン駆動装置60は、斜板式油圧モータ10(以下、省略して「油圧モータ」という)と、油圧モータ10を支持するブラケット61と、油圧モータ10の回転軸に回転自在に取付けられ、油圧モータ10によって駆動されるファン62、及び、シュラウド63とから構成されている。
【0017】
油圧モータ10は、油圧ポンプ2(図1を参照)から供給される油を回転力に変換し、ファン62を回転させるものである。図5に示すように、油圧モータ10の後端側には、ファン62の回転数を検出する回転センサ50が取り付けられている。この油圧モータ10と回転センサ50については後で詳しく説明する。
【0018】
ブラケット61は、油圧モータ10が取付けられる板状の部材である。このブラケット61は、長手方向の寸法がラジエータ80の寸法とほぼ同一に形成された長尺平板状を成す基部65と、基部65の両側縁部からそれぞれ後方に向けて直角に屈曲した平板状を成す側壁部66とから構成されている。基部65の中央部には、油圧モータ10を取付けるための貫通孔64が形成されている。
【0019】
図5に示すように、油圧モータ10は、ブラケット61の基部65の表面側(ファン設置側)に回転軸13の先端を突出させ、かつ、回転センサ50を基部65の裏面近傍に位置させた状態で貫通孔64に嵌挿され、複数のボルト71によって基部65に対して固定されている。図6に示すように、油圧モータ10の基部裏面側に位置する部位、すなわち、後述するケーシング11の後端側及びエンドカバー12は、その両側がブラケット61の側壁部66によって覆われている。
【0020】
ファン62は、ファンボス67と複数の羽根68とで構成されている。各羽根68はボルトによってファンボス67にそれぞれ締結され、ファンボス67は、ボルト72によって油圧モータ10の回転軸13に締結されており、油圧モータ10を駆動させるとファン62が回転する。
【0021】
シュラウド63は、ファン62の送風性能を向上させるために、ファン62の周りを取り囲む態様で配設された正面視正方形の枠状部材であり、適宜な手段を用いてラジエータ80とブラケット61に取付けられている。シュラウド63の中央には、図4に示すように、円形の開口部69が設けられている。
【0022】
上記構成を有するファン駆動装置60では、油圧モータ10が駆動するとファン62が回転し、ファン62の回転により吸い込まれた温度の低い空気がラジエータ80を通過することにより、ラジエータ80の熱交換が促進される。
【0023】
次に、図1〜図3を用いて、ファン62を駆動する油圧モータ10について詳しく説明する。油圧モータ10は、ケーシング11、エンドカバー12、回転軸13、シリンダブロック14、ピストン15、弁板16、及び、斜板17とを備えている。
【0024】
ケーシング11は、その内部に回転軸13、シリンダブロック14、弁板16及び斜板17を収容するものであり、一端が開口した筒状部21と、端壁部22とから構成される円筒形状を成している。以下、ケーシング11の端壁部22側を「先端側」といい、開口側を「後端側」という。図1〜図3に示すように、筒状部21には、開口側の端部から径外方向に突出するフランジ状の取付部18が形成されている。この取付部18には、上述したファン駆動装置のブラケット61に油圧モータ10を取付けるためのボルト孔(図示せず)が設けてある。取付部18は、図5及び図6に示すように、油圧モータ10をファン駆動装置におけるブラケット61の基部65に取付ける際に、基部65の裏面に当接させられ、ボルト71によって基部65に締結される。
【0025】
エンドカバー12は、ケーシング11の後端側の開口を塞ぐ蓋体である。このエンドカバー12の内部には、方向切換弁1が内蔵されており、スプール1aを切換えることによって、油圧ポンプ2からの油の給排方向を切り換えている。ケーシング11における筒状部21の端壁部22と回転軸13との間にはオイルシール23aが設けてある。また、ケーシング11とエンドカバー12との間にはオイルシール23bが設けてある。このオイルシール23aとオイルシール23bとでケーシング11に油を封入している。
【0026】
回転軸13は、ケーシング11及びエンドカバー12に、ベアリング24a,24bを介して回転自在に支承されている。回転軸13の先端部には、上述したファン62のファンボス67が取付けられる。なお、以下の説明では、回転軸13がベアリング24aによって支持される側を、回転軸の基端側とよび、回転軸13がベアリング24bによって支持される側を、回転軸の先端側とよぶ。
【0027】
シリンダブロック14は、スプライン26を介して回転軸13と連結され、ケーシング11内で回転軸13と一体に回転するものである。このシリンダブロック14は、先端側の端面27(以下、「先端面27」という)が斜板17に対向する一方、後端側の端面28(以下、「後端面28」という)が弁板16の表面に摺接するように配置されており、弁板16に接触したまま回転可能となっている。シリンダブロック14には、図1に示すように、シリンダブロック14の軸を中心に周方向に等間隔かつ回転軸13に平行に、複数のシリンダ孔29が穿設されている。そして、シリンダブロック14の後端面28側に位置する各シリンダ孔29の基端部分には、後述する弁板16の給排ポート31と連通するシリンダポート32が形成されている。
【0028】
各シリンダ孔29には、ピストン15が往復動自在に嵌挿されている。ピストン15は、シリンダ孔29内に油が供給されることによって斜板を押圧し、この斜板17を押圧したときに発生する回転方向成分の力によりシリンダブロック14に回転力を発生させるものである。図1に示すように、各ピストン15の先端部は、凹球形状部分にピストンシュー33が取付けられた構造となっている。ピストンシュー33は、シューリテーナ34で斜板17の摺動面Sに摺接自在に摺動する。
【0029】
弁板16は、円板状に形成されたものであり、シリンダブロック14の後端面28に摺接するように、エンドカバー12に固定されている。この弁板16は、図3に示すように、周方向に沿って形成された長孔形状の給排ポート31,31を備えている。各給排ポート31は、図1に示すように、弁板16を軸方向に貫通しており、シリンダブロック14に当接する側の開口は、複数のシリンダポート32に連通することができる。そして、各給排ポート31のエンドカバー12に当接する側の開口は、エンドカバー12の内部に形成された給排通路42,42に連通している。なお、エンドカバー12に形成された給排通路42,42は、管路3,4及び方向切換弁1を介して油圧ポンプ2又は油タンク5に接続されている。
【0030】
斜板17は、ケーシング11の端壁部22とシリンダブロック14との間に設けられ、図2に示すように、X−Y平面に平行な面内で所定角度傾斜した平坦な摺動面Sを有している。上述したように、各ピストンシュー33は、シリンダブロック14の回転に伴って、この摺動面S上に押圧されながら円状に摺動する。本実施の形態では、図2に示すように斜板17が端壁部22に固定された固定容量式のものを適用している。なお、斜板17の傾斜角度を変更する斜板傾転装置を備えた可変容量式のものを適用することもできる。可変容量式の場合、摺動面Sの傾斜角度を変更してピストン15が往復動する距離を変化させることにより、モータの容量を変更することが可能である。
【0031】
上記構成を有する油圧モータ10では、図1に示すように、油圧ポンプ2からの油が、一方の給排通路42及び給排ポート31を介してシリンダ孔29に供給される一方、各シリンダ孔29の油が、もう一方の給排ポート31を介して給排通路42に排出され、油タンク5に戻される。油が供給されたシリンダ孔29内のピストン15は斜板17を押圧する。そして、ピストン15に発生する回転方向成分の力により回転力が発生する。この回転力はシリンダブロック14を介して回転軸13に伝えられ、回転軸13を回転させる。
【0032】
次に、上述した油圧モータ10に設けられた回転センサ50と、この回転センサ50によって検出される被検出部52ついて詳しく説明する。
【0033】
図1に示すように、上述したケーシング11の後端側には、径方向に貫通する貫通孔25が形成されており、この貫通孔25に回転センサ50が装着されている。なお、本実施の形態では、図1において回転軸13に垂直で取付部18を含む面を考え、その面の一部を含むように、回転センサ50が設置されている。この回転センサ50は、上述したシリンダブロック14の所定時間内の回転数を検出するものである。シリンダブロック14と回転軸13は一体に回転し、回転軸13とファン62は一体に回転する。従って、シリンダブロック14の回転数はファン62の回転数に等しくなる。
【0034】
回転センサ50は、シリンダブロック14の外周面に設けられた被検出部52を検出する検出部51を備えている。この検出部51は、被検出部52と所定の間隔をおいて対向した状態で、ケーシング11に固定されている。検出部51による検出結果は図示しない演算部に送信される。演算部は、検出部51の検出結果に基づいてシリンダブロック14の回転数を算出する。
【0035】
上記の回転センサ50としては、例えばMR素子(磁気抵抗効果素子)やホール素子を用いた電磁ピックアップ式のセンサを適用することができる。電磁ピックアップ式の回転センサは、永久磁石の周囲にコイルを巻いた構造を有する一般的なセンサであり、検出部と被検出部との間の磁束の変化を検出するものである。
【0036】
被検出部52は、図3に示すように、シリンダブロック14の外周面の一周に亘って一定の間隔で凹部53を切削することにより形成したギア形状の凹凸部である。この被検出部52は、上述した回転センサ50の配置位置に対応する位置、すなわち、シリンダブロック14の後端側に形成されている。
【0037】
シリンダブロック14が回転すると、被検出部52の凹部53と凸部54とが回転センサ50の位置を通過することにより、検出部51と被検出部52との間の距離(磁界)が周期的に変化する。回転センサ50の検出部51は、この磁界変化により発生した交流電圧を信号として出力し、この信号を演算部に送信する。演算部は、この交流電圧をパルスに整形し、パルス数をカウントしてシリンダブロック14の回転数(すなわちファン62の回転数)を算出する。
【0038】
上述した回転センサ50の配置位置についてより詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態では、回転センサ50の検出部51を、X−Z平面内に配置した構成としている。
【0039】
ここで、「X−Z平面」とは、回転軸13の軸心13aに直交する斜板17の摺動面S上の線と、軸心13aとの両方を含む面である。すなわち、「軸心13aに直交する斜板17の摺動面S上の線」とは、斜板17の摺動面Sの傾斜角方向の線と直交する線である。換言すると、「軸心13aに直交する斜板17の摺動面S上の線と軸心13aとの両方を含む面」は、斜板17の摺動面Sの傾斜角方向の線と軸心13aとの両方を含む面(図2におけるX−Y平面)と直交する面である。
【0040】
回転センサ50の検出部52をX−Z平面内に配置する理由は以下のとおりである。上述したように、油圧モータ10は、同一円周上に並んだシリンダ孔内を摺動するピストンの位置を時間とともに変化させながら、シリンダブロックを回転させている。このため、シリンダブロック14が回転する際には、図2に示すX−Y平面内でのY方向の振れ回りが生じる。従って、回転センサ50を、X―Y平面に直交するX−Z平面内に配置した場合、シリンダブロック14のX−Y方向の振動の影響をほとんど受けることがない。すなわち、シリンダブロック14の外周面に形成された被検出部52と回転センサ50の検出部51との間の距離は、シリンダブロック14の振れ回りに拘わらず常にほぼ一定に保たれることになる。なお、「回転軸の軸心に直交する斜板の摺動面上の線と軸心との両方を含む面」には、図1に示したX−Z平面を回転軸13の軸心回りに数度程度回転させた面も含まれるものとする。
【0041】
なお、斜板17の傾斜角度が変更可能な可変容量式を適用した場合には、上記のX−Z平面は、斜板17を傾転させる斜板回転軸の軸心(図示せず)と回転軸13の軸心13aとの両方を含む面を意味する。
【0042】
また、回転軸13は、ベアリング24a,24bによって基端側と先端側とがそれぞれ支持されている。従って、振れ回り回転による回転軸13のぶれは、基端側と先端側との間の中央部分が最も大きくなる。このため、本実施の形態では、回転軸13のぶれの影響を最小限度に抑えるために、回転センサ50の検出部51を、図1に示すように回転軸13の基端側、すなわち、ケーシング11の後端側に配置した構成としている。
【0043】
ここで、「ケーシングの後端側」の目安としては、シリンダブロック14の軸方向においてシリンダ孔29の内径がピストン径である部分の最深部41と、シリンダブロック14の後端面28までの間の位置に対向する位置である。
【0044】
上述した検出部51の配置位置に対応して、被検出部52は、シリンダブロック14の軸方向において、シリンダ孔29の内径がピストン径である部分の最深部41と、シリンダブロック14の後端側端面28までの間に形成される。図1に示すように、シリンダポート32のZ方向の寸法は、シリンダ孔29の径寸法よりも小さいため、シリンダポート32の形成位置の外周部位は、シリンダ孔29の形成位置の外周部位よりも肉厚となっている。この肉厚部分を利用して被検出部52を形成する場合、以下の利点がある。
【0045】
図1に示すように、シリンダ孔29の形成位置の外周部位は肉薄となっている。このため、被検出部52を図1に示す位置よりもシリンダブロック先端側に形成する場合、強度確保のために、この肉薄部位を避けるようにして、隣接するシリンダ孔同士の間に凹部53を形成する必要がある。この場合、凹部53の形成個数はシリンダ孔29の個数と同数個となる。これに対して、上記の肉厚部位に被検出部52を設ける場合、凹凸部分をギア状に連続して形成することができるため、切削加工が容易である上、シリンダ孔29の個数に関係なく凹部53を形成することができる。
【0046】
また、図4〜図6に示すファン駆動装置60を駆動させた場合、大きな形状を有するファン62が油圧モータ10の先端で回転するため、油圧モータ10の先端が最も振動しやすい。それに対して、基部65は固定されているため、基部65の近くは振動が小さく、基部65から離れる程振動が大きくなる。このため、油圧モータ10を基部65に取付ける場合、油圧モータ駆動時に回転センサ50に伝わる振動を最小限度に抑えるには、回転センサ50をできるだけ基部65に近接させて配置するのが好ましい。上述したように、油圧モータ10は、ケーシング11を基部65の貫通孔64に嵌挿し、取付部18を基部65の裏面に当接させてボルト止めすることによって、基部65に取付けられる。また、上述したように、回転センサ50は、回転軸13に垂直で取付部18を含む面の一部を含むように、ケーシング11に設置されている。このため、油圧モータ10を基部65に取付けた場合、回転センサ50は、基部65の裏面に近接する位置に配置されることになる。よって、油圧モータ駆動時に回転センサ50に伝わる振動を最小限度に抑えることができる。
【0047】
なお、ファン駆動装置60を駆動させると、外部から空気とともに塵や泥等が吸い込まれる。これらの塵や泥等は、ラジエータ80、ファン62及びシュラウド63の開口部69を通過する。しかし、図6に示すように、油圧モータ10の後端側は、ブラケット61の基部65の裏面側に位置し、かつ、側壁部66によってその両側を覆われた状態にある。従って、回転センサ50は外部から吸い込まれた塵や泥から保護される。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態のファン駆動装置60は、ファン62を駆動する油圧モータ10のシリンダブロック14の外周面に被検出部52を設けるとともに、この被検出部52を検出する検出部51を、X−Y平面に直交するX−Z平面内に配置した構成としている。上記構成とすることで、シリンダブロック14のX−Y平面内の振れ回りに拘わらず、回転センサ50と被検出部52との間の距離をほぼ一定に保つことができる。その結果、従来と比べてシリンダブロックの回転数の検出精度を向上させることができ、精度の高いファン制御を行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態のファン駆動装置60は、上記回転センサ50を、回転軸13の基端側であるケーシング11の後端側に配置した構成としている。上記構成とすることで、振れ回り回転に伴う軸ぶれの影響を受けにくくなるため、シリンダブロックの回転数の検出精度をさらに向上させることができる。
【0050】
また、本実施の形態のファン駆動装置60によれば、上記被検出部52を、シリンダブロック14の軸方向において、シリンダ孔29の内径がピストン径である部分の最深部41と、シリンダブロック14の後端側端面28までの間の肉厚部位に形成したことで、切削加工を容易に行うことができる。また、シリンダ孔29の個数に関係なく凹部53の形成個数を増やすことが可能であるから、シリンダブロック14の回転数の検出精度をさらに向上させることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態のファン駆動装置60によれば、上記回転センサ50を基部65の裏面に近接させた状態で、油圧モータ10をブラケット61に取付けた構成としたことで、油圧モータ駆動時に回転センサ50に伝わる振動を最小限度に抑えることができるため、回転センサの振動による故障を招来するおそれを少なくすることができる。
【0052】
加えて、本実施の形態のファン駆動装置60によれば、上記回転センサ50をブラケット61の裏面側に位置させた状態で、油圧モータ10をブラケット61に取付けた構成としたことで、外部から侵入する塵や泥が回転センサ50に付着するのを防止することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、本発明の油圧ポンプ・モータをファン駆動装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、他の駆動装置あるいは斜板式油圧ポンプにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態であるファン駆動装置に適用される油圧モータの概要構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した油圧モータのA−A線断面図である。
【図3】図1に示した油圧モータのB−B線断面図である。
【図4】本実施の形態であるファン駆動装置の背面図である。
【図5】図4に示したファン駆動装置のC−C線断面図である。
【図6】図4に示したファン駆動装置のD−D線断面図である。
【図7】従来の油圧ポンプ・モータの概要構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 方向切換弁
2 油圧ポンプ
3,4 管路
5 油タンク
10 斜板式油圧モータ
11 ケーシング
12 エンドカバー
13 回転軸
13a 軸心
14 シリンダブロック
15 ピストン
16 弁板
17 斜板
18 取付部
21 筒部
22 端壁部
23 オイルシール
24a,24b ベアリング
25 貫通孔
26 スプライン
27 先端側端面
28 後端側端面
29 シリンダ孔
31 給排ポート
32 シリンダポート
33 ピストンシュー
34 シューリテーナ
35 (シリンダブロックの)凸部
36 リテーナガイド
37 ばね
38 シート
39 ピン
41 シリンダ孔最深部
42 給排通路
50 回転センサ
51 検出部
52 被検出部
53 凹部
54 凸部
60 ファン駆動装置
61 ブラケット
62 ファン
63 シュラウド
64 貫通孔
65 基部
66 側壁部
67 ファンボス
68 羽根
69 開口
71,72 ボルト
80 ラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に回転可能に取付けられた回転軸と、前記回転軸とともに回転するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに形成した複数のシリンダ孔内に往復動自在に嵌挿された複数のピストンと、前記回転軸に対して傾斜するように前記ケーシング内に設けられ前記複数のピストンの先端部を摺接自在に摺動させる斜板とを有する油圧ポンプ・モータにおいて、
前記シリンダブロックの外周面に形成された被検出部と、
前記被検出部に対向する状態で前記ケーシングに配置され、該被検出部を検出する検出部を備えた回転センサとを有し、
前記回転センサの検出部は、
前記回転軸の軸心に直交する斜板の摺動面上の線と前記軸心との両方を含む面内に配置されていることを特徴とする油圧ポンプ・モータ。
【請求項2】
前記回転センサは、
前記シリンダブロックの軸方向において、前記シリンダ孔の最深部から前記シリンダブロックの後端面までの間に対応する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプ・モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−174504(P2009−174504A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16738(P2008−16738)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】