説明

油圧作業機械

【課題】エンジンと油圧ポンプに連結されたアシスト電動機を備えた油圧作業機械において、油圧ポンプの負荷トルクの変動に係わらず、エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制するとともに、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減しかつエンジンの信頼性を高める。
【解決手段】大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の回転速度を記憶しておき、特定の回転速度をエンジン7の目標回転速度としてエンジン制御する。油圧ポンプ6の吸収トルクをハイパスフィルタ処理してトレンド成分を除去した高周波成分を求め、この高周波成分から目標アシストトルクを演算しアシスト電動機10を力行/発電制御する。大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の出力トルク範囲を記憶しておき、トレンド成分が特定の出力トルク範囲を逸脱しないよう、目標アシストトルクを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルやホイールローダ、その他の油圧作業機械に係わり、特に、エンジンの他に蓄電装置により駆動されるアシスト電動機を備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンが排出する排気ガスの規制が進んでおり、この規制に対応するため、特に排気ガス中に含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxについて削減するための努力がエンジンメーカ等によりなされており、これまで燃焼制御の高度化技術が多数開発されてきた。一方、DPF(ディーゼルパティキュラーフィルタ)や尿素SCRシステム等の排気ガス後処理装置をエンジンとマフラの間に設置することにより、上記粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの捕集及び浄化処理を行う技術も開発されており、燃焼制御の高度化技術と適宜組み合わせて一層厳しくなる排気ガス規制に対応している。
【0003】
しかし、前記DPF(ディーゼルパティキュラーフィルタ)や尿素SCRシステム等の排気ガス後処理装置はこれまでエンジンシステムには付随していなかった装置であり、これらの排気ガス後処理装置は複雑かつ高価な材料を用いているのが通常である。例えばDPFに用いられる触媒は白金を用いている。さらに尿素SCRシステムには尿素を貯蔵しておくタンクと尿素噴射装置を備える必要がある。このため排気ガス後処理装置を備えたエンジンシステムはエンジン単体のシステムに比べて相当なコスト高となる。
【0004】
ところで、近年油圧ショベル等の油圧作業機械の分野でも、駆動源としてエンジンの他にバッテリ等の蓄電装置により駆動されるアシスト電動機を備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械が提案・開発されている。
【0005】
例えば特許文献1に提案される建設機械(油圧作業機械)は、エンジンにより駆動される電動機を備えることにより、エンジン出力の余剰分を電気エネルギとして貯めて省エネルギを図り、エンジン出力不足時に、その貯めた電気エネルギを放出して電動機を駆動し必要なポンプ吸収トルクを維持するようにしたものである。特許文献1は、このような構成により建設機械が作業を行う際に必要な平均馬力相当の定格出力を有する小型エンジンの採用を可能とし、燃費の向上や排出CO2の削減が図れるとしている。
【0006】
特許文献2の図6に提案されている作業機械は、エンジン及び電動機により油圧ポンプを駆動して油圧を発生させる構成とし、エンジンの出力の増加率を所定値に設定し、この増加率の所定値から求められるエンジンの出力上限値と、油圧ポンプに要求される油圧出力から求められた要求動力とを比較し、要求動力が出力上限値を超えたときに、超えた分の出力を電動機の出力で補うようにしたものである。特許文献2は、このような構成により油圧負荷が急激に増大したときでも、エンジンの負荷を急激に増大することがないように制御して、エンジンの運転条件を適正な範囲に維持できるため、燃焼効率の低下、黒煙の発生、エンジン停止を回避できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4512283号公報
【特許文献2】特許第4633813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
油圧ショベル等の油圧作業機械は、自動車などと異なり、エンジンにかかる負荷変動が非常に大きく、エンジン定格トルクのほぼ0〜100%まで瞬時にして変動する。そのため、いかにエンジンの燃焼制御を高度化しても油圧作業機械の全ての作業条件に対して、安定して粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量を所定量減らすには限界がある。通常は大きなエンジン負荷の変動及び回転数の変動が生じると、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量は定常状態より増加する傾向がある。このため、大気中に放出される排気ガス中に含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxを減らすには、DPFの容量や尿素SCRシステムのタンクを大きくする、或いは、尿素SCRシステムにおいてエンジンの燃料噴射状況に応じたきめ細かい尿素噴射制御装置が必要となり、いずれもコスト高の原因となる。
【0009】
特許文献1及び特許文献2の図6に提案の油圧作業機械においては、いずれも、油圧ポンプの要求トルク(ポンプ吸収トルク)がエンジンの出力トルクを超えたエンジン出力トルクの不足時に電動機を力行制御してトルクを補うことで、エンジン負荷トルクが急激に増大しないようにしている。しかし、エンジンの目標回転数や目標出力トルクと粒子状物質PMや窒素酸化物NOxなどの大気汚染物質の排出量を低減する領域とを関連付けした制御を行っていないため、燃料消費量の低減には効果はあるものの、粒子状物質PMや窒素酸化物NOxなどの大気汚染物質の排出量の低減を適切に行うことはことはできなかった。
【0010】
本発明の目的は、エンジンと油圧ポンプに連結されたアシスト電動機を備えた油圧作業機械において、油圧ポンプの負荷トルクの変動に係わらず、エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができるとともに、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができかつエンジンの信頼性を高めるハイブリッド駆動式の油圧作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するため、本発明は、エンジンと、前記エンジンにより回転駆動される油圧ポンプと、前記エンジンと前記油圧ポンプに連結されたアシスト電動機と、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータと、操作部材を有し、この操作部材の操作に応じた操作信号を出力して前記複数のアクチュエータを動作させるる複数の操作装置とを備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度を記憶した記憶装置と、前記記憶装置に記憶した前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定するエンジン回転速度設定装置と、前記エンジンの目標回転速度に基づいて前記エンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御装置と、前記油圧ポンプの吸収トルクと前記エンジンの目標出力トルクとの差分トルクを演算し、この差分トルクに応じて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する電動機制御装置とを備えるものとする。
【0012】
このようにエンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適したエンジンの特定の回転速度をエンジンの目標回転速度として設定し、その目標回転速度に基づいて前記エンジンの回転速度を制御することにより、エンジン回転速度が大気汚染物質の排出量が低減する回転速度に維持されるよう制御されるため、大気汚染物質の排出量を低減することが可能となる。しかも、そのようなエンジン回転速度の制御を行いながら、エンジンに作用する負荷トルクとエンジンの目標出力トルクとの差分トルクに応じてアシスト電動機を力行制御及び発電制御することにより、油圧ポンプの負荷トルク(ポンプ吸収トルク)がエンジンの出力トルクを超える場合及び油圧ポンプの負荷トルク(ポンプ吸収トルク)がエンジンの出力トルクよりも低下する場合に、油圧ポンプの負荷トルクの急激な変動がエンジンにそのまま伝わることが抑制され、エンジンの出力トルクがエンジンの目標出力トルク相当のエンジンの出力トルクとなるよう制御される。その結果、排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、エンジン回転速度制御とアシスト電動機の制御で大気汚染物質の排出量を低減するので、DPFや尿素SCRシステム等の排気ガス後処理装置を小型化、或いは不要にでき、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができる。
【0014】
更に、アシスト電動機を力行制御及び発電制御することでエンジン7にかかる負荷変動が低減するため、エンジン7の寿命が延長され、エンジンの信頼性が高まるという効果もある。
(2)上記(1)において、好ましくは、
前記電動機制御装置は、前記油圧ポンプの吸収トルクを取得するポンプ吸収トルク取得装置と、前記ポンプ吸収トルク取得装置によって取得した前記油圧ポンプの吸収トルクを前記エンジンの目標トルクとしてのトレンド成分とその他の成分とに分離するフィルタ装置とを有し、前記電動機制御装置は、前記フィルタ装置で分離した前記その他の成分を前記差分トルクとして用い、前記トレンド成分が前記エンジンの目標出力トルクとなるよう前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する。
【0015】
これにより上記(1)で説明したように、アシスト電動機の力行/発電制御によりエンジンの出力トルクがエンジンの目標出力トルク相当のエンジンの出力トルクとなるよう制御され、排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができるとともに、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができかつエンジンの信頼性を高めることができる。
(3)上記(2)において、好ましくは、前記フィルタ装置は、前記ポンプ吸収トルク取得装置によって取得した前記油圧ポンプの吸収トルクから前記トレンド成分を除去するハイパスフィルタである。
【0016】
これによりポンプ吸収トルク取得装置によって取得した油圧ポンプの吸収トルクから差分トルクが求まり、上記(1)で説明したように、アシスト電動機の力行/発電制御によりエンジンの出力トルクがエンジンの目標出力トルク相当のエンジンの出力トルクとなるよう制御され、排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができるとともに、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができかつエンジンの信頼性を高めることができる。
(4)上記(2)において、また好ましくは、前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲を記憶しており、前記電動機制御装置は、前記エンジンの目標出力トルクが前記記憶装置に記憶した前記特定の出力トルク範囲を超えないよう前記電動機の目標トルクを補正するトルク配分補正装置を更に有し、前記電動機制御装置は、前記トルク配分補正装置で補正した前記電動機の目標トルクに基づいて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する。
【0017】
これにより上記(1)で説明したように、エンジン回転数制御とアシスト電動機の力行/発電制御により大気汚染物質の排出量を抑制することができるだけでなく、エンジンの出力トルクを大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の出力トルク範囲となるように制御することによっても、大気汚染物質を低減することができる。
(5)上記(1)又は(4)において、好ましくは、前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかの低減に適した前記エンジンの特定の回転速度或いは前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲を記憶している。
【0018】
これにより上記(1)及び(4)において、アシスト電動機の力行/発電制御により大気汚染物質の排出量を抑制することができるだけでなく、エンジンの回転速度と出力トルクを記憶装置に記憶した特定の回転速度と特定の出力トルク範囲となるように制御することによって、粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかを低減することができる。
(6)上記(4)において、また好ましくは、前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのうちの少なくとも2つのファクタのそれぞれの低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲の複数の組み合わせを記憶しており、前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲の複数の組み合わせのうちのいずれを用いるかを選択する切換装置を更に備え、
前記エンジン回転速度設定装置は、前記切換装置によって選択された組み合わせの前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定し、前記トルク配分補正装置は、前記切換装置によって選択された組み合わせの前記特定の出力トルク範囲を超えないよう前記電動機の目標トルクを補正する。
【0019】
これにより上記(4)で説明したように大気汚染物質を低減する制御を行うとき、作業環境や稼動エリアの規制に最適のファクタの低減に適したエンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲の組み合わせを選択できるため、作業環境や稼動エリアの規制に応じた最適なエンジン制御と電動機制御を行うことができる。
(7)上記(2)において、また好ましくは、前記ポンプ吸収トルク取得装置は、前記油圧ポンプの吸収トルクを検出するトルク検出装置と、前記トルク検出装置の検出値に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを演算するトルク演算装置とを有する。
【0020】
これにより正確なポンプ吸収トルクを取得することができ、精度の良い制御が可能となる。
(8)上記(2)において、また好ましくは、前記ポンプ吸収トルク取得装置は、前記エンジンの実回転速度を検出する回転検出装置と、前記回転検出装置が検出する前記実回転速度と前記目標回転速度との偏差に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを推定するトルク演算装置とを有する。
【0021】
これにより汎用性の高い回転数検出装置を用いてポンプ吸収トルクを取得することができるため、システムを安価に構成することができる。
(9)上記(2)において、また好ましくは、前記ポンプ吸収トルク取得装置は、前記複数の操作装置が出力する操作信号を検出する操作信号検出装置と、前記操作信号検出装置が検出する前記操作信号に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを予測するトルク演算装置とを有する。
【0022】
これにおり汎用性の高い操作信号検出装置を用いてポンプ吸収トルクを取得することができるため、システムを安価に構成することができる。
(10)また,上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンにより回転駆動される油圧ポンプと、前記エンジンと前記油圧ポンプに連結されたアシスト電動機と、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータと、操作部材を有し、この操作部材の操作に応じた操作信号を出力して前記複数のアクチュエータを動作させるる複数の操作装置とを備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルクを記憶した記憶装置と、前記記憶装置に記憶した前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定するエンジン回転速度設定装置と、前記エンジンの目標回転速度に基づいて前記エンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御装置と、前記油圧ポンプの吸収トルクと前記記憶装置に記憶した前記特定の出力トルクとの偏差を演算し、この偏差に応じて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する電動機制御装置とを備えるものとする。
【0023】
このようにエンジンの目標出力トルクとして大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の出力トルクを設定し、エンジン回転速度の制御を行うとともに、油圧ポンプの吸収トルクと大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の出力トルクとの偏差に応じてアシスト電動機を力行制御及び発電制御することにより、大気汚染物質の排出量の低減に適した特定の出力トルクを目標出力トルクとしたエンジン出力トルクの制御が行われるため、排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができるとともに、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができかつエンジンの信頼性を高めることができる。
(11)上記(10)において、好ましくは、前記記憶装置に記憶した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルクは、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかの低減に適した回転速度と出力トルクである。
【0024】
これにより上記(10)で説明したエンジン回転速度制御とエンジン出力トルク制御において、粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量を最小限に抑制することができる。
【0026】
また、大気汚染物質の排出量を低減するので、DPFや尿素SCRシステム等の排気ガス後処理装置を小型化、或いは不要にでき、排気ガス後処理装置の設置によるコストアップを低減することができる。
【0027】
更に、アシスト電動機の力行制御及び発電制御でエンジン7にかかる負荷変動が低減するため、エンジン7の寿命が延長され、エンジンの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベル(油圧作業機械)の外観図である。
【図2】油圧ショベルに搭載されるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。
【図3】アシスト電動機を備えず、エンジンのみで油圧ポンプを駆動する従来のアクチュエータ駆動制御システムにおける、油圧ポンプにかかる負荷トルク変動の一例を示す図である。
【図4】アシスト電動機により大きなポンプ吸収トルク変動を抑制する考えを示した説明図である。
【図5】車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図6】ハイパスフィルタ処理部の処理概念を示す図である。
【図7】目標アシストトルク変換処理部の処理概念を示す図である。
【図8】アシスト電動機力行/発電演算部の処理概念を示す図である。
【図9】目標アシストトルク演算部とアシスト電動機力行/発電演算部の処理概念をまとめて示す示す図である。
【図10】エンジンの回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量のそれぞれのマップを示す線図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図12】エンジン出力トルク演算部の処理概念を示す図である。
【図13】目標アシストトルク補正部の処理概念を示す図である。
【図14】アシスト電動機力行/発電演算部の処理概念を示す図である。
【図15】エンジンの回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量とエンジンの燃料消費量のそれぞれのマップを示す線図である。
【図16】エンジンの回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物NOxの排出量とエンジンの燃料消費量のそれぞれのマップを示す線図である。
【図17】エンジンの回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PM及び窒素酸化物NOxの排出量とエンジンの燃料消費量のそれぞれのマップを示す線図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態における油圧ショベルに搭載されるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。
【図20】車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図21】エンジン回転数偏差演算部とポンプ吸収トルク推定部の処理概念を示す図である。
【図22】本発明に第5の実施の形態におけるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。
【図23】車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図24】比例微分処理部とゲイン処理部の処理概念を示す図である。
【図25】本発明の第6の実施の形態における油圧ショベルに搭載されるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。
【図26】車体コントローラが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図27】エンジンの回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMのマップを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベル(油圧作業機械)の外観図である。
【0030】
油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a、アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成され、フロント装置1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム1a、アーム1b、バケット1c、上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回電動機16(図2参照)及び左右の走行モータ3e,3fによりそれぞれ駆動される。ブーム1a、アーム1b、バケット1c、上部旋回体1dの動作は操作レバー装置4a,4b(図2参照)の油圧操作信号(制御パイロット圧力)により指示され、下部走行体1eの動作は図示しない走行用の操作ペダル装置の油圧操作信号(制御パイロット圧力)により指示される。
【0031】
図2は、図1に示した油圧ショベルに搭載されるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。
【0032】
図2において、本実施形態におけるアクチュエータ駆動制御システムは、操作レバー装置4a,4b及び図示しない走行用の操作ペダル装置と、スプール型方向切換弁5a〜5c,5e,5fと、メインの油圧ポンプ6と、エンジン7と、メインのリリーフ弁8と、タンク9と、シャトル弁ブロック25とを備えている。
【0033】
操作レバー装置4a,4b及び操作ペダル装置は、図示せぬパイロットポンプの吐出油により生成された1次圧を操作レバー装置4a,4b及び操作ペダル装置に備えられる減圧弁(リモコン弁)の操作開度に応じて2次圧に減圧して制御パイロット圧力(油圧操作信号)を生成し、その制御パイロット圧力が方向切換弁5a〜5c,5e,5fの受圧部に送られ、方向切換弁5a〜5c,5e,5fを図示の中立位置から切り換え操作する。方向切換弁5a〜5c,5e,5fは、例えばセンタバイパスラインに配置されるオープンセンタタイプのスプール弁であり、制御パイロット圧力により切り換え操作されることにより、油圧ポンプ6が吐出する圧油の流れ(方向と流量)を制御し、油圧アクチュエータ3a〜3c,3e,3fの駆動を制御する。油圧ポンプ6はエンジン7により回転駆動される。油圧ポンプ6の吐出油が導かれる油圧配管内の圧力が過度に上昇した場合は、リリーフ弁8にて圧油をタンク9へ逃がし、油圧配管内の圧力の過度の上昇を防止する。
【0034】
シャトル弁ブロック25は、操作レバー装置4a,4bが生成する油圧操作信号(制御パイロット圧力)のうち旋回操作を指示する油圧操作信号以外の油圧操作信号と、図示しない操作ペダル装置が生成する油圧操作信号のうちの最も圧力の高い油圧操作信号を選択して出力する。
【0035】
油圧ポンプ6は可変容量型のポンプであり、ポジティブ制御方式のレギュレータ6aを有し、シャトル弁ブロック25が出力する油圧操作信号はレギュレータ6aに導かれる。ポジティブ制御方式のレギュレータ6aは、公知の如く、操作レバー装置4a,4b及び操作ペダル装置の操作部材である操作レバー及びペダルの操作量(要求流量)が増加し、油圧操作信号が上昇するにしたがって油圧ポンプ6の斜板傾転角(容量)を増加させ、油圧ポンプ6の吐出流量を増加させる。
【0036】
なお、油圧ポンプ6のレギュレータ6aは、レギュレータ6aに入力される信号圧力が低下するにしたがって油圧ポンプ6の傾転角(容量)を増大させるネガティブ制御方式であってもよい。この場合は、方向切換弁5a〜5c,5e,5fを通過し、タンクに至るセンターバイパスラインの最下流部分に絞りを設け、その絞りの入側の圧力を信号圧力としてレギュレータ6aに導く。センターバイパスラインの最下流部分に絞りを設けた場合、その絞りの入側の圧力は、操作レバー装置4a,4b及び操作ペダル装置の操作部材である操作レバー及びペダルの操作量(要求流量)が増加し、方向切換弁5a〜5c,5e,5fのセンタバイパス絞りの通過流量が減少するにしたがって低下する。したがって、絞りの入側の圧力を信号圧力としてレギュレータ6aに入力し、その信号圧力が低下するにしたがって油圧ポンプ6の傾転角(容量)を増大させることによって、操作部材の操作量が増加するにしたがって油圧ポンプの吐出流量を増加させることができる。
【0037】
なお、方向切換弁5a〜5c,5e,5fをクローズタイプのスプール弁とし、レギュレータ6aを、油圧ポンプ6の吐出圧力が最高負荷圧より所定圧力だけ高くなるよう制御するロードセンシング制御方式としても構わない。
【0038】
また、レギュレータ6aは、公知の如く、油圧ポンプ6の吐出圧力が高くなるにしたがって油圧ポンプ6の傾転角(容量)を減らして、油圧ポンプ6の吸収トルクを予め設定した最大トルクを越えないように制御するトルク制限制御機能を備えている。
【0039】
本実施形態におけるアクチュエータ駆動制御システムは、また、アシスト電動機10と、車体コントローラ11と、インバータ12,13と、チョッパ14と、バッテリ15と、圧力センサ17,18と、トルクセンサ19と、エンジンコントロールダイヤル20と、エンジン7の回転速度を検出する回転センサ23と、エンジンコントローラ21とを備えている。
【0040】
アシスト電動機10は油圧ポンプ6とエンジン7の間に連結されている。このアシスト電動機10は、エンジン7の動力を電気エネルギ(電力)に変換してインバータ12に出力する発電機としての機能と、インバータ12から供給される電気エネルギー(電力)により駆動され、油圧ポンプ6をアシスト駆動する電動機としての機能を有している。
【0041】
インバータ12は、アシスト電動機10が発電機として機能するときは、アシスト電動機10で生成した交流電力を直流電力に変換して出力し、アシスト電動機10が電動機として機能するときは、バッテリ15からの直流電力を交流電力に変換してアシスト電動機10に供給する。
【0042】
インバータ13は、アシスト電動機10が生成しインバータ12が出力した直流電力を交流に電力に変換して旋回電動機16に供給する。また、インバータ13は、旋回制動時に旋回電動機16が発電機として機能して回生した交流電力を直流電力に変換して出力する。
【0043】
バッテリ15は、チョッパ14を介して電圧を調整し、インバータ12,13に電力を供給したり、アシスト電動機10が発生した電気エネルギや旋回電動機16からの電気エネルギを蓄えておく。
【0044】
エンジンコントロールダイヤル20は、オペレータにより操作され、オペレータの意図でエンジン7の基本回転速度を指令するものであり、車体コントローラ11はエンジンコントロールダイヤル20の指令信号を入力し、その指令信号に基づいて目標回転速度を演算し、エンジンコントローラ21に出力する。エンジンコントローラ21は、車体コントローラ11からの目標回転速度と、回転センサ23が検出するエンジン7の実回転速度の偏差を演算し、この回転速度偏差に基づいて目標燃料噴射量を演算し、対応する制御信号をエンジン7に備えられる電子ガバナ7aに出力する。電子ガバナ7aはその制御信号により作動して目標燃料噴射量相当の燃料を噴射しエンジン7に供給する。これによりエンジンは目標回転速度が維持されるよう制御される。
【0045】
車体コントローラ11は制御演算回路を有しており、この制御演算回路においてアシスト電動機10及び旋回電動機16に係わる下記の制御を行う。
【0046】
(1)旋回電動機16の駆動制御
圧力センサ17,18は操作レバー装置4b生成する油圧操作信号のうち左右方向の旋回操作を指示する油圧操作信号を導くパイロット油路に接続され、その油圧操作信号を検出する。車体コントローラ11は、圧力センサ17,18の検出信号(電気信号)を入力し、検出した油圧操作信号に応じて旋回電動機16の駆動制御を行う。具体的には、左方向の旋回操作を指示する油圧操作信号を検出したときは、その油圧操作信号に基づいてインバータ12を制御してアシスト電動機10を発電機として動作させる発電制御を行うとともに、インバータ13を制御して旋回電動機16を駆動する力行制御を行い、油圧操作信号に対応した速度で上部旋回体1dが左旋回するように旋回電動機16を作動させる。右方向の旋回操作を指示する油圧操作信号を検出したときは、その油圧操作信号に基づいてインバータ12を制御してアシスト電動機10を発電機として動作させる発電制御を行うとともに、インバータ13を制御して旋回電動機16を駆動する力行制御を行い、油圧操作信号に対応した速度で上部旋回体1dが右旋回するように旋回電動機16を作動させる。
【0047】
(2)回収電力の蓄電制御
車体コントローラ11は、旋回制動時にインバータ13を制御して旋回電動機16を発電機として動作させる発電制御を行い、旋回電動機16から電気エネルギーを回収するとともに、回収した電気エネルギーをバッテリ15に蓄える制御を行う。
【0048】
(3)アシスト電動機10の制御1(バッテリ15の蓄電管理制御)
車体コントローラ11は、油圧ポンプ6の油圧負荷(ポンプ吸収トルク)が軽くかつバッテリ15の蓄電残量が少ないときは、インバータ12を制御してアシスト電動機10を発電機として動作させる発電制御を行い、余剰の電力を発生させるとともに、発生した余剰電力をバッテリ15に蓄える制御を行う。逆に、油圧ポンプ6の油圧負荷(ポンプ吸収トルク)が重くかつバッテリ15の蓄電残量が所定量以上あるときは、インバータ12を制御してアシスト電動機10にバッテリ15の電力を供給してアシスト電動機10を電動機として動作させる力行制御を行い、油圧ポンプ6をアシスト駆動する。なお、油圧ポンプ6の油圧負荷(ポンプ吸収トルク)が軽くかつバッテリ15の蓄電残量が少ないときは、制御1を優先する。
【0049】
(4)アシスト電動機10の制御2(トルク変動抑制制御)
トルクセンサ19は、油圧ショベルの油圧アクチュエータ3a〜3c,3e,3fにかかる負荷の変動によって変動する油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)を検出する。車体コントローラ11は、トルクセンサ19の検出信号(電気信号)を入力し、検出した油圧ポンプ6の負荷トルクに基づいて、アシスト電動機10を電動機として動作させる力行制御とアシスト電動機10を発電機として動作させる発電制御を選択的に行い、エンジン7の出力トルクを抑える制御を行う。これによりエンジン7の排気ガスに含まれる大気汚染物質(粒子状物質PM及び窒素酸化物NOx)が低減する。
【0050】
車体コントローラ11が行うトルク変動抑制制御の機能の詳細を説明する。
【0051】
図3は、アシスト電動機10を備えず、エンジン7のみで油圧ポンプ6を駆動する従来のアクチュエータ駆動制御システムにおける、油圧ポンプ6にかかる負荷トルク変動の一例を示す図であり、図4は、アシスト電動機10により大きなポンプ吸収トルク変動を抑制する考えを示した説明図である。ここで、エンジン7のみで油圧ポンプ6を駆動する従来のアクチュエータ駆動制御システムにおいては、油圧ポンプ6とエンジン7からなる回転体の回転軸は共通であり、図3に示す油圧ポンプ6にかかる負荷トルク変動はエンジン7の負荷トルク変動と等価である。
【0052】
油圧ショベルなどの建設用作業機械は、自動車などと異なり、図3に示すように、アクチュエータにかかる負荷の変動によって生じる油圧ポンプの負荷トルク(ポンプ吸収トルク)の変動が非常に大きく、その結果、エンジンにかかる負荷変動も非常に大きくなり、例えば図3に示すようエンジン7の負荷トルクはほぼ0〜100%まで瞬時にして変動する。エンジンはその基本特性として、一定回転速度/一定トルク条件下で動作している状態に対し、負荷トルクに大きな変動が生じるとエンジン回転速度も大きく変動し、排気ガス中に含まれる大気汚染物質である粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量が増加する傾向がある。
【0053】
そこで、本実施の形態では、エンジン7の回転速度を設定された回転速度に維持するよう制御しつつ、図4の下段右側に示される油圧ポンプ6にかかる大きな負荷トルク変動(ポンプ吸収トルクの変動)を、エンジン7に伝達する途中経路のアシスト電動機10を制御することで緩やかな負荷トルク変動とし、回転速度/トルク変動に起因するPM、NOx排出量増加を抑制する。すなわち、予め設定されたエンジン回転速度を維持するようエンジン7が制御される間、油圧ポンプ6の負荷トルクを当該負荷トルクのトレンド成分(低周波成分)とそれ以外の成分である高周波成分(過渡成分)に分離し、後者の高周波成分を除去するようアシスト電動機10に対して力行/発電の制御指令を与える。これによりエンジン7の出力トルクが所定の範囲(油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)のトレンド成分に対応するエンジン7の目標出力トルク)に維持されるよう制御され、排気ガスの大気汚染物質である粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量を最小限に抑制することが可能となる。
【0054】
図5は、車体コントローラ11が行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0055】
車体コントローラ11は、目標回転速度演算部11aと、ポンプ吸収トルク演算部11bと、目標アシストトルク演算部11cと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fとを有している。
【0056】
記憶装置11fは、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量の低減に適した特定のエンジン回転速度として、エンジン回転速度Nea(図10参照)を記憶してる。
【0057】
目標回転速度演算部11aは、記憶装置11fに記憶したエンジン回転速度Neaを読み出してエンジン7の目標回転速度として設定し、その値をエンジンコントローラ21に出力する。エンジンコントローラ21は、その目標回転速度と、回転センサ23が検出するエンジン7の実回転速度との偏差を演算して、この偏差に応じた目標燃料噴射量を演算し、対応する制御信号を電子ガバナ7aに出力し、エンジン7は目標回転速度が維持されるよう制御される。
【0058】
なお、図示はしないが、車体コントローラ11は、エンジンコントロールダイヤル20からの指令信号を入力し、その指令信号に基づいて目標回転速度を演算する別の目標回転数演算部を更に備えていてもよく、この場合は、モードスイッチを設け、目標回転速度演算部11aがエンジンコントロールダイヤル20からの指令信号に基づいて演算する目標回転速度と別の目標回転速度演算部が設定する目標回転速度の一方を選択できるようにしてもよい。
【0059】
ポンプ吸収トルク演算部11bは、トルクセンサ19の検出信号(電気信号)を入力し油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)を算出する。
【0060】
目標アシストトルク演算部11cは、ハイパスフィルタ処理部11c1と目標アシストトルク変換処理部11c2を有している。図6はハイパスフィルタ処理部11c1の処理概念を示し、図7は目標アシストトルク変換処理部11c2の処理概念を示している。目標アシストトルク演算部11cは、まず、ハイパスフィルタ処理部11c1において、図6に示すようにポンプ吸収トルク演算部11bで算出した油圧ポンプ6の負荷トルクに対して予め設定した遮断周波数に基づくハイパスフィルタ処理を行い、油圧ポンプ6の変動する負荷トルクから遮断周波数以下の低周波成分を除去し、高周波成分のみを取り出す。
【0061】
ここで、ハイパスフィルタ処理部11c1において油圧ポンプ6の負荷トルクから除去される油圧ポンプ6の負荷トルクの遮断周波数以下の低周波成分は油圧ポンプ6の負荷トルクの時系列の移動平均を表しており、これを本明細書では当該負荷トルクのトレンド成分をという。次いで、目標アシストトルク変換処理部11c2において、図7に示すように油圧ポンプ6の負荷トルクの高周波成分よりアシスト電動機10の目標アシストトルクを算出する。
【0062】
図8は、アシスト電動機力行/発電演算部11dの処理概念を示す図である。アシスト電動機力行/発電演算部11dは、図8に示すように、目標アシストトルク演算部11cの目標アシストトルク変換処理部11c2で求めたアシスト電動機10の目標アシストトルクの力行/発電の各値に応じて、アシスト電動機10に指令する力行/発電電力を演算し、インバータ12に制御信号を送り、アシスト電動機10を力行/発電制御する。
【0063】
図9は、目標アシストトルク演算部11cとアシスト電動機力行/発電演算部11dの処理概念をまとめて示す示す図である。
【0064】
油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)が図9の左側実線のように変動するとき、アシスト電動機10において、図9の右下側に示すように力行或いは発電を行う。すなわち、図9の左側点線で示す基準となる負荷トルクのトレンド成分よりも油圧ポンプ6の負荷トルクが大きい場合はアシスト電動機10において力行を行い、油圧ポンプ6の負荷トルクの増加に対してカウンタ(逆方向のトルク)を与えることによって、油圧ポンプ6の大きな負荷トルク変動がエンジン7にそのまま伝わることを抑制する。反対に図9の左側点線で示す基準となる負荷トルクのトレンド成分よりも油圧ポンプ6の負荷トルクが小さい場合はアシスト電動機10において発電を行い、油圧ポンプ6の負荷トルクの急激な低下に対して適当な負荷トルクをアシスト電動機10によって与えることによって、油圧ポンプ6の負荷トルクが増加する場合と同様に、油圧ポンプ6の負荷トルクの急激な変動がエンジン7にそのまま伝わることを抑制する。このようにエンジン7に伝わる負荷トルク変動が抑制される結果、エンジン7の出力トルクは、図9の右上側に実線で示すように、図9の左側点線で示す基準となる負荷トルクのトレンド成分とほぼ等しくなるように制御される。すなわち、目標アシストトルク演算部11cとアシスト電動機力行/発電演算部11dは、図9の右側点線で示す油圧ポンプ6の負荷トルクのトレンド成分をエンジン7の目標出力トルクとし、この目標出力トルクが得られるようアシスト電動機10を制御するものであるということができる。
【0065】
図10は、エンジン7の回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量のそれぞれのマップを示す線図である。この図10を用いて、記憶装置11fに記憶するエンジン回転速度Neaと出力トルク範囲Tea〜Tebについて説明する。
【0066】
排気ガス中に含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量は、定常的には図10に示されるようにエンジン回転速度とエンジン出力トルクの相関において、排出量が多い領域と少ない領域が存在する。エンジンが有する固有の特性によってこれら領域のプロファイルや絶対値は異なるものの、一般にPMとNOxの排出量はトレードオフの関係にあり、排気温度が高くなる高回転速度かつ高トルク時にはNOxが多くなるがPMは少ない。排気温度が低くなる低回転速度かつ低トルク時にはNOxが少なくなるがPMは多くなる。しかし、PMとNOxのトータルの排出量で見ると、そのトータルの排出量が最も少なくなる領域が存在し、例えば図10に楕円で示されるエンジン回転速度Neaと出力トルク範囲Tea〜Tebの領域である。
【0067】
本実施の形態では、記憶装置11fにそのエンジン回転速度Neaを記憶しておく。そして、目標回転速度演算部11aにおいて、エンジン回転速度Neaをエンジン7の目標回転速度として設定し、エンジン回転速度をPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の回転速度Neaに維持する制御を行う。また、そのようなエンジン回転速度の制御を行いつつ、目標アシストトルク演算部11cにおいて、油圧ポンプ6にかかる大きな負荷変動が緩やかな負荷トルク変動となるようにアシスト電動機10を力行/発電制御し、トルク変動抑制制御を行し、エンジン7の出力トルクがPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の出力トルク範囲Tea〜Tebの付近の値に維持されるように制御する。
【0068】
以上のように構成した本実施の形態によれば、エンジン回転速度がPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の回転速度Neaに維持されるよう制御されるため、排気ガスに含まれる大気汚染物質であるPMとNOxの排出量を低減することが可能となる。しかも、そのようなエンジン回転速度の制御を行いながら、油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)がエンジン7の出力トルクを超える場合及び油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)がエンジン7の出力トルクを下回る場合に、油圧ポンプ6の吸収トルクの急激な変動がエンジン7にそのまま伝わることが抑制され、エンジン7の出力トルクが所定の範囲の値、すなわちPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の出力トルク範囲Tea〜Tebの付近の値に維持されるように制御される。その結果、排気ガスに含まれるPMとNOxの排出量を最小限に抑制することが可能となる。
【0069】
また、従来は、図2に一点鎖線で示すように、DPF(ディーゼルパティキュラーフィルタ)や尿素SCRシステム等の排気ガス後処理装置をエンジン7と図示しないマフラの間の排気管に設置することにより、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの捕集及び浄化処理がなされている。
【0070】
本実施の形態では、上記のように油圧ポンプ6の負荷トルクとこの負荷トルクのトレンド成分(エンジンの目標出力トルク)との差分トルクである油圧ポンプ6の負荷トルクの高周波成分の正負に応じてアシスト電動機を力行制御及び発電制御することで、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量を抑制できるため、DPFの容量や尿素SCRシステムのタンクを小型化することができ、更には、状況に応じて排気ガス後処理装置を不要にすることができる。
【0071】
更に、アシスト電動機を力行制御及び発電制御することでエンジン7にかかる負荷変動が低減するため、エンジン7の寿命が延長され、エンジンの信頼性が高まるという効果もある。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図11〜図14を用いて説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様のトルク変動抑制制御を行うとともに、エンジン7の回転速度とエンジン出力トルク範囲を、エンジン7の排気ガスに含まれる大気汚染物質である粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量の低減に適した領域に設定することによって、PM、NOx排出量を更に効果的に抑制するようにしたものである。
【0072】
図11は、本実施の形態における車体コントローラ11Aが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0073】
本実施の形態における車体コントローラ11Aは、目標回転速度演算部11aと、ポンプ吸収トルク演算部11bと、目標アシストトルク演算部11cと、トルク配分補正部11eと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fAとを有している。
【0074】
目標回転速度演算部11a、ポンプ吸収トルク演算部11b及び目標アシストトルク演算部11cの処理内容は第1の実施の形態のものと同じであるので、説明を省略する。
【0075】
記憶装置11fAは、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量の低減に適した特定のエンジン回転速度と特定のエンジン出力トルク範囲として、図10に示したエンジン回転速度Neaと出力トルク範囲Tea〜Tebを記憶してる。
【0076】
トルク配分補正部11eはエンジン出力トルク演算部11e1と目標アシストトルク補正部11e2を有している。図12はエンジン出力トルク演算部11e1の処理概念を示し、図13は目標アシストトルク補正部11e2の処理概念を示している。トルク配分補正部11eは、まず、エンジン出力トルク演算部11e1において、図12に示すようにポンプ吸収トルク演算部11bで求めた油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)から目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクを減算し、エンジン出力トルクを算出する。このエンジン出力トルクは図9等において点線で示した基準となる負荷トルクのトレンド成分に相当する値である。次いで、目標アシストトルク補正部11e2において、記憶装置11fAに記憶した図10に示す出力トルク範囲Tea〜Tebを読み出し、図13に示すようにエンジンの目標出力トルクが出力トルク範囲Tea〜Tebを逸脱するような値となってしまった場合、エンジンの目標出力トルクが出力トルク範囲Tea〜Teb内に収まるようエンジンの目標出力トルクを補正し、補正前のエンジンの目標出力トルクの逸脱量を目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクに追加する。
【0077】
図14は、アシスト電動機力行/発電演算部11dの処理概念を示す図である。アシスト電動機力行/発電演算部11dは、第1の実施の形態の場合と同様、図14に示すように、トルク配分補正部11eで求めた目標アシストトルクの力行/発電の各値に応じて、アシスト電動機10に指令する力行/発電電力を演算し、インバータ12に制御信号を送り、アシスト電動機10を力行/発電制御する。トルク配分補正部11eにおける目標アシストトルクの補正に合わせてアシスト電動機制御量も補正されている。
【0078】
本実施の形態においては、記憶装置11fAに図10に示したエンジン回転速度Neaと出力トルク範囲Tea〜Tebを記憶しておく。そして、目標回転速度演算部11aにおいて、エンジン回転速度Neaをエンジン7の目標回転速度として設定し、エンジン回転速度をPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の回転速度Neaに維持する制御を行う。また、そのようなエンジン回転速度の制御を行いつつ、第1の実施の形態と同様に、目標アシストトルク演算部11c及びアシスト電動機力行/発電演算部11dにおいて、油圧ポンプ6にかかる大きな負荷変動が緩やかな負荷トルク変動となるようにアシスト電動機10を力行/発電制御し、トルク変動抑制制御を行う。更に本実施の形態では、トルク配分補正部11eにおいて、トルク変動抑制制御によるエンジン7の出力トルクが出力トルク範囲Tea〜Tebを逸脱する場合の目標エンジン出力トルクの補正を行い、エンジン7の出力トルクがPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域の出力トルク範囲Tea〜Tebに収まるように制御する。
【0079】
このように本実施の形態では、エンジン7の排気ガスに含まれる大気汚染物質である粒子状物質PMと窒素酸化物NOxの排出量の低減に適した特定のエンジン回転速度Neaと特定のエンジン出力トルク範囲Tea〜Tebを予め定めておき、その特定のエンジン回転速度Neaを目標エンジン回転速度として制御しながら、特定のエンジン出力トルク範囲Tea〜Tebをエンジン7の目標出力トルクの上下限値として制御するものであり、これによりエンジン7の回転速度と出力トルクは図10に示すPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域に収まるように制御され、PM及びNOxの排出量を更に抑制することができる。
<第2の実施の形態のバリエーション>
上述した第2の実施の形態では、エンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲をPMとNOxのトータルの排出量が最も少なくなる領域に設定した。しかし、PMとNOxのトータルの排出量以外のファクタに基づいて、或いはそれ以外のファクタを追加してエンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲を設定してもよい。そのようなファクタとしては、例えば、PMの排出量とエンジン7の燃料消費量の組み合わせ、NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMの排出量の排出量のみ、NOxの排出量のみなどがある。
【0080】
まず、PMの排出量と燃料消費量の組み合わせをエンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の設定に用いる場合について説明する。
【0081】
図15は、エンジン7の回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量のマップ(右側)とエンジン7の燃料消費量のマップ(左側)を示す線図である。図15の右側のPMの排出量のマップそのものは図10(右側)に示したものと同じである。エンジン7の燃料消費量は、図15の左側に示すように、回転速度と出力トルクの相関において、燃料消費量が多い領域と少ない領域が存在する。PMの排出量と燃料消費量の関係を比較すると、両者の組み合わせでPMの排出量と燃料消費量が最も少なくなる領域が存在し、例えば図15に楕円で示されるエンジン回転速度Necと出力トルク範囲Tee〜Tefの領域である。
【0082】
そこで、図11に示した車体コントローラ11Aの記憶装置11fAにそのエンジン回転速度Necと出力トルク範囲Tee〜Tefを記憶しておく。目標回転速度演算部11aでは、エンジン回転速度Necをエンジン7の目標回転速度として設定する。トルク配分補正部11eの目標アシストトルク補正部11e2では、エンジン7の目標出力トルクが出力トルク範囲Tee〜Tefを逸脱する場合、エンジンの目標出力トルクが出力トルク範囲Tee〜Tef内に収まるようエンジンの目標出力トルクを補正し、補正前のエンジンの目標出力トルクの逸脱量を目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクに追加する。これによりエンジン回転速度がPMの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の回転速度Necに維持され、エンジン出力トルクがPMの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の出力トルク範囲Tee〜Tefに収まるように制御される。
【0083】
これによりアシスト電動機10の力行/発電制御によりPM及びNOxの排出量を抑制することができるだけでなく、エンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の適切な設定によりPM排出量を更に抑制しかつ燃料消費量も少なくすることができる。
【0084】
NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせをエンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の設定に用いる場合について説明する。
【0085】
図16は、エンジン7の回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジン7の排気ガスに含まれる窒素酸化物NOxの排出量のマップ(右側)とエンジン7の燃料消費量のマップ(左側)を示す線図である。NOxの排出量と燃料消費量のマップそのものは図10(左側)及び図15(左側)に示したものと同じである。NOxの排出量と燃料消費量の関係を比較すると、両者の組み合わせでNOxの排出量と燃料消費量が最も少なくなる領域が存在し、例えば図16に楕円で示されるエンジン回転速度Nedと出力トルク範囲Teg〜Tehの領域である。
【0086】
そこで、図11に示した車体コントローラ11Aの記憶装置11fAにそのエンジン回転速度Nedと出力トルク範囲Teg〜Tehを記憶しておく。目標回転速度演算部11aでは、エンジン回転速度Nedをエンジン7の目標回転速度として設定する。トルク配分補正部11eの目標アシストトルク補正部11e2では、エンジン7の目標出力トルクが出力トルク範囲Teg〜Tehを逸脱する場合、エンジンの目標出力トルクが出力トルク範囲Teg〜Teh内に収まるようエンジンの目標出力トルクを補正し、補正前のエンジンの目標出力トルクの逸脱量を目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクに追加する。これによりエンジン回転速度がNOxの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の回転速度Nedに維持され、エンジン出力トルクがNOxの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の出力トルク範囲Teg〜Tehに収まるように制御される。
【0087】
これによりアシスト電動機10の力行/発電制御によりPM及びNOxの排出量を抑制することができるだけでなく、エンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の適切な設定によりNOx排出量を更に抑制しかつ燃料消費量も少なくすることができる。
【0088】
PMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせをエンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の設定に用いる場合について説明する。
【0089】
図17は、エンジン7の回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMのマップ(中央)及び窒素酸化物NOxの排出量のマップ(右側)とエンジン7の燃料消費量のマップ(左側)を示す線図である。PMとNOxの排出量と燃料消費量のマップそのものは図10及び図15(左側)に示したものと同じである。PM及びMOxの排出量と燃料消費量の関係を比較すると、PM及びMOxのトータルの排出量と燃料消費量との組み合わせにおいて、それらの値が最も少なくなる領域が存在し、例えば図17に楕円で示されるエンジン回転速度Neeと出力トルク範囲Tei〜Tejの領域である。
【0090】
そこで、図11に示した車体コントローラ11Aの記憶装置11fAにそのエンジン回転速度Neeと出力トルク範囲Tei〜Tejを記憶しておく。目標回転速度演算部11aでは、エンジン回転速度Neeをエンジン7の目標回転速度として設定する。トルク配分補正部11eの目標アシストトルク補正部11e2では、エンジン7の目標出力トルクが出力トルク範囲Tei〜Tejを逸脱する場合、エンジンの目標出力トルクが出力トルク範囲Tei〜Tej内に収まるようエンジンの目標出力トルクを補正し、補正前のエンジンの目標出力トルクの逸脱量を目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクに追加する。これによりエンジン回転速度がPM及びMOxのトータルの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の回転速度Neeに維持され、エンジン出力トルクがPM及びMOxのトータルの排出量と燃料消費量の最も少ない領域の出力トルク範囲Tei〜Tejに収まるように制御される。
【0091】
これによりアシスト電動機10の力行/発電制御によりPM及びNOxの排出量を抑制することができるだけでなく、エンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の適切な設定によりPMとNOxの排出量を更に抑制しかつ/又は燃料消費量をも少なくすることができる。
【0092】
PMの排出量のみ、NOxの排出量のみをエンジン7の目標回転速度と出力トルク範囲の設定に用いる場合については、詳細は省略するが、上記のファクタの場合と同様に、PM、或いはNOxの排出量が最も少なくなる特定のエンジン回転速度Nef或いはNegと特定のエンジン出力トルク範囲Tek〜Tel或いはTem〜Tenを決めて記憶装置11fAに記憶し、エンジン回転速度とエンジン出力トルクを制御することができる。
【0093】
以上は、第2の実施の形態のバリエーションとして、図11に示した車体コントローラ11Aの記憶装置11fAに第2の実施の形態と異なる特定の回転速度と特定の出力トルクを記憶し、エンジンの回転速度制御を電動機のアシストトルク制御を行った場合を説明したが、第1の実施の形態のバリエーションとして、図5に示した車体コントローラ11の記憶装置11fに同様の回転速度を記憶し、エンジン回転速度の制御と電動機のアシストトルク制御を行ってもよい。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図18を用いて説明する。第2の実施の形態及びそのバリエーションでは、PMとNOxのトータルの排出量、PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMの排出量のみ、NOxの排出量のみのいずれかを最も少なくするエンジン回転速度と出力トルク範囲を記憶装置11fAに記憶してエンジンの回転速度制御と電動機のアシストトルク制御を行った。本実施の形態は、それらの全てのエンジン回転速度と出力トルク範囲を記憶装置11に記憶し、それらのいずれかを選択できるようにしたものである。
【0094】
図18は、本実施の形態における車体コントローラ11Bが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0095】
本実施の形態における車体コントローラ11Bは、目標回転速度演算部11aBと、ポンプ吸収トルク演算部11bと、目標アシストトルク演算部11cと、トルク配分補正部11eBと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fBとを有している。また、本実施の形態における油圧ショベルは、第1〜第6モードのいずれを選択するかを切り換えるモード切換スイッチ22を備えている。第1モードはPMとNOxのトータルの排出量を最も少なくするモード、第2モードはPMの排出量と燃料消費量の組み合わせでそれぞれを最も少なくするモード、第3モードはNOxの排出量と燃料消費量の組み合わせでそれぞれを最も少なくするモード、第4モードはPMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせでそれぞれを最も少なくするモード、第5モードはPMの排出量のみを最も少なくするモード、第6モードはNOxの排出量のみを最も少なくするモードである。モード切換スイッチ22は作業機械の製造者或いは管理者が操作できる箇所に設置されている。モード切換スイッチ22の指令信号は目標回転速度演算部11aB及びトルク配分補正部11eBの目標アシストトルク補正部11e2Bに入力される。
【0096】
記憶装置11fBは、第1〜第6モードのエンジン回転速度と出力トルク範囲として、上述したエンジン回転速度Nea,Nec,Ned,Nee,Nef,Neg及び出力トルク範囲Tea〜Teb,Tee〜Tef,Teg〜Teh,Tei〜Tej,Tek〜Tel,Tem〜Tenの全てを記憶している。
【0097】
目標回転速度演算部11aBは、モード切換スイッチ22からの指令信号を入力し、記憶装置11fBに記憶したエンジン回転速度Nea,Nec,Ned,Nee,Nef,Negの対応するものを読み出してエンジン7の目標回転速度として設定し、その値をエンジンコントローラ21に出力する。
【0098】
ポンプ吸収トルク演算部11b及び目標アシストトルク演算部11cの処理内容及びトルク配分補正部11eのエンジン出力トルク演算部11e1の処理内容は第1及び第2の実施の形態のものと同じであるので、説明を省略する。
【0099】
トルク配分補正部11eBの目標アシストトルク補正部11e2Bは、モード切換スイッチ22からの指令信号を入力し、記憶装置11fBに記憶したTea〜Teb,Tee〜Tef,Teg〜Teh,Tei〜Tej,Tek〜Tel,Tem〜Tenの対応するものを読み出して設定し、図13に示した場合と同様に、エンジンの目標出力トルクが設定した出力トルク範囲出力トルク範囲Tea〜Teb又はTee〜Tef又はTeg〜Teh又はTei〜Tej又はTek〜Tel又は,Tem〜Tenを逸脱するような値となってしまった場合、エンジンの目標出力トルクが設定した出力トルク範囲内に収まるようエンジンの目標出力トルクを補正し、補正前のエンジンの目標出力トルクの逸脱量を目標アシストトルク演算部11cで求めた目標アシストトルクに追加する。
【0100】
本実施の形態によれば、モード切換スイッチ22により第1〜第6モードの任意の1つを選択できるようにしたので、油圧ショベルの作業環境や稼動エリアの規制に応じて、PMとNOxのトータルの排出量、PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMの排出量のみ、NOxの排出量のみのうちの最適のファクタを選択し、作業環境や稼動エリアの規制に応じた最適なエンジンの回転速度制御と電動機のアシストトルク制御を行うことができる。
【0101】
なお、第3の実施の形態では、第2の実施の形態のようにトルク配分補正部11eBを備える車体コントローラにモード切換スイッチ22を設け、エンジン回転速度と出力トルク範囲を選択できるようにしたが、図5に示した第1の実施の形態のようにトルク配分補正部を備えない車体コントローラにモード切換スイッチ22を設け、エンジン回転速度を選択できるようにしてもよい。このようにした場合も、油圧ショベルの作業環境や稼動エリアの規制に応じて最適のファクタを選択し、作業環境や稼動エリアの規制に応じた最適なエンジンの回転速度制御を行うことができるとともに、ポンプ吸収トルクのハイパスフィルタ処理による電動機のアシストトルク制御を行うことができる。
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図19〜図21を用いて説明する。本実施の形態は、ポンプ吸収トルクの他の演算方法を示すものである。
【0102】
図19は、本実施の形態におけるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。図19において、本実施形態におけるアクチュエータ駆動制御システムは、トルクセンサ19を備えておらず、トルクセンサ19の検出信号に代え、回転センサ23の検出信号が車体コントローラ11Cに入力される。
【0103】
図20は、本実施の形態における車体コントローラ11Cが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0104】
本実施の形態における車体コントローラ11Cは、目標回転速度演算部11aと、ポンプ吸収トルク演算部11bCと、目標アシストトルク演算部11cと、トルク配分補正部11eと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fAとを有している。
【0105】
ポンプ吸収トルク演算部11bC以外の要素の処理内容及び構成は第1及び第2の実施の形態のものと同じであるので、説明を省略する。
【0106】
ポンプ吸収トルク演算部11bCはエンジン回転速度偏差演算部11bC1とポンプ吸収トルク推定部11bC2を有している。回転センサ23の検出信号はエンジン回転速度偏差演算部11bC1に入力される。
【0107】
図21は、エンジン回転速度偏差演算部11bC1とポンプ吸収トルク推定部11bC2の処理概念を示す図である。
【0108】
まず、エンジン回転速度偏差演算部11bC1は、目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との差であるエンジン回転速度偏差を演算する。目標エンジン回転速度は目標エンジン回転速度演算部11aから入力する。実エンジン回転速度は回転センサ23の検出値である。
【0109】
エンジン回転速度偏差演算部11bC1で演算されたエンジン回転速度偏差はエンジンコントローラ21に入力される。エンジンコントローラ21は、エンジン回転速度偏差が少なくなるように目標燃料噴射量を演算し、対応する制御信号をエンジン7に備えられた電子ガバナ7aに出力する。電子ガバナ7aはその制御信号により作動して目標燃料噴射量相当の燃料を噴射する。これによりエンジンは目標回転速度が維持されるよう制御され、エンジン7の出力トルクも調節される。
【0110】
エンジン7、アシスト電動機10、油圧ポンプ6からなる回転体には、エンジン7の出力トルクTeに加えて、油圧ポンプ6の負荷トルク(ポンプ吸収トルク)Tpとインバータ12によって制御されるアシスト電動機10の力行或いは回生トルクTmが作用し、回転体を加減速する。エンジン7、アシスト電動機10、油圧ポンプ6からなる回転体の回転軸は共通であり、回転体の回転速度ωが実エンジン回転速度である。この実エンジン回転速度はエンジン回転速度偏差としてエンジンコントローラ21へフィードバックされる。図21では回転体の加速方向のトルクを正と定義しているので、ポンプ吸収トルクTpは負であり、アシスト電動機10のトルクTmは力行時は正、回生時は負である。
【0111】
まず、ポンプ吸収トルクTpとアシスト電動機10の力行或いは回生トルクTmが0の場合を考える。回転体を慣性Jで近似すると、エンジントルクTeを加えたときの回転体の速度ωは、微分をsとして、ω=(1/Js)×Teで表すことができる。逆に、回転体の速度から、印加したエンジントルクTeの推定値Te’を、Te’=Js×ωと表すことができ、推定値Te’は実際のエンジントルクTeに近い値になる。
【0112】
Tp及びTmが0でない場合は、速度ωがこれらの影響を受けるので、Te’はTp及びTmを含んだ値になり、Teとの乖離が生じる。すなわち、実際のエンジントルクTeと、速度から推定したエンジントルクTe’との差がTp及びTmとなる。これらの関係をポンプ吸収トルクに関してまとめ、ポンプ吸収トルクを、Tp’=Js×ω−Te−Tmと表すことができる。ただし、微分はノイズなどを考慮して、差分或いはローパスフィルタ付きの差分で近似する。
【0113】
ここで、エンジントルクTeは、次のように求まる。エンジンコントローラ21はエンジン7の目標燃料噴射量を演算し、電子ガバナ7aの燃料噴射量を増減させることでエンジン7の出力トルクを調節している。燃料噴射量は出力トルクにほぼ比例する。よって、エンジンコントローラ21が演算する目標燃料噴射量からエンジントルクTeが求まる。また、アシスト電動機10の力行或いは回生トルクTmは車体コントローラ11Cがインバータ12の制御で演算する値である。回転体の速度ωは実エンジン回転速度に等しく、回転センサ23により検出された値である。回転体の慣性Jは既知である。
【0114】
ポンプ吸収トルク推定部11bC2は、エンジンコントローラ21が演算する目標燃料噴射量からエンジントルクTeを求め、車体コントローラ11Cの内部演算値であるアシスト電動機10の力行或いは回生トルクTm、回転センサ23の検出値である実エンジン回転速度ω、既知の値である回転体の慣性Jを用いてTp’=Js×ω−Te−Tmの演算を行い、ポンプ吸収トルクTp’を推定する。
【0115】
本実施の形態によれば、トルクセンサに代え、既存の回転センサを用いてポンプ吸収トルクを演算するため、システムを安価に構成することができる。
<第5の実施の形態>
本発明の第5の実施の形態を図22〜図24を用いて説明する。本実施の形態は、ポンプ吸収トルクの更に他の演算方法を示すものである。
【0116】
図22は、本実施の形態におけるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。図22において、本実施形態におけるアクチュエータ駆動制御システムは、トルクセンサ19に代え、シャトル弁ブロック25と圧力センサ26とを備え、圧力センサ26の検出信号が車体コントローラ11Dに入力される。
【0117】
図23は、本実施の形態における車体コントローラ11Dが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0118】
本実施の形態における車体コントローラ11Dは、目標回転速度演算部11aと、ポンプ吸収トルク予測部11bDと、目標アシストトルク演算部11cと、トルク配分補正部11eと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fAとを有している。
【0119】
ポンプ吸収トルク予測部11bD以外の要素の処理内容及び構成は第1及び第2の実施の形態のものと同じであるので、説明を省略する。
【0120】
ポンプ吸収トルク演算部11bDは比例微分処理部11bD1とゲイン処理部11bD2を有している。圧力センサ26の検出信号は比例微分処理部11bD1に入力される。
【0121】
図24は、比例微分処理部11bD1とゲイン処理部11bD2の処理概念を示す図である。
【0122】
比例微分処理部11bD1は、圧力センサ26の検出値であるシャトルブロック25の出力圧力(最も圧力の高い油圧操作信号)に微分成分を足し込んで補正することにより、アクチュエータ駆動制御システムの被駆動体の慣性による誤差分を補正する。ゲイン処理部11bD2は、その油圧操作信号の比例微分処理値に所定のゲインKを乗じてポンプ吸収トルクの予測値を求める。
【0123】
油圧ポンプの制御装置であるレギュレータ6aにポジティブ制御方式或いはネガティブ制御方式を用いている場合、操作レバー装置4a,4b或いは操作ペダル装置の操作部材の操作量が増加すると油圧ポンプ6の吐出流量が増加し、そのときの被駆動部材の負荷(フロント装置1Aの負荷或いは下部走行体1eの負荷)に応じて油圧ポンプ6の負荷トルクであるポンプ吸収トルクが増加する。その被駆動部材の負荷の大きさは被駆動部材の慣性の影響を受ける。したがって、操作レバー装置4a,4b或いは操作ペダル装置が生成する油圧操作信号に微分成分を足し込んで補正することにより、概ね、ポンプ吸収トルクに比例した値を予測することができる。
【0124】
本実施の形態によれば、トルクセンサに代え、汎用的に入手可能な圧力センサを用いてポンプ吸収トルクを予測するため、システムを安価に構成することができる。
<第6の実施の形態>
本発明の第6の実施の形態を図25〜図27を用いて説明する。本実施の形態は、エンジンに作用する負荷トルクに代えてエンジンの出力トルクを用い、かつその出力トルクがエンジンの目標出力トルクとなるように制御するものである。
【0125】
図25は、本実施の形態におけるアクチュエータ駆動制御システムの構成図である。図25において、本実施形態におけるアクチュエータ駆動制御システムは、トルクセンサ19を備えておらず、トルクセンサ19の検出信号に代え、回転センサ23の検出信号が車体コントローラ11Eに入力される。また、エンジンコントローラ21からその内部演算値である目標燃料噴射量の信号が車体コントローラ11Eに入力される。
【0126】
図26は、本実施の形態における車体コントローラ11Eが行う速度制御及びトルク変動抑制制御の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0127】
本実施の形態における車体コントローラ11Eは、目標回転速度演算部11aと、エンジントルク演算部11gと、目標アシストトルク演算部11hと、アシスト電動機力行/発電演算部11dの各機能と、記憶装置11fEとを有している。
【0128】
記憶装置11fEは、例えばエンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量の低減に適した特定のエンジン回転速度と特定のエンジン出力トルクとして、エンジン回転速度Nepと出力トルクTepを記憶している。
【0129】
図27は、エンジン7の回転速度と出力トルクの相関で表した、エンジン7の排気ガスに含まれる粒子状物質PMのマップを示す線図である。この図27に示すように、記憶装置11fEに記憶したエンジン回転速度Nepと出力トルクTepはPM排出量の最も少ない円形の領域に設定されている。
【0130】
目標回転速度演算部11aは、記憶装置11fEに記憶したエンジン回転速度Nepを読み出してエンジン7の目標回転速度として設定し、その値をエンジンコントローラ21に出力する。前述したように、エンジンコントローラ21は、その目標回転速度と、回転センサ23が検出するエンジン7の実回転速度との偏差を演算して、この偏差に応じた目標燃料噴射量を演算し、対応する制御信号を電子ガバナ7aに出力し、エンジン7は目標回転速度が維持されるよう制御される
エンジントルク演算部11gは、エンジンコントローラ21の内部演算値である目標燃料噴射量の信号を入力し、この目標燃料噴射量に基づいてエンジン7の出力トルクを演算する。
【0131】
目標アシストトルク演算部11hはトルク偏差演算部11h1と目標アシストトルク変換処理部11h2を有している。トルク偏差演算部11h1は、記憶装置11fEに記憶したエンジン出力トルクTepをエンジン7の目標出力トルクとして読み出し、この目標出力トルクTepからエンジントルク演算部11gで演算したエンジン出力トルクを差し引いてトルク偏差を演算する。目標アシストトルク変換処理部11h2は、トルク偏差演算部11h1で演算したトルク偏差よりアシスト電動機10の目標アシストトルクを算出する。
アシスト電動機力行/発電演算部11dは、目標アシストトルク演算部11hの目標アシストトルク変換処理部11h2で求めたアシスト電動機10の目標アシストトルクの力行/発電の各値に応じて、アシスト電動機10に指令する力行/発電電力を演算し、インバータ12に制御信号を送り、アシスト電動機10を力行/発電制御する。
【0132】
このように構成した本実施の形態においても、エンジン7の排気ガスに含まれる大気汚染物質である粒子状物質PMの排出量の低減に適した特定のエンジン回転速度Nepと特定のエンジン出力トルクTepを予め定めておき、その特定のエンジン回転速度Nep
と特定のエンジン出力トルクTepがそれぞれ目標エンジン回転速度及び目標エンジン出力トルクとなるように制御することで、エンジン7の回転速度と出力トルクが図27に示すPMの排出量が最も少なくなるように制御され、PMの排出量を抑制することができる。
【0133】
なお、第6の実施の形態では、エンジン7の目標回転速度と出力トルクをPM排出量の最も少ない領域にあるエンジン回転速度Nepと出力トルクTepに設定したが、前述した第2の実施の形態のバリエーションのように、PMとNOxのトータルの排出量、PMの排出量とエンジン7の燃料消費量の組み合わせ、NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、PMとNOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせ、NOxの排出量のいずれかを最も少なくする領域のエンジン回転速度と出力トルクを設定してもよい。また,前述した第3の実施の形態のように、それらのエンジン回転速度と出力トルクの全てを記憶装置に記憶しかつモード切換スイッチを設け、最適のエンジン回転速度と出力トルク範囲を適宜選択できるようにしてもよい。
<その他>
なお、本発明は上記実施例1〜3に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、車体の旋回体を駆動するアクチュエータについては電動機による旋回システムとしたが、油圧による通常の旋回モータを用いたシステムでもよい。目標のエンジン回転速度は1つに設定したが、油圧作業機械の作業内容や作業条件、ユーザ設定等により目標のエンジン回転速度を複数設定し、適宜目標を切り替えて制御する構成としてもよい。操作レバー装置は油圧操作信号を出力するものとしたが、電気信号を出力するものであってもよい。電動機はエンジンと油圧ポンプの中間に直列に連結される方式としたが、歯車機構を介してエンジンに対して油圧ポンプと電動機を並列に連結してもよい。油圧ポンプの負荷トルク(ポンプ吸収トルク)に対してハイパスフィルタ処理を行ったが、ローパスフィルタ処理を行い、フィルタ処理後の値(トレンド成分)をポンプ吸収トルクから差し引くことで高周波成分を求めてもよい。油圧ポンプの負荷トルクのトレンド成分や高周波成分を演算する際、演算周期の何サイクルか前の演算値に対して微分等の処理を行うことにより、今後の値を予測してフィードフォワード制御を組み合わせてもよい。更に、本発明は油圧ショベルに限らず、ホイールローダ、走行クレーン、ブルドーザ等その他の油圧作業機械にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
3a ブームシリンダ
3b アームシリンダ
3c バケットシリンダ
3e,3f 左右の走行モータ
4a,4b 操作レバー装置
5a〜5c,5e,5f 方向切換弁
6 油圧ポンプ
6a レギュレータ
7 エンジン
7a 電子ガバナ
8 リリーフ弁
9 タンク
10 アシスト電動機
11 車体コントローラ
11a 目標回転速度演算部
11b ポンプ吸収トルク演算部
11c 目標アシストトルク演算部
11c1 ハイパスフィルタ処理部
11c2 目標アシストトルク変換処理部
11d アシスト電動機力行/発電演算部
11f 記憶装置
11A 車体コントローラ
11e トルク配分補正部
11e1 エンジン出力トルク演算部
11e2 目標アシストトルク補正部
11fA 記憶装置
11B 車体コントローラ
11aB 目標回転速度演算部
11fB 記憶装置
11eB トルク配分補正部
11e2B 目標アシストトルク補正部
11C 車体コントローラ
11bC ポンプ吸収トルク演算部
11bC1 エンジン回転速度偏差演算部
11bC2 ポンプ吸収トルク推定部
11D 車体コントローラ
11bD ポンプ吸収トルク予測部
11bD1 比例微分処理部
11bD2 ゲイン処理部
11E 車体コントローラ
11fE 記憶装置
11g エンジントルク演算部
11h 目標アシストトルク演算部
11h1 トルク偏差演算部
11h2 目標アシストトルク変換処理部
12,13 インバータ
14 チョッパ
15 バッテリ
16 旋回電動機
17,18 圧力センサ
19 トルクセンサ
20 エンジンコントロールダイヤル
21 エンジンコントローラ
22 モード切換スイッチ
23 回転センサ23
26 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより回転駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプに連結されたアシスト電動機と、
前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータと、
操作部材を有し、この操作部材の操作に応じた操作信号を出力して前記複数のアクチュエータを動作させるる複数の操作装置とを備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度を記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶した前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定するエンジン回転速度設定装置と、
前記エンジンの目標回転速度に基づいて前記エンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御装置と、
前記油圧ポンプの吸収トルクと前記エンジンの目標出力トルクとの差分トルクを演算し、この差分トルクに応じて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する電動機制御装置とを備えることを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記電動機制御装置は、
前記油圧ポンプの吸収トルクを取得するポンプ吸収トルク取得装置と、
前記ポンプ吸収トルク取得装置によって取得した前記油圧ポンプの吸収トルクを前記エンジンの目標トルクとしてのトレンド成分とその他の成分とに分離するフィルタ装置とを有し、
前記電動機制御装置は、前記フィルタ装置で分離した前記その他の成分を前記差分トルクとして用い、前記トレンド成分が前記エンジンの目標出力トルクとなるよう前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記フィルタ装置は、前記ポンプ吸収トルク取得装置によって取得した前記油圧ポンプの吸収トルクから前記トレンド成分を除去するハイパスフィルタであることを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項4】
請求項2記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲を記憶しており、
前記電動機制御装置は、前記エンジンの目標出力トルクが前記記憶装置に記憶した前記特定の出力トルク範囲を超えないよう前記電動機の目標トルクを補正するトルク配分補正装置を更に有し、
前記電動機制御装置は、前記トルク配分補正装置で補正した前記電動機の目標トルクに基づいて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項5】
請求項1又は4記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかの低減に適した前記エンジンの特定の回転速度或いは前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲を記憶していることを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項6】
請求項4記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記記憶装置は、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのうちの少なくとも2つのファクタのそれぞれの低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲の複数の組み合わせを記憶しており、
前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルク範囲の複数の組み合わせのうちのいずれを用いるかを選択する切換装置を更に備え、
前記エンジン回転速度設定装置は、前記切換装置によって選択された組み合わせの前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定し、
前記トルク配分補正装置は、前記切換装置によって選択された組み合わせの前記特定の出力トルク範囲を超えないよう前記電動機の目標トルクを補正することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項7】
請求項2記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記ポンプ吸収トルク取得装置は、
前記油圧ポンプの吸収トルクを検出するトルク検出装置と、
前記トルク検出装置の検出値に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを演算するトルク演算装置とを有することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項8】
請求項2記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記ポンプ吸収トルク取得装置は、
前記エンジンの実回転速度を検出する回転検出装置と、
前記回転検出装置が検出する前記実回転速度と前記目標回転速度との偏差に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを推定するトルク演算装置とを有することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項9】
請求項2記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記ポンプ吸収トルク取得装置は、
前記複数の操作装置が出力する操作信号を検出する操作信号検出装置と、
前記操作信号検出装置が検出する前記操作信号に基づいて前記油圧ポンプの吸収トルクを予測するトルク演算装置とを有することを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項10】
エンジンと、
前記エンジンにより回転駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプに連結されたアシスト電動機と、
前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータと、
操作部材を有し、この操作部材の操作に応じた操作信号を出力して前記複数のアクチュエータを動作させるる複数の操作装置とを備えたハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記エンジンの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出量の低減に適した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルクを記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶した前記特定の回転速度を前記エンジンの目標回転速度として設定するエンジン回転速度設定装置と、
前記エンジンの目標回転速度に基づいて前記エンジンの回転速度を制御するエンジン回転速度制御装置と、
前記油圧ポンプの吸収トルクと前記記憶装置に記憶した前記特定の出力トルクとの偏差を演算し、この偏差に応じて前記アシスト電動機を力行制御及び発電制御する電動機制御装置とを備えることを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。
【請求項11】
請求項10記載のハイブリッド駆動式の油圧作業機械において、
前記記憶装置に記憶した前記エンジンの特定の回転速度と特定の出力トルクは、前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PMの排出量、窒素酸化物NOx、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量、粒子状物質PMの排出量と燃料消費量の組み合わせ、窒素酸化物NOxの排出量と燃料消費量の組み合わせ、粒子状物質PMと窒素酸化物NOxのトータルの排出量と燃料消費量の組み合わせを含む複数のファクタのいずれかの低減に適した回転速度と出力トルクであることを特徴とするハイブリッド駆動式の油圧作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−246631(P2012−246631A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117443(P2011−117443)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】